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明細書 :白内障の予防剤、治療剤、およびこれらを製造するためのHAT阻害剤の使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 白内障の予防剤、治療剤、およびこれらを製造するためのHAT阻害剤の使用
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  27/12        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61K  31/12        (2006.01)
A61K  31/415       (2006.01)
A61K  31/351       (2006.01)
A61K  31/603       (2006.01)
A61K  31/4155      (2006.01)
A61K  31/427       (2006.01)
A61K  31/426       (2006.01)
A61K  31/365       (2006.01)
A61K  31/515       (2006.01)
A61K  31/255       (2006.01)
A61K  31/5377      (2006.01)
A61K  31/41        (2006.01)
A61K  31/121       (2006.01)
A61K  31/11        (2006.01)
A61K  31/548       (2006.01)
A61K  31/122       (2006.01)
A61K  31/661       (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 27/12
A61P 3/10
A61K 31/12
A61K 31/415
A61K 31/351
A61K 31/603
A61K 31/4155
A61K 31/427
A61K 31/426
A61K 31/365
A61K 31/515
A61K 31/255
A61K 31/5377
A61K 31/41
A61K 31/121
A61K 31/11
A61K 31/548
A61K 31/122
A61K 31/661
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 43
出願番号 特願2018-547203 (P2018-547203)
国際出願番号 PCT/JP2017/034204
国際公開番号 WO2018/079149
国際出願日 平成29年9月22日(2017.9.22)
国際公開日 平成30年5月3日(2018.5.3)
優先権出願番号 PCT/JP2017/019034
2016208121
優先日 平成29年5月22日(2017.5.22)
平成28年10月24日(2016.10.24)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】沖 昌也
【氏名】金田 文人
【氏名】▲高▼村 佳弘
【氏名】三宅 誠司
【氏名】内田 博之
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C086
4C206
Fターム 4C084AA17
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4C086NA14
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4C086ZC35
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4C206MA78
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4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZC35
要約 新規な白内障の予防剤、治療剤、およびこれらを製造するためのHAT阻害剤の使用を提供する。本発明の白内障の予防剤または治療剤は、HAT阻害剤を有効成分として含有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
HAT阻害剤を有効成分として含有している、白内障の予防剤または治療剤。
【請求項2】
上記HAT阻害剤は、HAT1、NAA60、GCN5、PCAF、TIP60、MOZ、MORF、HBO1、MOF、P300、CBP、TAF1、TIFIIIC90、SRC1、SCR3、P600、CLOCKおよびNAT10からなる群より選択される1種以上の物質を標的とするものである、請求項1に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【請求項3】
上記HAT阻害剤は、ポリフェノール由来の化合物、構造中にヘテロ環を含んでいる化合物、安息香酸誘導体、またはα-β不飽和カルボニル化合物である、請求項1または2に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【請求項4】
上記HAT阻害剤は、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン、CTK7A、Epigenetic Multiple Ligand、MG149、C646、NU9056、CPTH2、5-クロロ-2-(4-ニトロフェニル)-3(2H)-イソチアゾロン、ブチロラクトン3、EML425、L002、ISOX DUAL、TH1834、SPV106、Windorphen、ケトミン、Remodelin、エンベリン、Ischemin、CBP30およびKG501からなる群より選択される1種以上の物質、または当該物質の誘導体もしくは塩である、請求項1または2に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【請求項5】
投与剤型が点眼剤である、請求項1~4の何れか1項に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【請求項6】
上記白内障は、糖尿病白内障である、請求項1~5の何れか1項に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【請求項7】
白内障の予防剤または治療剤を製造するための、HAT阻害剤の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、白内障の予防剤、治療剤、およびこれらを製造するためのHAT阻害剤の使用に関する。より具体的には、HAT阻害剤を有効成分として含有している白内障の予防剤または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は、水晶体が混濁することによって、視力の低下が引き起こされる疾患である。白内障の種類によって異なるが、白内障に罹患した水晶体は、核、皮質または後嚢に白濁を生じる。白内障の種類には、加齢白内障、糖尿病白内障などが存在する。このうち罹患者数が最も多い加齢白内障は、加齢と共に有所見率が増加し、初期の混濁も含めると、日本国における60歳代の有所見率は66~85%、70歳代の有所見率は84~97%、80歳以上では100%に達する。これに対し、糖尿病白内障は60歳以下の罹患者が多く、若年層でも発症しうる疾患である。
【0003】
白内障への処置は、混濁の発生後における外科手術による治療が主であるが、予防剤または治療剤の投与も行われている。上記予防剤または進行抑制剤の一例として、非特許文献1はグルタチオン、非特許文献2はピレノキシンを報告している。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Matensson.J et.al. (1989) Glutathione ester prevents buthionine sulfoximine-induced cataracts and lens epithelial cell damage, Proc Natl Acad Sci U S A, vol.86, pp.8727-8731.
【非特許文献2】Ciuffi.M et.al. (1999) Protective Effect of Pirenoxine and U74389F on Induced Lipid Peroxidation in Mammalian Lenses. An in vitro, ex vivo and in vivo study, EXPERIMENTAL EYE RESEARCH, vol.68, pp.347-359.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、白内障の予防または治療効果において、改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、新規な白内障の予防剤、治療剤、およびこれらを製造するためのHAT阻害剤の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、HAT阻害剤が白内障を予防および治療しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなるものである。
【0008】
<1>HAT阻害剤を有効成分として含有している、白内障の予防剤または治療剤。
【0009】
<2>上記HAT阻害剤は、HAT1、NAA60、GCN5、PCAF、TIP60、MOZ、MORF、HBO1、MOF、P300、CBP、TAF1、TIFIIIC90、SRC1、SCR3、P600、CLOCKおよびNAT10からなる群より選択される1種以上の物質を標的とするものである、<1>に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【0010】
<3>上記HAT阻害剤は、ポリフェノール由来の化合物、構造中にヘテロ環を含んでいる化合物、安息香酸誘導体、またはα-β不飽和カルボニル化合物である、<1>または<2>に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【0011】
<4>上記HAT阻害剤は、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン、CTK7A、Epigenetic Multiple Ligand、MG149、C646、NU9056、CPTH2、5-クロロ-2-(4-ニトロフェニル)-3(2H)-イソチアゾロン、ブチロラクトン3、EML425、L002、ISOX DUAL、TH1834、SPV106、Windorphen、ケトミン、Remodelin、エンベリン、Ischemin、CBP30およびKG501からなる群より選択される1種以上の化合物、または当該化合物の誘導体もしくは塩である、<1>または<2>に記載の白内障の予防剤または治療剤。
【0012】
<5>投与剤型が点眼剤である、<1>~<4>の何れか1つに記載の白内障の予防剤または治療剤。
【0013】
<6>上記白内障は、糖尿病白内障である、<1>~<5>の何れか1つに記載の白内障の予防剤または治療剤。
【0014】
<7>白内障の予防剤または治療剤を製造するための、HAT阻害剤の使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、新規な白内障の予防剤または治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の、作用機序の例を表すモデル図である。(b)本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の、他の作用機序の例を表すモデル図である。(c)本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の、更に他の作用機序の例を表すモデル図である。
【図2】(a)2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンによる白内障の予防効果を示す写真である。(b)CTK7Aによる白内障の予防効果を示す写真である。(c)ガルシノールによる白内障の予防効果を示す写真である。(d)アナカルド酸による白内障の予防効果を示す写真である。(e)MG149による白内障の予防効果を示す写真である。
【図3】(a)C646による白内障の予防効果を示す写真である。(b)CPTH2による白内障の予防効果を示す写真である。(c)ブチロラクトン3による白内障の予防効果を示す写真である。(d)没食子酸による白内障の予防効果を示す写真である。(e)(-)-エピガロカテキンガラートによる白内障の予防効果を示す写真である。
【図4】(a)ISOX DUALによる白内障の予防効果を示す写真である。(b)プルンバギンによる白内障の予防効果を示す写真である。(c)TH1834による白内障の予防効果を示す写真である。(d)SPV106による白内障の予防効果を示す写真である。(e)Windorphenによる白内障の予防効果を示す写真である。
【図5】(a)Remodelinによる白内障の予防効果を示す写真である。(b)エンベリンによる白内障の予防効果を示す写真である。(c)EML425による白内障の予防効果を示す写真である。(d)CBP30による白内障の予防効果を示す写真である。(e)TSAによる白内障の促進効果を示す写真である。
【図6】HDAC阻害剤による水晶体白濁の促進、およびHAT阻害剤による水晶体白濁の抑制を定量化したグラフである。
【図7】HAT阻害剤(C646)による白内障治療効果を示す写真である。
【図8】(a)CBP30とCPTH2との組み合わせによる、白内障治療効果を示す写真である。(b)CBP30とCPTH2との組み合わせを投与してから4日後における、水晶体の切片を示す写真である。
【図9】(a)CBP30による白内障治療効果を示す写真である。(b)CPTH2による白内障治療効果を示す写真である。
【図10】C646とCPTH2との組み合わせによる、白内障治療効果を示す写真である。
【図11】(a)C646による白内障治療効果を示す写真である。(b)CPTH2による白内障治療効果を示す写真である。
【図12】(a)in vivoにおける、HAT阻害剤(C646)の白内障予防効果を検討する実験の概要を示す模式図である。(b)図12の(a)の実験結果を示す写真である。
【図13】TH1834による白内障治療効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。

【0018】
本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。

【0019】
〔1.用語の定義〕
[1-1.白内障]
本明細書において「白内障」とは、水晶体に混濁を生じる疾患一般を意図する。白内障によって水晶体に生じる混濁には、例えば、皮質混濁、核混濁、後嚢下混濁、皮質スポーク状混濁、前嚢下混濁、線維ひだ、水隙、核周囲の徹照下点状混濁、水疱、点状混濁、冠状混濁などの類型がある。また、本明細書において「白内障」とは、加齢白内障の他に、糖尿病白内障、先天白内障、外傷性白内障、アトピー白内障、放射線白内障、ステロイド白内障といった併発白内障などの病型を総称した疾患を意図する。

【0020】
本明細書において「糖尿病白内障」とは、血液中または血漿中のグルコース濃度が持続的に上昇している状態によって特徴づけられる疾患の罹患者において発症している、水晶体の混濁を意図する。一例において、上記疾患は、高血糖症または糖尿病である。一例において、上記糖尿病は、一型糖尿病または二型糖尿病である。上記糖尿病白内障においては、水晶体の皮質または後嚢下に混濁が生じることが多いことが大規模疫学調査で知られているが、混濁の生じる箇所はこれらに限定されない。

【0021】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、糖尿病白内障の予防または治療を目的として用いられることが好ましい。

【0022】
[1-2.予防剤]
本明細書において「予防剤」とは、予防効果をもたらす薬剤を意図する。上記予防効果とは、以下に例示される効果を意図するが、これらに限定されるものではない。

【0023】
(1)予防剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、またはリスクを低減する。

【0024】
(2)予防剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、またはリスクを低減する。

【0025】
(3)予防剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の兆候が生じることを防止する、またはリスクを低減する。

【0026】
なお、上記疾患に係る1つ以上の症状は、全身的なものであってもよいし、局所的なものであってもよい。

【0027】
[1-3.治療剤]
本明細書において「治療剤」とは、治療効果をもたらす薬剤を意図する。上記治療効果とは、以下に例示される効果を意図するが、これらに限定されるものではない。

【0028】
(1)治療剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減する。

【0029】
(2)治療剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加、または進行を防止する。

【0030】
(3)治療剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加速度、または進行速度を低減する。

【0031】
なお、上記疾患に係る1つ以上の症状は、全身的なものであってもよいし、局所的なものであってもよい。

【0032】
〔2.HAT阻害剤〕
本発明の一態様は、HAT阻害剤を有効成分として含有している。本明細書において、HAT阻害剤とは、ヒストンアセチル化酵素(Histone Acetyl Transferase:HAT)の機能を阻害する物質を意図する。

【0033】
HATは、ヒストンに含まれる特定のリジン残基のアミノ基を、アセチル基に置換する。このことにより、DNAとヒストンとが形成しているクロマチン構造が部分的に緩み、ヒストンがアセチル化された部位近傍の遺伝子が発現しやすくなる。HAT阻害剤は、上述の過程を阻害することにより、特定の遺伝子の発現を抑制する結果を生じさせる。したがって、本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、エピジェネティックな遺伝子発現制御に作用していることになる。

【0034】
[2-1.HAT阻害剤の標的]
本明細書において、特定のHAT阻害剤により機能が阻害されるHATのことを、当該HAT阻害剤の「標的」と呼ぶ。HAT阻害剤は、標的であるHATと結合するなどして、「直接的に」HATの機能を阻害してよい。一方、HAT阻害剤は、HATの機能に必要な物質を捕捉するなどして、「間接的に」HATの機能を阻害してもよい(この場合、上記HATの機能に必要な物質もまた、上記HATと同じく「HAT阻害剤の標的」と呼ぶ)。すなわち、HAT阻害剤の標的は、HATである場合もあれば、HATでない場合もある。

【0035】
一実施形態において、上記HAT阻害剤が標的とするHATは、下表に記載されたHAT群のうち、1つ以上のサブタイプのHATでありうる。一実施形態において、上記HAT阻害剤が標的とするHATは、下記表1に記載されたHAT群のうち、1つ以上のファミリーに属するHAT群でありうる。

【0036】
【表1】
JP2018079149A1_000002t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤が標的とする物質は、NAT10またはBRD4でありうる。

【0037】
一実施形態において、上記HAT阻害剤の標的は、本明細書においてHAT阻害剤の標的になりうると記載されている物質、および当業者がHAT阻害剤の標的と認める物質から選択される、1種類以上である。すなわち、上記HAT阻害剤の標的は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。また、上記HAT阻害剤は、HATである物質およびHAT以外の物質を、共に標的としてもよい。更に、上記HAT阻害剤の標的は、上述されている物質を含む複合体であってもよい。

【0038】
[2-2.HAT阻害剤]
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、クルクミンである。上記クルクミンのIUPAC名は(1E,6E)-1,7-bis (4-hydroxy-3-methoxyphenyl) -1,6-heptadiene-3,5-dione、CAS番号は458-37-7、構造式は下式1である。上記クルクミンは、P300/CBPファミリーのHATを標的とする。

【0039】
【化1】
JP2018079149A1_000003t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン(別名HAT inhibitor II)である。上記2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンのIUPAC名は2,6-bis((e)-3-bromo-4-hydroxybenzylidene)cyclohexan、CAS番号は932749-62-7、構造式は下式2である。上記2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンは、P300/CBPファミリーのHATを標的とする。

【0040】
【化2】
JP2018079149A1_000004t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、CTK7A(別名HAT inhibitor VII)である。上記CTK7AのIUPAC名はSodium-4-(3,5-bis(4-hydroxy-3-methoxystyryl)-1H-pyrazol-1-yl)benzoate、CAS番号は1297262-16-8、構造式は下式3である。上記CTK7Aは、P300およびPCAFを標的とする。

【0041】
【化3】
JP2018079149A1_000005t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、Epigenetic Multiple
Ligandである。上記Epigenetic Multiple LigandのIUPAC名は3,5-bis(3,5-Dibromo-4-hydroxybenzylidene)-tetrahydro-2H-pyran-4-one、CAS番号は1020399-52-3、構造式は下式4である。上記Epigenetic Multiple Ligandは、P300を標的とする。

【0042】
【化4】
JP2018079149A1_000006t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、ガルシノールである。上記ガルシノールのIUPAC名は3-[(3,4-Dihydroxyphenyl)-hydroxymethylidene]-6,6-dimethyl-5,7-bis(3-methylbut-2-enyl)-1-(5-methyl-2-prop-1-en-2-ylhex-4-enyl)bicyclo[3.3.1]nonane-2,4,9-trione、CAS番号は78824-30-3、構造式は下式5である。上記ガルシノールは、P300およびPCAFを標的とする。

【0043】
【化5】
JP2018079149A1_000007t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、アナカルド酸である。上記アナカルド酸のIUPAC名は2-hydroxy-6-[(8Z,11Z)-pentadeca-8,11,14-trienyl]benzoic acid、CAS番号は11034-77-8、構造式は下式6である。上記アナカルド酸は、P300およびPCAFを標的とする。

【0044】
【化6】
JP2018079149A1_000008t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、MG149である。上記MG149のIUPAC名は2-(4-heptylphenethyl)-6-hydroxybenzoic acid、CAS番号は1243583-85-8、構造式は下式7である。上記MG149は、TIP60およびMOZを標的とする。

【0045】
【化7】
JP2018079149A1_000009t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、C646である。上記C646のIUPAC名は4-[4-[[5-(4,5-Dimethyl-2-nitrophenyl)-2-furanyl]methylene]-4,5-dihydro-3-methyl-5-oxo-1H-pyrazol-1-yl]benzoic acid、CAS番号は328968-36-1、構造式は下式8である。上記C646は、P300/CBPファミリーのHATを標的とする。

【0046】
【化8】
JP2018079149A1_000010t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、NU9056である。上記NU9056のIUPAC名は5-(1,2-Thiazol-5-yldisulfanyl)-1,2-thiazole、CAS番号は1450644-28-6、構造式は下式9である。上記NU9056は、TIP60を標的とする。

【0047】
【化9】
JP2018079149A1_000011t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、CPTH2である。上記CPTH2のIUPAC名は2-[4-(4-chlorophenyl)-2-thiazolyl]hydrazone-cyclopentanone, monohydrochloride、CAS番号は357649-93-5、構造式は下式10である。上記CPTH2は、GCN5を標的とする。

【0048】
【化10】
JP2018079149A1_000012t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、5-クロロ-2-(4-ニトロフェニル)-3(2H)-イソチアゾロンである。上記5-クロロ-2-(4-ニトロフェニル)-3(2H)-イソチアゾロンのIUPAC名は5-Chloro-2-(4-nitrophenyl)-3(2H)-isothiazolone、CAS番号は748777-47-1、構造式は下式11である。上記5-クロロ-2-(4-ニトロフェニル)-3(2H)-イソチアゾロンは、P300およびPCAFを標的とする。

【0049】
【化11】
JP2018079149A1_000013t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、ブチロラクトン3(別名MB-3)である。上記ブチロラクトン3のIUPAC名は3-Methylene-4-hydroxycarbonyl-5-(1-propyl)-tetrahydrofuran-2-one、CAS番号は778649-18-6、構造式は下式12である。上記ブチロラクトン3は、GCN5を標的とする。

【0050】
【化12】
JP2018079149A1_000014t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、没食子酸である。上記没食子酸のIUPAC名は3,4,5-trihydroxybenzoic acid、CAS番号は149-91-7、構造式は下式13である。上記没食子酸は、非特異的なHAT阻害剤である。

【0051】
【化13】
JP2018079149A1_000015t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、(-)-エピガロカテキンガラートである。上記(-)-エピガロカテキンガラートのIUPAC名は[(2R,3R)-5,7-dihydroxy-2-(3,4,5-trihydroxyphenyl)chroman-3-yl] 3,4,5-trihydroxybenzoate、CAS番号は989-51-5、構造式は下式14である。上記(-)-エピガロカテキンガラートは、非特異的なHAT阻害剤である。

【0052】
【化14】
JP2018079149A1_000016t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、EML425である。上記EML425のIUPAC名は5-[(4-Hydroxy-2,6-dimethylphenyl)methylene]-1,3-bis(phenylmethyl)-2,4,6(1H,3H,5H)-pyrimidinetrione、CAS番号は1675821-32-5、構造式は下式15である。上記EML425は、P300/CBPファミリーのHATを標的とする。

【0053】
【化15】
JP2018079149A1_000017t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、L002である。上記L002のIUPAC名は4-[O-[(4-Methoxyphenyl)sulfonyl]oxime]-2,6-dimethyl-2,5-cyclohexadiene-1,4-dione、CAS番号は321695-57-2、構造式は下式16である。上記L002は、P300を標的とする。

【0054】
【化16】
JP2018079149A1_000018t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、ISOX DUALである。上記ISOX
DUALのIUPAC名は[3-[4-[2-[5-(Dimethyl-1,2-oxazol-4-yl)-1-[2-(morpholin-4-yl)ethyl]-1H-1,3-benzodiazol-2-yl]ethyl]phenoxy]propyl]dimethylamine、CAS番号は登録されておらず、構造式は下式17である。上記ISOX DUALは、CBPおよびBRD4のブロモドメインを標的とする。

【0055】
【化17】
JP2018079149A1_000019t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、プルンバギンである。上記プルンバギンのIUPAC名は5-Hydroxy-2-methyl-1,4-naphthalened-ione、CAS番号は481-42-5、構造式は下式18である。上記プルンバギンは、P300を標的とする。

【0056】
【化18】
JP2018079149A1_000020t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、TH1834である。上記TH1834のIUPAC名は2-(5-(4-((phenethyl(4-(4-(pyrrolidin-1-ylmethyl)phenoxy)butyl)amino)methyl)phenyl)-2H-tetrazol-2-yl)acetic acid dihydrochloride、CAS番号は登録されておらず、構造式は下式19である。上記TH1834は、TIP60を標的とする。

【0057】
【化19】
JP2018079149A1_000021t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、SPV106である。上記SPV106のIUPAC名は2-Pentadecylidene-Propanedioic acid 1,3-diethyl ester、CAS番号は1036939-38-4、構造式は下式20である。上記SPV106は、P300/CBPファミリーのHATを標的とする。また、上記SPV106は、PCAFのアクチベーターでもある。

【0058】
【化20】
JP2018079149A1_000022t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、Windorphenである。上記WindorphenのIUPAC名は(E) & (Z)-3-Chloro-2,3-bis(4-methoxyphenyl)acrylaldehyde、CAS番号は19881-70-0、構造式は下式21である。上記Windorphenは、非特異的なHAT阻害剤である。

【0059】
【化21】
JP2018079149A1_000023t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、ケトミンである。上記ケトミンのIUPAC名は2,3S,5aR,6,10bS,11-hexahydro-3-(hydroxymethyl)-10b-[(1S,4S)-3-[[4-(hydroxymethyl)-5,7-dimethyl-6,8-dioxo-2,3-dithia-5,7-diazabicyclo[2.2.2]oct-1-yl]methyl]-1H-indol-1-yl]-2-methyl-3,11aS-epidithio-11aH-pyrazino[1',2':1,5]pyrrolo[2,3-b]indole-1,4-dione、CAS番号は1403-36-7、構造式は下式22である。上記ケトミンは、H1F1α/P300複合体のTAZ1ドメインを標的とする。

【0060】
【化22】
JP2018079149A1_000024t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、Remodelinである。上記RemodelinのIUPAC名は4-[2-(2-cyclopentylidenehydrazinyl)-1,3-thiazol-4-yl]benzonitrile;hydrobromide、CAS番号は1622921-15-6、構造式は下式23である。上記Remodelinは、NAT10を標的とする。

【0061】
【化23】
JP2018079149A1_000025t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、エンベリンである。上記エンベリンのIUPAC名は2,5-Dihydroxy-3-undecyl-1,4-benzoquinone、CAS番号は550-24-3、構造式は下式24である。上記エンベリンは、PCAFを標的とする。

【0062】
【化24】
JP2018079149A1_000026t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、Ischeminである。上記IscheminのIUPAC名は5-[(1E)-2-(2-Amino-4-hydroxy-5-methylphenyl)diazenyl]-2,4-dimethylbenzenesulfonic acid sodium salt、CAS番号は1357059-00-7、構造式は下式25である。上記Ischeminは、P300/CBPファミリーのHATのブロモドメインを標的とする。

【0063】
【化25】
JP2018079149A1_000027t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、CBP30である。上記CBP30のIUPAC名は8-(3-chloro-4-methoxy-phenethyl)-4-(3,5-dimethyl-isoxazol-4-yl)-9-(2-(morpholin-4-yl)-propyl)-7,9-diaza-bicyclo[4.3.0]nona-1(6),2,4,7-tetraene、CAS番号は1613695-14-9、構造式は下式26である。上記CBP30は、P300/CBPファミリーのHATのブロモドメインを標的とする。

【0064】
【化26】
JP2018079149A1_000028t.gif
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、KG501(別名ナフトールAS-Eホスフェート)である。上記KG501のIUPAC名は3-[(4-chlorophenyl)carbamoyl]-2-naphthyl dihydrogen phosphate; N-(4-Chlorophenyl)-3-(phosphonooxy)naphthalene-2-carboxamide、CAS番号は18228-17-6、構造式は下式27である。上記KG501は、P300/CBPファミリーのHATのKIXドメインを標的とする。

【0065】
【化27】
JP2018079149A1_000029t.gif
上述した物質のうち、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン、CTK7A、ガルシノール、アナカルド酸、MG149、没食子酸、(-)-エピガロカテキンガラート、プルンバギンおよびエンベリンは、ポリフェノール由来の化合物である。

【0066】
上述した物質のうち、CTK7A、アナカルド酸、MG149、C646、没食子酸、(-)-エピガロカテキンガラートおよびプルンバギンは、安息香酸誘導体である。

【0067】
上述した物質のうち、CTK7A、C646、CPTH2、ISOX DUAL、TH1834およびRemodelinは、構造中にヘテロ環を含んでいる。

【0068】
上述した物質のうち、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン、ブチロラクトン3、SPV106、Windorphenは、α-β不飽和カルボニル化合物である。

【0069】
一実施形態において、上記HAT阻害剤は、上述した物質の誘導体または塩であってよい。上述した物質の誘導体または塩をHAT阻害剤として用いることにより、(1)白内障の予防効果または治療効果が増大する、(2)物質の人体に対する安全性が増大する、(3)製剤に当たって扱いやすい物性を得る、などの効果を付与しうる。

【0070】
本明細書において、「誘導体」とは、特定の化合物に対して、当該化合物の分子内の一部が、他の官能基または他の原子と置換されることにより生じる化合物群を意図する。

【0071】
上記他の官能基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基、ニトロ基などが挙げられる。上記他の原子の例としては、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子などが挙げられる。

【0072】
本明細書において、「塩」とは、医薬品として被験体に投与することが生理学的に許容されうる塩であるならば、限定されない。塩の例としては、アルカリ金属塩(カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩など)、有機酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩など)、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など)を挙げられる。

【0073】
HAT阻害剤の例として上述した物質の誘導体または塩は、公知の手法により製造することができる。

【0074】
〔3.白内障の予防剤または治療剤〕
[3-1.投与形態および剤型]
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、被験体に対して投与される。一実施形態において、上記被験体はヒトである。他の実施形態において、上記被験体は、ヒト以外の動物である。上記ヒト以外の動物の例としては、ヒト以外の哺乳類(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラットなど)が挙げられる。

【0075】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、任意の投与経路によって被験体に投与されうる。上記投与経路の例としては、経口投与、非経口投与、経皮投与、経粘膜投与、経静脈投与が挙げられる。したがって、上記白内障の予防剤または治療剤の剤型は、内服薬、外用薬、注射剤、坐剤、吸入剤、点眼剤などでありうる。

【0076】
上述した投与経路の中でも、非経口投与が好ましく、点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与がより好ましく、点眼投与が更に好ましい。したがって、上述した剤型の中でも、点眼剤または注射剤が好ましく、点眼剤がより好ましい。点眼剤が好ましい理由としては、有効成分を水晶体に送達するまでの経路が短いこと、他の器官を刺激しにくいこと、侵襲がほとんどないこと、全身への影響が小さいこと(点眼後の涙点圧迫によりさらに全身への影響を抑えることができる)、投与が簡便であること、反復投与が可能であること、患者が自己管理できることなどが挙げられる。このため、白内障の予防効果または治療効果を、より迅速にすること、より増大させることなどが期待できる。

【0077】
[3-2.含有成分]
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、有効成分としてHAT阻害剤を含んでいる。本明細書において、「有効成分」とは、1つ以上の症状に対して予防効果または治療効果をもたらすことのできる物質を意図する。

【0078】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、1種類のHAT阻害剤のみを含んでいてもよいし、2種類以上のHAT阻害剤を組み合わせて含んでいてもよい。2種類以上のHAT阻害剤を組み合わせることにより、個々のHAT阻害剤の効果からは予想できない、相乗的な効果を得ることができる。

【0079】
このような相乗的な効果が得られるHAT阻害剤の組み合わせの一例としては、(1)CBP30とCPTH2との組み合わせ、および(2)C646とCPTH2との組み合わせ、が挙げられる。

【0080】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤に含まれるHAT阻害剤の濃度は、当該HAT阻害剤の種類、並びに選択される投与経路および剤型などによって異なる。一例において、上記HAT阻害剤の濃度の下限は、0.001μM以上、0.002μM以上、0.005μM以上、0.01μM以上、0.02μM以上、0.05μM以上、0.1μM以上、0.2μM以上、0.5μM以上、1μM以上、2μM以上、3μM以上、4μM以上、5μM以上、6μM以上、7μM以上、8μM以上、9μM以上、10μM以上、20μM以上、30μM以上、40μM以上、50μM以上、60μM以上、70μM以上、80μM以上、90μM以上、100μM以上、200μM以上、300μM以上、400μM以上または500μM以上である。

【0081】
一例において、上記HAT阻害剤の濃度の上限は、0.01μM以下、0.02μM以下、0.05μM以下、0.1μM以下、0.2μM以下、0.5μM以下、1μM以下、2μM以下、3μM以下、4μM以下、5μM以下、6μM以下、7μM以下、8μM以下、9μM以下、10μM以下、20μM以下、30μM以下、40μM以下、50μM以下、60μM以下、70μM以下、80μM以下、90μM以下、100μM以下、200μM以下、300μM以下、400μM以下、500μM以下、1000μM以下、2000μM以下または5000μM以下である。

【0082】
一例において、上記HAT阻害剤の濃度は、0.001~0.01μM、0.002~0.02μM、0.005~0.05μM、0.01~0.1μM、0.02~0.2μM、0.05~0.5μM、0.1~1μM、0.2~2μM、0.3~3μM、0.4~4μM、0.5~5μM、0.6~6μM、0.7~7μM、0.8~8μM、0.9~9μM、1~10μM、2~20μM、3~30μM、4~40μM、5~50μM、6~60μM、7~70μM、8~80μM、9~90μM、10~100μM、20~200μM、30~300μM、40~400μM、50~500μM、60~600μM、70~700μM、80~800μM、90~900μM、100~1000μM、200~2000μMまたは500~5000μMである。

【0083】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、HAT阻害剤以外の成分を含有していてよい。上記HAT阻害剤以外の成分は、有効成分であってもよいし、有効成分でなくともよい。

【0084】
上記HAT阻害剤以外の成分のうち、有効成分は、白内障に関連する症状(白内障の症状、白内障の合併症の症状など)に対する有効成分であってもよいし、白内障に関連しない症状に対する有効成分であってもよい。

【0085】
上記HAT阻害剤以外の成分のうち、有効成分でない成分の類型としては、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、賦形剤、担体、希釈剤、溶媒、可溶化剤、安定剤、充填剤、結合剤、界面活性剤、安定化剤などが挙げられる。

【0086】
上記緩衝剤の例としては、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモールなどが挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどが挙げられる。上記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどが挙げられる。上記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。上記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムなどが挙げられる。

【0087】
pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。

【0088】
上記等張化剤の例としては、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトールなど)が挙げられる。

【0089】
上記防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノールなどが挙げられる。

【0090】
上記抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。

【0091】
上記高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲンなどが挙げられる。

【0092】
特に、アテロコラーゲンを高分子量重合体として添加することは、HAT阻害剤の吸収率が上がるため、好ましい。

【0093】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤は、上に例示した以外にも、当業者に知られている有効成分および/または医薬品用添加剤を含んでいてよい。

【0094】
[3-3.製剤および処方]
HAT阻害剤および上に例示されているHAT阻害剤以外の成分を原料として、公知の手法により、本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤が製剤できる。

【0095】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤を点眼剤として投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与量に制限はない。

【0096】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤を点眼剤として投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与間隔に制限はない。上記投与間隔は、通常1時間~6箇月間に1回であり、好ましくは1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、6時間に1回、12時間に1回、1日間に1回、2日間に1回、3日間に1回、4日間に1回、5日間に1回、6日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1箇月間に1回、2箇月間に1回、3箇月間に1回、4箇月間に1回、5箇月間に1回、6箇月間に1回であり、より好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも2日間に1回、少なくとも3日間に1回、少なくとも4日間に1回、少なくとも5日間に1回、少なくとも6日間に1回、少なくとも1週間に1回である。

【0097】
本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤を、白内障および/または他の疾患を予防または治療するための薬剤と併用して処方してもよい。

【0098】
〔4.作用機序〕
以下、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の推定上の作用機序を説明する。なお、以下に説明されるのは作用機序の例示であり、HAT阻害剤を含む白内障の予防剤または治療剤の、他の作用機序を排除するものではない。

【0099】
図1の(a)は、本発明の一実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の作用機序である。この作用機序は、アポトーシス関連遺伝子P53の上流に位置するPLK3の発現を、HAT阻害剤によって抑制するモデルである。

【0100】
HAT阻害剤を投与しない場合は、HATの機能によりP53が活性化し、水晶体上皮細胞のアポトーシスが誘導される。このことにより、水晶体上皮細胞を通した物質の輸送、および水晶体上皮細胞層から水晶体皮質への細胞の供給が妨げられ、水晶体皮質の恒常性が変化する。すると、従前は水晶体内部の水分に溶解していたタンパク質が析出し、混濁が発生する。図1の(a)に示されている作用機序では、HAT阻害剤によってHAT(例えば、[2-1]に記載の物質)の機能が阻害されることにより、PLK3の発現が抑制され、結果的に白内障を予防または治療している。なお、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を投与した場合は、逆の作用機序により、白内障の進行が促進されると考えられる。

【0101】
図1の(b)は、本発明の他の実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の作用機序である。この作用機序は、ALDH1A1の発現を、HAT阻害剤によって促進するモデルである。

【0102】
HAT阻害剤を投与しない場合は、HATの機能によりALDH1A1が抑制され、したがってALDH1A1の機能であるアルデヒド蓄積の抑制が抑制される。結果として水晶体内にアルデヒドが蓄積され、アルデヒドにより変質したタンパク質が蓄積して、混濁が生じる。図1の(b)に示されている作用機序では、HAT阻害剤によってHAT(例えば、[2-1]に記載の物質)の機能が阻害されることにより、ALDH1A1の発現が促進され、結果的に白内障を予防または治療している。なお、HDAC阻害剤を投与した場合は、逆の作用機序(ALDH1A1が抑制され、したがってALDH1A1の機能であるアルデヒド蓄積の抑制が抑制される)により、白内障の進行が促進されると考えられる。

【0103】
図1の(c)は、本発明のさらに他の実施形態に係る白内障の予防剤または治療剤の作用機序である。この作用機序は、GJA1発現が、HAT阻害剤によって促進されるモデルである。

【0104】
HAT阻害剤を投与しない場合は、HATのGJA1を活性化する機能が抑制され、水晶体上皮細胞の細胞間接着が低下する。このことにより、水晶体に水分が取り込まれ、浸透圧上昇に伴い混濁が発生する。図1の(c)に示されている作用機序では、HAT阻害剤によってHAT(例えば、[2-1]に記載の物質)の機能が促進されることにより、GJA1の発現が促進され、結果的に白内障を予防または治療している。なお、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を投与した場合は、逆の作用機序により、白内障の進行が促進されると考えられる。このような作用機序を有するHAT阻害剤の例としては、アナカルド酸が挙げられる。

【0105】
このように、HAT阻害剤は遺伝子発現のエピジェネティックな制御機構に介入することにより、白内障を予防または治療している。したがって、HAT阻害剤としての機能を有する物質を有効成分として含む白内障の予防剤または治療剤は、全て本発明の範囲に含まれる。

【0106】
なお、上述した3種類の作用機序モデルは、〔実施例4〕において裏付けられている。

【0107】
また、本発明の一態様は、HAT阻害剤を有効成分とする白内障の予防薬または治療薬を用いる、白内障の予防方法または治療方法である。
【実施例】
【0108】
〔実施例1〕
ガラクトース添加培地を用いた糖尿病白内障モデルを利用して、以下のHAT阻害剤における白内障の予防効果を調査した。
【実施例】
【0109】
[実施例1-1]
6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の左右の眼球から、水晶体を摘出した。右眼から摘出した水晶体は、M199培地(SIGMA社製)に30mMのガラクトースを添加した培地にて培養し、糖尿病白内障を発症させたモデルとした。一方、左眼から摘出した水晶体は、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMの2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサン(abcam社製)を添加した培地にて培養した。培養にはインキュベーターを使用し、温度は37℃に保った。なお、2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンは、P300/CBPファミリーのHATを標的とするHAT阻害剤である。
【実施例】
【0110】
培養開始から4日後、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により20倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。上記顕微鏡写真を、図2の(a)に示す。
【実施例】
【0111】
図2の(a)に示されているように、上記2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンを添加した培地にて培養した水晶体は、上記2,6-ビス((e)-3-ブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサンを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0112】
[実施例1-2]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび100μMのCTK7A(EMD Millipore社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、CTK7Aは、P300およびPCAFを標的とするHAT阻害剤である。結果を図2の(b)に示す。
【実施例】
【0113】
図2の(b)に示されているように、上記CTK7Aを添加した培地にて培養した水晶体は、上記CTK7Aを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0114】
[実施例1-3]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび2μMのガルシノール(Selleckchem社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、ガルシノールは、P300およびPCAFを標的とするHAT阻害剤である。結果を図2の(c)に示す。
【実施例】
【0115】
図2の(c)に示されているように、上記ガルシノールを添加した培地にて培養した水晶体は、上記ガルシノールを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0116】
[実施例1-4]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび20μMのアナカルド酸(abcam社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、アナカルド酸は、P300およびPCAFを標的とするHAT阻害剤である。結果を図2の(d)に示す。
【実施例】
【0117】
図2の(d)に示されているように、上記アナカルド酸を添加した培地にて培養した水晶体は、上記アナカルド酸を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0118】
[実施例1-5]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび50μMのMG149(Selleckchem社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、MG149は、TIP60およびMOZを標的とするHAT阻害剤である。結果を図2の(e)に示す。
【実施例】
【0119】
図2の(e)に示されているように、上記MG149を添加した培地にて培養した水晶体は、上記MG149を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁がやや低く抑えられていた。
【実施例】
【0120】
[実施例1-6]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのC646(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、C646は、P300/CBPファミリーのHATを標的とするHAT阻害剤である。結果を図3の(a)に示す。
【実施例】
【0121】
図3の(a)に示されているように、上記C646を添加した培地にて培養した水晶体は、上記C646を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0122】
[実施例1-7]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのCPTH2(Cayman社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、CPTH2は、GCN5を標的とするHAT阻害剤である。結果を図3の(b)に示す。
【実施例】
【0123】
図3の(b)に示されているように、上記CPTH2を添加した培地にて培養した水晶体は、上記CPTH2を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0124】
[実施例1-8]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび500μMのブチロラクトン3(abcam社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、ブチロラクトン3は、GCN5を標的とするHAT阻害剤である。結果を図3の(c)に示す。
【実施例】
【0125】
図3の(c)に示されているように、上記ブチロラクトン3を添加した培地にて培養した水晶体は、上記ブチロラクトン3を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0126】
[実施例1-9]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび100μMの没食子酸(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、没食子酸は、非特異的なHAT阻害剤である。結果を図3の(d)に示す。
【実施例】
【0127】
図3の(d)に示されているように、上記没食子酸を添加した培地にて培養した水晶体は、上記没食子酸を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁がやや低く抑えられていた。
【実施例】
【0128】
[実施例1-10]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび50μMの(-)-エピガロカテキンガラート(和光純薬工業社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、(-)-エピガロカテキンガラートは、非特異的なHAT阻害剤である。結果を図3の(e)に示す。
【実施例】
【0129】
図3の(e)に示されているように、上記(-)-エピガロカテキンガラートを添加した培地にて培養した水晶体は、上記(-)-エピガロカテキンガラートを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁がやや低く抑えられていた。
【実施例】
【0130】
[実施例1-11]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび20μMのISOX DUAL(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、ISOX DUALは、CBPおよびBRD4のブロモドメインを標的とするHAT阻害剤である。結果を図4の(a)に示す。
【実施例】
【0131】
図4の(a)に示されているように、上記ISOX DUALを添加した培地にて培養した水晶体は、上記ISOX DUALを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0132】
[実施例1-12]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび2μMのプルンバギン(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、プルンバギンは、P300を標的とするHAT阻害剤である。結果を図4の(b)に示す。
【実施例】
【0133】
図4の(b)に示されているように、上記プルンバギンを添加した培地にて培養した水晶体は、上記プルンバギンを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0134】
[実施例1-13]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび100μMのTH1834(axon medchem社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、TH1834は、TIP60を標的とするHAT阻害剤である。結果を図4の(c)に示す。
【実施例】
【0135】
図4の(c)に示されているように、上記TH1834を添加した培地にて培養した水晶体は、上記TH1834を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0136】
[実施例1-14]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび100μMのSPV106(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、SPV106は、P300/CBPファミリーのHATを標的とするHAT阻害剤である。結果を図4の(d)に示す。
【実施例】
【0137】
図4の(d)に示されているように、上記SPV106を添加した培地にて培養した水晶体は、上記SPV106を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0138】
[実施例1-15]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのWindorphen(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、Windorphenは、非特異的なHAT阻害剤である。結果を図4の(e)に示す。
【実施例】
【0139】
図4の(e)に示されているように、上記Windorphenを添加した培地にて培養した水晶体は、上記Windorphenを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0140】
[実施例1-16]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのRemodelin(Cayman社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、Remodelinは、NAT10を標的とするHAT阻害剤である。結果を図5の(a)に示す。
【実施例】
【0141】
図5の(a)に示されているように、上記Windorphenを添加した培地にて培養した水晶体は、上記Windorphenを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0142】
[実施例1-17]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのエンベリン(abcam社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、エンベリンは、PCAFを標的とするHAT阻害剤である。結果を図5の(b)に示す。
【実施例】
【0143】
図5の(b)に示されているように、上記エンベリンを添加した培地にて培養した水晶体は、上記エンベリンを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0144】
[実施例1-18]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび200μMのEML425(axon medchem社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、EML425は、P300/CBPファミリーのHATを標的とするHAT阻害剤である。結果を図5の(c)に示す。
【実施例】
【0145】
図5の(c)に示されているように、上記EML425を添加した培地にて培養した水晶体は、上記EML425を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0146】
[実施例1-19]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび5μMのCBP30(Cayman社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、CBP30は、P300/CBPファミリーのHATのブロモドメインを標的とするHAT阻害剤である。結果を図5の(d)に示す。
【実施例】
【0147】
図5の(d)に示されているように、上記CBP30を添加した培地にて培養した水晶体は、上記CBP30を添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0148】
[参考例1-1]
左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび0.8μMのTSA(和光純薬工業社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により実験を行った。なお、TSAは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤である。結果を図5の(e)に示す。
【実施例】
【0149】
図5の(e)に示されているように、上記TSAを添加した培地にて培養した水晶体は、上記TSAを添加しない培地にて培養した水晶体と比較して、皮質部の混濁が増加していた。
【実施例】
【0150】
以上の実施例および参考例で観察された現象からは、ヒストンがアセチル化されている程度が白内障の発症に関係しており、ヒストンのアセチル化が阻害されると白内障が予防され、ヒストンの脱アセチル化が阻害されると白内障が促進されることが示唆される。
【実施例】
【0151】
〔実施例2〕
培地に添加するHAT阻害剤(C646)またはHDAC阻害剤(TSA)の濃度を変化させ、水晶体に生じる混濁を定量化した。
【実施例】
【0152】
まず、左眼から摘出した水晶体を、上記M199培地に、30mMのガラクトースおよび40μMのC646(SIGMA社製)を添加した培地にて培養した以外は、実施例1-1と同様の手順により、培養後の水晶体を写した顕微鏡写真を得た。次に、adobe photoshop(登録商標) cs6を利用して、上記顕微鏡写真をグレースケール画像に変換した。次に、左眼の水晶体(HAT阻害剤添加培地にて培養)を写した上記グレースケール画像から、右眼の水晶体(HAT阻害剤無添加培地にて培養)を写した上記グレースケール画像を減算し、輝度を測定した。当該測定によって求められた輝度を、「水晶体の混濁度」として、グラフに示した(図6)。
【実施例】
【0153】
上記実験に加えて、添加するHAT阻害剤の濃度を、20μM、10μMにそれぞれ変更し、同様の手順により水晶体の混濁度を測定した。結果を図6に示した。
【実施例】
【0154】
更に、HAT阻害剤の代わりにHDAC阻害剤を、それぞれ0.8μM、0.4μM、0.2μM添加した培地を用意し、同様の手順により水晶体の混濁度を測定した。結果を図6に示した。
【実施例】
【0155】
本実験結果は、HAT阻害剤が水晶体の混濁を抑制するのに対し、HDAC阻害剤は水晶体の混濁を促進することを示している。
【実施例】
【0156】
〔実施例3〕
6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の左右の眼球から、水晶体を摘出した。左右両眼から摘出した水晶体を、M199培地(SIGMA社製)に30mMのガラクトースを添加した培地にて2日間培養し、糖尿病白内障を発症させたモデルとした。その後、左眼の水晶体を30mMのガラクトースおよび40μMのC646を添加した培地に移した。一方、右眼の水晶体は培地を変更しなかった。培地変更から0日目(培養開始から2日目)、培地変更から2日目(培養開始から4日目)、培地変更から4日目(培養開始から6日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により20倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。それぞれの写真を図7に示す。
【実施例】
【0157】
図7に示されているように、上記C646を添加した培地に移して培養した水晶体は、上記C646を添加しない培地にて培養し続けた水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0158】
以上の結果より、C646には、白内障の治療効果(進行を抑制する効果)があることが示された。
【実施例】
【0159】
〔実施例4〕
マイクロアレイを用いて遺伝子の発現を調査し、HAT阻害剤が白内障を予防または治療するメカニズムを推定した。
【実施例】
【0160】
M199培地(SIGMA社製)、上記M199培地に30mMのガラクトースを添加した培地、上記M199培地に30mMのガラクトースおよび40μMのHAT阻害剤(C646)を添加した培地、並びに、上記M99培地に30mMのガラクトースおよび0.8μMのHDAC阻害剤(TSA)を添加した培地、を用意した。上述したそれぞれの培地にて、6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の眼球から摘出した水晶体を培養した。培養にはインキュベーターを用い、培養温度は37℃、培養期間は4日間であった。
【実施例】
【0161】
4日後、上記水晶体をそれぞれの培地から取り出し、TRIZOL(登録商標)(LifeTechnologies社製)に含浸してからバイオマッシャー(登録商標)(和光純薬工業社製)よって破砕し、RNAを抽出した。なお、詳細なRNAの抽出方法は、TRIZOL(登録商標)の取扱説明書に記載されている。以上の手順にて作製した試料を、マイクロアレイ分析用の試料とした。
【実施例】
【0162】
上記試料に、マイクロアレイ用チップ(Affymetrix社製)を用いて、それぞれの水晶体における遺伝子の発現を調査した。得られたデータはExcel(登録商標)を用いて分析した。分析結果から、HAT阻害剤添加培地で培養した水晶体と、HDAC阻害剤添加培地で培養した水晶体との間で異なる発現量を示した遺伝子を選抜した。具体的には、ガラクトースのみを添加した培地で培養した水晶体における遺伝子の発現量を1とし、以下の条件(i)または(ii)に該当する遺伝子を選抜した。
【実施例】
【0163】
(i)M199培地(コントロール)並びにガラクトースおよびHAT阻害剤を添加した培地における発現量が1.5以上、かつ、ガラクトースおよびHDAC阻害剤を添加した培地における発現量が0.5以下。
【実施例】
【0164】
(ii)M199培地(コントロール)並びにガラクトースおよびHAT阻害剤を添加した培地における発現量が0.5以下、かつ、ガラクトースおよびHDAC阻害剤を添加した培地における発現量が1.5以上。
【実施例】
【0165】
上記条件に該当した遺伝子および当該遺伝子の発現量を、表2に示す。
【実施例】
【0166】
【表2】
JP2018079149A1_000030t.gif
表2に記載の遺伝子のうち、PLK3の挙動から推定される、HAT阻害剤による白内障の予防または治療効果の作用機序の一例が、図1の(a)である。ALDH1A1の挙動から推定される、HAT阻害剤による白内障の予防または治療効果の作用機序の一例が、図1の(b)である。GJA1(Cx43)の挙動から推定される、HAT阻害剤による白内障の予防または治療効果の作用機序の一例が、図1の(c)である。
【実施例】
【0167】
〔実施例5〕
HAT阻害剤の組み合わせによる、白内障の治療効果について検討した。
【実施例】
【0168】
[実施例5-1]
M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を用意した。上記培地にて、6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の左右両眼から摘出した水晶体を、37℃、5%CO条件下で4日間培養し、糖尿病白内障を発症させたモデルとした。
【実施例】
【0169】
その後、左眼の水晶体を、(1)30mMのガラクトース、ならびに(2)CBP30およびCPTH2(共にDMSOに溶解させたもの)を添加した培地に移した。上記培地におけるCPB30の最終濃度は10μM、CPTH2の最終濃度は80μM、DMSOの最終濃度は0.8%であった。一方、右眼の水晶体は、M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を再度調製し、当該培地に移した。培地変更から0日目(培養開始から4日目)、培地変更から2日目(培養開始から6日目)、培地変更から4日目(培養開始から8日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により10倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。その結果を図8の(a)に示す。
【実施例】
【0170】
上記水晶体を、FG(Formalin-Glutaraldehyde)液(Formalin:武藤化学製、Glutaraldehyde:和光純薬工業製)中に、4℃にて3日間浸漬した後、10%ホルマリン液に浸漬した。染色した切片の作製は、新組織化学研究所に依頼した。
【実施例】
【0171】
上記切片をIX70(Olympas社製)により100倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。その結果を図8の(b)に示す。同図において、左側は上記切片の全体像、右側は赤道部近傍の拡大像である。
【実施例】
【0172】
さらに、上述の培養条件を以下の条件に変更した実験を行った。
実験1-1:左眼の水晶体を、30mMのガラクトースおよびCBP30(最終濃度が10μMになるように調製したもの)を添加した培地にて培養した。
実験1-2:左眼の水晶体を、30mMのガラクトースおよびCPTH2(最終濃度が80μMになるように調製したもの)を添加した培地にて培養した。
【実施例】
【0173】
それぞれの実験において、培地変更から0日目(培養開始から4日目)、培地変更から2日目(培養開始から6日目)、培地変更から4日目(培養開始から8日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により10倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。実験1-1の結果を図9の(a)に、実験1-2の結果を図9の(b)に、それぞれ示す。
【実施例】
【0174】
(結果)
図8の(a)に示されているように、CBP30およびCPTH2の組み合わせを添加した培地に移して培養した水晶体は、CBP30およびCPTH2の組み合わせを添加しない培地にて培養し続けた水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。このことは、図8の(b)において、CBP30およびCPTH2の組み合わせを添加した培地に移して培養した水晶体では、皮質部の崩壊が観察されないことからも判る。
【実施例】
【0175】
また、図8の(a)と、図9の(a)および(b)とを比較すると、CBP30およびCPTH2の組み合わせを添加した培地に移して培養した水晶体は、CBP30またはCPTH2の一方のみを添加した培地に移して培養した水晶体よりも、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0176】
以上の結果より、CBP30およびCPTH2の組み合わせには、白内障の治療効果(進行を抑制する効果)があることが示された。さらに、上記治療効果は、CBP30またはCPTH2のみによる白内障の治療効果よりも、顕著に優れたものであった。
【実施例】
【0177】
[実施例5-2]
M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を用意した。上記培地にて、6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の左右両眼から摘出した水晶体を、37℃、5%CO条件下で3日間培養し、糖尿病白内障を発症させたモデルとした。
【実施例】
【0178】
その後、左眼の水晶体を、(1)30mMのガラクトース、ならびに(2)C646およびCPTH2(共にDMSOに溶解させたもの)を添加した培地に移した。上記培地におけるC646の最終濃度は40μM、CPTH2の最終濃度は80μM、DMSOの最終濃度は0.8%であった。一方、右眼の水晶体は、M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を再度調製し、当該培地に移した。培地変更から0日目(培養開始から3日目)、および培地変更から3日目(培養開始から6日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により10倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。その結果を図10の(a)に示す。
【実施例】
【0179】
また、上述の培養条件を以下の条件に変更した実験を行った。実験2-1の結果を図11の(a)に、実験2-2の結果を図11の(b)に、それぞれ示す。
実験2-1:左眼の水晶体を、30mMのガラクトースおよびC646(最終濃度が40μMになるように調製したもの)を添加した培地にて培養した。
実験2-2:左眼の水晶体を、30mMのガラクトースおよびCPTH2(最終濃度が80μMになるように調整したもの)を添加した培地にて培養した。
【実施例】
【0180】
それぞれの実験において、培地変更から0日目(培養開始から3日目)、および培地変更から3日目(培養開始から6日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により10倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。実験2-1の結果を図11の(a)に、実験2-2の結果を図11の(b)に、それぞれ示す。
【実施例】
【0181】
(結果)
図10に示されているように、C646およびCPTH2の組み合わせを添加した培地に移して培養した水晶体は、C646およびCPTH2の組み合わせを添加しない培地にて培養し続けた水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0182】
また、図10と、図11の(a)および(b)とを比較すると、C646およびCPTH2の組み合わせを添加した培地に移して培養した水晶体は、C646またはCPTH2の一方のみを添加した培地に移して培養した水晶体よりも、皮質部の混濁が低く抑えられていた。
【実施例】
【0183】
以上の結果より、C646およびCPTH2の組み合わせには、白内障の治療効果(進行を抑制する効果)があることが示された。さらに、上記治療効果は、C646またはCPTH2のみによる白内障の治療効果よりも、顕著に優れたものであった。
【実施例】
【0184】
〔実施例6〕
in vivo条件において、HAT阻害剤による白内障の予防効果を検討した。
【実施例】
【0185】
3週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)を、ガラクトース25%を含有させた餌を摂餌させながら3日間飼育して、白内障を発症させた。4日目の摂餌前に、上記SDラットの、左眼の前房内には5mMのC646(100%のDMSOに溶解させたもの)を、右眼の前房内には100%のDMSOを、それぞれ2μLずつ注入した。注入には、マイクロシリンダー(伊藤製作所製、イトー マイクロシリンジ MS-NE05)に33Gの注射針(テルモ製)を組み合わせた器具を用いた。以上の実験手法の概要を、図12の(a)に示す。
【実施例】
【0186】
注入から3日後、左右両眼から水晶体を摘出し、SZX12(Olympas社製)により10に拡大した顕微鏡写真を撮影した。その結果を図12の(b)に示す。なお、前房内への注入を行ったのは1回のみであった。また、注入後も、ガラクトース25%を含有させた餌を摂餌させ続けた。
【実施例】
【0187】
(結果)
図12の(b)に示されているように、C646の注入により、in vivo条件においても皮質部の混濁が低く抑えられていた。このことは、HAT阻害剤の白内障の予防効果(進行を抑制する効果)を、より強く示唆している。
【実施例】
【0188】
〔実施例7〕
M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を用意した。上記培地にて、6週齢のSDラット(三協ラボサービス社製)の左右両眼から摘出した水晶体を、37℃、5%CO条件下で3日間培養し、糖尿病白内障を発症させたモデルとした。
【実施例】
【0189】
その後、左眼の水晶体を、30mMのガラクトース、およびTH1834(DMSOに溶解させたもの)を添加した培地に移した。上記培地におけるTH1834の最終濃度は50μM、DMSOの最終濃度は0.8%であった。一方、右眼の水晶体は、M199培地(SIGMA社製)に、30mMのガラクトース、およびDMSO(最終濃度が0.8%になるように調製したもの)を添加した培地を再度調製し、当該培地に移した。培地変更から0日目(培養開始から3日目)、および培地変更から3日目(培養開始から6日目)に、上記水晶体をそれぞれ培地から取り出し、SZX12(Olympas社製)により10倍に拡大した顕微鏡写真を撮影した。その結果を図13に示す。
【実施例】
【0190】
(結果)
図13に示されているように、TH1834を添加した培地に移して培養した水晶体は、TH1834を添加しない培地にて培養し続けた水晶体と比較して、皮質部の混濁が低く抑えられていた。このことから、TH1834は、一剤のみで白内障の治療効果を有していることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、白内障の予防剤または治療剤に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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