TOP > 国内特許検索 > 脂質ナノ粒子 > 明細書

明細書 :脂質ナノ粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-151589 (P2019-151589A)
公開日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 脂質ナノ粒子
国際特許分類 A61K  47/18        (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K  47/22        (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  38/02        (2006.01)
FI A61K 47/18 ZNM
A61K 9/127 ZNA
A61K 47/22
A61K 47/24
A61K 9/14
A61K 31/713
A61K 31/7105
A61K 38/02
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2018-038082 (P2018-038082)
出願日 平成30年3月2日(2018.3.2)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 悠介
【氏名】原島 秀吉
【氏名】岡部 奈々
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100162868、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 英輔
【識別番号】100210572、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 太一
【識別番号】100181722、【弁理士】、【氏名又は名称】春田 洋孝
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C086
Fターム 4C076AA19
4C076AA29
4C076CC10
4C076DD50
4C076FF43
4C076FF68
4C084BA44
4C084MA22
4C084NA13
4C084ZB26
4C086AA01
4C086EA16
4C086NA13
4C086ZB26
要約 【課題】本発明は、siRNA等の薬効成分のキャリアとして有用であり、粒子径が小さくなっても送達効率の優れた脂質ナノ粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】下記一般式(I)〔aは3~5の整数;bは0又は1;R及びRはそれぞれ独立に下記一般式(A)(qは1~9の整数、rは0又は1、sは1~3の整数、tは0又は1、uは1~8の整数、cは0又は1、vは4~12の整数を示す。)で表される炭素数20以上の基;Xは下記一般式(B)(dは0~3の整数、R及びRはそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基である。)で表される基又は5~7員非芳香族ヘテロ環基を示す〕で表されるカチオン性脂質と、炭素数2以上の親水性基と直鎖状の疎水性基を備える中性脂質とを含有する、脂質ナノ粒子。
[化1]
JP2019151589A_000023t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
JP2019151589A_000020t.gif
〔式(I)中、aは3~5の整数を示し;bは0又は1を示し;R及びRはそれぞれ独立に下記一般式(A):
【化2】
JP2019151589A_000021t.gif
(式(A)中、qは1~9の整数を示し;rは0又は1を示し;sは1~3の整数を示し;tは0又は1を示し;uは1~8の整数を示し;cは0又は1を示し:vは4~12の整数を示し;q+2r+s+2t+u+c+vが19以上の整数であるが、bとcが同時に0となる場合には、qが3~5の整数であり、r及びtが1であり、sが1であり、かつu+vが6~10の整数である場合を除く)
で表される基を示し;Xは、下記一般式(B):
【化3】
JP2019151589A_000022t.gif
(式(B)中、dは0~3の整数を示し;R及びRはそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(該C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基に置換されていてもよい)を示すが、R及びRは互いに結合して5~7員非芳香族ヘテロ環(該環の1個又は2個の水素原子が、C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい)を形成してもよい)
で表される基又は5~7員非芳香族ヘテロ環基(ただし、該基は炭素原子により(O-CO)b-に結合し、該環の1個又は2個の水素原子が、C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい)を示す〕
で表されるpH感受性カチオン性脂質と、炭素数2以上の親水性基から直鎖状の疎水性基が伸びている中性脂質とを含有し、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記pH感受性カチオン性脂質と前記中性脂質の合計量の割合が50モル%以上である、脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記中性脂質中の直鎖状の疎水性基が、炭素数16~20の直鎖状の炭化水素基(該基中の1個以上の炭素-炭素単結合間には、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、及びカーボネート結合からなる群より選択される1以上の結合が挿入されていてもよい)である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記中性脂質が、グリセロ脂質又はスフィンゴ脂質である、請求項1又は2に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
動的光散乱法により測定された個数平均粒子径が50nm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記pH感受性カチオン性脂質の量の割合が20モル%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
低分子化合物、低分子核酸、及びペプチドからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
薬効成分を含有しており、標的細胞へ前記薬効成分を送達するキャリアである、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、siRNA(small interfering RNA)等の薬効成分のキャリアとして有用な脂質ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塩基配列特異的に標的のDNA又はRNAに結合することでそれらがコードする遺伝子の発現を制御する核酸分子は、がんなどの難治性疾患に対する新規治療モダリティとして非常に注目を集めている。とりわけ、siRNA(short interfering RNA)はRNA干渉を介して標的遺伝子を強力にノックダウンすることが可能な機能性核酸であり、その医薬品への応用が切望されている。しかし、siRNAは組織移行能を持たないため、医薬への応用には標的細胞へ効率的に送達可能な技術の開発が必須である。これまでに、siRNAの効率的なin vivo送達を実現可能な脂質ナノ粒子が多数報告されている。特に、生理的pHでは電気的に中性であり、エンドソームなどの弱酸性pH環境下ではカチオン性に変化するpH感受性カチオン性脂質(例えば、特許文献1参照。)。の開発は、脂質ナノ粒子によるsiRNA送達効率の向上に著しく寄与している。例えば、マウス肝臓における第7因子(F7)を標的とするsiRNAを内包したpH感受性カチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を投与することにより、高効率でF7ノックダウンが成功したことが報告されている。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
一方で、がん組織へのsiRNA送達は、肝臓等の組織への送達よりも困難である。その大きな原因の一つとして、がん組織中に非常に豊富に存在するコラーゲンやヒアルロン酸をはじめとする間質成分(間質バリア)が挙げられる。間質バリアによってがん組織内におけるナノ粒子の浸透が物理的に妨げられるため、脂質ナノ粒子はがん組織深部まで移行できないため、充分な遺伝子ノックダウン効率や薬効を得ることができない。
【0004】
薬効成分を標的の細胞へ送達するナノ粒子(薬剤キャリアナノ粒子)の小型化は、間質バリアを突破するための非常に有効な戦略である。例えば、白金製剤内封高分子ミセルの直径を約30nmに小さく制御することによって、がん組織内浸透性が向上し、抗腫瘍効果が向上することが報告されている(非特許文献2参照。)。siRNAを標的の細胞へ送達する脂質ナノ粒子(siRNAキャリア脂質ナノ粒子)においても同様の戦略が非常に有効であると考えられるが、siRNAキャリア脂質ナノ粒子の粒子径を小さく制御することは技術的に難しい。近年、2液の瞬間混合を達成可能なマイクロミキサー内蔵マイクロ流路を用いることで直径30nm程度の脂質ナノ粒子を再現良く製造可能であることが報告され(例えば、非特許文献3参照。)、製造そのものの技術的バリアは解消されつつある。しかしながら、脂質ナノ粒子を小型化した際にそのsiRNA送達活性が著しく低減するという問題がある(例えば、非特許文献4及び5参照。)。脂質ナノ粒子の小型化に伴う活性低下の原因として、脂質ナノ粒子表面の脂質分子が疎になることで不安定化すること(非特許文献4)、またそれに付随して、脂質ナノ粒子を構成する脂質分子が脱離して脂質ナノ粒子が崩壊すること(非特許文献5)が明らかにされている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2015/178343号
【0006】

【非特許文献1】Sato et al.,Molecular Therapy,2016,vol.24(4),p.788-795.
【非特許文献2】Cabral et al.,Nature Nanotechnology,2011,vol.6,p.815-823.
【非特許文献3】Leung et al.,Journal of Physical Chemistry C Nanomater Interfaces,2012,vol.116(34),p.18440-18450.
【非特許文献4】Sato et al.,Journal of Controlled Release,2016,vol.229,p.48-57.
【非特許文献5】Chen et al.,Journal of Controlled Release,2016,vol.235,p.236-244.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
臨床適用可能な薬剤キャリアナノ粒子としては、より優れた送達効率(送達された薬効成分による薬効が得られる効率)を達成するために、標的細胞まで安定して送達できることが重要である。特に、抗がん剤を送達する場合には、間質バリアを透過してがん組織深部まで効率よく移行できるほどがん組織内浸透性が高く、かつ内包した抗がん剤をがん細胞内部に取り込まれるまで維持できるほど安定性に優れていることが重要である。
【0008】
本発明は、siRNA等の薬効成分のキャリアとして有用であり、粒子径が小さくなっても送達効率の優れた脂質ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、長鎖の炭化水素鎖を有するpH感受性カチオン性脂質と、比較的嵩高い親水性基と長鎖の炭化水素鎖とを備える中性脂質とを構成脂質とすることにより、粒子径の小さな脂質ナノ粒子が製造できること、かつこの脂質ナノ粒子にsiRNAを含有させたsiRNAキャリア脂質ナノ粒子は、粒子径を小さくした場合でも高いノックダウン効率が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の脂質ナノ粒子を提供するものである。
[1] 下記一般式(I)
【0011】
【化1】
JP2019151589A_000002t.gif

【0012】
〔式(I)中、aは3~5の整数を示し;bは0又は1を示し;R及びRはそれぞれ独立に下記一般式(A):
【0013】
【化2】
JP2019151589A_000003t.gif

【0014】
(式(A)中、qは1~9の整数を示し;rは0又は1を示し;sは1~3の整数を示し;tは0又は1を示し;uは1~8の整数を示し;cは0又は1を示し:vは4~12の整数を示し;q+2r+s+2t+u+c+vが19以上の整数であるが、bとcが同時に0となる場合には、qが3~5の整数であり、r及びtが1であり、sが1であり、かつu+vが6~10の整数である場合を除く)
で表される基を示し;Xは、下記一般式(B):
【0015】
【化3】
JP2019151589A_000004t.gif

【0016】
(式(B)中、dは0~3の整数を示し;R及びRはそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(該C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基に置換されていてもよい)を示すが、R及びRは互いに結合して5~7員非芳香族ヘテロ環(該環の1個又は2個の水素原子が、C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい)を形成してもよい)
で表される基又は5~7員非芳香族ヘテロ環基(ただし、該基は炭素原子により(O-CO)b-に結合し、該環の1個又は2個の水素原子が、C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい)を示す〕
で表されるpH感受性カチオン性脂質と、炭素数2以上の親水性基から直鎖状の疎水性基が伸びている中性脂質とを含有し、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記pH感受性カチオン性脂質と前記中性脂質の合計量の割合が50モル%以上である、脂質ナノ粒子。
[2] 前記中性脂質中の直鎖状の疎水性基が、炭素数16~20の直鎖状の炭化水素基(該基中の1個以上の炭素-炭素単結合間には、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、及びカーボネート結合からなる群より選択される1以上の結合が挿入されていてもよい)である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
[3] 前記中性脂質が、グリセロ脂質又はスフィンゴ脂質である、請求項1又は2に記載の脂質ナノ粒子。
[4] 動的光散乱法により測定された個数平均粒子径が50nm以下である、前記[1]~[3]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[5] 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記pH感受性カチオン性脂質の量の割合が20モル%以上である、前記[1]~[4]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[6] 低分子化合物、低分子核酸、及びペプチドからなる群より選択される1種以上を含有する、前記[1]~[5]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[7] 薬効成分を含有しており、標的細胞へ前記薬効成分を送達するキャリアである、前記[1]~[6]のいずれかの脂質ナノ粒子。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、長鎖の炭化水素鎖を有するpH感受性カチオン性脂質と、比較的嵩高い親水性基と長鎖の炭化水素鎖とを備える中性脂質とを構成脂質とを構成脂質としているため、粒子の大きさを小さくしても粒子表面の脂質膜の安定性に優れている。このため、当該脂質ナノ粒子にsiRNA等の薬効成分を内包させることにより、十分に小型であり、かつ薬効成分の送達能に優れた薬剤キャリアナノ粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子を添加したHeLa-dluc細胞のホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)を測定した結果を示した図である。
【図2】実施例1において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子を添加したHeLa-dluc細胞のホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)を測定した結果を示した図である。
【図3】実施例2において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子を添加したHeLa-dluc細胞のホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)を測定した結果を示した図である。
【図4】実施例2において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子の個数平均粒子径(nm)を測定した結果を示した図である。
【図5】実施例3において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子を添加したHeLa-dluc細胞のホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)を測定した結果を示した図である。
【図6】実施例4において、構成脂質の組成が異なる脂質ナノ粒子の個数平均粒子径(nm)を測定した結果を示した図である。
【図7】実施例5において、製造後、4℃、遮光下で保存した脂質ナノ粒子の個数平均粒子径(nm)の経時的変化を示した図である。
【図8】実施例5において、製造後、4℃、遮光下で保存した脂質ナノ粒子のsiRNA封入率(%)の経時的変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、下記一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質(以下、「本発明のpH感受性カチオン性脂質」ということがある。)と、炭素数2以上の親水性基から直鎖状の疎水性基が伸びている中性脂質(以下、「本発明の中性脂質」ということがある。)と、を含有する。本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質の合計量の割合は、50モル%以上である。

【0020】
[pH感受性カチオン性脂質]

【0021】
【化4】
JP2019151589A_000005t.gif

【0022】
一般式(I)において、aは3~5の整数を示すが、好ましくは4である。
bは0又は1を示す。bが0の場合には-O-CO-基が存在せず、単結合であることを意味する。

【0023】
一般式(I)において、R及びRはそれぞれ独立に下記一般式(A)で表される基を示す。一般式(A)において、qは1~9の整数を示し;rは0又は1を示し;sは1~3の整数を示し;tは0又は1を示し;uは1~8の整数を示し;cは0又は1を示し;vは4~12の整数を示す。ただし、bとcが同時に0となる場合には、qが3~5の整数であり、r及びtが1であり、sが1であり、かつu+vが6~10の整数である場合を除く。

【0024】
【化5】
JP2019151589A_000006t.gif

【0025】
本発明のpH感受性カチオン性脂質では、R及びRは、炭素数20以上の基である。すなわち、一般式(A)において、q+2r+s+2t+u+c+vは19以上の整数である。R及びRの炭化水素鎖が比較的長鎖であることが、本発明に係る脂質ナノ粒子の安定性に寄与している。本発明のpH感受性カチオン性脂質としては、q+2r+s+2t+u+c+vが19~33の整数であることが好ましく、19~31の整数であることがより好ましく、21~31の整数であることがさらに好ましく、21~27の整数であることがよりさらに好ましい。

【0026】
本発明のpH感受性カチオン性脂質のR及びRとしては、一般式(A)において、r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基;r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが6~10の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基;rが1であり、tが0であり、qが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、s+uが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが16以上の整数である基;rが1であり、tが0であり、qが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、s+uが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、cが1であり、vが6~10の整数であり、q+s+u+vが16以上の整数である基;が好ましい。

【0027】
本発明のpH感受性カチオン性脂質では、R及びRは、一般式(A)で表される基であればよく、互いに異なる基であってもよいが、同じ基であるほうが好ましい。

【0028】
一般式(I)において、Xは、下記一般式(B)で表される基又は5~7員非芳香族ヘテロ環基を示す。Xが示す5~7員非芳香族ヘテロ環基は、炭素原子により(O-CO)b-に結合する。

【0029】
【化6】
JP2019151589A_000007t.gif

【0030】
一般式(B)中、dは0~3の整数を示す。dが0の場合には-(CH)-基が存在せず、単結合であることを意味する。

【0031】
一般式(B)中、R及びRはそれぞれ独立にC1-4アルキル基(炭素数1~4のアルキル基)又はC2-4アルケニル基(炭素数1~4のアルケニル基)を示す。R及びRが示すC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基で置換されていてもよい。

【0032】
1-4アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が挙げられる。C2-4アルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基が挙げられる。

【0033】
一般式(B)中、R及びRは、互いに結合して5~7員非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。R及びRが互いに結合して形成される5~7員非芳香族ヘテロ環としては、例えば、1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、及び1-ピペラジニル基が挙げられる。R及びRが互いに結合して形成される5~7員非芳香族ヘテロ環は、環中の1個又は2個の水素原子がC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい。該環中の2個の水素原子がC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていている場合、互いに同じ基により置換されていてもよく、互いに異なる基により置換されていてもよい。

【0034】
一般式(I)において、Xが5~7員非芳香族ヘテロ環基である場合、該ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子などを挙げることができる。該ヘテロ環基中のヘテロ環を構成するヘテロ原子は、1個でもよく、同一又は異なるヘテロ原子が2個以上でもよい。該ヘテロ環基中のヘテロ環は、飽和のヘテロ環であってもよく、1個又は2個以上の二重結合が含まれていてもよいが、ヘテロ環が芳香環となることはない。

【0035】
本発明のpH感受性カチオン性脂質としては、一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが1であり、Xが5~7員非芳香族ヘテロ環基(ただし、ヘテロ環基中の炭素原子により(O-CO)b-に結合する。)、好ましくは1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基(環中の炭素原子により(O-CO)b-に結合しており、1個の水素原子がC1-4アルキル基若しくはC2-4アルケニル基で置換されていてもよい。)であり、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基、である脂質;一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが1であり、Xが一般式(B)において、dが1~3の整数であり、R及びRがそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(R及びRが示すC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基で置換されていてもよい)であり、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基、である脂質;一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが1であり、Xが5~7員非芳香族ヘテロ環基(ただし、ヘテロ環基中の炭素原子により(O-CO)b-に結合する。)、好ましくは1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基(環中の炭素原子により(O-CO)b-に結合しており、1個の水素原子がC1-4アルキル基若しくはC2-4アルケニル基で置換されていてもよい。)であり、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、rが1であり、tが0であり、qが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、s+uが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが16以上の整数である基、である脂質;一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが1であり、Xが一般式(B)において、dが1~3の整数であり、R及びRがそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(R及びRが示すC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基で置換されていてもよい)であり、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、rが1であり、tが0であり、qが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、s+uが5~11の整数、好ましくは6~10の整数であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが16以上の整数である基、である脂質;一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが0であり、Xが一般式(B)において、dが0であり、R及びRがそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(R及びRが示すC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は、1個又は2個の水素原子がフェニル基で置換されていてもよい)であり、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基、である脂質;一般式(I)において、aが3~5の整数であり、bが0であり、Xが一般式(B)において、dが0であり、R及びRが互いに結合して1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、及び1-ピペラジニル基(これらの環中の1個又は2個の水素原子がC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基に置換されていてもよい)を形成しており、R及びRがそれぞれ独立に、一般式(A)のうち、r及びtが0であり、q+s+uが13~23の整数、好ましくは15~21であり、cが1であり、vが4~12の整数であり、q+s+u+vが18以上の整数である基、である脂質;が好ましい。これらの脂質のうち、R及びRが同一の基である脂質が、一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質としてより好ましく、R及びRが同一の基であり、かつaが4である脂質が特に好ましい。

【0036】
一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質のpKaは特に限定されないが、例えば4.0~9.0程度、好ましくは4.5~8.5程度で選択することができ、この範囲のpKaを与えるように各置換基の種類を選択することが好ましい。

【0037】
一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質は、例えば、本明細書の実施例に具体的に示した方法により容易に製造することができる。この製造方法を参照し、原料化合物、試薬、及び反応条件などを適宜選択することにより、当業者は一般式(I)の範囲に包含される任意の脂質を容易に製造することができる。

【0038】
[中性脂質]
本発明の中性脂質は、炭素数2以上の親水性基から直鎖状の疎水性基が伸びている中性脂質である。本発明の中性脂質は、直鎖状の疎水性基が脂質膜を構成する他の脂質分子の疎水性部位と相互作用することにより、脂質膜中に安定して存在する。親水性基から伸びている直鎖状の疎水性基は、1本であってもよく、2本以上であってもよい。親水性基から伸びている直鎖状の疎水性基が2本以上の場合、全て同一の直鎖状疎水性基であってもよく、異なる直鎖状疎水性基であってもよい。

【0039】
脂質ナノ粒子を構成する他の脂質分子との相互作用の点から、当該直鎖状疎水性基としては、直鎖状の炭化水素基であることが好ましい。当該直鎖状の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。不飽和炭化水素基の場合、1個又は2個の不飽和結合を有する直鎖状炭化水素基であることが好ましい。

【0040】
本発明の中性脂質としては、一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質中のR及びRとの相互作用の点から、親水性基から延びる直鎖状の炭化水素基は、炭素数12~20の飽和又は不飽和の直鎖状炭化水素基であることがより好ましく、炭素数14~20の飽和又は不飽和の直鎖状炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数16~20の飽和又は不飽和の直鎖状炭化水素基であることがよりさらに好ましい。なお、当該炭化水素基は、1個以上の炭素-炭素単結合間に、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)、及びカーボネート結合(-OCOO-)からなる群より選択される1以上の結合が挿入されていてもよい。

【0041】
本発明の中性脂質が備える炭素数2以上の親水性基としては、基全体として電荷が中性であり、かつ親水性の高い基であれば特に限定されるものではない。例えば、リン酸基のような負に帯電している基と、アンモニウム基や4級アンモニウム基のような正に帯電している基とが適当な連結基で連結された基や、ポリエチレングリコール基、グリコシル基等が挙げられる。

【0042】
本発明の中性脂質としては、グリセロ脂質又はスフィンゴ脂質が好ましい。グリセロ脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファリジルコリン、カルジオリピン、プラスマロゲン等の中性のグリセロリン脂質;スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等のグリセロ糖質が挙げられる。スフィンゴ脂質としては、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルエタノールアミン等の中性のスフィンゴリン脂質;ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖質が挙げられる。これらのグリセロ脂質又はスフィンゴ脂質における脂肪酸残基(本発明の中性脂質の親水性基から伸びる直鎖状の疎水性基に相当)は特に限定されないが、例えば、炭素数12~24の飽和又は不飽和の脂肪酸残基を挙げることができ、炭素数14~20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基が好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などの脂肪酸由来のアシル基を挙げることができる。これらのグリセロ脂質又はスフィンゴ脂質が2以上の脂肪酸残基を有する場合、全ての脂肪酸残基が同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。

【0043】
本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する本発明のpH感受性カチオン性脂質は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する本発明のpH感受性カチオン性脂質が2種類以上である場合、本発明のpH感受性カチオン性脂質の量は、脂質ナノ粒子を構成する脂質分子のうち、本発明のpH感受性カチオン性脂質に相当する脂質分子の合計量を意味する。同様に、本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する本発明の中性脂質は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する本発明の中性脂質が2種類以上である場合、本発明の中性脂質の量は、脂質ナノ粒子を構成する脂質分子のうち、本発明の中性脂質に相当する脂質分子の合計量を意味する。

【0044】
脂質ナノ粒子を構成する脂質分子に占める本発明のpH感受性カチオン性脂質の割合が多いほど、標的細胞への脂質ナノ粒子の取り込み効率が高くなる。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子においては、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する本発明のpH感受性カチオン性脂質の量の割合([本発明のpH感受性カチオン性脂質の量(mol)]/([脂質ナノ粒子を構成する全脂質の量(mol)])×100%)は、20モル%以上であることが好ましい。一方で、脂質ナノ粒子を構成する脂質分子に占めるpH感受性カチオン性脂質の割合が多すぎると、粒子径を十分に小さくすることが困難な場合がある。標的細胞への脂質ナノ粒子の取り込み効率が十分であり、かつ粒子径が十分に小さい脂質ナノ粒子が得られることから、本発明に係る脂質ナノ粒子における脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する本発明のpH感受性カチオン性脂質の量の割合は、30モル%以上であることがより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、30~50モル%がよりさらに好ましい。

【0045】
脂質ナノ粒子を構成する脂質分子に占める本発明の中性脂質の割合が多いほど、粒子表面の脂質膜の安定性が高くなり、粒子径を小さくした場合でも十分な送達効率が達成できる。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子においては、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する本発明の中性脂質の量の割合([本発明の中性脂質の量(mol)]/([脂質ナノ粒子を構成する全脂質の量(mol)])×100%)は、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましく、30~70モル%がよりさらに好ましく、50~70モル%が特に好ましい。

【0046】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、その構成脂質が、本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質のみからなる粒子であってもよく、その他の脂質分子を含む粒子であってもよい。本発明に係る脂質ナノ粒子がその他の脂質分子を含む場合には、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質の合計量の割合は、50モル%以上であればよく、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がよりさらに好ましい。

【0047】
本発明に係る脂質ナノ粒子の構成脂質のうち、本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質以外の脂質としては、一般的にリポソームを形成する際に使用される脂質を用いることができる。このような脂質としては、例えば、正又は負に帯電したリン脂質、ステロール、又は飽和若しくは不飽和の脂肪酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0048】
正又は負に帯電したリン脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールホスファート、ホスファチジン酸などを挙げることができる。ステロールとしては、例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等の動物由来のステロール;スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロール等の微生物由来のステロールなどが挙げられる。

【0049】
本発明に係る脂質ナノ粒子の大きさは、標的細胞が生体内の比較的深奥部に存在する場合でも高い送達効率が得られやすいことから、平均粒子径が50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、10~30nmであることがよりさらに好ましい。なお、脂質ナノ粒子の平均粒子径とは、動的光散乱法(Dynamic light scattering:DLS)により測定された個数平均粒子径を意味する。動的光散乱法による測定は、市販のDLS装置等を用いて常法により行うことができる。

【0050】
本発明に係る脂質ナノ粒子の多分散度指数(PDI)は0.05~0.1程度、好ましくは0.06~0.08程度、さらに好ましくは約0.07程度である。ゼータ電位は5.5 mV~6.0 mVの範囲、好ましくは5.8 mV程度とすることができる。

【0051】
本発明に係る脂質ナノ粒子の形態は特に限定されないが、例えば、水系溶媒に分散した形態として一枚膜リポソーム、多重層リポソーム、球状ミセル、又は不定型の層状構造物などを挙げることができる。本発明に係る脂質ナノ粒子としては、一枚膜リポソーム、多重層リポソームであることが好ましい。

【0052】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質とを主たる構成脂質とすることにより、粒子表面の脂質膜の安定性が高く、脂質分子が脱離し難い。本発明に係る脂質ナノ粒子が安定性に優れている理由は明らかではないが、以下の理由が推察される。本発明のpH感受性カチオン性脂質は、2本の直鎖状の炭化水素基(一般式(I)中のR及びR)を備えており、当該pH感受性カチオン性脂質同士の相互作用はこの炭化水素基同士の疎水結合による。本発明のpH感受性カチオン性脂質は、この直鎖状の炭化水素基が炭素数20以上と比較的長鎖であり、より短鎖の炭化水素基よりも疎水性が向上されている。この疎水性の向上により、pH感受性カチオン性脂質同士の脂質分子間相互作用が強化される結果、脂質ナノ粒子からの脂質分子の脱離が抑制される。一方で、本発明の中性脂質は、炭素数2以上の嵩高い親水性基を備えており、このため、脂質ナノ粒子の粒子表面の脂質膜の安定性が高い。すなわち、本発明に係る脂質ナノ粒子は、本発明のpH感受性カチオン性脂質と本発明の中性脂質を用いて構成されることにより、粒子表面の脂質膜における脂質分子間相互作用が強化され、かつ脂質分子密度が小さい状態でも脂質膜を安定化できる。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子は、粒子径を50nm以下にまで小さくした場合でも脂質分子の脱離を抑制でき、生体内に投与された場合に標的の細胞により効率的に到達できる。

【0053】
本発明に係る脂質ナノ粒子には、必要に応じて適宜の表面修飾などを行うことができる。
例えば、本発明に係る脂質ナノ粒子の核内移行を促進するために、例えば、脂質ナノ粒子を3糖以上のオリゴ糖化合物で表面修飾することもできる。3糖以上のオリゴ糖化合物の種類は特に限定されないが、例えば、3~10個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができ、好ましくは3~6個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができる。

【0054】
オリゴ糖化合物としてより具体的には、例えば、セロトリオース(Cellotriose:β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、カコトリオース(Chacotriose:α-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコース)、ゲンチアノース(Gentianose:β-D-フルクトフラノシル β-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)、イソマルトトリオース(Isomaltotriose:α-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→6)-D-グルコース)、イソパノース(Isopanose:α-D-グルコピラノシル-(1→4)-[α-D-グルコピラノシル-(1→6)]-D-グルコース)、マルトトリオース(Maltotriose:α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、マンニノトリオース(Manninotriose:α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-D-グルコース)、メレジトース(Melezitose:α-D-グルコピラノシル-(1→3)-β-D-フルクトフラノシル=α-D-グルコピラノシド)、パノース (Panose:α-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、プランテオース(Planteose: α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-β-D-フルクトフラノシル=α-D-グルコピラノシド)、ラフィノース(Raffinose:β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)、ソラトリオース(Solatriose:α-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクトース)、ウンベリフェロース(Umbelliferose:β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→2)-α-D-ガラクトピラノシド)などの3糖化合物;リコテトラオース(Lycoテトラose:β-D-グルコピラノシル-(1→2)-[β-D-キシロピラノシル-(1→3)]-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-ガラクトース)、マルトテトラオース(Maltoテトラose:α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、スタキオース(Stachyose:β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6) -α-D-グルコピラノシド)などの4糖化合物;マルトペンタオース(Maltopentaose:α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、ベルバスコース(Verbascose:β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)などの5糖化合物;マルトヘキサオース(Maltohexaose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)などの6糖化合物を挙げることができるが、これらに限定されることはない。

【0055】
好ましくはグルコースの3量体ないし6量体であるオリゴ糖化合物を用いることができ、さらに好ましくはグルコースの3量体又は4量体であるオリゴ糖化合物を用いることができる。より具体的には、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、又はマルトヘキサオースなどを好適に用いることができ、これらのうち、グルコースがα1-4結合したマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、又はマルトヘキサオースがさらに好ましい。特に好ましいのはマルトトリオース又はマルトテトラオースであり、最も好ましいのはマルトトリオースである。オリゴ糖化合物による脂質ナノ粒子の表面修飾量は特に限定されないが、例えば、総脂質量に対して1~30モル%程度、好ましくは2~20モル%程度、より好ましくは5~10モル%程度である。

【0056】
オリゴ糖化合物で脂質ナノ粒子を表面修飾する方法は特に限定されないが、例えば、脂質ナノ粒子をガラクトースやマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(国際公開第2007/102481号)が知られているので、この刊行物に記載された表面修飾方法を採用することができる。上記刊行物の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。この手段はポリアルキレングリコール化脂質に単糖化合物を結合して脂質ナノ粒子の表面修飾を行なう方法であり、この手段により脂質ナノ粒子の表面をポリアルキレングリコールにより同時に修飾することができるので好ましい。

【0057】
脂質ナノ粒子の表面をポリアルキレングリコールなどの親水性ポリマーで修飾することによりリポソームの血中滞留性などの安定性を高めることができる場合がある。この手段については、例えば、特開平1-249717号公報、特開平2-149512号公報、特開平4-346918号公報、特開2004-10481号公報などに記載されている。親水性ポリマーとしてはポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどを用いることができる。ポリアルキレングリコールの分子量は、例えば300~10,000程度、好ましくは500~10,000程度、さらに好ましくは1,000~5,000程度である。

【0058】
ポリアルキレングリコールによる脂質ナノ粒子の表面修飾は、例えばポリアルキレングリコール修飾脂質を脂質膜構成脂質として用いて脂質ナノ粒子を構築することにより容易に行なうことができる。例えば、ポリエチレングリコールによる修飾を行う場合には、ステアリル化ポリエチレングリコール(例えばステアリン酸PEG45(STR-PEG45)など)を用いることができる。その他、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000]-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、n-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000]-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-750]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミンなどのポリエチレングリコール誘導体などを用いることもできるが、ポリアルキレングリコール化脂質はこれらに限定されることはない。

【0059】
また、ポリアルキレングリコールにオリゴ糖化合物を結合させることにより、ポリアルキレングリコール及びオリゴ糖化合物による表面修飾を同時に達成することができる。もっとも、脂質ナノ粒子をポリアルキレングリコールやオリゴ糖化合物で表面修飾する方法は上記の方法に限定されることはなく、例えば、ステアリル化されたポリアルキレングリコールやオリゴ糖化合物など脂質化された化合物を脂質ナノ粒子の構成脂質として使用することにより、表面修飾を行なうことができる場合もある。

【0060】
本発明に係る脂質ナノ粒子の製造にあたり、血中滞留性を高めるための脂質誘導体として、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリグリセリンリン脂質誘導体などを利用することもできる。また、血中滞留性を高めるための親水性ポリマーとして、ポリアルキレングリコールのほかにデキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル-無水マレイン酸交互共重合体、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどを表面修飾に用いることもできる。

【0061】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、ステロール、又はグリセリン若しくはその脂肪酸エステルなどの膜安定化剤、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、又はブチル化ヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、荷電物質、及び膜ポリペプチドなどからなる群から選ばれる1種又は2種以上の物質を含んでいてもよい。正荷電を付与する荷電物質としては、例えば、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの飽和若しくは不飽和脂肪族アミン;ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンなどの飽和若しくは不飽和カチオン性合成脂質;又は、カチオン性ポリマーなどを挙げることができ、負電荷を付与する荷電物質としては、例えば、ジセチルホスフェート、コレステリルヘミスクシネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸などを挙げることができる。膜ポリペプチドとしては、例えば、膜表在性ポリペプチド、又は膜内在性ポリペプチドなどが挙げられる。これらの物質の配合量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。

【0062】
また、本発明に係る脂質ナノ粒子には、例えば、温度変化感受性機能、膜透過機能、遺伝子発現機能、及びpH感受性機能などのいずれか1つ又は2つ以上の機能を付与することができる。これらの機能を適宜付加することにより、例えば遺伝子を含む核酸などを内包する脂質ナノ粒子の血液中での滞留性を向上させ、肝臓や脾臓などの細網内皮系組織による捕捉率を低下させるとともに、標的細胞におけるエンドサイトーシスの後にエンドソームから効率的に脂質ナノ粒子を脱出させて核内に移行させることができ、核内において高い遺伝子発現活性を達成することが可能になる。

【0063】
また、本発明に係る脂質ナノ粒子は、細胞表面の受容体や抗原に対して特異的に結合可能な抗体などの物質で修飾を施すこともでき、細胞の核内への物質送達効率を改善することができる。例えば標的組織又は臓器に特異的に発現する生体成分に対するモノクローナル抗体を脂質ナノ粒子の表面に配置することが好ましい。この手法は、例えば、STEALTH LIPOSOME(第233-244頁、CRC Press, Inc.発行,Danilo Lasic及びFrank Martin編)などに記載されている。脂質ナノ粒子の構成成分として、モノクローナル抗体やそのフラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、又はFab’フラグメントなど)中のメルカプト基と反応し得る脂質誘導体、例えばポリ(エチレングリコール)-α-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ω-マレインイミド、α-[N-(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォリル-エチル)カルバミル)-ω-[3-[2-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)エタンカルボキサミド]プロピル}-ポリ(オキシ-1,2-エタンジル)などのマレインイミド構造を有する脂質誘導体を含有させることにより、モノクローナル抗体を脂脂質ナノ粒子の膜の表面に結合させることができる。

【0064】
本発明に係る脂質ナノ粒子の表面を、連続した複数個のアルギニン残基を含むポリペプチド(以下、「ポリアルギニン」と呼ぶ。)で修飾してもよい。ポリアルギニンとしては、好ましくは4~20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチド、さらに好ましくは4~20個の連続したアルギニン残基のみからなるポリペプチド、特に好ましくはオクタアルギニンなどを用いることができる。リポソームなどの脂質ナノ粒子の表面をオクタアルギニンなどのポリアルギニンで修飾することにより、リポソームに封入された目的物質の細胞内送達効率を向上させることができる(Journal of Controlled Release, 98, pp.317-323, 2004;国際公開第2005/32593号)。ポリアルギニンによる脂質ナノ粒子表面の修飾は、上記の刊行物に記載された方法に従って、例えば脂質修飾ポリアルギニン、例えばステアリル化オクタアルギニンなどを脂質ナノ粒子の構成脂質として使用することにより容易に行うことができる。上記刊行物の開示及びこの刊行物において引用された全ての文献の開示を参照により本明細書の開示として含める。

【0065】
本発明に係る脂質ナノ粒子の製造方法は特に限定されず、当業者に利用可能な任意の方法を採用することができる。一例を挙げれば、全ての脂質成分をクロロホルムなどの有機溶媒に溶解し、エバポレータによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことによって脂質膜を形成した後、水系溶媒を乾燥した上記の混合物に添加し、さらにホモジナイザーなどの乳化機、超音波乳化機、又は高圧噴射乳化機などにより乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としてよく知られている方法、例えば逆相蒸発法などによっても製造することができる。脂質ナノ粒子の大きさを制御したい場合には、孔径のそろったメンブランフィルターなどを用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。

【0066】
水系溶媒(分散媒)の組成は特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩液などの緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。これら水系溶媒(分散媒)は脂質ナノ粒子を安定に分散させることができるが、さらに、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)や、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)などを加えてもよい。この水系溶媒に分散した脂質ナノ粒子を安定に長期間保存するには、凝集抑制などの物理的安定性の面から水系溶媒中の電解質を極力排除することが望ましい。また、脂質の化学的安定性の面からは水系溶媒のpHを弱酸性から中性付近(pH3.0~8.0程度)に設定し、及び/又は窒素バブリングなどにより溶存酸素を除去することが望ましい。

【0067】
得られた脂質ナノ粒子の水性分散物を凍結乾燥又は噴霧乾燥する場合には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。また、上記水性分散物を凍結する場合には、例えば、前記の糖類やグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。

【0068】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、構成脂質に本発明のpH感受性カチオン性脂質を含むために、細胞への取り込み効率が高く、また、本発明のpH感受性カチオン性脂質を本発明の中性脂質と共に脂質膜を形成させるため、粒子径を小さくした場合でも粒子表面の脂質膜の安定性が高い。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子は、脂質膜の内部に内包した成分を、標的の細胞内へ効率よく送達させることができる。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子は、目的の成分を標的の細胞へ送達させるキャリアとして有用である。

【0069】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、脂質膜で覆われた粒子内部に、標的の細胞内に送達する目的の成分を内包していることが好ましい。本発明に係る脂質ナノ粒子が粒子内部に内包する成分としては、内包可能な大きさであれば特に限定されるものではなく、本発明に係る脂質ナノ粒子には、核酸、糖類、ペプチド類、低分子化合物、金属化合物など任意の物質を封入することができる。本発明に係る脂質ナノ粒子に内包させる成分としては、低分子化合物、低分子核酸、及びペプチドからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。低分子核酸としては、例えば、siRNA、microRNA、核酸アプタマー、デコイ核酸、リボザイム、CpGオリゴ核酸等が挙げられる。

【0070】
siRNAは21~23塩基対からなる低分子二本鎖RNAであり、RNA干渉(RNAi)に関与し、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。合成のsiRNAがヒトの細胞においてRNA干渉を引き起こすことが報告されており、siRNAを用いたRNA干渉により遺伝子をノックダウンすることができることから、医薬としての利用やがんなどの治療分野において応用が期待されている。本発明に係る脂質ナノ粒子に内包されるsiRNAの種類は特に限定されず、RNA干渉を引き起こすことができるものであればいかなるものを使用してもよいが、一般的には、21~23塩基対の二本鎖RNAであって、RNA鎖の3’部分が2塩基分突出した構造をとり、それぞれの鎖は5’末端にリン酸基と3’末端にヒドロキシル基を有する構造のRNAを本発明におけるsiRNAとして使用することができる。また、リボース骨格の2’位のヒドロキシル基がメトキシ基、フルオロ基、又はメトキシエチル基に、ホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合に一部置換されたsiRNAも含まれる。

【0071】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、標的細胞へ薬効成分を送達するキャリアとして特に有用である。本発明に係る脂質ナノ粒子が内包する薬効成分としては、特に限定されるものではなく、抗がん剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤などの任意の医薬の有効成分を使用できる。本発明に係る脂質ナノ粒子は、間質バリアを超えて腫瘍組織の深奥部のがん細胞にも効率よく到達させられることから、がん治療に使用される薬効成分を内包しているキャリアであることが好ましい。また、本発明に係る脂質ナノ粒子は、がん組織内のみならず他の正常組織における高浸透性の実現も期待できる。具体的には、皮下組織や肺組織における優れた浸透性が期待され、比較的侵襲性の低い皮下投与型又は経肺投与(吸入)型核酸送達製剤としても有用である。

【0072】
なお、特許文献1には、YSK12を含む脂質化合物の合成方法、該脂質化合物を用いた脂質膜構造体の調製方法、及び得られた脂質膜構造体についてTHP-1細胞(ヒト単球株)に対する遺伝子発現抑制作用及びJurkat細胞(ヒトT細胞株)に対する遺伝子発現抑制作用が具体的に示されている。特許文献1の開示の全てを参照により本明細書の開示に含める。
【実施例】
【0073】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
<一般式(I)で表されるpH感受性カチオン性脂質の合成>
以下に、出発としてリノール酸(Compound A)を用いて、一般式(A)中のcが0である脂質を合成する場合の反応式を示す。リノール酸を水素化リチウムアルミニウムで還元後(Compound B)、水酸基をメシル化することで活性化し(Compound C)、臭化マグネシウムを作用させることで臭素化する(Compound D)。δ-Valerolactoneを基質としてグリニャール反応を行うことで2本のリノール酸由来疎水性足場を連結する(Compound E)。第3級アミノ基を炭化水素鎖に直接結合させる場合には、第1級水酸基をトシル化によって活性化し(Compound F)、求核置換反応によりアミノ基を導入する。
【実施例】
【0075】
【化7】
JP2019151589A_000008t.gif
【実施例】
【0076】
一方、エステル結合を介して第3級アミノ基を結合させる場合には、第1級水酸基に対してアミノ酸を脱水縮合することで連結する。一般式(A)中のcが1であり、R及びR中にエステル結合を含む脂質の合成には、直鎖アルカン(炭素数6~10)の両末端炭素原子に結合する水素原子が臭素原子と水酸基に1つずつ置換した物質(Compound G)を出発原料として用いる。水酸基をtert-ブチルジメチルシリルエーテル化することで保護し(Compound H)、上述と同様にグリニャール反応により2分子を連結させる(Compound I)。上述と同様に、第1級水酸基部分に直接又はエステル結合を介して第3級アミノ基を導入後(Compound J, M)、シリルエーテルを脱保護し(Compound K,N)、脱水縮合によって任意の直鎖脂肪酸を連結する。
【実施例】
【0077】
【化8】
JP2019151589A_000009t.gif
【実施例】
【0078】
<カチオン性脂質>
以降の実施例においては、下記の5種のカチオン性脂質(CL15A6、CL15H6、CL15C6、CL12H6、CL4H6)と、4種の公知のカチオン性脂質(YSK05(特開2013-245190号公報)、ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、及びジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC-chol)を使用した。
【実施例】
【0079】
【化9】
JP2019151589A_000010t.gif
【実施例】
【0080】
【化10】
JP2019151589A_000011t.gif
【実施例】
【0081】
[合成例1]CL15A6の合成
前記の合成反応1において、リノール酸をCompound AとしてCompound Eを合成し、Compound Eに、1-メチル-4-カルボン酸とを脱水縮合反応させてCL15A6を合成した。
具体的には、特許文献1におけるYSK12の合成と同様にして、リノール酸から4-[(9z, 12z)-オクタデカジエニル]-(13z, 16z)-トリコサジエン-1,4-ジオール(Compound E)を合成した。続いて、Compound E 842 mg(1.40 mmol)を10 mLの1,2-ジクロロエタンに溶解した。この溶液に、1-メチル-4-カルボン酸 200 mg(1.40 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 383 mg(2.00 mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン 17.1 mg(0.14 mmol)を加え、得られた混合液を室温で一晩撹拌した。次いで、この混合液を50 mLの酢酸エチルで希釈した後、1 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。続いて、洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して(14z, 17z)-5-ヒドロキシ-5-[(9z, 12z)-オクタデカ-9, 12-ジエン-1-イル]トリコサ-14, 17-ジエン-1-イル 1-メチルピペラジン-4-カルボキシレート(CL15A6) 877 mg(1.21 mmol)を無色オイルとして得た。収率は86%であった。
【実施例】
【0082】
[合成例2]CL4H6の合成
【実施例】
【0083】
【化11】
JP2019151589A_000012t.gif
【実施例】
【0084】
(1) ((6-ブロモヘキシル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン
6-ブロモヘキサン-1-オール 20.0 g(110.5 mmol)を150 mLの1,2-ジクロロエタンに溶解し、4℃に冷却した。tert-ブチルジメチルクロロシラン(TBSCl) 18.0 g(120 mmol)を加えたのち、トリエチルアミン(TEA) 19.5 mL(140 mmol)を滴下し、室温で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、ヘキサン300 mLを加えて懸濁させ、セライト濾過によって不溶物を除去することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(連続勾配)}に供することにより精製して、((6-ブロモヘキシル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン 26.0 g(88.0 mmol)を無色オイルとして得た。収率は80%であった。
【実施例】
【0085】
1H NMR;400 MHz δ=0.05 (s, 6H), 0.89 (s, 9H), 1.31-1.54 (m, 6H), 1.86 (m, 2H), 3.40 (t, 2H), 3.96 (t, 2H).
【実施例】
【0086】
(2) 11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)ウンデカン-1,5-ジオール
4 mLのジエチルエーテルに((6-ブロモヘキシル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン1.2 g(4.06 mmol)を溶解し、削り屑状マグネシウム2.43 g(100 mmol)を加え、続いてヨウ素1欠片加えた。室温で10分静置した後、オイルバスで40℃に加熱しながら撹拌し、21 mLのジエチルエーテルに溶解した((6-ブロモヘキシル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン 24.8 g(83.94 mmol)を滴下した。40℃で2時間反応させた後、4℃に冷却した。続いて、δ-バレロラクトン3.67 mL(39.6 mmol)を添加し、室温で一晩反応させた。次に、4℃に冷却し、5%硫酸を滴下することで残留したマグネシウムを溶解させた。この反応液をジエチルエーテルで希釈した後、水及び飽和食塩水で分液洗浄した。続いて、洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(連続勾配)}に供することにより精製して11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)ウンデカン-1,5-ジオール 14.0 g(26.3 mmol)を無色オイルとして得た。δ-バレロラクトンからの収率は66%であった。
【実施例】
【0087】
1H NMR;400 MHz δ=0.05 (s, 12H), 0.89 (s, 18H), 1.25-1.56 (m, 26H), 3.59 (t, 4H), 3.65 (t, 2H).
【実施例】
【0088】
(3) 11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 4-メチルベンゼンスルホネート
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)ウンデカン-1,5-ジオール 14.0 g(26.3 mmol)を50 mLのジクロロメタンに溶解し、DMAP(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン) 321 mg(2.63 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)5.50 mL(39.5mmol)を加え、4℃に冷却した。続いて、p-トルエンスルホニルクロリド(pTsCl)6.02g(31.6 mmol)を徐々に加えていった後、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、酢酸エチルで懸濁し、水及び飽和食塩水で分液洗浄した。続いて、洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(連続勾配)}に供することにより精製して11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 4-メチルベンゼンスルホネート 12.4 g(28.0 mmol)を無色オイルとして得た。収率は69%であった。
【実施例】
【0089】
(4) 11-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)-2,2,3,3,19,19,20,20-オクタメチル-4,18-ジオキサ-3,19-ジシラヘニコサン-11-オール
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 4-メチルベンゼンスルホネート 12.4 g(18.0 mmol)に30 mLのテトラヒドロフランを加え、4℃に冷却した。続いて、ジプロピルアミン 7.38 mL(54.0 mmol)を加えた後、室温で11日間反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、0.5 N 水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して11-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブル)-2,2,3,3,19,19,20,20-オクタメチル-4,18-ジオキサ-3,19-ジシラヘニコサン-11-オール 7.27 g(11.8 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は66%であった。
【実施例】
【0090】
1H NMR;400 MHz δ=0.05 (s, 12H), 0.89 (s, 18H), 1.24-1.64 (m, 30H), 2.30-2.43 (m, 6H), 3.58 (t, 4H).
【実施例】
【0091】
(5) 7-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)トリデカン-1,7,13-トリオール
11-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)-2,2,3,3,19,19,20,20-オクタメチル-4,18-ジオキサ-3,19-ジシラヘニコサン-11-オール 7.27 g(11.8 mmol)に酢酸2.23 mL(39 mmol)及び26 mLの1.0 M テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、逆相シリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;水(0.1%トリフルオロ酢酸):アセトニトリル0.1%トリフルオロ酢酸)(連続勾配)}に供することにより精製して7-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)トリデカン-1,7,13-トリオール 3.43 g(8.85 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は75%であった。
【実施例】
【0092】
(6) 7-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL4H6)
7-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)トリデカン-1,7,13-トリオール 388 mg(1.0 mmol)を5 mLのジクロロメタンに溶解し、続いて、オレイルクロリド900 mg(3.0 mmol)を加えた後、4℃に冷却した。TEA 697 μL(5.0 mmol)を滴下し、室温で3時間反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。ろ液を0.5 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して7-(4-(ジイソプロピルアミノ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL4H6)570 mg(0.622 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は62%であった。
【実施例】
【0093】
1H NMR;400 MHz δ=0.88 (m, 12H), 1.18-1.71 (m, 74H), 2.01 (m, 8H), 2.24-2.30 (t, 4H), 2.32-2.42 (m, 6H), 4.04 (t, 4H), 5.32 (m, 4H).
【実施例】
【0094】
[合成例3]CL15H6の合成
【実施例】
【0095】
【化12】
JP2019151589A_000013t.gif
【実施例】
【0096】
(1) 11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)ウンデカン-1,5-ジオール 5.33 g(10.0 mmol)を50 mLのジクロロメタンに溶解し、DMAP 122 mg(1.0 mmol)と1-メチルピペリジン-4-カルボオキシ酸 塩酸塩 2.16 g(12.0 mmol)を加えた。続いて、EDCI 2.49 g(13.0 mmol)を徐々に加えていった後、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。ろ液を0.5 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート5.01 g(7.61 mmol)を無色オイルとして得た。収率は76%であった。
【実施例】
【0097】
1H NMR;400 MHz δ=0.05 (s, 12H), 0.89 (s, 18H), 1.25-2.01 (m, 26H), 2.23 (br.s, 4H), 2.78 (m, 2H), 3.58 (t, 4H), 4.08 (t, 2H).
【実施例】
【0098】
(2) 5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート 5.01 g(7.61 mmol)に酢酸1.43 mL(25 mmol)及び20 mLの1.0 M テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、逆相シリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;水(0.1%トリフルオロ酢酸):アセトニトリル0.1%トリフルオロ酢酸)(連続勾配)}に供することにより精製して5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート 2.34 g(5.45 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は72%であった。
【実施例】
【0099】
1H NMR;400 MHz δ=1.25-1.45 (m, 20H), 1.52 (m, 4H), 1.62 (m, 2H), 1.86 (m, 2H), 2.05 (m, 2H), 2.50-2.70 (m, 6H), 3.16 (m, 2H), 3.53 (t, 4H), 4.11 (t, 2H).
【実施例】
【0100】
(3) 7-ヒドロキシ7-(4-((1-メチルピペリジン-4-カルボニル)オキシ)ブチル)トリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL15H6)
5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カボオキシレート 430 mg(1.00 mmol)を10 mLのジクロロメタンに溶解した。続いて、オレイン酸 706 mg(2.50 mmol)、DMAP 24.4 mg(0.20 mmol)及びEDCI 671 mg(3.5 mmol)を加え、室温で2時間反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。ろ液を0.5 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して7-ヒドロキシ7-(4-((1-メチルピペリジン-4-カルボニル)オキシ)ブチル)トリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL15H6)569 mg(0.594 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は59%であった。
【実施例】
【0101】
1H NMR;400 MHz)データ δ=0.88 (t, 6H), 1.20-2.05 (m, 78H), 2.28 (m, 8H), 2.82(m, 2H), 4.07 (m, 6H), 5.33 (m, 4H).
【実施例】
【0102】
[合成例4]CL15C6の合成
【実施例】
【0103】
【化13】
JP2019151589A_000014t.gif
【実施例】
【0104】
(1) 7-ヒドロキシ7-(4-((1-メチルピペリジン-4-カルボニル)オキシ)ブチル)トリデカン-1,13-ジイル ジテトラデカノエート(CL15C6)
5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 1-メチルピペリジン-4-カルボオキシレート 85.9 mg(0.20 mmol)を1.5 mLのジクロロメタンに溶解し、続いて、ミリストイルクロリド 163 mg(0.60 mmol)を加えた後、4℃に冷却した。TEA 139 μL(1. 00 mmol)を滴下し、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。ろ液を0.2 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して7-ヒドロキシ7-(4-((1-メチルピペリジン-4-カルボニル)オキシ)ブチル)トリデカン-1,13-ジイル ジテトラデカノエート(CL15C6)116 mg(0.136 mmol)を薄黄色固体として得た。収率は68%であった。
【実施例】
【0105】
1H NMR;400 MHz δ=0.88 (t, 6H), 1.20-2.10 (m, 78H), 2.28 (m, 8H), 2.82 (m, 2H), 4.06 (m, 6H).
【実施例】
【0106】
[合成例5]CL12H6の合成
【実施例】
【0107】
【化14】
JP2019151589A_000015t.gif
【実施例】
【0108】
(1) 11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)ウンデカン-1,5-ジオール 12.73 g(23.9 mmol)を64 mLのジクロロメタンに溶解し、DMAP 293 mg(2.4 mmol)と3-ジメチルアミノプロパン酸 塩酸塩 4.04 g(26.3 mmol)を加えた。続いて、EDCI 5.50 g(28.7 mmol)を徐々に加えていった後、室温で一晩反応させた。この反応液は、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。濾液を0.5 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート6.66 g(10.54 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は44%であった。
【実施例】
【0109】
1H NMR;400 MHz δ=0.05 (s, 12H), 0.89 (s, 18H), 1.25-2.01 (m, 26H), 2.22 (s, 6H), 2.47 (t, 2H), 2.62 (t, 2H), 3.60 (t, 4H), 4.08 (t, 2H).
【実施例】
【0110】
(2) 5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート
11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(6-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキシル)-5-ヒドロキシウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート 6.66 g(10.54 mmol)に酢酸1.82 mL(31.6 mmol)及び21.1 mLの1.0 M テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート 2.40 g(5.95 mmol)を薄黄色オイルとして得た。収率は57%であった。
【実施例】
【0111】
1H NMR;400 MHz δ=1.25-1.45 (m, 20H), 1.61 (m, 6H), 2.83 (s, 6H), 2.88 (t, 2H), 3.32 (t, 2H), 3.63 (t, 4H), 4.11 (t, 2H).
【実施例】
【0112】
(3) 7-(4-((3-ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL12H6)
5,11-ジヒドロキシ5-(6-ヒドロキシヘキシル)ウンデシル 3-(ジメチルアミノ)プロパノエート 800 mg(2.00 mmol)を10 mLのジクロロメタンに溶解した。続いて、オレイン酸 1.24 g(4.40 mmol)、DMAP 48.9 mg(0.40 mmol)及びEDCI 959 mg(5.0 mmol)を加え、室温で一晩反応させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、酢酸エチルで懸濁し、濾過によって不溶物を除去した。ろ液を0.5 N水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で分液洗浄した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製して7-(4-((3-ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイル ジオレアート(CL12H6)874 mg(0.937 mmol)を無色オイルとして得た。収率は47%であった。
【実施例】
【0113】
1H NMR;400 MHz δ=0.88 (t, 6H), 1.20-1.47 (m, 58H), 1.62 (m, 12H), 2.01 (m, 8H), 2.30(m, 10H), 2.51 (t, 2H), 2.69 (t, 2H), 4.06 (m, 6H), 5.33 (m, 4H).
【実施例】
【0114】
<中性脂質>
以降の実施例においては、コレステロール(chol)、卵黄由来スフィンゴミエリン(ESM)、及びポリエチレングリコール2000修飾ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)の3種の中性脂質を使用した。
【実施例】
【0115】
【化15】
JP2019151589A_000016t.gif
【実施例】
【0116】
[実施例1]
siRNAを内包した脂質ナノ粒子において、粒子を構成するカチオン性脂質と中性脂質の種類が、ノックダウン活性に与える影響を調べた。
具体的には、表1に記載のモル比の脂質で構成されており、siRNAを内包した脂質ナノ粒子を、staggered herringbone mixer(SHM)内蔵マイクロ流路(非特許文献4)を用いて製造した。siRNAは、ホタルルシフェラーゼを標的とするsiGL4を用いた。
【実施例】
【0117】
<脂質ナノ粒子の製造>
脂質ナノ粒子の製造は、具体的には、まず、脂質濃度8mMに調整したエタノール溶液及びsiRNA濃度71.1μg/mLに調整した酢酸緩衝液(25mM、pH4.0)をそれぞれ0.375mL/分及び1.125mL/分でマイクロ流路内に送液し、流路から排泄された脂質ナノ粒子溶液を回収した。脂質ナノ粒子溶液を、透析膜(MWCO 12,000-14,000)に入れ、外水相を20mM MES緩衝液(pH6.0)として4℃、20時間以上透析した。その後、外水相をPBS(-)に置換し、さらに4℃、2時間以上透析した後、透析膜から脂質ナノ粒子溶液を回収した。
【実施例】
【0118】
<脂質ナノ粒子の物性評価>
脂質ナノ粒子のPBS(-)中における平均粒子径(個数平均値)及び10mM HEPES緩衝液(pH7.4)中におけるゼータ電位を、分析装置「Zetasizer Nano ZS ZEN3600」(Malvern社製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【実施例】
【0119】
<脂質ナノ粒子のsiRNA封入率>
脂質ナノ粒子のsiRNA封入率は、RNAインターカレーターであるRibogreen(life technologies社製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。表1中、「CL」はカチオン性脂質を意味し、この欄中の括弧内は使用したカチオン性脂質を示す。
【実施例】
【0120】
【表1】
JP2019151589A_000017t.gif
【実施例】
【0121】
その結果、cholを含有する脂質ナノ粒子は、平均粒子径がいずれも30nm以上であり、PEG-DMG添加量を増大させると平均粒子径が小さくなった。cholの半量又は全量をESMに置換した脂質ナノ粒子では、ESMへの置換量依存的に平均粒子径が小さくなった。特に、cholの全量をESMに置換した脂質ナノ粒子では、平均粒子径が30nm以下と極小であった。また、いずれの脂質ナノ粒子も、ゼータ電位は中性付近であり、siRNA封入率は95%以上と高かった。
【実施例】
【0122】
<in vitroノックダウン活性の測定>
ヒト子宮頸がん由来培養細胞株HeLaに、ホタルルシフェラーゼとウミシイタケルシフェラーゼの両方を安定して発現させたデュアルルシフェラーゼ安定発現株HeLa-dluc細胞を用いて、製造された各脂質ナノ粒子のノックダウン活性を調べた。HeLa-dluc細胞は、10%ウシ胎児血清含有DMEMで培養した。
【実施例】
【0123】
具体的には、96ウェルプレートに6×10個/ウェルとなるように播種したHeLa-dluc細胞の培養培地に、各脂質ナノ粒子をsiGL4の終濃度が1~14nMとなるように混合(リバーズトランスフェクション)し、37℃、5容量%CO環境下で24時間培養した。培養後に上清を除去し、Passive Lysis Bufferによって細胞を溶解し、ライセートを調製した。このライセートのホタルルシフェラーゼ活性を、Dual-Luciferase(商標)Reporter Assay System(Promega社製)を用いて測定した。ホタルルシフェラーゼ活性の測定値を、コントロールであるウミシイタケルシフェラーゼ活性の測定値で標準化したホタルルシフェラーゼ比活性(%)を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)とした。ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率が低いほど、ノックダウン活性が高いといえる。脂質ナノ粒子を添加した各HeLa-dluc細胞のホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%)の測定結果を図1及び2に示す。
【実施例】
【0124】
この結果、カチオン性脂質とcholを50:50(モル比)で用いた脂質ナノ粒子では、いずれのカチオン性脂質であっても、配合したPEG-DMGの量が少なく、平均粒子径が大きいほうがホタルルシフェラーゼの発現量(相対)が低く、ノックダウン活性が高かった(図1)。CL15H6を含む脂質ナノ粒子とCL15A6を含む脂質ナノ粒子を比較すると、炭化水素鎖が比較的短いCL15A6では、平均粒子径が65.2nmであった脂質ナノ粒子では遺伝子ノックダウンが認められたが、25.1nmの脂質ナノ粒子では、ノックダウン活性が観察されなかった。これに対して、炭化水素鎖が比較的長いCL15H6では、平均粒子径が54.1nmの脂質ナノ粒子だけではなく、35.7nmの脂質ナノ粒子でも濃度依存的な遺伝子ノックダウンが認められた。
【実施例】
【0125】
脂質ナノ粒子の構成脂質のうちcholをESMに置換した場合には、ESMへの置換量が多くなるほど、高いノックダウン活性が観察された(図2)。CL15A6を含有させた脂質ナノ粒子では、cholの全量をESMへ置換することにより、遺伝子ノックダウンが観察されるようになった。また、CL15H6を含有させた脂質ナノ粒子では、平均粒子径24.5nmという極小の脂質ナノ粒子が、最も優れたノックダウン活性を示した。
【実施例】
【0126】
[実施例2]
実施例1においては、構成脂質の組成がCL15H6/ESM/PEG-DMG=50/50/3(モル比)の脂質ナノ粒子が最もノックダウン活性が高かった。そこで、PEG-DMGの含有量を3モル%に固定し、CL15H6とESMのモル比を30:70から70:30の間で変化させた脂質ナノ粒子を製造し、ノックダウン活性への影響を調べた。
【実施例】
【0127】
具体的には、表2に示す組成で脂質ナノ粒子を製造し、その個数平均粒子径(nm)、ゼータ電位(mV)、siRNA封入率(%)、及びノックダウン活性(ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%))を求めた。脂質ナノ粒子の製造とその後の測定は、実施例1と同様にして行った。結果を表2及び図3に示す。
【実施例】
【0128】
【表2】
JP2019151589A_000018t.gif
【実施例】
【0129】
この結果、CL15H6を40モル%含有する脂質ナノ粒子が、個数平均粒子径22nmであり、最も小さかった。また、いずれの組成においても、siRNA封入率は90%以上と高かった。これらの脂質ナノ粒子について、HeLa-dluc細胞における遺伝子ノックダウン活性を評価したところ、CL15H6を30モル%含有する脂質ナノ粒子は比較的低い活性を示した一方で、その他の脂質ナノ粒子は互いに同等の活性を示した(図3)。以上の結果より、CL15H6、ESM、及びPEG-DMGで構成された脂質ナノ粒子では、遺伝子ノックダウン活性が十分に高く、かつ最も小さな粒子径を示したことから、CL15H6/ESM/PEG-DMG=40/60/3(モル%)を最適組成比とした。
【実施例】
【0130】
続いて、CL15H6/ESM=40/60(モル%)の脂質ナノ粒子と、CL15H6/chol=40/60(モル%)の脂質ナノ粒子に対して、それぞれ、PEG-DMGを0、1、又は3モル%添加して形成された脂質ナノ粒子の平均粒子径を測定し、PEG-DMGの影響を調べた。脂質ナノ粒子の製造とその後の平均粒子径の測定は、実施例1と同様にして行った。結果を図4に示す。
【実施例】
【0131】
その結果、CL15H6/cholの脂質ナノ粒子の平均粒子径は、PEG-DMG量の低下に伴って顕著に増大した。これに対して、CL15H6/ESMの脂質ナノ粒子の平均粒子径は、PEG-DMG非依存的に30nm以下の極小粒子径を示した(図4)。この結果は、CL15H6及びcholはいずれも嵩高い親水性部位を持たないため、脂質ナノ粒子表面を安定化できず、脂質ナノ粒子の安定化を親水性ポリマーであるPEGを含むPEG-DMGに大きく依存している系であることを示している。また、同時に、CL15H6/ESMの系では、ESMの嵩高い親水性部位(ホスファチジルコリン)により脂質ナノ粒子表面が安定化されるため、PEG-DMG非依存的に極小粒子径を示したと推察できる。PEG-DMGは、血清存在下においては速やかに脱離することが知られていることから、PEG-DMG非依存的に極小粒子を形成するという特性は、生体内における脂質ナノ粒子の分散性の観点で有意な点であると考えられる。
【実施例】
【0132】
[実施例3]
実施例2で得られた、遺伝子ノックダウン活性が高く、かつ極小(平均粒子径が20nm台)である脂質ナノ粒子が、ESM以外の中性脂質でも得られるかどうか、調べた。
【実施例】
【0133】
中性脂質としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:不飽和結合数2)、卵黄由来ホスファチジルコリン(EPC:不飽和結合数1)及びジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC:不飽和結合数0)を用いた。これらはいずれも、嵩高い親水性基と比較的長い脂肪酸残基を備える中性のグリセロリン脂質である。また、比較対象として、ESMも用いた。
【実施例】
【0134】
具体的には、表3に示す組成で脂質ナノ粒子を製造し、その個数平均粒子径(nm)、siRNA封入率(%)、及びノックダウン活性(ホタルルシフェラーゼ遺伝子発現率(%))を求めた。脂質ナノ粒子の製造とその後の測定は、実施例1と同様にして行った。結果を表3及び図5に示す。表3中、「中性リン脂質」の欄中の括弧内は使用した中性リン脂質を示す。
【実施例】
【0135】
【表3】
JP2019151589A_000019t.gif
【実施例】
【0136】
この結果、いずれのリン脂質を用いた場合でも、平均粒子径が30nm又はそれ以下の極小の脂質ナノ粒子が得られた。また、siRNA封入率も90%以上の高い値を示した(表3)。また、HeLa-dluc細胞における遺伝子ノックダウン活性を評価したところ、いずれの脂質ナノ粒子でも顕著な遺伝子ノックダウン活性が観察された。
【実施例】
【0137】
[実施例4]
カチオン性脂質が、脂質ナノ粒子の粒子径に与える影響を調べた。カチオン性脂質としては、CL15H6、CL15C6、CL12H6、CL4H6、YSK05、DOTAP、DDAB、及びDC-cholを用いた。
【実施例】
【0138】
具体的には、各カチオン性脂質、ESM、及びPEG-DMGを40:60:3(モル%)として脂質ナノ粒子を製造し、平均粒子径(nm)を測定した。脂質ナノ粒子の製造とその後の測定は、実施例1と同様にして行った。結果を図6に示す。
【実施例】
【0139】
この結果、CL15H6、CL15C6、CL12H6、及びCL4H6を用いて製造された脂質ナノ粒子は、いずれも平均粒子径が30nm以下の極小粒子であった(図6)。一方で、YSK05やその他の汎用されているカチオン性脂質を用いて製造された脂質ナノ粒子は、いずれも平均粒子径が30nm超の比較的大きな粒子であった。これらの結果から、CL15H6をはじめとする特定のカチオン性脂質と、ESMをはじめとする特定の中性脂質とを適切に組み合わせることで初めて、平均粒子径が20nmの極小の脂質ナノ粒子が製造できることが示された。
【実施例】
【0140】
[実施例5]
実施例4でCL15H6を用いて製造した脂質ナノ粒子の保存安定性を調べた。
具体的には、CL15H6/ESM/PEG-DMG=40/60/3(モル%)で製造された脂質ナノ粒子を、PBS(-)(pH7)中に懸濁して4℃、遮光下で各時間保存した。保存後の脂質ナノ粒子の平均粒子径(nm)及びsiRNA封入率(%)を、実施例1と同様にして測定した。
【実施例】
【0141】
結果を図7及び8に示す。その結果、製造から4週間に亘って、平均粒子径(nm)(図7)及びsiRNA封入率(%)(図8)の変化は認められず、この脂質ナノ粒子は高い安定性を有することが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7