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明細書 :抗がん剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年1月31日(2019.1.31)
発明の名称または考案の名称 抗がん剤
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
FI A61K 31/7088 ZNA
A61P 35/00
A61P 43/00 111
A61K 31/713
A61K 48/00
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
C12N 15/113 110Z
C07K 16/18
C12N 9/00
国際予備審査の請求
全頁数 23
出願番号 特願2018-505981 (P2018-505981)
国際出願番号 PCT/JP2017/010445
国際公開番号 WO2017/159739
国際出願日 平成29年3月15日(2017.3.15)
国際公開日 平成29年9月21日(2017.9.21)
優先権出願番号 2016051934
2016185319
2016230449
優先日 平成28年3月16日(2016.3.16)
平成28年9月23日(2016.9.23)
平成28年11月28日(2016.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】和久 剛
【氏名】小林 聡
【氏名】加藤 裕紀
【氏名】渡辺 秀教
【氏名】糀 美早紀
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B050
4C084
4C085
4C086
4H045
Fターム 4B050CC07
4B050LL01
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC03
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
要約 開示されているのは、NRF3阻害剤を有効成分として含有する抗がん剤、及びNRF3阻害剤の有効量を哺乳動物に投与する工程を含むがん治療方法である。
特許請求の範囲 【請求項1】
NRF3阻害剤を有効成分として含有する抗がん剤。
【請求項2】
NRF3阻害剤が、以下の(1)~(6)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗がん剤:
(1)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA、
(2)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを発現し得るDNA、
(3)NRF3遺伝子の転写産物又はその一部に対するアンチセンス核酸、
(4)NRF3遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有する核酸、
(5)NRF3に結合する抗体、
(6)NRF3に結合する低分子化合物。
【請求項3】
NRF3阻害剤が、以下の(1)及び/又は(2)である、請求項1又は2に記載の抗がん剤:
(1)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA、
(2)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを発現し得るDNA。
【請求項4】
大腸癌、前立腺癌、肺癌、神経膠腫、乳癌、子宮癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、胸腺腫、小腸癌、又は膵臓癌用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項5】
NRF3阻害剤の有効量を哺乳動物に投与する工程を含むがん治療方法。
【請求項6】
抗がん剤の製造におけるNRF3阻害剤の使用。
【請求項7】
がんの予防及び/又は治療に使用するためのNRF3阻害剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤、及びがん治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは国内外を問わず罹患率及び死亡率が高い疾患の一つである。現在、核酸合成、増殖因子受容体などの阻害剤が抗がん剤として臨床治療で使用されている。しかしながら、このような既知の抗がん剤は正常細胞にも作用してしまうため重篤な副作用を呈する場合が多い。
【0003】
そのため、正常細胞の生存及び増殖に影響を与えない新たな抗腫瘍剤の開発が望まれている。
【0004】
NRF3[Nuclear factor (erythoid-derived2)-like 3; NFE2L3]は、Cap‘n’Collarファミリーに属する塩基性ロイシンジッパー型転写因子であり、小Maf転写因子群とヘテロ2量体を形成しDNAに結合する(非特許文献1、2)。NRF3が直接転写する遺伝子候補には、第二相薬物代謝酵素のひとつであるNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ-1(NQO1)、平滑筋細胞マーカーの平滑筋アクチンαA及び22αなどがある(非特許文献3、4)。
【0005】
ヒトNRF3 mRNAの発現量は、胎盤、特に絨毛膜絨毛で高い(非特許文献2、5)。一方で、心臓、脳、肺、腎臓、膵臓、白血球、大腸、胸腺及び脾臓での発現は中~低程度であり、精巣、前立腺、骨格筋及び子宮ではほとんど発現していない(非特許文献2)。
【0006】
そして、遺伝子改変マウスを用いた研究から、Nrf3欠損による顕著な変化は見られないが(非特許文献6、7)、タバコ煙に含まれる発がん物質ベンゾピレンの連続暴露によるリンパ腫が亢進することが報告されている(非特許文献8)。また、高濃度の抗酸化剤ジブチルヒドロキシトルエンに暴露されたNrf3欠損マウスは、急性肺障害及び体重減少が誘発される(非特許文献9)。さらに、Nrf3欠損マウスの肺及び白色脂肪組織では、抗炎症性タンパク質Pparγ2の基底発現量が亢進している(非特許文献9)。以上の報告は、NRF3が炎症及び代謝異常に関与していることを示唆している。
【0007】
また、マカクザル線維芽細胞から多能性幹細胞へリプログラミングする際、Nrf3の発現量が急激に上昇することが報告されている(非特許文献10、11)。加えて、マウスの平滑筋細胞の分化、及びトリの胚発生に関与することも明らかとなっている(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Sykiotis GP, Bohmann D (2010) Stress-activated Cap‘n’Collar transcription factors in aging and human disease. Sci Signal 3(112):re3. doi:10.1126/scisignal.3112re3
【非特許文献2】Kobayashi A, Ito E, Toki T, Kogame K, Takahashi S, Igarashi K, Hayashi N, Yamamoto M (1999) Molecular cloning and functional characterization of a new Cap‘n’Collar family transcription factor Nrf3. J Biol Chem 274(10):6443-6452
【非特許文献3】Sankaranarayanan K, Jaiswal AK (2004) Nrf3 negatively regulates antioxidant-response element-mediated expression and antioxidant induction of NAD(P)H:quinone oxidoreductase1 gene. J Biol Chem 279(49):50810-50817
【非特許文献4】Pepe AE, Xiao Q, Zampetaki A, Zhang Z, Kobayashi A, Hu Y, Xu Q (2010) Crucial role of nrf3 in smooth muscle cell differentiation from stem cells. Circ Res 106(5):870-879. doi:10.1161/CIRCRESAHA.109.211417
【非特許文献5】Chenais B, Derjuga A, Massrieh W, Red-Horse K, Bellingard V, Fisher SJ, Blank V (2005) Functional and placental expression analysis of the human NRF3 transcription factor. Mol Endocrinol 19(1):125-137. doi:10.1210/me.2003-0379
【非特許文献6】Derjuga A, Gourley TS, Holm TM, Heng HH, Shivdasani RA, Ahmed R, Andrews NC, Blank V (2004) Complexity of CNC transcription factors as revealed by gene targeting of the Nrf3 locus. Mol Cell Biol 24(8):3286-3294
【非特許文献7】Kobayashi A, Ohta T, Yamamoto M (2004) Unique function of the Nrf2-Keap1 pathway in the inducible expression of antioxidant and detoxifying enzymes. Methods Enzymol 378:273-286
【非特許文献8】Chevillard G, Paquet M, Blank V (2011) Nfe2l3 (Nrf3) deficiency predisposes mice to T-cell lymphoblastic lymphoma. Blood 117(6):2005-2008. doi:10.1182/blood-2010-02-271460
【非特許文献9】Chevillard G, Nouhi Z, Anna D, Paquet M, Blank V (2010) Nrf3-deficient mice are not protected against acute lung and adipose tissue damages induced by butylated hydroxytoluene. FEBS Lett 584(5):923-928. doi:10.1016/j.febslet.2010.01.028
【非特許文献10】Ben-Yehudah A, CAt Easley, Hermann BP, Castro C, Simerly C, Orwig KE, Mitalipov S, Schatten G (2010) Systems biology discoveries using non-human primate pluripotent stem and germ cells: novel gene and genomic imprinting interactions as well as unique expression patterns. Stem Cell Res Ther 1(3):24. doi:10.1186/scrt24
【非特許文献11】Byrne JA, Pedersen DA, Clepper LL, Nelson M, Sanger WG, Gokhale S, Wolf DP, Mitalipov SM (2007) Producing primate embryonic stem cells by somatic cell nuclear transfer. Nature 450(7169):497-502. doi:10.1038/nature06357
【非特許文献12】Etchevers HC (2005) The Cap‘n’Collar family member NF-E2-related factor 3 (Nrf3) is expressed in mesodermal derivatives of the avian embryo. Int J Dev Biol 49(2-3):363-367. doi:10.1387/ijdb.041942he
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、正常細胞に作用せず、がん細胞に特異的に作用する抗がん剤及びがん治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、転写因子NRF3が大腸、肺など複数の腫瘍部位で高発現していることを見出し、ヒト大腸癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、及び神経膠腫細胞において、NRF3の発現量をsiRNA法により低下させた場合、これらの癌細胞の増殖を有意に低下させることができるという知見を得た。さらに、ヒト大腸癌細胞においてNRF3の発現低下によりアポトーシス誘導と細胞周期(G0/G1期)停止とが引き起こされることを確認した。
【0011】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の抗がん剤等を提供するものである。
【0012】
項1.NRF3阻害剤を有効成分として含有する抗がん剤。
項2.NRF3阻害剤が、以下の(1)~(6)からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の抗がん剤:
(1)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA、
(2)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを発現し得るDNA、
(3)NRF3遺伝子の転写産物又はその一部に対するアンチセンス核酸、
(4)NRF3遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有する核酸、
(5)NRF3に結合する抗体、
(6)NRF3に結合する低分子化合物。
項3.NRF3阻害剤が、以下の(1)及び/又は(2)である、項1又は2に記載の抗がん剤:
(1)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA、
(2)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを発現し得るDNA。
項4.大腸癌、前立腺癌、肺癌、神経膠腫、乳癌、子宮癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、胸腺腫、小腸癌、又は膵臓癌用である、項1~3のいずれか一項に記載の抗がん剤。
項5.NRF3阻害剤の有効量を哺乳動物に投与する工程を含むがん治療方法。
項6.抗がん剤の製造におけるNRF3阻害剤の使用。
項7.がんの予防及び/又は治療に使用するためのNRF3阻害剤。
項8.NRF3阻害剤を有効成分として含有する、がんの予防及び/又は治療用の医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抗がん剤は、新たな作用機序を利用するものであり、優れた抗がん作用を有する。さらに、本発明の抗がん剤は、正常細胞に作用せず、がん細胞に特異的に作用するという優れた特性を有しているため、既知の抗がん剤より副作用の低減が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】各臓器の正常部位及び腫瘍部位におけるNRF3発現量(mRNA)の測定結果を示す写真である。N:正常部位、T:腫瘍部位
【図2】各臓器の正常部位及び腫瘍部位におけるNRF3発現量(mRNA)の測定結果を示すグラフである。縦軸は蛍光強度の平均値を示す。N:正常部位、T:腫瘍部位 *: p<0.05, : p<0.001 (Mean±SE, Paired t-test)*: p<0.05 (Kruskal Wallis H-test/Mann-Whitney U-test)2 = 0.25 (n=20, Spearman's correction)
【図5】siRNAによりNRF3の発現量を低下させた際のヒト癌細胞の増殖率を示すグラフである。(1):大腸癌細胞HCT116、(2):前立腺癌細胞LNCaP、(3):肺癌細胞A549、(4):神経膠腫細胞A172 ***; p<0.005, n=3, Tukey/ANOVA*: p<0.05, : p<0.01, : p<0.005, n=3, Tukey/ANOVA***: p<0.005, n=3, Tukey/ANOVA【図9】NRF3過剰発現ヒト肺がん細胞H1299を用いたマウス移植解析の結果を示す写真及びグラフである(コントロール細胞はGFP過剰発現細胞である)。(A)移植後23日の腫瘍写真(bar=10 mm) (B)腫瘍サイズの経時変化(n=11, mean±SD) (C)移植後23日の腫瘍重量(n=11, mean±SD, ***: p<0.005, Mann-Whitney U-test)【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0016】
なお、本明細書において「含む、含有する(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「からなる(consist of)」という意味をも包含する。

【0017】
また、本発明において「核酸」とはRNA又はDNAを意味する。また、本明細書では、NRF3をコードする遺伝子をNRF3遺伝子と称し、単にNRF3と記載する場合はタンパク質を意味しているものとする。

【0018】
本発明において「遺伝子」とは、特に言及しない限り、2本鎖DNA、1本鎖DNA(センス鎖又はアンチセンス鎖)、及びそれらの断片が含まれる。また、本発明において「遺伝子」とは、特に言及しない限り、調節領域、コード領域、エクソン、及びイントロンを区別することなく示すものとする。

【0019】
本発明において、「核酸」、「ヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は同義であって、これらはDNA及びRNAの両方を含み、2本鎖であっても1本鎖であってもよい。

【0020】
本発明の抗がん剤は、NRF3阻害剤を有効成分として含有することを特徴とする。

【0021】
本発明において「NRF3阻害剤」とは、NRF3の機能を阻害できる化合物全般を意味し、そのような化合物としては、例えば、NRF3遺伝子の発現を阻害又は抑制する化合物、NRF3の機能若しくは活性を阻害又は低下させる化合物などが挙げられる。

【0022】
上記NRF3阻害剤の好ましい例としては、以下の(1)~(6)が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、以下の(1)及び(2)が特に好ましい。
(1)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA、
(2)NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを発現し得るDNA、
(3)NRF3遺伝子の転写産物又はその一部に対するアンチセンス核酸、
(4)NRF3遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有する核酸、
(5)NRF3に結合する抗体、
(6)NRF3に結合する低分子化合物。

【0023】
NRF3は、転写因子であって、正式名称Nuclear factor, erythroid 2-like 3、別名NFE2L3であり、1999年にHeLa細胞から初めて単離された(A Kobayashi et al., J Biol Chem. 1999 Mar 5;274(10):6443-6452)。NRF3遺伝子の塩基配列は、NCBIのweb siteにRefSeq Accesstion No. NM_004289(ヒト)(配列番号1)、NM_010903(マウス)(配列番号2)として登録されおり、アミノ酸配列は、RefSeq Accession No.NP_004280(ヒト)(配列番号3)、NP_035033(マウス)(配列番号4)として登録されている。

【0024】
本発明におけるNRF3遺伝子には、前述するようなデータベースに登録されている塩基配列を有するもの以外であっても、その縮重物及び変異体も含まれ、縮重物及び変異体としては上記アミノ酸配列からなるタンパク質と同等の生物学的活性を有するタンパク質をコードするものが望ましい。同等の生物学的活性を有するタンパク質としては、例えば、他の生物由来のタンパク質が挙げられる。

【0025】
変異体としては、例えば、(a)前述するようなデータベースに登録されているアミノ酸配列において、1又は2個以上、例えば、1~50個、1~25個、1~12個、1~9個、1~5個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、(b)前述するようなデータベースに登録されている塩基配列と70%以上、80%以上、90%以上、95%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子などが挙げられる。

【0026】
塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。

【0027】
以下、上記(1)~(6)のNRF3阻害剤について説明する。

【0028】
(RNAi効果を有する二本鎖RNA)
NRF3に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを使用することにより、NRF3遺伝子の発現を阻害又は抑制することができる。

【0029】
RNAi (RNA interference、RNA干渉)とは、標的遺伝子のmRNA配列と同一の配列からなるセンスRNA及びこれと相補的な配列からなるアンチセンスRNAからなる二本鎖RNAを細胞内に導入することにより、標的遺伝子のmRNAの破壊、タンパク質への翻訳阻害を誘導し、標的遺伝子の発現が阻害される現象をいう。RNAi機構の詳細については未だに不明な部分もあるが、DICERといわれる酵素(RNase III核酸分解酵素ファミリーの一種)が二本鎖RNAと接触し、二本鎖RNAがsmall interfering RNA (siRNA)と呼ばれる小さな断片に分解されるのが主な機構と考えられている。本発明におけるRNAi効果を有する二本鎖RNAには、当該siRNAも含まれる。

【0030】
なお、本発明におけるRNAi効果を有する二本鎖RNAには、二本鎖RNAの一方の端が閉じられた構造の分子、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(shRNA)も含まれる。すなわち、上記RNAには、分子内において二本鎖RNA構造を形成し得る分子も含まれる。

【0031】
本発明においてRNAiのために使用されるRNAは、NRF3遺伝子又は該遺伝子の部分領域と完全に同一である必要はないが、完全な同一性を有することが好ましい。

【0032】
本発明のRNAi効果を有する二本鎖RNAは、通常、NRF3遺伝子のmRNAにおける連続する任意のRNA領域と同一の配列からなるセンスRNA、及び該センスRNAに相補的な配列からなるアンチセンスRNAからなる二本鎖RNAである。上記「連続する任意のRNA領域」の長さは、通常20~30塩基であり、好ましくは21~23塩基である。しかしながら、そのままの長さではRNAi効果を有さないような長鎖のRNAであっても、細胞内でRNAi効果を有するsiRNAへ分解され得るので、本発明における二本鎖RNAの長さは特に制限されない。また、NRF3遺伝子のmRNAの全長又はほぼ全長の領域に対応する長鎖二本鎖RNAを、例えば、予めDICERで分解させ、その分解産物を本発明の二本鎖RNAとして利用することもできる。この分解産物には、RNAi効果を有する二本鎖RNA分子(siRNA)が含まれ得る。

【0033】
また、通常、末端に数塩基のオーバーハングを有する二本鎖RNAは、RNAi効果が高いことが知られているため、本発明の二本鎖RNAは、末端に数塩基のオーバーハングを有することが望ましい。このオーバーハングを形成する塩基の長さは特に制限されないが、好ましくは2塩基のオーバーハングである。本発明において、例えば、TT(チミン×2)、UU(ウラシル×2)等のオーバーハングを有する二本鎖RNAを用いることができ、特に好ましくは19塩基の二本鎖RNAとTTのオーバーハングを有する分子である。本発明における二本鎖RNAには、オーバーハングを形成する塩基がDNAである分子も含まれる。

【0034】
また、天然型のヌクレオチドを含むsiRNAはリボヌクレアーゼに対して感受性であるために分解を受け易い。本発明において、この欠点を補うため、siRNA中のウリジン及びシチジンの2'OH基をメチル化した2'-O-メチル化siRNAを合成して使用してもよい。

【0035】
本発明における「NRF3遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA」は、該二本鎖RNAの標的となるNRF3遺伝子の塩基配列の情報を基に作製することが可能である。例えば、配列番号1又は2に記載の塩基配列を基に、該配列の転写産物であるmRNAの任意の連続するRNA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖RNAを作製する。

【0036】
本発明における「RNAi効果を有する二本鎖RNA」としては、具体的には、実施例中に記載された二本鎖RNA(配列番号5及び6、7及び8、9及び10)が挙げられる。

【0037】
また、本発明における二本鎖RNAは、全てのヌクレオチドがリボヌクレオチド(RNA)である必要はない。すなわち、本発明において、二本鎖RNAを構成する1又は2個以上のリボヌクレオチドは、対応するデオキシリボヌクレオチドとすることができる。

【0038】
本発明において二本鎖RNAを構成する核酸は、例えば、LNA (Locked Nucleic Acid)等の核酸アナログとすることもできる。該LNPは、ヌクレアーゼに耐性の物質であるため、より長時間RNAi効果を持続させることが可能となる。

【0039】
本発明の二本鎖RNAは、化学合成、又は本発明の二本鎖RNAをコードするDNAを使用してin vitro若しくはin vivoで合成することが可能である。

【0040】
また、本発明におけるRNAi効果を有する二本鎖RNAは、細胞内で当該二本鎖RNAを発現し得るDNAを利用したものであってもよい。このような二本鎖RNAを発現し得るDNAは、通常、該二本鎖RNAの一方の鎖をコードするDNA、及び該二本鎖RNAの他方の鎖をコードするDNAが、それぞれ独立又は連続して発現し得るようにプロモーターと連結した構造を有するDNAである。上記DNAは、公知の遺伝子工学的手法により、容易に製造することができる。上記DNAとしては、例えば、本発明におけるRNAをコードするDNAを公知の発現ベクターへ挿入することによって得られる発現ベクターを挙げることができる。

【0041】
(アンチセンス核酸)
NRF3遺伝子の転写産物又はその一部に対するアンチセンス核酸を使用することにより、NRF3遺伝子の発現を阻害又は抑制することができる。

【0042】
本発明の一つの態様として、NRF3遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計することで、遺伝子の翻訳阻害に効果的であり得る。また、コード領域又は3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することも可能である。このように、NRF3遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む核酸も、本発明におけるアンチセンス核酸に含まれ得る。アンチセンス核酸の配列は、標的遺伝子又はその一部と相補的な配列であることが望ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限り、完全に相補的である必要はなく、標的遺伝子の転写産物に対して、好ましくは90%以上の相補性、より好ましくは95%以上の相補性を有していればよい。アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するため、アンチセンス核酸の長さは15塩基以上が好ましい。さらに、非特異的な影響を回避するため標的遺伝子の異なる配列に相補的な複数のアンチセンス核酸を用いるのが好ましい。

【0043】
また、本発明におけるアンチセンス核酸は、細胞内で当該アンチセンス核酸を発現し得るDNAを利用したものであってもよい。上記DNAは、公知の遺伝子工学的手法により、容易に製造することができる。上記DNAとしては、例えば、本発明におけるアンチセンス核酸をコードするDNAを公知の発現ベクターへ挿入することによって得られる発現ベクターを挙げることができる。

【0044】
(リボザイム活性を有する核酸)
NRF3遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有する核酸を使用することで、NRF3遺伝子の発現を阻害又は抑制することができる。

【0045】
リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子を意味し、リボザイムには種々の活性を有するものが存在する。NRF3遺伝子のmRNAを部位特異的に切断するリボザイムを設計することは公知の方法により可能である。

【0046】
上記リボザイム活性を有する核酸としては、当該リボザイム活性を有する核酸を発現し得るDNAを利用したものであってもよい。上記DNAは、公知の遺伝子工学的手法により、容易に製造することができる。上記DNAとしては、例えば、本発明におけるリボザイム活性を有する核酸をコードするDNAを公知の発現ベクターへ挿入することによって得られる発現ベクターを挙げることができる。

【0047】
(抗体)
NRF3に結合する抗体を使用することで、NRF3の機能若しくは活性を阻害又は低下させることができる。

【0048】
NRF3に結合する抗体は、当業者に公知の方法により調製することができる。本発明の抗体は、NRF3に結合し得るものであれば特に限定されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体、抗体修飾物等が含まれる。抗体はまた抗体断片であってもよく、そのような抗体断片としてはFab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv等が挙げられる。さらに、抗体のアイソタイプは、IgG (IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA、IgDなどが存在するが、制限無くいずれも使用できる。

【0049】
(低分子化合物)
NRF3に結合する低分子化合物を使用することで、NRF3の機能若しくは活性を阻害又は低下させることができる。

【0050】
NRF3に結合する低分子化合物は、天然及び人工の化合物のいずれであってもよく、公知の方法によりスクリーニングしてくることが可能である。

【0051】
本発明の抗がん剤は、薬学上許容される担体と混合された状態とされていてもよい。これら薬学上許容される担体として、例えば、賦形剤、緩衝剤、保存料、安定剤、懸濁剤、等張化剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、着色料、着香料、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられる。

【0052】
本発明の抗がん剤を製剤化するにあたっては、常法に従って、必要に応じて上記担体を添加することができ、担体としては、例えば、軽質無水ケイ酸、乳糖、マンニトール、デンプン、ゼラチン、コーンスターチ、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、無機塩類等を添加することができる。

【0053】
本発明の抗がん剤の剤型の種類としては、経口剤として錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、細粒剤、軟又は硬カプセル剤、フィルムコーティング剤、舌下剤、ペレット剤、ペースト剤などが、非経口剤として注射剤、経皮剤、軟膏剤、硬膏剤、坐剤、外用液剤などが挙げられ、投与経路、投与対象等に応じて最適な剤型を選択することができる。

【0054】
本発明における「抗がん剤」は、抗腫瘍剤、抗腫瘍薬剤、抗腫瘍医薬組成物等と表現される場合もある。

【0055】
本発明におけるRNAi効果を有する二本鎖RNA、アンチセンスRNA、及びリボザイム活性を有する核酸を発現し得るDNAを生体内に投与する場合、レトロウイルス、アデノウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクター及びリポソームなどの非ウイルスベクターを利用することができる。また、本発明におけるRNAi効果を有する二本鎖RNA、アンチセンス核酸、及びリボザイム活性を有する核酸を生体内に投与する場合、リポソーム、高分子ミセル、カチオン性キャリアなどの非ウイルスベクターを利用することができる。投与方法としては、例えば、in vivo法及びex vivo法が挙げられる。

【0056】
本発明の抗がん剤における有効成分であるNRF3阻害剤の配合量は、剤型、投与経路等に応じて適宜選択されるが、通常、製剤全量中0.0001~90質量%程度、好ましくは0.001~70質量%程度である。

【0057】
本発明の抗がん剤は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。本発明の抗がん剤の投与方法は、特に限定されないが、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行うことができる。本発明の抗がん剤の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢及び体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師の判断により適宜決定できる。

【0058】
本発明の抗がん剤により治療できる癌の種類は、胃癌、大腸癌(直腸癌、結腸癌)、小腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、咽頭癌、食道癌、腎癌、胆のう及び胆管癌、頭頸部癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌(子宮頸癌、子宮体癌)、卵巣癌、脳腫瘍(例えば、神経膠腫など)、胸腺腫、白血病、悪性リンパ腫等が挙げられ、中でも大腸癌、前立腺癌、肺癌、神経膠腫、乳癌、子宮癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、胸腺腫、小腸癌及び膵臓癌、特に大腸癌、前立腺癌、肺癌、神経膠腫、卵巣癌及び子宮癌に対しては高い効果が期待される。

【0059】
本発明の抗がん剤は、優れた抗がん作用を有している。また、本発明の抗がん剤は、NRF3を標的とする新たな作用機序を利用するものであるため、正常細胞に作用せず、がん細胞に特異的に作用するという優れた特性を有している。結果として、正常細胞にも作用する既知の抗がん剤と比べて副作用の低減が期待される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
試験例1
Cancer profiling array (Clontech, 7841-1)を用いて、各臓器の正常部位及び腫瘍部位におけるNRF3発現量(mRNA)を測定した。プローブの鋳型にはNRF3 cDNAをHind/EcoRI消化して出現する、配列番号11及び12で示される2つの約500bp長断片を混合して用いた。また、NRF3発現量の定量は、画像解析ソフトウエアImage Jを用いて蛍光強度を測定することにより行った。
【実施例】
【0062】
結果を図1-4に示す。なお、図2-4は図1の結果から得られた定量データを基に作成した。様々な臓器の腫瘍部位でNRF3が高発現していることが見出された(図1)。大腸癌、結腸癌、子宮癌及び卵巣癌では特に有意な発現亢進が見られた(図2)。特に有意な発現亢進が見られた大腸癌、結腸癌、子宮癌及び卵巣癌では、NRF3発現はステージ進行に伴い増加することを見出した(図3)。また、乳癌ではNRF3発現は腫瘍径との正の相関を示した(図4)。
【実施例】
【0063】
試験例2
NRF3発現量をsiRNA法により低下させた場合の細胞増殖への影響を調べた。細胞としてはヒト大腸癌細胞HCT116、ヒト前立腺癌細胞LNCaP、ヒト肺癌細胞A549及びヒト神経膠腫細胞A172を用いた。
【実施例】
【0064】
HCT116細胞及びA172細胞は、D-MEM培地(高グルコース、L-グルタミン、フェノールレッド含有)(和光純薬工業(株)、044-29765)に最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して37℃、5% CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0065】
A549細胞は、D-MEM培地(高グルコース、L-グルタミン、フェノールレッド含有)(和光純薬工業(株)、044-29765)に最終濃度2 mMのL-グルタミン(ナカライテスク(株)、16948-04)、最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して37℃、5% CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0066】
LNCaP細胞は、RPMI 1640培地(L-グルタミン含有)(ナカライテスク(株)、30264-56)に最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して37℃、5% CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0067】
各細胞を0.5×105細胞ずつ12 well plate (Thermo Fisher Scientific、150628)に播種した直後、1 well当たりOpti-MEM (Thermo Fisher Scientific、31985070) 100μL、20 pmol siRNA、Lipofectamine (商標) RNAiMAX Reagent (Thermo Fisher Scientific、13778150) 2.5μLの混合溶液を添加した。
【実施例】
【0068】
NRF3 siRNAとしては3つの異なる標的配列に対応する#1(センス鎖:CGCAAAUUGGACAUAAUUUTT(配列番号5)、アンチセンス鎖:AAAUUAUGUCCAAUUUGCGTT(配列番号6))、#2(センス鎖:GGAUCAAAGUGAUUCUGAUTT(配列番号7)、アンチセンス鎖:AUCAGAAUCACUUUGAUCCAA(配列番号8))、及び#3(センス鎖:GCAAAGAAGGAAACUCUUATT(配列番号9)、アンチセンス鎖:UAAGAGUUUCCUUCUUUGCUU(配列番号10))を用いた。また、コントロールsiRNA (siCtrl)にはセンス鎖:UUCUCCGAACGUGUCACGUTT(配列番号13)、アンチセンス鎖ACGUGACACGUUCGGAGAATT(配列番号14)を用いた。
【実施例】
【0069】
siRNA導入72時間後、培地を吸引し0.05%トリプシン-EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific、25300-062)で細胞を剥離させた。その後、血球換算盤を用いて全細胞数を測定した。
【実施例】
【0070】
コントロールsiRNA (siCtrl)を1としたときの増殖効率を算出した結果を図5に示す。NRF3 siRNA導入3日後、HCT116、LNCaP、A549及びA172のいずれの細胞でも有意な増殖低下が観察された。このことは、NRF3ががんの新規治療標的分子となることを強く示している。
【実施例】
【0071】
試験例3
NRF3発現量をsiRNA法により低下させた場合の細胞死(アポトーシス)への影響を調べた。細胞としてはヒト大腸癌細胞HCT116を用いた。
【実施例】
【0072】
HCT116細胞は、D-MEM培地(高グルコース、L-グルタミン、フェノールレッド含有)(和光純薬工業(株)、044-29765)に最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して37℃、5% CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0073】
HCT116細胞を1×105細胞ずつ6 well plate (Thermo Fisher Scientific、140675)に播種した直後、1 well当たりOpti-MEM (Thermo Fisher Scientific、31985070) 200μL、40 pmol siRNA、Lipofectamine (商標) RNAiMAX Reagent (Thermo Fisher Scientific、13778150) 5μLの混合溶液を添加した。
【実施例】
【0074】
NRF3 siRNAとしては3つの異なる標的配列に対応する#1(センス鎖:CGCAAAUUGGACAUAAUUUTT、アンチセンス鎖:AAAUUAUGUCCAAUUUGCGTT)、#2(センス鎖:GGAUCAAAGUGAUUCUGAUTT、アンチセンス鎖:AUCAGAAUCACUUUGAUCCAA)、及び#3(センス鎖:GCAAAGAAGGAAACUCUUATT、アンチセンス鎖:UAAGAGUUUCCUUCUUUGCUU)を用いた。また、コントロールsiRNA (siCtrl)にはセンス鎖:UUCUCCGAACGUGUCACGUTT、アンチセンス鎖ACGUGACACGUUCGGAGAATTを用いた。
【実施例】
【0075】
siRNA導入48時間後、培地を吸引し0.05%トリプシン-EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific、25300-062)で細胞を剥離させた。その後、Alexa Fluor (商標) 488 Annexin v/Dead cell Apoptosis Kit (Thermo Fisher Scientific、V13241)又はClick-iT EdU Alexa Fluor 647 Flow Cytometry Assay Kit (Thermo Fisher Scientific、C10424)を用いて染色し、FACSAria II (BDバイオサイエンス)によりアポトーシス細胞又はG0/G1期停止細胞の割合を計測した。
【実施例】
【0076】
結果を図6及び7に示す。NRF3 siRNA導入2日後、HCT116細胞ではアポトーシス誘導が観察された(図6)。このことは、NRF3ががんの新規治療標的分子となることを強く示している。NRF3 siRNA導入2日後、HCT116細胞ではG0/G1期での細胞周期停止が観察された(図7)。このことは、NRF3ががん増殖を亢進させていることを強く示している。
【実施例】
【0077】
試験例4
N末端側にFLAGタグを融合したヒト全長NRF3を発現するプラスミド(FLAG-NRF3プラスミド)と、コントロールとしてN末端側にFLAGタグを融合した緑色蛍光タンパク質を発現するプラスミド(FLAG-GFPプラスミド)とをそれぞれヒト肺がん細胞H1299に導入した。H1299細胞は、RPMI 1640培地(L-グルタミン含有)(ナカライテスク(株)、30264-56)に最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して37℃、5% CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0078】
各細胞を2×106細胞ずつ6 well plate (Thermo Fisher Scientific、150628)に播種した直後、1 well当たりOpti-MEM (Thermo Fisher Scientific、31985070) 100μL、2μgプラスミドDNA、Lipofectamine (商標) 2000 Transfection Reagent (Thermo Fisher Scientific、11668027) 5μLの混合溶液を添加した。プラスミド導入72時間後、最終濃度700μg/ml のG418 (ナカライテスク(株)、08973-14)を加えた培地に交換した。3~5日毎に培地を交換しクローン化した。その後、NRF3を発現しているクローン細胞株をウエスタンブロットで選抜した(図8A)。
【実施例】
【0079】
クローン化したNRF3あるいはGFP細胞株を、2×104細胞ずつ12 well plate (Thermo Fisher Scientific、150628)に播種した。この時、培地にはRPMI 1640培地(L-グルタミン含有)(ナカライテスク(株)、30264-56)に最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して用い、37℃、5% CO2環境下で培養した。測定開始後7日間、2~3日毎に培地を吸引し0.05%トリプシン-EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific、25300-062)で細胞を剥離させ、血球換算盤を用いて全細胞数を測定した。測定後は全細胞剥離液の1/10量を、新しい培地入りのプレートに播種して培養を続けた。
【実施例】
【0080】
結果を図8Bに示す。測定の結果、NRF3の高発現によりがん細胞の増殖が有意に亢進することを明らかにした。
【実施例】
【0081】
試験例5
クローン化したNRF3あるいはGFP細胞株を、RPMI 1640培地(L-グルタミン含有)(ナカライテスク(株)、30264-56)に最終濃度50μg/mlのG418(ナカライテスク(株)、08973-14)、最終濃度10%のFBS ((株)ニチレイバイオサイエンス、171012)、最終濃度40 units/mLのペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(Thermo Fisher Scientific、15140-122)を添加して、37℃、5% CO2環境下で培養した。2~4日毎に培地を吸引し0.05%トリプシン-EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific、25300-062)で細胞を剥離させ、4~8×106細胞/100μlとなるように1×D-PBS(-) (和光純薬工業(株)、048-29805)に懸濁した。
【実施例】
【0082】
その後、4週齢の雌BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア(株))の両腹側部に、片腹100μlずつ皮下注射により移植した。皮下移植は安全キャビネット内、マウス飼育はアイソレータ—内で行った。移植後23日の間、2~3日毎にノギスを用いて腫瘍径を測定し、腫瘍サイズを次式で算出した:1/2×腫瘍の長径×腫瘍の短径×腫瘍の短径。移植23日後、頚椎脱臼で安楽死させた。全身像と摘出した腫瘍を撮影した後、腫瘍の重量を測定した。
【実施例】
【0083】
結果を図9に示す。これらの測定の結果、NRF3の高発現によって腫瘍サイズ及び腫瘍重量ともに有意に増加することを明らかにした。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8