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明細書 :植物病害防除剤及び植物病害の防除方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-151631 (P2019-151631A)
公開日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 植物病害防除剤及び植物病害の防除方法
国際特許分類 A01N  43/90        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A01N  25/02        (2006.01)
FI A01N 43/90 103
A01P 3/00
A01N 25/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2019-037966 (P2019-037966)
出願日 平成31年3月1日(2019.3.1)
優先権出願番号 2018037525
優先日 平成30年3月2日(2018.3.2)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】一瀬 勇規
【氏名】澤井 拓
【氏名】オンビロ シゴンベ ゲオフレイ
【氏名】能年 義輝
【氏名】仁科 勇太
【氏名】松井 英譲
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H011
Fターム 4H011AA01
4H011BB09
4H011DA13
要約 【課題】特定の植物病原菌に対する優れた増殖阻害活性を有する植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤、並びに該植物病害防除剤を用いる植物病害の防除方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤、並びに該植物病害防除剤を用いる植物病害の防除方法。
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〔式中、R1は、同一又は異なって、水素、アルコキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、又はシアノを示し、nは、1~4の整数を示し、R2は、同一又は異なって、塩素、臭素、又はヨウ素を示し、mは、1~4の整数を示す。〕
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む植物病害防除剤。
【化1】
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〔式中、R1は、同一又は異なって、水素、アルコキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、又はシアノを示し、
nは、1~4の整数を示し、
R2は、同一又は異なって、塩素、臭素、又はヨウ素を示し、
mは、1~4の整数を示す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、1-(4-ブロモフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-イオドフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-ブロモフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、又は1-(4-イオドフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンである、請求項1に記載の植物病害防除剤。
【請求項3】
前記植物病害が、ナス科植物青枯病、トマトかいよう病、アブラナ科植物黒腐病、又はイネ白葉枯病である、請求項1又は2に記載の植物病害防除剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の植物病害防除剤を施用する工程を備えた、植物病害の防除方法。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む植物病原菌の増殖抑制剤。
【請求項6】
前記植物病原菌が、ナス科植物青枯病菌、トマトかいよう病菌、アブラナ科植物黒腐病菌、又はイネ白葉枯病菌である、請求項5に記載の増殖抑制剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除剤、該植物病害防除剤を用いる植物病害の防除方法、及び植物病原菌の増殖抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナス科にはトマト、ナス、ジャガイモなど重要な農作物が多く、例えばトマトは日本ではイネに次ぐ生産高を示す。日本の国内産出額は2325億円であるが、青枯病はその生産を脅かす主要因であり、全体の3割の圃場に20%程度発生していると推測されている。そして、年間被害は約140億円と推定されている。他のナス科も含めるとその被害総額は更に多くなる。
【0003】
これらの被害を避けるために、ナス科植物に対しては、土壌消毒、連作を避ける、農業資材の消毒(収穫時のハサミなど)の他、抵抗性台木を用いた接木が利用されている。
【0004】
また、バリダシン液剤5は、武田薬品工業(株)が開発したバリダマイシンを主成分とする殺菌剤であり、ナス青枯病に有効である。バリダマイシンは、病原体のトレハラーゼ阻害による栄養摂取制限及び植物に対する抵抗性誘導効果が示唆されている。しかしながら、バリダシン液剤5はトマトに対しては薬害を生じるという問題がある。
【0005】
その他では、セル苗元気は、多木化学(株)が商品化した、シュードモナス・フルオレッセンスFPH-9601とFPT-9601とが有効成分のトマト青枯病に対する生物農薬であり、例えば特許文献1に報告がある。
【0006】
特許文献2では、特定の波長域の光を植物に照射することと、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培することを併用することで、相乗的に高い病害防除効果、害虫防除効果を得られることが報告されている。そして、当該発明で使用する微生物として、上記シュードモナス・フルオレッセンスFPH-9601とFPT-9601とが挙げられている。
【0007】
特許文献3では、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-グリシン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-アラニン、及びL-グルタミンが青枯病に対する抵抗性誘導活性を示すことが報告されている。
【0008】
上記のような従来知られている防除技術より実用的、効果的な防除技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特許第2835598号公報
【特許文献2】特許第5927015号公報
【特許文献3】特許第6007360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特定の植物病原菌に対する優れた増殖阻害活性を有する植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤、並びに該植物病害防除剤を用いる植物病害の防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、1-(4-ブロモフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン及びその誘導体が、ナス科植物青枯病菌、イネ白葉枯病菌等に対して有効な増殖阻害活性を有している上に、作用特異性も高いという知見を得た。
【0012】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の植物病害防除剤、該植物病害防除剤を用いる植物病害の防除方法、及び植物病原菌の増殖抑制剤を提供するものである。
【0013】
項1.一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む植物病害防除剤。
【0014】
【化1】
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【0015】
〔式中、R1は、同一又は異なって、水素、アルコキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、又はシアノを示し、
nは、1~4の整数を示し、
R2は、同一又は異なって、塩素、臭素、又はヨウ素を示し、
mは、1~4の整数を示す。〕
項2.前記一般式(1)で表される化合物が、1-(4-ブロモフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-イオドフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-ブロモフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、又は1-(4-イオドフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンである、項1に記載の植物病害防除剤。
項3.前記植物病害が、ナス科植物青枯病、トマトかいよう病、アブラナ科植物黒腐病、又はイネ白葉枯病である、項1又は2に記載の植物病害防除剤。
項4.項1~3のいずれかに記載の植物病害防除剤を施用する工程を備えた、植物病害の防除方法。
項5.一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む植物病原菌の増殖抑制剤。
項6.前記植物病原菌が、ナス科植物青枯病菌、トマトかいよう病菌、アブラナ科植物黒腐病菌、又はイネ白葉枯病菌である、項5に記載の増殖抑制剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の植物病害防除剤は、特定の植物病原菌(特に、ナス科植物青枯病菌、トマトかいよう病菌、アブラナ科植物黒腐病菌、及びイネ白葉枯病菌)に対して優れた増殖阻害活性を有しており、当該病原菌を起因とする植物病害の防除に有用である。このように、本発明の植物病害防除剤は、特定の植物病原菌に対する特異性が高いため、他の環境に有益な微生物叢に悪影響を及ぼさず、環境保護の面においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】化合物A~EのRs1002の増殖を阻害する濃度依存的活性を示す図である。(A)化合物A~Eの化学名、(B)化合物A~Eの化学構造式、(C)化合物A~Eの濃度依存的なRs1002増殖阻害活性を示すグラフ。縦軸の値は、コントロールとして等量のジメチルスルホキシド(DMSO)を加えた場合の660 nmの吸光度を1とした各処理区の相対的吸光度を示している。それぞれのバーは異なる濃度での処理に3処理区を設け、3回行った平均値と標準誤差を示している。
【図2】様々な細菌に対する化合物A~Eの増殖抑制効果を示すグラフである。縦軸の値は、コントロールとして等量のDMSOを加えた場合の660 nmの吸光度を1とした各処理区の相対的吸光度を示している。それぞれのバーは3処理区を設け、3回行った平均値と標準誤差を示している。
【図3】濃度依存的な化合物A~Eの(A) X. oryzae pv. oryzae T7174の増殖に対する阻害活性を示すグラフ、及び濃度依存的な化合物Eの(B) X. campestris pv. campestris, (C) C. michiganensis subsp. michiganensisの増殖に対する阻害活性を示すグラフである。縦軸の値は、コントロールとして等量のDMSOを加えた場合の660 nmの吸光度を1とした各処理区の相対的吸光度を示している。それぞれのバーは異なる濃度での処理に3処理区を設け、3回行った平均値と標準誤差を示している。
【図4】化合物A~Eの安定性を示すグラフである。(A)異なる温度処理をした化合物A~E (終濃度10μg/ml)によるRs1002の増殖抑制効果を示すグラフ、(B)異なるpHにおける化合物A~E (終濃度10μg/ml)によるRs1002の増殖抑制効果を示すグラフ。縦軸の値はコントロール区(DMSO処理)に対する相対値を示している。それぞれのバーは3処理区を設け、3回行った平均値と標準誤差を示している。
【図5】発病程度指数の例を示す写真である。それぞれの写真中の右下の数値は発病程度指数を表す。
【図6】化合物Dの青枯病菌に対する防除効果(トマト苗)を示すグラフである。(A) 56μg/mlの化合物D, 接種濃度(OD600 = 0.06)、(B) 112μg/mlの化合物D, 接種濃度(OD600 = 0.06)、(C) 56μg/mlの化合物D、接種濃度(OD600 = 0.2)、(D) 112μg/mlの化合物D, 接種濃度(OD600 = 0.2)。それぞれのバーは平均値と標準誤差を示している(n=24)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0019】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。

【0020】
本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤は、一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と称することもある)又はその塩を含むことを特徴とする。

【0021】
【化2】
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【0022】
〔式中、R1は、同一又は異なって、水素、アルコキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、又はシアノを示し、
nは、1~4の整数を示す。好ましくは水素、より好ましくはメトキシである。
R2は、同一又は異なって、塩素、臭素、又はヨウ素を示し、mは、1~4の整数を示す。〕

【0023】
アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数が1~6のアルキル、より好ましくは炭素数が1~3のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が挙げられる。ここでのアルキルには、ヒドロキシアルキル、アルコキシ及びハロアルキルのアルキル部分も含まれる。

【0024】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。ここでのハロゲンには、ハロアルキルのハロゲン部分も含まれる。

【0025】
ヒドロキシアルキルにおけるヒドロキシの数は特に制限されず、好ましくは1である。また、ヒドロキシアルキルにおけるヒドロキシの置換位置も特に制限されず、いずれの位置であってもよい。

【0026】
ハロアルキルにおけるハロゲンの数は特に制限されず、好ましくは1~3である。また、ハロアルキルにおけるハロゲンの置換位置も特に制限されず、いずれの位置であってもよい。ハロアルキルとしては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。

【0027】
nとしては、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。

【0028】
R1の置換位置は特に制限されず、いずれの位置であってもよい。中でも好ましくは1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンの6位である。この場合、nが2~4の整数の場合には、1つのR1が1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンの6位に存在することを意味する。R1としては、nが1であり且つ1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンの6位に存在することが特に好ましい。R1としては、好ましくは水素及びメトキシである。

【0029】
mとしては、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。

【0030】
R2の置換位置は特に制限されず、いずれの位置であってもよい。中でも好ましくはフェニルのパラ位である。この場合、mが2~4の整数の場合には、1つのR2がフェニルのパラ位に存在することを意味する。R2としては、mが1であり且つフェニルのパラ位に存在することが特に好ましい。

【0031】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、1-(4-ブロモフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-イオドフェニル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-ブロモフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、1-(4-クロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリン、及び1-(4-イオドフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロベータ-カルボリンが挙げられる。

【0032】
一般式(1)で表される化合物の塩としては、特に制限されず、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。一般式(1)で表される化合物又はその塩には、水和物、溶媒和、結晶多形なども含まれる。

【0033】
化合物(1)は入手可能な市販品を利用することができるし、化合物(1)の合成方法は米国特許出願公開第2003/0040527号明細書などに記載された公知の方法を参考にすることができる。

【0034】
本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤は、上記化合物(1)以外の成分としては、担体、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、固着剤、安定剤、着色剤、乳化剤、分散剤、浸透剤、増粘剤、消泡剤等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤は、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、乳剤、散布剤、粉剤、エアゾール剤、ペースト剤、懸濁剤、液剤等の形態に公知の方法により適宜製剤化され得る。本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤は、そのまま使用するか、又は希釈剤で所定の濃度に希釈して使用することができる。本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤における上記化合物(1)の含有量は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、好ましくは0.0001~100質量%、より好ましくは0.001~99.9質量%、更に好ましくは0.01~99質量%である。また、本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤では、上記化合物(1)以外にも、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤等の農薬が併用使用され得る。

【0035】
本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤の施用方法としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、例えば、植物体への散布処理、土壌表面への散布処理、土壌中への注入処理、植物種子への吹き付け処理、植物種子への塗沫処理、植物種子への浸漬処理等が挙げられる。

【0036】
本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤の施用量は、対象病害、対象病原菌、対象植物、剤型、病害の発生程度、施用方法等に応じて適宜選択することができる。

【0037】
本発明の植物病害防除剤及び植物病原菌の増殖抑制剤が対象とする植物としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、各種の植物を対象とすることができ、中でも好ましくは、ナス科植物(例えば、トマト、ポテト、ナス、タバコ、トウガラシ)、イネ科植物(例えば、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、サトウキビ)、ショウガ科植物(例えば、ショウガ、ミョウガ、ウコン)、バショウ科植物(例えば、バナナ、バショウ、マニラアサ)、アブラナ科植物(キャベツ、ナタネ、ダイコン、ワサビ、ブロッコリー)等が挙げられ、特に好ましくはナス科植物及びイネ科植物である。

【0038】
本発明の植物病害防除剤が対象とする植物病害としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、各種の植物病害を対象とすることができ、中でも好ましくは、ナス科植物青枯病、トマトかいよう病、アブラナ科植物黒腐病、イネ白葉枯病等が挙げられ、特に好ましくはナス科植物青枯病及びイネ白葉枯病である。

【0039】
植物病原菌の増殖抑制剤が対象とする植物病原菌としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、各種の植物病原菌を対象とすることができ、中でも好ましくは、ナス科植物青枯病菌(ラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum))、トマトかいよう病菌(クラビバクター・ミシガネンシス・亜種・ミシガネンシス(Clavibacter michiganensis subsp. michiganensis))、アブラナ科植物黒腐病菌(キサントモナス・キャンペストリス病原型キャンペストリス(Xanthomonas campestris pv. campestris))、イネ白葉枯病菌(キサントモナス・オリゼー病原型オリゼー(Xanthomonas oryzae pv. oryzae))等が挙げられ、特に好ましくはナス科植物青枯病菌及びイネ白葉枯病菌である。

【0040】
R2がヨウ素である化合物(1)(好ましくは、ヨウ素の置換位置はフェニルのパラ位である)は、対象とする植物病害がトマトかいよう病及びアブラナ科植物黒腐病である場合、対象とする植物病原菌がトマトかいよう病菌及びアブラナ科植物黒腐病菌である場合にも好適に使用することができる。

【0041】
本発明の植物病害防除剤は、特定の植物病原菌(特に、ナス科植物青枯病菌、トマトかいよう病菌、アブラナ科植物黒腐病菌、及びイネ白葉枯病菌)に対して優れた増殖阻害活性を有しており、当該病原菌を起因とする植物病害の防除に対する効果が期待できる。このように、本発明の植物病害防除剤は、特定の植物病原菌に対する特異性が高いため、他の環境に有益な微生物叢に悪影響を及ぼさず、環境保護の面においても優れている。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
製造例
試験例で使用した化合物A~Eの化学名を図1の(A)に、化合物A~Eの化学構造式を図1の(B)にそれぞれ示す。
【実施例】
【0044】
化合物A (P2000N-05456)及びB (P2000N-03717)はPharmeks (Moscow, Russia)から、化合物D (AlBB-008781)はAlinda Chemical (Moscow, Russia)から入手した。化合物Cは、トリプタミン(1 .6 g, 10 mmol,東京化成工業(株)製)及び4-ブロモベンズアルデヒド(1.9 g, 10 mmol,東京化成工業(株)製)を酢酸(50 ml,富士フイルム和光純薬(株)製)に加え、100℃で10時間反応させた。冷却後に水、酢酸エチル、ヘキサンを加え、析出した結晶を濾過で集めた。構造解析は1H NMRにて行い、文献と一致することを確認した。一方、化合物Eは4-ブロモベンズアルデヒドの代わりに4-イオドベンズアルデヒド(2.3 g, 10 mmol,東京化成工業(株)製)を使用し、同様に合成した。
【実施例】
【0045】
試験例1
3 mlのBG培地を入れた長さ10.5 cmの小ガラス試験管にラルストニア・ソラナセアラムRs1002を接種し、TAITECのBioShaker BR-21FPを用いて、27℃、200 rpmで一晩培養した。そのラルストニア・ソラナセアラムRs1002 10μlを新しいBG培地3 mlで希釈し、さらにその10μlを新しいBG培地3 mlに接種した。そこにジメチルスルホキシドに溶解させた10 mg/mlの各化合物A~Eを3μl添加した(終濃度10μg/ml)。なお、各化合物の段階希釈にも溶媒にはDMSOを使用した。化合物を添加後、前培養と同じ条件で24時間培養し、TAITECのフォトメーターmini photo 518Rを用いて660 nmにおける吸光度を測定した。コントロールには新鮮なBG培地3 mlを入れた同じ試験管を用いた。その結果を図1(C)に示す。
【実施例】
【0046】
化合物A、化合物C、及び化合物Eは、1.25μg/mlの終濃度でRs1002の増殖を完全に阻害し、最も強い活性を示した。次に高い活性を示したのは化合物Bで2.5μg/ml以上の濃度で増殖を阻害し、化合物Dは5μg/mlの終濃度で増殖を阻害した。
【実施例】
【0047】
試験例2
化合物A~Eについて様々な細菌に対する増殖抑制効果を調べた。表1に増殖抑制効果を検討した細菌種及びその培養に用いた培地を示した。各種細菌に各化合物A~Eを終濃度10μg/ml又は0.31~10μg/mlで添加し、27℃で24時間培養後に吸光度(OD600)を測定した。表1に示したそれぞれの培地を用いてラルストニア・ソラナセアラムRs1002の場合と同様に前培養した細菌10μlを新しい培地に接種し、化合物を添加し、27℃で24時間培養後に660 nmにおける吸光度を測定した。コントロールにはそれぞれの培地3 mlを入れた試験管を用いた。その結果を図2及び3に示す。
【実施例】
【0048】
ナス科植物青枯病菌のphylotype 1の4分離株、phylotype 4の1分離株の増殖に対し化合物A, B, C, D, Eは終濃度10μg/mlで完全にその増殖を阻害した。また、この5つの化合物はイネ白葉枯病菌4菌株の増殖をも完全に阻害した(図2)。各化合物の濃度依存性を調べてみると、化合物C, Dは2.5μg/mlで、化合物A, Eは5μg/mlで、化合物Bは10μg/mlでイネ白葉枯病菌T7174の増殖を阻害した(図3(A))。
【実施例】
【0049】
また、化合物Eは10μg/mlでアブラナ科植物黒腐病菌及びグラム陽性の植物病原細菌であるトマトかいよう病菌の増殖をも完全に阻害した(図2)。それらの濃度依存性を調べたところ、アブラナ科植物黒腐病菌、トマトかいよう病菌のいずれに対しても5μg/mlで増殖抑制活性を示した(図3(B)(C))。化合物A, B, Cはトマトかいよう病菌に対し弱い増殖阻害活性を示した(図2)。
【実施例】
【0050】
【表1】
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【実施例】
【0051】
表1の細菌の和名は以下の通りである。
Ralstonia solanacearum (ナス科植物青枯病菌)
Clavibacter michiganensis subsp. michiganensis 05M1-2 (トマトかいよう病菌)
Xanthomonas campestris pv. campestris XcA (アブラナ科植物黒腐病菌)
Xanthomonas oryzae pv. oryzae (イネ白葉枯病菌)
【実施例】
【0052】
なお、Sourceの欄の引用文献は以下の通りである。
Mukaihara T, Tamura N, Murata Y, Iwabuchi M (2004) Genetic screening of Hrp type III-related pathogenicity genes controlled by the HrpB transcriptional activator in Ralstonia solanacearum. Mol. Microbiol. 54: 863-875.
Mori Y, Inoue K, Ikeda K, Nakayashiki H, Higashimoto C, Ohnishi K, Kiba A, Hikichi Y (2016) The vascular plant-pathogenic bacterium Ralstonia solanacearum produces biofilms required for its virulence on the surfaces of tomato cells adjacent to intercellular spaces. Mol. Plant Pathol. 17: 890-902.
Maeda Y, Kiba A, Ohnishi K, Hikichi Y (2007) Amino acid substitutions in GyrA of Burkholderia glumae are implicated in not only oxolinic acid resistance but also fitness on rice plants. Appl. Environ. Microbiol. 73: 1114-1149.
McClean KH, Winson MK, Fish L, Taylor A, Chhabra SR, Camara M, Daykin M, Lamb JH, Swift S, Bycroft BW, Stewart GS, Williams P (1997) Quorum sensing and Chromobacterium violaceum: exploitation of violacein production and inhibition for the detection of N-acylhomoserine lactones. Microbiology 143: 3703-3711.
Hossain MM, Shibata S, Aizawa S, Tsuyumu S (2005) Motility is an important determinant for pathogenesis of Erwinia carotovora subsp. carotovora. Physiol. Mol. Plant Pathol. 66: 134-143.
Higashi K, Ishiga Y, Inagaki Y, Toyoda K, Shiraishi T, Ichinose Y (2008) Modulation of defense signal transduction by flagellin-induced WRKY41 transcription factor in Arabidopsis thaliana. Mol. Genet. Genomics 279: 303-312.
Clough SJ, Bent AF (1998) Floral dip: a simplified method for Agrobacterium-mediated transformation of Arabidopsis thaliana. Plant J. 16: 735-743.
【実施例】
【0053】
各培地の組成は以下のとおりである。
BG培地:バクトペプトン10 g, 酵母抽出物 1 g, カザミノ酸 1 g/L水, pH 7.0
LB培地:バクトトリプトン 10 g, 酵母抽出物 5 g, NaCl 7 g/L水
YP培地:バクトペプトン 20 g, 酵母抽出物 10 g/L水
KB培地 (King EO, Ward NK, Raney DE (1954) Two simple media for the demonstration of pyrocyanin and fluorescein. J Lab Clin Med 44: 301-307)
モカRm培地:酵母抽出物 4 g, カザミノ酸8 g, K2HPO4 2 g, MgSO4 0.3 g/L 水
NA培地:バクトペプトン 5g, 酵母抽出物 3g, NaCl 5g/L水
【実施例】
【0054】
試験例3
DMSOに溶解した10 mg/mlの化合物A~Eを4℃、37℃、50℃での24時間のインキュベート処理、又は121℃、20分のオートクレーブ処理を行った後、試験例1に記した方法でRs1002に対する増殖抑制効果を試験した。結果を図4(A)に示す。その結果、いずれの処理も増殖抑制効果に影響を与えず、化合物A~Eの増殖抑制効果は熱に対して安定していた。
【実施例】
【0055】
また、Rs1002を異なるpHのBG培地で培養した時に化合物A~E (終濃度10μg/ml)を添加し、試験例1に記したのと同じ方法で、その効果を解析した。なお、通常のBG培地はpH 7.0である。結果を図4(B)に示す。その結果、pH 7.0及びpH 9.0の場合、化合物A, B, C, D, EはRs1002の増殖を完全に阻害した。pH 6.0において化合物Eは完全な阻害活性を示したが、化合物A, B, C, Dは部分的な阻害に留まった。
【実施例】
【0056】
試験例4
化合物Dをエタノールに溶解し、10 mg/mlに調整した。一方、Rs1002は50 mlのBG培地で終夜培養したものを6000 rpm、5分の遠心操作により集菌し、滅菌水でOD600 = 0.2あるいは0.06となるように調整した(以下、「Rs1002細菌懸濁液」と言う)。また、容量100 mlのポリポットに培養土を80 ml程度入れて、トマト(ポンデローザ)の種子を播種し、3週齢まで生育した。
【実施例】
【0057】
以上の準備をした上で、1300μlあるいは650μlの10 mg/ml化合物Dに90 mlの水を加え、これに25 mlのRs1002細菌懸濁液を混合した。得られた混合液の13 mlを3週齢のポットトマトの土に流し込んで接種した。なお、前記1300μlの化合物Dを用いたときの終濃度は112μg/ml、650μlの化合物Dを用いたときの終濃度は56μg/mlとなる。化合物Dを加えない処理区をコントロールとした。接種後、トマトは28℃、80%湿度、明期16時間、暗期8時間のグロースチャンバー内で生育し、6日後から10日後に発病程度指数(0乃至4)を評価した。
【実施例】
【0058】
発病度は、次式により算出した。
発病度 = {Σ(程度別発病株数 × 指数) ÷ (調査株数 × 4)} × 100
【実施例】
【0059】
なお、前記式中の「指数」とは、発病程度指数(0乃至4)を意味する。「発病程度指数」の判定基準は、下記のとおりである(図5参照)。
0:発病無し
1:株の1/3未満の葉にしおれ
2:株の1/3~2/3の葉にしおれ
3:株の2/3以上の葉にしおれ
4:枯死
【実施例】
【0060】
発病度は、それぞれの指数を示したトマト株数を掛けた数値を合計し、それを(調査株数 × 4)で割り、100を掛けて求められる数値である。前記「4」とは、本実験での最高の発病程度指数の4を意味する(Zheng et al. Journal of Phytopathology, 162: 607-616, (2014)参照)。
【実施例】
【0061】
また、防除価は、次式により算出した。
防除価 = (無処理区の発病度-処理区の発病度) × 100/無処理区の発病度
【実施例】
【0062】
結果を図6に示す。図6の(A)、(C)は、56μg/mlの化合物Dで処理した場合の結果を、また、図5の(B)、(D)は、112μg/mlの化合物Dで処理した場合の結果をそれぞれ示す。また、図6の(A)、(B)は細菌濃度(図6における「接種濃度」のこと)をOD600 = 0.06に、図6の(C)、(D)は細菌濃度をOD600 = 0.2に調整した時の結果を示す。いずれの場合も顕著な防除価が得られた。細菌濃度は低い方が防除価は高く、化合物Dの濃度も高い方が防除価は高かった。なお、具体的なデータは割愛するも、他の化合物A、B、C、及びEについても、化合物Dと同様の結果が得られる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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