TOP > 国内特許検索 > がん治療装置 > 明細書

明細書 :がん治療装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年6月27日(2019.6.27)
発明の名称または考案の名称 がん治療装置
国際特許分類 A61N   2/04        (2006.01)
FI A61N 2/04
国際予備審査の請求
全頁数 32
出願番号 特願2018-552621 (P2018-552621)
国際出願番号 PCT/JP2017/042029
国際公開番号 WO2018/097185
国際出願日 平成29年11月22日(2017.11.22)
国際公開日 平成30年5月31日(2018.5.31)
優先権出願番号 2016228164
優先日 平成28年11月24日(2016.11.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】石川 義弘
【氏名】梅村 将就
【氏名】秋本 大輔
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100192555、【弁理士】、【氏名又は名称】榮野 隼一
【識別番号】100093861、【弁理士】、【氏名又は名称】大賀 眞司
【識別番号】100129218、【弁理士】、【氏名又は名称】百本 宏之
審査請求
テーマコード 4C106
Fターム 4C106AA05
4C106BB25
4C106CC03
4C106EE04
4C106FF12
要約 患部組織に印加する100kHzから300kHzの磁場を発生する磁場発生器を備えるがん治療装置である。
特許請求の範囲 【請求項1】
患部組織に印加する100kHzから300kHzの磁場を発生する磁場発生器を備えるがん治療装置。
【請求項2】
前記磁場発生器に供給する電流を制御する制御モジュールと、
前記制御モジュールの出力に基づき前記磁場発生器に交流電流を供給する電源とをさらに備え、
前記制御モジュールは、
前記患部組織のがん種の入力を受け付けるがん種入力部と、
がん種に対応する周波数が格納される記憶部と、
前記記憶部を参照して前記がん種入力部に入力されるがん種に対応する周波数を前記電源に設定するコントローラとを備える、請求項1に記載されるがん治療装置。
【請求項3】
前記記憶部には、がん種に対応する印加時間がさらに格納され、
前記コントローラは、前記記憶部を参照して前記がん種入力部に入力されるがん種に対応する印加時間の情報を前記電源に出力する、請求項2に記載されるがん治療装置。
【請求項4】
前記電源から前記磁場発生器への交流電流の供給を開始する電源スイッチをさらに備える、請求項2または請求項3に記載されるがん治療装置。
【請求項5】
前記制御モジュールは、前記患部組織の温度をがん細胞の殺傷温度未満に制御する、請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載されるがん治療装置。
【請求項6】
前記がん種入力部は、神経膠芽腫と悪性黒色腫と舌がんと乳がんと悪性中皮腫と膵がんとヒト肺胞基底上皮腺がんとからなる群から一つのがん種を選択して入力できる請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載されるがん治療装置。
【請求項7】
前記患部組織はヒトの患部組織である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載されるがん治療装置。
【請求項8】
前記記憶部に格納される前記印加時間が、30分以上180分以下の範囲内の値で構成される、請求項3に記載されるがん治療装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、交流磁場を患部組織に印加してがん細胞の増殖を抑制するがん治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高悪性度のがんの治療装置として、患部組織に電場を適用する装置が提案される。特許文献1では、AC電源と、前記AC電源に動作可能に接続され、各々が患者の身体に配置されるように構成された表面を有する複数の絶縁された電極とを含む、患者の目標領域内に配置された急速に分裂する細胞を、選択的に破壊する、またはその成長を抑制するための装置であって、前記電極が患者の身体に配置された場合に、第1の周波数を有する第1のAC電界と第2の周波数を有する第2のAC電界が、前記患者の前記目標領域に時間的に順次、印加されるように、前記AC電源と前記電極が構成され、前記第1の周波数と前記第2の周波数が異なっており、前記第1と第2の電界が急速に分裂する細胞の脆弱性に対応する周波数特性を有し、細胞分裂の後期段階の末期または終期段階に際して、その長軸が前記電界の力線と整列された、前記急速に分裂する細胞の重要な部分を損傷させるために、前記第1と第2の電界が十分に強いものであり、かつ前記第1と第2の電界が前記目標領域内に配置された非分裂細胞を変化させないことを特徴とする装置が開示される。
【0003】
また特許文献2では、標的領域(1620)の内部に位置する寄生生物の増殖を選択的に破壊もしくは阻害するインビトロの方法であって、前記標的領域(1620)にAC電界を容量結合する工程と、前記標的領域(1620)の内部で前記寄生生物の治療的に有意な部分が死滅するまで前記結合工程を繰り返す工程とを備え、前記電界の周波数が0.1MHzと20MHzとの間であり、前記標的領域(1620)の少なくとも一部における前記電界の強度が0.5V/cmと10V/cmとの間であり、前記電界が前記標的領域(1620)の内部に位置する前記寄生生物の有意な部分を損傷もしくは崩壊させ、前記標的領域(1620)の内部に位置する非分裂細胞を実質的に無傷のまま残すことを特徴とする方法が提案される。
【0004】
しかし患部に電場を適用するがん治療装置では、装置の電極部を装着するために患部を剃毛する必要がある。加えて電極部の装着時間が長く、18時間以上の装着を要する場合もある。また装着時間中に患者が移動する場合には、重い電源の運搬を強いられる。上記のがん治療装置の使用の現状に鑑み、治療効果だけでなく、患者の負担が少ない緩解療法に適したがん治療装置が求められる。
【0005】
他のがん治療装置として、特許文献3により、生体活性な無機質層で包まれている強磁性を示すフェライト粒子であって、体内に埋入されたとき周囲の組織と極めて優れた親和性を示し、しかも交流磁場下で効率の高い磁気誘導発熱を示すことを特徴とする温熱療法用セラミックス発熱体が提案される。また特許文献4では、患部を挟持する位置に離間距離調整自在に対向設置された交流磁場発生用の磁極対と、該磁極対に交流磁場を印加するための磁場印加部と、前記交流磁場を制御するための磁場制御モジュールとから構成されることを特徴とするがん治療装置が開示される。
【0006】
特許文献3や特許文献4に挙げる発明は、長期間体内に埋入し、その温熱効果によってがん治療を目指すものである。しかし具体的ながん細胞の増殖抑制効果については開示されていない。そのため磁場適用によるがん治療が一層研究され、その成果により悪性度の高いがん細胞種に対しても画期的な効果を発揮するがん治療装置が確立されることが望まれる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】日本国特許第4750784号公報
【特許文献2】日本国特許第5485153号公報
【特許文献3】日本国特開平2-88059号公報
【特許文献4】日本国特開平3-158176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、緩解療法に適した低コストのがん治療装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる第1の態様のがん治療装置は、患部組織に印加する100kHzから300kHzの磁場を発生する磁場発生器を備える。本発明は、患部組織と磁場発生器とを対向させ100kHzから300kHzの磁場を印加するがん治療装置である。本発明は、磁場発生器から患部組織に磁場を印加することにより、がん細胞の増殖を抑制できる。本発明の磁場発生器は、患部と非接触状態でも本発明所定の作用効果を得るために必要な磁場を患部に印加できる。そのため、本発明は患部組織と磁場発生器とを非接触状態で対向させて用いることが好ましい。なお磁場発生器における磁場発生時の温度は、およそ30℃以上39℃以下であるため、患部組織と磁場発生器とが接触しても患部組織の治療を安全に行える。したがって本発明は患部組織と磁場発生器とを接触状態で対向させて用いることもできる。
【0010】
本発明は、磁場発生器に供給する電流を制御する制御モジュールと、制御モジュールの出力に基づき磁場発生器に交流電流を供給する電源とをさらに備え、制御モジュールは、患部組織のがん種の入力を受け付けるがん種入力部と、がん種に対応する周波数が格納される記憶部と、記憶部を参照してがん種入力部に入力されるがん種に対応する周波数を電源に設定するコントローラとを備える、請求項1に記載されるがん治療装置を包含する。
【0011】
本発明は、がん種に対応する印加時間がさらに格納され、コントローラは、記憶部を参照してがん種入力部に入力されるがん種に対応する印加時間の情報を電源に出力するがん治療装置を包含する。これにより本発明は、操作者による印加時間の入力を簡略化でき、患者の負担軽減に寄与する。本発明は、電源から磁場発生器への交流電流の供給を開始する電源スイッチを備えるがん治療装置を包含する。本発明は、患部組織の温度をがん細胞の殺傷温度未満に制御するがん治療装置を包含する。そのためがん細胞の殺傷温度未満で、がん細胞の増殖を抑制できる。本発明は、患部組織がヒトの患部組織であるがん治療装置を包含する。
【0012】
本発明は、神経膠芽腫と悪性黒色腫と舌がんと乳がんと悪性中皮腫と膵がんとヒト肺胞基底上皮腺がんとからなる群から一つのがん種を選択して入力できるがん種入力部を備えるがん治療装置を包含する。がんの治療では、がん種により治療効果を得るために好適な交流磁場条件が異なる。本発明は、治療対象のがん種に適した周波数や印加時間を直感的に入力でき、操作者の負担軽減に寄与する。
【0013】
本発明においては、印加時間が、30分以上180分以下の範囲内の値で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、がん細胞の増殖抑制に好適な特定の交流磁場を患部組織に印加できる。本発明は、患部組織に印加する磁場発生器は非接触性であり得る。印加時間は短く、加えて装置は軽量である。そのため、本発明は緩解療法に適する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のがん治療装置の例の概念図である。
【図2】本発明のがん治療装置のフローチャートの例である。
【図3】本発明のがん種入力部の例である。
【図4】本発明の磁場発生器に用いられるコイルの形状例である。
【図5】本発明の適用例である。
【図6】本発明の実施例の磁場発生器における磁束密度のシミュレーション結果である。
【図7】本発明の実施例を適用した正常細胞の観察結果である。
【図8】本発明の実施例によるがん細胞増殖抑制効果の観察結果である。
【図9】本発明の実施例によるがん細胞増殖抑制効果の観察結果である。
【図10】本発明の実施例によるがん細胞増殖抑制効果の観察結果である。
【図11】本発明の実施例によるがん細胞増殖抑制効果の観察結果である。
【図12】本発明の実施例を適用したがん細胞の観察結果である。
【図13】本発明の実施例を適用したがん細胞の観察結果である。
【図14】本発明の実施例を適用した腫瘍モデルの観察結果である。
【図15】本発明の実施例による腫瘍の体積変化の観察結果である。
【図16】本発明の実施例による腫瘍の体積変化の観察結果である。
【図17】本発明のがん種入力部の例である。
【図18】本発明の実施例による腫瘍モデルの観察結果である。
【図19】本発明の実施例による腫瘍の体積変化の観察結果である。
【図20】本発明の実施例によるがん細胞増殖抑制効果の観察結果である。
【図21】本発明の実施例による腫瘍の体積変化の観察結果である。
【図22】本発明の実施例による腫瘍の体積変化の観察結果である。
【図23】本発明の実施例による全生存率の観察結果である。
【図24】本発明の実施例による副作用の観察結果である。
【図25】本発明の実施例による副作用の観察結果である。
【図26】本発明の実施例による副作用の観察結果である。
【図27】本発明のがん治療装置の別の例の概念図である。
【図28】本発明のがん治療装置のさらに別の例の概念図である。
【図29】本発明の実施例による活性酸素の観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態を図1と図2とを用いて説明する。図1は、本発明のがん治療装置の例の概念図である。図2は、本発明のがん治療装置のフローチャートである。図1(a)において、100はがん治療装置、200は磁場発生器、300は電源、400は制御モジュールである。磁場発生器200は不図示の冷却機構、たとえば冷却ファンを備え、磁場発生器200の温度を適切に保っている。

【0017】
図1(b)は、図1(a)に示す制御モジュール400を説明する概念図である。401はがん種入力部、402は電源スイッチ、403は第一の入力部、404は第二の入力部、501はコントローラ、502はメモリ、503は第一の出力部、504はタイマ、505は第二の出力部である。制御モジュール400は、不図示の中央演算装置であるCPU、読み込み専用の記憶領域であるROM、および読み書き可能なRAMを備え、CPUがROMに格納されるプログラムをRAMに展開して実行することにより後述する動作を実現する。ただし制御モジュール400はハードウエア回路により後述する動作を実現してもよい。

【0018】
図2では、周波数パラメータと印加時間パラメータとを組み合わせたがん種パラメータを設定して磁場を印加する例を説明する。本発明を起動し、疾病名やがん種を選択しがん種入力部401に入力することにより、メモリ502に保存される周波数パラメータと印加時間パラメータとを呼び出し、所望の周波数と印加時間を設定できる。がん種入力部の例を図3に示す。図3では、疾病名の欄ががん種入力部401に相当する。がん種入力部401には、操作者の利便性の観点から疾病名を表示することが好ましいが、これに限定されず、がん種等を表示してもよい。

【0019】
図3において周波数と印加時間との欄に示される数値は、疾病名やがん種に対応する好適な値が関連付けられるため、がん種入力部に表示しなくてもよい。ただし本発明は、これらの値を視認できる箇所に表示する形態を排除しない。なおがん種入力部における入力を行う機構は、キーボードやマウス等のデバイス、タッチパネル等によることが好ましい。

【0020】
また同一の疾病名に対し、複数の印加形態を設定できるようにする場合は、図3に例示するように、疾病名にモード名を付すことも好ましい。以下の説明では、「神経膠芽腫 モード2」を設定する形態を例とする。

【0021】
がん種入力部401で「神経膠芽腫 モード2」と入力する(S610)と、第一の入力部403を介してメモリ502から、周波数227kHzと1回あたりの印加時間30分間とを組み合わせたがん種パラメータが呼び出され、それぞれ当該磁場印加における周波数Nと印加時間Tdとが設定される(S620)。磁場発生器200に患部を対向させた後、電源スイッチ402をONに切り替えると第二の入力部404と第一の出力部503とを介して電源300から磁場発生器200へ、周波数227kHzで交流電流を供給することが電源300に伝達され、電流供給が開始される(S630)。これにより磁場発生器200から患部組織への交流磁場の印加が開始される。なお電流供給開始と同時に、タイマ504による電流供給開始からの経過時間Tvの計測が開始される(S640)。経過時間Tvと印加時間Td(本形態例では30分間)とが等しくなるまで、言い換えればTv≠Tdである間は、電流供給が継続される(S660)。電流供給開始から30分経過後、すなわち経過時間Tvと印加時間Tdとが等しくなった(Tv=Td)とき(S670)、第二の出力部505を介して印加時間を満了したことが電源300へ伝達され、磁場発生器200への電流の供給が停止され、患部への磁場の印加を終了する(S680)。電流の供給停止は、装置内に強制的に供給を停止する機構を設けてもよく、アラーム等の通知手段を設けて手動で供給を停止してもよい。

【0022】
本発明でメモリに保存される周波数パラメータは、100kHz以上300kHz以下の範囲内の値が好ましい。100kHz未満の場合、印加しても有意ながん細胞増殖抑制効果を得られない。300kHzを超える場合、効果が減弱する可能性がある。また、磁場発生器の温度が300kHz以下の場合と比較して高くなる可能性がある。がん細胞増殖抑制効果が表れやすい周波数は、磁場印加対象のがん種によって異なる。神経膠芽腫、悪性黒色腫、舌がん、乳がん、悪性中皮腫に対する周波数パラメータとしてメモリに格納する値の例としては、50kHzごと、すなわち100kHz、150kHz、200kHz、250kHz、300kHzのように等間隔に分散させた値を格納できる。または196kHz、227kHz、280kHz、389kHzのように特定の値を格納してもよいし、がん種ごとの所定の周波数を基準として、非等間隔に各パラメータを分散させて格納してもよい。例えば最好適値付近では間隔を比較的小さくし、最大値付近や最小値付近では間隔を比較的大きくするような形態である。

【0023】
本発明でメモリに保存される印加時間パラメータは、30分以上180分以下の範囲内の値が好ましい。30分未満の場合、磁場を印加しても有意ながん細胞増殖抑制効果を得られない。本発明は、30分以上用いれば、印加時間が180分以下であっても有意ながん細胞増殖抑制効果を得られる。したがって本発明を使用する場合、長時間患部に磁場を印加する必要がなく、患者の負担を軽減できる。加えて本発明は患者ひとり当たりの使用時間が短いため、1台の本発明を1日に複数の患者が交代で使用できる。また本発明は患部組織を磁場発生器に接触させない状態で使用できるため、使用者が交代するときに行われる衛生上のメンテナンスが簡便である。その結果、本発明は低コスト化に寄与する。

【0024】
がん細胞増殖抑制効果が好適に表れる印加時間は、がん種や周波数により異なる。神経膠芽腫と悪性黒色腫と舌がんと乳がんと悪性中皮腫とに対する印加時間パラメータとしてメモリに格納する場合、30分、45分、60分、120分、180分のように格納する例が挙げられる。周波数と印加時間とは個別に設定してもよい。その場合、周波数を設定するための第一のがん種入力部と印加時間を設定するための第二のがん種入力部を設けてもよい。その場合、第一と第二とのがん種入力部の入力により、メモリの周波数パラメータと印加時間パラメータとが個別に呼び出され、所定の周波数と印加時間とがそれぞれ設定される。本発明の利便性を高める観点からは、図3を用いて説明したとおり、がん種パラメータとして周波数と印加時間とを組み合わせて設定することが好ましい。

【0025】
また本発明は、腫瘍の大きさや、進行具合、患者の全身状態等の使用者の状態に対応させて、印加回数を設定することも好ましい。そのため本発明はメモリに印加回数パラメータを保存し、がん種入力部の入力により印加回数を設定できる構成にすることも好ましい。またがん種パラメータを、印加回数パラメータと周波数パラメータと印加時間パラメータとの組合せとすれば、一度の入力で、周波数や印加時間だけでなく、印加回数も設定できる。これにより本発明は磁場印加スケジュールの誤りを防止でき、使用者の操作負担を一層軽減できる。

【0026】
本発明における印加回数は1日1回が好ましく1週間あたり1日でもよく、連続する5日以上とすることも好ましい。例えば印加回数を連続する5日と設定する場合、本発明による磁場印加は、印加開始日を第1日目として、第1日目から第5日目まで毎日1回行われ、第6日目と第7日目とは印加しないこととできる。本発明は1回あたりの印加時間が短いため、印加回数が増加しても使用者の負担になり難い。また印加回数の定義は、1週間あたりの回数に限定されない。すなわち5日間あたり、2週間あたり等の周期で印加回数を設定してもよい。

【0027】
本発明の磁場発生器にはコイルを用いることが好ましい。コイルの形状は、らせん型、板型等を例示できる。図4は、本発明の磁場発生器に用いられるコイルの形状例である。図4において、図4(a)は金属線をらせん状に成型したらせん型コイル、図4(b)は金属線を渦巻き状に成型した板型コイル、図4(c)は図4(b)に図示する板型コイルを2つ並べたダブル板型コイルである。いずれの形状のコイルを用いる場合も、本発明は、磁場発生器と患部組織とを接触させずに磁場を印加してがん細胞の増殖を抑制できる。

【0028】
本発明の磁場発生器は、単一の形状のコイルを固定させた構成でもよいが、複数の形状のコイルを取り替え可能な構成とすることが好ましい。これにより、患部が、頭部と四肢と胴部とこれら以外の部位とのいずれであるかにより、患部の部位に好適な形状のコイルを選択して取り付けた磁場発生器にすることができる。その結果、磁場を患部に一層効率的に印加することができる。本発明は、患部組織に対向させて非接触で使用できる。加えて、磁場発生器が取り換え可能なコイルを備えることにより、一層汎用性を高くできる。また磁場発生器に固定するコイルは、複数の特性の異なるコイルを組み合わせたものでもよい。図5は、本発明の適用例である。図5では、胴体部に患部がある個体(マウス)に、らせん型コイルを備える磁場発生器を対向させて交流磁場を印加する形態を図示した。

【0029】
なお制御モジュール400が電源スイッチ402やタイマ504を備えなくてもよい。この場合は制御モジュール400の構成は図27に示すものになり、制御モジュール400第二の入力部404および第二の出力部505も備えなくてもよい。この場合は、電源300へ供給する電力をがん治療装置100の外部から制御することで、制御モジュール400が電源スイッチ402やタイマ504を備える場合と同様の動作を実現できる。また制御モジュール400は、電源スイッチ402およびタイマ504のうち一方を備えなくてもよい。ただし制御モジュール400が電源スイッチ402を備える場合は第2の入力部404も併せて備えられ、制御モジュール400が第2の入力部404を備える場合は第2の出力部505も併せて備えられる。

【0030】
さらにがん治療装置100は、制御モジュール400を備えず、磁場発生器200が100kHz~300kHzのいずれかの固定された周波数で磁場を発生する構成としてもよい。この場合のがん治療装置100の構成は図28に示すものとなる。さらに磁場発生器200が発生する磁場の周波数は200kHz~300kHzとしてもよい。

【0031】
また制御モジュール400は、患部組織の温度をがん細胞の殺傷温度未満に制御してもよい。具体的には、がん細胞の殺傷温度として40℃~43℃の温度域が周知なので制御モジュール400は、患部組織の温度を40度未満に制御してもよい。この場合に制御モジュール400は、あらかじめ作成したデータベースを参照することで、磁場を印加する条件、およびがん種ごとに連続して磁場を照射してもよい時間を特定し、照射する時間、すなわちタイマ504に設定される時間をデータベースから得られる時間未満とする。
【実施例】
【0032】
本発明を、磁場発生器として、銅製らせん型コイル(らせん部内径4cm、らせん部外径5cm、要素数430,998/節点数 137,055、Conductivity:1.673e-8(ohm m))を用いた実施例を用いて説明する。特に説明しない限り、当該磁場発生器に供給した電流は、250Aである。当該実施例を実施例1とする。しかし本発明は、その作用効果を発揮する限り、実施例1に限定されない。
【実施例】
【0033】
[1. 実施例1の磁束密度]
図6は、実施例1の磁場発生器における磁束密度のシミュレーション結果である。図6(a)に図示する状態で磁場発生器のコイル600のらせん部内径面601に個体(マウス)の胴部を対向させ、電流335.4A、周波数280kHzで印加したときの磁束密度を図6(b)に示した。図6(b)のx軸に示す距離は、図6(a)で示すコイル600のらせん部内径面601、すなわち0mm面からのらせん軸心側への垂直距離である。図6(b)のx軸において5mmとは、図6(a)で図示されるように0mm面から、らせん軸心側(内側)へ5mm離れた領域であることを意味する。下記の磁束密度の測定条件により磁束密度をシミュレーションした結果、図6(b)に示すように距離が離れることによる磁束密度の低下への影響はなだらかであり、当該領域の磁束密度は21mTであると分かった。本発明の磁場発生器を患部組織に非接触状態で対向させる場合には、必ずしも磁場発生器と患部組織との距離を厳密に管理する必要はなく、仮に磁束密度を21mT以上確保する必要がある場合にはコイルの内径面から5mm以内の領域で患部組織に磁場が印加されるように対向させることが好ましい。
<磁束密度の測定条件>
Simulation Software:JMAG Designer 14.1
Solver:3D FEM (Finite Element Method、有限要素法)
Simulation Type:Magnetic Field Analysis (Frequency Response、周波数応答)
【実施例】
【0034】
[2. がん細胞増殖抑制効果の確認]
正常細胞とがん細胞とについて、実施例1のがん細胞増殖抑制効果を観察した。印加は、該当する細胞を播種したシャーレをコイルのらせん部内側に載置して行った。
【実施例】
【0035】
[2.1 正常細胞]
図7は、実施例1を適用した正常細胞としてのヒト星状細胞(NHA細胞)の観察結果である。ヒト星状細胞としてはLonza group, Ltd.から購入したものを用いた。図7 (a)は、交流磁場を印加せずに24時間、細胞培養を行った場合(比較例1-07a)の撮像である。図7(b)は、交流磁場を周波数196kHzで30分間印加後、24時間、細胞培養を行った場合(実施例1-07b)の撮像である。図7(c)~(e)(実施例1-07c~実施例1-07e)は図7(b)の条件から周波数のみをそれぞれ227kHz、280kHz、389kHzとした撮像である。実施例1-07b~実施例1-07eと比較例1-07aとは、いずれも下記の培養条件1により細胞を培養した。図7(a)~図7(e)は、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
<培養条件1>
Sigma社製のCalcein-AM(生細胞の染色)とpropidium iodide(核を染色し死細胞確認)とを用いた染色1x105cells/4cm dishを播種し、24時間培養した。
【実施例】
【0036】
図7(f)は細胞培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。死細胞数は、蛍光顕微鏡での細胞数カウントである。図7(f)に示す5つのデータはそれぞれ図7(a)~図7 (e) に対応している。具体的には1番目の「CTRL」は図7(a)で説明した細胞培養(比較例1-07a)に基づくデータであり、2番目の「196kHz」は図7(b)で説明した細胞培養(実施例1-07b)に基づくデータであり、3番目の「227kHz」は図7(c)で説明した細胞培養(実施例1-07c)に基づくデータであり、4番目の「280kHz」は図7(d)で説明した細胞培養(実施例1-07d)に基づくデータであり、5番目の「389kHz」は図7(e)で説明した細胞培養(実施例1-07e)に基づくデータである。
【実施例】
【0037】
図7に示されるように、ヒト星状細胞(正常細胞)に対して実施例1を用いても、有意の細胞増殖抑制効果は確認できなかった。これにより本発明による正常細胞の増殖抑制効果は、がん細胞の増殖抑制効果に比べて非常に低いことを確認できた。
【実施例】
【0038】
[2.2 がん細胞]
がん細胞についての実施例1の本発明のがん細胞増殖抑制効果の確認実験は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)と、ヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)と、ヒト舌がん(扁平上皮腫)細胞(OSC-19)と、ヒト乳がん細胞(MCF7)と、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)とについて行った。当該確認実験では、交流磁場transistor inverter (Hot Shot, Ameritherm Inc., New York, U.S.A.)を用いた。コイルは上記のとおりである。
【実施例】
【0039】
[2.2.1 ヒト神経膠芽腫細胞(U87)]
図8は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)についての実施例1による細胞増殖抑制効果の観察結果である。ヒト神経膠芽腫細胞(U87)としては、Human GB cell line U87細胞を、American Type Culture Collection (ATCC) (Virginia, U.S.A.)から購入したものを用いた。図8(a)は、交流磁場を印加せずに細胞培養を行った場合(比較例1-08a)の撮像である。図8(b)は、交流磁場を周波数196kHzで30分間印加後、細胞培養を行った場合(実施例1-08b)の撮像である。図8(c)~(e)(実施例1-08c~実施例1-08e)は図8(b)の条件から周波数のみをそれぞれ227kHz、280kHz、389kHzとした撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、図8(a) ~図8(e)とは、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
【実施例】
【0040】
図8(f)は細胞培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。図8(f)に示す5つのデータはそれぞれ図8(a)~図8 (e) に対応している。具体的には1番目の「CTRL」は図8(a)で説明した細胞培養(比較例1-08a)に基づくデータであり、2番目の「196kHz」は図8(b)で説明した細胞培養(実施例1-08b)に基づくデータであり、3番目の「227kHz」は図8(c)で説明した細胞培養(実施例1-08c)に基づくデータであり、4番目の「280kHz」は図8(d)で説明した細胞培養(実施例1-08d)に基づくデータであり、5番目の「389kHz」は図8(e)で説明した細胞培養(実施例1-08e)に基づくデータである。死細胞数は上記のヒト星状細胞の場合と同様に計測した。
【実施例】
【0041】
図8に示されるように、実施例1を用いて周波数196kHz(実施例1-09c)、227kHz(実施例1-09d)、280 kHz(実施例1-09e)で磁場を印加することにより、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の死細胞数の有意な増加が認められた。これにより、本発明にはヒト神経膠芽腫細胞(U87)の増殖抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0042】
[2.2.2 ヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)]
図9は、ヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)についての実施例1による細胞増殖抑制効果の観察結果である。ヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)としては、ATCCから購入したものを用いた。図9(a)は、交流磁場を印加せずに細胞培養を行った場合(比較例1-09a)の撮像である。図9(b)ないし図9(e)は、それぞれ交流磁場を図9(b)は周波数196kHz(実施例1-09b)で、図9(c)は周波数227kHz(実施例1-09c)で、図9(d)は周波数280kHz(実施例1-09d)で、図9(e)は389kHz(実施例1-09e)で、いずれも30分間交流磁場を印加後、細胞培養を行った場合の撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、図9(a)ないし図9(e)は、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
【実施例】
【0043】
図9(a)に示す5つのデータは、それぞれ図9(a)ないし図9(e)(比較例1-09aおよび実施例1-09bないし実施例1-09e)に対応する培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。死細胞数は上記のヒト星状細胞の場合と同様に計測した。
【実施例】
【0044】
図9に示されるようにヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)では、実施例1を用いて227kHz(実施例1-09d)、280 kHz(実施例1-09e)で磁場を印加したときに、それぞれ死細胞数の有意な増加が認められた。これにより本発明にはヒト悪性黒色腫細胞(SK-MEL-24)の増殖抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0045】
[2.2.3 ヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)]
図10は、ヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)についての実施例1による細胞増殖抑制効果の観察結果である。ヒト舌がん細胞(OSC-19)としては、The Health Science Research Resources Bank (Japan Health Sciences Foundation, Tokyo, Japan)から購入したものを用いた。図10(a)は、交流磁場を印加せずに細胞培養を行った場合(比較例1-10a)の撮像である。図10(b)ないし図10(e)は、それぞれ交流磁場を図10(b)は周波数196kHz(実施例1-10b)で、図10(c)は周波数227kHz(実施例1-10c)で、図10(d)は周波数280kHz(実施例1-10d)で、図10(e)は389kHz(実施例1-10e)で、いずれも30分間印加後、細胞培養を行った場合の撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、図10(a)ないし図10(e)は、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
【実施例】
【0046】
図10(e)に示す5つのデータは、それぞれ図10(a)ないし図10(e)(比較例1-10aおよび実施例1-10bないし実施例1-10e)に対応する培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。死細胞数は上記のヒト星状細胞の場合と同様に計測した。
【実施例】
【0047】
図10に示されるようにヒト舌がん細胞(OSC-19)では、実施例1を用いて周波数196kHz(実施例1-10b)と、227kHz(実施例1-10c)とで磁場を印加したときに、それぞれの死細胞数の有意な増加が認められた。これにより本発明には、ヒト舌がん細胞(OSC-19)の増殖抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0048】
[2.2.4 ヒト乳がん細胞(MCF7)]
図11は、ヒト乳がん細胞(MCF7)についての実施例1による細胞増殖抑制効果の観察結果である。ヒト乳がん細胞(MCF7)としては、ATCCから入手したものを用いた。図11(a)は、交流磁場を印加せずに細胞培養を行った場合(比較例1-11b)の撮像である。図11(b)ないし図11(e)は、それぞれ交流磁場を図11(b)は周波数196kHz(実施例1-11b)で、図11(c)は周波数227kHz(実施例1-11c)で、図11(d)は周波数280kHz(実施例1-11d)で、図11(e)は389kHz(実施例1-11e)で、いずれも30分間交流磁場を印加後、細胞培養を行った場合の撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、図11(a)ないし図11(e)は、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
【実施例】
【0049】
図11(a)に示す5つのデータは、それぞれ図11(a)ないし図11(e)(比較例1-11aおよび実施例1-11bないし実施例1-11e)に対応する培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。死細胞数は上記のヒト星状細胞の場合と同様に計測した。
【実施例】
【0050】
図11に示されるようにヒト乳がん細胞(MCF7)では、実施例1を用いて周波数196kHz(実施例1-11c)、227kHz(実施例1-11d)で磁場を印加したときに、それぞれの死細胞数の有意な増加が認められた。これにより本発明には、乳がん細胞(MCF7)の増殖抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0051】
[2.2.5 ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)]
図20は、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)についての実施例1による細胞増殖抑制効果の観察結果である。ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)としては、ATCCから入手したものを用いた。図20(a)は、交流磁場を印加せずに細胞培養を行った場合(比較例1-20a)の撮像である。図20(b)ないし図12(e)は、それぞれ交流磁場を図20(b)は周波数196kHz(実施例1-20b)で、図20(c)は周波数227kHz(実施例1-20c)で、図20(d)は周波数280kHz(実施例1-20d)で、図20(e)は389kHz(実施例1-20e)で、いずれも30分間交流磁場を印加後、細胞培養を行った場合の撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、図20(a)ないし図20(e)は、蛍光顕微鏡NIKON TE2000Eにより撮影された。
【実施例】
【0052】
図20(a)に示す5つのデータは、それぞれ図20(a)ないし図20(e)(比較例1-20aおよび実施例1-20bないし実施例1-20e)に対応する培養後の死細胞数の解析結果を示すグラフである。死細胞数は上記のヒト星状細胞の場合と同様に計測した。
【実施例】
【0053】
図20に示されるようにヒト乳がん細胞(MCF7)では、実施例1を用いて周波数196kHz(実施例1-20c)、389kHz(実施例1-11e)で磁場を印加したときに、それぞれの死細胞数の有意な増加が認められた。これにより本発明には、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)の増殖抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0054】
がん細胞は、がん種に対応する特定の周波数で磁場が印加されることにより増殖が抑制される。とりわけ、上記に例示するように、本発明は、特定の周波数と印加時間との組み合わせにおいて、優れたがん細胞増殖抑制効果を発揮する。そのため、特定の周波数と印加時間とを組み合わせたがん種パラメータを設定して簡便に所定の磁場を印加できるようにすることで、がん細胞増殖抑制効果を向上させるだけでなく、使用者の負担軽減も実現する。したがって本発明は、そのような特定の周波数と印加時間とを組み合わせたパラメータが、がん種と関連付けられてメモリに保存される構成が好ましい。これにより、がん種入力部の入力によって任意のがん種パラメータが呼び出されて所望のがん種パラメータとして設定され、設定値に基づき、電流が磁場発生器に供給される。その結果、本発明は、所望のがん種の細胞増殖抑制効果を得るために適切な磁場を発生させることができ、簡便に磁場適用によるがん細胞増殖抑制効果を得ることができる。
【実施例】
【0055】
[2.3 磁場印加によるがん細胞の細胞分裂への影響]
図12は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の細胞分裂状態の観察結果である。図12(a)はヒト神経膠腫細胞(U87)を印加せずに培養した場合(比較例1-12a)の撮像である。図12(b)は、実施例1により周波数227 kHzで30分間交流磁場を印加した後に培養した場合(実施例1-12b)の撮像である。細胞の培養条件は培養条件1とし、撮影は蛍光顕微鏡を用いて行った。
【実施例】
【0056】
図12(a)に示されるように、磁場を印加せずに培養した場合(比較例1-12a)には、白矢印で示す箇所で細胞分裂が認められた。一方、図12(b)の印加後に培養した場合(実施例1-12b)では、細胞分裂が起こらなかった様子を観察できた。この観察結果から、本発明を用いることによりヒト神経膠芽腫細胞(U87)の細胞分裂が阻害されることを推察できた。
【実施例】
【0057】
[2.4 磁場印加によるがん細胞への影響]
図13は、ヒト神経膠芽腫細胞(U251)の走査電子顕微鏡写真である。図13(a)は実施例1による印加を行わずにヒト神経膠芽腫細胞(U251)を培養した場合(比較例1-13a)の撮像である。図13(b)は実施例1により周波数227kHzで30分間印加後に、培養条件1で培養した場合(実施例1-13b)の撮像である。図13(a)と図13(b)とを比較すると、図13(b)では白矢印で示されるように、実施例1-1301の細胞表面に穴が開いていることを観察できた。この観察結果から、本発明を用いることによりヒト神経膠芽腫細胞(U251)の細胞膜を損傷させることができると推察できた。
【実施例】
【0058】
[2.5 磁場印加によるがん細胞の温度変化]
Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの大腿部の皮下に5x106/mouseでヒト神経膠芽腫細胞(U87)を移植し、皮下腫瘍モデルを作製した。腫瘍モデルの移植領域を、実施例1の磁場発生器に対向させて磁場を印加し、腫瘍モデルの温度変化を観察した。磁場の印加は、周波数227kHzで30分間行った。
【実施例】
【0059】
図14は、上記の腫瘍モデルの観察結果である。図14では白さが強い領域ほど温度が高く、実施例1による磁場印加による腫瘍モデルの温度変化を観察できる。温度は、サーモグラフィーでの撮影結果から判定した。図14(a)は印加前の腫瘍モデルの温度測定結果である。図14(a)においては画像上の温度は、24℃~37.5℃であった。図14(b)は印加後の腫瘍モデルの温度測定結果である。画像上、最高温度は36.1℃であり、破線で囲まれた患部組織の温度は34.5℃であった。すなわち本発明を用いて磁場を印加しても、がん細胞の温度はがん細胞の殺傷温度として周知の40℃~43℃の温度域には到達しない。したがって、本発明によるがん細胞増殖抑制効果が温熱によるがん細胞殺傷に起因する可能性は低いと推察できた。
【実施例】
【0060】
[2.6 腫瘍の増大抑制効果の確認]
ヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)と、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)と、ヒト乳がん(MDAMB231)と、ヒト膵がん細胞(PANC1)と、ヒト悪性中皮腫細胞(Meso-1)との腫瘍モデルをそれぞれ作製し、実施例1を用いた磁場印加による腫瘍の増大抑制効果を確認した。腫瘍の増大は体積変化で評価した。腫瘍の体積については、腫瘍モデルの各個体の腫瘍の大きさをノギスで測定し、式(1)と式(2)とで腫瘍の大きさを体積に換算した値を腫瘍の体積とした。
Tumor volume (TV) (mm3) = length × (width)2 / 2 (1)
Rate of tumor volume (%) = TV / TV(day1) × 100 (2)
【実施例】
【0061】
[2.6.1 ヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)の腫瘍]
免疫不全マウスで皮下腫瘍モデルを作製するため、Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの大腿部の皮下に1x106/mouseでヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)を移植した。個体群を2つにグループ化し、第一のグループに属する個体に対し実施例1を用いて印加した。第一のグループをAMF群(実施例1-1501)とした。AMF群(実施例1-1501)の腫瘍に対する印加は、周波数227kHzの交流磁場を1日30分間、移植翌日を第1日目として第1日目から第5日目まで、5日間連続して行った。第二のグループに属する個体に対しては印加を行わなかった。第二のグループをControl群(比較例1-1500)とした。AMF群(実施例1-1501)とControl群(比較例1-1500)とに属する各個体の腫瘍の大きさを連日測定し、式(1)と式(2)とにより腫瘍の体積に換算した。
【実施例】
【0062】
図15は、ヒト舌がん(扁平上皮癌)細胞(OSC-19)の腫瘍の体積変化の観察結果である。AMF群(実施例1-1501)とControl群(比較例1-1500)の第1日目の腫瘍の体積を100として指数化し、指数化した体積値を用いて図15(a)に、AMF(実施例1-1501)とControl(比較例1-1500)との移植翌日(第1日目)から15日間の体積の推移を示した。図15(a)に示されるように、AMF群(実施例1-1501)は、Control群(比較例1-1500)と比較して第10日目の腫瘍の体積の増大が抑制される傾向にあることを確認できた。第10日目のControl(比較例1-1500)の腫瘍の増大率は、381%であった。一方、AMF(実施例1-1501)の腫瘍の増大率は281%であった。図15(a)に示されるように、第15日目のControl(比較例1-1500)の腫瘍の増大率は、741%であった。一方、AMF(実施例1-1501)の腫瘍の増大率は411%であった。
【実施例】
【0063】
図15(b)では、図15(a)に示す第1日目の体積を100%としたときの第14日目の体積を指数化して、腫瘍の体積の増大をControl(比較例1-1500)とAMF(実施例1-1501)とで比較した。図15(b)に示されるように、Control(比較例1-1500)の腫瘍の増大率は、770%であった。一方、AMF(実施例1-1501)の腫瘍の増大率は400%であった。これにより本発明を用いることにより、少なくとも14日間、舌がん(扁平上皮癌)の腫瘍の増殖抑制効果が持続することを確認できた。
【実施例】
【0064】
[2.6.2 ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の腫瘍]
図16は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の腫瘍の体積変化の観察結果である。ヒト神経膠芽腫細胞(U87)は、ATCCから購入したものを用いた。Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの大腿部の皮下に5x106/mouseでヒト神経膠芽腫細胞U87を移植し、皮下腫瘍モデルを作製した。個体群を3つにグループ化し、第一のグループに属する個体に対し、移植日(第0日目)に実施例1を用いて1回磁場を印加した。第一のグループを実施例1-1601とした。第二のグループに属する個体に対し、第0日目から連続して5日間、実施例1を用いて磁場を印加した。第二のグループを実施例1-1605とした。実施例1-1601と実施例1-1605とに対し行われた磁場の印加は1日1回で、1回の印加はいずれも周波数227kHz、印加時間30分間であった。第三のグループに属する個体に対しては、磁場を印加しなかった。第三のグループを比較例1-1600とした。実施例1-1601と実施例1-1605と比較例1-1600とに属する各個体の腫瘍の大きさを、移植日(第0日目)から連日14日間ノギスで測定し、式(1)と式(2)とで腫瘍の大きさを体積に換算した。
【実施例】
【0065】
図16(a)は第14日目の実施例1-1601と実施例1-1605と比較例1-1600とに属する個体の撮像である。図16(a)において、実線で囲まれた領域の内部が各実施例と比較例との患部である。図16(a)で実線内に示される腫瘍の大きさは、比較例1-1600が最も大きく、実施例1-1601は比較例1-1600より小さく、実施例1-1605が最も小さかった。
【実施例】
【0066】
図16(b)は、実施例1-1601と実施例1-1605と比較例1-1600との腫瘍の体積の推移を、第0日目の体積を100%として指数化したグラフである。図16(b)に示されるように、比較例1-1600の第0日目の体積に対する第0日目以後の腫瘍の増大率は100%以上であり、日数が経過するにつれて体積が増大する傾向が明確に表れた。一方、実施例1-1601の第0日目の体積に対する腫瘍の増大率は、84.8%(第2日目)、105%(第4日目)、89.75%(第7日目)と推移した。また実施例1-1605の第0日目の体積に対する増大率は、84.55%(第2日目)、89.44%(第4日目)、66.42%(第7日目)と推移した。実施例1-1601と実施例1-1605とでは、腫瘍の体積に比較例1-1600のような増大傾向は認められなかった。
【実施例】
【0067】
図16(b)に示す各実施例と比較例との腫瘍の体積の推移の比較により、本発明に、神経膠芽腫の腫瘍の体積の増大抑制効果があることを確認できた。さらに実施例1-1601と実施例1-1605とを比較すると、いずれの測定日においても実施例1-1605の方が、増大率が低かった。この結果から本発明で1回の印加条件を同じにして磁場を印加するとき、印加回数が多い方が神経膠芽腫の腫瘍の体積の増加抑制効果に優れることを確認できた。
【実施例】
【0068】
図16(b)では、第0日目から第7日目までの測定結果を示したが、測定は第7日目以後も継続した。図16(c)は、第0日目から第14日目までの実施例1-1605と比較例1-1600との腫瘍の体積の測定結果である。比較例1-1600の腫瘍の体積は、第0日目は152.8mm3、第2日目は206.8mm、第4日目は295.8mm3、第7日目は329.6mm3、第9日目は328.7mm3、第11日目は370.9mm3、第14日目は752.8mm3であった。一方実施例1-1605の腫瘍の体積は、第0日目は181.5mm3、第2日目は153.3mm3、第4日目は159.6mm3、第7日目は117.8mm3、第9日目は118.2mm3、第11日目は147.3mm3、第14日目は271.3mm3であった。
【実施例】
【0069】
図16(c)に示されるように、実施例1-1605は、第4日目以降、有意ながん細胞の増殖抑制効果が現れ始め、日数が経過するにつれて比較例1-1600との体積の有意差が大きくなった。図16(c)に示す実施例1-1605の腫瘍の体積の推移から、本発明を用いて磁場を印加することにより、少なくとも14日間、神経膠芽腫の腫瘍の体積の増大抑制効果が持続することを確認できた。また第14日目以後も本効果は持続すると推察できる。
【実施例】
【0070】
本発明は、1回の磁場印加でも腫瘍の体積の持続的な増大抑制効果がある。また印加回数を増加することで、腫瘍の体積の増大抑制効果の持続性が向上する。図16(b)と図16(c)とに示されるように、実施例1を用いて1回磁場を印加した場合は少なくとも磁場印加後7日間、また5回磁場を印加した場合は少なくとも磁場印加後14日間、腫瘍の体積の増大抑制効果が持続した。
【実施例】
【0071】
したがって本発明においては、がん種入力部でがん種を入力して印加回数を設定できる構成にしてもよい。印加回数パラメータを設定できるがん種入力部の例を図17に示す。図17に示されるように、がん種パラメータは、メモリに保存される周波数、印加時間、印加回数に関連付けられており、所望のがん種を入力することで、所定の周波数、印加時間、印加回数を設定でき、適切な磁場印加を行える。図17では実施例1-1601と実施例1-1605との磁場印加の形態を設定できるがん種入力部を例示した。
【実施例】
【0072】
[2.6.3 ヒト乳がん(MDAMB231)の腫瘍]
免疫不全マウスで皮下腫瘍モデルを作製するため、Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの大腿部の皮下に5x106/mouseでヒト乳がん(MDAMB231)を移植した。個体群を2つにグループ化し、第一のグループに属する個体に対し、移植後(第7日目)から連続して5日間と2日休んで再度連続して5日間の計10回、実施例1を用いて磁場を印加した。第一のグループをAMF群(実施例1-2101)とした。実施例1-2101に対し行われた磁場の印加は1日1回で、1回の印加はいずれも周波数227kHz、印加時間30分間であった。第二のグループに属する個体に対しては、磁場を印加しなかった。第二のグループをCTRL群(比較例1-2100)とした。AMF群(実施例1-2101)とCTRL群(比較例1-2100)とに属する各個体の腫瘍の大きさを、移植後(第7日目)から連日14日間ノギスで測定し、式(1)と式(2)とで腫瘍の大きさを体積に換算した。
【実施例】
【0073】
図21は、腫瘍の体積の増大をCTRL群(比較例1-2100)とAMF(実施例1-2101)とで比較して示す図である。CTRL群(比較例1-2100)は日数が経過するにつれて体積が増大する傾向が明確に表れた。一方、AMF(実施例1-2101)は体積が第0日目よりも小さい、または同程度であった。いずれの時点でもCTRL群(比較例1-2100)よりも腫瘍の体積が小さい。
【実施例】
【0074】
[2.6.4 ヒト膵がん細胞(PANC1)の腫瘍]
免疫不全マウスで皮下腫瘍モデルを作製するため、Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの大腿部の皮下に5x106/mouseでヒト膵がん細胞(PANC1)を移植した。個体群を2つにグループ化し、第一のグループに属する個体に対し、移植後(第7日目)から連続して5日間と2日休んで再度連続して5日間の合計10回、実施例1を用いて磁場を印加した。第一のグループをAMF群(実施例1-2201)とした。実施例1-2201に対し行われた磁場の印加は1日1回で、1回の印加はいずれも周波数227kHz、印加時間30分間であった。第二のグループに属する個体に対しては、磁場を印加しなかった。第二のグループをCTRL群(比較例1-2200)とした。AMF群(実施例1-2201)とCTRL群(比較例1-2200)とに属する各個体の腫瘍の大きさを、移植後(第7日目)から連日14日間ノギスで測定し、式(1)と式(2)とで腫瘍の大きさを体積に換算した。
【実施例】
【0075】
図22は、腫瘍の体積の増大をCTRL群(比較例1-2200)とAMF(実施例1-2201)とで比較して示す図である。CTRL群(比較例1-2200)は日数が経過するにつれて体積が増大する傾向が明確に表れた。一方、AMF(実施例1-2201)は日数の経過とともに体積が減少を続けていた。
【実施例】
【0076】
[2.6.5 ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の腫瘍(脳腫瘍モデル)]
図18は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)の脳腫瘍モデルの観察結果である。図18に示す腫瘍モデルの発光イメージングと全生存率とにより、本発明の作用効果を確認した。ヒト神経膠芽腫細胞(U87)は、ATCCから購入したものを使用した。公知の遺伝子組換え方法により、レンチウイルスを用いてヒト神経膠芽腫細胞にfireflyルシフェラーゼ遺伝子を導入後、培養条件1で培養し、fireflyルシフェラーゼ遺伝子導入U87を作製した。ルシフェラーゼ遺伝子導入U87をBalb-cのメスの5週齢のヌードマウスの脳に1x106/mouseで移植し、脳腫瘍モデルを作製した。続いて脳腫瘍モデルにD-ルシフェリンを投与し、個体内のU87の動態を観察できるようにした。観察は全個体の死亡が確認された日に終了した。
【実施例】
【0077】
個体群を2つにグループ化し、第一のグループ(個体数6)に属する個体に対し実施例1を用いて250Aの電流を供給し磁場を印加した。第一のグループを実施例1-1805とした。実施例1-1805に対して行われた磁場の印加は1日1回で、1回の印加はいずれも周波数227kHz、印加時間30分間であった。印加は第0日目から連続して5日間(第0日目から第4日目)行い、第5日目と第6日目とは印加せず、第7日目から第11日目まで再び印加した。すなわち実施例1-1805は10回印加された。第二のグループ(個体数6)に属する個体に対しては磁場を印加しなかった。第二のグループを比較例1-1800とした。
【実施例】
【0078】
実施例1-1805と比較例1-1800との発光イメージングを超高感度CCDカメラと、画像解析装置(装置名IVIS imaging system)を用いて行った。腫瘍の増大抑制効果の評価は、発光量の値(光子/秒)によって行い、発光量が小さいほど、腫瘍の増大抑制効果があると判定した。実施例1-1805に属する個体と比較例1-1800に属する個体との発光イメージからそれぞれ一つずつ抽出し、図18(a)に示した。図18(b)は、実施例1-1805と比較例1-1800との発光量の推移を示すグラフである。図18(a)と図18(b)とに示されるように、比較例1-1800は日数が経過するにつれて発光量が増加した。一方、実施例1-1805は、日数が経過しても発光量の増加がほとんど認められず、特に第16日目以降は比較例1-1800と比較して発光量が少なく、比較例1-1800に対し有意差が認められた。すなわち実施例1は、脳腫瘍モデルにおいても、神経膠芽腫の腫瘍の増大抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0079】
さらに図18(c)に、実施例1-1805と比較例1-1800との全生存率を式(3)により算出し、図18(c)に示した。
全生存率(%)=全死亡個体数/6×100 (3)
【実施例】
【0080】
図18(c)に示されるように、比較例1-1800は、第20日目に最初の個体が死亡し、第28日目までに全個体が死亡した。全生存率は、第20日目に83%、第22日目に66%、第25日目に33%、第26日目に16%、第28日目に0%と推移した。一方実施例1-1805は、第26日目に最初の個体が死亡し、第35日目に全個体が死亡した。全生存率は、第26日目に83%、第27日目に50%、第28日目に33%、第30日目に16%、第35日目に0%と推移した。実施例1を用いて所定の磁場が印加されることにより、神経膠芽腫の予後が良好になることが確認できた。
【実施例】
【0081】
またヒト神経膠芽腫細胞(U87)の代わりにヒト神経膠芽腫細胞(U251)を用いて同様の観察を行った。細胞の種類以外の条件は図18に示したヒト神経膠芽腫細胞(U87)の脳腫瘍モデルと同様である。得られた全生存率を図23に示す。磁場の印加を行わなかった未治療群は第16日目以降に減少したが、磁場の印加を行った交流磁場群は第60日を経過しても全生存率が100%を維持した。したがって、実施例1を用いて所定の磁場が印加されることにより、神経膠芽腫の予後が良好になることが確認できた。
【実施例】
【0082】
[2.6.6 悪性中皮腫細胞(Meso-1)の腫瘍]
図19は、ヒト悪性中皮腫細胞(Meso-1)の腫瘍の体積変化の観察結果である。ヒト悪性中皮腫細胞(Meso-1)としては、ATCCから購入したものを用いた。Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスの臀部の皮下に1x106/mouseでヒト悪性中皮腫細胞(Meso-1)を移植し、皮下腫瘍モデルを作製した。個体群を2つにグループ化し、第一のグループに属する個体に対し、移植日(第0日目)に実施例1を用いて磁場を印加した。第一のグループを実施例1-1901とした。実施例1-1901に対して行われた磁場の印加は一回で、電流250A、周波数308kHz、印加時間30分間であった。第二のグループに属する個体に対しては、磁場を印加しなかった。第二のグループを比較例1-1900とした。
【実施例】
【0083】
実施例1-1901と比較例1-1900とに属する各個体の腫瘍の大きさを、移植日(第2日目)、第4日目、第6日目にノギスで測定し、式(1)と式(2)とで腫瘍の大きさを体積に換算した。
【実施例】
【0084】
図19は、実施例1-1901と比較例1-1900との腫瘍の体積の推移を、第0日目の体積を100%として指数化したグラフである。図19に示されるように、比較例1-1900の第0日目の体積に対する第0日目以後の増大率は100%以上であり、日数が経過するにつれて体積が増大した。比較例1-1900の第0日目の体積に対する増大率は、134%(第2日目)、163%(第4日目)、164%(第6日目)、と推移した。一方、実施例1-1901の第0日目の体積に対する増大率は、100%(第2日目)、107%(第4日目)、104%(第6日目)、と推移した。実施例1-1901では、腫瘍の体積に比較例1-1900のような増大傾向は認められなかった。これにより本発明に、悪性中皮腫の腫瘍の増大抑制効果があることを確認できた。
【実施例】
【0085】
[3. 副作用]
実施例1の磁場発生器を使用して磁場を印加することによる副作用を観察した。Balb-cのメスの5週齢のヌードマウスを、磁場を印加するAMF群と磁場を印加しないCTRL群とに分け、AMF群とCTRL群のそれぞれにおいて腫瘍を皮下に移植するグループと頭蓋内に移植するグループとを形成した。以下ではCTRL群について詳述しないが、AMF群との比較のためにそれぞれ対応する個体が用意される。腫瘍を皮下に移植するAMF群は、さらに1週間に1回照射する週1群と、1週間に5回照射する週5群とに分け、移植から15日経過後に観察した。すなわち皮下移植のAMF群における週1群は合計2回、磁場が印加され、同じく週5群は合計10回、磁場が印加された。腫瘍を頭蓋内に移植するAMF群は、1週間に5回照射され、合計40回照射され、移植から90日経過後に観察した。
【実施例】
【0086】
いずれの場合も、磁場の印加は1回あたり30分とし、周波数は227kHzである。観察は、体重測定、採血、外観観察などにより行われ、具体的には臨床兆候、皮膚障害、体重、食物摂取量、生体機能、腎機能、汎血球、白血球、ヘモグロビン、血小板、および肝機能を評価した。
【実施例】
【0087】
図24は、臨床兆候、皮膚障害、体重減少、食物摂取量減少、生体機能低下、腎機能低下、汎血球減少の7項目について観察した結果を示す図である。ただし、体重減少、食物摂取量減少、生体機能低下、腎機能低下、汎血球減少については、CTRL群から20%以上の減少や低下があるか否かを観察した。図24に示すように、いずれの項目においても副作用が認められなかった。図24に示した項目のうち、体重について詳述する。
【実施例】
【0088】
図25は、観察開始日の体重を100%として7日後および14日後の体重の変化を示す図である。7日後および14日後のそれぞれにおいて、左から順にCTRL群、AMF群の週1群、AMF群の週5群を示している。図25に示すように、いずれのAMF群もCTRL群との体重の差は少なく、図24に示したようにCTRL群から20%以上の減少は見られない。
【実施例】
【0089】
図26は、腫瘍を頭蓋内に移植するAMF群およびCTRL群における90日経過後の血液検査の結果を示す図である。図26(a)~(f)は順番にそれぞれ、白血球、ヘモグロビン、血小板、肝機能のAST、および肝機能のALTを示す。いずれの検査結果においてもCTRL群とAMF群の有意な差がみられず、副作用が認められない。
【実施例】
【0090】
[4. 活性酸素]
ヒト神経膠芽腫細胞(U87)、ヒト神経膠芽腫細胞(U251)、ヒト乳がん細胞(MDAMB231)、およびヒト膵がん細胞(PANC1)について、交流磁場を印加することによる活性酸素の影響を観察した。それぞれの細胞を、磁場を印加するAMF群と磁場を印加しないCTRL群に分けた。CTRL群には、227kHzで30分間交流磁場を印加し、24時間経過後に活性酸素を測定した。
【実施例】
【0091】
図29は、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)、ヒト神経膠芽腫細胞(U251)、ヒト乳がん細胞(MDAMB231)、およびヒト膵がん細胞(PANC1)における交流磁場を印加することによる活性酸素への影響を示す図である。いずれの細胞も、CTRL群の測定値を100%としてAMF群の測定値を示している。図29より、ヒト神経膠芽腫細胞(U87)、ヒト神経膠芽腫細胞(U251)、ヒト乳がん細胞(MDAMB231)、およびヒト膵がん細胞(PANC1)のいずれも、交流磁場を印加することにより活性酸素が有意に増加していることがわかる。たとえばヒト神経膠芽腫細胞(U87)は、AMF群はCTRL群に比べて活性酸素が約2倍となっていた。
【実施例】
【0092】
本発明は、上記の実施例で説明した生物種と異なる生物種、たとえばヒトに対しても、がん細胞の増殖抑制効果や腫瘍の増大抑制効果を発揮しうる。すなわち本発明には、上述したがん治療装置100を用いてヒトのがん細胞を治療する方法が含まれる。換言すると本発明には、ヒトの治療方法であって、がん治療装置100を用いてヒトを治療する方法が含まれる。
【実施例】
【0093】
本発明によれば、キーボードやマウス等のデバイス、タッチパネル等の直感的かつ簡便な操作により、種々のがん種の腫瘍増殖抑制に好適な交流磁場を好適な印加時間で患部組織に印加できる。印加時間は短く、使用電力も少ない。加えて本発明は軽量である。そのため本発明は低コストで利便性が高いがん治療装置である。また患部組織と磁場発生器が非接触であるため、複数の疾病者が衛生的に共用できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、とりわけ悪性度の高いがんの緩解療法に適する。
【0095】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2016年第228164号(2016年11月24日出願)
【符号の説明】
【0096】
100 がん治療装置
200 磁場発生器
300 電源
400 制御モジュール
401 がん種入力部
402 電源スイッチ
403 第一の入力部
404 第二の入力部
501 コントローラ
502 メモリ
503 第一の出力部
504 タイマ
505 第二の出力部
600 コイル
601 コイルの内径面(0mm面)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28