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明細書 :マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-200772 (P2018-200772A)
公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池
国際特許分類 H01M  10/0568      (2010.01)
H01M  10/0569      (2010.01)
H01M  10/054       (2010.01)
FI H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/054
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2017-104046 (P2017-104046)
出願日 平成29年5月26日(2017.5.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (公開1)平成28年11月28日発行の公益社団法人電池化学会、電池技術委員会発行の第57回電池討論会講演要旨集 (公開2)平成28年11月30日開催の第57回電池討論会
発明者または考案者 【氏名】土井 貴之
【氏名】稲葉 稔
【氏名】増本 将士
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5H029
Fターム 5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ10
5H029HJ14
要約 【課題】電位窓が広く、優れた充放電特性を実現できるマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供する。
【解決手段】電解質としてトリフルオロ酢酸マグネシウム(Mg(CF3COO)2)を、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とするマグネシウム二次電池用電解液、および、前記電解液を含むマグネシウム二次電池。前記電解液を含む二次電池は、ナトリウムイオン濃度が低い場合であっても、作動温度を40℃以上とすることにより、マグネシウムの溶解・析出反応が進行する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
電解質としてトリフルオロ酢酸マグネシウムを、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とする、マグネシウム二次電池用電解液。
【請求項2】
前記環状エステルが、炭酸プロピレン、炭酸エチレンおよびγ-ブチロラクトンからなる群より選択される、請求項1に記載のマグネシウム二次電池用電解液。
【請求項3】
電解質としてトリフルオロ酢酸マグネシウム及び/又はテトラフルオロホウ酸マグネシウムを含み、溶媒として環状エステルを含むこと、および、Na+濃度が0.001mol/L未満であることを特徴とする、マグネシウム二次電池用電解液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液を含むことを特徴とする、マグネシウム二次電池。
【請求項5】
請求項3に記載の電解液を含み、作動温度が40℃以上であることを特徴とする、マグネシウム二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、携帯電話、タブレット等のモバイル機器や、電気自動車等の電源として、リチウムイオン二次電池が一般に使用されているが、リチウムイオン二次電池は材料費が高く、また、リチウム資源が偏在するため、原料調達の面で問題が指摘されている。
このためリチウムイオン二次電池に代わる次世代革新型二次電池の開発が求められており、その有力候補としてマグネシウム(Mg)金属を負極に用いるマグネシウム二次電池が注目されている。
【0003】
マグネシウム金属は標準電極電位の低さ、高い体積理論容量、資源の豊富さ、デンドライト析出をしないことによる安全性の高さの点から次世代二次電池の負極活物質として注目されている。
【0004】
しかしながら、マグネシウム二次電池を実用化するためには克服すべき課題も多い。例えば、マグネシウム二次電池の実用化のためには、マグネシウム金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させる(すなわち、充電・放電を安定に行う)ための電解液が必要である。これに関連して、非特許文献1には、負極としてマグネシウム金属、電解液としてグリニャール試薬を含むテトラヒドロフラン溶液、陽極としてMo68を用いたマグネシウム二次電池が報告されているが、非特許文献1に記載されているサイクリックボルタモグラムから、この電解液を用いた場合、特にマグネシウムの溶解反応が遅いことが読み取れる。また、この電解液は2.5V未満(マグネシウム参照極に対する電位)で分解し始めるので、この電解液を用いて2.5V以上の実用電圧を有するマグネシウム二次電池を設計することは不可能である。
【0005】
リチウムイオン二次電池では、電位窓の広い環状エステル系電解液を使用して、約4Vの電圧および約150~200mAh/gの放電容量が実現されているため、マグネシウム二次電池でもリチウムイオン二次電池と同様に、環状エステル系電解液を提案する文献がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、マグネシウム二次電池で環状エステル系電解液を使用すると、マグネシウム金属が容易に不動態化されるため、マグネシウム金属負極の充放電反応が全く進行しないことが報告されている。特許文献1にも、環状エステル系電解液を用いた実施例は開示されていない。
【0006】
このような問題、すなわち、マグネシウム金属はその表面にマグネシウムイオンを通さない不動態膜が形成されやすいため、マグネシウム二次電池で使用できる電解液が非常に限られていることは、様々な文献に記載されており(例えば、特許文献2や特許文献4の背景技術欄参照)、現在、マグネシウム金属負極に適合する電解液としては、主にエーテル系電解液が提案されている(特許文献2~4参照)。
しかしながら、エーテル類は耐酸化性が低く電位窓が狭いため、3V以上の二次電池の実現は難しいという問題点があった。また、エーテル系電解液を用いると、大きな過電圧が観察される場合が多いことから、マグネシウム金属はエーテル系電解液中において比較的不動態化されにくいものの、ある程度の不動態化は生じ、スムーズな充放電反応が進行しないと考えられる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-025555号公報
【特許文献2】特開2004-259650号公報
【特許文献3】特開2012-182124号公報
【特許文献4】特開2014-186940号公報
【0008】

【非特許文献1】D. Aurbach et al., Nature, Vol. 407, 724-727 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、溶媒として環状エステルを用いた場合でも充放電反応が進行するマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、Mg塩(電解質)としてトリフルオロ酢酸マグネシウムを使用することにより、溶媒として環状エステルを用いても、Mg金属の溶解・析出反応が可逆的に進行することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、マグネシウム二次電池用電解液であって、電解質としてトリフルオロ酢酸マグネシウムを、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の電解液は、電位窓の広い環状エステルを溶媒として用いているため、電圧の高い(例えば、3V以上の)マグネシウム二次電池の提供が可能となり、マグネシウム二次電池の高エネルギー密度化を図ることができる。また、Mg塩として、トリフルオロ酢酸マグネシウム(Mg(CF3COO)2)を使用することにより、溶媒として環状エステルを使用しているにもかかわらず、Mg金属の不動態化を防ぎ、Mg金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させることができるため、マグネシウム二次電池の充放電特性を飛躍的に向上させることができる。
【0013】
前記環状エステルの好ましい例として、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0014】
さらに本発明者らは、電解液に微量不純物として含まれているNa+の影響について検討したところ、Na+がMg負極反応を促進していることを確認した。しかしながら、Mg2+とNa+の両方をスムーズに挿入脱離できる正極活物質を使用しない限り、Na+はMg正極反応に悪影響を及ぼすと考えられる。そのため、Na+濃度がほぼゼロであっても、Mg金属の溶解・析出反応が進行する条件を検討したところ、加温条件下(40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは100℃以上)でセルを作動させることにより、Mg金属の溶解・析出反応を進行させることに成功した。
【0015】
すなわち、本発明は、Na+濃度が0.001mol/L未満であるMg(CF3COO)2/環状エステル電解液に関する。また、Mg塩として、Mg(CF3COO)2の代わりに、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)を用いることも可能である。
【0016】
また、本発明は、前記特徴を有する電解液を含むマグネシウム二次電池に関する。
【0017】
さらに、本発明は、電解質がMg(CF3COO)2及び/又はMg(BF4)2であり、Na+濃度が0.001mol/L未満である電解液を含み、作動温度が40℃以上であることを特徴とする、マグネシウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電位窓の広い環状エステル系電解液の使用が可能となるため、高エネルギー密度のマグネシウム二次電池の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、電解質がトリフルオロ酢酸マグネシウム(Mg(CF3COO)2 略称:Mg(TFA)2)であり、溶媒が炭酸プロピレン(PC)である電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムであり、(b)は、電解質がMg(CF3COO)2であり、溶媒が炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)の混合溶媒である電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図2】電解質がMg(CF3COO)2であり、溶媒がγ-ブチロラクトン(GBL)である電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図3】(a)は、電解質がマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略称:Mg(TFSI)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムであり、(b)は電解質がヘキサフルオロリン酸マグネシウム(Mg(PF6)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図4】図4は、図1(b)と同じ電解液を使用した場合の充放電曲線である。
【図5】図5は、図1(b)と同じ電解質と溶媒を含み、ほぼNa+を含まない電解液を使用した場合の、(a)サイクリックボルタモグラムと(b)充放電曲線である。
【図6】(a)は、図1(b)と同じ電解質と溶媒を含み、Na+濃度が2.5×10-4mol/Lである電解液を使用した場合の充放電曲線であり、(b)は、図1(b)と同じ電解質と溶媒を含み、Na+濃度が4.4×10-3mol/Lである電解液を使用した場合の充放電曲線である。
【図7】図1(a)と同じ電解質と溶媒を含む電解液の充放電曲線であり、(a)はNa+濃度が10-2mol/Lの電解液であり、(b)はNa+濃度が10-5mol/Lの電解液である。
【図8】電解質がトリフルオロ酢酸ナトリウム(NaCF3CO2)であり、溶媒が炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒である電解液を使用した場合の充放電曲線である。
【図9】図1(a)と同じ電解質と溶媒を含み、Na+濃度が9.6×10-5mol/L、K+濃度が5.6×10-6mol/Lである電解液の、(a)充放電曲線、(b)充放電曲線の一部拡大図、(c)1~10サイクルの電圧対時間を示すグラフである。
【図10】図1(a)と同じ電解質と溶媒を含み、Na+濃度が9.6×10-5mol/L、K+濃度が5.6×10-6mol/Lである電解液の、(a)充放電曲線、(b)充放電曲線の一部拡大図、(c)1~10サイクルの電圧対時間を示すグラフである。
【図11】図10の電解液のサイクリックボルタモグラムである。
【図12】電解質がテトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合の(a)サイクリックボルタモグラムと、(b)充放電曲線である。
【図13】(a)は、電解質がMg(BF4)2であり、溶媒が炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒である電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムであり、(b)は、電解質がMg(BF4)2であり、溶媒がγ-ブチロラクトンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
マグネシウム二次電池は、マグネシウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、マグネシウムイオンを溶解・析出可能な負極と、マグネシウムイオンを生じる塩(マグネシウム塩)を含有する電解液とを有する。従来のマグネシウム二次電池用電解液では、マグネシウム塩としてマグネシウムハロゲン化物やマグネシウムイミド塩が、溶媒としてエーテル系溶媒やスルホン系溶媒が提案されてきた。これに対して、本発明では、マグネシウム塩としてトリフルオロ酢酸マグネシウムを使用し、溶媒として環状エステルを用いることを特徴とする。

【0021】
トリフルオロ酢酸マグネシウムを含む電解液は、例えば、市場で入手できるトリフルオロ酢酸銀(AgCF3CO2)と、塩化マグネシウム(MgCl2:通常は六水和物)を、電解液用の溶媒中に添加して撹拌処理し、AgClを吸引ろ過等によって除去することによって調製することができる。この調製は、不活性雰囲気(Ar等)下のグローブボックス内で行うことが好ましい。また、電解液中に含まれる水分を除去するために、脱水処理を行ってもよい。例えば、上述のようにして調製した電解液に、水分吸着剤(モレキュラーシーブ等)を加えて数日間放置すること等により、脱水精製処理を行うことができる。水分をさらに取り除きたい場合は、新しい水分吸着剤を用いて脱水精製処理を繰り返し行えばよい。

【0022】
本発明の電解液は、上記のような方法によって調製できるが、出発物質(塩化マグネシウム等)が不純物として微量のナトリウムを含んでいることがあり、また、脱水処理時にモレキュラーシーブからナトリウムイオンが溶出することがあるため、結果的に本発明の電解液にもNa+が含まれる場合が多い(通常、Na+濃度は0.05mol/L以下)。
後述する実験によって、電解液中に含まれる0.001mol/L以上(特に0.003mol/L以上)のナトリウムイオンが、Mg金属の溶解・析出反応を触媒的に補助することが示唆された。しかしながら、正極活物質がMg2+およびNa+の両方をスムーズに挿入脱離できなければ、Na+は正極反応に悪影響を及ぼすため、電解液中のNa+の濃度は通常0.3mol/L以下(特に0.2mol/L以下)であることが好ましい。

【0023】
さらに本発明者らは、ナトリウムイオン濃度を0.001mol/L未満まで低減した場合であっても、加温環境下であれば、マグネシウムの溶解・析出反応が生じることを確認した。したがって、Na+の挿入脱離に適していない正極活物質を使用する場合は、Na+濃度を0.001mol/L未満とし、加温環境下(好ましくは40℃~270℃、より好ましくは60℃~250℃、特に好ましくは80℃~200℃、さらに好ましくは100℃~170℃)でマグネシム二次電池を作動させることにより、充放電反応を進行させることが可能である。

【0024】
また、電解質として、トリフルオロ酢酸マグネシウムの代わりに、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)を使用する場合も、上記と同様に環状エステルを使用して充放電反応を進行させることができる。この場合も、0.001mol/L以上(特に0.003mol/L以上)のナトリウムイオンが、Mg金属の溶解・析出反応を促進すると考えられるが、上述した理由から、電解液中のNa+濃度は0.3mol/L以下(特に0.2mol/L以下)であることが好ましい。
また同じく、電解液中のNa+濃度が0.001mol/L未満である場合は、上述した加温環境下でセルを作動させることが好ましい。テトラフルオロホウ酸マグネシウムは市場で入手可能であり、通常、水和物の形態(Mg(BF4)2・nH2O)で販売されている。

【0025】
電解液中のマグネシウム塩(トリフルオロ酢酸マグネシウム及び/又はテトラフルオロホウ酸マグネシウム)の濃度は、0.1~2mol/Lが好ましく、特に0.1~1mol/Lが好ましい。

【0026】
本発明の電解液では、上述の通り、溶媒として環状エステルを使用する。これまでマグネシウム二次電池用電解液の溶媒として一般に用いられてきたエーテル類は耐酸化性が低いため、電解液の酸化分解を防ぐために充電電圧を低くする必要があった。このため、たとえ高い実用電圧が可能な正極材料を開発しても、電解液がその電圧に耐えられないため、結局は実用電圧を上げることができず、高エネルギー密度化が実現できなかった。これに対して、環状エステルは、エーテル類と比べて耐酸化性が高い(酸化分解開始電圧が高い)ため、より高電圧の二次電池の設計が可能となり、マグネシウム二次電池の高エネルギー密度化に寄与できる。

【0027】
また、従前の研究では、マグネシウム二次電池の電解液溶媒として、炭酸プロピレンや炭酸エチレン等の環状エステルを使用すると、負極を構成するマグネシウム金属が不動態化し、マグネシウムの溶解析出が進行しないことが報告されているため、炭酸エステル系電解液の使用は不可能と考えられていた。実際に、後述する実施例においても、環状エステルに、他のマグネシウム塩を溶解して調製した電解液では、マグネシウムの溶解・析出が起こらないことが確認されている。しかしながら、本発明者らは、電解質としてトリフルオロ酢酸マグネシウムやテトラフルオロホウ酸マグネシウムを使用することによって、環状エステルを溶媒として使用しても、マグネシウム金属の不動態化が生じず、マグネシウム金属の溶解析出が進行する、すなわち充放電を行うことができることを見出した。

【0028】
本発明の電解液の溶媒として使用される環状エステルは、1種であっても、2種以上であってもよい。分解開始電圧が3V(vs.Mg/Mg2+)以上の環状エステルを使用することが好ましい。好ましい環状エステルの代表例として、下記に示す炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート:PC)、炭酸エチレン(エチレンカーボネート:EC)、γ-ブチロラクトン(GBL)が挙げられるが、その他にも、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート等の炭酸エステル類、あるいは、γ-バレロラクトン、プロピオラクトン等のラクトン類が使用できる。
【化1】
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【0029】
また、本発明の電解液は、環状エステル以外にも、他の電位窓の広い溶媒(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等)を含んでもよいが、電解液の溶媒全量に占める環状エステルの割合は40体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることが特に好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。

【0030】
好ましい電解液の例として、溶媒として環状エステル(特に環状炭酸エステル)のみを含む電解液、および、溶媒として環状炭酸エステル(特に炭酸エチレン)と鎖状炭酸エステル(特に炭酸ジエチル)の混合溶媒を含む電解液が挙げられる。

【0031】
また、本発明の電解液は、必要に応じて他の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の量で含有することができる。このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の被膜形成剤が挙げられる。電解液中におけるこれら他の化合物の含有割合は特に限定はないが、電解液全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を含有させることにより、Mg金属の溶解・析出反応の可逆性を向上させたり、安全性をより向上させたり、容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。

【0032】
本発明のマグネシウム二次電池で使用できる負極は、負極活物質として、マグネシウム金属またはマグネシウム合金を含む。たとえば、集電体にマグネシウム金属またはマグネシウム合金を担持させて構成した負極や、箔状や板状のマグネシウム金属またはマグネシウム合金からなる負極が挙げられる。特にマグネシウム金属またはマグネシウム合金からなる負極が好ましい。

【0033】
本発明のマグネシウム二次電池で使用できる正極として、例えば、金属からなる集電体(例えば、アルミニウム箔やニッケル箔)と、その上に形成された正極活物質(マグネシウムイオンを可逆的に挿入・脱離可能な物質)層とを有する正極が挙げられる。
前記正極活物質として、例えば、Mo68、MoS2、MgM24(M=V,Cr,Mn,Fe,Co)、MgNiO2、Mg2/3Ni4/32、MgxySiO4(M=Mn,Fe,Co、x+y=2)、V25、MoO3、Mg0.5Ti2(PO4)3、TiS2、FeF3等が挙げられる。

【0034】
金属集電体上に前記正極活物質層を形成する方法としては、例えば、正極活物質の粉末に、導電材およびバインダーを混合してペーストを形成し、金属集電体表面に当該ペーストを塗布する方法が挙げられる。

【0035】
前記導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛等の炭素物質を用いることができ、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やカルボキシメチルセルロースナトリウムやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。

【0036】
本発明のマグネシウム二次電池は、従来のマグネシウム二次電池と同様の構成とすることができる。例えば、正極と負極とをセパレータを介して対向させて電極体を形成し、外装ケースに収納し、正極を正極外部端子に、負極を負極外部端子にそれぞれ電気的に接続させ、電解液を注入し、外装ケースを密閉することによって製造することができる。
本発明のマグネシウム二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、積層型、コイン型等、任意の形状とすることができる。

【0037】
前記セパレータとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の合成樹脂膜が挙げられる。

【0038】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。

【0039】
[実施例1]
溶媒に、0.6mol/Lのトリフルオロ酢酸銀(AgCF3CO2)と0.3mol/L相当のMgCl2(純度99.9%、Alfa Aesar)を加えてマグネチックスターラーを用いて、30℃、200rpmで2週間撹拌した。吸引ろ過によりAgClを除去し、3Aのモレキュラーシーブ(KnNa12-n[(AlO2)12(SiO2)12]X2O)を加えて3日間放置して脱水処理を行い、0.3mol/Lのトリフルオロ酢酸マグネシウム(Mg(CF3COO)2)含有電解液を得た。溶媒には炭酸プロピレン、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒、γ-ブチロラクトンを用いた(表1のNo.1~No.3)。
また、炭酸プロピレンに、所定量のマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の電解質を加えて溶解し、表1のNo.4、No.5に示す組成の電解液を調製した。これに4Aのモレキュラーシーブスを加えて3日間放置して脱水処理を行った。

【0040】
サイクリックボルタンメトリーおよび充放電試験は三極式セルを用いて行い、作用極はCu箔、対極はMgワイヤ、参照極はAg/Ag+電極とした。電位掃引速度は1.0mV/sとし、充放電は20μA/cm2の定電流で行った。同様のセルを用いて20μA/cm2で50000秒間充電を行い電析させた。その後、グローブボックス内でセルを解体して1,2-ジメトキシエタンで洗浄し、大気非暴露で走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析(SEM/EDS)により形態観察を行った。電気化学測定は25℃または30℃で行い、電解液の調製およびセルの組み立て、電気化学測定は全てAr雰囲気グローブボックス内で行った。

【0041】
【表1】
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【0042】
図1~図3に、No.1~No.5の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。これらの図に示されるように、電解質としてMg(CF3COO)2を用いた場合(電解液No.1~No.3[図1、図2])は、溶媒としてPC、EC+DEC、GBLのいずれを使用した場合も、還元電流(Mgの析出に起因する下向きのピーク)と酸化電流(Mgの溶解に起因する上向きのピーク)が観察され、Mgの溶解・析出が生じていることが確認できる。なお、溶媒としてEC+DECを用いた場合(図1b)では、5回目の掃引時に、酸化ピークが2つに割れたことから、Mg以外の金属の溶解反応が示唆される。
他方、電解質としてMg(TFSI)2やMg(PF6)2を用いた場合(電解液No.4およびNo.5[図3])は、酸化還元電流が認められず、Mgの溶解・析出反応は起こらないことが分かった。これは、マグネシウム二次電池で環状エステル系電解液を使用すると、マグネシウム金属が容易に不動態化されるため、マグネシウム金属負極の充放電反応が全く進行しないという従前の報告通りである。

【0043】
実験の結果から、電解質としてMg(CF3COO)2を用いることにより、環状エステル系溶媒の欠点(Mgの不動態化を引き起こすため、Mgの溶解・析出が生じない)を解消できるため、電位窓が広い環状エステル系溶媒を使用できることが確認できた。

【0044】
図4に、No.2の電解液を用いた場合の充放電曲線を示す。図4からも、No.2の電解液を用いた場合に、充放電が可能であることが確認できる。また、図4でも、充放電時に二段の電位平坦領域が観察されることから、充電時にはMgとそれ以外の金属の析出反応が生じており、放電時にはMgとそれ以外の金属の溶解反応が生じていることが示唆される。

【0045】
電析後(No.2の電解液使用)の電極表面および断面をSEM/EDSで撮影し、元素マッピングを行ったところ、不定形粒の析出が確認でき、また、Mgに加えて少量のNaの存在が確認できた。各電解液中のNa+濃度を測定したところ、10-2mol/L前後であった。このNa+は、主にモレキュラーシーブに由来すると考えられる。

【0046】
[実施例2]
上述の通り、Mg以外にNaが析出していることが確認されたため、電解液中のナトリウムイオンがMgの溶解・析出反応に及ぼす影響を検討した。
モレキュラーシーブによる脱水処理を省くことにより、ナトリウムイオンをほとんど含まない(Na+濃度が約10-5mol/Lである)No.2の電解液を調製し、サイクリックボルタンメトリーと充放電試験を行った。セルは、実施例1と同様、作用極をCu箔、対極をMgワイヤ、参照極をAg/Ag+電極とする三極式セルであり、サイクリックボルタンメトリーの走査電位範囲は-4.0~開回路電位、操作速度は1.0mV/s、測定温度は25℃とした。充放電測定は、定電流20μA/cm2、充放電時間10,000秒、測定温度25℃で行った。

【0047】
結果を図5に示す。図5から明らかなように、Na+をほぼ含まない電解液を用いた場合、Mgの溶解・析出反応を示唆する酸化・還元電流は確認できず、Mg2+のみが電解液中に存在する場合は、Mgの溶解・析出反応は起こらないことが示唆された。

【0048】
[実施例3]
Na+濃度がMgの溶解・析出反応に与える影響を調べるために、No.2と同じ電解質と溶媒を有する電解液について、Na+濃度が約2.5×10-4mol/Lおよび約4.4×10-3mol/Lの2種類を調製し、実施例2と同様の方法で充放電測定を行った。Na+濃度の調節は、モレキュラーシーブ処理有りの電解液と、モレキュラーシーブ処理無しの電解液をブレンドするか、トリフルオロ酢酸のNa塩(NaCF3CO2)を添加することによって行った。結果を図6に示す。
図6(a)から明らかなように、Na+濃度が2.5×10-4mol/Lの電解液では、Mgの溶解・析出が認めらなかった。これに対して、Na+濃度が4.4×10-3mol/Lの電解液では、Mgの溶解・析出が観察され、また、充放電時に二段の電位平坦領域が認められた。

【0049】
[実施例4]
電解液の溶媒を変更して、実施例3と同様の実験を行った。具体的には、No.3と同じ電解質と溶媒を有する電解液について、Na+濃度が約10-2mol/Lおよび約10-5mol/Lの2種類の電解液を調製し、充放電試験を行った。用いたセルは、実施例1と同様、作用極をCu箔、対極をMgワイヤ、参照極をAg/Ag+電極とする三極式セルであり、定電流は20μA/cm2、測定温度は30℃とした。

【0050】
結果を図7に示す。図7から明らかなように、溶媒がPCである場合も、電解液が0.01mol/LのNa+を含む場合、Mgの溶解・析出反応が生じ(図7(a))、電解液がNa+をほぼ含まない場合(図7(b))は、Mgの溶解・析出反応は観察されなかった。

【0051】
[実施例5]
次に、電解質としてトリフルオロ酢酸のNa塩を用いて、充放電反応が起こるか否かを確認した。具体的には、電解質としてトリフルオロ酢酸ナトリウム(NaCF3CO2)を、溶媒としてECとDECの混合溶媒(体積比1:1)を用いて、溶質濃度0.3mol/Lの電解液を調製し、実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。結果を図8に示す。

【0052】
図8から明らかなように、溶質がNa塩の場合は、放電反応は確認できず、ナトリウムイオンが存在しても、マグネシウムイオンが存在しない場合は、放電反応が進行しないことが確認できた。

【0053】
[実施例6]
実施例4および実施例5の結果から、Mgの溶解・析出が起こるためには、電解液中に10-3mol/L以上(0.001mol/L以上)のNa+が必要であることが示唆されたが、Mg2+およびNa+の両方をスムーズに挿入脱離できる正極活物質を使用しない限り、正極反応に悪影響が生じることが予測される。Mg2+およびNa+の両方に適切な正極活物質を探すことは難しいと考えられることから、Na+を含まないか含むとしても低濃度(0.001mol/L未満)の電解液において、Mgの溶解・析出が進行する条件を見つけることは重要である。

【0054】
電解液に添加する添加剤の種類や反応条件を検討したところ、作動温度を上げることで、Na+をほぼ含まない場合でも、Mg金属の溶解・析出反応が可逆的に進行することが確認された。
図9に、温度100℃での電気化学測定の結果を示す。電気化学的溶解・析出反応は、二極式セルを用いて調べた。対極および作用極はAr下で研磨したMg合金(AZ31)とした。セパレータとしては、Celgard #3401を用いた。電流値は5.7μA/cm2とした。
使用した電解液は、電解質がトリフルオロ酢酸マグネシウムであり、溶媒が炭酸プロピレンであり、Na+濃度が9.6×10-5mol/Lの電解液である。図9において、(a)は充放電曲線であり、(b)はその一部拡大図であり、(c)1~10サイクルの電圧対時間を示すグラフである。

【0055】
図9から明らかなように、セルを100℃で作動させた場合は、Mgの溶解・析出反応が進行することが確認された。このことから、電解液のNa+濃度が0.001mol/L未満であっても、作動温度を高くすることによって、充放電特性が飛躍的に向上することが確認できた。

【0056】
[実施例7]
実施例6と同じく、作用極および対極がAZ31、セパレータがCelgard #3401の二極式セルを用い、且つ、新たに設計した分銅を用いることにより電解液とステンレスとの接触を抑制しつつ、測定温度を100℃として電気化学測定を行った。
用いた電解液は、実施例6と同様、電解質がトリフルオロ酢酸マグネシウム、溶媒が炭酸プロピレンの電解液であり、Na+濃度は9.6×10-5mol/Lである。充放電試験は、実施例6と同じ条件で行い、サイクリックボルタンメトリーは、所定の電位範囲を1.0mV/sで掃引して測定した(充放電試験10サイクル後に実施した)。

【0057】
充放電試験の結果を図10に、サイクリックボルタモグラムを図11に示す。図10において、(a)は充放電曲線であり、(b)はその一部拡大図であり、(c)は1~10サイクルの電圧対時間を示すグラフである。
図9と図10の比較から分かるように、電解液とステンレスとの接触を抑制することにより、Mgの溶解・析出反応の分極が約0.4Vから0.2V未満に低減された。
また、図11に示すように、サイクリックボルタンメトリーでも、Mgの溶解・析出反応が起きることが確認できた。

【0058】
[実施例8]
露点-75℃以下のAr雰囲気グローブボックス内で、炭酸プロピレン等の溶媒に、所定量のテトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2・6H2O)を加えて溶解し、表2に示す組成の電解液を調製した。これに4Aのモレキュラーシーブスを加えて3日間放置して脱水処理を行った。
調製した電解液を用いて、マグネシウムの電気化学的溶解・析出反応を、サイクリックボルタンメトリーおよび定電流充放電試験により三極式セルを用いて調べた。作用極はCu板またはNi板、対極はAr下で研磨したMgワイヤ、参照極はMg金属またはAg/Ag+電極とした。サイクリックボルタンメトリーは、所定の電位範囲を1.0mV/sで掃引して測定した。充放電試験は、所定の電位範囲で0.1mA/cm2の定電流で行った。電気化学測定は全て30℃で行った。

【0059】
【表2】
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【0060】
図12に、No.6の電解液のサイクリックボルタモグラムと充放電曲線(充電15,000秒:3rd)を、図13にNo.7とNo.8の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。これらのグラフから、Mg塩としてMg(BF4)2を用いた場合も、Mg(CF3COO)2を用いた場合と同様、溶媒として環状エステルを使用しても、Mgの溶解・析出が生じることが確認できる。

【0061】
No.6~No.8の電解液のNa+濃度を調べたところ、実施例1の電解液と同様、10-2mol/L前後であり、このNa+は主にモレキュラーシーブに由来すると考えられる。
モレキュラーシーブ処理無し(Na+濃度は10-5mol/L程度)のNo.6の電解液を用いて、マグネシウムの電気化学的溶解・析出反応、および走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析(SEM/EDS)を行ったところ、電極へのMgの析出は確認できるものの、Mgの溶解・析出反応が生じにくくなる傾向が観察された。このことから、Mg塩がMg(BF4)2である場合にも、Na+はMgの溶解・析出反応を補助していると考えられる。
また、電解質がMg(BF4)2である場合もMg(CF3COO)2の場合と同様に、Na+濃度がごく微量(0.001mol/L未満)であっても、加温条件下でセルを作動させることにより、Mgの溶解・析出反応が進行すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の電解液は、電位窓が広い環状エステル系溶媒を用いて、マグネシウム金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させることができるため、マグネシウム二次電池の高電圧化・高エネルギー密度化に寄与できる。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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