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明細書 :日射量推定システム及び日射量推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-086325 (P2019-086325A)
公開日 令和元年6月6日(2019.6.6)
発明の名称または考案の名称 日射量推定システム及び日射量推定方法
国際特許分類 G01W   1/12        (2006.01)
FI G01W 1/12 K
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-212617 (P2017-212617)
出願日 平成29年11月2日(2017.11.2)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】三谷 康範
【氏名】塩田 淳
【氏名】横澤 功吉
出願人 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100176142、【弁理士】、【氏名又は名称】清井 洋平
【識別番号】100127155、【弁理士】、【氏名又は名称】来田 義弘
審査請求 未請求
要約 【課題】日射量を正確に推算できる日射量推定システム及び日射量推定方法を提供する。
【解決手段】空を撮像する撮像手段11と、撮像手段11によって撮像された画像内に太陽S及び太陽Sの周囲を含む日射量算出領域Mを設定し、日射量算出領域M内の明るさを求める画像解析手段12と、日射量算出領域M内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する日射量算出領域M内の明るさの寄与度を格納した記憶手段15と、画像解析手段12が求めた日射量算出領域M内の明るさ、及び、寄与度に基づいて、日射量を推算する演算手段13とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
空を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像内に太陽及び太陽の周囲を含む日射量算出領域を設定し、前記日射量算出領域内の明るさを求める画像解析手段と、
前記日射量算出領域内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する前記日射量算出領域内の明るさの寄与度を格納した記憶手段と、
前記画像解析手段が求めた前記日射量算出領域内の明るさ、及び、前記寄与度に基づいて、日射量を推算する演算手段とを備えることを特徴とする日射量推定システム。
【請求項2】
請求項1記載の日射量推定システムにおいて、前記画像解析手段は、前記日射量算出領域を、太陽を含む中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域とに区分し、前記中央領域内の明るさ及び前記周辺領域内の明るさを求め、
前記記憶手段は、前記寄与度として、日射量に対する前記中央領域内の明るさの寄与度A、及び、日射量に対する前記周辺領域内の明るさの寄与度Bを格納し、
前記演算手段は、前記中央領域内の明るさ、前記周辺領域内の明るさ及び前記寄与度A、Bに基づいて日射量を推算することを特徴とする日射量推定システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の日射量推定システムにおいて、前記画像解析手段は、前記日射量算出領域内で明るさが所定値未満の部分を暗部として特定し、前記暗部を前記日射量算出領域内の前記暗部以外の部分とは異なる扱いにして、前記日射量算出領域内の明るさを求めることを特徴とする日射量推定システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の日射量推定システムにおいて、前記撮像手段によって連続的あるいは間欠的に撮像された画像から将来の前記日射量算出領域内の雲の配置を予測して、前記日射量算出領域を収めた将来の画像を導出する予測手段を更に備え、
前記画像解析手段は、前記予測手段が導出した前記将来の画像から将来の前記日射量算出領域内の明るさを求め、
前記演算手段は、前記将来の前記日射量算出領域内の明るさ、及び、前記寄与度に基づいて、将来の日射量を推算することを特徴とする日射量推定システム。
【請求項5】
空を撮像した画像内に太陽及び太陽の周囲を含む日射量算出領域を設定し、画像解析により前記日射量算出領域内の明るさを求める工程s1と、
前記日射量算出領域内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する前記日射量算出領域内の明るさの寄与度、及び、前記工程s1で求めた前記日射量算出領域内の明るさに基づいて、日射量を推算する工程s2とを有することを特徴とする日射量推定方法。
【請求項6】
請求項5記載の日射量推定方法において、前記工程s1で、前記日射量算出領域を、太陽を含む中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域とに区分し、該中央領域内の明るさ及び該周辺領域内の明るさを求め、
前記寄与度には、日射量に対する前記中央領域内の明るさの寄与度A、及び、日射量に対する前記周辺領域内の明るさの寄与度Bが存在し、
前記工程s2で、前記寄与度A、B、前記中央領域内の明るさ及び前記周辺領域内の明るさに基づいて日射量を推算することを特徴とする日射量推定方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の日射量推定方法において、前記工程s1で、前記日射量算出領域内で明るさが所定値未満の部分を暗部として特定し、
前記工程s2で、前記暗部を前記日射量算出領域内の前記暗部以外の部分とは異なる扱いにして、前記日射量算出領域内の明るさを求めることを特徴とする日射量推定方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の日射量推定方法において、連続的あるいは間欠的に空を撮像した画像から将来の前記日射量算出領域内の雲の配置を予測して、該日射量算出領域を収めた将来の画像を導出し、該将来の画像から画像解析により将来の前記日射量算出領域内の明るさを求める工程s1’を前記工程s1の代わりに有し、
前記寄与度、及び、前記将来の前記日射量算出領域内の明るさに基づいて、将来の日射量を推算する工程s2’を前記工程s2の代わりに有することを特徴とする日射量推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、日射量の推定を行う日射量推定システム及び日射量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の普及を受けて、太陽光発電の発電量把握のため、日射量の推算が望まれている。従来、人工衛星から得られる画像やその他の情報を基に、日射量もしくは太陽光発電の発電量を算出するシステムが提案されており、その具体例が例えば特許文献1、2に開示されている。特許文献1、2には、地上から太陽を含む空を撮像した画像において太陽及び雲を特定し、太陽光発電の発電量を導出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-131384号公報
【特許文献2】特開2015-141438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の、人工衛星から得られる画像を用いる方法は、画像の解像度が低く、大気中の雲の状態を的確に把握できないため、特定位置の日射量を正確に算出することが難しいという課題がある。
また、特許文献1、2に開示されているシステムは、太陽光発電量の導出を、雲による太陽光の遮蔽率に基づいて行っており、従来では、雲が太陽光による日射を低下させる要因として扱われている例が多く見られる。
しかしながら、本願の発明者らの研究を進める中で、雲と太陽の位置関係によっては雲の存在が日射量を上昇させる要因になりうることが判明した。よって、雲が日射量を低減させる存在として一律に扱われると、日射量の正確な推算が難しくなるおそれがあることが分かった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、日射量を正確に推算できる日射量推定システム及び日射量推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者らは、日射量予測についての研究の中で、雲があるときの日射量が雲のない快晴のときの日射量を上回るデータを多数確認した。この点について詳細に分析を行ったところ、太陽光の反射により強く光る雲が太陽の周辺に存在する場合に、日射量が上昇することが判明した。これは、太陽からの直達日射に加え、太陽の周辺の雲に当たり散乱した太陽光による日射(以下、「太陽周辺の雲による散乱日射」という。)が地上に届くことによるものと考えられる。このような実験データに基づき日射量を推算する手法について鋭意検討を重ねた結果、太陽光による日射量に対しては、上記直達日射と太陽周辺の雲による散乱日射が支配的であり、太陽の周辺の、太陽光の反射により強く光る雲を含みうる領域をカメラでとらえ、その領域を撮像範囲として設定することにより、日射量の正確な推定が可能であることを見出した。
【0006】
第1の発明に係る日射量推定システムは、空を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像内に太陽及び太陽の周囲を含む日射量算出領域を設定し、前記日射量算出領域内の明るさを求める画像解析手段と、前記日射量算出領域内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する前記日射量算出領域内の明るさの寄与度を格納した記憶手段と、前記画像解析手段が求めた前記日射量算出領域内の明るさ、及び、前記寄与度に基づいて、日射量を推算する演算手段とを備えている。そして、第2の発明に係る日射量推算方法は、空を撮像した画像内に太陽及び太陽の周囲を含む日射量算出領域を設定し、画像解析により前記日射量算出領域内の明るさを求める工程s1と、前記日射量算出領域内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する前記日射量算出領域内の明るさの寄与度、及び、前記工程s1で求めた前記日射量算出領域内の明るさに基づいて、日射量を推算する工程s2とを有する。
当該日射量推定システム及び当該日射量推算方法では、上記で述べた、太陽の周辺の、太陽光の反射により強く光る雲を含みうる領域を、「日射量算出領域」として設定し、日射量算出領域の明るさと日射量の実測データとに基づく当該明るさの日射量に対する寄与度を用いて、日射量を推算することができる。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明に係る日射量推定システム及び第2の発明に係る日射量推算方法は、明るさを基に日射量を推算する際に、太陽及び太陽の周囲を含む日射量算出領域を設定することにより、日射量を増加させ得る雲の存在を加味して日射量を推算でき、明るさを基に正確な日射量の把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る日射量推定システムの説明図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ、撮像された画像における日射量算出領域の一例を示す説明図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ撮像手段で撮像した画像である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ撮像手段で撮像した画像である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ撮像手段で撮像した画像である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ撮像手段で撮像した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る日射量推定システム10は、空を撮像する撮像手段11と、撮像手段11によって撮像された画像内に太陽S及び太陽Sの周囲を含む日射量算出領域Mを設定し、日射量算出領域M内の明るさを求める画像解析手段12と、画像解析手段12が求めた日射量算出領域M内の明るさを基に日射量を推算する演算手段13とを備えて、日射量を推定するシステムである。以下、詳細に説明する。

【0010】
本実施の形態では、日射量推定システム10が、図1に示すように、カメラからなる撮像手段11と、撮像手段11に接続されたコンピュータからなる情報処理端末14を有している。
情報処理端末14はCPU、メモリ、ハードウエアデバイスを具備し、画像解析手段12及び演算手段13は主としてCPUとハードウエアに格納されたソフトウエアとによって構成されている。撮像手段11と情報処理端末14の接続はインターネットを介した接続でもよいし、ローカル接続であってもよい。

【0011】
撮像手段11は、日射量を推算する対象の位置に設置され、太陽Sを含む日射量算出領域Mが撮像できるように撮像方向、撮像範囲等が調整可能となっている。従って、Z地点の日射量を推算しようとする場合、撮像手段11はZ地点に設置される。本実施の形態において、撮像手段11は魚眼カメラであり、日射量算出領域Mは、撮像手段11が撮像した画像内において、太陽Sを中心とし、太陽S及び太陽Sの周辺を含む楕円形状の領域である。日射量算出領域Mについては後述に詳細に説明する。また、撮像手段11については、本実施の形態では魚眼カメラを用いているが、特に限定されず、太陽及びその周辺の雲の画像を取得できる程度に画角の広いレンズを有するカメラでもよい。

【0012】
画像解析手段12は、1)理科年表等による太陽の軌道、2)撮像手段11が設置されている緯度、経度及び高度等を基に、撮像手段11が撮像した画像内に日射量算出領域Mを設定し、次に、日射量算出領域Mに含まれる全ピクセルについてそれぞれの明るさを検出し、検出した各ピクセルの明るさを合計して日射量算出領域M内の明るさを求める。なお、本実施の形態において、明るさとは、明度又は輝度、もしくは、明度と輝度を合わせた概念である。

【0013】
また、日射量推定システム10は、主として情報処理端末14のハードウエアデバイスによって構成可能な記憶手段15を備えている。記憶手段15には、日射量に対する日射量算出領域M内の明るさの寄与度(以下、単に「寄与度」とも言う)が格納されている。寄与度は、日射量算出領域M内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出されたものであり、例えば、関数によって具現化でき、日射量算出領域M内の明るさの一の値に、日射量の一の値を対応させるものである。演算手段13は画像解析手段12が求めた日射量算出領域M内の明るさと予め導出された寄与度とに基づいて日射量を推算する。寄与度については後述に詳細に説明する。

【0014】
日射量算出領域Mは、図2(A)に示すように、撮像手段11が撮像した画像において、太陽Sを中心とし、太陽S及び太陽Sの周辺とを合わせた領域であり、当該領域は、太陽Sの周辺を含む範囲に設定することが肝要である。
本発明の発明者らが研究を進める中で、強い明るさの雲が太陽Sの周りに存在する際の日射量が、太陽Sの周りに雲が存在しない快晴等の場合に比べ大きくなる状況が多数見られた。この状況について、得られたその他のデータと共に詳細に分析すると、太陽光の反射により強く光る雲が太陽の周辺に存在する場合に、快晴時に比べ日射量が上昇することが判明した。

【0015】
これは、太陽からの直達日射に加え、太陽周辺の雲による散乱日射の影響と考えられ、更に鋭意検討を重ねた結果、太陽による日射量に対しては、当該直達日射と、当該太陽周辺の雲による散乱日射が支配的であることが分かった。
そこで、この結果を踏まえ、日射量の正確な推定を可能とするために、日射を明るさで捉えながら、上記直達日射と共に上記散乱日射の寄与を加味し、太陽を中心として、太陽の周辺の、太陽光の反射により強く光る雲の部分を含みうる範囲を上記の日射量算出領域Mとして設定した。

【0016】
日射量算出領域Mの大きさは、これまでの研究から、画像内における太陽Sの大きさの1.5~3倍程度が好適であるが、上記で述べたように、太陽の周辺の、太陽光の反射により強く光る雲の部分を含みうる範囲に設定されれば、この大きさに限定されないのは言うまでもない。この点について補足すると、日射量算出領域M、または後述する中央領域Cについては、例えば、当該領域の境界を定める、明るさの閾値を設けることによっても大きさを設定することが可能である。後述する閾値を含め、用いる閾値については、明度、輝度またはRGB等を適宜選択、または組み合わせることにより設定することができる。

【0017】
更に、日射量算出領域Mの大きさは、季節、時間帯、撮像手段11が設置されている位置等を考慮して適宜調整されるようにしてもよい。
また、本実施の形態では日射量算出領域Mが楕円形状であるがこれに限定されず、太陽の周辺の、太陽光の反射により強く光る雲の部分を含みうる形状であればよく、例えば、日射量算出領域Mは、真円形状であってもよいし、楕円形状又は真円形状に該当しない円状の形状であってもよい。

【0018】
日射量の推算にあたり、画像解析手段12は、図2(A)に示すように、日射量算出領域M全体を同じ扱いにして、日照量算出領域M内の明るさを求めてもよいし、図2(B)に示すように、日射量算出領域Mを太陽Sを含む中央領域Cと中央領域Cの周りの周辺領域Rとで区別し、中央領域C内の明るさと周辺領域R内の明るさを別々に求めるようにしてもよい。

【0019】
日射量算出領域Mを中央領域Cと周辺領域Rに区別して扱うのは、検証を重ねた結果、日射量算出領域Mを光の照射部及び光の反射部を具備する照明機器と捉え、中央領域Cを照射部、周辺領域Rに存在する雲を反射部としてそれぞれ扱うと、当該反射部による寄与、つまり、先の散乱日射の寄与を詳細に再現でき日射量の推算精度を向上させ得ることが判明したことによるものである。本実施の形態において、画像解析手段12が中央領域Cの明るさを求めるアルゴリズムと、画像解析手段12が周辺領域Rの明るさを求めるアルゴリズムは異なっている。
中央領域Cの大きさは、研究結果から、画像内の太陽Sの大きさの1.0~1.2倍程度を想定しているが、太陽Sを含みうる範囲に設定されればこれには限定されず、例えば、先に述べたように閾値を設けることによっても可能である。更に、中央領域Cの大きさは、季節や時間帯に応じて調整するようにしてもよい。

【0020】
寄与度の導出について説明する。
様々な天候、雲の状況において、既存の日射計による日射量の実測と日射量算出領域Mの撮像を同時に行い、日射量算出領域M内の明るさに対する日射量の実測データを取得、蓄積する。そして、これらの予め、取得したデータに対して近似計算等の統計的な処理を行い、当該明るさと日射量との関係を求め、上記寄与度として導出する。当該寄与度は記憶手段15に格納される。なお、近似計算としては、例えば、最小二乗法や、疑似逆行列等の一般的な近似法を用いることができる。

【0021】
日射量算出領域M全体を同じ扱いにする場合、即ち、日射量算出領域Mを中央領域Cと周辺領域Rに区別しない場合、寄与度は、日射量算出領域M内の明るさをx、日射量をyとして、y=F(x)の関数Fとして具現化できる。
関数Fを導出することによって、演算手段13は、画像解析手段12が求めた日射量算出領域M内の明るさを基に、関数Fを用いて日射量を推算することができる。

【0022】
一方、日射量算出領域Mを中央領域Cと周辺領域Rとで区別する場合、寄与度として、日射量に対する中央領域C内の明るさの寄与度Aと、日射量に対する周辺領域R内の明るさの寄与度Bとが予め導出され、記憶手段15には寄与度として寄与度A、Bが格納される。なお、寄与度A、Bは、日射量算出領域M全体を同じ扱いにする場合の寄与度の導出と同様の方法で導出される。即ち、既存の日射計による日射量の実測と同時に中央領域C及び周辺領域Rの撮像を行い、中央領域C及び周辺領域Rを撮像した画像から中央領域C内の明るさ及び周辺領域R内の明るさを求めるという一連の処理を多数行い、当該明るさに対する日射量の実測データを取得し、寄与度A、Bを導出する。

【0023】
本実施の形態では、中央領域C内の明るさをx1とし、周辺領域R内の明るさをx2とし、日射量をyとして、寄与度A、Bは、y=G(x1)+H(x2)の関数G、Hとしてそれぞれ具現化できる。
そして、画像解析手段12は、撮像手段11が撮像した画像内に、日射量算出領域Mを中央領域Cと周辺領域Rとで区別し、中央領域C内の各ピクセルの明るさを合算して中央領域C内の明るさを求め、周辺領域R内の各ピクセルの明るさを合算して周辺領域R内の明るさを求める。
次に、演算手段13は、画像解析手段12が求めた中央領域C内の明るさ及び周辺領域R内の明るさを基に、関数G、Hを用いて(中央領域C内の明るさ、周辺領域R内の明るさ及び寄与度A、Bに基づいて)日射量を推算する。

【0024】
なお、寄与度は、関数により具現化されるものに限定されず、日射量算出領域M内の明るさの一の値から日射量の一の値を導き出せるものであればよく、例えば、日射量算出領域M内の明るさの一の値を日射量の一の値に対応させる対応テーブルで具現化されるものであってもよい。また、寄与度は、日射量推定システム10外の情報処理端末を利用して導出してもよいし、情報処理端末14に寄与度導出用のソフトウエアを導入し、情報処理端末14によって寄与度を導出するようにしてもよい。

【0025】
これらの点は、日射量算出領域M内を中央領域Cと周辺領域Rとに区別する場合も区別しない場合も同様である。以下、日射量算出領域M内を中央領域Cと周辺領域Rとに区別するか否かを明記しない限り、日射量算出領域M内を中央領域Cと周辺領域Rとに区別する場合及び区別しない場合に共通した内容とする。

【0026】
ここで、日射量算出領域M内において、図2(A)、(B)に示すように、その存在によって日射量を低減させるもの(例えば、厚い雲)が存在する部分を暗部Dと定義すると、日射量算出領域M内で暗部Dに該当するピクセルは、他の部分のピクセルに比べて明るさの値が小さい。よって、日射量算出領域M内に暗部Dがある場合、日射量算出領域M内に暗部Dがない場合に比べて、日射量算出領域M内の明るさの値が小さくなる。

【0027】
従って、日射量の推算にあたり、日射量算出領域M内の暗部Dをそれ以外の部分と異なる扱いにして日射量算出領域M内の明るさを求めなくとも、結果として、演算手段13によって推算される日射量の値は小さくなる。
この点、画像解析手段12は、日射量算出領域M内で明るさが予め定めた所定値(例えば、明度200~253の範囲の一の値)未満の部分を暗部Dとして特定し、暗部Dを日射量算出領域M内の暗部D以外の部分とは異なる扱いにして、日射量算出領域M内の明るさを求めるようにしてもよい。

【0028】
暗部Dを暗部D以外の部分とは異なる扱いにするとは、具体的に、画像解析手段12が、日射量算出領域M内の暗部D以外の部分のみを対象に各ピクセルの明るさを合算して、日射量算出領域M内の明るさを求めること、あるいは、暗部Dの部分に該当するピクセルについては実際より明るさを低く扱って、日射量算出領域M内の明るさを求めること等を意味する。この処理によって、推定精度を確保しながら日射量算出領域M内の明るさの算出等の処理速度の向上を図ることができる。

【0029】
ここで、日射量算出領域Mを中央領域Cと周辺領域Rとで区別する場合、周辺領域R内において暗部Dとみなす明るさの閾値を、中央領域C内において暗部Dとみなす明るさの閾値と異なる値にすることができる。このようにすることで、中央領域Cでは直達日射を遮るもの(例えば、厚い雲)のみを暗部Dとして特定し、周辺領域Rでは所定以上の明るさを有する雲以外の部分(例えば、厚い雲や青空部分)を暗部Dとして特定することが可能となる。なお、図2(A)、(B)で、Lは雲であり、Tは周辺領域Rにおいて所定値(例えば、明度200~253の範囲の一の値)を超えた明るさを有する雲の部分、Sは太陽の部分(例えば、明度253以上)である。

【0030】
また、情報処理端末14は、図1に示すように、将来の日射量算出領域M内の雲の配置を予測する予測手段16を備えている。予測手段16は、主としてCPUとハードウエアに格納されたソフトウエアとによって構成され、撮像手段11によって連続的あるいは間欠的に撮像された画像から太陽に対する雲の相対的な移動を解析して、将来の日射量算出領域M内の雲の配置を予測し、日射量算出領域Mを収めた将来の画像を導出する。画像解析手段12は、予測手段16が導出した将来の画像から将来の日射量算出領域M内の明るさを求め、演算手段13は、画像解析手段12が求めた将来の日射量算出領域M内の明るさ及び記憶手段に格納されている寄与度に基づいて将来の日射量を推算する。

【0031】
ここで、日射量推定システム10を用いた、本発明の一実施の形態に係る日射量推定方法は、空を撮像した画像内に日射量算出領域Mを設定し、画像解析手段12による画像解析により日射量算出領域M内の明るさを求める工程s1と、日射量算出領域M内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する日射量算出領域M内の明るさの寄与度、及び、工程s1で求めた日射量算出領域M内の明るさに基づいて、日射量を推算する工程s2とを有する。

【0032】
そして、当該日射量推定方法においては、日射量の推算精度向上のため、工程s1で、日射量算出領域Mを、太陽Sを含む中央領域Cと中央領域Cの周りの周辺領域Rとに区分し、中央領域C内の明るさ及び周辺領域R内の明るさを求め、工程s2で、寄与度A、B、中央領域C内の明るさ及び周辺領域R内の明るさに基づいて日射量を推算するのが好ましい。

【0033】
更に、推定精度を確保しつつ日射量算出領域M内の明るさの算出等の処理速度の向上を図るには、工程s1で、日射量算出領域M内で明るさが所定値未満の部分を暗部Dとして特定し、工程s2で、暗部Dを日射量算出領域M内の暗部D以外の部分とは異なる扱いにして、日射量算出領域M内の明るさを求めるのが好適である。

【0034】
また、連続的あるいは間欠的に空を撮像した画像から将来の日射量算出領域M内の雲の配置を予測して、日射量算出領域Mを収めた将来の画像を導出し、導出した将来の画像から画像解析により将来の日射量算出領域M内の明るさを求める工程s1’を工程s1の代わりに有し、日射量算出領域内の明るさと日射量の実測値との関係から予め導出された、日射量に対する日射量算出領域内の明るさの寄与度、及び、工程s1’で求めた将来の日射量算出領域内の明るさに基づいて、将来の日射量を推算する工程s2’を工程s2の代わりに有することで、将来の日射量の推算が可能となる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。実験では魚眼レンズを有するカメラを撮像手段として採用した日射量推定システムを用いた。当該日射量推定システムは、日射量算出領域を中央領域と周辺領域に区別し、中央領域及び周辺領域のそれぞれで異なる明度の閾値によって暗部を特定して、中央領域及び周辺領域について暗部以外の部分のみを対象に明るさを求め、日射量を推算した。
【実施例】
【0036】
2017年2月3日(以下、単に「2月3日」と言う)及び2017年2月6日(以下、単に「2月6日」と言う)の各日において、11時5分、11時6分、11時10分、11時15分、12時5分、12時6分、12時8分、12時24分それぞれにカメラで撮像した画像を基に日射量推定システムが推算した日射量、並びに、同時刻に従来の日射計で計測した日射量を表1に記す。
【実施例】
【0037】
【表1】
JP2019086325A_000003t.gif
【実施例】
【0038】
2月3日の11時5分、11時6分、11時10分、11時15分、12時5分、12時6分、12時8分、12時24分は、快晴であり中央領域及び周辺領域に雲が存在していなかった。これに対し、2月6日に撮像された画像には、図3(A)、(B)、図4(A)、(B)、図5(A)、(B)、図6(A)、(B)に示すように、1)全ての時刻で周辺領域に所定以上の明るさの雲、即ち、日射量を増加させると考えられる雲が存在し、2)全ての時刻で中央領域及び周辺領域の少なくとも一方に暗雲が存在し、このうち、11時15分は中央領域の一部に暗雲、12時6分、12時24分で中央領域及び周辺領域の一部に暗雲が存在していた。
【実施例】
【0039】
そして、3)2月6日の11時15分及び12時24分に撮像された画像での上記暗雲は所定未満の明るさの暗部となるものであり、同日の11時5分、11時6分、11時10分、12時5分、12時6分、12時8分に撮像された画像には、中央領域、周辺領域の両方、またはいずれか一方に暗雲が存在するが、当該暗雲は明るさが所定以上であり暗部とならないものであった。
なお、図3(A)、(B)、図4(A)、(B)、図5(A)、(B)、図6(A)、(B)に示す各画像において、破線は中央領域の外縁を示し、実線は周辺領域の外縁を示す。
【実施例】
【0040】
実験結果より、以下の結果が得られた。
1)2月6日の11時6分、11時10分、12時5分及び12時8分の、周辺領域に所定以上の明るさの雲が存在する日射量の計測値(日射計による計測値)と、快晴時の2月3日の同時刻での値とを比較すると、2月6日の日射量の計測値の方が大きいことが分かる。2月6日の画像では、太陽を薄く覆う雲が存在するものの、本結果から、周辺領域に所定以上の明るさの雲の存在が日射量の増加に寄与していることが確認できる。
2)上記の、周辺領域に所定以上の明るさの雲が存在する場合において、上記計測値と推算値を比較すると、わずかに差の大きいものが見られるものの、全体としては同程度の値を示し、日射量の推定精度を有していることを確認した。
【実施例】
【0041】
3)暗雲の影響について、2月6日の日射量の計測値の、11時15分の値及び12時24分の値と他の時刻の値とを比較すると、11時15分の値及び12時24分の値が大幅に小さいことが分かる。
これは、同日の11時15分の中央領域内の一部、及び12時24分の中央領域及び周辺領域内のそれぞれの一部に所定未満の明るさの暗部となる暗雲が存在するのに対し、同日の他の時刻の中央領域内または周辺領域内には、暗部となる暗雲が存在しない、あるいは、暗雲が存在するものの、その明るさが所定以上の大きさであることによると考えられる。これに対して、2月6日の日射量推定システムによる日射量の推算値についても、上記計測値と同様に、11時15分の値及び12時24分の値が他の時刻の値に比べ大幅に小さくなり、暗雲の影響についても推定可能であることを確認した。
【実施例】
【0042】
また、計測値に対する当該推算値の大きさについて、日射量の推定値は解析上暗部の存在により小さくなり、これに伴って計測値に比べ低くなることも予測される。しかしながら、その値は、計測値より大きいことから、中央領域及び周辺領域内の、暗部以外の明雲による明部の寄与も的確に加味されて解析されていることが分かり、わずかに差異は見られるものの、良好な推定精度を有しているといえる。
【実施例】
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、1つの情報処理端末に複数の撮像手段を接続し、1つの情報処理端末で各撮像手段の設置場所の日射量を推算するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10:日射量推定システム、11:撮像手段、12:画像解析手段、13:演算手段、14:情報処理端末、15:記憶手段、16:予測手段、C:中央領域、D:暗部、L:雲、M:日射量算出領域、R:周辺領域、S:太陽、T:明るく光る雲の部分
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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