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明細書 :自動車用緊急ブレーキ予測装置および予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-018609 (P2019-018609A)
公開日 平成31年2月7日(2019.2.7)
発明の名称または考案の名称 自動車用緊急ブレーキ予測装置および予測方法
国際特許分類 B60T   7/12        (2006.01)
B60T   8/00        (2006.01)
B60T  13/12        (2006.01)
FI B60T 7/12 B
B60T 8/00 Z
B60T 13/12
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-136189 (P2017-136189)
出願日 平成29年7月12日(2017.7.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 研究集会名:進化適応型自動車運転支援システム「ドライバ・イン・ザ・ループ」研究拠点形成 第6回シンポジウム、開催日:平成29年3月28日
発明者または考案者 【氏名】イヴァン タネヴ
【氏名】下原 勝憲
【氏名】アルベルト ポドュセンコ
【氏名】ブセヴォルド ニクリン
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 3D048
3D246
Fターム 3D048BB35
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH26
3D048HH66
3D048HH68
3D048QQ04
3D048RR01
3D048RR35
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB30
3D246GC16
3D246HA09C
3D246HA10C
3D246HC05
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246KA13
3D246KA15
要約 【課題】直前のアクセルペダルの踏込量に関係なく、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしたときに、そのことを高い確率で予測できる緊急ブレーキ予測装置を提供する。
【解決手段】緊急ブレーキ予測装置4は、ポジションセンサ31で検出した、ドライバーがアクセルペダルから足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを用いて機械学習により作成され、前記動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合とに分類する分類器43を備えている。当該予測装置4は、自動車1に搭載されたポジションセンサ11で検出した、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを入力とし、分類器43による判定の結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、自動車の制御装置12に対して緊急ブレーキの駆動を指示する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ドライブシミュレータまたは自動車に搭載されたアクセルペダルポジションセンサで検出した、ドライバーがアクセルペダルから足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを用いて、機械学習を行うことにより作成され、前記動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合とに分類する分類器を備え、
自動車に搭載された前記アクセルペダルポジションセンサで検出した、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを入力とし、前記分類器による判定の結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、前記自動車の制御装置に対して緊急ブレーキの駆動を指示することを特徴とする自動車用緊急ブレーキ予測装置。
【請求項2】
前記時系列データは、前記アクセルペダルポジションセンサの出力信号を一定の間隔でサンプリングすることにより作成される、請求項1に記載の緊急ブレーキ予測装置。
【請求項3】
前記時系列データから、ドライバーがアクセルペダルから足を離したときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときまでのデータを切り出すデータ切出し部と、当該データ切出し部で切り出された時系列データから複数の特徴量を抽出する特徴抽出部とを備えた、請求項1または2に記載の自動車用緊急ブレーキ予測装置。
【請求項4】
前記特徴抽出部で抽出された時系列データの特徴量を記憶する学習用データ記憶部を更に備え、前記分類器は、当該学習用データ記憶部から読み出された複数の時系列データの特徴量のデータを用いて作成される、請求項3に記載の自動車用緊急ブレーキ予測装置。
【請求項5】
前記複数の特徴量は、ドライバーが足を離す直前のアクセルペダルの位置、アクセルペダルが戻るときの最大速度および平均速度である、請求項3または4に記載の自動車用緊急ブレーキ予測装置。
【請求項6】
前記自動車の制御装置は、緊急ブレーキ駆動の指示があった場合、ブレーキアクチュエータを作動させて、前記自動車の車輪に調圧されたブレーキフルードを供給することにより車輪に制動力を発揮させる、請求項1ないし5のいずれかに記載の自動車用緊急ブレーキ予測装置。
【請求項7】
ドライブシミュレータまたは自動車に搭載されたアクセルペダルポジションセンサを用いて、ドライバーがアクセルペダルから足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを収集するデータ収集ステップと、
前記時系列データを用いて機械学習を行い、前記動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合とに分類する分類器を作成する分類器作成ステップと、
前記分類器作成ステップで作成された分類器を自動車に搭載された緊急ブレーキ予測装置に組み込む組み込みステップと、
自動車に搭載された前記アクセルペダルポジションセンサで検出したアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを前記緊急ブレーキ予測装置に入力し、当該緊急ブレーキ予測装置に組み込まれた分類器による判定の結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、前記自動車の制御装置に対して緊急ブレーキの駆動を指示する緊急ブレーキ予測ステップと、を含む自動車の緊急ブレーキ予測方法。
【請求項8】
前記時系列データは、前記アクセルペダルポジションセンサの出力信号を一定の間隔でサンプリングすることにより作成される、請求項7に記載の自動車の緊急ブレーキ予測方法。
【請求項9】
前記分類器作成ステップは、前記時系列データから、ドライバーがアクセルペダルから足を離したときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときまでのデータを切り出すデータ切出しステップと、当該データ切出しステップで切り出された時系列データから、学習用データとなる複数の特徴量を抽出する特徴抽出ステップとを更に含む、請求項7または8に記載の自動車の緊急ブレーキ予測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データに基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしているか否かを予測する自動車用緊急ブレーキ予測装置および予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車で走行しているときに、駐車した車の陰から通行人が飛び出した場合など、突発的な変化が起きたときに、ドライバーは緊急ブレーキをかけて自動車を停止させる。
【0003】
一方、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとした後、実際にブレーキが作動するまでには、アクセルペダルから足を上げてブレーキペダルに足を移す時間と、ブレーキペダルを踏み込む時間が必要となる。
【0004】
その間、ドライバーが車の停止を意図しているにもかかわらず、自動車が空走することになる。この時間は200ms~400msとなり、自動車が50Km/hで走行している場合、2.8m~5.6m移動することになる。この空走時間を短くすることは、緊急ブレーキ時における自動車の停止距離を短縮して安全性を高める上で重要である。
【0005】
上述の空走時間を短縮するため、アクセルペダルの戻り速度が一定値以上になったときに、ブレーキを自動的に作動させる装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平10-315938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の装置では、アクセルペダルを踏み込む前の状態に戻すバネの特性のために、直前のペダルの踏込量が小さい場合、ペダルの戻り速度が小さくなるためブレーキが作動せず、緊急ブレーキに対応できない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、直前のアクセルペダルの踏込量に関係なく、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしたときに、そのことを高い確率で予測できる緊急ブレーキ予測装置および予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動車用緊急ブレーキ予測装置は、
ドライブシミュレータまたは自動車に搭載されたアクセルペダルポジションセンサで検出した、ドライバーがアクセルペダルから足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを用いて、機械学習を行うことにより作成され、前記動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合とに分類する分類器を備え、
自動車に搭載された前記アクセルペダルポジションセンサで検出した、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを入力とし、前記分類器による判定の結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、前記自動車の制御装置に対して緊急ブレーキの駆動を指示することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記時系列データは、前記アクセルペダルポジションセンサの出力信号を一定の間隔でサンプリングすることにより作成されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る自動車用緊急ブレーキ予測装置は、前記時系列データから、ドライバーがアクセルペダルから足を離したときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときまでのデータを切り出すデータ切出し部と、当該データ切出し部で切り出された時系列データから複数の特徴量を抽出する特徴抽出部とを備えることが好ましい。
【0012】
また前記特徴抽出部で抽出された時系列データの特徴量を記憶する学習用データ記憶部を更に備え、前記分類器は、当該学習用データ記憶部から読み出された複数の時系列データの特徴量のデータを用いて作成されることが好ましい。
【0013】
前記複数の特徴量は、ドライバーが足を離す直前のアクセルペダルの位置、アクセルペダルが戻るときの最大速度および平均速度であることが好ましい。
【0014】
前記自動車の制御装置は、緊急ブレーキ駆動の指示があった場合、ブレーキアクチュエータを作動させて、前記自動車の車輪に調圧されたブレーキフルードを供給することにより車輪に制動力を発揮させることが好ましい。
【0015】
また本発明の係る自動車の緊急ブレーキ予測方法は、
ドライブシミュレータまたは自動車に搭載されたアクセルペダルポジションセンサを用いて、ドライバーがアクセルペダルから足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを収集するデータ収集ステップと、
前記時系列データを用いて機械学習を行い、前記動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合とに分類する分類器を作成する分類器作成ステップと、
前記分類器作成ステップで作成された分類器を自動車に搭載された緊急ブレーキ予測装置に組み込む組み込みステップと、
自動車に搭載された前記アクセルペダルポジションセンサで検出したアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを前記緊急ブレーキ予測装置に入力し、当該緊急ブレーキ予測装置に組み込まれた分類器による判定の結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、前記自動車の制御装置に対して緊急ブレーキの駆動を指示する緊急ブレーキ予測ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動車用緊急ブレーキ予測装置および予測方法によれば、直前のアクセルペダルの踏込量に関係なく、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしたときに、そのことを高い確率で予測して、ブレーキを作動させることができる。そのため、緊急ブレーキ時における自動車の停止距離を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動車に搭載された緊急ブレーキ予測装置と、当該予測装置に組み込まれる分類器を作成する分類器作成装置の構成を示す図である。
【図2】自動車に搭載された部材のうちブレーキに関連した部材を示す図である。
【図3】ドライバーが緊急ブレーキをかけたときのアクセルペダルとブレーキペダルの動きを示すグラフである。
【図4】緊急ブレーキをかけたときの時間遅れの分布を示すグラフである。
【図5】アクセルペダルが戻るときの最大レートとブレーキペダルを押し下げるときの最大レートとの関係を示す図である。
【図6】アクセルペダルが戻るときの平均レートとブレーキペダルを踏み込んだときの位置との関係を示す図である。
【図7】緊急ブレーキ予測装置の予測に従ってブレーキアクチュエータを作動させたとき、およびドライバーが自分の足で緊急ブレーキをかけたときのブレーキペダルの踏込量の変化を示すグラフである。
【図8】実施の形態1で作成した分類器を用いて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合および通常のブレーキをかけようとしている場合のそれぞれについて、アクセルペダルの動作パターンを判定した結果を示すグラフである。
【図9】緊急ブレーキ予測装置と共に分類器作成装置を自動車に搭載した場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車用緊急ブレーキ予測装置および予測方法について、図面を参照して説明する。

【0019】
(実施の形態1)
<緊急ブレーキ予測装置およびそれを搭載した自動車の構成>
図1に、自動車に搭載された緊急ブレーキ予測装置と、当該予測装置に組み込まれる分類器を作成する分類器作成装置の構成を示す。また図2に、自動車に搭載された部材のうちブレーキに関連した部材を示す。

【0020】
図1に示す分類器作成装置2は、ドライブシミュレータ3に搭載されたアクセルペダルポジションセンサ(以降、「ポジシンセンサ」と省略する。)31で検出したアクセルペダルの踏込量を示す時系列データに基づいて、ドライバーが足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを機械学習によって学習させ、当該動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合に分類する分類器を作成するものである。

【0021】
分類器作成装置2で作成された分類器のプログラムは、自動車1に搭載された緊急ブレーキ予測装置4の分類器43に組み込まれる。そして走行中の自動車1のポジションセンサ11で検出したアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データが分類器43に入力される。

【0022】
緊急ブレーキ予測装置4は、当該動作パターンの分類結果に基づいて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したとき、自動車1の動きを制御する電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)12に、緊急ブレーキを駆動するよう指示する。緊急ブレーキ予測装置4からの信号を受信したECU12は、ブレーキアクチュエータ17を作動させて自動車1を停止する。

【0023】
分類器作成装置2および緊急ブレーキ予測装置4の構成と動作について説明する前に、図3~図6を参照して、ドライバーが足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを機械学習させた分類器を作成する理由を説明する。

【0024】
図3は、ドライバーが緊急ブレーキをかけたときのアクセルペダルとブレーキペダルの動きを示したグラフであり、横軸は経過時間、縦軸はそれぞれのペダルの位置を最大の踏込量を100とした時のパーセントで表したものである。また、図の下半分には、アクセルペダルの位置[%]を時間で割ったアクセルペダルが戻るときの速度(ここではレートと表示。)を示す。

【0025】
図中、アクセルペダルの位置を実線、ブレーキペダルの位置を破線、またアクセルペダル戻りのレート(速度)を一転鎖線で表している。以後も同様とする。

【0026】
なお、図3(a)は、ドライバーがアクセルペダルから足を上げる直前の踏込量が56%のときのグラフ、図3(b)は、同じく直前の踏込量が38%のときのグラフである。

【0027】
図3(a)に示すように、緊急ブレーキをかけるときの動作は3つの区間に分かれる。最初の区間Aでは、アクセルペダルを踏んでいた足をペダルから離し、次の区間Bでは、足をアクセルペダルからブレーキペダルに移し替え、最後の区間Cでは、ブレーキペダルを踏み込んで、最大位置近くまで押し下げる。

【0028】
図4に、緊急ブレーキをかけたときに、上述したA、B、C3つの区間を足した時間遅れ、すなわち、ドライバーがアクセルペダルから足を離した後、ブレーキペダルを最大位置近くまで踏み込むのに要する時間の分布を示す。図4のデータは、ドライブシミュレータを用いて測定した11人のドライバーのよる316のサンプルデータを、時間毎に分類したものである。

【0029】
ドライバーの動作特性やブレーキをかけたときの運転状況によってバラツキがあるが、中心的なサンプルでは、アクセルペダルから足を離してからブレーキペダルを踏み終えるまでに0.2秒~0.4秒かかっている。従って、自動車が50km/hで走行しているとき、その間に2.8m~5.6m空走することになる。この空走時間を短縮できれば、事故を防止できる可能性が高まる。

【0030】
次に、図5および図6を参照して、アクセルペダルが戻るときの動作と、ブレーキペダルを押し下げるときの動作との関連について、ドライブシミュレータでの実験結果を基に説明する。

【0031】
図5は、アクセルペダルが戻るときの最大レート(速度:横軸)と、ブレーキペダルを押し下げるときの最大レート(速度:縦軸)との関係を示す。図中、●は通常のブレーキ操作のサンプル、○は緊急ブレーキ時のサンプルである。

【0032】
図から分かるように、緊急ブレーキ時において、アクセルペダルが戻るときの動作とブレーキペダルを押し下げるときの動作には相関関係がある。特に、アクセルペダルが戻るときの最大レート(速度)が大きい場合、アクセルとブレーキの動きの相関関係が明確である。

【0033】
その一方で、アクセルペダルが戻るときの最大レートが500[%/S]前後においては、通常運転時のブレーキペダル押し下げの最大レートと緊急ブレーキ時のそれが重なり合うため、区別が難しい。

【0034】
図6は、アクセルペダルが戻るときの平均レート(速度:横軸)と、ブレーキペダルを踏み込んだときの位置(縦軸)との関係を示す。図から分かるように、緊急ブレーキ時のブレーキペダルの位置は、80%~100%の間に集中しており、通常運転時とは明らかに異なっている。しかし一部のサンプルでは、通常運転時のサンプルと緊急ブレーキ時のサンプルが重なり合うため、区別が難しい。

【0035】
図5および図6に示された結果より、図3(a)に示すようにアクセルペダルの踏込量が多く、アクセルペダルが戻るときのレート(速度)が大きい場合、通常運転時と緊急ブレーキ時におけるアクセルペダルの動きを、最大レートまたは平均レートに閾値を設定することで区別できる。

【0036】
これに対し、図3(a)に示すようにアクセルペダルの踏込量が少なく、アクセルペダルが戻るときのレート(速度)が低い場合、通常運転時と緊急ブレーキ時におけるアクセルペダルの動きを、閾値により区別することが難しい。これは、緊急ブレーキをかける前のアクセルペダルの踏込量が小さい場合、バネの特性によってペダルが戻るときの速度が小さくなり、通常運転時のそれと差がなくなるためと考えられる。

【0037】
本発明では、上述の分析結果に基づき、アクセルペダルが戻るときの速度の閾値を用いない方法を採用している。具体的には、ドライバーが足を上げたときのアクセルペダルの動作パターンを機械学習によって学習させ、当該動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合に分類する分類器を作成する。

【0038】
そして、その分類器のプログラムを自動車に搭載した緊急ブレーキ予測装置に組み込み、新たに分類器に入力された、自動車のアクセルペダルの動作パターンの時系列データについて、分類器のよる判定の結果に基づき、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測したときに、ブレーキを自動的に作動させて自動車を停止している。

【0039】
次に、前述の図1~図3を参照して、本実施の形態に係る緊急ブレーキ予測装置の構成と動作を説明する。

【0040】
図1に示すように、本実施の形態では、ドライブシミュレータ3のアクセルペダルポジションセンサ31で検出したペダルの動作パターンを示す時系列データを分類器作成装置2に入力して、当該動作パターンを、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合とそうでない場合に分類する分類器を作成している。

【0041】
ドライブシミュレータ3は、自動車の運転や走行をシミュレートする装置で、コンピュータを用いて実現され、運転席から見える景色を映すモニター、走行音や衝撃音を出すスピーカ、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー等を備えている。

【0042】
ポジションセンサ31は、アクセルペダルの踏込量に応じた位置データを出力するもので、所定の間隔(本実施の形態では20ms)毎にサンプリングされたデータが出力される。図示しないが、ポジションセンサ31の出力段にはA/Dコンバータが接続されているため、センサ31からデジタル信号が出力される。

【0043】
なお、本実施の形態では、データ入手の容易さから、ドライブシミュレータ3を用いて分類器作成に必要なデータを収集したが、実際に自動車に乗り、様々な運転状態でブレーキをかけ、その時のポジションセンサ31の出力データを収集するようにしてもよい。

【0044】
分類器作成装置2は、機械学習によって分類器を作成するもので、データ切出し部21、特徴抽出部22、学習用データ記憶部23および学習部24で構成されている。分類器作成装置2はパーソナルコンピュータを用いて実現され、ハードディスク装置には上述の各部の機能を実現するプログラムが格納されている。

【0045】
データ切出し部21は、ポジションセンサ31から出力された時系列データから、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データ、すなわちドライバーの足がアクセルペダルから離れたときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときの時系列データ(図3の区間A、Bのデータ)を切り出す。

【0046】
特徴抽出部42は、データ切出し部21で切り出された時系列データから、分類器の作成に必要な特徴量のデータを抽出する。本実施の形態では、特徴量として、ドライバーが足を離す直前のアクセルペダルの位置(mP)、アクセルペダルが戻るときの最大速度(mR)および平均速度(aR)を抽出した。前述の図3(a)に基づいて、特徴量の算出方法を説明する。

【0047】
図3(a)において、ドライバーが足を離す直前のアクセルペダルの位置(mP)は、アクセルペダルの時系列データP1が、領域Aの開始を示す直線とグラフが交錯する点の高さである。

【0048】
次に、アクセルペダルが戻るときの最大速度(mR)は、図3(a)の領域Aに示した、アクセルペダルの時系列データP1の速度(ΔP/Δt)のうち最大の値を示す。ここで、Δtは時系列データP1のサンプリング間隔、ΔPは、Δtの期間に変動したアクセルペダルの位置データである。

【0049】
図3(a)の下半分に示したグラフP2は、アクセルペダルの時系列データP1の速度データ(ΔP/Δt)を示したもので、このデータのうち絶対値が最大の値がmRである。

【0050】
次に、アクセルペダルが戻るときの平均速度(aR)は、図3(a)において、mP/t0で与えられる値である。ここで、t0は、ドライバーがアクセルペダルから足を離したときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときまでの時間を示し、mPは、その間にアクセルペダルが移動した距離を示す。

【0051】
図1の説明に戻って、学習用データ記憶部23は、特徴抽出部22で算出した個々の時系列データP1の3つの特徴量のデータを記憶する。

【0052】
学習部24は、学習用データ記憶部23に記憶された多くの動作パターンの特徴量のデータを読み出して機械学習を行う。機械学習の方法として、サポートベクターマシンやニューラルネットワークなどを使用することができるが、本実施の形態では、XGBoost(eXtreme Gradient Boosting)を使用して分類器を構築すると共に、ハイパー・パラメータを調整するために、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms)を採用した。

【0053】
学習部24は、ポジションセンサ31で取得した緊急ブレーキ時のアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データと通常ブレーキ時のアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データについて、特徴抽出部22で抽出した特徴量のデータを用いて機械学習を行う。そして、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合の動作パターンを“1”に、そうでない場合の動作パターンを“0”に分類し、それ以外の動作パターンについては中間の値を付与する。

【0054】
このようにして作成された分類器のプログラムは、自動車1に搭載された緊急ブレーキ予測装置4に組み込まれる。緊急ブレーキ予測装置4は、装置各部の機能を実現するための演算処理を行うCPU、その演算処理のためのプログラム等が記憶されたROM、演算処理に必要なデータを一時的に格納するRAMからなる周知の構成を備えている。

【0055】
図1に示すように、緊急ブレーキ予測装置4は、データ切出し部41、特徴抽出部42、分類部43および予測部44で構成されている。上述したように、緊急ブレーキ予測装置4の分類器43には、分類器作成装置2で作成された分類器のプログラムが格納される。

【0056】
自動車1に搭載されたポジションセンサ11、緊急ブレーキ予測装置4のデータ切出し部41および特徴抽出部42は、それぞれ、前述のポジションセンサ31、データ切出し部21および特徴抽出部22と同一の機能を有しているため、詳細な説明は省略する。

【0057】
分類器43は、特徴抽出部42で算出された3つの特徴量mP、mRおよびaRのデータに基づいて、ポジシンセンサ11で検出した時系列データの動作パターンがクラス1(緊急ブレーキをかけようとしている場合)またはクラス0(緊急ブレーキをかけようとしていない場合)のいずれに近いかを判定し、0~1の中間値で出力する。

【0058】
予測部44は、分類器43の判定結果に基づき、ECU12に対して緊急ブレーキの駆動を指示する。予測部44には予め閾値が設定されており、例えば分類器43の出力が0.5以上であった場合、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると予測し、ECU12に対して緊急ブレーキの駆動を指示する。一方、分類器43の出力が0.5未満の場合には、ECU12に対して何も指示しない。

【0059】
図2に、自動車1に搭載された構成部材のうち、制動に関連した部材を明示する。ECU12に、前述のポジションセンサ11および緊急ブレーキ予測装置4以外に、車速センサ13、シフトポジションセンサ14、スロットバルブセンサ15、スロットバルブモータ16およびブレーキアクチュエータ17が接続されている。

【0060】
ECU12は、自動車の運転および制動に関連した制御を行うもので、図示しないが、緊急ブレーキ予測装置4と同様、各種演算処理を行うCPU、演算処理に必要なプログラムが記憶されたROM、演算処理に必要なデータを一時的に記憶するRAM等の周知の構成を備えている。

【0061】
ECU12に接続された各種センサについて説明する。車速センサ13は、自動車1の走行速度に応じた信号を出力する。またシフトポジションセンサ14は、変速機におけるシフト位置を示す信号を出力する。スロットルバルブセンサ15は、エンジンの吸気管に取り付けられており、エンジンへ供給される空気量を調節するスロットルバルブの開度に応じた信号を出力する。

【0062】
一方、ECU12には、駆動部材として、ECU12の駆動信号によって駆動されるスロットルバルブモータ16およびブレーキアクチュエータ17が接続されている。

【0063】
スロットルバルブモータ16は、エンジンの吸気管に取り付けられたスロットルバルブを回転駆動して、開度を調整する。ECU12は、スロットルバルブの開度が、ドライバーによるアクセルペダルの踏込量に応じた開度になるように、スロットルバルブモータ16を駆動してスロットルバルブの開度を調節する。ただし、緊急ブレーキがかけられたときには、ECU12は、スロットルバルブを閉じるように、スロットルバルブの開度を制御する。

【0064】
ブレーキアクチュエータ17は緊急ブレーキをかけるために用いられ、例えば高圧のブレーキフルードを吐出するポンプと、ブレーキフルードの圧力を調節しつつ各車輪のホイールシリンダに供給する電磁バルブなどから構成されている。ブレーキアクチュエータ17は、ECU12からの駆動信号に従って作動し、各車輪のホイールシリンダに調圧されたブレーキフルードを供給することで、車輪に制動力を発生させる。

【0065】
<緊急ブレーキ予測装置の動作>
次に、図1および図2を参照して、緊急ブレーキ予測装置4の動作を説明する。

【0066】
ドライバーが自動車1を運転している場合、ポジションセンサ11から一定の間隔(20ms)で、アクセルペダルの踏込量を示すデータが緊急ブレーキ予測装置4に入力される。

【0067】
緊急ブレーキ予測装置4のデータ切出し部41は、入力された時系列データの値が、前述の図3に示すように急激に低下した場合、ドライバーがアクセルペダルから足を離したときからアクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻ったときまでの時系列データを切り出す。

【0068】
データ切出し部41から出力されたアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データは、特徴抽出部42において、前述した3つの特徴量mP、mRおよびaRがリアルタイムで算出される。

【0069】
特徴抽出部42で算出された3つの特徴量mP、mRおよびaRのデータは分類器43に入力され、学習結果に基づいて、動作パターンがクラス1(緊急ブレーキをかけようとしている場合)またはクラス0(緊急ブレーキをかけようとしていない場合)のいずれに近いかを判定する。

【0070】
分類器43の出力は予測部44に入力される。前述したように、予測部44には、予め閾値が設定されており、分類器43の出力が0.5以上であった場合、緊急ブレーキの駆動をECU12に指示する。

【0071】
図2において、予測部44がECU12に緊急ブレーキを駆動させるよう指示した場合、ECU12は、緊急ブレーキを作動させる際の車両状態を確認するため、ポジションセンサ11から出力されたアクセルペダルの踏込量のデータと、スロットルッバルブセンサ13から出力されたスロットルバルブの開度データを記憶する。併せてECU12は、ブレーキアクチュエータ17を駆動して緊急ブレーキを作動させる。

【0072】
その後、ECU12は、車速センサ13の出力に基づいて、自動車が停止したか否かを判定する。自動車が停止したと判定したときは、シフトポジションセンサ14の出力に基づいて、変速機のシフト位置がパーキングに切り替えられたか否かを判定する。

【0073】
シフト位置がパーキングに切り替えられた場合は、自動車が完全に停止しており、安全が確保されたとみなして、スロットルバルブモータ16およびブレーキアクチュエータ17の制御を、通常の運転モードに切り替える。

【0074】
図7(a)に、緊急ブレーキ予測装置4の判定に従って、ECU12がブレーキアクチュエータ17を作動させたときのブレーキペダルの踏込量の変化を示す。また比較のため、図7(b)に、ドライバーが自分の足で緊急ブレーキをかけたときのブレーキペダルの踏込量の変化を示す。それぞれのグラフにおいて、アクセルペダルの動作パターンは同一であるとする。

【0075】
図7(a)に示すように、ブレーキアクチュエータ17を作動させた場合、アクセルペダルが踏み込まれる前の状態に戻るのとほぼ同時に、ブレーキアクチュエータ17が作動して、ブレーキペダルが最大位置まで踏み込まれる。

【0076】
これに対し、図7(b)に示すように、ドライバーが自分の足で緊急ブレーキをかけた場合、アクセルペダルからブレーキペダルに踏み替える時間と、ブレーキペダルを最大位置近くまで踏み込む時間が必要となるため、ブレーキアクチュエータ17を作動させる場合に比較し、0.4秒程度の遅れが生じる。

【0077】
自動車が50km/hで運転している場合、緊急ブレーキ予測装置4の指示に従ってブレーキアクチュエータ17を作動させる場合と比較し、ドライバーが自分の足で緊急ブレーキをかける場合、制動距離が約5.6m違うため、安全性を確保する上で大きな差が生じる。

【0078】
なお、図7(a)に示すようにブレーキペダルを急激に踏み込んだ場合、タイヤがロックして路面上をスリップする場合がある。一旦、タイヤがロックして滑り始めると、ハンドル操作が効かなくなり、制御不能となるばかりか、前走車への追突や横滑り、横転などの重大事故の危険に晒されることになる。

【0079】
これを防ぐためには、ECU12にアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を付加してタイヤがロックするのを防止する必要があるが、ABSは一般的に採用されている技術であるため、説明を省略する。

【0080】
図8に、本実施の形態で作成した分類器を用いて、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合および通常のブレーキをかけようとしている場合のそれぞれについて、アクセルペダルの動作パターンを判定した結果を示す。

【0081】
図において、横軸は、分類器の判定結果を示す数字で、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしていると判定した場合をクラス1、緊急ブレーキをかけようとしていないと判定した場合をクラス0とし、269のサンプルデータについて、クラス1に属する可能性を中間値で示した。

【0082】
サンプルデータについては、実際の運転中に緊急ブレーキをかけたときの時系列データを収集することが好ましいが、運転中に緊急ブレーキをかけることには危険が伴うため、実験では、ドライブシミュレータを用い、様々な運転状況において緊急ブレーキをかけて時系列データを収集した。

【0083】
最近のドライブシミュレータの性能は非常に高く、実際の運転状態に近い状態を実現できるため、緊急ブレーキをかけようとしている場合のアクセルペダルの動作パターンを示す時系列データについても、自動車を実際に運転している場合と遜色のないデータを取得できる。

【0084】
図8において、閾値を0.5に設定して、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしている場合の時系列データについて、予測部44が緊急ブレーキをかけようとしていると予測した確率は90%であった。この値は、本実施の形態で作成した分類器のプログラムを自動車の緊急ブレーキ予測装置4に組み込み、実際の運転において動作させても、安全性確保の観点において、求められる性能を十分発揮できるものである。

【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、学習用データの入手が容易であることから、ドライブシミュレータに搭載されたポジションセンサを用いて、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを収集した。これに対して本実施の形態では、ドライバー自身の動作特性に応じた分類器を作成するため、分類器作成装置を自動車に搭載した。

【0086】
図9に、緊急ブレーキ予測装置と共に分類機器作成装置を自動車に搭載した場合の構成を示す。本実施の形態では、分類器作成装置2aのうちデータ切出し部および特徴抽出部を、緊急ブレーキ予測装置4のデータ切出し部41および特徴抽出部42で兼用している。

【0087】
従って、学習用データである3つの特徴量mP、mRおよびaRを算出するための時系列データを収集する際には、実際にドライバーが自動車を運転し、安全に配慮しながら様々な運転状況において、通常のブレーキ操作と緊急ブレーキ操作を繰り返す。

【0088】
このようにして収集した時系列データから算出された特徴量のデータは、学習用データ記憶部23に記憶され、学習部24において、当該データを用いて、実施の形態1で説明したのと同様の形態で機械学習が行われ、分類器が作成される。そして、作成された分類器のプログラムは緊急ブレーキ予測装置4に組み込まれ、緊急ブレーキをかけようとしているか否かの予測に供される。

【0089】
このように、ドライバーが実際に自動車を運転して、アクセルペダルの動作パターンを示す時系列データを収集する場合、安全性の確保に十分な配慮が必要であり、データ収集に時間がかかる。その一方で、ドライバー個人の動作特性を反映した分類器を作成できることから、ドライバーが緊急ブレーキをかけようとしているか否かの予測精度を向上させることができる。

【0090】
なお、上述した各実施の形態では、バネの力を利用して、アクセルペダルを踏み込む前の状態に戻すものとして説明したが、モータを用いてアクセルペダルを踏み込む前の状態に戻すようにしてもよい。この場合、モータは、ドライバーがアクセルペダルを踏み込む力より弱い力で、踏み込む前の状態に戻す力を発生する。
【符号の説明】
【0091】
1 自動車
2、2a 分類器作成装置
3 ドライブシミュレータ
4 緊急ブレーキ予測装置
11、31 ポジションセンサ
12 ECU
13 車速センサ
14 シフトポジションセンサ
15 スロットルバルブセンサ
16 スロットルバルブモータ
17 ブレーキアクチュエータ
21、41 データ切出し部
22、42 特徴抽出部
23 学習用データ記憶部
24 学習部
43 分類器
44 予測部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8