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明細書 :二層ショートスロット結合器、バトラーマトリクス給電回路およびフェイズドアレーアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6562497号 (P6562497)
公開番号 特開2016-144113 (P2016-144113A)
登録日 令和元年8月2日(2019.8.2)
発行日 令和元年8月21日(2019.8.21)
公開日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明の名称または考案の名称 二層ショートスロット結合器、バトラーマトリクス給電回路およびフェイズドアレーアンテナ
国際特許分類 H01P   5/16        (2006.01)
H01Q   3/26        (2006.01)
FI H01P 5/16 C
H01P 5/16 D
H01Q 3/26 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 24
出願番号 特願2015-019984 (P2015-019984)
出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
審査請求日 平成29年12月12日(2017.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】廣川 二郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 米国特許第02585173(US,A)
特開昭55-061101(JP,A)
米国特許第02129669(US,A)
調査した分野 H01P 1/00-11/00
H01Q 1/00-25/04
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置され且つTE10モードの信号だけが伝搬する入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、前記入力部からTE10モードの信号が入力された場合にTE10対応モード、TE01対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、TM21対応モード、TE21対応モード、及びTE30対応モードの電磁界を発生させる結合部とを有し、
前記結合部の断面形状は、
TE10モードとTE01対応モードとが結合しない、第1条件と、
TE21対応モードとTE30対応モードを減衰させる、第2条件と、
TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モードの位相定数は同じである、第3条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM21対応モードの位相定数をそれぞれβ10,β20,β21としたとき、β10,β20,β21が下記の式を満たす、第4条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、及びTM21対応モードのそれぞれのTE10モードとの結合量が等しい、第5条件と、
を満たし、且つ、
前記結合部は、前記入力信号が第1入力口に入力された場合、前記4つの出力口から前記入力信号の電力が均等に分配され且つ互いの位相が異なる出力信号を出力させる、又は、前記第1入力口と対向する位置に存在する第1出力口と対角で隣接する第2出力口から信号を出力させ且つ前記第2出力口以外の出力口から信号を出力させない、
二層ショートスロット結合器。
【数1】
JP0006562497B2_000009t.gif

【請求項2】
前記断面形状は、矩形の四隅を矩形に切り欠いた切欠き部と、上辺と下辺との中央部が中心に向かって矩形に凹んだ凹部を有する、
請求項1に記載の二層ショートスロット結合器。
【請求項3】
前記結合部は、
前記結合部が第1の長さを有する場合、前記4つの出力口から前記入力信号の電力が均等に分配され且つ互いの位相が異なる出力信号を出力させ、
前記結合部が前記第1の長さの2倍である第2の長さを有する場合、前記第1入力口と対向する第1出力口と対角で隣接する第2出力口から信号を出力させ且つ前記第2出力口以外の出力口から信号を出力させない、
請求項2に記載の二層ショートスロット結合器。
【請求項4】
前記結合部は、前記結合部が第1の長さを有する場合に、前記第1出力口から出力される第1出力信号に対して、前記第1出力口の水平方向に隣接する第3出力口および前記第1出力口の垂直方向に隣接する第4出力口からそれぞれ出力される第2および第3出力信号は、位相が90度遅れて出力され、
前記第2出力口から出力される第4出力信号は、位相が180度遅れて出力されるよう形成されている、
請求項3に記載の二層ショートスロット結合器。
【請求項5】
入力信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、入力信号を交差する回路に出力する交差部と、入力信号に位相差を与えて出力する位相器部とからなるバトラーマトリクス給電回路であって、
前記ハイブリッド結合部に配設された第1二層ショートスロット結合器と、
前記交差部に配設された第2二層ショートスロット結合器と、
を有し、
前記第1二層ショートスロット結合器及び前記第2二層ショートスロット結合器のそれぞれは、
入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置され且つTE10モードの信号だけが伝搬する入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、前記入力部からTE10モードの信号が入力された場合にTE10対応モード、TE01対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、TM21対応モード、TE21対応モード、及びTE30対応モードの電磁界を発生させる結合部とを有し、
前記結合部の断面形状は、
TE10モードとTE01対応モードとが結合しない、第1条件と、
TE21対応モードとTE30対応モードを減衰させる、第2条件と、
TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モードの位相定数は同じである、第3条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM21対応モードの位相定数をそれぞれβ10,β20,β21としたとき、β10,β20,β21が下記の式を満たす、第4条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、及びTM21対応モードのそれぞれのTE10モードとの結合量が等しい、第5条件と、
を満たし、
前記第1二層ショートスロット結合器の前記結合部は、前記入力信号が第1入力口に入力された場合、前記4つの出力口から前記入力信号の電力が均等に分配され且つ互いの位相が異なる出力信号を出力させ、
前記第2二層ショートスロット結合器の前記結合部は、前記入力信号が第1入力口に入力された場合、前記第1入力口と対向する位置に存在する第1出力口と対角で隣接する第2出力口から信号を出力させ且つ前記第2出力口以外の出力口から信号を出力させない、
二次元ビーム切替のためのバトラーマトリクス給電回路。
【数2】
JP0006562497B2_000010t.gif

【請求項6】
前記断面形状は、矩形状の四隅が矩形に凹んだ切欠き部と、上辺と下辺との中央部が中心に向かって矩形に凹んだ凹部を有する、
請求項5に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項7】
前記第2二層ショートスロット結合器の前記結合部の長さは、前記第1二層ショートスロット結合器の前記結合部の長さの2倍である、
請求項6に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項8】
前記第1二層ショートスロット結合器の前記結合部は、前記第1出力口から出力される第1出力信号に対して、前記第1出力口の水平方向に隣接する第3出力口および前記第1出力口の垂直方向に隣接する第4出力口からそれぞれ出力される第2および第3出力信号は、位相が90度遅れて出力され、
前記第2出力口から出力される第4出力信号は、位相が180度遅れて出力されるよう形成されている、
請求項7に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項9】
前記ハイブリッド結合部には、断面に1層給電回路がマトリクス状に4×4層分配置される配置位置に対して、前記第1二層ショートスロット結合器が前記配置位置の下段から第1層および第2層の位置に2つ並置され、下段から第3層と第4層の位置に2つ並置され、
前記交差部には、前記第2二層ショートスロット結合器が前記第2層と前記第3層との中央位置に1つ配置されている、
請求項8に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項10】
前記交差部には、さらに、前記第2二層ショートスロット結合器の上下の前記第1層および前記第4層に一層交差器が横置きにそれぞれ配置され、前記第2二層ショートスロット結合器の左右の前記第2層および前記第3層に前記一層交差器が縦置きにそれぞれ配置されている、
請求項9に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項11】
前記位相器部は、前記第1層および前記第4層の両側に一層-90度位相器が配置され、前記一層-90度位相器の間に一層-45度位相器が2つ並置され、前記第2層と前記第3層の両側に一層-45度位相器がそれぞれ縦方向に2つ積層されている、
請求項10に記載のバトラーマトリクス給電回路。
【請求項12】
入力信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、入力信号を交差する回路に出力する交差部と、入力信号に位相差を与えて出力する位相器部とからなるバトラーマトリクス給電回路を有するフェイズドアレーアンテナであって、
前記バトラーマトリクス給電回路に接続された複数のアンテナ素子と、
を有し、
前記バトラーマトリクス給電回路は、
前記ハイブリッド結合部に配設された第1二層ショートスロット結合器と、
前記交差部に配設された第2二層ショートスロット結合器と、
を有し、
前記第1二層ショートスロット結合器及び前記第2二層ショートスロット結合器のそれぞれは、
入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置され且つTE10モードの信号だけが伝搬する入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、前記入力部からTE10モードの信号が入力された場合にTE10対応モード、TE01対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、TM21対応モード、TE21対応モード、及びTE30対応モードの電磁界を発生させる結合部とを有し、
前記結合部の断面形状は、
TE10モードとTE01対応モードとが結合しない、第1条件と、
TE21対応モードとTE30対応モードを減衰させる、第2条件と、
TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モードの位相定数は同じである、第3条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM21対応モードの位相定数をそれぞれβ10,β20,β21としたとき、β10,β20,β21が下記の式を満たす、第4条件と、
TE10対応モード、TE20対応モード、TM11対応モード、TE11対応モード、及びTM21対応モードのそれぞれのTE10モードとの結合量が等しい、第5条件と、
を満たし、
前記第1二層ショートスロット結合器の前記結合部は、前記入力信号が第1入力口に入力された場合、前記4つの出力口から前記入力信号の電力が均等に分配され且つ互いの位相が異なる出力信号を出力させ、
前記第2二層ショートスロット結合器の前記結合部は、前記入力信号が第1入力口に入力された場合、前記第1入力口と対向する位置に存在する第1出力口と対角で隣接する第2出力口から信号を出力させ且つ前記第2出力口以外の出力口から信号を出力させない、
二次元ビーム切替のためのフェイズドアレーアンテナ。
【数3】
JP0006562497B2_000011t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元ビーム切替のための二層ショートスロット結合器、それを用いた二次元ビーム切替のためのバトラーマトリクス給電回路およびそれを用いたフェイズドアレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フェイズドアレーアンテナは、複数の給電点となる入力ポートと、入力される信号の入力ポートの位置に対応してビーム方向を変化させるためのマトリクス回路と、マトリクス回路の出力ポートに接続されマトリクス状に配置された複数のアンテナ素子とを有している。これは、給電点切替型のフェイズドアレーアンテナと呼ばれている。ビーム方向を変化させるためのマトリクス回路として、ハイブリッド回路を4つ用いてビーム方向を1次元の4方向に切り替えるバトラーマトリクス給電回路が知られている。
【0003】
入力ポートから給電回路に入力された信号は、バトラーマトリクス給電回路の中で等配分され、複数の出力ポート毎に異なる位相差が与えられて出力される。バトラーマトリクス給電回路によると、信号を入力する入力ポートの位置によって、出力ポートで出力される位相の傾きが異なるため、入力ポートの位置に対応して出力されるビーム方向が変化する。
【0004】
バトラーマトリクス給電回路において、複数の入力ポートのどの入力ポートから電力を入力しても、出力ポートには電力が均等に分配されて出力される。出力ポートから出力される位相の傾きは入力ポートの位置によって異なるため、入力ポートの位置によって複数の出力ポートに出力される電波は、異なる位相差によって傾きを有している。バトラーマトリクス給電回路をアンテナに応用すると、入力ポートによってビーム方向を切り替えることが可能となる。
【0005】
図19に示されるように、1次元方向の切替をするためのバトラーマトリクスを用いた1層4分配回路90は、1層のハイブリッド結合器91と、1層の交差結合器92と、1層の-45度位相器93とを有している。入力側に設けられた4つの入力ポート94のいずれかに信号Qを入力すると、出力側に設けられた出力ポート95のそれぞれから電力が等分配された信号Q1~Q4が位相差を与えられて出力される。出力される信号Q1~Q4の位相の傾きは、入力ポート94の位置によって異なる。この位相差を利用して、出力側から出力されるビームを1次元方向に切替することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J.Butler and R. Lowe, “Beam-forming matrix simplifies design of electronically scanned antennas,” Electronic Design, vol.9, no.8, pp.170-173, April 1961.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図20に示されるように、1次元方向の切替のための1層4分配回路90を用いて2次元方向の切替をするためには、垂直切替用にバトラーマトリクスを用いた1層4分配回路90を縦置きに配置する。4×4分配で垂直切替をするためには、縦置きの1層4分配回路90を左右に4枚並べられた垂直4×4分配回路98を設ける。そして、図21に示されるように、水平切替用にバトラーマトリクスを用いた1層4分配回路89を横置きに配置する。4×4分配で水平切替をするためには、横置きの1層4分配回路89を上下に4枚並べられた水平4×4分配回路99を設ける。従って、図20および図21に示されるように、2次元方向の切替をするためには、バトラーマトリクスを用いた垂直4×4分配回路98と、水平4×4分配回路99とを別体で設けて縦続接続する必要があり、装置構成が複雑化する。
本発明は、2次元方向の切替をするための装置構成を簡略化することができる、二層ショートスロット結合器、バトラーマトリクス給電回路およびフェイズドアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる二層ショートスロット結合器は、入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置された入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、多モードの電磁界を発生させる断面形状を有する結合部とを有し、
前記結合部は、前記入力口のいずれかより入力された入力信号に対して前記出力部からの信号の出力形態を二次元的に変化させる。
【0009】
また、前記断面形状は、矩形の四隅を矩形に切り欠いた切欠き部と、上辺と下辺との中央部が中心に向かって矩形に凹んだ凹部を有する。
【0010】
また、前記結合部は、バトラーマトリクス給電回路が有する交差部に配置された場合に、前記バトラーマトリクス給電回路が有するハイブリッド結合部に配置された前記結合部の全長の2倍の全長になるように形成される。
【0011】
また、前記結合部は、前記ハイブリッド結合部に配置された場合に、前記入力口のいずれかより入力された信号が、4つの前記出力口から電力が均等に配分されて出力され、
前記入力口に対向する位置にある対向出力口から出力される第1出力信号に対して、前記対向出力口の水平方向に隣接する水平隣接出力口および前記対向出力口の垂直方向に隣接する垂直隣接出力口からそれぞれ出力される第2および第3出力信号は、位相が90度遅れて出力され、
前記対向出力口の対角線上に位置する対角隣接出力口から出力される第4出力信号は、位相が180度遅れて出力されるよう形成されている。
【0012】
また、前記結合部は、前記交差部に配置された場合に、前記入力口のいずれかより入力された信号が、前記入力口に対向する位置にある対向出力口の対角線上に位置する対角隣接出力口から出力信号として全て出力されるよう形成されている。
【0013】
本発明にかかる二次元ビーム切替のためのバトラーマトリクス給電回路は、入力信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、入力信号を交差する回路に出力する交差部と、入力信号に位相差を与えて出力する位相器部とからなるバトラーマトリクス給電回路であって、
入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置された入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、多モードの電磁界を発生させる断面形状を有する結合部とを有し、
前記結合部は、前記入力口のいずれかより入力された入力信号に対して前記出力部からの信号の出力形態を二次元的に変化させる二層ショートスロット結合器を有し、
前記二層ショートスロット結合器は、前記ハイブリッド結合部と前記交差部とにそれぞれ配置され、
前記ショートスロット結合器より出力された出力信号により前記出力部から出力されるビーム方向を二次元的に変化させる。
【0014】
また、前記断面形状は、矩形状の四隅が矩形に凹んだ切欠き部と、上辺と下辺との中央部が中心に向かって矩形に凹んだ凹部を有する。
【0015】
また、前記交差部に配置された前記二層ショートスロット結合器は、前記ハイブリッド結合部に配置された前記二層ショートスロット結合器の前記結合部の全長の2倍の全長を有する前記結合部を有する。
【0016】
また、前記二層ショートスロット結合器は、前記ハイブリッド結合部に配置された場合に、前記入力口のいずれかより入力された信号が、4つの前記出力口から電力が均等に配分されて出力され、
前記入力口に対向する位置にある対向出力口から出力される第1出力信号に対して、前記対向出力口の水平方向に隣接する水平隣接出力口および前記対向出力口の垂直方向に隣接する垂直隣接出力口からそれぞれ出力される第2および第3出力信号は、位相が90度遅れて出力され、
前記対向出力口の対角線上に位置する対角隣接出力口から出力される第4出力信号は、位相が180度遅れて出力されるよう形成されている。
【0017】
また、前記二層ショートスロット結合器は、前記交差部に配置された場合に、前記入力口のいずれかより入力された信号が、前記入力口に対向する位置にある対向出力口の対角線上に位置する対角隣接出力口から出力信号として全て出力されるよう形成されている。
【0018】
また、前記ハイブリッド結合部には、断面に1層給電回路がマトリクス状に4×4層分配置される配置位置に対して、前記二層ショートスロット結合器が前記配置位置の下段から第1層および第2層の位置に2つ並置され、下段から第3層と第4層の位置に2つ並置され、
前記交差部には、前記二層ショートスロット結合器が前記第2層と前記第3層との中央位置に1つ配置されている。
【0019】
また、前記交差部には、さらに、前記二層ショートスロット結合器の上下の前記第1層および前記第4層に一層交差器が横置きにそれぞれ配置され、前記二層ショートスロット結合器の左右の前記第2層および前記第3層に前記一層交差器が縦置きにそれぞれ配置されている。
【0020】
また、前記位相器部は、前記第1層および前記第4層の両側に一層-90度位相器が配置され、前記一層-90度位相器の間に一層-45度位相器が2つ並置され、前記第2層と前記第3層の両側に一層-45度位相器がそれぞれ縦方向に2つ積層されている。
【0021】
本発明にかかる二次元ビーム切替のためのフェイズドアレーアンテナは、入力信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、入力信号を交差する回路に出力する交差部と、入力信号に位相差を与えて出力する位相器部とからなるバトラーマトリクス給電回路を有するフェイズドアレーアンテナであって、
入力信号を入力する4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置された入力部と、
入力信号を出力する4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置された出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に配置され、多モードの電磁界を発生させる断面形状を有する結合部とを有し、
前記結合部は、前記入力口のいずれかより入力された入力信号に対して前記出力部からの信号の出力形態を二次元的に変化させる二層ショートスロット結合器と、
前記二層ショートスロット結合器が、前記ハイブリッド結合部と前記交差部とにそれぞれ配置されたバトラーマトリクス給電回路と、
前記出力部に接続された複数のアンテナ素子とを有し、
前記入力口のいずれかより入力された信号に対して複数の前記アンテナ素子より出力される出力信号のビームの方向を二次元的に変化させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる二層ショートスロット結合器、バトラーマトリクス給電回路およびフェイズドアレーアンテナによると、2次元方向の切替をするバトラーマトリクス給電回路の装置構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】二層ショートスロット結合器を示した斜視図である。
【図2】二層ショートスロット結合器を図1と異なる方向から示した斜視図である。
【図3】二層ショートスロット結合器の結合部の断面図である。
【図4】多モード方形導波管のモードの断面電界分布を示した図である。
【図5】多モード方形導波管のモードの断面電界分布の対称性を示した図である。
【図6】ハイブリッド結合器として設計された二層ショートスロット結合器に給電した場合の計算結果を示したグラフである。
【図7】ハイブリッド結合器として設計された二層ショートスロット結合器に給電した場合の計算結果を示したグラフである。
【図8】交差器として設計された二層ショートスロット結合器に給電した場合の計算結果を示したグラフである。
【図9】4×4バトラーマトリクス給電回路の構成の配置関係を断面で示した図である。
【図10】4×4バトラーマトリクス給電回路の構成を示したブロック図である。
【図11】ハイブリッド結合部の図10におけるB断面の配置関係を示した図である。
【図12】交差部の図10におけるC断面の配置関係を示した図である。
【図13】位相器部の図10におけるD断面の配置関係を示した図である。
【図14】8×8バトラーマトリクス給電回路の構成の配置関係を断面で示した図である。
【図15】8×8バトラーマトリクス給電回路の構成を示したブロック図である。
【図16】8×8バトラーマトリクス給電回路の構成を示したブロック図である。
【図17】8×8バトラーマトリクス給電回路の構成を示したブロック図である。
【図18】8×8バトラーマトリクス給電回路の構成を示したブロック図である。
【図19】1次元方向の切替をするためのバトラーマトリクスを示したブロック図である。
【図20】垂直切替用4×4分配回路の配置関係を断面で示した図である。
【図21】水平切替用4×4分配回路の配置関係を断面で示した図である。
【図22】H面結合器を示した斜視図である。
【図23】E面結合器を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。

【0025】
[実施の形態1]
図22および図23に示されるように、既知のショートスロット結合器には、H面結合器70とE面結合器80とがある。H面結合器70とE面結合器80とは、原理が基本的に同じなので、H面結合器70について基本的な構造と動作を説明する。H面結合器70は、金属製の矩形管79からなる。H面結合器70は、電力を給電するための入出力部70A,70Bと、入出力部70A,70Bの間に配置された結合部70Cとを有する。入出力部70Aには、矩形管79の一端79aの開口部の中心に起立した仕切り板75によって形成された、開口が矩形の第1ポート71,第2ポート72が並置されている。入出力部70Bには、矩形管79の他端79bの開口部の中心に起立した仕切り板76によって形成された、開口が矩形の第3ポート73,第4ポート74が並置されている。

【0026】
結合部70Cは、仕切り板75と仕切り板76との間の距離lの全長を有する。この全長の長さlを変えることにより、H面分配結合器70は、バトラーマトリクスにおけるハイブリッド結合器91、あるいは交差結合器92となる(図19参照)。ハイブリッド結合器91は、入力された電力に対して、入力口に対抗する位置にある対向出力口の出力に対して,対向出力口に隣接する隣接出力口の出力位相を90度遅らせて、接続された2つの導波路96に均等に配分して出力する(これをハイブリッド結合と呼ぶ)。例えば、第1ポート71に入力された電力は、第3ポート73および第4ポート74から均等に配分されるとともに、位相は第3ポート73に対して第4ポート74は90度遅れて出力される。

【0027】
交差結合器92は、入力された電力が,その入力口に対向する対向出力口に隣接する隣接出力口へすべて出力する(これを交差結合と呼ぶ)。例えば、第1ポート71に入力された電力は、すべて第4ポート74から出力される。

【0028】
入出力部70A,70Bは、TE10モードだけが伝搬する矩形導波管である。結合部70Cでは、電磁界モード(以下、モードと呼ぶ)のうち、TE10モードとTE20モードだけが伝搬している。結合部のTE10モードとTE20モードの位相定数をそれぞれβ10,β20,結合部の長さをlとすると、
【数1】
JP0006562497B2_000002t.gif
【数2】
JP0006562497B2_000003t.gif
で与えられる。
【数3】
JP0006562497B2_000004t.gif
のとき(一層)ハイブリッド結合器91となり、
【数4】
JP0006562497B2_000005t.gif
のとき(一層)交差結合器92となる。

【0029】
以下、本発明にかかる二層ショートスロット結合器10について説明する。

【0030】
図1および図2には、二次元方向の走査をするためのバトラーマトリクスを用いた後述するバトラーマトリクス給電回路50に適用される二層ショートスロット結合器10が示されている。二層ショートスロット結合器10は、入力信号を入力する入力部10Aおよび信号を出力する出力部10Bと、入力部10Aおよび出力部10Bの間に配置された結合部10Cとを有する金属製の結合器である。

【0031】
入力部10Aには、入力信号を入力する開口が矩形の第1ポート11と、第2ポート12と、第3ポート13と、第4ポート14との4つの入力口がマトリクス状に2×2層に配置されている。第1ポート11と、第2ポート12と、第3ポート13と、第4ポート14とは、矩形管20の開口を十字状の仕切り板20aで仕切ることにより形成されている。

【0032】
出力部10Bは、入力信号を出力する開口が矩形の第5ポート15と、第6ポート16と、第7ポート17と、第8ポート18との4つの出力口がマトリクス状に2×2層に配置されている。第5ポート15と、第6ポート16と、第7ポート17と、第8ポート18とは、第1ポート11と、第2ポート12と、第3ポート13と、第4ポート14とにそれぞれ対向している。第5ポート15と、第6ポート16と、第7ポート17と、第8ポート18とは、矩形管21の開口を十字状の仕切り板21aで仕切ることにより形成されている。入力部10Aおよび出力部10Bは、TE10モード(基本モード)だけが伝搬する矩形導波管である。

【0033】
第1ポート11に対向する位置にある第5ポート15は、対向出力口と呼ぶ。第5ポート15の水平方向に隣接する第6ポート16は、水平隣接出力口と呼ぶ。第5ポート15垂直方向に隣接する第7ポート17は、垂直隣接出力口と呼ぶ。第5ポート15の対角線上に位置する第8ポート18は、対角隣接出力口と呼ぶ。この出力口の呼び方は、他の入力口と出力口との関係においても適用される。

【0034】
図3に示されるように、結合部10Cは、入力部10Aおよび出力部10Bの間に配置され、開口が入力口および出力口の2×2層分の断面形状Pを有する。結合部10Cの断面形状Pは,水平方向、垂直方向に2軸対称性を有する。結合部10Cは多モードの電磁界が伝搬する多モード方形導波管の断面を変形している。断面形状Pは、矩形の四隅を矩形に切り欠いたように形成された4つの切欠き部25を有する。切欠き部25により第1の凸部26が両側に形成されている。第1の凸部26は、入力部10Aおよび出力部10Bの断面の両辺から突出するように形成されている(図1および図2参照)。

【0035】
さらに、断面形状Pは、上辺と下辺との中央部が中心に向かって矩形に凹んだ2つの凹部27を有する。凹部27により、第2の凸部28が上下に2つずつ形成されている。第2の凸部28は、入力部10Aおよび出力部10Bの断面の上辺および下辺から突出するように形成されている図1および図2参照)。結合部10Cで考慮すべき電磁界のモードは、多モード方形導波管で発生する電磁界のモードにそれぞれ対応する。このモードは、TE10,TE01,TE20,TM11,TE11,TM21,TE21,TE30の8つのモードである。

【0036】
図4および図5には、多モード方形導波管のモードの断面電界分布とその対称性がそれぞれ示されている。結合部10Cの断面形状Pは、以下の5つの条件を満足するように形状が決定される。

【0037】
(1)結合部10CのTE01対応モードと入出力部の基本モードは結合しない。
(2)結合部10CのTE21対応モードとTE30対応モードは減衰させる。
(3)結合部10CのTE20対応モード,TM11対応モード,TE11対応モードの位相定数は同じにする。このとき,TM11対応モードとTE11対応モードは一体として扱えるので,今後TM(TE)11対応モードと呼ぶ。
(4)結合部10CのTE10対応モード,TE20対応モード,TM21対応モードの位相定数をそれぞれβ10,β20,β21とした時、
【数5】
JP0006562497B2_000006t.gif
を満足する。
(5)結合部10Cの4つのモード(TE10対応モード,TE20対応モード,TM(TE)11対応モード,TM21モード)はそれぞれ,入出力部の基本モードと同じ結合量とする。

【0038】
断面形状Pの四隅に形成された切欠き部25(図3参照)は、主にTE21対応モードを減衰させる(抑圧する)ためのものである。断面形状Pの上下に形成された凹部27(図3参照)は、主にTM11対応モードとTE11対応モードの位相定数を合わせるためのものである。

【0039】
結合部10Cの管軸線L方向の全長l(図3参照)は、後述するバトラーマトリクス給電回路50におけるハイブリッド結合部51に配置された場合は(図10参照)、
【数6】
JP0006562497B2_000007t.gif
を満足するように形成される。

【0040】
結合部10Cを有する二層ショートスロット結合器10がバトラーマトリクスのハイブリッド結合器として機能する場合、例えば、入力部10Aの第1ポート11から信号が入力された場合には、第1ポート11~第4ポート14へ出力信号は出力されない(図1および図2参照)。そして、出力信号の散乱行列の振幅は出力部10Bの各出力口(第5ポート15~第8ポート18)へは等振幅で出力される(電力が均等に分配されて出力される)。

【0041】
第1ポート11(入力口)に対向する位置にある第5ポート15(対向出力口)から出力される第1出力信号に対して、第5ポート15(対向出力口)の水平方向に隣接する第6ポート16(水平隣接出力口)および第5ポート15(対向出力口)の垂直方向に隣接する第7ポート17(垂直隣接出力口)からそれぞれ出力される第2出力信号および第3出力信号は、位相が90度遅れて出力される。

【0042】
第5ポート15(対向出力口)の対角線上に位置する第8ポート18(対角隣接出力口)から出力される第4出力信号は、第1出力信号に対して位相が180度遅れて出力される。このように、二層ショートスロット結合器10は、ハイブリッド結合器として機能する場合、入力された信号に位相差を与え、二次元的に分配して出力する。即ち、入力部10Aの各入力口(第1ポート11~第4ポート14)のいずれかより信号が入力された場合は、上記と同様の動作が実現される。

【0043】
一方、結合部10Cの全長l(図3参照)は、後述するバトラーマトリクス給電回路50における交差部53に配置された場合は(図10参照)、
【数7】
JP0006562497B2_000008t.gif
を満足するように形成される。即ち、結合部10Cは、バトラーマトリクス給電回路50が有する交差部53に配置された場合に、ハイブリッド結合部51(図10参照)に配置された結合部10Cの全長の2倍の全長になるように形成される。

【0044】
結合部10Cを有する二層ショートスロット結合器10がバトラーマトリクスの交差器として用いられる場合、例えば、入力部10Aの第1ポート11(入力口)から信号が入力された場合は、第1ポート11~第7ポート17へ出力信号は出力されない(図1および図2参照)。そして、第1ポート11(入力口)に対向する位置にある第5ポート(対向出力口)の対角線上に位置する第8ポート(対角隣接出力口)から出力信号として全て出力信号が出力されるよう形成されている。

【0045】
このように、二層ショートスロット結合器10は、交差器として機能する場合、入力された信号を二次元的に交差して出力する。即ち、入力部10Aの各入力口(第1ポート11~第4ポート14)のいずれかより信号が入力された場合、上記と同様の動作が実現される。

【0046】
図6および図7には、設計周波数が22.0GHzであるハイブリッド結合器として設計された二層ショートスロット結合器10に給電した場合の計算結果が示されている。図6に示されるように、二層ショートスロット結合器10の第1ポート11からの入力に対して、散乱行列の振幅は、設計周波数において第5ポート15~第8ポート18にほぼ等分配されている。そして、第1ポート11から第4ポート14への反射は-25dB以下となっている。

【0047】
図7に示されるように、二層ショートスロット結合器10の第1ポート11から入力され、第5ポート15から出力された電力に対して、第6ポート16および第7ポート17への出力は位相がほぼ90度遅れている。そして、第5ポート15から出力された信号に対して、第8ポート18への出力は位相がほぼ180度遅れている。

【0048】
図8には、設計周波数が22.0GHzである交差器として設計された二層ショートスロット結合器10に給電した場合の計算結果が示されている。二層ショートスロット結合器10の第1ポート11からの入力に対して、散乱行列の振幅は、設計周波数(22.0GHz)において第1ポート11~第7ポート17への出力は、-15dB以下となっている。そして、第8ポート18への出力は、-0.3dBとなり、第1ポート11に入力された電力のほぼ全電力が第8ポート18へ出力されている。

【0049】
上述したように、二層ショートスロット結合器10によると、二層に配置された複数の入力口のいずれかより電力を給電すると、二層に配置された複数の出力口から二次元的に電力を出力することができる。即ち、二層ショートスロット結合器10は、入力部10Aから入力された入力信号に対して出力部10Bからの信号の出力形態を二次元的に変化させることができる。また、二層ショートスロット結合器10は、結合部10Cの長さを変えることによって、信号の出力形態を変えることができ、ハイブリッド結合器または交差器として用いることができる。

【0050】
以下、二層ショートスロット結合器10を用いた二次元ビーム切替をするためのバトラーマトリクスについて4x4の入力部および出力部を有する場合を例に説明する。

【0051】
図9に示されるように、バトラーマトリクス給電回路50は、下段から第1層から第4層および左段から第1~第4層である、断面方向に4×4層の配置位置に配置された給電回路からなる。バトラーマトリクス給電回路50は、二次元ビーム切替を実現するためのバトラーマトリクスである。この配置位置において、垂直方向の第1層および第2層と、第3層および第4層とを外側2層と呼ぶ。そして、垂直方向の第2層および第3層を内側2層と呼ぶ。また、水平方向の第1層および第2層と、第3層および第4層とを外側2層と呼ぶ。そして、水平方向の第2層および第3層を内側2層と呼ぶ。

【0052】
図10に示されるように、バトラーマトリクス給電回路50は、入力信号に位相差を与えると共に等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部51と、入力信号を交差する回路に出力する交差部53と、入力信号に位相差を与えて出力する位相器部56とを有している。図に示された実線のブロックは、二層ショートスロット結合器10を示している。図に示された破線のブロックは、既知の装置(一層)を示している。ブロックを接続する実線は導波管Wを示している。左側には、バトラーマトリクス給電回路50の内側2層の構成が示されており、右側には外側2層の構成が示されている。

【0053】
まず、バトラーマトリクス給電回路50の内側2層の構成について説明する。バトラーマトリクス給電回路50の内側2層には、入力側から、ハイブリッド結合部51が配置されている。ハイブリッド結合部51には、二層ショートスロット結合器10からなる二層ハイブリッド結合器52が並置されている。ここで、二層ハイブリッド結合器52は、第1層と第2層で、あるいは第3層と第4層で組み合わされて構成されている。ハイブリッド結合部51の下流側には、交差部53が接続されている。

【0054】
交差部53には、中央位置に二層ショートスロット結合器10からなる二層交差結合器54が配置されている。二層交差結合器54は、第2層および第3層で組み合わされて構成されている。上述したように、交差部53に配置された二層ショートスロット結合器10の結合部10C(図1参照)は、ハイブリッド結合部51に配置された二層ショートスロット結合器10の結合部10Cの全長に比して2倍の全長になるように形成されている。二層交差結合器54の左右の第2層および第3層には、2本の導波管Wに導波された信号を交差させる既知の一層交差器55が縦置きに(紙面に垂直に)配置されている。

【0055】
交差部53の下流側には、位相器部56が接続されている。位相器部56には、第2層および第3層の左右両側にそれぞれ既知の位相を45度遅らせるための一層-45度位相器57が配置されている。位相器部56の下流側には、ハイブリッド結合部59が接続されている。ハイブリッド結合部59の構成は、ハイブリッド結合部51の構成と同様である。ハイブリッド結合部59の下流側には、交差部60が接続されている。交差部60の構成は、交差部53の構成と同様である。交差部60の下流側は、出力側となっている。

【0056】
次に、バトラーマトリクス給電回路50の外側2層の構成について説明する。バトラーマトリクス給電回路50の外側2層には、入力側から、ハイブリッド結合部51が配置されている。ハイブリッド結合部51には、二層ショートスロット結合器10からなる二層ハイブリッド結合器52が並置されている。ハイブリッド結合部51の下流側には、交差部53が接続されている。交差部53には、中央位置(左側から第2層および第3層)に既知の一層交差器55が横置きに(紙面と平行に)配置されている。

【0057】
交差部53の下流側には、位相器部56が接続されている。位相器部56の外側2層には、左右両側に既知の位相を90度遅らせるための一層-90度位相器58が第2層および第3層にそれぞれ配置されている。一層-90度位相器58の間には、2つの一層-45度位相器57が並置されている。位相器部56の下流側には、ハイブリッド結合部59が接続されている。ハイブリッド結合部59の構成は、ハイブリッド結合部51の構成と同様である。ハイブリッド結合部59の下流側には、交差部60が接続されている。

【0058】
交差部60の構成は、交差部53の構成と同様である。上記説明では、位相器には「-」の位相量(遅れ)を与えるものを使用している。位相器には「-」の位相量を与えるものの他、「+」の位相量(進み)を与えるものを使用してもよい。即ち、上記の「-」の位相量を与える位相器の代わりに、それらを取り外して、バトラーマトリクス給電回路50の他の部分に「+」の位相量を与える位相器を配置してバトラーマトリクスを構成しても上記と同様の動作が実現される。

【0059】
図11には、ハイブリッド結合部51の図10におけるB断面の配置関係が示されている。二層ショートスロット結合器10が配置位置の下段から第1層および第2層の位置に2つ並置され、下段から第3層と第4層の位置に2つ並置されている。内側2層(下段から第2層および第3層)では、二層ハイブリッド結合器52の上層52aと下層52bとが並置されている。ハイブリッド結合部51の入力側には入力口が4×4のマトリクス状に配置されている。ハイブリッド結合部59もハイブリッド結合部51と同様の構成である。

【0060】
図12には、交差部53の図10におけるC断面の配置関係が示されている。交差部53には、二層ショートスロット結合器10が前記第2層と前記第3層との中央位置に1つ配置されている。二層ショートスロット結合器10の上下方向の位置にある第1層および第4層に一層交差器55が横置きにそれぞれ配置されている。二層ショートスロット結合器10の左右にある下段から第2層および第3層に一層交差器55が縦置きに配置されている。その他の四隅の部分は、導波管Wである。交差部60も交差部53と同様の構成である。交差部60の下流側には出力口が4×4のマトリクス状に配置されている。

【0061】
図13には、位相器部56の図10におけるD断面の配置関係が示されている。下段から第1層および第4層の左右には、一層-90度位相器58がそれぞれ配置されている。左右の一層-90度位相器58の間には、一層-45度位相器57が2つ並置されている。下段から第2層と第3層の両側には、一層-45度位相器57がそれぞれ縦方向に2つ積層されている。下段から第2層と第3層の中央位置(左側から第2層および第3層)には4つの導波管Wが2×2のマトリクス状に配置されている。

【0062】
バトラーマトリクス給電回路50によると、ハイブリッド結合部51の上流側にある4×4の入力口のいずれかより入力された信号は、ハイブリッド結合部51で4つに均等に分配されると共にそれぞれの位相差を与えられて4つの出力信号が出力される。そして、出力信号は、交差部53で交差する導波管に導波され、位相器部56でそれぞれの位相差を与えられて出力される。

【0063】
そして、出力信号は、ハイブリッド結合部59で16個の信号に均等に分配されると共にそれぞれの位相差を与えられて出力され、交差部60で交差する導波管に導波される。これにより、バトラーマトリクス給電回路50の出力側で出力されるそれぞれの出力信号は2次元的な位相の傾きを有している。そのため、バトラーマトリクス給電回路50の出力側で出力される出力されるビームは、2次元方向の傾きを持っている。

【0064】
バトラーマトリクス給電回路50において、4×4の入力口の位置を変えることによって出力されるビームは、2次元的にその方向が変化する。これにより、バトラーマトリクス給電回路50は、水平切替用と垂直切替用とにそれぞれの給電回路を用いること無く、一つの給電回路により二次元ビーム切替をすることができる。上述したように、バトラーマトリクス給電回路50によると、装置構成を簡略化して二次元ビーム切替をすることができる。

【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、バトラーマトリクス給電回路50の原理を拡張して、二次元切替用8×8分配のバトラーマトリクス給電回路100を構成してもよい。以下の説明では、同一の構成部分には同一の符号を用い、重複する説明は適宜省略する。

【0066】
図14に示されるように、バトラーマトリクス給電回路100は、下段から第1層~第8層および左段から第1~第8層である、断面方向に8×8層の配置位置に配置された給電回路からなる。第4層および第5層を2層Aと呼ぶ。第3層および第4層あるいは第5層および第6層を2層Bと呼ぶ。第2層および第3層あるいは第6層および第7層を2層Cと呼ぶ。第1層および第2層あるいは第7層および第8層を2層Dと呼ぶ。

【0067】
図15には、2層Aの給電回路100Aのブロック図が示されている。給電回路100Aの構成要素でバトラーマトリクス給電回路50と同一の部分は同一の符号を付し、重複する説明は省略する。給電回路100Aでは、位相を22.5度遅らせるための-22.5度位相器64がさらに設けられている。

【0068】
図16には2層Bの給電回路100Bのブロック図が示されている。給電回路100Aでは、位相を67.5度遅らせるための-67.5度位相器65がさらに設けられている。図17には2層Cの給電回路100Cのブロック図が示されている。図18には2層Dの給電回路100Dのブロック図が示されている。給電回路100Dでは、位相を135度遅らせるための-135度位相器66がさらに設けられている。

【0069】
バトラーマトリクス給電回路100において、8×8に配置された入力口の位置を変えることによって出力されるビームは、2次元的にその方向が変化する。バトラーマトリクス給電回路100によると、バトラーマトリクス給電回路50の切替範囲より細かく2次元切替することができる。また、上述したバトラーマトリクス給電回路50,100の出力側に配置された複数の出力口のそれぞれに、マトリクス状に配置されたアンテナ素子を接続し、二次元切替が可能なフェイズドアレーアンテナを構築することができる。

【0070】
上述したバトラーマトリクス給電回路50,100の原理は、さらに拡張することができる。2×2分配(nは正の整数)の2次元ビーム切替バトラーマトリクスは、2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスから構築することができる。水平方向に置いた2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスを垂直方向へ投影させ、垂直方向においた2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスを水平方向へ投影させる。ハイブリッド部は、垂直方向への投影と水平方向への投影により、1次元ビーム切替バトラーマトリックスのハイブリット結合部が重なる位置に二層ハイブリッド結合器52(二層ショートスロット結合器10)を配置することで構成される。すなわち、水平方向に2n-1個、垂直方向に2n-1個2次元的に二層ショートスロット結合器10が設けられる。

【0071】
交差部は、1次元ビーム切替バトラーマトリックスの垂直方向への投影と水平方向への投影により、1次元ビーム切替バトラーマトリックスの交差部が重なる位置に二層交差結合器54(二層ショートスロット結合器10)を配置し、垂直方向への投影だけあるいは水平方向への投影だけの位置には既知の一層交差器55を配置することで構成される。位相器部は、垂直方向への投影と水平方向への投影が重なる位置にはそれぞれの位相量の和の位相器を設け、垂直方向への投影だけ、あるいは水平方向への投影だけの位置にはその位相量の位相器を配置することで構成される。

【0072】
また、水平方向2×垂直方向2分配(n,mは正の整数。ただしn>mとする)の2次元ビーム切替バトラーマトリクスは2分配と2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスから構築することができる。水平方向に置いた2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスを垂直方向へ投影させ,垂直方向に置いた2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスを水平方向へ投影させる。このとき、2分配と2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスはブロック数が異なるので上流側にそろえる。上流側の2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスがある部分までのハイブリット結合部、交差部、位相器部は、上記の2×2分配と同じ扱いをする。それより下流の部分は、2分配の1次元ビーム切替バトラーマトリックスの該当部分を垂直方向に2個設ける。

【0073】
上述した方法により、2×2分配の2次元ビーム切替バトラーマトリクスおよび、水平方向2×垂直方向2分配の2次元ビーム切替バトラーマトリクスを構築することができる。
【符号の説明】
【0074】
L 管軸線
P 断面形状
Q 信号
Q1-Q4 信号
W 導波管
10 二層ショートスロット結合器
10A 入力部
10B 出力部
10C 結合部
11 第1ポート
12 第2ポート
13 第3ポート
14 第4ポート
15 第5ポート
16 第6ポート
17 第7ポート
18 第8ポート
20 矩形管
20a 仕切り板
21 矩形管
21a 仕切り板
25 切欠き部
26 第1の凸部
27 凹部
28 第2の凸部
50 バトラーマトリクス給電回路
51 ハイブリッド結合部
52 二層ハイブリッド結合器
52a 上層
52b 下層
53 交差部
54 二層交差結合器
55 一層交差器
56 位相器部
57 -45度位相器
58 -90度位相器
59 ハイブリッド結合部
60 交差部
64 -22.5度位相器
65 -67.5度位相器
66 -135度位相器
70 H面結合器
70A 入出力部
70B 入出力部
70C 結合部
71 第1ポート
72 第2ポート
73 第3ポート
74 第4ポート
75 仕切り板
76 仕切り板
79 矩形管
79a 一端
79b 他端
80 E面結合器
89 一層4分配回路
90 一層4分配回路
91 ハイブリッド結合器
92 交差結合器
93 度位相器
94 入力ポート
95 出力ポート
96 導波路
98 垂直4×4分配回路
99 水平4×4分配回路
100 バトラーマトリクス給電回路
100A 給電回路
100B 給電回路
100C 給電回路
100D 給電回路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22