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明細書 :水電気分解装置、膜電極接合体、Ru系ナノ粒子連結触媒およびRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法、燃料電池並びにメタンの水素化用触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-188701 (P2018-188701A)
公開日 平成30年11月29日(2018.11.29)
発明の名称または考案の名称 水電気分解装置、膜電極接合体、Ru系ナノ粒子連結触媒およびRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法、燃料電池並びにメタンの水素化用触媒
国際特許分類 C25B   9/00        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
C25B   1/10        (2006.01)
C25B  11/03        (2006.01)
C25B  11/08        (2006.01)
B01J  23/46        (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
B01J  37/10        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
FI C25B 9/00 A
H01M 8/10
H01M 4/92
H01M 4/86 M
H01M 4/86 B
C25B 1/10
C25B 11/03
C25B 11/08 Z
B01J 23/46 301M
B01J 35/08 A
B01J 37/10
C01B 3/40
C01B 3/04 R
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2017-091371 (P2017-091371)
出願日 平成29年5月1日(2017.5.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年11月3日開催 12th Japan-Korea Symposium on Materials & Interfaces-International Symposium on Frontiers in Chemical Engineering-にて発表
発明者または考案者 【氏名】山口 猛央
【氏名】山口 貴正
【氏名】杉田 佳之
【氏名】田巻 孝敬
【氏名】黒木 秀記
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査請求 未請求
テーマコード 4G140
4G169
4K011
4K021
5H018
5H126
Fターム 4G140EA02
4G140EA06
4G140EC03
4G140EC08
4G169AA03
4G169AA08
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC75B
4G169CB81
4G169CC31
4G169CC32
4G169EA06
4G169EA07
4G169EB06
4G169EB15X
4G169EB18Y
4G169EC25
4G169EE01
4G169FB10
4K011AA11
4K011AA15
4K011AA23
4K011AA30
4K011CA01
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB05
4K021DB16
4K021DB20
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H018AA06
5H018EE03
5H018HH03
5H126BB06
要約 【課題】耐久性に優れ、カーボン担体フリーでも触媒効率を高めることが可能な水電気分解装置、燃料電池、膜電極接合体、Ru系ナノ粒子連結触媒層およびその製造方法、並びにメタンの水素化法を提供する。
【解決手段】本発明の水電気分解装置1は、水を電気分解して水素と酸素を発生する水電気分解装置1であって、電解質(固体高分子形電解質膜5、イオン伝導体4)と、電解質と接するアノード電極10と、電解質と接し、アノード電極10と外部回路を通じて接続される、水素ガスを発生するカソード電極20とを備え、アノード電極10の電解質と接する表面の少なくとも一部に、Ru含有金属ナノ粒子が連結した焼結体よりなる、電子伝導性を示すRu系ナノ粒子連結触媒3が用いられる。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
水を電気分解して水素と酸素を発生する水電気分解装置であって、
電解質と、
前記電解質と接するアノード電極と、
前記電解質と接し、前記アノード電極と外部回路を通じて接続される、水素ガスを発生するカソード電極とを備え、
前記アノード電極の前記電解質と接する表面の少なくとも一部に、Ru含有金属ナノ粒子が連結した焼結体よりなる、電子伝導性を示すRu系ナノ粒子連結触媒を含むアノード触媒層が用いられる水電気分解装置。
【請求項2】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒が、カプセル状触媒、ロッド状触媒およびシート状触媒の少なくともいずれかである請求項1に記載の水電気分解装置。
【請求項3】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カーボン担体フリーである請求項1又は2に記載の水電気分解装置。
【請求項4】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、fcc構造を含む請求項1~3のいずれかに記載の水電気分解装置。
【請求項5】
前記アノード触媒層の厚みが、10μm以下である請求項1~4のいずれかに記載の水電気分解装置。
【請求項6】
アノード触媒層とカソード触媒層との間に固体高分子形電解質膜が配置された膜電極接合体であって、
前記アノード触媒層および前記カソード触媒層の少なくとも一方に、焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を示すRu系ナノ粒子連結触媒が用いられる膜電極接合体。
【請求項7】
前記アノード触媒層の厚みが、10μm以下である請求項6に記載の膜電極接合体。
【請求項8】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カーボン担体フリーである請求項6又は7に記載の膜電極接合体。
【請求項9】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、fcc構造を含む請求項6~8のいずれかに記載の膜電極接合体。
【請求項10】
所望の形状を有し、第1の極性を有する鋳型を形成する工程(a)と、
前記鋳型の表面に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し、Ru含有金属ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させる工程(b)と、
工程(b)後に、焼結処理によりRu系ナノ粒子連結触媒を得る工程(c)と、
前記Ru系ナノ粒子連結触媒と接触部位を有するイオン伝導体を組み込む工程(d)とを具備し、
工程(d)の前記イオン伝導体は、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかあるRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
(i)工程(a)によって組み込まれた前記鋳型に含まれている成分である。
(ii)工程(c)の後に、前記鋳型に含まれている成分を前駆体として、変換することにより得られるものである。
(iii)工程(c)の後に、新たに加えることにより導入するものである。
【請求項11】
前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カプセル状触媒、ロッド状触媒およびシート状触媒の少なくともいずれかであり、
前記Ru系ナノ粒子連結触媒の内部、若しくは外部に、前記イオン伝導体が設けられている請求項10に記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
【請求項12】
前記焼結処理は、超臨界処理、若しくは亜臨界処理である請求項10又は11に記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
【請求項13】
前記鋳型は、プレ鋳型粒子の表面を修飾して、表面が第1の極性を有する鋳型粒子からなる請求項10~12のいずれかに記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
【請求項14】
焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を有するRu系ナノ粒子連結触媒。
【請求項15】
アノード触媒層とカソード触媒層との間に固体高分子形電解質膜が配置された膜電極接合体を有する燃料電池であって、
前記膜電極接合体は、請求項6~9のいずれかに記載の膜電極接合体であり、
前記固体高分子形電解質膜は、前記Ru系ナノ粒子連結触媒と少なくとも一部が接触し、イオン伝導体を備える燃料電池。
【請求項16】
メタンガスを水素ガスに改質する触媒であって、
焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を有するRu系ナノ粒子連結触媒が用いられるメタンの水素化用触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して水素ガスおよび酸素ガスを発生する水電気分解装置に関する。また、Ru系ナノ粒子連結触媒およびRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法、前記触媒を用いた膜電極接合体に関する。更に、電気エネルギーを取り出す燃料電池およびメタンの水素化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解は、二酸化炭素を発生することなく電力から水素に変換できるので、再生可能エネルギーを水素エネルギーとして貯蔵する電力-水素貯蔵システムとして注目を集めている。水電解方式には、アルカリ水電解、固体高分子形水電解、高温水電解等がある。このうち固体高分子形水電解は、固体高分子形電解質膜を一対の電極で挟持した構成を成し、一方の電極から酸素ガスを、他方の電極から水素ガスを発生させる。一対の電極間距離が小さく、高電流密度運転に有利な方式のため、精力的に研究開発が行われている。
【0003】
特に、高性能化のキーとなる電極の触媒層について種々の提案がなされている。例えば、非特許文献1には、担持体フリーのIr,Ru酸化物粒子を用いた触媒層が提案されている。また、非特許文献2には、カーボン担持にPt-M(M=Ir,Re,Ru,Pd),Pt-Ru-M(M=Ir,Pd)粒子を担持させた触媒層が提案されている。更に、非特許文献3には、ステンレスメッシュに担持させたNi,Fe酸化物を用いる触媒層が開示され、非特許文献4には、Niメッシュに担持させたNi,Fe酸化物粒子を用いる触媒層が提案されている。
【0004】
なお、本発明者らは、先般、水電解分解装置に関する技術ではないが、燃料電池に好適なナノ粒子連結構造を有する技術を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-92464号公報
【0006】

【非特許文献1】International Journal of Hydrogen Energy, 2007, 32, 2320-2324
【非特許文献2】Journal of The Electrochemical Society, 2009, 156, 3, B363-B369
【非特許文献3】Phys. Chem. Chem. Phys., 2011, 13, 1162-1167
【非特許文献4】Energy Environ. Sci., 2012, 5, 7869-
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水電気分解装置の普及を促進するためには、水を分解するアノード触媒の触媒活性を向上する技術が切望されている。また、触媒活性向上に加えて耐久性の改善が求められている。金属ナノ粒子をカーボン粒子に担持させる方式は、金属触媒の有効利用表面積を増加させられるという利点を有する一方で、高電位側でカーボン腐食が発生するので、耐久性に課題がある。また、カーボン担体に代えてTiファイバー担体などに金属粒子を担持させる方式が知られているが、触媒層が厚くなるので、水電解で発生するガス拡散抵抗などが大きくなってしまうという問題がある。
なお、上記においては、水電気分解装置における問題点を述べたが、燃料電池、メタンガスの水素化反応に対しても同様の課題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れ、カーボン担体フリーでも触媒効率を高めることが可能な水電気分解装置、膜電極接合体、Ru系ナノ粒子連結触媒およびRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法、燃料電池並びにメタンの水素化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]: 水を電気分解して水素と酸素を発生する水電気分解装置であって、電解質と、前記電解質と接するアノード電極と、前記電解質と接し、前記アノード電極と外部回路を通じて接続される、水素ガスを発生するカソード電極とを備え、前記アノード電極の前記電解質と接する表面の少なくとも一部に、Ru含有金属ナノ粒子が連結した焼結体よりなる、電子伝導性を示すRu系ナノ粒子連結触媒が用いられる水電気分解装置。
ここで、「電解質」は、電解質水溶液、電解質ポリマーが例示できる。また、「Ru含有金属ナノ粒子」とは、Ru(ルテニウム)単独からなるルテニウムナノ粒子、当該ルテニウムナノ粒子とそれ以外の金属元素からなる金属ナノ粒子の混合物、ルテニウムとその他の金属の合金からなる金属ナノ粒子をいう。また、これらの金属ナノ粒子は、金属酸化物であってもよい。Ru含有金属ナノ粒子は、単一種類でも複数種を併用してもよい。また、「Ru系ナノ粒子連結触媒」とは、金属ナノ粒子が焼結せしめられてナノ粒子同士が連結した部と空隙部がある、ネットワーク状に連結した触媒をいい、金属ナノ粒子として少なくともRu含有金属ナノ粒子が用いられる。触媒の形態は特に限定されず、用途に応じて所望の形状にすることができる。
【0010】
[2]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒が、カプセル状触媒、ロッド状触媒およびシート状触媒の少なくともいずれかである[1]に記載の水電気分解装置。
[3]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カーボン担体フリーである[1]又は[2]に記載の水電気分解装置。
[4]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、fcc構造を含む[1]~[3]のいずれかに記載の水電気分解装置。
[5]: 前記アノード触媒層の厚みが、10μm以下である[1]~[4]のいずれかに記載の水電気分解装置。
【0011】
[6]: アノード触媒層とカソード触媒層との間に固体高分子形電解質膜が配置された膜電極接合体であって、前記アノード触媒層および前記カソード触媒層の少なくとも一方に、焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を示すRu系ナノ粒子連結触媒が用いられる膜電極接合体。
[7]: 前記アノード触媒層の厚みが、10μm以下である[6]に記載の膜電極接合体。
[8]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カーボン担体フリーである[6]又は[7]に記載の膜電極接合体。
[9]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、fcc構造を含む[6]~[8]のいずれかに記載の膜電極接合体。
【0012】
[10]: 所望の形状を有し、第1の極性を有する鋳型を形成する工程(a)と、
前記鋳型表面に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し、Ru含有金属ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させる工程(b)と、
工程(b)後に、焼結処理によりRu系ナノ粒子連結触媒を得る工程(c)と、
前記Ru系ナノ粒子連結触媒と接触部位を有するイオン伝導体を組み込む工程(d)とを具備し、
工程(d)の前記イオン伝導体は、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかあるRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
(i)工程(a)によって組み込まれた前記鋳型に含まれている成分である。
(ii)工程(c)の後に、前記鋳型に含まれている成分を前駆体として、変換することにより得られるものである。
(iii)工程(c)の後に、新たに加えることにより導入するものである。
[11]: 前記Ru系ナノ粒子連結触媒は、カプセル状触媒、ロッド状触媒およびシート状触媒の少なくともいずれかであり、
前記Ru系ナノ粒子連結触媒の内部、若しくは外部に、前記イオン伝導体が設けられている[10]に記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
[12]: 前記焼結処理は、超臨界処理、若しくは亜臨界処理である[10]又は[11]に記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
[13]: 前記鋳型は、プレ鋳型粒子の表面を修飾して、表面が第1の極性を有する鋳型粒子からなる[10]~[12]のいずれかに記載のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法。
【0013】
[14]: 焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を有するRu系ナノ粒子連結触媒。
[15]: アノード触媒層とカソード触媒層との間に固体高分子形電解質膜が配置された膜電極接合体を有する燃料電池であって、
前記膜電極接合体は、[6]~[9]のいずれかに記載の膜電極接合体であり、
前記固体高分子形電解質膜は、前記Ru系ナノ粒子連結触媒と少なくとも一部が接触し、イオン伝導体を備える燃料電池。
[16]: メタンガスを水素ガスに改質する触媒であって、
焼結体よりなり、Ru含有金属ナノ粒子が連結して電子伝導性を有するRu系ナノ粒子連結触媒が用いられるメタンの水素化用触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性に優れ、カーボン担体フリーでも触媒効率を高めることが可能な水電気分解装置、膜電極接合体、Ru系ナノ粒子連結触媒およびRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法、燃料電池並びにメタンの水素化用触媒を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る水電気分解装置の要部の一例を示す模式的断面図。
【図2】カチオン交換膜を有する固体高分子形水電気分解装置の水電気分解反応の模式的説明図。
【図3】アニオン交換膜を有する固体高分子形水電気分解装置の水電気分解反応の模式的説明図。
【図4】第1実施形態に係るアノード触媒層の模式的な部分拡大図。
【図5】第1実施形態に係るカプセル状触媒の模式図。
【図6】図5のVI-VI切断線における模式的斜視図。
【図7】第1実施形態に係るアノード触媒層の製造工程を示す説明図。
【図8】第1実施形態に係るアノード触媒層の製造工程を示す説明図。
【図9】第1実施形態に係るアノード触媒層の製造工程を示す説明図。
【図10】第1実施形態に係るアノード触媒層の製造工程を示す説明図。
【図11】第2実施形態に係るアノード触媒層の模式的な部分拡大図。
【図12】第3実施形態に係るアノード触媒層の模式的な部分拡大図。
【図13】第5実施形態に係るアノード触媒層の模式的な説明図。
【図14】第6実施形態に係る水電気分解装置の要部の一例を示す模式的断面図。
【図15】第7実施形態に係る燃料電池の要部の一例を示す模式的断面図。
【図16】第8実施形態に係るメタンの水素化装置の模式的説明図。
【図17】実施例1のRu系ナノ粒子連結触媒の走査型電子顕微鏡像。
【図18】実施例1のRu系ナノ粒子連結触媒の透過型電子顕微鏡像。
【図19】実施例2のRu系ナノ粒子連結触媒の透過型電子顕微鏡像。
【図20】実施例3のRu系ナノ粒子連結触媒の透過型電子顕微鏡像。
【図21】実施例1~3および比較例1のRu系ナノ粒子連結触媒のXRD測定結果を示す図。
【図22】実施例1、比較例1、3の触媒の酸性環境下での酸素発生反応活性評価におけるLSV曲線。
【図23】実施例1、比較例1、3の触媒のアルカリ環境下での酸素発生反応活性評価におけるLSV曲線。
【図24】実施例1、比較例1、3の触媒の酸性環境下での水素発生反応活性評価におけるLSV曲線。
【図25】実施例1、比較例1、3の触媒のアルカリ環境下での水素発生反応活性評価におけるLSV曲線。
【図26】実施例1~3、比較例2、3の触媒のメタノール水溶液中のメタノール酸化反応の活性評価におけるCV曲線。
【図27】従来例に係る水電気分解装置のアノード触媒層の部分拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A~B」とは、数値Aと数値Aより大きい値であって、且つ数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、本明細書において特に言及していない本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。

【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る水電気分解装置の要部の模式図の一例を図1に示す。水電気分解装置1は、電解質として機能するイオン電導性を有する固体高分子形電解質膜5、水が供給されるアノード電極10、水素ガスが発生するカソード電極20を具備するセル6、並びに外部回路7を有する。通常、水電気分解装置1は、複数のセル6がスタックされている。

【0018】
アノード電極10は、アノード触媒層11、ガス拡散層12が固体高分子形電解質膜(以下、「電解質膜」ともいう)5側からこの順に配置され、カソード電極20は、カソード触媒層21、ガス拡散層22が電解質膜5側からこの順に配置されている。そして、アノード電極10の外側にはセパレータ13、カソード電極20の外側にはセパレータ23が配されている。アノード電極10およびカソード電極20は、ガス、水、触媒層が同時に接触できるのでガス拡散電極ともいえる。

【0019】
電解質膜5には、カチオン交換膜(Cation Exchange Membrane (PEM))と、アニオン交換膜(Anion Exchange Membrane (AEM))がある。カチオン交換膜を用いる場合、図2の模式図に示すように、アノード側で、
O→2H+1/2O+2e
の反応が起こり、酸素ガスと水素イオンが発生する。そして、電子は外部回路7を通じてカソード電極20に供給される。一方、水素イオンは、電解質膜5を介してカソード電極20側に移動する。そして、カソード電極20側で
2H+2e→H
の反応が起こり、水素ガスが発生する。
一方、アニオン交換膜を用いる場合、図3に示すように、電解質膜5を介してアノード側に水酸化物イオン(OH)が移動する。そして、アノード側で
2OH→HO+1/2O+2e
の反応が起こる。即ち、酸素ガスが発生する。そして、電子は外部回路を介してカソード側に供給される。一方、カソード側では
2HO+2e→2OH+H
の反応が起こり、水素ガスが発生する。
第1実施形態は、電解質膜5としてカチオン交換膜およびアニオン交換膜のいずれにも適用できるが、ここではカチオン交換膜を用いた場合について説明する。

【0020】
アノード電極10側に水を供給しながら両電極間に電圧を印加すると、水がアノード電極10で電気分解され、酸素および水素イオン(H)が生成する。この水素イオンは、電解質膜5を透過してカソード電極に移動し、ここで、外部回路7からの電子を受け取り水素ガスとなる。電解質膜5には、実質的に水素イオンのみを透過させる膜が好ましいが、水が移動する膜を用いてもよい。後者の場合には、カソード電極20側にも排水システムを構築する必要がある。

【0021】
アノード電極10の電解質膜5と接する表面の少なくとも一部に、Ru系ナノ粒子連結触媒からなるアノード触媒層11が設けられている。Ru系ナノ粒子連結触媒は、Ru含有金属ナノ粒子が連結した焼結体よりなり、電子伝導性を有する。アノード触媒層11は、Ru系ナノ粒子連結触媒単独でもよいが、更にイオン伝導体を有していてもよい。この場合、イオン伝導体も電解質膜5と共に電解質として機能する。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含めることができる。

【0022】
カソード電極20を構成するカソード触媒層21としては、公知の触媒層を適宜用いることができるが、上述したRu系ナノ粒子連結触媒も好適に用いることができる。カソード触媒層21としてRu系ナノ粒子連結触媒を用いることにより、カーボン担持体に金属ナノ粒子を担持させた従来の触媒層に比して格段に厚みを薄くすることが可能になる。その結果、水電気分解装置のコンパクト化を実現できる。更に、単位面積当たりの電力消費量の削減を図ることが可能となる。

【0023】
アノード触媒層11とカソード触媒層21が、電解質膜5と向かい合うように電解質膜5に接合した構造を膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)8という。外部回路7により、アノード電極10のアノード触媒層11およびカソード電極20のカソード触媒層21等が電気的に接続されている。

【0024】
カチオン交換膜を用いる場合、水電気分解装置1において、水は、アノード電極10側に供給される。通常、純水が用いられる。アノード電極10の主としてアノード触媒層11において水が電気分解され、水素イオンと酸素が生成する。上記のように構成された水電気分解装置1は、アノード電極10において酸素ガスがセパレータ13のガス流路14を介して排出される。生成された水素イオンは、イオン伝導性を有する電解質膜5を介してカソード触媒層21に移動する。一方、生成された電子は、外部回路7を経由してカソード触媒層21に移動する。カソード電極20に到達した水素イオンおよび電子は、カソード触媒層21において水素ガスとなる。これらの一連の反応によって、酸素ガスおよび水素ガスが生成する。

【0025】
電解質膜5はイオンを輸送可能であり、且つ電子伝導性を示さない材料で構成された膜であれば特に制限はない。好適な例としては、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂や、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなどが挙げられる。

【0026】
以下、アノード触媒層11として用いる触媒層について詳述する。図4に、第1実施形態に係る触媒層の模式的な部分拡大図を示す。第1実施形態に係るRu系ナノ粒子連結触媒3は、カプセル状触媒30からなり、このカプセル状触媒30の主として外側表面でイオン伝導体4と接触するようになっている。なお、カプセル状触媒30同士が接触および/又は融着して電子伝導性が確保されるが、図4の例においては説明の便宜上、一面に配置されるカプセル状触媒30を図示しているので、図中では必ずしもカプセル状触媒30同士が接合および/又は融着していない。

【0027】
図5に第1実施形態のカプセル状触媒30の模式図を、図6に、図5のVI-VI切断線における模式的斜視図を示す。第1実施形態のカプセル状触媒30は、図5、図6に示すように外郭が概ね球状の網目状骨格31を成し、その内部は中空構造32となっている。網目状骨格31は、金属同士が融着したネットワーク状構造をとり、電子伝導性を有する。

【0028】
網目状骨格31には、多数の空隙33が形成されている。空隙33は、輪郭を画定するカプセル状触媒の内部と外部とを連通するように形成されている。網目状骨格31の空隙率は特に限定されない。網目状骨格を維持でき、電子伝導性を確保できる範囲であればよく、用途や求められるニーズに応じて適宜設計することができる。触媒の量が要求される用途等の場合には、例えば、空隙を1%程度とすることができる。また、網目状骨格の強度が構造由来で高い場合等には、例えば、空隙を90%程度とすることができる。

【0029】
カプセル状触媒30の外郭の厚みは特に限定されないが、好ましくは1nm以上、50nm以下である。カプセル状触媒30の厚みを1nm以上とすることにより、構造欠陥を抑制して安定した製造を行うことができる。なお、Ru系ナノ粒子連結触媒3の形状は特に限定されるものではなく、後述する鋳型粒子の形状を制御することにより形状を自在に設計できる。例えば、楕円球形状、後述する第3実施形態のような円筒状のロッド状、後述する第5実施形態のようにシート状としたり、螺旋形状としたりすることが可能である。また、単一種類から構成しても、2種以上を複数融合して構成してもよい。

【0030】
Ru系ナノ粒子連結触媒3の材料は、焼結体を形成することが可能であり、少なくともその一部にルテニウムを含有する金属を含有する金属系ナノ粒子であれば制限なく用いることができる。好適な例として、Ru単独のナノ粒子連結触媒がある。また、ルテニウム以外の他の金属が含まれているRu系ナノ粒子連結触媒を用いてもよい。他の金属としては、従来公知のものを使用できる。例えば、白金、コバルト、ニッケル、パラジウム、鉄、銀、金、銅、イリジウム、モリブデン、ロジウム、クロム、タングステン、マンガン、これらの金属化合物、金属酸化物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。これらのうちでも、ルテニウム単独、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-コバルト合金、ルテニウム-ニッケル合金、ルテニウム-鉄合金、ルテニウム-白金-鉄合金、ルテニウム-白金-イリジウム合金、ルテニウム-白金-パラジウム合金等のルテニウム合金が多く用いられる。ルテニウム-鉄-ニッケル合金、ルテニウム-イリジウム合金、ルテニウム-パラジウム合金、ルテニウム-ロジウム合金等も例示できる。アノード触媒層11として、Ru系ナノ粒子連結触媒が用いられていればよく、他の金属ナノ粒子連結触媒と混合してもよい。

【0031】
Ru系ナノ粒子連結触媒3の構造は特に限定されないが、好ましい構造として、fcc構造またはhcp構造(六方最密充填)がある。触媒活性の点からは、fcc構造を有することが好ましい。アノード触媒層11を構成するカプセル状触媒30は、単一種類でも、2種以上を混合して用いてもよい。

【0032】
カプセル状触媒30の粒径は特に限定されず、用途に応じて適宜選定することができる。カプセル状触媒30の粒径は、後述する鋳型粒子の大きさを制御することにより容易にコントロールできる。後述するプレ鋳型粒子のサイズを考慮すると、カプセル状触媒30の粒径は通常10nm以上となる。アノード触媒層11において、粒径の異なるものを複数混合してもよい。

【0033】
触媒層の厚みは、用途に応じて適宜設計することができるが、プロトン伝導性の高効率化の観点からは薄くすることが好ましい。用いる水電気分解装置のタイプや触媒の種類により変動し得るが、スタック型の水電気分解装置のアノード触媒層11およびカソード触媒層21の厚みは、10μm以下とすることが好ましい。プロトン伝導性の高効率化を図る観点から、触媒層の厚みは、2μm以下が好ましく、0.5μm以下とすることがさらに好ましい。

【0034】
イオン伝導体4は、イオン伝導性を示すものであればよく、従来公知のものを使用できる。カチオン交換膜を用いる場合、カチオン伝導体が用いられる。この場合には、通常、水素イオンを伝導するプロトン伝導体を用いられる。一方、アニオン交換膜を用いる場合、アニオン伝導体が用いられる。この場合には、通常、水酸化物イオンを伝導する水酸化物イオン伝導体が選定される。

【0035】
イオン伝導体4としては、イオン伝導性基を有する樹脂等を好適に用いることができる。例えば、フルオロカーボン系や炭化水素系のポリマーへスルホン酸基やアニオン交換基を導入したポリマー、酸性官能基を有するジルコニウム化合物等の無機プロトン伝導体、層状複水酸化物等の無機アニオン伝導体等が例示できる。酸性官能基としては、スルホン酸基、スルホ基、スルホニル基、リン酸基等を挙げることができ、ジルコニウム化合物としては、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニア等が挙げられる。また、スルホン酸基を有するポリマーとしては、パーフルオロスルホン酸ポリマー(Nafion(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(商品名)等)、SPES:ポリエーテルスルホン、SPEEK:スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、SPEK:スルホン化ポリエーテルケトン等が例示できる。

【0036】
触媒層のイオン伝導体の含有量は、イオン伝導性が確保でき、電気抵抗値が大きくなり過ぎることがない範囲であれば特に限定されない。触媒層には、イオン伝導体以外のバインダー等の他の成分が含有されていてもよい。

【0037】
カプセル状触媒30は、カプセル表面部において金属同士が融着または接触しているので電子伝導性を有する。カプセルと他のカプセルとの電子伝導性は、(1)カプセル状触媒30同士を接触させることにより、電子伝導性を確保する方法、(2)カプセル状触媒30同士を粒子間で互いに融着するように連結させる方法、および/又は(3)カプセル状触媒30の粒子間の導電性を補助するために、別の導電性粒子を添加する方法等が例示できる。前記(1)の方法としては、膜電極接合体を形成する際に、厚み方向の上方および下方から適切な圧力を加える方法が例示できる。適切な温度をかけてホットプレスすることが好ましい。前記(2)の方法としては、後述する焼結処理の際に所望の形状となるように形成する方法や、焼結体を形成する段階でカプセル状触媒30の粒子間が融着するように接触させて処理を行う方法が例示できる。前記(3)の方法としては、導電性カーボン等の導電性粒子を添加する方法が挙げられる。この場合、ガス拡散を阻害しないように、適した粒子径を有する粒子を選定することが好ましい。例えば、粒子径がカプセル状触媒30より小さいものや、ガス流通性に優れた多孔性のカーボン粒子が挙げられる。前記(1)~(3)は、単独で若しくは併用して用いることができる。

【0038】
次に、第1実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法の一例について説明する。但し、本発明のRu系ナノ粒子連結触媒層は、種々の方法により製造することが可能であり、以下の製造方法に限定されるものではない。

【0039】
第1実施形態に係る触媒層は、以下の工程を経て製造される。即ち、所望の形状を有し、第1の極性を有する鋳型を形成する工程(a)と、鋳型表面に、第1の極性とは反対の第2の極性を有し、触媒ナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させる工程(b)と、焼結処理によりRu系ナノ粒子連結触媒3を得る工程(c)と、Ru系ナノ粒子連結触媒3と接触部位を有するイオン伝導体を組み込む工程(d)とを具備する。金属系ナノ粒子として、ルテニウムを含む金蔵系ナノ粒子を用いる。工程(d)のイオン伝導体は、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかである。
(i)工程(a)によって組み込まれた鋳型に含まれている成分である。
(ii)工程(c)の後に、前記鋳型に含まれている成分を前駆体として、変換することにより得られるものである。
(iii)工程(c)の後に、新たに加えることにより導入するものである。

【0040】
[工程(a)]
まず、プレ鋳型粒子34(図7参照)の水分散液を調製する。プレ鋳型粒子34の好適な材料としては、シリカ(SiO)、酸化チタン(TiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、セリア(CeO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ビスマス(Bi)、アパタイト、ガラス等の無機材料を挙げることができる。プレ鋳型粒子34は、単一材料からなるものであってもよいし、複数の材料を混合した粒子であってもよい。また、予め2種類以上の材料を混練、混合し、造粒、分級した粒子でもよい。

【0041】
プレ鋳型粒子34の調製方法は特に限定されないが、例えば、転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、解砕・粉砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、融着造粒、混合造粒、噴霧冷却造粒、噴霧乾燥造粒、沈澱・析出造粒、凍結乾燥造粒、懸濁凝集造粒、滴下冷却造粒等の物理的造粒法を用いて造粒することができる。必要に応じて分級を実施する。プレ鋳型粒子34が市販品として入手できる場合は、それを使用してもよい。

【0042】
プレ鋳型粒子34の粒径の範囲は特に限定されないが、通常、10nm~10μm程度である。粒径が10μmを超えるとプレ鋳型粒子34が溶媒に分散しないことがある。なお、プレ鋳型粒子34の形状は、特に限定されないが、通常、球形状、若しくは概ね球形状である。中空のカプセル状触媒30の形状は、前述したように、プレ鋳型粒子34の形状により調節することができる。

【0043】
次いで、プレ鋳型粒子34の表面を修飾する。具体的には、第1の極性を有するコーティング層(不図示)を被覆させた鋳型粒子35(図8参照)の水分散液を調製する。鋳型粒子35は、コーティング層が被覆されているので、プレ鋳型粒子34より粒子径が大きくなる。コーティング層の厚みは、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜設定することができる。コーティング層は、必ずしもプレ鋳型粒子34の表面全体に亘って被覆されている必要はなく、被覆されていない領域があってもよい。

【0044】
プレ鋳型粒子34へのコーティング層の被覆方法は特に限定されないが、静電結合により被覆する方法が簡便である。プレ鋳型粒子34が負に帯電している粒子の場合、正に帯電しているコーティング層を被覆することができる。また、プレ鋳型粒子34が正に帯電している粒子の場合、負に帯電しているコーティング層を被覆することができる。負に帯電しているコーティング層にさらに正に帯電しているコーティング層を被覆することも可能である。

【0045】
コーティング層としては、鋳型粒子35が第1の極性を発現できるものであればよく特に限定されないが、好適な例として、イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー)を挙げることができる。上記イオン性ポリマーとして、荷電を有する官能基を主鎖、又は側鎖に持つ高分子を挙げることができる。正の電荷を有するイオン性ポリマーとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基などの正荷電を帯びているか、若しくは帯びることのできる官能基を有するものを挙げることができる。具体的には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどである。一方、負の電荷を有するイオン性ポリマーとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負電荷を帯びているか、帯びることのできる官能基を有するものを挙げることができる。具体的には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などである。これらの工程を経て、工程(a)の鋳型が形成される。

【0046】
得られた水分散液のゼータ電位は、第1の極性がプラスの場合には+5mV以上とすることが好ましい。+5mV未満では、鋳型粒子35が水中で凝集沈降してしまう恐れがある。上限は特に限定されないが、通常、+80mV以下である。一方、第1の極性がマイナスの場合には、上記と同様の理由から、-5mV以下とすることが好ましい。また、下限は特に限定されないが、通常-80mV以上である。

【0047】
[工程(b)]
次に、鋳型粒子35表面にカプセル状触媒30の網目状骨格31を形成するために金属系ナノ粒子の材料を吸着、若しくはその場で成長させる。これにより、付着型の触媒粒子36(図9参照)を得る。具体的には、鋳型粒子35の均一な分散液中で、カプセル状触媒30を形成するための材料を溶解させた溶液を加え、これらを鋳型粒子35に吸着、若しくはその場で成長させる。加える金属系ナノ粒子、鋳型粒子35の表面の極性とは反対の極性のものとする。即ち、金属系ナノ粒子は、鋳型粒子35の表面の第1の極性とは反対の極性を有する第2の極性のものを用いる。

【0048】
金属系ナノ粒子の形状は特に限定されず、用途や目的に応じて不定形粉末、扁平状粉末、球状粉末、棒状粉末等を適宜選定できる。金属系ナノ粒子がブレンドの場合には、複数の形状のものが混在していてもよい。また、金属系ナノ粒子内には、後述する焼結工程において、除去される成分が含まれていてもよい。

【0049】
金属系ナノ粒子の平均粒径は特に限定されないが、1nm以上とすることが好ましく、比表面積、若しくは質量あたりの触媒活性向上の観点から50nm以下とすることが好ましい。金属系ナノ粒子の平均粒径は、比表面積、若しくは質量あたりの触媒活性向上の観点から25nm以下とすることがより好ましく、15nm以下とすることが特に好ましい。触媒ナノ粒子の粒子径は、小さくても高い触媒能を有する材料が好ましい。触媒ナノ粒子の好ましい材料としては、前述したカプセル状触媒30の材料が挙げることができる。触媒ナノ粒子以外の金属系ナノ粒子の平均粒径の好ましい範囲も、同様である。

【0050】
[工程(c)]
続いて、付着型の触媒粒子36を焼結体に変換する。これにより、吸着、若しくはその場で成長させて融着することにより、融着型の網目状骨格(図10参照)を得る。焼結体を得る方法としては、水熱反応やアルコール熱反応を例示できる。焼成後、鋳型粒子35を溶出処理させることにより、鋳型粒子35が除去され、図5に示すような中空のカプセル状触媒30が得られる。

【0051】
焼結処理の方法は、金属系ネットワーク処理を実現できれば特に限定されないが、水熱反応やアルコール熱反応により行うことが好ましい。水熱反応やアルコール熱反応は、亜臨界処理を行うことが好ましく、超臨界処理を行うことが特に好ましい。亜臨界、又は超臨界状態の水中における水熱反応の条件としては、特に限定されない。鋳型材料の種類、大きさ、及び付着型の触媒粒子36におけるナノ粒子の被覆率に依存する。粒子径約300nmのシリカ微粒子の場合、例えば、300~400℃、10~40MPa、反応時間1~3時間等とする。カプセル状触媒30において超格子構造を取る方法として、触媒ナノ粒子に鉄を含ませてアルコール熱反応を行う方法が例示できる。

【0052】
上記工程によりRu系ナノ粒子連結触媒3が得られる。第1実施形態においては、得られるカプセル状触媒30の内部を中空にするために、NaOH水溶液等を用いて鋳型を除去する。

【0053】
[工程(d)]
Ru系ナノ粒子連結触媒3の少なくとも一部に接触するイオン伝導体を組み込む工程(d)を有する。イオン伝導体は、前述した様な無機粒子、高分子等のイオン伝導性バインダーあるいはこれらの複合材料が好適に用いられる。組み込む方法は、Ru系ナノ粒子連結触媒3にイオン伝導体4を加えて混練する方法や、イオン伝導体4を加熱溶融させて、Ru系ナノ粒子連結触媒3に絡ませる方法が例示できる。なお、工程(d)は、工程(c)の後に実施される場合に限定されず、前述の(i)(ii)の工程で組み込んでもよい。また、これらを任意に併用できる。

【0054】
ところで、金属ナノ粒子触媒(例えば、2~3nm)をカーボン担体に担持させたアノード触媒として用いる従来の方式では、図28に示すように、水を電気分解し、酸素ガス、電子、水素イオンを発生させている。カーボン粒子は、ナノ粒子化した金属触媒を担持して、金属触媒の有効利用表面積を増加させると同時に、金属触媒粒子が凝集しないように分散させ、電子伝導の役割も担う。しかし、カーボン担体は、ガス拡散を阻害する要因ともなっている。実際、触媒層の高電流密度領域ではガス拡散速度が反応速度よりも遅く、ガス拡散律速により活性が低下するという問題が生じている。また、カーボン担体と触媒粒子の界面は反応に寄与しないので,実効的な触媒ナノ粒子の表面積はその分減少するという問題がある。

【0055】
一方、第1実施形態によれば、アノード触媒層11およびカソード触媒層21のいずれかにRu系ナノ粒子連結触媒3を用いることにより、ナノ粒子をカーボン担体に担持させている触媒層に比して薄膜化を図ることができる。このため、ガスの物質移動抵抗を低減できる。しかも、金属ナノ粒子が互いに連結した構造を有するので、導電性を保持しながら空隙も形成できる。また、機械的強度も高めることができる。その結果、ガス拡散性が飛躍的に向上する。

【0056】
また、アノード触媒層11にRu系ナノ粒子連結触媒3を用いることにより、Pt等の金属を用いた場合に比して、酸素発生反応を効率的に促進でき、触媒活性を高められる。更に、空隙を有するネットワーク構造を有するナノ粒子連結触媒を用いることで、表面積を格段に高められる。このため、単位質量当たりの触媒効率を向上させることができるので、使用する貴金属量を低減でき、低コスト化を図ることも可能である。また、高活性であることから外部電力の削減も期待できる。

【0057】
アノード触媒層11およびカソード触媒層21に、カーボン担体を用いた場合、高電位運転でのカーボン腐食による劣化が問題となるが、第1実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒によれば、担体フリーで利用できるので耐久性を高められる。また、高電位運転を可能にする。なお、本発明のRu系ナノ粒子連結触媒3はカーボン担体フリーで利用できるが、カーボン担体を用いて利用することも可能である。

【0058】
第1実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層の製造方法によれば、鋳型粒子の粒子径、粒子径分布、粒子形状をコントロールすることにより、中空の触媒粒子の粒径、中空径を容易に制御できる。また、鉄等を含ませることにより超格子構造のカプセル状触媒を容易に製造することができる。また、イオン伝導体をカプセル状触媒の製造後に加えて接触させる工程を採用しているので、カプセル状触媒の製造工程の自由度および材料選定の自由度が高いというメリットがある。

【0059】
[第2実施形態]
次に、上記第1実施形態とは異なるRu系ナノ粒子連結触媒層の一例について説明する。第2実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層は、カプセル状触媒30の主として内部にイオン伝導体が配設されている点において第1実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層と異なるが、以下に説明する以外の基本的な構造および製造方法は、第1実施形態と同様である。なお、以降の説明において、上記第1実施形態と同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。

【0060】
図11に、第2実施形態に係る触媒層の模式的な部分拡大図を示す。第2実施形態に係るアノード触媒層11は、Ru系ナノ粒子連結触媒3のカプセル状触媒30の中空構造32および空隙33(図4参照)に主としてイオン伝導体4が内包されている。

【0061】
第2実施形態に係る触媒層の製造方法は、前述した第1実施形態と同様に工程(a)~工程(d)を備えるものであり、工程(d)のイオン伝導体は、例えば、工程(a)によって組み込まれるプレ鋳型粒子および/又は鋳型粒子を構成する成分である。

【0062】
工程(d)のイオン伝導体4をカプセル状触媒30内に内包させるために、工程(a)のプレ鋳型粒子および/又は鋳型粒子の成分の少なくとも一つをイオン伝導体とする(方法(i))。プレ鋳型粒子の好ましい例としては、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニア等の酸性官能基を有するジルコニウム化合物等の無機プロトン伝導体、層状複水酸化物などの無機アニオン伝導体が例示できる。また、イオン伝導体4が、工程(a)によって組み込まれる鋳型粒子の成分とする場合の好ましい例としては、第1実施形態で例示したフルオロカーボン系や炭化水素系のポリマーにスルホン酸基やアニオン交換基を導入したポリマー等を例示できる。

【0063】
工程(d)のイオン伝導体4をカプセル状触媒30内に内包させるために、工程(a)の鋳型を前駆体として、工程(c)の焼結処理後に変換させることもできる(方法(ii))。例えば、鋳型にイオン伝導性官能基(酸性官能基、アニオン性官能基)を導入する方法を例示できる。

【0064】
また、工程(d)のイオン伝導体をカプセル状触媒30内に内包させるために、工程(c)の後に、新たにイオン伝導体を加え、カプセル状触媒30内に導入する方法も例示できる(方法(iii))。カプセル状触媒30の空隙率が大きい場合には、特に有効な方法である。方法(i)~(iii)は、任意に組み合わせることが可能である。

【0065】
方法(i)の場合、工程(c)の焼結処理は、イオン伝導体の官能基が壊れない条件を設定する。カプセル状触媒30の粒子間での電子伝導性およびイオン伝導性の確保は、膜電極接合体を製造する際にホットプレス等により行ってもよい。また、焼結処理の際に、カプセル状触媒30の粒子間の接触部位において、粒子間で触媒ナノ粒子を溶融して連結してもよい。粒子間でイオン伝導性が確保できるように、複数のカプセル状触媒30に亘ってイオン伝導体同士が接触および/又は結合していることが好ましい。

【0066】
なお、図11においては、イオン伝導体4をカプセル状触媒30の主として内部に配設した例を挙げたが、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて、イオン伝導体4をRu系ナノ粒子連結触媒3の内部および外部の両者に形成させることもできる。

【0067】
第2実施形態のアノード触媒層11によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果が得られる。即ち、カプセル状触媒30内部にイオン伝導体4を内包させることにより、高効率にアノード触媒層11をダウンサイジングできる。また、第2実施形態のアノード触媒層11の製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果等が得られる。即ち、方法(i)によれば、工程(c)の後に、イオン伝導体とカプセル状触媒を接触させる工程を省略でき、製造工程の短縮化を実現できるというメリットがある。また、方法(ii)によれば、焼結処理条件を、イオン伝導性官能基を導入する前に焼結処理を行うので、方法(i)に比して焼結処理条件や材料選択肢が高いというメリットがある。

【0068】
[第3実施形態]
第3実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層は、Ru系ナノ粒子連結触媒3がロッド状触媒からなる点において、カプセル状触媒30を用いた前述の実施形態とは相違するが、基本的な構成は、第2実施形態と同様である。

【0069】
図12に、第3実施形態のアノード触媒層11を模式的に示した部分拡大図を示す。アノード触媒層11は、図12に示すように、ロッド状触媒40とイオン伝導体4を有する。

【0070】
ロッド状触媒40は、図12に示すように概ね筒状の網目状骨格41を成し、その内部にはイオン伝導体4が配設されている。網目状骨格41は、金属同士が融着したネットワーク状構造を取り、電子伝導性を有する。

【0071】
網目状骨格41には、多数の空隙43が形成されており、空隙43は、輪郭を画定するロッド状触媒の内部と外部とを連通するように形成されている。網目状骨格41の空隙率の好ましい範囲は第1実施形態と同様である。図12の例においては、一のロッド状のアノード触媒層11を例示しているが、実際には、複数本のロッド状触媒40によりシート状構造が形成されている。

【0072】
ロッド状触媒40の外郭を構成する厚みは特に限定されないが、好ましくは1nm以上、50nm以下である。ロッド状触媒40の厚みを1nm以上とすることにより、構造欠陥を抑制し安定した製造を行うことができる。なお、ロッド状触媒40の長さや形状は特に限定されるものではなく、鋳型の形状を制御することにより適宜設計することができる。

【0073】
イオン伝導体4は、触媒層において良好なイオン伝導性を実現するために、ロッド状触媒40の内部のみではなく、ロッド状触媒40の網目状骨格41に形成された空隙43やロッド状触媒40の外側にも連続して形成されていることが好ましい。

【0074】
ロッド状触媒40の好ましい材料やイオン伝導体4は、第1実施形態と同様のものを例示できる。ロッド状触媒40の長さ、および切り口端面の粒径は特に限定されず、用途に応じて適宜設計できる。ロッド状触媒40の形状やサイズは、鋳型の形状やサイズを制御することにより容易にコントロールできる。例えば、端面の直径が5nm~1μm程度のロッド状触媒40を複数、同一方向に連接させる態様や、ランダムに配設させる構造を例示できる。ロッド状触媒は、単層で用いても複数層で用いてもよい。複数層とする場合は、強度を増すために、層間で異なる方向に延在するように配置してもよい。また、電解質膜5の主面に対してロッド状触媒40の長軸方向が、水平配向、垂直配向、又はランダム配向等とすることができる。また、ロッド状触媒40と第1実施形態のカプセル状触媒30をブレンドして用いることも可能である。

【0075】
第3実施形態のアノード触媒層11によれば、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ナノ粒子で連結化したロッド状触媒40を用いることにより触媒として利用できる表面積を高めつつ、機械強度を高めることができる。また、ロッド状に連結されているので、より安定した電子伝導性を確保できる。

【0076】
[第4実施形態]
第4実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層は、Ru系ナノ粒子連結触媒3がロッド状触媒であり、かつ、ロッド状触媒の外側にイオン伝導体が配設されている点において第3実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層と異なるが、以下に説明する以外の基本的な構造および製造方法は、第3実施形態と同様である。

【0077】
第4実施形態に係る触媒層は、Ru系ナノ粒子連結触媒のロッド状触媒の外側に主としてイオン伝導体がRu系ナノ粒子連結触媒と絡まるように配設されている。工程(d)のイオン伝導体を、ロッド状触媒内の外側に配設するために、工程(c)の後に組み込むことにより容易に製造できる。

【0078】
第4実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層によれば、第3実施形態と同様の効果に加え、工程(c)の後にイオン伝導体を組み込むので、焼結処理のプロセスマージン或いは鋳型の材料選択性を高めることができるというメリットがある。

【0079】
[第5実施形態]
第5実施形態のRu系ナノ粒子連結触媒層は、Ru系ナノ粒子連結触媒がシート状触媒である点において、前述の実施形態と相違するが、以下に説明する以外の基本的な構造及び製造方法は、前述の実施形態と同様である。

【0080】
図13に、第5実施形態のシート状のアノード触媒層11の模式図を示す。第5実施形態に係るアノード触媒層11は、Ru系ナノ粒子連結触媒とイオン伝導体がシート44状に面内および厚み方向に連続的に配設されている。即ち、シート状触媒から成るRu系ナノ粒子連結触媒は、網目状のシート構造を成し、金属同士が融着して電子伝導性を有する。そして、このシート状触媒と接触するようにイオン伝導体が分散配置されている。シート状触媒の厚みは特に限定されず、用途や求められる性能に応じて適宜設計し得るが、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。シート状触媒の厚みを薄くすることにより、構造欠陥を抑制し安定した製造を行うことができる。

【0081】
シート状のRu系ナノ粒子連結触媒を得る方法としては、表面が第1の極性を有するフィルムやシートを鋳型とし、これに第2の極性を有する触媒ナノ粒子を含浸させて金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させ、これを焼結処理することにより得られる。表面が第1の極性を有するフィルムやシートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で限定されないが、好適な例として不織布を例示できる。

【0082】
不織布の構成材料としては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されないが、シリカファイバーやジルコニアファイバー等が好ましい例として例示できる。この場合、不織布を鋳型とし、これらの不織布が第1の極性を有するように表面処理を行った後に、第2の極性を有する触媒ナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させて焼結処理を行えばよい。イオン伝導体4は、シリカファイバーやジルコニアファイバー等に予めイオン伝導性官能基等を組み込む方法(i)、および/又は焼結処理後に、これらの繊維にイオン伝導性官能基を組み込む方法(ii)を例示できる。

【0083】
また、不織布として、焼結処理、又は焼結処理後に除去可能な素材を用いることも可能である。この場合、得られたシート状のRu系ナノ粒子連結触媒に、イオン伝導体4を絡ませることにより触媒層が得られる。

【0084】
第5実施形態の方法によれば、触媒層の形成工程の簡便化を図ることができるというメリットがある。また、シート状にRu系ナノ粒子連結触媒を構築するので、電子伝導効率、表面積を高めることができる。また、厚みを薄くすることも可能である。

【0085】
[第6実施形態]
次に、上記実施形態とは異なる水電気分解装置について説明する。図14に、第6実施形態に係る水電気分解装置の要部の一例の模式図を示す。第6実施形態に係る水電気分解装置2は、電解質水溶液50、電解槽51、アノード電極52、カソード電極53、隔壁54および外部回路55等を有する。

【0086】
電解質水溶液50には、アルカリ性水溶液または酸性水溶液が用いられる。アノード電極52とカソード電極53の間に所定の電圧を印加すると、両電極間に電流が流れて電気化学反応が進行する。アノード電極52側では、酸化反応により水が酸化されて酸素ガスが発生する。一方、カソード電極53の表面では還元反応が起こり、水素が発生する。隔壁54は、アノード電極52とカソード電極53の間の発生ガスの逆反応を防止する役割を担う。

【0087】
電解質水溶液50は、電解質が溶解したアルカリ性水溶液または酸性水溶液が用いられる。電解質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硫酸、硝酸、過塩素酸、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム等が例示できる。電解質水溶液50に含まれる電解質のカチオンの例としては、プロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等がある。また、同アニオンの例としては、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等が例示できる。

【0088】
アノード電極52およびカソード電極53は、図14に示すように、電解質水溶液50中に浸漬され、且つ外部回路55に接続される。アノード電極52側では酸素が発生し、カソード電極53側では水素が発生する。

【0089】
アノード電極52の少なくとも表層に第1実施形態~第5実施形態のアノード触媒層11を好適に適用できる。アノード電極52そのものがアノード触媒層11からなっていてもよいし、金属板、または金属メッシュ、カーボン等にアノード触媒層を担持させてもよい。

【0090】
カソード電極53は、公知の導電体から構成される。導電材料は、電解質水溶液50中で分解されない限り特に限定されない。例えば、白金又はニッケル化合物が例示できる。アノード電極52と同様の材料から構成してもよい。

【0091】
第6実施形態に係る水電気分解装置によれば、Ru系ナノ粒子連結触媒を用いているので、第1実施形態等と同様の効果が得られる。

【0092】
[第7実施形態]
次に、Ru系ナノ粒子連結触媒を燃料電池に適用した実施形態について説明する。図15は、第7実施形態に係る固体高分子形燃料電池の要部の一例を示す模式的断面図である。固体高分子形燃料電池101は、イオン伝導性を有する固体高分子形電解質膜5、水素等の燃料ガスが供給されるアノードユニット15、および酸素が供給されるカソードユニット25を具備するセル6、並びに外部回路7等を有する。通常は、必要な出力に応じてセル6をスタックすることにより電池が構成される。

【0093】
アノードユニット15は、アノード触媒層11、ガス拡散層12、セパレータ13が固体高分子形電解質膜(以下、「電解質膜」ともいう)5側からこの順に配置され、カソードユニット25は、カソード触媒層21、ガス拡散層22、セパレータ23が電解質膜5側からこの順に配置されている。第7実施形態においては、アノード触媒層11とガス拡散層12、およびカソード触媒層21とガス拡散層22が其々ガス拡散電極となる。但し、ガス拡散電極は、前述した様に、ガス、電解質および触媒層が同時に接触できればよく、必ずしもガス拡散層12,22は用いなくてもよい。即ち、アノード触媒層をアノード触媒層11および/又はカソード触媒層21のみから構成することも可能である。また、一対のガス拡散電極のうちの其々の触媒層が、電解質膜と向かい合うように電解質膜に接合した構造を膜電極接合体8という。外部回路7は、アノードユニット15のアノード触媒層11、カソードユニット25のカソード触媒層21等に電気的に接続されている。

【0094】
上記のように構成された固体高分子形燃料電池101は、アノードユニット15において、水素等の還元性ガスが、セパレータ13のガス流路14からガス拡散層12を介してアノード触媒層11に供給される。一方、カソードユニット25においては、酸素あるいは空気等の酸化性ガスが、セパレータ23のガス流路24からガス拡散層22を介してカソード触媒層21に供給される。

【0095】
還元性ガスとして水素ガスを、酸化性ガスとして酸素ガスを利用するカチオン交換型の場合には、アノード触媒層11において水素の酸化反応が生じ、水素イオンと電子とが生成される。生成された水素イオンは、イオン伝導性を有する電解質膜5を介してカソード触媒層21に移動する。一方、生成された電子は、外部回路7を経由してカソード触媒層21に移動する。カソードユニット25に到達した水素イオンおよび電子は、カソード触媒層21において酸素と反応して水を生成する。即ち、カソード触媒層21では、酸素の還元反応が生じる。還元反応により生成された水は、カソードユニット25のセパレータ23から外部に排出されたり、電解質膜5に供給されたりする。これらの一連の反応によって外部に電気が供給される。

【0096】
電解質膜5の役割および好適な具体例は、上記実施形態と同様である。また、アノード触媒層11のRu系ナノ粒子連結触媒についても上記実施形態で述べたとおりである。

【0097】
第7実施形態によれば、アノード触媒層11およびカソード触媒層21のいずれかにRu系ナノ粒子連結触媒を用いることにより、触媒として利用できる表面積を高めることができる。また、カーボン担体を用いずに導電性を確保することができる。このため、触媒層の厚みを薄くすることが可能となるので、ガス拡散距離を減少させ、ガス拡散速度を高めることができる。このため、本願発明によれば、従来型のカーボン担体を用いた触媒層の高電流密度領域において問題となっていたガス拡散律速の問題を解消し、高出力を実現できる。また、担体としてカーボンを用いる場合に問題となるカーボン腐食の影響を受けないというメリットもある。なお、第7実施形態においては、触媒層として固体高分子形燃料電池に適用する例について説明したが、各種の燃料電池に好適に適用できる。その結果、燃料電池としての性能を高めることができる。また、Ptナノ粒子をカーボン担体に担持させた従来例に比して、CO被毒耐性を高められる。その結果、燃料電池触媒としての耐久性を格段に向上できる。

【0098】
[第8実施形態]
次に、メタンガスを水素ガスに改質する水素化用触媒としてRu系ナノ粒子連結触媒を用いた実施形態について説明する。
CH+2HO→CO+4Hの反応を進行させる触媒として、上記実施形態において説明したRu系ナノ粒子連結触媒を用いることができる。メタンの水素化に用いる装置は、メタンガスの水素化反応を促進できる位置にRu系ナノ粒子連結触媒を配置してあればよく、公知のものを用いることができる。

【0099】
図16は、第8実施形態に係るメタンガスの水素化装置の一例を示す模式図である。メタンガスの水素化装置201は、筐体60、ガス供給口61、ガス排出口62、筐体内部空間63等を有する。筐体内部空間63には、Ru系ナノ粒子連結触媒3が充填されている。水蒸気およびメタンガスが、ガス供給口61から筐体内部空間63に送り込まれる。そして、筐体内部空間63に充填されたRu系ナノ粒子連結触媒3によりメタンガスと水が反応して、最終的に二酸化炭素と水素が生成し、ガス排出口62で回収される。Ru系ナノ粒子連結触媒3を筐体内部空間63に充填する方式に代えて、筐体内部に設置された内壁に担持させてもよい。また、Ru系ナノ粒子連結触媒3を用いて形成したシートを巻回させ、筐体内部空間63内に収容してもよい。

【0100】
第8実施形態に係るメタンガスの水素化用触媒によれば、耐久性に優れ、カーボン担体フリーでも触媒効率を高めることが可能なメタンの水素化用触媒を提供することができる。

【0101】
なお、上記第1実施形態~第8実施形態は任意に組み合わせることができる。水電気分解装置と燃料電池を一体化し、切り替え可能な装置としてもよい。

【0102】
≪実施例≫
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。

【0103】
(実施例1)
正のゼータ電位を有する鋳型粒子を以下の方法により調製した。まず、プレ鋳型粒子であるシリカ粒子(直径0.30μm)0.16gと脱イオン水5mLを30mLビーカーに入れ、シリカ粒子を分散させた。

【0104】
次いで、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)((以下、「PDDA」と略記する)12.0gと脱イオン水19gを遠心分離機用のチューブに入れた。このチューブに10分間超音波を照射してPDDAを溶解させた。また、シリカ粒子を分散させたビーカーに10分間超音波を照射した後に両溶液を混合し、25℃、回転数10,000rpmの条件で脱イオン水による10分間遠心分離を行い、上澄み液を捨てて洗浄を行う精製を3回繰り返した。これにより、脱イオン水に分散させたPDDA被覆シリカ粒子(鋳型粒子)の水分散液を得た。以後、このように調製したPDDA被覆シリカ粒子を「PDDA/SiO-OH」と表記する。

【0105】
次いで、Ru系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の合成を行った。テトラエチレングルコール(Sigma-Aldrich社製)100mL、上述した工程で得たPDDA/SiO-OH水分散液をPDDA/SiOの乾燥質量が0.08gとなるように200mLのナス型フラスコに加え、エバポレーションにより水を除去した。フラスコの内容物を200mLの三口フラスコに移し替え、アセチルアセトナトルテニウム(III)0.1612g(0.40mmol)、アセチルアセトナト白金(II)0.1591g(0.40mmol)を加え、24時間撹拌を行った。その後、還流のためのセットを組立て、Ar/Hのガス雰囲気下にした後、室温で30分間撹拌した。その後、10K/minで180℃まで昇温して、180℃で2時間加熱した。室温まで放冷後、茶色い上清溶液を捨ててエタノールで洗浄する工程を5回繰返した。その後乾燥した。ICPによりRuとPtの比率を求めたところ、Ru7.1Ptであった。

【0106】
得られたRu系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子のエタノール分散液を調整し、超音波処理を10分間行うことにより再分散させた。得られた分散液5mLを、耐圧硝子工業社製の密閉型超臨界反応容器TSC-0011(容積11mL)に入れ、トルクレンチで密栓した。密栓した反応容器を380℃に予め加熱した電気炉に入れ、圧力約30MPaの条件下で80分の加熱処理を行った。その後、反応容器を水槽に入れ、急冷した。1~2時間放置した後、反応容器の栓を開け、超音波処理を用いてエタノールで洗浄する工程を5回繰返した後、乾燥した。得られたRu系ナノ粒子連結触媒の走査型電子顕微鏡像を図17に示す。同図から、高温かつ短時間での超臨界処理により、RuPt金属粒子の凝集を抑制し、金属間ネットワークを形成して、カプセル状のRu系ナノ粒子連結触媒が得られることを確認した。

【0107】
その後、3MのNaOH水溶液に分散させ、85℃で3時間撹拌することで、シリカテンプレートを溶解させ、除去した。その後、遠心分離(25℃、6,000rpm、10分)を数回行い洗浄・乾燥させた。

【0108】
得られたRu系ナノ粒子連結触媒は、中空であり、平均粒子径が約300nmであり、元素比率はICPよりRu6.9Ptであることを確認した。以下、実施例1で得られたRu系ナノ粒子連結触媒を連結RuPt-180と略記する。図18に、連結RuPt-180の100keVの透過型電子顕微鏡像(日立H8100透過型電子顕微鏡)を示す。同図より、芯材のシリカ粒子が溶解して除去されていることがわかる。また、ナノ粒子同士が融着して、表面に空隙を有するナノ粒子連結構造を有していることがわかる。

【0109】
(実施例2)
アセチルアセトナトルテニウム(III)0.0403g(0.10mmol)、アセチルアセトナト白金(II)0.2784g(0.71mmol)を加えた点以外は実施例1と同様にして、Ru系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子を得、次いでRu系ナノ粒子連結触媒(平均粒子径:約300nm、中空)を得た。以下、実施例2で得られたRu系ナノ粒子連結触媒を連結RuPt-180と略記する。ICPによるRuとPtの比率は、Ru系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子がRu1.1Pt、連結RuPt-180がRu1.1Ptであった。図19に実施例2に係る連結RuPt-180の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0110】
(実施例3)
ポリオール法によるRu系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の合成時の加熱温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして、Ru系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子を得、次いでRu系ナノ粒子連結触媒(平均粒子径:約300nm、中空)を得た。以下、実施例3で得られたRu系ナノ粒子連結触媒を連結RuPt-230と略記する。ICPによるRuとPtの比率は、Ru系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子がRuPt1.3、Ru系ナノ粒子連結触媒がRuPt1.1であった。図20に実施例3に係る連結RuPt-230の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0111】
(比較例1)
Pt/C(田中貴金属工業社製、TEC10E50E、Pt:46.6質量%)をそのまま用いた。比較例1の微粒子は、粒子間の連結構造が観測されないことを確認した。

【0112】
(比較例2)
PtRu/C(田中貴金属工業社製、TEC66E50、Pt:32.6質量%、Ru:16.9質量%)をそのまま用いた。比較例2の微粒子は、粒子間の連結構造が観測されないことを確認した。
(比較例3)

【0113】
比較として、Pt系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の合成を行った。テトラエチレングルコール(Sigma-Aldrich社製)100mL、実施例1で得たPDDA/SiO-OH水分散液をPDDA/SiOの乾燥質量が0.08gとなるように200mLのナス型フラスコに加え、エバポレーションにより水を除去した。フラスコの内容物を200mLの三口フラスコに移し替え、アセチルアセトナト鉄(III)0.15g(0.42mmol)、アセチルアセトナト白金(II)0.1512g(0.38mmol)を加え、24時間撹拌を行った。その後、還流のためのセットを組立て、Ar/Hのガス雰囲気下にした後、室温で30分間撹拌した。その後、10K/minで230℃まで昇温して、230℃で2時間加熱した。室温まで放冷後、茶色い上清溶液を捨ててエタノールで洗浄する工程を5回繰返した。その後乾燥した。ICPによりFeとPtの比率を求めたところ、FePtであった。

【0114】
得られたFe系ナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子のエタノール分散液を調整し、超音波処理を10分間行うことにより再分散させた。得られた分散液5mLを、耐圧硝子工業社製の密閉型超臨界反応容器TSC-0011(容積11mL)に入れ、トルクレンチで密栓した。密栓した反応容器を330℃に予め加熱した電気炉に入れ、圧力約20MPaの条件下で160分の加熱処理を行った。その後、反応容器を水槽に入れ、急冷した。1~2時間放置した後、反応容器の栓を開け、超音波処理を用いてエタノールで洗浄する工程を5回繰返した後、乾燥した。得られたPt系ナノ粒子連結触媒は金属間ネットワークを形成して、カプセル状のPt系ナノ粒子連結触媒が得られることを確認した。

【0115】
実施例1~3および比較例1、2の各粉末サンプルについて、XRD(RINT2000、Rigaku社製)測定(回折角の範囲:2θ=10~90°、スキャンスピード:2θ=1°/min)を行った。その結果を図21に示す。実施例1の微粒子は、図21に示すように、実施例1の連結RuPt-180は、2θ=40°付近の(111)面のピークが比較例1、比較例2の白金の(111)面のピーク位置より高角側にシフトしており、fcc-Ruリッチな構造であることがわかる。

【0116】
実施例2の連結RuPt-180は、比較例1の白金(111)面とピーク位置が近いことからfcc-Ptリッチな構造であることがわかる。一方、実施例3の微粒子は、2θ=40°付近の(111)面のピークが白金の(111)面のピーク位置より高角側にシフトしており、比較例2の(111)面とピーク位置が近いことから、合金化されていることがわかる。実施例1~3に示すように、カプセル触媒を製造する際のポリオール反応温度、および仕込み組成比を制御することで、異なる構造を持つRu系ナノ粒子連結触媒が得られる。

【0117】
[水電解活性評価]
実施例1で得られたRu系ナノ粒子連結触媒および比較例1のPt/C粒子、比較例3のPt系ナノ粒子連結触媒について、回転ディスク電極を用いて水電解アノード触媒としての酸素発生反応活性を評価した。電気化学測定を行うにあたり、アルミニウムで磨いたグラッシーカーボン(幾何学的領域:0.196cm)を用いた。
(電極例1)
触媒の分散液は25%のIPA溶液6.25mLに5mgの触媒を分散させたものと、12.5μLのパーフルオロカーボン材料(ナフィオン(登録商標)、5wt%)とを混合して作製した。次いで、10μLの触媒の分散液をグラッシーカーボンの表面に塗布し、乾燥した。以上の工程を経て、グラッシーカーボンに実施例1および比較例1の触媒が担持された電極を其々作製した。
(電極例2)
25%のIPA溶液に添加する触媒を2.5mgとした点以外は、電極例1と同様にして比較例3の触媒が担持された電極を作製した。

【0118】
実施例1および比較例1、比較例3の触媒サンプルから得られた電極を其々作用電極とし、電極の前処理を行った。前処理は、窒素雰囲気下0.1M過塩素酸水溶液中で、対極に白金ワイヤを、基準電極に可逆水素電極(RHE)を用いて、0.06~1.0V(vs RHE)の範囲を掃引速度50mV/s、室温で、CV(Cyclic voltammetry)サイクルを50回行った。

【0119】
前処理後の電極を作用極に用いて、酸電解液中で酸素発生反応に対する触媒活性を評価した。電解液は窒素雰囲気下0.1M過塩素酸水溶液を、対極に白金ワイヤを、基準電極に可逆水素電極(RHE)を用いた。掃引速度50mV/s、室温で、1.2~1.5V(vs RHE)の範囲でCVサイクルを25回行った後、以下の条件でLSV(Linear sweep voltammetry)測定を行い、酸素発生反応活性を算出した。即ち、電極回転速度1600回転/分において、電位走査を1.2Vから1.5V(vs RHE)へ掃引速度10mV/sで行い、電圧1.48Vにおける電流値から、貴金属質量あたりにおける酸素発生反応活性を評価した。図22に電極で得られた実施例1および比較例1、比較例3の作用電極を用いたLSV測定結果を示す。図22より、実施例1のRu系ナノ粒子連結触媒は、比較例1、比較例3に比して格段に酸環境下での酸素発生反応活性が高いことが確認できる。

【0120】
また、前処理後の電極を作用極に用いて、アルカリ電解液中で酸素発生反応に対する触媒活性を評価した。電解液は窒素雰囲気下0.1M水酸化カリウム水溶液を、対極に白金ワイヤを、基準電極にカロメル電極(Hg/HgO)を用いた。掃引速度50mV/s、室温で、1.2~1.5V(vs RHE)の範囲でCVサイクルを25回行った後、以下の条件でLSV(Linear sweep voltammetry)測定を行い、酸素発生反応活性を算出した。即ち、電極回転速度1600回転/分において、電位走査を1.2Vから1.5V(vs RHE)へ掃引速度10mV/sで行い、電圧1.48Vにおける電流値から、貴金属質量あたりにおける酸素発生反応活性を評価した。図23に電極で得られた実施例1および比較例1、比較例3の作用電極を用いたLSV測定結果を示す。図23より、実施例1のRu系ナノ粒子連結触媒は、比較例1、比較例3に比してアルカリ環境下での酸素発生反応活性が高いことがわかった。

【0121】
表1に、上記OER活性評価の結果を示す。OER活性は1.48Vの電流値i1.48Vで評価した。
【表1】
JP2018188701A_000003t.gif

【0122】
表1より、アルカリ環境では、実施例1は比較例1に比して約1.5倍、比較例3に比して約10倍のOER質量活性を確認できた。また、酸環境では、実施例1は比較例1に比して20倍以上、比較例3に比して約100倍のOER質量活性を示すことが確認できた。

【0123】
さらに、前処理後の電極を作用極に用いて、水電解カソード触媒としての水素発生反応活性を評価した。前処理後の電極を作用極に用いて、電解液は窒素雰囲気下0.1M過塩素酸水溶液を、対極に白金ワイヤを、基準電極に可逆水素電極(RHE)を用いた。電極回転速度3600回転/分において、電位走査を0.0Vから-0.5V(vs RHE)へ掃引速度10mV/sでLSV(Linear sweep voltammetry)測定を行い、水素発生反応活性を評価した。

【0124】
同様の評価を、電解液は窒素雰囲気下0.1M水酸化カリウム水溶液中にて行った。その際、対極に白金ワイヤを、基準電極にカロメル電極(Hg/HgO)を用いた。図24、25に電極で得られた実施例1および比較例1、比較例3の作用電極を用いたLSV測定結果を示す。図24、25より、酸、アルカリ電解液中において、比較例1、比較例3と同程度の水素反応活性を有することを確認できる。

【0125】
[メタノール酸化活性評価]
実施例1~3で得られたRu系ナノ粒子連結触媒および比較例1のPtRu/C粒子について、回転ディスク電極を用いて、燃料電池アノード触媒としてのメタノール酸化反応活性評価を行った。電気化学測定を行うにあたり、アルミニウムで磨いたグラッシーカーボン(幾何学的領域:0.196cm)を用いた。

【0126】
(電極例1)
触媒の分散液は25%のIPA溶液6.25mLに5mgの触媒を分散させたものと、12.5μLのパーフルオロカーボン材料(ナフィオン(登録商標)、5wt%)とを混合して作製した。次いで、10μLの触媒の分散液をグラッシーカーボンの表面に塗布し、乾燥した。以上の工程を経て、グラッシーカーボンに実施例1~3および比較例2の触媒が担持された電極を其々作製した。
(電極例2)
25%のIPA溶液に添加する触媒を2.5mgとした点以外は、電極例1と同様にして比較例3の触媒が担持された電極を作製した。

【0127】
実施例1~3、比較例2および比較例3の触媒サンプルについて得られた電極を其々作用電極とし、電極の前処理を行った。前処理は、窒素雰囲気下0.1M過塩素酸水溶液中で、対極に白金ワイヤを、基準電極に可逆水素電極(RHE)を用いて、0.06~1.2V(vs RHE)の範囲を掃引速度50mV/s、室温で、CV(Cyclic voltammetry)サイクルを50回行った。

【0128】
前処理後の電極を作用極に用いて、アルカリ電解液中でメタノール酸化反応に対する触媒活性を評価した。電解液は窒素雰囲気下0.1M水酸化ナトリウム+0.1Mメタノール水溶液を、対極に白金ワイヤを、基準電極にカロメル電極(Hg/HgO)を用いた。掃引速度20mV/s、室温で、0.06~1.2V(vs RHE)の範囲でCVサイクルを5回行い、メタノール酸化反応における一酸化炭素(CO)被毒耐性を評価した。即ち、正方向に掃引した際のピーク電流値If、負方向に掃引した際のピーク電流値Ibとの比、If/Ibから一酸化炭素(CO)被毒耐性を評価した(図26参照)。これらの結果に示すように、実施例に係るRu系ナノ粒子連結触媒は、比較例2、比較例3よりも非常に優れたCO被毒耐性を持ち、耐久性に優れる。
【符号の説明】
【0129】
1:水電気分解装置、2:水電気分解装置、3:Ru系ナノ粒子連結触媒、
4:イオン伝導体、5:固体高分子形電解質膜、6:セル、
7:外部回路、8:膜電極接合体、
10:アノード電極、11:アノード触媒層、12:ガス拡散層、13:セパレータ、
14:ガス流路、15:アノードユニット、
20:カソード電極、21:カソード触媒層、22:ガス拡散層、23:セパレータ、
24:ガス流路、25:カソードユニット、
30:カプセル状触媒、31:網目状骨格、32:中空構造、33:空隙、
34:プレ鋳型粒子、35:鋳型粒子、36:付着型の触媒粒子、
40:ロッド状触媒、41:網目状骨格、43:空隙、44:シート、
50:電解質水溶液、51:電解槽、52:アノード電極、53:カソード電極、
54:隔壁、55:外部回路、
60:筐体、61:ガス供給口、62:ガス排出口、63:筐体内部空間、
101:固体高分子形燃料電池、
201:メタンの水素化装置。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図26】
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【図27】
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