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明細書 :クローラ型ロボット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-142381 (P2019-142381A)
公開日 令和元年8月29日(2019.8.29)
発明の名称または考案の名称 クローラ型ロボット
国際特許分類 B62D  55/065       (2006.01)
B62D  57/024       (2006.01)
FI B62D 55/065
B62D 57/024 N
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2018-029233 (P2018-029233)
出願日 平成30年2月21日(2018.2.21)
発明者または考案者 【氏名】永瀬 純也
【氏名】福永 二三佳
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
要約 【課題】簡易な構造でありながら、管が小口径で屈曲部を有していても大きな推進力で走行可能なクローラ型ロボットを提供する。
【解決手段】このクローラ型ロボット1では、ウォーム7は、フレーム6の中空孔6aに収容されて中心軸のまわりを回転し得、螺旋状の突起したウォーム歯部71が外側面に形成されており、クローラベルト8は、ウォーム7のウォーム歯部71にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部81が外周面に形成されており、一部のクローラベルト歯部81がウォーム歯部71に接触してかみ合うとウォーム7の回転に追従して回動し得、隣接する2個の走行体2、2の間に、アウターチューブ3aの内部にインナーシャフト3bが回転自在に支持された可撓性の走行体間フレキシブルシャフト3を更に備え、走行体間フレキシブルシャフト3を介してウォーム7が等しく回転し得る。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
フレームとウォームとクローラベルトとを有する複数個の走行体を備えるクローラ型ロボットであって、
前記フレームは、長手方向の中心軸に沿って中空孔を有し、
前記ウォームは、前記中空孔に収容されて中心軸のまわりを回転し得、螺旋状の突起したウォーム歯部が外側面に形成されており、
前記クローラベルトは、前記ウォームの側面の外方に前記フレームに巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数個のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部が前記ウォーム歯部に接触してかみ合うと該ウォームの回転に追従して回動し得、
隣接する2個の前記走行体の間に、アウターチューブの内部にインナーシャフトが回転自在に支持された可撓性の走行体間フレキシブルシャフトを更に備え、該走行体間フレキシブルシャフトを介して該2個の前記走行体の前記ウォームが等しく回転し得ることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記クローラベルトは、その長さが、(3π/2)×(R-t-R)の値から導かれたものである(Rは走行する管の内半径、tは前記クローラベルトの厚み、Rは前記ウォームの半径)ことを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記2個の走行体の前記ウォームは、前記走行体間フレキシブルシャフトの前記インナーシャフトに接続されていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体の前記フレームは、前記走行体間フレキシブルシャフトの前記アウターチューブに固定されていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体の前記ウォームを回転させる回転トルクを発生するウォーム回転トルク発生部を更に備えており、
該ウォーム回転トルク発生部は、前記走行体間フレキシブルシャフトに設けられていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体のうち最後部の走行体の後部に接続され、アウターチューブの内部にインナーシャフトが回転自在に支持された可撓性の最後部フレキシブルシャフトを更に備え、該最後部の走行体の前記ウォームは、該最後部フレキシブルシャフトの前記インナーシャフトに接続され、該最後部の走行体の前記フレームは、該最後部フレキシブルシャフトの前記アウターチューブに固定されていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項7】
請求項6に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体の前記ウォームを回転させる回転トルクを発生するウォーム回転トルク発生部を更に備え、
該ウォーム回転トルク発生部は、前記最後部フレキシブルシャフトの後部に設けられていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体は、いずれも複数個の前記クローラベルトを有することを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記複数個の走行体のうち先頭の走行体は1個の前記クローラベルトを有し、残りの走行体は複数個の前記クローラベルトを有することを特徴とするクローラ型ロボット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、管内の走行に好適なクローラ型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
危険な場所や小さな空間の場所など人間の進入が難しい場所での検査や探索等の作業は、その場所を適切に走行可能なロボットに行わせることが好ましい。そのようなロボットとしては、種々のものが知られている。その中で、クローラ(無限軌道)型ロボットは、クローラのクローラベルトが周囲の面に接することでその面の状態に柔軟に対応して走行することが可能であるといったメリットを有する。
【0003】
産業用の分野では、個々の作業に特化したクローラ型ロボットが提案されている。例えば、特許文献1及び2などには、管内の検査等を行う管内用のものが提案されている。特許文献1に記載のクローラ型ロボットは、3個のクローラが中心軸に対して互いに回転対称な位置に設けられ、それらのクローラが半径方向に移動可能であるものである。3個のクローラベルトが管の内壁に押し付けられることで、管が傾斜したり垂直になったりしていても走行できる、としている。特許文献2に記載のクローラ型ロボットは、2個のクローラがハの字型に設けられたものである。2個のクローラにより、安定して管内を走行できる、としている。
【0004】
その一方、近年、災害等が起こった場合に被害者の探索や救助又は被害物の検査などを行うレスキュー用のロボットが注目されている。レスキュー用のクローラ型ロボットとしては、例えば、特許文献3には、クローラを左右に設けたクローラ装置を2種類備え、大きな段差を容易に乗り越えることができるように、2種類のクローラ装置のどちらかを地面の状況に応じて選択するようなクローラ型ロボットが提案されている。また、特許文献4には、瓦礫の狭い空間にも進入し得るように、上下2段に積層したクローラの一対をロボット本体の左右それぞれに設けたクローラ型ロボットが提案されている。
【0005】
特許文献5、6には、管内用やレスキュー用などに利用可能なものであって、管や瓦礫の中などの非常に狭い空間への進入が容易なように、単一のウォームと、その側面の外方に配置されそれに追従して回動する複数のクローラベルトを備えているクローラ型ロボットが提案されている。このウォームは、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されており、回転トルク生成部(ギヤモータ)によって回転する。クローラベルトは、ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る複数の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、その複数のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部がウォーム歯部にかみ合うことで、ウォームの回転に追従して回動する。このクローラ型ロボットは、簡易な構造でありながら、様々な管内径の水平管内及び垂直管内を走行可能な利点を有する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-220049号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133667号公報
【特許文献3】特開2007-237991号公報
【特許文献4】特開2008-213671号公報
【特許文献5】特開2014-193707号公報
【特許文献6】特開2017-036018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、管は、小口径で屈曲部を有している場合が多くある。例えば、ガス管は、40mm程度の小口径の管が本管に至るまでの10mほどの間に7回から10回程度上下左右に90度屈曲すると言われている。クローラ型ロボットは、このような小口径で屈曲部を有している管内の走行のためには、小口径の管に応じて小さくしかも長さ(長手方向(進行方向)の長さ)の短い小型のものが求められる。
【0008】
その一方、クローラ型ロボットは、長さの短い小型のものだと、クローラベルトが周囲の面に接する面積が小さくなり易く、推進力も小さくなり易い。
【0009】
そこで、本願発明者は、特許文献5、6に提案されているクローラ型ロボットの基本構造を踏襲して、簡易な構造でありながら、管が小口径で屈曲部を有していても、大きな推進力で走行可能なクローラ型ロボットを案出した。
【0010】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造でありながら、管が小口径で屈曲部を有していても大きな推進力で走行可能なクローラ型ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のクローラ型ロボットは、フレームとウォームとクローラベルトとを有する複数個の走行体を備えるクローラ型ロボットであって、
前記フレームは、長手方向の中心軸に沿って中空孔を有し、前記ウォームは、前記中空孔に収容されて中心軸のまわりを回転し得、螺旋状の突起したウォーム歯部が外側面に形成されており、前記クローラベルトは、前記ウォームの側面の外方に前記フレームに巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数個のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部が前記ウォーム歯部に接触してかみ合うと該ウォームの回転に追従して回動し得、隣接する2個の前記走行体の間に、アウターチューブの内部にインナーシャフトが回転自在に支持された可撓性の走行体間フレキシブルシャフトを更に備え、該走行体間フレキシブルシャフトを介して該2個の前記走行体の前記ウォームが等しく回転し得ることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のクローラ型ロボットは、請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記クローラベルトは、その長さLが、L=(3π/2)×(R-t-R)を用いて導かれたものである(Rは走行する管の内半径、tは前記クローラベルトの厚み、Rは前記ウォームの半径)ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載のクローラ型ロボットは、請求項1又は2に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記2個の走行体の前記ウォームは、前記走行体間フレキシブルシャフトの前記インナーシャフトに接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載のクローラ型ロボットは、請求項1~3のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体の前記フレームは、前記走行体間フレキシブルシャフトの前記アウターチューブに固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載のクローラ型ロボットは、請求項1~4のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体の前記ウォームを回転させる回転トルクを発生するウォーム回転トルク発生部を更に備えており、該ウォーム回転トルク発生部は、前記走行体間フレキシブルシャフトに設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のクローラ型ロボットは、請求項1~4のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体のうち最後部の走行体の後部に接続され、アウターチューブの内部にインナーシャフトが回転自在に支持された可撓性の最後部フレキシブルシャフトを更に備え、該最後部の走行体の前記ウォームは、該最後部フレキシブルシャフトの前記インナーシャフトに接続され、該最後部の走行体の前記フレームは、該最後部フレキシブルシャフトの前記アウターチューブに固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載のクローラ型ロボットは、請求項6に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体の前記ウォームを回転させる回転トルクを発生するウォーム回転トルク発生部を更に備え、該ウォーム回転トルク発生部は、前記最後部フレキシブルシャフトの後部に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載のクローラ型ロボットは、請求項1~7のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体は、いずれも複数個の前記クローラベルトを有することを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載のクローラ型ロボットは、請求項1~7のいずれか1項に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記複数個の走行体のうち先頭の走行体は1個の前記クローラベルトを有し、残りの走行体は複数個の前記クローラベルトを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のクローラ型ロボットによれば、簡易な構造でありながら、管が小口径で屈曲部を有していても大きな推進力で走行可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットを示す斜視図である。
【図2】同上のクローラ型ロボットの平面視断面図である。
【図3】同上のクローラ型ロボットの走行体とその近傍を拡大して示す平面視断面図である。
【図4】同上のクローラ型ロボットのウォームの外観を示す平面図である。
【図5】同上のクローラ型ロボットのクローラベルトのモデル図であって、(a)が弾性変形前、(b)が弾性変形後のものである。
【図6】同上のクローラ型ロボットのクローラベルトのモデルを用いたクローラベルトの長さと弾性力の関係を示す特性図である。
【図7】同上のクローラ型ロボットにおいてウォーム回転トルク発生部を2個の走行体の間に設けた場合の平面視断面図である。
【図8】同上のクローラ型ロボットの管の屈曲部を走行する様子を示す平面視断面図である。
【図9】同上のクローラ型ロボットの先頭の走行体のクローラベルトを1個にしたものが管の屈曲部を走行する様子を示す平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係るクローラ型ロボット1は、図1及び図2に示すように複数個の走行体2を備えるものである。図においては、2個の走行体2、2を示しているが、3個以上とすることもできる。また、クローラ型ロボット1は、隣接する2個の走行体2、2の間に走行体間フレキシブルシャフト3を備え、複数個の走行体2のうち最後部の走行体2の後部に接続される最後部フレキシブルシャフト4を備える。また、クローラ型ロボット1は、最後部フレキシブルシャフト4の後部に設けられているウォーム回転トルク生成部5を備える(図2参照)。

【0023】
各々の走行体2は、図3に示すように、フレーム6とウォーム7とクローラベルト8を有する。

【0024】
フレーム6は、大略筒状をなし、長手方向の中心軸Xに沿って中空孔6aを有する。フレーム6は、例えば、硬い樹脂製のものを用いることができる。フレーム6は、長手方向の長さを短くするのが好ましい。図中、符号61で示すのはウォーム7を支持するための軸受である。なお、先頭の走行体2のフレーム6の先端部は、接続するもの(走行体間フレキシブルシャフト3など)がないので、後続の走行体2のフレーム6とは図1及び図2などに示すように少し形状を異ならせて短くすることができ、また、軸受61を省いて、より短くすることも可能である。

【0025】
ウォーム7は、フレーム6の中空孔6aに収容されている。ウォーム7は、後に詳述するウォーム回転トルク生成部5が生成した回転トルクによって中心軸Xの回りを回転する単一のものである。ウォーム7は、例えば、硬い樹脂製又はアルミニウム製のものを用いることができる。

【0026】
ウォーム7は、図4に示すように、その外側面に螺旋状の突起したウォーム歯部71が形成されている。クローラベルト8は、ウォーム7のウォーム歯部71が1歯のみ後述するクローラベルト歯部81とかみ合っていれば問題なく回動する。従って、ウォーム歯部71の長さを1ピッチ分か或いはそれよりも少し長くすることで、走行体2の長手方向の長さを抑えることができる。

【0027】
クローラベルト8は、ウォーム7の側面の外方にフレーム6に巻かれて配置される輪状のものである。クローラベルト8は、複数個設けられ、中心軸Xの軸回りに略等間隔に配置されている。本実施形態では、クローラベルト8は、2個設けられ、中心軸Xの軸回りに略180度の間隔に配置されている。

【0028】
クローラベルト8は、弾性力をもってフレーム6の外に湾曲している。そのため、クローラベルト8は、走行する管に段差が有ったり異物が有ったりしても、変形することにより通過できる能力が高いものである。更には、クローラベルト8は、無荷重時に曲率半径一定の円環形状にできるだけ近くなるようにするのが好ましい。クローラベルト8は、例えば、シリコーンゴム製のものを用いることができる。

【0029】
クローラベルト8は、ウォーム7のウォーム歯部71にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部81が外周面に形成されている。クローラベルト歯部81は、少し斜めにクローラベルト8を横断する形状である。クローラベルト8は、多数のクローラベルト歯部81のうちフレーム6の内部側に位置する一部のクローラベルト歯部81が単一のウォーム7のウォーム歯部71とかみ合い得るように配置され、かみ合うことでウォーム7の回転に追従して回動する。こうして、回転トルクがウォーム7からクローラベルト8に伝達される。

【0030】
回動するクローラベルト8は、フレーム6の外部側と内部側(中心軸X側)において長手方向に動く。他方の端部2b側(図3において左側)から見て右回りにウォーム7が回転すると、クローラベルト8は、フレーム6の内部側に位置したクローラベルト歯部81がかみ合ったウォーム7のウォーム歯部71にクローラベルト歯部81が押されて、走行体2の他方の端部2bから一方の端部2aに向かって(図3において左から右へ)長手方向に動き、折り返し、フレーム6の外部側に位置したクローラベルト歯部81が走行体2の一方の端部2aから他方の端部2bに向かって(図3において右から左へ)長手方向に動き、折り返す。フレーム6にはクローラベルト8によって他方の端部2bから一方の端部2aに向かう力がかかる。

【0031】
走行体2が管内を走行するとき、走行体2の他方の端部2b側(図3において左側)から見て右回りにウォーム7が回転すると、複数個のクローラベルト8において、フレーム6の外部側に位置したクローラベルト歯部81が走行体2の一方の端部2aから他方の端部2bに向かって(図3において右から左へ)長手方向に動く。そうすると、クローラベルト歯部81が管の内壁などを蹴り出すことで、クローラベルト8に推進力(他方の端部2bから一方の端部2aに向かう力)が生じる。この推進力は、フレーム6に伝達される。それにより、走行体2が他方の端部2bから一方の端部2aに向かって(図3において左から右へ)走行する。

【0032】
クローラベルト8の最適な長さは以下のようにして求めることができる。図5(a)に示す無荷重時において、クローラベルト8は簡略にモデル化して厚みtの曲率半径一定の円環形状とした。また、円環の中央の曲率半径ρとした。クローラベルト8は、鉛直方向に圧縮荷重Wを受けると、鉛直方向の直径の変化量Dは、次の(1)式のようになる。

【0033】
【数1】
JP2019142381A_000003t.gif

【0034】
ここで、Eはヤング率(縦弾性係数)、Aは横断面積、kは円環の断面係数である。

【0035】
また、クローラベルト8の厚みtが円環の曲率半径ρに比べて十分に小さい場合は、次の(2)式のようにまとめることができる.

【0036】
【数2】
JP2019142381A_000004t.gif

【0037】
ここで、Iは断面二次モーメントである。(2)式を荷重Wに関する式にまとめると、次の(3)式のようになる。

【0038】
【数3】
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【0039】
ここで、荷重Wがクローラベルト8の半径方向の弾性力である。(3)式をクローラベルト8の長さLを用いて表現すると、クローラベルト8の長さLと弾性力Wとの関係が次の(4)式のように求められる。

【0040】
【数4】
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【0041】
(4)式を整理するために次の(5)式で示すαを導入する。

【0042】
【数5】
JP2019142381A_000007t.gif

【0043】
(4)式に(5)式を代入すると次の(6)式のようになる。

【0044】
【数6】
JP2019142381A_000008t.gif

【0045】
一方、クローラベルト8の鉛直方向の直径の変化量Dは、内半径Rの管を走行するとき、次の(7)式で表される(Rはウォーム7の半径)。

【0046】
【数7】
JP2019142381A_000009t.gif

【0047】
従って、(6)式及び(7)式より、内半径Rの管を走行するときのクローラベルト8の長さLと弾性力Wの関係は、次の(8)式で表すことができる。

【0048】
【数8】
JP2019142381A_000010t.gif

【0049】
このとき、クローラベルト8の長さLが次の(9)式で示すLであるとき、∂W/∂L=0となり、かつ微分係数は負から正に変化する。よって、このとき、クローラベルト8の弾性力Wは、その長さLに対して極大値Wを持つことになる。

【0050】
【数9】
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【0051】
従って、クローラベルト8は、(9)式を満たすとき、内半径Rの管に対して長さLが最適な値となる。(9)式は、クローラベルト8の長さLの最適値Lは、管の内半径R、ウォーム7の半径R、クローラベルト8の厚みtによって決定されることを意味する。

【0052】
クローラベルト8の厚みtは、クローラベルト8においてクローラベルト歯部81の厚みを含んだ厚みを用いればよい。ウォーム7の半径Rは、ウォーム歯部71の高さを除いた半径を用いればよい。管の内半径Rは、目的到達地点までの管の内半径が変わる場合、走行に高い推進力が必要とされるところの半径を用いることになる。また、(8)式は、図6に示すような曲線を描く。クローラベルト8は、長さLをその最適値Lの0.86倍以上、1.25倍以下とすれば、弾性力Wの極大値Wの90%以上となり、良好な弾性力Wを得られることが分かる。このようにして、クローラベルト8は、その長さLを、(3π/2)×(R-t-R)の値から導くようにできる。

【0053】
次に、走行体間フレキシブルシャフト3について説明する。走行体間フレキシブルシャフト3は、可撓性であり、アウターチューブ3aの内部にインナーシャフト3bが回転自在に支持されたものである。

【0054】
2個の走行体2、2のウォーム7、7は、走行体間フレキシブルシャフト3のインナーシャフト3bに接続されている。また、2個の走行体2、2のフレーム6、6は、走行体間フレキシブルシャフト3のアウターチューブ3aに固定されている。それにより、2個の走行体2、2のウォーム7、7は、走行体間フレキシブルシャフト3を介して等しく回転し得るようになる。

【0055】
次に、最後部フレキシブルシャフト4について説明する。最後部フレキシブルシャフト4は、可撓性であり、アウターチューブ4aの内部にインナーシャフト4bが回転自在に支持されたものである。最後部の走行体2のウォーム7は、最後部フレキシブルシャフト4のインナーシャフト4bに接続され、最後部の走行体2のフレーム6は、最後部フレキシブルシャフト4のアウターチューブ4aに固定されている。

【0056】
次に、ウォーム回転トルク生成部5について説明する。ウォーム回転トルク生成部5は、複数個の走行体2のウォーム7を回転させる回転トルクを生成するものである。ウォーム回転トルク生成部5は、ギヤモータ(又はギヤ付きでないモータ)を用いることができる。ウォーム回転トルク生成部5は、配線9から電力が供給される。配線9は長く延ばすことができる(図示せず)。最後部フレキシブルシャフト4の後部に設けられるウォーム回転トルク生成部5は、本体部5aが最後部フレキシブルシャフト4のアウターチューブ4aの内部に固定され、出力軸部5bが最後部フレキシブルシャフト4のインナーシャフト4bの端部に接続されている。ウォーム回転トルク生成部5は、電力が供給されると、出力軸部5bが回転し、その回転が最後部フレキシブルシャフト4のインナーシャフト4bを介して最後部の走行体2のウォーム7を回転させる。

【0057】
このようにウォーム回転トルク生成部5を最後部フレキシブルシャフト4の後部に設けると、ウォーム回転トルク生成部5を走行体2に収容していないので、走行体2の半径方向の大きさを小さくすることができる。また、ウォーム回転トルク生成部5をアウターチューブ4aの内部に設けると、ウォーム回転トルク生成部5が管の内壁に直接接触しないので、クローラ型ロボット1の走行の抵抗を低減することができる。なお、ウォーム回転トルク生成部5をアウターチューブ4aの内部に設けずに、ウォーム回転トルク生成部5に車輪を付加してクローラ型ロボット1の走行の抵抗を低減することも可能である。

【0058】
ウォーム回転トルク生成部5は、図7に示すように、走行体間フレキシブルシャフト3に設けることも可能である。この場合、ウォーム回転トルク生成部5は、本体部5aが走行体間フレキシブルシャフト3のアウターチューブ3aの内部に固定され、両側から突出した出力軸部5b、5bが走行体間フレキシブルシャフト3の分断されたインナーシャフト3bの端部に接続される。また、最後部フレキシブルシャフト4は、必ずしも必要ない。また、配線9は、ウォーム7及びクローラベルト8を避けてウォーム回転トルク生成部5まで配線される(図示せず)。ウォーム回転トルク生成部5は、電力が供給されると、出力軸部5b、5bが回転し、その回転が走行体間フレキシブルシャフト3の分断されたインナーシャフト3bを介して2個の走行体2、2のウォーム7、7を回転させる。なお、ウォーム回転トルク生成部5は、管の内径が大きい場合は、いずれかの走行体2のフレーム6の中空孔6aに収容することも可能である。

【0059】
以上のように、クローラ型ロボット1は、簡易な構成のものとなっている。クローラ型ロボット1は、管が小口径で屈曲部を有している場合、その屈曲部を曲がれるくらいに走行体2の長手方向の長さは短くし、走行体2を走行体間フレキシブルシャフト3でつなぐことにより複数個設けて、クローラベルト8の長さが短くても推進力を大きくできる。図8は、クローラ型ロボット1が管Tの中を走行し、先頭の走行体2が屈曲部TBを曲がったところを示している。また、クローラ型ロボット1は、走行体2を複数個設けることにより、各クローラベルト8のクローラベルト歯部81に過負荷がかからず、その破断等に対して強いものとすることができる。

【0060】
クローラ型ロボット1は、以上説明した構成の他に、所望の機能を発揮するように、様々な部品を搭載した機能部を走行体2、走行体間フレキシブルシャフト3、又は最後部フレキシブルシャフト4に取り付けたりすることができる。例えば、先頭の走行体2に周囲を照明する照明器と周囲の画像を取得するカメラを設けることができる。照明器とカメラに代えて、各種センサなどを設けることも可能である。また、クローラ型ロボット1は、管内の元の位置又は管の入口に戻るには、ウォーム回転トルク生成部5などに接続された配線9を人力又は牽引機で牽引したり、ウォーム回転トルク生成部5を逆回転させることにより逆走行させたり、最後部フレキシブルシャフト4を管の入口よりも延ばしてそれを人力又は牽引機で牽引したりすることが可能である。また、クローラ型ロボット1は、無線通信器と充電池を備えるようにして、電線9によらず、無線で指示を受け充電池からウォーム回転トルク生成部5に電力を供給するようにすることも可能である。

【0061】
また、クローラ型ロボット1は、複数個の走行体2のうち先頭の走行体2は1個のクローラベルト8を有し、残りの走行体2は複数個のクローラベルト8を有するようにすることができる。そうすると、クローラ型ロボット1が屈曲部をより曲がり易くすることができる。図9は、そのようなクローラ型ロボット1が管Tの中を走行し、先頭の走行体2が屈曲部TBを曲がったところを示している。

【0062】
屈曲部の曲がる向きに応じて先頭の走行体2のクローラベルト8をフレーム6とともに回転させることも可能である。その場合、先頭の走行体2のフレーム6(及びクローラベルト8)が選択的に回転できる構造にすることができる。また、最後部フレキシブルシャフト4の後部のウォーム回転トルク生成部5よりも更に後部にフレーム回転トルク発生部を設けてその出力軸部に最後部フレキシブルシャフト4のアウターチューブ4aを接続し、全ての走行体2のフレーム6及び走行体間フレキシブルシャフト3のアウターチューブ3aを回転させることにより、先頭の走行体2のフレーム6(及びクローラベルト8)を回転させることもできる。また、最後部フレキシブルシャフト4を管の入口よりも延ばしてそれを人力又はフレーム回転トルク発生部で回転させ、全ての走行体2のフレーム6及び走行体間フレキシブルシャフト3のアウターチューブ3aを回転させることにより、先頭の走行体2のフレーム6(及びクローラベルト8)を回転させることも可能である。

【0063】
以上、本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 クローラ型ロボット
2 走行体
2a 走行体の一方の端部
2b 走行体の他方の端部
3 走行体間フレキシブルシャフト
3a 走行体間フレキシブルシャフトのアウターチューブ
3b 走行体間フレキシブルシャフトのインナーシャフト
4 最後部フレキシブルシャフト
4a 最後部フレキシブルシャフトのアウターチューブ
4b 最後部フレキシブルシャフトのインナーシャフト
5 ウォーム回転トルク生成部
5a ウォーム回転トルク生成部の本体部
5b ウォーム回転トルク生成部の出力軸部
6 フレーム
6a フレームの中空孔
61 軸受
7 ウォーム
71 ウォーム歯部
8 クローラベルト
81 クローラベルト歯部
9 外部からの電力などを受けるための配線
T 管
TB 管の屈曲部
X 中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
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