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明細書 :スロットアレーアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-078483 (P2018-078483A)
公開日 平成30年5月17日(2018.5.17)
発明の名称または考案の名称 スロットアレーアンテナ
国際特許分類 H01Q  13/22        (2006.01)
H01Q  21/06        (2006.01)
H01P   9/00        (2006.01)
FI H01Q 13/22
H01Q 21/06
H01P 9/00 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-219695 (P2016-219695)
出願日 平成28年11月10日(2016.11.10)
発明者または考案者 【氏名】廣川 二郎
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100140774、【弁理士】、【氏名又は名称】大浪 一徳
【識別番号】100152146、【弁理士】、【氏名又は名称】伏見 俊介
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
審査請求 未請求
テーマコード 5J021
5J045
Fターム 5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB05
5J021HA05
5J045AA01
5J045AA21
5J045AB06
5J045DA04
5J045DA11
5J045EA01
5J045EA07
5J045FA02
5J045HA00
5J045JA04
5J045LA01
5J045LA03
5J045MA07
要約 【課題】構造を簡略化しつつも所望の特性を得ることができるスロットアレーアンテナを提供すること。
【解決手段】本発明は、信号電力が給電される複数の給電スロット4を有する給電部2と、給電部2に対向して配置され、複数の給電スロット4から給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロット12を有する放射部10と、放射部10と給電部2との間に形成され、給電部2から給電されて放射部10と給電部2との間に生じる平面波を遅波して放射部10と給電部2との間に定在波を発生させる遅波層20と、を備える、スロットアレーアンテナ1である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、
前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、
前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記給電部から給電されて前記放射部と前記給電部との間に生じる平面波を遅波して前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させる遅波層と、
を備える、
スロットアレーアンテナ。
【請求項2】
前記遅波層は、前記複数の放射スロットに同振幅かつ同位相で給電するよう前記定在波を発生させる、
請求項1に記載のスロットアレーアンテナ。
【請求項3】
前記遅波層は、前記放射部と前記給電部との間に生じる前記平面波を遅波する誘電体を有する、
請求項1または2に記載のスロットアレーアンテナ。
【請求項4】
前記誘電体は、異なる比誘電率を有する複数の誘電体が組み合わされて形成されている、
請求項3に記載のスロットアレーアンテナ。
【請求項5】
前記遅波層は、前記定在波を発生させるよう前記放射部と前記給電部との間に生じる前記平面波を遅波するコルゲーション構造を有する、
請求項1または2に記載のスロットアレーアンテナ。
【請求項6】
前記コルゲーション構造は、前記給電スロットの周囲を囲むように形成された複数の突起部を有する、
請求項5に記載のスロットアレーアンテナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットアレーアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯の電波を利用した超高速無線通信技術の研究開発が進められている。指向性の高いミリ波を放射するアンテナとして、アンテナ素子が平面上に多数配列されたアレーアンテナが用いられる。例えば、特許文献1には、信号電力を分配する給電回路と、分配された信号電力が給電される給電スロットと、給電スロットからの電力を励振するキャビティと、キャビティで励振された電磁波から偏波を放射する放射スロットとを有するスロットアレーアンテナが記載されている。このスロットアレーアンテナにおいて上記の各構成は金属導体板の積層により形成されている。このスロットアレーアンテナでは、それぞれの金属導体板が互いに拡散接合を用いて接合されている。
【0003】
拡散接合は、母材を密着させ、母材の融点以下の温度条件で,塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、接合面間に生じる原子の拡散を利用して母材同士を接合する方法である。拡散接合を用いると、金属導体板と金属導体板との間を隙間なく接合できる。仮に接合された金属導体板と金属導体板との間に隙間があると、この隙間がスロットアンテナの役目をし、意図しない電磁ノイズを放射する一方、特定の周波数帯域の電磁ノイズを受信する場合がある。従って関連する技術では、スロットアレーアンテナの製造に、金属導体板と金属導体板との間に隙間ができない拡散接合が用いられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-170989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るスロットアレーアンテナの製造過程で用いられる拡散接合は、製造時において時間を要するため生産性が悪化する。また、拡散接合を用いないでスロットアレーアンテナを構成しようとすると、意図しない電磁ノイズが発生するという問題やスロットアレーアンテナの所望の特性を得られないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、構造を簡略化しつつも所望の特性を得ることができるスロットアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスロットアレーアンテナは、
信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、
前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、
前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記給電部から給電されて前記放射部と前記給電部との間に生じる平面波を遅波して前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させる遅波層と、
を備える。
【0008】
前記遅波層は、前記複数の放射スロットに同振幅かつ同位相で給電するよう前記定在波を発生させるよう構成されていてもよい。
【0009】
前記遅波層は、前記放射部と前記給電部との間に生じる前記平面波を遅波する誘電体を有するよう構成されていてもよい。
【0010】
前記誘電体は、異なる比誘電率を有する複数の誘電体が組み合わされて形成されているよう構成されていてもよい。
【0011】
また、前記遅波層は、前記定在波を発生させるよう前記放射部と前記給電部との間に生じる前記平面波を遅波するコルゲーション構造を有するよう構成されていてもよい。
【0012】
前記コルゲーション構造は、前記給電スロットの周囲を囲むように形成された複数の突起部を有するよう構成されていてもよい。
【0013】
本発明は、上記構成により、放射部と給電部との間に設けられた遅波層が放射部と給電部との間の拡散接合を不要としつつ、定在波Wを発生させることで放射スロットに同振幅かつ同位相で給電することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスロットアレーアンテナによると、構造を簡略化しつつも所望の特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るスロットアレーアンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】スロットアレーアンテナの一部の要素を解析モデルとして示す斜視図である。
【図3】スロットアレーアンテナの一部の要素を解析モデルとして示す斜視図である。
【図4】遅波層内で分布する定在波を示す断面図である。
【図5】スロットアレーアンテナの特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】スロットアレーアンテナの特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】スロットアレーアンテナを高機能化するスロット層を示す斜視図である。
【図8】スロットアレーアンテナを高機能化するスロット層を示す斜視図である。
【図9】スロットアレーアンテナを高機能化するスロット層を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態に係るスロットアレーアンテナの構成を示す断面図である。
【図11】スロットアレーアンテナの突起部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るスロットアレーアンテナについて説明する。

【0017】
[第1実施形態]
図1に示されるように、スロットアレーアンテナ1は、複数のアンテナ素子がマトリクス状に配置された平面アンテナである。図1には、16×16のアンテナ素子を有するスロットアレーアンテナ1の8×8のアンテナ素子の要素が切り出されている。つまり、スロットアレーアンテナ1の1/4の部分が示されている。この1/4の部分を繋ぎ合わせるとスロットアレーアンテナ1が構成される。以下、スロットアレーアンテナ1の1/4の部分について説明するが、構造の対称性と偏波の性質を考慮して便宜上この1/4の部分をスロットアレーアンテナ1として説明する。

【0018】
スロットアレーアンテナ1は、信号電力を給電するための給電部2と、給電部2から給電された信号電力を放射するための放射部10と、給電部2と放射部10との間に設けられた遅波層20とを有する。図1では遅波層20と給電部2との間が離間して示されているが、実際には放射部10とは隙間なく積み重ねられている。

【0019】
給電部2は、矩形の板状の導体板3からなる。導体板3は、例えば金属板が用いられる。導体板3には、電磁波が給電される複数の給電スロット4が設けられている。給電スロット4は、矩形の貫通孔である。複数の給電スロット4は、例えば導体板3の平面にマトリクス状に配置されている。複数の給電スロット4は、4×4の配置で計16個設けられており、2次元の2方向(x軸、y軸方向)にそれぞれ等間隔で配置されている。2方向の間隔は、必ずしも同じである必要はないが、1自由空間波長(λ)以上2自由空間波長(2λ)未満の長さの範囲で調整されている。給電部2の上方(+z軸方向)には、放射部10が配置されている。

【0020】
放射部10は、給電部2の上方(+z方向)に対向して平行に配置されている。放射部10は、矩形の板状の導体板11からなる。導体板11は、例えば金属板が用いられる。導体板11には、電磁波を放射する複数の放射スロット12が設けられている。放射スロット12は、複数の給電スロット4から給電されて励振された電磁波を放射するアンテナ素子である。放射スロット12は、矩形の貫通孔である。複数の放射スロット12は、例えば導体板11の平面にマトリクス状に配置されている。複数の放射スロット12は、2次元の2方向(x軸、y軸方向)にそれぞれ等間隔で配置されている。

【0021】
これらの2方向の隣接する2個の放射スロット12の相互の間隔は、隣接する2個の給電スロット4の相互の間隔の半分になっている。即ち、隣接する放射スロット12の相互の間隔は、0.5自由空間波長(0.5λ)以上1自由空間波長(λ)未満である。z軸方向から見て2×2で配置された4個の放射スロット12の中心に1個の給電スロット4が位置するように複数の放射スロット12が配置されている。放射部10と給電部2との間には、遅波層20が設けられている。

【0022】
遅波層20は、誘電率を有する材料で形成された板状の誘電体21を有する。誘電体21は、例えばテフロン(登録商標)やポリエチレン等の樹脂製の発砲体から成型される。誘電体21は、1種類の材料で形成されてもよいし、異なる比誘電率の複数の誘電体が組み合わされて形成されていてもよい。例えば、遅波層20は、異なる比誘電率の複数の誘電体が積層されて形成されていてもよい。そして複数の誘電体の層の中には、空気の層が含まれていてもよい。誘電体の層の中に空気の層が含まれる場合、放射部10と給電部2との間の距離を保つ構造(不図示)が設けられる。

【0023】
誘電体21の上面21a及び下面21bは、それぞれ放射部10と給電部2に隙間なく接触している。誘電体21と放射部10及び給電部2とは、例えば接着剤で接合される。これによりスロットアレーアンテナ1は、放射部10と給電部2とで形成された平行平板構造となる。遅波層20は、給電スロット4から給電され、給電部2と放射部10との間に発生した平面波を誘電体21によって遅波させる。遅波層20は、遅波した平面波によって給電部2と放射部10との間に定在波Wを発生させる。定在波Wについては、後に詳述する。

【0024】
以下、スロットアレーアンテナ1の動作原理について説明する。

【0025】
図2には、スロットアレーアンテナ1の放射部の1/64の要素Mが解析モデルとして示されている。解析モデルは、スロットアレーアンテナ1の複数の放射スロット12が2×2で配置された部分を1個の要素Mとしている。図2には、誘電体21が設けられた放射部10と給電部2との間に給電スロット4が見えるように空間が示されているが、実際には放射部10、誘電体21、及び給電部2は隙間なく重ねられている。解析モデルは、放射部10と給電部2とで形成された平行平板構造である。給電スロット4の下方(-z方向)には、給電用の方形導波管6が設けられている。

【0026】
無数の要素Mがxyの2次元平面上で無限に配列された一様励振2次元無限アレーを考える。要素Mの相互結合と放射される偏波の特性とを考慮すると、要素Mの周囲の境界には完全電気導体Eと完全磁気導体Gとが適切に設定される。具体的には、要素Mのx軸方向の両側面には完全電気導体Eが設定され、要素Mのy軸方向の両側面には完全磁気導体Gが設定される。また、放射スロット12上方の外部領域には放射境界Hが設定される。なお、給電スロット4の間隔は例えば1.72自由空間波長で設定され、放射スロット12の間隔はその半分の0.86自由空間波長で設定されている。

【0027】
図3には、解析モデルの要素Mを繋ぎ合わせて、スロットアレーアンテナ1の8×8の放射スロット12を有する1/4の部分の解析モデルが示されている。図3も図2と同様に、誘電体21が設けられた放射部10と給電部2との間に給電スロット4が見えるように空間が示されているが、実際には放射部10、誘電体21、及び給電部2は隙間なく重ねられている。図2と同様に、解析モデルのx軸方向の両側面には完全電気導体Eが設定され、y軸方向の両側面には完全磁気導体Gが設定されている。また,放射スロット12上方の外部領域には放射境界Hが設定される。

【0028】
複数の給電スロット4には、方形導波管6からなる導波回路(不図示)の終端が接続されている。導波回路は、例えば1個の入口から等長に分岐した方形導波管6からなり、分岐した導波管の終端にそれぞれ複数の給電スロット4が接続されている。図3の解析モデルでは、合計16個の給電用方形導波管が設けられている。これにより、複数の給電スロット4に同時に同振幅かつ同位相で給電できる。複数の給電スロット4に給電する給電回路としては、例えば、方形導波管からなるH面分岐並列給電回路や、方形導波管からなるE面分岐並列給電回路などがある。これらの給電回路は、給電部2との間に隙間がある隙間ギャップ導波路構造などにより、給電部2と非接触で設けられていてもよい。

【0029】
導波回路の入口から信号電力が入力されると、導波回路によって電磁波が導波され、給電部2の下面側3bから、複数の給電スロット4に対してほぼ等しい振幅、ほぼ等しい位相で信号電力が入力される。これにより、複数の給電スロット4からそれぞれ偏波が励振される。ここで、給電部2の給電スロット4だけで偏波を放射すると、隣接する給電スロット4の相互の間隔が1自由空間波長以上、かつ、2自由空間波長未満であるため、所望する正面方向(z軸方向)へ電磁波が放射される以外に、他の方向にも電磁波が放射され、不要なグレーティングローブが発生する。

【0030】
そこで、給電部2の上方(+z方向)に放射部10を設ける。放射部10の放射スロット12の間隔は給電スロット4の間隔の半分の0.5自由空間波長以上かつ1自由空間波長未満であるため、グレーティングローブが抑圧される。また、複数の放射スロット12に同時に同振幅かつ同位相で電磁波を給電して偏波を励振するために、放射部10と給電部2との平行平板の間に定在波を発生させる。そのため、給電部2と放射部10との間に誘電体21を挟んで遅波層20を設ける。

【0031】
定在波Wは、放射部10と給電部2との間に設けられた遅波層20が放射部10と給電部2との間に生じる平面波を遅波することによって発生させる。定在波Wを発生させるために、放射スロット12の位置、幅w、長さl、誘電体21の厚さt、及び誘電体21の比誘電率εの各条件が調整される。

【0032】
これらの値を調整することにより、放射部10と給電部2とで構成される平行平板構造での平面波の波長を適切に短くする。具体的には、給電スロット4間の間隔が実行的に遅波層20内で導波される平面波の波長の2倍になるように上記の各値が調整される。放射部10と給電部2との間の遅波層20に生じる平面波(定在波W)の波長λεは、平行平板中の波長λ、誘電体21の比誘電率をεr、とすると、
λε=λ/√(ε)…(1)
と表される。

【0033】
図4に示されるように、放射部10と給電部2との間の遅波層20で遅波された平面波の波長λεは、放射スロット12間の間隔と一致し、平面波の波長λεの2倍の値が給電スロット4間の間隔に一致する。この平面波は、遅波層20内で一様な定在波Wとして分布する。定在波Wの波長λεが放射スロット12間の間隔に一致しており、定在波Wの波頭の位置は、放射スロット12の位置と一致する。従って、定在波Wによって放射スロット12に同振幅かつ同位相で電力が給電され偏波が励振される。

【0034】
遅波層20内で定在波Wが一様に分布しているため、実際に製作されるアンテナ構造において完全磁気導体Gについての境界条件は、ほぼ図4に示す境界の位置で平行平板構造を打ち切ってよい。そして、完全電気導体Eについての境界条件は、図4に示す境界の位置から1/4波長λεの位置で平行平板構造を打ち切ってよい。

【0035】
以下、スロットアレーアンテナ1の特性についてのシミュレーション結果を示す。

【0036】
図5には、遅波層20の誘電体21の比誘電率εが1.0、すなわち遅波層20が空気になっている場合のスロットアレーアンテナ1の反射の周波数特性を示す。遅波層20の設計周波数は、61.5GHzである。放射スロット12の長さl、幅w、誘電体21(空気層)の厚さtの各条件(図2参照)は、例えばl=2.20mm(=0.45λ)、w=1.60mm(=0.32λ)、t=0.98(=0.20λ)で設定される。点線は、図2の解析モデルでの給電用の方形導波管6からの反射を表している。

【0037】
16本の実線は、図3の解析モデルにおいて、16本の給電用の方形導波管6から同振幅かつ同位相で給電スロット4に信号電力を入力した場合の各給電用の方形導波管6の反射を表している。16本の実線はそれぞれ別の反射特性を示し、点線の結果とも一致していない。これは、遅波層20の誘電体21が空気の場合には、8×8の放射スロット12の励振強度が一様に揃っていないことを示している。

【0038】
図6には、遅波層20の誘電体21の比誘電率εが1.28の場合のスロットアレーアンテナ1の反射の周波数特性を示す。遅波層20の設計周波数は、61.5GHzである。放射スロット12の長さl、幅w、誘電体21の厚さtの各条件(図2参照)は、例えばl=1.80mm(=0.37λ)、w=1.75mm(=0.36λ)、t=1.60(=0.33λ)で設定される。

【0039】
16本の実線の周波数特性は、ほぼ重なっており、それらは点線の周波数特性ともほぼ一致している。16本の実線は、誘電体21の比誘電率ε、誘電体21の厚さt、放射スロット12の形状(長さl、幅wr)、の各条件(図2参照)を適切に選ぶことで、従来のように給電スロット4ごとに金属壁を設けなくてもすべての放射スロット12が一様に励振されていることを示している。

【0040】
上述したスロットアレーアンテナ1(図1参照)は、放射部10の上部(+z方向)に別のスロット層を設けることで多機能化することができる。図7に示されるように、例えば広帯域化のための無給電スロット層30をスロットアレーアンテナ1に追加してもよい。図7には、無給電スロット層30の1/64の要素が記載されている。無給電スロット層30は、方形の導体板31と、導体板31に設けられた無給電スロット32とを有する。

【0041】
また、図8に示されるように、直線偏波の角度を45°変化させる45度スロット層33をスロットアレーアンテナ1に追加してもよい。図8には、45度スロット層33の1/64の要素が記載されている。45度スロット層33は、方形の導体板34と、導体板34にy軸に対して45度傾けて設けられた45度スロット35とを有する。

【0042】
更に、図9に示されるように、円偏波を放する円偏波スロット層36をスロットアレーアンテナ1に追加してもよい。図9には、円偏波スロット層36の1/64の要素が記載されている。円偏波スロット層36は、方形の導体板37と、導体板37に設けられ円偏波を励振する円偏波スロット38とを有する。上記の各スロット層を用いることにより、スロットアレーアンテナ1は高機能化することができる。

【0043】
上述したようにスロットアレーアンテナ1によると、放射部10と給電部2との間の遅波層20の電磁界分布が定在波Wとなるため、従来のように給電スロット4ごとに金属壁を設ける必要がなくなり、平行平板構造の周囲からもれる電力を極力抑えられる。そして、遅波層20は、放射部10及び給電部2と拡散接合する必要が無く、構造を簡略化することができる。更にスロットアレーアンテナ1によると、構造を簡略化しても性能を低下させることなく所望の利得を得ることができる。

【0044】
[第2実施形態]
第1実施形態では、スロットアレーアンテナ1は、遅波層20に誘電体21を用いて放射部10と給電部2との間に導波される平面波を遅波して定在波Wを発生させていた。第2実施形態では、スロットアレーアンテナ1は、遅波層20に平面波を遅波させるコルゲーション構造を用いて定在波Wを発生させる。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、重複する説明については省略する。

【0045】
図10及び図11に示されるように、放射部10と給電部2との間は離間して空気層Aがあり、給電部2の導体板3は、上面3aに設けられた突起部Qを有する。突起部Qは、複数の突起Q1,…,Qn(nは自然数)を有する。複数の突起Q1,…,Qnは、給電部2の上面3aから上方(+z方向)に向かって突出して形成されている。そして、複数の突起Q1,…,Qnは、例えばそれぞれが給電スロット4の周囲を囲むように形成されている。これにより、複数の突起Q1,…,Qnからなるコルゲーション構造によって遅波層20が形成される。突起部Qは、放射スロット12の周囲に設けられていてもよい。

【0046】
放射部10と給電部2との間に導波される平面波は、突起部Qによって遅波される。そして、複数の突起Q1,…,Qnの数、突起の高さ及び間隔等を調整することにより、遅波層20で定在波Wが発生する。実際にこの構造を用いてスロットアレーアンテナ1を構築する場合は、放射部10と給電部2との間を一定の距離で支える構造(不図示)が用いられる。

【0047】
上述したように第2実施形態に係るスロットアレーアンテナ1によると、複数の突起Q1,…,Qnからなるコルゲーション構造によって遅波層20が形成され、放射部10と給電部2との間に定在波Wを発生させることができる。第2実施形態に係るスロットアレーアンテナ1によると、誘電体21を用いずに遅波層20を構成するため、装置構成を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…スロットアレーアンテナ、2…給電部、3…導体板、4…給電スロット、6…方形導波管、10…放射部、11…導体板、12…放射スロット、20…遅波層、21…誘電体、30…無給電スロット層、31…導体板、32…無給電スロット、33…45度スロット層、34…導体板、35…45度スロット、36…円偏波スロット層、37…導体板、38…円偏波スロット、A…空気層、E…完全電気導体、G…完全磁気導体、H…放射境界、M…要素、Q…突起部、Q1~Qn…突起、W…定在波
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10