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明細書 :アレーアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-145968 (P2019-145968A)
公開日 令和元年8月29日(2019.8.29)
発明の名称または考案の名称 アレーアンテナ
国際特許分類 H01Q  21/06        (2006.01)
H01Q  13/10        (2006.01)
H01Q   9/16        (2006.01)
H01Q  21/24        (2006.01)
H01Q   1/52        (2006.01)
FI H01Q 21/06
H01Q 13/10
H01Q 9/16
H01Q 21/24
H01Q 1/52
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-027407 (P2018-027407)
出願日 平成30年2月19日(2018.2.19)
発明者または考案者 【氏名】廣川 二郎
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100181722、【弁理士】、【氏名又は名称】春田 洋孝
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100154852、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 太一
審査請求 未請求
テーマコード 5J021
5J045
5J046
Fターム 5J021AA05
5J021AA09
5J021CA02
5J021JA05
5J045AA12
5J045CA01
5J045DA06
5J045DA09
5J045HA04
5J045NA01
5J046AA02
5J046AB08
5J046AB13
5J046UA02
要約 【課題】送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションを高めることができるアレーアンテナを提供すること。
【解決手段】複数のスロットがマトリクス状に配置された第1層と、第1層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第2層と、を備える送信アンテナと、送信アンテナに並置され、複数のスロットがマトリクス状に配置された第3層と、第3層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第4層と、を備える受信アンテナと、送信アンテナと受信アンテナとの間に設けられ、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する隔壁と、を備え、送信アンテナにおいて、複数のダイポール素子は、複数のスロットに位置が対応するように配置され、受信アンテナにおいて、複数のダイポール素子は、複数のスロットに位置が対応するように配置されている、アレーアンテナ。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のスロットがマトリクス状に配置された第1層と、前記第1層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第2層と、を備える送信アンテナと、
前記送信アンテナに並置され、複数のスロットがマトリクス状に配置された第3層と、前記第3層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第4層と、を備える受信アンテナと、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に設けられ、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する隔壁と、を備え、
前記送信アンテナにおいて、前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットに位置が対応するように配置され、
前記受信アンテナにおいて、前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットに位置が対応するように配置されている、
アレーアンテナ。
【請求項2】
前記送信アンテナにおいて、
前記第1層は、信号電力が給電されると、前記第2層との間に形成された空間に偏波を放射し、
前記第2層は、前記第1層から放射された前記偏波により励振され、前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する方向に前記偏波の指向性が調整された偏波を外部空間に放射する、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
前記送信アンテナにおいて、
前記第1層における前記複数のスロットは、前記偏波を水平偏波で前記第2層における対応する位置の前記複数のダイポール素子に放射し、
前記第2層において前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットから放射された前記水平偏波の指向性が調整された水平偏波を外部空間に放射する、
請求項2に記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
前記送信アンテナにおいて、
前記第2層は、信号電力が給電されると、前記第1層との間に形成された空間に偏波を放射し、
前記第1層は、前記第2層から放射された前記偏波により励振され、前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する方向に前記偏波の指向性が調整された偏波を外部空間に放射する、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
前記送信アンテナにおいて、
前記第2層における前記複数のダイポール素子は、前記偏波を垂直偏波で前記第1層における対応する位置の前記複数のスロットに放射し、
前記第1層において前記複数のスロットは、前記複数のダイポール素子から放射された前記垂直偏波の指向性が調整された垂直偏波を外部空間に放射する、
請求項4に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
前記送信アンテナにおいて、前記ダイポール素子は長手方向と短手方向を有する形状に形成され、長手方向と短手方向を有する形状に形成された前記スロットに対して長手方向同士が直交するように配置され、
前記受信アンテナにおいて、前記ダイポール素子は長手方向と短手方向を有する形状に形成され、長手方向と短手方向を有する形状に形成された前記スロットに対して長手方向同士が直交するように配置されている、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
前記複数のダイポール素子のそれぞれは、偏波の方向に対して一体に形成されている、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項8】
前記複数のダイポール素子のそれぞれは、偏波の方向に対して分離して形成されている、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波を同時に送受信するアレーアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯の電波を利用した超高速無線通信技術の研究開発が進められている。指向性の高いミリ波を放射するアンテナとして、アンテナ素子が平面上に多数配列されたアレーアンテナが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、信号電力を分配する給電回路と、分配された信号電力が給電される給電スロットと、給電スロットからの電力を励振するキャビティと、キャビティで励振された電磁波から偏波を放射する放射スロットとを有するスロットアレーアンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-195203号公報
【特許文献2】特開2014-170989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号を同時に送受信するために、アレーアンテナにより送信アンテナと受信アンテナとを並置した送受信アレーアンテナが構築される。更に、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナと、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナとを並置して同時に用いると、互いに直交する偏波は互いに干渉しないため、同じ周波数の電波でより多くの情報を送受信することができる。
【0006】
例えば、特許文献1又は特許文献2に記載されたスロットアレーアンテナを用いて、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナと、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナとを構築すると、水平偏波及び垂直偏波を同時に送受信することができる。
【0007】
垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナを複数のスロットQがマトリクス状に配置されたスロットアレーアンテナにより構築すると(図11参照)、スロットQの指向性により、送信アンテナT1から放射された偏波は、受信アンテナT2の方向には放射されにくくなり、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションが高くなる(例えば、16×16のアンテナ素子を有するアンテナで80[dB]程度)。
【0008】
しかし、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナをスロットアレーアンテナにより構築すると(図12参照)、スロットQの指向性により、送信アンテナR1から放射された偏波は、受信アンテナR2の方向に放射される成分が生じて受信アンテナに影響を与え、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションが低くなる(例えば、16×16のアンテナ素子を有するアンテナで40[dB]程度)という問題が生じる。
【0009】
本発明は、送信アンテナと受信アンテナを備えるアンテナにおいて、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションを高めることができるアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアレーアンテナは、複数のスロットがマトリクス状に配置された第1層と、前記第1層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第2層と、を備える送信アンテナと、前記送信アンテナに並置され、複数のスロットがマトリクス状に配置された第3層と、前記第3層に対向して配置され複数のダイポール素子がマトリクス状に配置された第4層と、を備える受信アンテナと、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に設けられ、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する隔壁と、を備え、前記送信アンテナにおいて、前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットに位置が対応するように配置され、前記受信アンテナにおいて、前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットに位置が対応するように配置されている。
【0011】
更に本発明は、前記送信アンテナにおいて、前記第1層は、信号電力が給電されると、前記第2層との間に形成された空間に偏波を放射し、前記第2層は、前記第1層から放射された前記偏波により励振され、前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する方向に前記偏波の指向性が調整された偏波を外部空間に放射するように構成されていてもよい。
【0012】
更に本発明は、前記送信アンテナにおいて、前記第1層における前記複数のスロットは、前記偏波を水平偏波で前記第2層における対応する位置の前記複数のダイポール素子に放射し、前記第2層において前記複数のダイポール素子は、前記複数のスロットから放射された前記水平偏波の指向性が調整された水平偏波を外部空間に放射するように構成されていてもよい。
【0013】
更に本発明は、前記送信アンテナにおいて、前記第2層は、信号電力が給電されると、前記第1層との間に形成された空間に偏波を放射し、前記第1層は、前記第2層から放射された前記偏波により励振され、前記受信アンテナとの間のアイソレーションを確保する方向に前記偏波の指向性が調整された偏波を外部空間に放射するように構成されていてもよい。
【0014】
更に本発明は、前記送信アンテナにおいて、前記第2層における前記複数のダイポール素子は、前記偏波を垂直偏波で前記第1層における対応する位置の前記複数のスロットに放射し、前記第1層において前記複数のスロットは、前記複数のダイポール素子から放射された前記垂直偏波の指向性が調整された垂直偏波を外部空間に放射するように構成されていてもよい。
【0015】
更に本発明は、前記送信アンテナにおいて、前記ダイポール素子は長手方向と短手方向を有する形状に形成され、長手方向と短手方向を有する形状に形成された前記スロットに対して長手方向同士が直交するように配置され、前記受信アンテナにおいて、前記ダイポール素子は長手方向と短手方向を有する形状に形成され、長手方向と短手方向を有する形状に形成された前記スロットに対して長手方向同士が直交するように配置されていてもよい。
【0016】
更に本発明は、前記複数のダイポール素子のそれぞれは、偏波の方向に対して一体に形成されていてもよい。
【0017】
更に本発明は、前記複数のダイポール素子のそれぞれは、偏波の方向に対して分離して形成されていてもよい。
【0018】
以上より、本発明によれば、ダイポール素子の指向性又はスロットの指向性を利用して送信アンテナから放射される偏波の指向性を調整し、隣接する受信アンテナの方向に偏波が到達することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスロットアレーアンテナによると、送信アンテナと受信アンテナを備えるアンテナにおいて、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るアレーアンテナの構成を示す正面図である。
【図2】水平偏波を送受信する送受信アンテナの構成を示す分解斜視図である。
【図3】送受信アンテナにおける導体板の構成の一部を示す分解斜視図である。
【図4】ダイポール板の指向性を説明する図である。
【図5】第2実施形態に係るアレーアンテナの構成を示す正面図である。
【図6】垂直偏波を送受信する送受信アンテナの構成を示す分解斜視図である。
【図7】垂直偏波を送受信する送受信アンテナの比較例の構成を示す正面図である。
【図8】ダイポール素子の変形例を示す斜視図である。
【図9】送受信アンテナに設けられる隔壁の変形例を示す斜視図である。
【図10】送受信アンテナに設けられる隔壁の他の変形例を示す斜視図である。
【図11】従来技術における垂直偏波を送受信する送受信アンテナの構成を示す正面図である。
【図12】従来技術における水平偏波を送受信する送受信アンテナの構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るアレーアンテナについて説明する。

【0022】
[第1実施形態]
[全体構成]
図1に示されるように、アレーアンテナ1は、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ2と、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナ3とを備える。送受信アレーアンテナ2と送受信アレーアンテナ3とは、例えば、基準面(例えば、xy平面)に対して垂直方向(z軸方向)に隣接して配置されているが、水平方向(y軸方向)に隣接していてもよい。上述した配置関係は一例であり、他の配置関係であってもよい。このような構成により、アレーアンテナ1は、垂直偏波と水平偏波を同時に送受信することができる。

【0023】
[垂直偏波の送受信について]
まず、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ2について説明する。送受信アレーアンテナ2は、例えば、垂直偏波を送信する送信アンテナ10と、垂直偏波を受信する受信アンテナ30とを備える。送信アンテナ10及び受信アンテナ30においては、例えば、既知のスロットアレーアンテナを用いることができる(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。

【0024】
送信アンテナ10と、受信アンテナ30とは、例えば、基準面(xy面)に対して並置されている。送信アンテナ10と、受信アンテナ30とは、同じ構造を有している。以下、送信アンテナ10について説明するが、受信アンテナ30も同じ構造である。

【0025】
送信アンテナ10は、矩形のスロット板11を備える。スロット板11は、例えば、金属などの導体で形成された板状体である。スロット板11には、複数のスロット12がマトリクス状に配置されている。スロット12は、スロット板11に設けられた矩形の貫通孔である。

【0026】
図示するように、複数のスロット12が4×4のマトリクス状に配置されているものが例示されているが、スロット12の個数及び配置はアンテナの用途や送受信する距離、電波の周波数等の条件により変更される。例えば、スロット12の個数は、4×4、8×8、16×16、32×32、64×64、…等の配置を用いてもよい。但し、スロット12の配置関係は、正方形の配置に限らず、行方向と列方向で必ずしも同じ数とならなくてもよい。

【0027】
スロット12は、例えば、長手方向と短手方向がある矩形の貫通孔として設けられている。複数のスロット12のそれぞれは、矩形の長手方向が鉛直方向(例えば、z軸方向)に沿うように配列されている。

【0028】
スロット板22には、信号電力を入力して各スロットに分配する入力部が接続される(不図示)。入力される信号の周波数は、例えば、40[GHz]である。入力部は、例えば、入力された信号電力を分配する給電回路と、分配された信号電力が給電される給電スロットと、給電スロットからの信号電力を励振するキャビティとを備える(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。

【0029】
スロット板22の入力側で信号電力が励振されると、複数のスロット12からスロット板22の放射側の外部空間に偏波が放射される。このとき、スロット12の長手方向に直交する方向に偏波が放射されるため、複数のスロット12からは、垂直偏波が放射される。一対のアレーアンテナ1を対向して配置することにより、偏波を送受信することができる。

【0030】
受信アンテナ30においては、対向する送信アンテナ10から送信された垂直偏波を複数のスロット32から受信する。上述したように、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ2は、スロットの指向性により、送信アンテナ10と受信アンテナ30との間のアイソレーションは高くなる。

【0031】
[水平偏波の送受信について]
次に、水平偏波を放射する送受信する送受信アレーアンテナ3の構成について説明する。図示するように、送受信アレーアンテナ3は、例えば、水平偏波を放射する送信アンテナ50と、水平偏波を受信する受信アンテナ70とを備える。送信アンテナ50と、例えば、受信アンテナ70とは、偏波の進行方向(+x方向)に直交する基準面の一方向(+y方向)に沿って並置されている。

【0032】
送信アンテナ50と、受信アンテナ70とは、同じ構造を有している。上述したように、既知のスロットアレーアンテナで水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナを構築すると、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションが垂直偏波を送受信する場合に比して低くなる。

【0033】
そのため、送受信アレーアンテナ3において、送信アンテナ50と、受信アンテナ70とには、アイソレーションを確保するための構造が設けられる。以下、受信アンテナ70は、送信アンテナ50と同様な構造を有しているため、代表して送信アンテナ50について説明する。

【0034】
図2に示されるように、送信アンテナ50は、2層構造のアンテナとして構成されている。送信アンテナ50は、例えば、水平偏波を放射するスロットアレーアンテナで構成された第1層L1と、第1層L1に対向して配置され、第1層L1から放射された水平偏波の指向性を調整するための第2層L2とを備える。

【0035】
送信アンテナ50における第1層L1は、受信アンテナ70における第3層L3に、送信アンテナ50における第2層L2は、受信アンテナ70における第4層L4に対応する。

【0036】
図示されていないが、第1層L1の放射面と反対側の面には、信号電力が入力される入力部が接続される(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。入力部は、例えば、入力された信号電力を分配する給電回路と、分配された信号電力が給電される給電スロットと、給電スロットからの電力を励振するキャビティとにより構成されたものが用いられる。第1層L1から偏波の進行方向に(+x方向)に所定距離離間して第2層L2が対向して配置される。所定距離は、例えば1/2波長以下の距離である。

【0037】
第1層L1は、矩形のスロット板51を備える。スロット板51は、例えば、金属などの導体で形成された矩形の板状体である。スロット板51には、複数のスロット52がマトリクス状に配置されている。スロット52は、スロット板51に設けられた矩形の貫通孔である。スロット52は、矩形の長手方向(z方向)がスロット52から放射される偏波の偏波面(xy面)と直交する。

【0038】
隣接するスロット52間の長さは、1波長未満(例えば0.95[λ]以下)である。スロット板51の一面側51a(放射面)には、電磁波の漏れを防ぐための隔壁54が設けられている。隔壁54は、4枚の矩形の板状体により形成されており、スロット板51の周囲を囲むように延在している。

【0039】
隔壁54は、スロット板51の放射面から偏波の進行方向(+x方向)に立設されている。隔壁54の偏波の進行方向における高さは、例えば、1/2波長以下である。隔壁54において、送信アンテナ50と、受信アンテナ70との間に設けられている隔壁54Aは、送信アンテナ50と受信アンテナ70との間で共用される。隔壁54Aにより、送信アンテナ50と、受信アンテナ70との間における偏波の漏洩が防止され、送信アンテナ50と、受信アンテナ70との間のアイソレーションが確保される。

【0040】
スロット板51と隔壁54とにより形成された空間Sは、第2層L2により塞がれる。第2層L2は、矩形の誘電板55と、誘電板55に設けられた複数のダイポール素子56とを備える。複数のダイポール素子56のそれぞれは、複数のスロット52のそれぞれに位置が対応するように配置されている。

【0041】
図3に示されるように、誘電板55は、例えば、矩形の導体板55Aと、一対の矩形の第1誘電板55Bと第2誘電板55Cとを備える。誘電板55は、導体板55Aが一対の第1誘電板55Bと第2誘電板55Cとの間に挟まれたサンドイッチ構造を有する。

【0042】
導体板55Aは、例えば、金属などの導体で形成された板状体である。導体板55Aには、複数のダイポール素子56に対応する位置に楕円形の貫通孔H1が設けられている。貫通孔H1は、後述の一対の導体柱56C,56Dが挿通された状態で導体柱56C,56Dに接触しない大きさに形成されている。

【0043】
第1誘電板55Bは、例えば、樹脂などの誘電体で形成された板状体である。第1誘電板55Bは、例えば、導体板55Aに対して貼り付けられる。第1誘電板55Bは、導体板55Aに対して溶融した樹脂を塗布することで形成されてもよい。

【0044】
第1誘電板55Bには、一対の円形の貫通孔H2,H3が複数のダイポール素子56の位置に対応して複数の位置に設けられている。第2誘電板55Cは、第1誘電板55Bと同じ構造である。第2誘電板55Cは、例えば、樹脂などの誘電体で形成された板状体である。第2誘電板55Cは、第1誘電板55Bと同様の手法で導体板55Aに対して形成される。第2誘電板55Cには、一対の円形の貫通孔H4,H5が複数のダイポール素子56の位置に対応して複数の位置に設けられている。

【0045】
第1誘電板55Bと、導体板55Aと、第2誘電板55Cとを積層すると、誘電板55には一対の貫通孔が形成される。この一対の貫通孔には、それぞれ一対の導体柱56C,56Dが挿通される。一対の導体柱56C,56Dは、例えば、金属などの導体で形成された円柱である。一対の導体柱56C,56Dの長さは、誘電板55の厚さと略同一である。貫通孔H2,H4及び貫通孔H3、H5の径は、導体柱56C,56Dと略同一である。

【0046】
一対の導体柱56C,56Dの両端には、一対の矩形の第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bが接続される。一対の第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bは、金属などの導体で形成された板状体である。これにより、一対の導体柱56C,56Dと一対の第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bとは、電気的に接続される。導体板55Aと第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bとは、貫通孔H1が一対の導体柱56C,56Dと接触していないため、電気的に接続していない。このような構成により、第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bのそれぞれは、ダイポールアンテナとして機能する。

【0047】
第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bは、それぞれ長手方向と短手方向を有する矩形に形成されている。一対の第1ダイポール板56A及び第2ダイポール板56Bは、スロット52に対して長手方向同士が直交するように配置されている(図2参照)。このような構成により、送信アンテナ50は、水平偏波を送信することができる。

【0048】
受信アンテナ70は、送信アンテナ50と同様の構成を有することにより、通信相手となる送信アンテナ50から放射された水平偏波を受信することができる。

【0049】
次に送受信アレーアンテナ3の動作について説明する。送信アンテナ50において、スロット板51の他面側52bに接続された入力部で分配され、励振された信号電力により、スロット板51の放射面側に存在する空間Sに向かって、複数のスロット52から水平偏波F1が放射される(図2参照)。この時、隔壁54Aにより、空間Sに放射された水平偏波F1は、受信アンテナ70側に漏洩せず、送信アンテナ50と受信アンテナ70との間のアイソレーションが確保される。

【0050】
放射された水平偏波F1は、第1ダイポール板56A(図3参照)を励振する。第1ダイポール板56Aが励振されることにより、電気的に接続された第2ダイポール板56Bを励振し、第2ダイポール板56Bから外部空間に水平偏波F2が放射される(図2参照)。

【0051】
図4に示されるように、第2ダイポール板56Bの指向性は、第2ダイポール板56Bの長手方向の軸線を中心に8の字型になり、第2ダイポール板56Bの長手方向(y軸方向)には、偏波が到達しにくくなる。図において、E面は、電解ベクトルと最大放射方向を含む平面であり、H面は、磁界ベクトルと最大放射方向を含む平面である。

【0052】
従って、複数のダイポール素子56の指向性により、送信アンテナ50から水平偏波が放射される場合、隣接する受信アンテナ70の方向への偏波の放射が抑制される。送信アンテナ50は、複数のダイポール素子56によりスロット52から放射された水平偏波F1の指向性を調整し、アイソレーションを確保する方向に調整された水平偏波F2を外部空間に放射する。このように、送受信アレーアンテナ3は、送信アンテナ50と、受信アンテナ70との間のアイソレーションを高めることができる。

【0053】
上述したように第1実施形態によれば、アレーアンテナ1は、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ2と、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナ3により、送信側のアンテナと受信側のアンテナとの間でアイソレーションを高い状態に保ちつつ、直交偏波を同時に送受信することができる。

【0054】
[第2実施形態]
第1実施形態のアレーアンテナ1は、例えば、周波数が40[GHz]程度の偏波を送受信するものであった。しかし、送受信する周波数が3[Ghz]程度の低周波数の偏波をアレーアンテナ1で送受信する場合、導波管を用いた給電回路や受信回路が40[GHz]程度の偏波を送受信するものに比して10倍程度になり、重量が増大する。

【0055】
第2実施形態では、重量を低減することができるアレーアンテナ100を提供する。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。

【0056】
[全体構成]
図5に示されるように、アレーアンテナ100は、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ102と、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナ103とを備える。送受信アレーアンテナ102と送受信アレーアンテナ103とは、基準面(例えば、xy平面)に対して垂直方向(z軸方向)に隣接して配置されているが、水平方向(y軸方向)に隣接していてもよい。上述した配置関係は一例であり、他の配置関係であってもよい。

【0057】
[水平偏波の送受信について]
送受信アレーアンテナ103は、水平偏波を送信する送信アンテナ150と、水平偏波を受信する受信アンテナ170とを備える。送信アンテナ150と、水平偏波を受信する受信アンテナ170とは、複数のダイポール素子152を有するアレーアンテナである。送信アンテナ150と、水平偏波を受信する受信アンテナ170とは、同一の構成を備えているため、代表して送信アンテナ150について説明する。

【0058】
送信アンテナ150の構成は、第1実施形態の送信アンテナにおける第2層L2の構成と同様である。送信アンテナ150における第1層M1は、受信アンテナ170における第3層M3に、送信アンテナ150における第2層M2は、受信アンテナ170における第4層M4に対応する。

【0059】
送信アンテナ150は、矩形の導体板151を備える。導体板151には、複数のダイポール素子152がマトリクス状に配置されている。図示されていないが、送信アンテナ150には、給電回路が接続される。この給電回路は、例えば、電気的な回路で構成され、ダイポール素子152の給電側に設けられた第1ダイポール板(図3参照)に電極を介して接続される。給電回路は、既知の回路が用いられる。

【0060】
これにより複数のダイポール素子152のそれぞれに信号電力が給電される。そして、複数のダイポール素子152のそれぞれから水平偏波が放射される。給電回路を電気的な回路で構成することにより、導波管で給電回路を構成した場合に比して装置全体の重量が低減される。

【0061】
第1実施形態の第2層L2における効果と同様に、複数のダイポール素子152から放射された水平偏波は、隣接する受信アンテナ170への到達が抑制されるため、送信アンテナ150と受信アンテナ170との間のアイソレーションが高くなる。

【0062】
[垂直偏波の送受信について]
送受信アレーアンテナ102は、垂直偏波を送信する送信アンテナ110と、垂直偏波を受信する受信アンテナ130とを備える。送信アンテナ110と、受信アンテナ130とは、例えば、基準面(xy面)に対して並置されている。送信アンテナ110と、受信アンテナ130とは、同じ構造を有している。以下、送信アンテナ110について説明するが、受信アンテナ130も同じ構造を有している。

【0063】
図6に示されるように、送信アンテナ110は、2層構造のアンテナとして構成されている。送信アンテナ150は、例えば、第1層M1と、第1層M1に対向して配置された第2層M2とを備える。ここで、第1層M1は、第1実施形態の第1層L1と同様の構成を有し、第2層M2も第1実施形態の第2層L2と同様の構成を有する。

【0064】
送信アンテナ150においては、複数のダイポール素子を備える第2層M2から放射された垂直偏波の指向性を複数のスロットを備える第1層M1を用いて調整する。第2層M2には、ダイポール素子116の給電側に設けられた第1ダイポール板(図3参照)に電極を介して接続される。これにより複数のダイポール素子116のそれぞれに信号電力が給電される。そして、複数のダイポール素子152のそれぞれから垂直偏波が放射される。

【0065】
図7に示されるように、仮に、複数のダイポール素子Dにより、第2層M2と同様の構成を備える送受信アレーアンテナを構成すると、ダイポール素子の指向性(図4参照)により、送信アンテナから放射された水平偏波の成分が受信アンテナに影響を与え、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションが低くなる。

【0066】
図6に戻り、送信アンテナ150においては、送信アンテナ110と、受信アンテナ130との間に隔壁114Aを設け、送信アンテナ110と、受信アンテナ130との間のアイソレーションを確保する。更に、送信アンテナ150において、第2層M2に対向して第1層M1が配置される。

【0067】
ダイポール素子116の第1ダイポール板に信号電力が給電されると、ダイポール素子116の第2ダイポール板が励振され、隔壁114内の空間Sに第2ダイポール板から垂直偏波が放射される。放射された垂直偏波は、対応する位置のスロット112に到達し、スロット112から外部空間に対して指向性が調整された垂直偏波が放射される。

【0068】
この時、上述したように、垂直偏波を放射するスロット112の指向性により、送信アンテナ110から放射された垂直偏波は、受信アンテナ130に到達しにくくなる。従って、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ102において、送信アンテナ110と受信アンテナ130との間のアイソレーションが高くなる。

【0069】
上述したように第2実施形態によれば、アレーアンテナ100は、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ102と、水平偏波を送受信する送受信アレーアンテナ103により、送信側のアンテナと受信側のアンテナとの間でアイソレーションを高い状態に保ちつつ、直交偏波を同時に送受信することができる。

【0070】
更に、アレーアンテナ100は、垂直偏波を送受信する送受信アレーアンテナ102に接続される給電回路を電気的な回路で構成することにより、低周波の信号を送受信するさいに構成される装置の重量を低減することができる。

【0071】
[変形例1]
上記の実施形態において、ダイポール素子は、一対の矩形のダイポール板が用いられていた。ダイポール板は、必ずしも一体で形成されていなくてもよく、2枚の板状体で分離して形成されていてもよい。

【0072】
図8に示されるように、ダイポール素子Pにおいて、第1ダイポール板P1は、2枚の矩形の板状体P2,P3で形成され、第2ダイポール板P6は、2枚の矩形の板状体P7,P8で形成されている。2枚の板状体P2,P3のそれぞれには、導体柱P4,P5の一端が接続される。導体柱P4,P5の他端には、2枚の板状体P7,P8がそれぞれ接続される。ダイポール素子Pは、放射される偏波に対するアイソレーションの高さに応じて適宜用いられる。

【0073】
[変形例2]
図9に示されるように、送受信アレーアンテナ3において、送信アンテナ50と受信アンテナ70との間の隔壁は、外部空間の偏波の放射方向に向かって突出して形成されていてもよい。突出した隔壁54Bの高さは、送信アンテナ50と受信アンテナ70との間のアイソレーションの値によって適宜調整される。図10に示されるように、送受信アレーアンテナ102においても突出した隔壁114Bが設けられていてもよい。突出した隔壁を送信アンテナと受信アンテナとの間に設けることにより、送信アンテナと受信アンテナとの間のアイソレーションを更に高めることができる。

【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…アレーアンテナ、2、3…送受信アレーアンテナ、10…送信アンテナ、11…スロット板、12…スロット、22…スロット板、30…受信アンテナ、32…スロット、50…送信アンテナ、51…スロット板、52…スロット、54…隔壁、54A…隔壁、54B…隔壁、55…誘電板、55A…導体板、55B…第1誘電板、55C…第2誘電板、56…ダイポール素子、56A…第1ダイポール板、56B…第2ダイポール板、56C…導体柱、56D…導体柱、70…受信アンテナ、100…アレーアンテナ、102、103…送受信アレーアンテナ、110…送信アンテナ、112…スロット、114…隔壁、114A、114B…隔壁、116…ダイポール素子、130…受信アンテナ、150…送信アンテナ、151…導体板、152…ダイポール素子、170…受信アンテナ、D…ダイポール素子、H1…貫通孔、H2…貫通孔、H3…貫通孔、H4…貫通孔、H5…貫通孔、L1…第1層、L2…第2層、L3…第3層、L4…第4層、M1…第1層、M2…第2層、M3…第3層、M4…第4層、P…ダイポール素子、P1…第1ダイポール板、P2…板状体、P3…板状体、P4…導体柱、P5…導体柱、P6…第2ダイポール板、P7…板状体、P8…板状体
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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