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明細書 :ナノ炭素材料膜の製造方法と装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年10月10日(2019.10.10)
発明の名称または考案の名称 ナノ炭素材料膜の製造方法と装置
国際特許分類 C01B  32/15        (2017.01)
C01B  32/159       (2017.01)
C01B  32/174       (2017.01)
C01B  32/194       (2017.01)
C09D  17/00        (2006.01)
C09C   1/44        (2006.01)
C09C   1/48        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01B 32/15
C01B 32/159
C01B 32/174
C01B 32/194
C09D 17/00
C09C 1/44
C09C 1/48
B82Y 40/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 29
出願番号 特願2018-549104 (P2018-549104)
国際出願番号 PCT/JP2017/039997
国際公開番号 WO2018/084297
国際出願日 平成29年11月6日(2017.11.6)
国際公開日 平成30年5月11日(2018.5.11)
優先権出願番号 2016216977
優先日 平成28年11月7日(2016.11.7)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】神▲徳▼ 啓邦
【氏名】木原 秀元
【氏名】松澤 洋子
【氏名】吉田 勝
【氏名】佐藤 正健
【氏名】中住 友香
出願人 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100140198、【弁理士】、【氏名又は名称】江藤 保子
審査請求
テーマコード 4G146
4J037
Fターム 4G146AA01
4G146AA11
4G146AA12
4G146AB01
4G146AB07
4G146AB08
4G146AC16B
4G146AC30B
4G146CB10
4G146CB16
4G146CB17
4G146CB29
4G146CB35
4G146DA11
4G146DA25
4J037AA01
4J037AA02
4J037CB17
4J037DD05
4J037DD24
4J037EE24
4J037FF30
要約 分散剤を含まないナノ炭素材料の製膜において、簡便な方法で、残存する分散剤や不純物の少ないナノ炭素膜を得ることが可能な製造方法とそのための製造装置を提供することを目的とするものであって、光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を基材表面に接触させた状態で、前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射して、前記分散液と接する基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を基材表面に接触させた状態で、該分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射して、前記分散液と接する基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成することを特徴とするナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項2】
前記光応答性分散剤が、光に応答してナノ炭素材料から着脱することで分散性を制御することができる光応答性化合物であることを特徴とする請求項1に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ炭素材料が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又はグラフェンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項4】
前記基材が、石英ガラス、一般ガラス、シランカップリング剤等を用いて表面処理を施したガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、シリコンカーバイド、サファイア、アルミナ、水晶、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、又はフッ素樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項5】
前記基材が、平面又は曲面状の形状である、或いは、表面に微細な凹凸構造を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項6】
前記基材が、前記分散液を保持乃至収納しうる形状を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項7】
前記光応答を誘起する光の波長が、200~600nmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項8】
前記の照射する光を、所定パターンを有する露光マスクを介して入射させることにより、限定された光照射領域に膜を形成することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項9】
前記の照射する光の入射領域を、光源または分散液の接した基板を移動させることにより動かし、移動中に光が照射された領域にナノ炭素材料膜を形成することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項10】
前記の照射する光が2光束以上の光束のレーザー光であって、前記基材の前記分散液が接触した面側で交差する状態にして、光の干渉による空間的な光強度パターンを形成し、光強度パターン形状に対応した領域にナノ炭素材料膜を形成することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
【請求項11】
基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成する装置であって、
光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を前記基材表面に保持乃至収容する機構と、前記分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射する機構とを備えることを特徴とするナノ炭素材料膜製造装置。
【請求項12】
前記光を照射する機構が、露光用マスク、照射領域の走査機構、又は光学干渉計からなる照射光強度の分布パターン形成機構の少なくともいずれか1つを備えることを特徴とする請求項11に記載にナノ炭素材料膜製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)を代表とするナノ炭素材料の膜の製造方法、特に光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を用いたナノ炭素材料膜の製造方法、及び該方法に用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンに代表されるようなナノ炭素材料は、ナノテクノロジーの新素材として近年注目を集めている。なかでも、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、シンプルな構造と特異な物理化学的性質により、種々の分野への応用が期待されている。
今後、ナノ炭素材料を、産業上の様々な用途に有効に使用するためには、均質な膜に製膜することが必須の課題である。
【0003】
ナノ炭素材料を用いた膜の製膜方法としては、分散剤を用いて水や有機溶媒中にナノ炭素材料を分散させた分散液とし、その分散液を基板上に塗布した後、乾燥させて膜とする方法が一般的である。
しかしながら、このようにして得られた膜には分散剤が残存しており、この残存した分散剤は、得られた材料の電気的な特性の低下を引き起こす。そのため、分散剤を除去する技術、または分散剤を含まない製膜技術が必要である。
【0004】
このような分散剤を含まないナノ炭素膜作製の取り組みとしては、製膜後に分散剤を除去する方法と、分散剤を用いない製膜方法等が報告されている。
前者の例としては、例えば、分散剤を含有するCNT分散液を用いて製膜した後、分散剤を溶解しうる溶媒で洗浄することにより除去する方法(特許文献1、2)や、熱分解によって気化・液化する分散剤を用いてCNTを製膜後、加熱することにより該分散剤を焼成して除去する方法(特許文献3)、或いは、セルロース誘導体からなる分散剤を用いてCNTを製膜後、キセノンフラッシュ光によって該分散剤を光焼成して除去する方法(特許文献4)等の方法等がある。
また、本出願人は、先行特許として、光応答性の分散剤を用いてナノ炭素材料を製膜後、光照射と洗浄を行うことによって分散剤の除去をおこなう方法を報告している(特許文献5)。
【0005】
後者の例としては、合成したCNTの膜をフィルタ上に形成した後、該膜を基材上に転写して製膜する方法(特許文献6)或いは合成したCNTを直接基板に製膜させる方法(特許文献7)や、希薄なCNT分散液から、インクジェット法によって製膜する方法(非特許文献1)等が報告されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-199419号公報
【特許文献2】特開2014-084255号公報
【特許文献3】特開2015-168610号公報
【特許文献4】国際公開第2014/021344号
【特許文献5】国際公開第2015/016156号
【特許文献6】特開2014-44839号公報
【特許文献7】国際公開第2009/008291号
【特許文献8】特許第5552641号公報(国際公開第2011/052604号)
【特許文献9】特願2016-087854号
【0007】

【非特許文献1】Adv. Mater. 2010, 22, 3981-3986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2、5に代表される方法はいずれも、CNT分散液を基板に塗布、乾燥させて製膜した後に、膜に残留する分散剤を除去するものであり、一度乾燥した状態の膜から洗浄で分散剤を除去しようとすると、大量の溶剤が必要であるばかりでなく、溶解性の問題や、膜の内部に残存する分散剤が除去しづらいという問題がある。
また、特許文献3、4に記載された方法では、水洗などの洗浄処理が不要となるものの、加熱焼成により除去する場合には用いる基材に耐熱性が必要であり、また、光焼成により除去する場合には特殊な光源が必要である等の問題がある。
一方、特許文献6や7に代表される合成したCNTを製膜する方法においては、ドライプロセスであるためコストや大面積化等の面において問題があり、また、非特許文献1の方法は、希薄分散液に限定され、厚膜を作ることが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、従来技術における問題点を解決して、簡便な方法で、残存する分散剤の少ないナノ炭素膜を得ることが可能な製造方法とそのための製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討した結果、ナノ炭素材料の分散状態と凝集状態を制御可能な光応答性分散剤(上記特許文献8、9参照)を用い、この光応答性分散剤とナノ炭素材料からなる分散液を基材に接触させた状態で、該分散液に、前記分散剤の光応答を誘起可能な波長の光を照射することによって、分散剤がナノ炭素材料の表面から脱離し、凝集したナノ炭素材料が基板表面に堆積して製膜されることが判明した。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものであって、以下の発明を提供するものである。
[1]光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を基材表面に接触させた状態で、該分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射して、前記分散液と接する基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成することを特徴とするナノ炭素材料膜の製造方法。
[2]前記光応答性分散剤が、光に応答してナノ炭素材料から着脱することで分散性を制御することができる光応答性化合物であることを特徴とする[1]に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[3]前記ナノ炭素材料が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又はグラフェンであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[4]前記基材が、石英ガラス、一般ガラス、シランカップリング剤等を用いて表面処理を施したガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、シリコンカーバイド、サファイア、アルミナ、水晶、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、又はフッ素樹脂のいずれかであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[5] 前記基材が、平面又は曲面状の形状である、或いは表面に微細な凹凸構造を有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[6]前記基材が、前記分散液を保持乃至収納しうる形状を有することを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[7]前記光応答を誘起する光の波長が、200~600nmであることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[8]前記の照射する光を、所定パターンを有する露光マスクを介して入射させることにより、限定された光照射領域に膜を形成することを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[9]前記の照射する光の入射領域を、光源または分散液の接した基板を移動させることにより動かし、移動中に光が照射された領域にナノ炭素材料膜を形成することを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[10]前記の照射する光が、2光束以上の光束のレーザー光であって、前記基材の前記分散液が接触した面側で交差する状態にして、光の干渉による空間的な光強度パターンを形成し、光強度パターン形状に対応した領域にナノ炭素材料膜を形成することを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載のナノ炭素材料膜の製造方法。
[11]基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成する装置であって、
光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を前記基材表面に保持乃至収容する機構と、前記分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射する機構とを備えることを特徴とするナノ炭素材料膜製造装置。
[12]前記光を照射する機構が、露光用マスク、照射領域の走査機構、又は光学干渉計からなる照射光強度の分布パターン形成機構の少なくともいずれか1つを備えることを特徴とする[11]に記載にナノ炭素材料膜製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分散液への光照射によって分散剤がナノ炭素材料から自発的に脱離し、さらに分散液が気化せずに液体の状態で洗浄操作ができるため、用いた分散剤を高効率で除去でき、従来の製膜後の乾燥している状態から洗浄で分散剤を除去する方法における、溶解性の問題や膜の内部に残存する分散剤が除去しづらいという問題を解消できる。また、本発明の方法では、光を照射した部分のみに製膜されるため、照射する光に特定のパターンを付与することによって、製膜と同時にパターン膜の形成が可能である。さらに、本発明の方法によれば、平面のみではなく、曲面への製膜も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のナノ炭素材料膜製造装置の一例の概略を示す図
【図2】化合物(2)を用いたSWCNT分散液のUV-VIS-NIR吸収スペクトル図
【図3】化合物(4)を用いたSWCNT分散液のUV-VIS-NIR吸収スペクトル図
【図4】化合物(6)を用いたSWCNT分散液のUV-VIS-NIR吸収スペクトル図
【図5】化防物(7)を用いたSWCNT分散液のUV-VIS-NIR吸収スペクトル図
【図6】化合物(8)を用いたSWCNT分散液のUV-VIS-NIR吸収スペクトル図
【図7】スライドガラス上に製膜されたSWCNT膜の写真
【図8】APSガラス(a)、PET(b)、PEN(c)、PMMA(d)、PC(e)、PS(f)及びPVC(g)の各種基板上に製膜されたSWCNT膜の写真
【図9】PETフィルム上にパターン状に製膜されたSWCNT膜の写真(a)と、使用した市松模様のマスクの写真(b)
【図10】実施例19~22で得られた、各種ナノ炭素材料分散液から製膜された、SG-SWCNT膜(a)、カーボンブラック膜(b)、MWCNT膜(c)、及びグラフェンナノプレートレット膜(d)の写真
【図11】実施例23における、洗浄前の光照射部分に生成したSWCNTの黒色ゲルの写真(a)と、洗浄後のガラス管の側面に製膜されたSWCNT膜の写真(b)
【図12】実施例25における、ガラス基板上に星型に形成されたSWCNT膜の写真
【図13】実施例26における、光照射領域走査によってガラス基板上に形成されたSWCNT膜の写真であり、照射領域を固定した場合(a)及び照射領域を走査した場合(b)の写真
【図14】実施例27における、マイケルソン干渉計を用いた膜の製造の概要を示す図(a)と、干渉露光によってフッ化カルシウム基板上に形成されたSWCNT膜の写真(b)
【図15】実施例28の、SWCNT膜のUV-VIS-NIR透過スペクトル図
【図16】実施例11で作製したSWCNT膜(A)、比較例7で得られたSWCNT膜(B)、比較例7で得られたSWCNT膜を洗浄したもの(C)、イオン性化合物(D)、及びPET基材(E)のFT-IR(ATR)スペクトル図
【図17】実施例11で作製したSWCNT膜(a)、比較例7でキャスト法によって作製したSWCNT膜(b)及び比較例7で得られたSWCNT膜を洗浄したもの(c)のAFM像
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法は、光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を基材表面に接触させた状態で、該分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射して、前記分散液と接した基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成することを特徴とする。
また、本発明の装置は、基材表面上にナノ炭素材料の膜を形成するための装置であって、光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を前記基材表面に保持乃至収容する機構と、前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射する機構とを備えることを特徴とする。

【0015】
本発明の方法と、前記の特許文献5に記載の方法と比較すると、用いる分散剤、分散液においては共通するものもあるが、特許文献5に記載の方法においては、ナノ炭素材料分散液を用いてナノ炭素材料膜を製膜した後、この製膜された固体膜に光照射をおこなうものであるのに対し、本発明の方法は、基材上に配置したナノ炭素材料分散液に光照射をおこなうことにより製膜するものである。

【0016】
すなわち、本発明の方法では、光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を、基材上のナノ炭素材料分散液に照射することにより、該基材上の分散液中の光応答性分散剤の光応答を誘起して、ナノ炭素材料から該分散剤を脱離させ、その結果、分散液中のナノ炭素材料の分散性が低下し、分散液中での分散性が低下したナノ炭素材料は、基板上に堆積する。ナノ炭素材料から離脱した分散剤を含有する分散液は、その後の洗浄処理により基材上から除かれ、その結果、基材上に、分散剤を含有しないナノ炭素材料の膜が形成される。

【0017】
このように、本発明の方法では、分散液への光照射によって分散剤がナノ炭素材料から自発的に脱離し、さらに分散液が気化せずに液体の状態で洗浄操作ができるため、用いた分散剤を高効率で除去でき、従来の製膜後の乾燥している状態から洗浄で分散剤を除去する方法における、溶解性の問題や、膜の内部に残存する分散剤が除去しづらいという問題を解消できる。

【0018】
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
<<光応答性分散剤>>
本発明に用いられる分散剤は、光応答性を示すものであり、好ましいものとして、上記特許文献8に記載されている下記の一般式(I)で示される、スチルベン系又はアゾベンゼン系分散剤が用いられる。

【0019】
【化1】
JP2018084297A1_000003t.gif

【0020】
該一般式(I)中、Aは炭素原子又は窒素原子であり、nはnXが-2価となる数である。

【0021】
該一般式(I)中、R1~R6は、アルキル鎖が例えば直鎖状C17のように長いと結晶性が高くなり、不均質で光応答性が乏しくなる。そのため、本発明では、該分散剤化合物が光応答性を示すように、R1~R6は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~5の直鎖状若しくは炭素数3~6の分岐状アルキル基から選択される。そのようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、neo-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基などである。

【0022】
該一般式(I)中、Xはアニオンであり、通常、1価のものが好適に使用できるが、アニオン交換によって1価以外のアニオンも使用し得る。該アニオンXは、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、テトラフルオロホウ酸基(BF)、ヘキサフルオロリン酸(PF)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、チオイソシアネート(SCN)、硝酸基(NO)、硫酸基(SO)、チオ硫酸基(S)、炭酸基(CO)、炭酸水素基(HCO)、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、各ハロゲン酸化合物酸基(AO、AO、AO、AO:A=Cl、Br、I)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸基、トリフルオロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢酸基(CHCOO)、ハロゲン化酢酸基((CA3-n)COO、A=F、Cl、Br、I;n=1、2、3)、テトラフェニルホウ酸基(BPh)及びその誘導体(B(Aryl):Aryl=置換フェニル基)から選択される。
好ましいアニオンは、Cl等のハロゲン原子である。

【0023】
また、前記光応答性分散剤の好ましいものとして、上記特許文献9に記載されている、下記の一般式(II)であらわされるイオン性化合物が用いられる。

【0024】
【化2】
JP2018084297A1_000004t.gif

【0025】
(式中、Xは下記で示されるアミド結合およびエステル結合から選択される一種である。

【0026】
【化3】
JP2018084297A1_000005t.gif

【0027】
Aは下記で表されるカチオン部位を有する置換基である。

【0028】
【化4】
JP2018084297A1_000006t.gif

【0029】
ただし、nは1以上10以下の数であり、Rは水素、アルキル基、フェニル基、またはアリル基であり、RおよびRは独立して水素またはアルキル基である。Bはアニオンを示し、mはmBが-2価となる数である。)

【0030】
のアルキル基の炭素数は、1以上10以下であることが好ましい。アニオンであるBとしては、ハロゲンアニオン(F、Cl、Br、I)、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸アニオン(PF)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン(TFSA)、チオイソシアネートアニオン(SCN)、硝酸アニオン(NO)、硫酸アニオン(SO2-)、チオ硫酸アニオン(S2-)、炭酸アニオン(CO2-)、炭酸水素アニオン(HCO)、リン酸アニオン(PO3-)、亜リン酸アニオン(PO3-)、次亜リン酸アニオン(PO3-)、ハロゲン酸アニオン(ClO、BrO、IO、ClO、BrO、IO、ClO、BrO、IO、ClO、BrO、IO)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸アニオン、トリフルオロメチルスルホン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン、酢酸アニオン(CHCOO)、ハロゲン化酢酸アニオン((CA3-n)COO(A=F,Cl,Br,I、n=1,2,3))、テトラフェニルホウ酸アニオン(BPh)、またはテトラフェニルホウ酸アニオンの誘導体(B(Aryl) (Arylは置換フェニル基))が挙げられる。

【0031】
<<ナノ炭素材料>>
本発明で使用するナノ炭素材料としては、各種CNTの外、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛粒子などが挙げられる。本発明で使用する原料の炭素材料は、上記イオン性有機化合物の分散剤を用いて少なくとも一部が溶媒中に分散できるものであれば良く、溶媒中に分散した炭素材料が分散剤含有炭素材料膜やそれから作成される炭素材料膜の炭素材料となり得る。そのため、原料の炭素材料は、粒子状である場合、溶媒中に分散可能な粒子径が50μm以下の粒子を含むもの(例えば、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積基準の平均粒子径D50が100μm以下、好ましくは50μm以下であるもの等。なお、分散性の観点から見て平均粒子径の下限は限定する必要はないが、通常、0.5nm以上である。)、繊維状である場合、溶媒中に分散可能な繊維長が50μm以下の繊維を含むもの(例えば、平均繊維長が50μm以下、好ましくは30μm以下であるもの等。なお、分散性の観点から見て平均繊維長の下限は限定する必要はないが、通常、5nm以上である。)などである。
本発明で使用するCNTは、HiPco法、アーク法、レーザーアブレーション法、CVD法、スーパーグロースCVD法、DIPS法等の如何なる製造方法で製造されたものでも良いし、また、単層のもの(SWCNT)、二層(DWCNT)等の多層のもの(MWCNT)、それらの混合物でも良い。さらに、CNTの製造後、半導体性、金属性等の性質や構造、サイズ等による分離、及び/又は、不純物除去用の精製を行ったものでも良い。

【0032】
<<分散液の調製>>
分散剤を溶解した溶液中に、ナノ炭素材料を混合して、分散液を調製する。
分散剤溶液の溶媒としては、分散剤のアニオンXの親水性の程度に応じて、水や各種の有機溶媒が使用できる。
例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、硝酸基(NO)、硫酸基(SO)のように親水性が特に高いアニオンXの分散剤については、水が好適に使用できる。
他方、テトラフルオロホウ酸基(BF)、ヘキサフルオロリン酸(PF)、テトラフェニルホウ酸基(BPh)のように親水性がハロゲン原子等よりも相対的に低いアニオンXの分散剤については、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等の極性有機溶媒が好適に使用できる。

【0033】
ナノ炭素材料と分散剤との混合割合(重量ベース)は、限定するものではないが、1:0.5~1:10、好ましくは1:0.7~1:8、より好ましくは1:0.8~1:5である。
また、分散液中の固形分濃度(ナノ炭素材料+分散剤)は限定するものではないが、0.001~30wt/vol%、好ましくは0.01~5wt/vol%、より好ましくは、0.03~1.0wt/vol%、さらに好ましくは、0.05~0.5wt/vol%である。
分散剤溶液とナノ炭素材料とは、混合が均一となるように、公知の適宜の超音波装置を用いて超音波分散処理を行うことが好ましい。ナノ炭素材料の種類や形状、径、長さ等によっては、出力や出力周波数等が適切な超音波装置を選択することにより分散可能となる場合も存在する。
また、使用するCNTについて予め充分に分離精製していない場合などにおいては、混合、分散処理後、金属触媒、アモルファスカーボン等の不純物を除去するため、遠心分離等の分離工程を付加することもできる。例えば、遠心分離の場合、不純物を沈殿させ、上澄み液全部乃至その70~95%程度(好ましくは75~85%程度)を回収することにより不純物の除去されたCNT分散液を得ることができる。

【0034】
分散液は、ナノ炭素材料、分散剤、溶媒以外の成分を含有しないことが望ましいが、分散剤の光応答性を阻害しない範囲で(例えば、5wt%以下、好ましくは2wt%以下、より好ましくは1wt%以下)他の成分の含有を許容しうる。

【0035】
分散剤含有ナノ炭素材料分散液を、基材表面に接触させる方法は、特に限られず、例えば、水平に配置した基材の上面に分散液を滴下する、基材上に溶液溜を配置して分散液を導入する、ガラス瓶のような前記光応答性分散剤の光反応を誘起する波長の光を透過する基材で作られた容器に分散液を導入し側面を基材として用いる等の方法を用いることができる。

【0036】
<<基材>>
本発明における基材は、特に限定されないが、ナノ炭素材料分散液への光照射を、分散液に直接行わず、該分散液が接触する基材を介して行う場合には、光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を透過する基材が用いられる。
光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を透過する基材としては、特に限定するものではないが、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス等の一般ガラス、溶融石英等の石英ガラス)、合成樹脂(例えば、PET等のポリエステル樹脂、ポリイミド、フッ素系樹脂、シリコーンゴムなど)、単結晶体、又は、それらの積層物からなるものが使用できる。前記単結晶体としては、上記波長の光を透過する単結晶、例えば、フッ化カルシウム、サファイアなどが挙げられる。
該基材は、製膜後のナノ炭素材料膜が剥離できないように接合するものでも良いし、接合強度が増加するように表面が前処理されたものでも良いし、製膜後容易に剥離できるような材質のものでも良いし、表面が剥離処理されたものでも良い。
本発明において、基材の形状は、平面または曲面状、或いは表面に微細な凹凸構造を有するもの等々、特に限定されるものではない。

【0037】
また、前述したとおり、ナノ炭素材料分散液を基材表面に接触させる方法は種々の方法があるが、それらの方法に応じて適した形状の基材を用いることができ、例えば、光応答性分散剤の光反応を誘起する波長の光を透過する基材で作られた容器とする等、基材の形状自体を、前記分散液を保持乃至収納しうる形状とすることもできる。
<<光照射>>

【0038】
本発明において、分散剤含有ナノ炭素材料分散液が基材表面に接触した状態で、光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を光照射することにより、露光された部分の分散液中の分散剤は応答性を発現し、分散液中のナノ炭素材料の分散性を低下させる。分散液中での分散性が低下したナノ炭素材料は、基板上に析出する。
用いる光としては、用いる分散剤の光応答を誘起することができるものであれば可視紫外領域の光(約200~600nm)を用いることができるが、好適には200~300nmの紫外光(例えば、365nmバンドパスフィルタや385nmバンドパスフィルタを通過したもの、単色LED光源等)である。

【0039】
本発明において、所定領域への光照射する場合、前記基材の他方の面を、所定パターンが形成された露光マスクで覆い、露光マスク上から光照射することにより行うことができるし(後述の図1参照)、また、レーザー光など直進性の光を所定の形に成形して光照射に用いることもでき、さらに、マスクを用いることなく、所定領域のみを光照射する照射手段を所定パターンに沿って分散剤含有ナノ炭素材料膜に対し相対的に移動させる直接露光方式により行っても良い。あるいは、マイケルソンソン干渉計等の光学干渉計からなる照射光強度の分布パターン形成する機構(後述の図14の(a)参照)を備えていても良い。

【0040】
<<ナノ炭素材料膜製造装置>>
本発明のナノ炭素材料膜の製造には、光応答性分散剤により分散されたナノ炭素材料を含有する分散液を基材表面に保持乃至収容する機構と、前記分散液に前記光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を照射する機構とを備える装置が用いられる。
図1は、本発明のナノ炭素材料膜製造装置の一例を示す概略図であって、図中、1は、基材、2は、ナノ炭素材料分散液、3は、分散液を保持する機構、4は、フォトマスク、5は、光源、6は、照射光、7は、ナノ炭素材料膜、をそれぞれ示している。
該図に示す装置では、透明な基材上に、該基材表面にナノ炭素材料分散液を保持する機構(溶液溜)が備えられており、該基板の他の面側に配置したフォトマスクを介して、LED又はレーザー等の光原からの照射光を入射させることにより、所定領域への露光ができるようにされている。

【0041】
図1に図示した装置では、基材上に、ナノ炭素材料分散液を保持乃至収容する機構を設置した1例であるが、これに限られものでない。或いは、基材自体にナノ炭素材料分散液を保持乃至収容する機構が設けられていてもよく、例えば、光応答性分散剤の光応答を誘起する波長の光を透過する基材で作られた容器として該容器内に分散液を収容する機構等々が挙げられる。
また、図1に図示した装置では、基材の裏面から光を照射する1例であるが、これに限られず、例えば、前記の溶液溜等に導入された分散液に直接光を照射する機構、前記の分散液が収納された容器の側面などから光を照射する機構等々が挙げられる。
さらに、所定領域へ光を照射する機構として、図1に図示した露光用マスクの他、照射領域の走査機構、あるいは、光学干渉計からなる照射光強度の分布パターン形成機構等を備えていても良い。

【0042】
<<洗浄処理>>
露光処理後の基材上には、光応答性分散剤の光応答により光析出したナノ炭素材料膜及び光応答後の光応答性分散剤を含有した分散液が残留しており、洗浄処理により分散液を洗い流すことで分散剤を含有しないナノ炭素材料膜が得られる。
すなわち、このナノ炭素材料膜は分散液中での光応答性分散剤の光応答により分散剤は炭素材料との親和性を失ってナノ炭素材料から剥がれた結果、ナノ炭素材料が溶解性を失い、相互に会合(バンドル化)した状態となって基板上にナノ炭素材料膜として析出したものであるため、分散剤を含有しない。一方、ナノ炭素材料との親和性を失った分散剤は、分散液中に残り、洗浄時に分散液とともに流出する。それ故、露光部分は、分散剤を全く含有しないか(分散剤含有量が0wt%)、又は、分散剤を含有してもその含有量が極めて少ない炭素材料膜(分散剤含有量が1wt%未満、好ましくは0.1wt%未満、より好ましくは0.01wt%未満)が形成され、全面露光した場合には、全面がそのような炭素材料膜となる。
一方、未露光部分では、分散剤は未反応のままでナノ炭素材料との親和性を維持するため、分散剤の吸着したナノ炭素材料は分散液中に存在し、洗浄液とともに流出してしまって炭素材料膜が全く形成されない。それ故、ネガ型のフォトリソグラフィーと同様に、ネガ型のパターン化炭素材料膜が形成されることになる。

【0043】
リンス工程で用いるリンス液としては、分散剤のアニオンXの親水性の程度に応じて、水や各種の有機溶媒が使用できる。
例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、硝酸基(NO)、硫酸基(SO)のように親水性が特に高いアニオンXの分散剤については、水が好適に使用できる。
他方、テトラフルオロホウ酸基(BF)、ヘキサフルオロリン酸(PF)、テトラフェニルホウ酸基(BPh)等のように親水性がハロゲン原子等よりも相対的に低いアニオンXの分散剤については、例えば、炭酸プロピレン(PC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等の極性有機溶媒が好適に使用できる。

【0044】
このように本発明によれば、分散剤を含まないか、又は、分散剤を含有してもその含有量が極めて少ないナノ炭素材料膜やパターン化ナノ炭素材料膜を簡単に製造することができる。また、ナノ炭素材料膜は、目的、用途等に応じて、どのような平面形状、広さを有していても良い。
本発明において得られるナノ炭素材料膜やパターン化ナノ炭素材料膜は、限定するものではないが、配線回路、パッド電極やキャパシタ電極、リチウムイオン電池用電極、燃料電池用電極等の電極など、電気又は電子デバイス等の技術分野を初めとして幅広く使用することができる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(合成例1:光応答性イオン性化合物の作製)
4-(ピペリジン-1-イルメチル)アニリン0.62g(3.3mmol)とトリエチルアミン0.9g(8.9mmol)を脱水塩化メチレン10mLに溶解した。そこに、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボニルクロリド0.5g(1.6mmol)を脱水塩化メチレン20mLに溶解した溶液を、かき混ぜながら1時間かけて加え、さらに、室温で12時間撹拌した。生成した沈殿物を吸引濾過して、塩化メチレンで洗浄して乾燥させ、橙色粉末0.75gを得た(収率75%)。H-NMRスペクトルから、この粉末が下記の式(1)で表される化合物であることを確認した。
H-NMR(400MHz,Pyridine-d5,δ):1.32(m,4H),1.49(m,8H),2.33(br,8H),3.42(s,4H),7.48(m,4H),8.04-8.16(m,8H),8.41(m,4H),11.2(s,2H)
【実施例】
【0047】
【化5】
JP2018084297A1_000007t.gif
【実施例】
【0048】
ジメチルホルムアミド10mL中で、式(1)で表される化合物0.1g(0.2mmol)とヨウ化エチル1.95g(13mmol)を、50℃で12時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却し、生じた沈殿を吸引濾過してアセトンで洗浄して、橙色粉末0.1gを得た(収率65%)。H-NMRスペクトルから、この粉末が下記の式(2)で表されるイオン性化合物であることを確認した。
H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ):1.34(m,6H),1.63—1.79(br,14H),2.87(m,4H),3.31(m,8H),4.24(s,4H),7.49(m,4H),7.92(m,4H),8.08 (m,4H),8.18 (m,4H),10.58(s,2H)
【実施例】
【0049】
【化6】
JP2018084297A1_000008t.gif
【実施例】
【0050】
(合成例2:光応答性イオン性化合物の作製)
4-(ピペリジン-1-イルメチル)アニリンに代えて同じ物質量の1-(3-アミノプロピル)イミダゾールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして橙色粉末を得た(収率81%)。H-NMRスペクトルから、この粉末が下記の式(3)で表される化合物であることを確認した。
H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ):1.95(m,4H),3.25(m,4H),6.86(d,2H),7.19(d,2H),7.63(s,2H),7.94-8.04(m,8H),8.68(m,2H)
【実施例】
【0051】
【化7】
JP2018084297A1_000009t.gif
【実施例】
【0052】
ジメチルホルムアミド100mL中で、式(3)で表される化合物0.5g(0.9mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸メチル2g(12mmol)を、室温で48時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮し、アセトンに滴下して得られた沈殿物を吸引濾過して、橙色粉末0.76gを得た(収率83%)。H-NMRおよび13C-NMRスペクトルから、この粉末が下記の式(4)で表されるイオン性化合物であることを確認した。
H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ):3.95(s,6H),7.78(m,4H),7.94(m,4H),8.04-8.11(m,8H),8.22-8.27(m,4H),9.70(s,2H),10.7(s,2H)
13C-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ):36.14,121.00,121.36,122.35,122.76,124.40,129.24,130.18,135.49,135.73,136.98,140.14,153.58,162.27,164.96
【実施例】
【0053】
【化8】
JP2018084297A1_000010t.gif
【実施例】
【0054】
実施例及び比較例で用いるその他の分散剤は、以下のとおりである。
・下記構造式(5)で表される、特許文献8に記載されている有機化合物
【実施例】
【0055】
【化9】
JP2018084297A1_000011t.gif
【実施例】
【0056】
・下記構造式(6)で表される有機化合物、ドデシル硫酸ナトリウム
【実施例】
【0057】
【化10】
JP2018084297A1_000012t.gif

【実施例】
【0058】
・下記構造式(7)で表される有機化合物、コール酸ナトリウム
【実施例】
【0059】
【化11】
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【実施例】
【0060】
・下記構造式(8)で表される有機化合物、trans-ビス(トリアリルアジド)スチルベンジスルホン酸誘導体(略称:trans-BTS)
【実施例】
【0061】
【化12】
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【実施例】
【0062】
(実施例1:SWCNT分散液の調製)
合成例1で得られたイオン性化合物(式(2))3.02mgを3mLの炭酸プロピレンに溶解したものと、enhanced Direct Injection Pyrolytic Synthesis method(eDIPS)法によって合成された単層カーボンナノチューブ(以下、「SWCNT」と記載することがある)1.0mgを混合した。この混合液をバイアル瓶に入れ、超音波洗浄装置(SHARP、UT-105)を用いて1時間超音波処理(80W,35Hz)し、SWCNTが安定して分散している分散液を得た。UV-vis-NIR分光光度計(日本分光V-670)を用いて、この分散液の吸光度を測定した。このUV-vis-NIR吸収スペクトルを図2に示す。600nmと900nmにブロードな吸収ピークが観測された。これは、eDIPS法でのSWCNTに特徴的な吸収ピークであり、SWCNTが炭酸プロピレン中に分散していることを示している。
【実施例】
【0063】
(実施例2:SWCNT分散液の調製)
イオン性化合物(式(2))に代えて、合成例2で得られたイオン性化合物(式(4))5.01mgを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、SWCNT分散液を調製した。この分散液のUV-vis-NIR吸収スペクトルを図3に示す。図2と同様に600nmと900nmにブロードな吸収ピークが観測された。これは、eDIPS法でのSWCNTに特徴的な吸収ピークであり、SWCNTが炭酸プロピレン中に分散していることを示している。
【実施例】
【0064】
(実施例3:SWCNT分散液の調製)
前記の式(5)で表されるイオン性化合物10.04mgを20mLの重水に溶解したものと、High-Pressure carbon monoxide(HiPco)法によって合成されたSWCNT6.99mgを混合した。この混合液をバイアル瓶に入れ、超音波洗浄装置を用いて1時間超音波処理(80W,35Hz)した。そして、容量50mLのプラスチック製広口瓶にこの混合液を入れ、超音波ホモジナイザー(BRANSON、Advanced Digital Sonifire 250D)を用いて4時間超音波照射(20W,19.9Hz)し、黒色のSWCNT均一分散液を得た。冷却遠心機を用いて、回転速度16400rpm(28500g)で、得られた分散液を室温(22℃)で3時間遠心分離した。その後、上澄みを分取して、SWCNT分散液を得た。
【実施例】
【0065】
(実施例4:SWCNT分散液の調製)
前記の式(5)で表されるイオン性化合物40mgを20mLの重水に溶解したものと、eDIPS法によって合成されたSWCNT40mgを混合し、高速振とう機(ASCM-1/AS ONE、1500~2000rpm、2週間)で前処理分散した。本処理に用いる超高速せん断装置は、微小な流路に高い流速で処理液を流し込むことにより生じる超高速せん断力を利用するため、使用できる最大粒径が30μm以下でないと目詰まりを発生し、分散処理をすることができない。この前処理操作後、分散しきれなかったSWCNTの塊をメッシュ(JIS規格30)で濾別し、減圧により脱泡操作を行った。このSWCNT/分散剤純水混合液20mLを2本調製し、併せて40mLの溶液を本分散処理に用いた。
本分散は高速せん断装置(ナノヴェイタ卓上実験機タイプ / 吉田機械工業株式会社)を用いて行った。まず吐出速度100m/s(処理圧力45~50MPa)で3回処理後、吐出速度150m/s(処理圧力~100MPa)で3回処理してSWCNT分散液を得た。
【実施例】
【0066】
(実施例5:SG-SWCNT分散液の調製)
eDIPS法によって合成されたSWCNTに代えて、スーパーグロース(SG)法によって合成されたSG-SWCNT1.05mgを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、SG-SWCNT分散液を調製した。
【実施例】
【0067】
(実施例6:カーボンブラック分散液の調製)
eDIPS法によって合成されたSWCNTに代えて、カーボンブラック(三菱化学、CB-2600)3.02mgを使用したことと、イオン性化合物(式[化6])に代えて、前記の式[化9]で表されるイオン性化合物3.02mgを用いたこと、溶媒として重水3mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散液を調製した。
【実施例】
【0068】
(実施例7:多層カーボンナノチューブ分散液の調製)
カーボンブラックに代えて、多層カーボンナノチューブ(MWCNT,Nanocyl社、NC-7000)3.01mgを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、MWCNT分散液を調製した。
【実施例】
【0069】
(実施例8:グラフェン分散液の調製)
カーボンブラックに代えてグラフェンナノプレートレット(XG SCIENCES、xGnP-C-300)3.05mgを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、グラフェンナノプレートレット分散液を調製した。
【実施例】
【0070】
(比較例1:SWCNT分散液の調製)
前記の式(5)で表されるイオン性化合物に代えて、ドデシル硫酸ナトリウム(式(6))50.51mgを使用したこと以外は、実施例3と同様にして、SWCNT分散液を調製した。この分散液のUV-vis-NIR吸収スペクトルを図4に示す。HiPco法によって合成されたSWCNTのVis-NIR吸収スペクトルに特徴的な600~1600nmに現れる鋭い吸収ピークが観測されており、SWCNTが水中に分散していることを示している。
【実施例】
【0071】
(比較例2:SWCNT分散液の調製)
前記の式(5)で表されるイオン性化合物に代えて、コール酸ナトリウム(式(7))50.51mgを使用したこと以外は、実施例3と同様にして、SWCNT分散液を調製した。この分散液のUV-vis-NIR吸収スペクトルを図5に示す。HiPco法によって合成されたSWCNTのVis-NIR吸収スペクトルに特徴的な600~1600nmに現れる鋭い吸収ピークが観測されており、SWCNTが水中に分散していることを示している。
【実施例】
【0072】
(比較例3:SWCNT分散液の調製)
前記の式(5)で表されるイオン性化合物に代えて、前記のtrans-ビス(トリアリルアジド)スチルベンジスルホン酸誘導体(式(8))50.51mgを使用したこと以外は、実施例3と同様にして、SWCNT分散液を調製した。この分散液のUV-vis-NIR吸収スペクトルを図6に示す。HiPco法によって合成されたSWCNTのVis-NIR吸収スペクトルに特徴的な600~1600nmに現れる鋭い吸収ピークが観測されており、SWCNTが水中に分散していることを示している。
【実施例】
【0073】
(実施例9:光照射によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
実施例1で調製した分散液をガラス基材(7.5cm×2.6cm、MATSUNAMI)に0.5mL滴下し塗り広げた。この状態に対して、ガラス基材を通して波長365nmのLED光(HOYA CANDEO OPTRONICS、EXECURE H-1VCII)を250mW/cmで1分間照射した(図1参照)。照射後、基材上の分散液を洗い流して除去し、乾燥させることによりガラス基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図7)。
【実施例】
【0074】
(実施例10:光照射によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにアミノプロピルトリメトキシシラン(APS)処理を行ったガラス基材(APSガラス、7.5cm×2.6cm、MATSUNAMI)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、APSガラス基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(a))。
【実施例】
【0075】
(実施例11:光照射によるPET基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET、東レ、ルミラー)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PET基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(b))。
【実施例】
【0076】
(実施例12:光照射によるPEN基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリエチレンナフタレート(PEN、帝人デュポン、TEONEX)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PEN基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(c))。
【実施例】
【0077】
(実施例13:光照射によるPMMA基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PMMA基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(d))。
【実施例】
【0078】
(実施例14:光照射によるPC基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリカーボネート(PC)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PC基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(e))。
【実施例】
【0079】
(実施例15:光照射によるPS基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリスチレン(PS)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PS基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(f))。
【実施例】
【0080】
(実施例16:光照射によるPVC基板上へのSWCNTの製膜)
分散液を接触させる基板としてガラス基材の代わりにポリ塩化ビニル(PVC)基材を用いた以外は、実施例9と同様にして、PVC基材上のSWCNT膜の形成を確認した(図8(g))。
【実施例】
【0081】
(実施例17:光照射によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
実施例1で調製した分散液の代わりに、実施例2で調製した分散液を用いた以外は、実施例9と同様にして、ガラス基材上のSWCNT膜の形成を確認した。
【実施例】
【0082】
(実施例18:フォトマスクを用いた光照射によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
紫外光を照射する際に、市松模様のパターンを有するマスクを用いた以外は、実施例11と同様にして、市松模様パターンを有するSWCNT膜の形成をPET基材上に確認した。図9の(a)は、PETフィルム上にパターン状に製膜されたSWCNT膜の写真であり、同図の(b)は、使用した市松模様のマスクの写真である。
【実施例】
【0083】
(実施例19:光照射によるガラス基板上へのSG-SWCNTの製膜)
実施例5で調製したSG-SWCNT分散液をAPSガラスに接触させた状態で保持した。この状態に対してAPSガラス基材を通して、波長365nmのLEDの光を300mW/cmで10分間照射した。照射後、基材上の分散液を洗い流して除去し、乾燥させることによりガラス基材上のSG-SWCNT膜の形成を確認した(図10(a))。
【実施例】
【0084】
(実施例20:光照射によるガラス基板上へのカーボンブラックの製膜)
実施例6で調製したカーボンブラック分散液をAPSガラスに接触させた状態で保持した。この状態に対してAPSガラス基材を通して、波長365nmのLEDの光を300mW/cmで30分間照射した。照射後、基材上の分散液を洗い流して除去し、乾燥させることによりガラス基材上のカーボンブラック膜の形成を確認した(図10(b))。
【実施例】
【0085】
(実施例21:光照射によるガラス基板上へのMWCNTの製膜)
カーボンブラック分散液の代わりに、実施例7で調製したMWCNT分散液を用いた以外は、実施例20と同様にして、ガラス基材上のMWCNT膜の形成を確認した(図10(c))。
【実施例】
【0086】
(実施例22:光照射によるガラス基板上へのグラフェンの製膜)
カーボンブラック分散液の代わりに、実施例8で調製したグラフェンナノプレートレット分散液を用いた以外は、実施例20と同様にして、ガラス基材上のグラフェンナノプレートレット膜の形成を確認した(図10(d))。
【実施例】
【0087】
(実施例23:光照射による曲面ガラス基板上へのSWCNTの製膜)
実施例2で調製した分散液を円柱状のガラス製サンプル管に加えた。この状態に対して、曲面を有するガラス管側面を通して波長365nmのLED光を250mW/cmで10分間照射した。照射後、側面に生じた黒色ゲルを洗い流して除去し、乾燥させることによりガラス管側面の曲面にSWCNT膜の形成を確認した。
図11は、円柱状のガラス製サンプル管側面への製膜の写真であって、(a)は、洗浄前の、光照射部分に生成したSWCNTの黒色ゲルの写真である。また、(b)は、洗浄後の、ガラス管の側面に製膜されたSWCNT膜の写真であり、図中、矢印が指しているものが、SWCNT膜である。
【実施例】
【0088】
(実施例24:光照射によるフッ化カルシウム基板上へのSWCNTの製膜)
実施例3で調製した分散液を、フッ化カルシウム基材に接させた状態で保持した。この状態に対してフッ化カルシウム基材を通して、波長355nmの全固体レーザーの光をレンズによる拡大後、8mm×8mmの矩形状に切り出し、1W/cmの照射密度になるよう調整して5分間照射した。照射後、フッ化カルシウム基板上の分散液を水によって洗い流して除去し、乾燥することによりフッ化カルシウム基板上へのナノ炭素材料膜の形成を確認した。
【実施例】
【0089】
(実施例25:フォトマスクを用いた光照射によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
実施例4で調製した分散液を、ガラス基材に接させた状態で保持した。この状態に対してガラス基材を通して、波長355nmの全固体レーザーの光を500mW/cmで30分間照射した。照射の際には、レーザー光をレンズにより拡大し、ガラス基材の入射側面に設置した星型の開口部を有するマスクを通すことで、開口部の形状に限定した領域に対する光照射を行った。照射後、ガラス基材上の分散液を洗い流して除去し、乾燥することによりガラス基材上へのナノ炭素材料膜の形成を確認した。
図12は、ガラス基板上に形成されたSWCNT膜の写真であって、図に示すとおり、形成されたナノ炭素材料膜は、マスクによる照射領域の制限を反映して星型の形状を有しており、厚さ1.6μm、シート抵抗は約50Ω/cmであった。
【実施例】
【0090】
(実施例26:光照射領域走査によるガラス基板上へのSWCNTの製膜)
実施例3で調製した分散液を、ガラス基材に接させた状態で保持した。この状態に対してガラス基材を通して、波長355nmの全固体レーザーの光をレンズによる拡大後、12mm×8mmの矩形状に切り出し、1W/cmの照射密度になるよう調整し、照射した。2分間の照射を実施した後、ガラス基材上の分散液を洗い流して除去し、乾燥することによりガラス基材上へのナノ炭素材料膜の形成を確認した。
図13は、光照射領域走査によってガラス基板上に形成されたSWCNT膜の写真であって、(a)は、照射領域を固定した場合の写真、(b)は、照射領域を走査した場合の写真である。
膜の形成は、照射領域の中央近く、7.0mm×2.3mmの領域で見られた(図13(a))。これに対して、前記矩形状の照射領域を1秒あたり62.5μmの速度で12mmの距離を移動しながら2.13分の照射を行ったところ、膜の形成領域は、5.2mm×9.3mmになり照射領域を走査した方向に広がった(図13(b))。
【実施例】
【0091】
(実施例27:干渉光を用いたフッ化カルシウム基板上へのSWCNTの製膜)
実施例3で調製した分散液を、フッ化カルシウム基材に接させた状態で保持した。この状態に対してフッ化カルシウム基材を通して、波長355nmの全固体レーザーの照射を行った。
図14の右の図は、マイケルソン干渉計を用いた膜の製造方法を模式的に示す図であり、図中、8は、レーザー光源、9は、ミラー、10は、ハーフミラー、11は、フッ化カルシウム基板、12は、SWCNT分散液、13は、発生した干渉縞、をそれぞれ示している。
該図に示すように、レーザー光をマイケルソン干渉計を通すことで、照射領域内に光の干渉に基づいた縞状の強度分布パターンを形成させた。この強度パターンを有する光を、ガラス基材を通して、30分間の照射を実施した後、フッ化カルシウム基材上の分散液を水によって洗い流して除去し、乾燥することによりガラス基材上へのナノ炭素材料膜の形成を確認した。図14の左の図は、干渉露光によってフッ化カルシウム基板上に形成されたSWCNT膜の写真であって、該図に示すように、形成した膜には光の干渉パターンを反映した縞状の濃淡がみられた。
【実施例】
【0092】
(比較例4:比較例1の分散液を用いた光照射による製膜)
比較例1で調製した、ドデシル硫酸ナトリウム(式[化10])を用いたSWCNT分散液を用いたことと、基材としてガラス板を用いたこと以外は、実施例24と同様の手順をおこなったが、ガラス基材上にSWCNT膜の形成は確認されなかった。
【実施例】
【0093】
(比較例5:比較例2の分散液を用いた光照射による製膜)
比較例2で調製した、コール酸ナトリウム(式[化11])を用いたSWCNT分散液を用いたことと、基材としてガラス板を用いたこと以外は、実施例24と同様の手順をおこなったが、ガラス基材上にSWCNT膜の形成は確認されなかった。
【実施例】
【0094】
(比較例6:比較例3の分散液を用いた光照射による製膜)
比較例3で調製した、trans-ビス(トリアリルアジド)スチルベンジスルホン酸誘導体(式[化12])SWCNT分散液を用いたことと、基材としてガラス板を用いたこと以外は、実施例24と同様の手順をおこなったが、ガラス基材上にSWCNT膜の形成は確認されなかった。
【実施例】
【0095】
(比較例7:キャスト法で製膜したSWCNT膜)
実施例1で調製したSWCNT分散液をPETフィルム上に滴下して薄く引き伸ばした。室温で2日間静置後、100℃で30分間加熱し、溶媒を除去、乾燥させ、SWCNT膜を得た。
乾燥後のSWCNT膜を炭酸プロピレンに1日間浸漬させ、引き上げた後、炭酸プロピレン、エタノールの順で洗浄し、分散剤を除去したSWCNT膜を得た。
【実施例】
【0096】
(比較例8:キャスト法によるフッ化カルシウム基材への製膜)
実施例3で調製したSWCNT分散液を、フッ化カルシウム基材に滴下して薄く引き伸ばそうとしたが、塗り広げることができず製膜できなかった。
これは、フッ化カルシウムは表面エネルギーが低いために、水や極性有機溶剤との相溶性が悪く、一般的な製膜法であるキャスト法では、極性溶剤からのフッ化カルシウムへの製膜は困難であるためと考えられる。
これに対し、実施例24、27に示したとおり、本発明の手法によればフッ化カルシウム基材上にも製膜可能である。
【実施例】
【0097】
(実施例28:SWCNT膜の透過率、シート抵抗の測定)
実施例17で作製したSWCNT膜のUV-VIS-NIR透過スペクトルを示す(図15)。可視領域(550nm)の透過率(基材の透過率を100%としたときの値)は85%であった。また、低抵抗率計(三菱化学アナリティック、ロレスターAX(MCP-T370))を用いて、このSWCNT膜のシート抵抗を測定したところ、690Ω/sqであった。
表1に、各実施例で作製したSWCNT膜の550nmの透過率と、シート抵抗を示す。
【実施例】
【0098】
【表1】
JP2018084297A1_000015t.gif
【実施例】
【0099】
(実施例29:SWCNT膜のFT-IRスペクトル)
FT-IR分光光度計(日本分光、FT/IR-680Plus)とATR測定ユニット(PIKE Technology、MIRacle)を用いて、実施例11で作製したSWCNT膜のFT-IRスペクトルを測定した。また、比較例7でキャスト法によって作製したSWCNT膜とそれを洗浄したもの、基板として用いたPETフィルム、分散に用いたイオン性化合物(式(1))のFT-IRスペクトルも同様に測定した。5つのFT-IRスペクトルを図16に示す。図中、Aは、実施例11のSWCNT膜、Bは、比較例7で得られたSWCNT膜、Cは、比較例7で得られたSWCNT膜を洗浄したもの、Dは、イオン性化合物(式(1))、Eは、PET基材、をそれぞれ示している。
該図に示すとおり、比較例7で作製したSWCNT膜とそれを洗浄したものは、分散に用いたイオン性化合物(式(1))に含まれるC=O伸縮振動(1661cm-1)のピークが観察されており、SWCNT膜中に分散剤が残存していることを示している。一方、実施例11で得られたSWCNT膜では、イオン性化合物(式(1))のピークが観察されず、分散剤が含まれていないことを示している。
【実施例】
【0100】
(実施例30:SWCNT膜の原子間力顕微鏡(AFM)観察)
原子間力顕微鏡(Veeco diInnova)を用いて、実施例11で作製したSWCNT膜と、比較例7でキャスト法によって作製したSWCNT膜とそれを洗浄したものを観察した。それぞれのAFM像を図17に示す。図中、(a)は、実施例11で作製したSWCNT膜、(b)は、比較例7で得られたSWCNT膜、(c)は、比較例7で得られたSWCNT膜を洗浄したもの、をそれぞれ示している。
該図に示すとおり、実施例11で作製したSWCNT膜は、SWCNTの繊維一本一本がきれいにほぐれている様子が観察された。一方、比較例7でキャスト法によって作製したSWCNT膜は、部分的に繊維状の構造体が確認されたが、大部分は形状が定まらない荒れた膜であった。これは、大量に残存している分散剤中に、SWCNTの繊維が埋もれてしまったためと考えられる。また、それを洗浄したSWCNT膜は、繊維同士が凝集してさらに大きなバンドル上になった様子が観察された。これは、乾燥過程によるSWCNT同士の凝集によるものであると考えられる。
【符号の説明】
【0101】
1:基材
2:ナノ炭素材料分散液
3:分散液を保持する機構
4:フォトマスク
5:光源
6:照射光
7:ナノ炭素材料膜
8:レーザー光源
9:ミラー
10:ハーフミラー
11:フッ化カルシウム基板
12:SWCNT分散液
13:発生した干渉縞
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16