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明細書 :遊星歯車装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-090487 (P2019-090487A)
公開日 令和元年6月13日(2019.6.13)
発明の名称または考案の名称 遊星歯車装置
国際特許分類 F16H   1/28        (2006.01)
F16H   1/14        (2006.01)
FI F16H 1/28
F16H 1/14
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2017-220013 (P2017-220013)
出願日 平成29年11月15日(2017.11.15)
発明者または考案者 【氏名】中川 正夫
【氏名】廣垣 俊樹
【氏名】青山 栄一
【氏名】西田 大
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3J009
3J027
Fターム 3J009DA11
3J009EA03
3J009EA16
3J009EA25
3J009EB30
3J027FA12
3J027GB03
3J027GC01
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE29
要約 【課題】大きな動力の伝達が可能でしかも騒音の発生が抑制できる新規な構成の遊星歯車装置を提供する。
【解決手段】遊星歯車装置1Aは、太陽歯車10と、内歯車20と、複数の遊星歯車30と、軸部材S3と、複数の遊星歯車30の各々と軸部材S3との間の動力伝達を個別に行なう複数の動力伝達部60とを備える。複数の遊星歯車30の各々の軸部31には、遊星歯車側動力伝達要素34が設けられ、軸部材S3には、軸部材側動力伝達要素51が設けられる。複数の動力伝達部60の各々は、太陽歯車10、内歯車20および軸部材S3の回転中心である第1軸線に非平行な方向に沿って延在する動力伝達軸部61と、動力伝達軸部61の一端側に設けられることで遊星歯車側動力伝達要素34との間で動力伝達可能な第1動力伝達要素62と、動力伝達軸部61の他端側に設けられることで軸部材側動力伝達要素51との間で動力伝達可能な第2動力伝達要素63とを含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1軸線を回転中心として自転可能な太陽歯車と、
前記第1軸線を回転中心として自転可能な内歯車と、
前記第1軸線に平行な方向に沿って延在する軸部を各々が有し、前記太陽歯車および前記内歯車の双方に各々が歯合することによって前記軸部の軸線である第2軸線を回転中心として各々が自転可能でかつ前記第1軸線を回転中心として各々が公転可能な複数の遊星歯車と、
前記第1軸線を回転中心として自転可能な軸部材と、
前記複数の遊星歯車の各々に対応して設けられ、前記複数の遊星歯車の各々と前記軸部材との間の動力伝達を個別に行なう複数の動力伝達部とを備え、
前記複数の遊星歯車の前記軸部の各々には、遊星歯車側動力伝達要素が設けられ、
前記軸部材には、軸部材側動力伝達要素が設けられ、
前記複数の動力伝達部の各々が、前記第1軸線に非平行な方向に沿って延在する動力伝達軸部と、前記動力伝達軸部の一端側に設けられるとともに前記遊星歯車側動力伝達要素との間で動力伝達可能な第1動力伝達要素と、前記動力伝達軸部の他端側に設けられるとともに前記軸部材側動力伝達要素との間で動力伝達可能な第2動力伝達要素とを含んでいる、遊星歯車装置。
【請求項2】
前記第1軸線を回転中心として自転可能なキャリアをさらに備え、
前記複数の遊星歯車の前記軸部の各々が、前記キャリアによって自転可能に支承されているとともに、前記複数の動力伝達部の各々が有する前記動力伝達軸部が、前記キャリアによって自転可能に支承されている、請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記軸部材が、前記キャリアによって自転可能に支承されている、請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記動力伝達軸部の軸線である第3軸線が、前記第1軸線および前記第2軸線と交差するように延在し、
前記遊星歯車側動力伝達要素、前記軸部材側動力伝達要素、前記第1動力伝達要素および前記第2動力伝達要素が、いずれも傘歯車にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記動力伝達軸部の軸線である第3軸線が、前記第1軸線および前記第2軸線と食い違うように延在し、
前記遊星歯車側動力伝達要素、前記軸部材側動力伝達要素、前記第1動力伝達要素および前記第2動力伝達要素が、いずれもハイポイド歯車にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の遊星歯車装置。
【請求項6】
前記遊星歯車側動力伝達要素、前記軸部材側動力伝達要素、前記第1動力伝達要素および前記第2動力伝達要素が、いずれも摩擦車にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の遊星歯車装置。
【請求項7】
前記遊星歯車側動力伝達要素と前記第1動力伝達要素との組合せにより、または、前記軸部材側動力伝達要素と前記第2動力伝達要素との組合せにより、あるいは、これら組合せの双方により、減速機または増速機が構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の遊星歯車装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置の一種である遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸、出力軸および補助軸の3つの基本軸を備えてなる遊星歯車装置が知られている。遊星歯車装置は、各種の産業機械に広く応用されており、代表的にはたとえば風力発電機や航空機、ハイブリッド自動車等における動力伝達に利用されている。
【0003】
一般に、遊星歯車装置は、太陽歯車(外歯歯車)と、太陽歯車を取り囲むように配置された内歯車(内歯歯車)と、これら太陽歯車および内歯車の双方に歯合するように太陽歯車と内歯車との間に配置された複数の遊星歯車(外歯歯車)とを備えており、動作に際しては、典型的には、太陽歯車および内歯車が自転し、複数の遊星歯車が自転しならが公転する。
【0004】
ここで、遊星歯車装置は、上述した基本軸として当該遊星歯車装置に含まれる要素のいずれが使用されるかに基づいて、2K-H型、3K型、K-H-V型等に分類される。当該分類に基づいた各種の遊星歯車装置の基本的な構成が開示された文献としては、たとえば、矢田恒二著、「歯車応用機構の設計」、社団法人機械技術協会、2012年2月1日(非特許文献1)がある。
【0005】
これら各種の遊星歯車装置のうち、最も広く利用されている2K-H型の遊星歯車装置においては、上述した太陽歯車、内歯車および複数の遊星歯車に加えて、複数の遊星歯車を自転可能に支承するキャリアが設けられ、太陽歯車の自転軸、内歯車の自転軸およびキャリアの自転軸が、上述した基本軸として使用される。
【0006】
この2K-H型の遊星歯車装置においては、複数の遊星歯車の公転動作とキャリアの自転動作とに相関が持たされることになり、たとえばキャリアの自転軸が出力軸として使用される場合には、複数の遊星歯車の公転動作および自転動作のうちの公転動作のみが、キャリアの自転軸によって取り出されることになる。
【0007】
一方で、上述したキャリアを設けずに、これに代えて、太陽歯車および内歯車の自転軸と同軸上に設けた主軸部材と、複数の遊星歯車のうちの特定の1つの遊星歯車とを、両端に自在継手が設けられた従軸部材を介して接続してなる遊星歯車装置が知られている。当該遊星歯車装置においては、太陽歯車の自転軸、内歯車の自転軸および主軸部材の自転軸が、上述した基本軸として使用される。
【0008】
上記構成の遊星歯車装置においては、上述した特定の1つの遊星歯車の公転動作および自転動作と主軸部材の自転動作とに相関が持たされることになり、たとえば主軸部材の自転軸が出力軸として使用される場合には、当該特定の1つの遊星歯車の公転動作および自転動作の合成成分が、主軸部材の自転軸によって取り出されることになる。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】矢田恒二著、「歯車応用機構の設計」、社団法人機械技術協会、2012年2月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上述した2K-H型の遊星歯車装置は、複数の遊星歯車がキャリアの軸線を中心として回転対称に配置されるとともに、当該キャリアによって自転可能に支承された構成であるため、駆動時において複数の遊星歯車に加わる荷重が均等に分配されることになる。そのため、負荷容量が大きく取れることになり、結果として大きな動力の伝達が可能になるメリットが得られる。
【0011】
しかしながら、その反面、駆動時において遊星歯車が高速に回転することにより、結果として高周波の広い帯域において噛み合い音が発生するばかりでなく、その音圧も相当程度に大きくなるデメリットがある。そのため、当該2K-H型の遊星歯車装置を使用する場合には、高周波の広い帯域において騒音対策を別途講じなければならない問題がある。
【0012】
一方、上述した自在継手を用いた遊星歯車装置は、前述のとおり遊星歯車の公転動作のみならず自転動作についてもこれが動力伝達に利用できるため、駆動時において遊星歯車を比較的低速で回転させることが可能になる。そのため、高周波の噛み合い音の発生が抑制できるとともに、その音圧も比較的小さくできるメリットが得られる。
【0013】
しかしながら、その反面、上述した主軸部材と特定の1つの遊星歯車とが自在継手を介して従軸部材によって接続された構成であるため、駆動時において従軸部材が偏心回転することによって複数の遊星歯車に加わる荷重にアンバランスが生じたり、当該従軸部材を介して接続された主軸部材および遊星歯車に大きなスラスト荷重が発生したりするデメリットがある。そのため、負荷容量を大きく取ることができず、結果として大きな動力の伝達が困難になる問題がある。
【0014】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、大きな動力の伝達が可能でしかも騒音の発生が抑制できる新規な構成の遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づく遊星歯車装置は、第1軸線を回転中心として自転可能な太陽歯車と、上記第1軸線を回転中心として自転可能な内歯車と、上記第1軸線に平行な方向に沿って延在する軸部を各々が有し、上記太陽歯車および上記内歯車の双方に各々が歯合することによって上記軸部の軸線である第2軸線を回転中心として各々が自転可能でかつ上記第1軸線を回転中心として各々が公転可能な複数の遊星歯車と、上記第1軸線を回転中心として自転可能な軸部材と、上記複数の遊星歯車の各々に対応して設けられ、上記複数の遊星歯車の各々と上記軸部材との間の動力伝達を個別に行なう複数の動力伝達部とを備えている。上記複数の遊星歯車の上記軸部の各々には、遊星歯車側動力伝達要素が設けられており、上記軸部材には、軸部材側動力伝達要素が設けられている。上記複数の動力伝達部の各々は、上記第1軸線に非平行な方向に沿って延在する動力伝達軸部と、上記動力伝達軸部の一端側に設けられるとともに上記遊星歯車側動力伝達要素との間で動力伝達可能な第1動力伝達要素と、上記動力伝達軸部の他端側に設けられるとともに上記軸部材側動力伝達要素との間で動力伝達可能な第2動力伝達要素とを含んでいる。
【0016】
上記本発明に基づく遊星歯車装置は、上記第1軸線を回転中心として自転可能なキャリアをさらに備えていてもよく、その場合には、上記複数の遊星歯車の上記軸部の各々が、上記キャリアによって自転可能に支承されているとともに、上記複数の動力伝達部の各々が有する上記動力伝達軸部が、上記キャリアによって自転可能に支承されていることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく遊星歯車装置にあっては、上記軸部材が、上記キャリアによって自転可能に支承されていてもよい。
【0018】
上記本発明に基づく遊星歯車装置にあっては、上記動力伝達軸部の軸線である第3軸線が、上記第1軸線および上記第2軸線と交差するように延在していてもよく、その場合には、上記遊星歯車側動力伝達要素、上記軸部材側動力伝達要素、上記第1動力伝達要素および上記第2動力伝達要素が、いずれも傘歯車にて構成されていることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく遊星歯車装置にあっては、上記動力伝達軸部の軸線である第3軸線が、上記第1軸線および上記第2軸線と食い違うように延在していてもよく、その場合には、上記遊星歯車側動力伝達要素、上記軸部材側動力伝達要素、上記第1動力伝達要素および上記第2動力伝達要素が、いずれもハイポイド歯車にて構成されていることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づく遊星歯車装置にあっては、上記遊星歯車側動力伝達要素、上記軸部材側動力伝達要素、上記第1動力伝達要素および上記第2動力伝達要素が、いずれも摩擦車にて構成されていてもよい。
【0021】
上記本発明に基づく遊星歯車装置にあっては、上記遊星歯車側動力伝達要素と上記第1動力伝達要素との組合せにより、または、上記軸部材側動力伝達要素と上記第2動力伝達要素との組合せにより、あるいは、これら組合せの双方により、減速機または増速機が構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大きな動力の伝達が可能でしかも騒音の発生が抑制できる新規な構成の遊星歯車装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図である。
【図2】図1に示す遊星歯車装置の要部のみを示す模式背面図である。
【図3】図1に示す遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。
【図4】比較形態1に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図である。
【図5】実施の形態1および比較形態1に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。
【図6】実施の形態1に係る遊星歯車装置の遊星歯車の回転速度と、比較形態1に係る遊星歯車装置の遊星歯車の回転速度とを比較したグラフである。
【図7】比較形態2に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図である。
【図8】比較形態2に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。
【図9】検証試験のシステム構成を示す図である。
【図10】実施例に係る遊星歯車装置の評価結果を示すグラフである。
【図11】比較例1に係る遊星歯車装置の評価結果を示すグラフである。
【図12】比較例2に係る遊星歯車装置の評価結果を示すグラフである。
【図13】検証試験における音圧分布の比較結果を示すヒストグラムである。
【図14】実施の形態1に基づいた変形例に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。
【図15】実施の形態2に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。
【図16】実施の形態3に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式背面図である。
【図17】実施の形態4に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。

【0025】
一般に、遊星歯車装置は、上述したように、基本軸として当該遊星歯車装置に含まれる要素のいずれが使用されるかに基づいて、典型的には2K-H型、3K型、K-H-V型等に分類される。ここで、Kは、太陽歯車の回転軸または内歯車の回転軸を意味し、Hは、キャリアの回転軸を意味し、Vは、遊星歯車の回転軸を意味している。以下の説明において示す型は、上記分類に基本的に従うものではあるものの、特に遊星歯車の回転軸については、さらにこれを詳細に分類することとし、具体的には、遊星歯車の自転成分のみの入力または出力等を行なう基本軸を有する場合にこれを「-V」と表記し,遊星歯車の公転成分のみの入力または出力等を行なう基本軸を有する場合にこれを「-H」と表記し、これら遊星歯車の自転成分および公転成分の合成成分の入力または出力等を行なう基本軸を有する場合にこれを「-HV」と表記することとする。

【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図である。また、図2は、図1に示す遊星歯車装置の要部のみを示す模式背面図であり、図3は、図1に示す遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。ここで、図2においては、図示される部材のうち、第3シャフトS3のみを断面にて示しており、図3においては、図示される部材のうち、内歯車20のみを断面にて示している。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aの構成について説明する。

【0027】
図1ないし図3に示すように、遊星歯車装置1Aは、1つの第1シャフトS1と、1つの第2シャフトS2と、軸部材としての1つの第3シャフトS3と、1つの太陽歯車10と、1つの内歯車20と、3つの遊星歯車30と、1つのキャリア40と、3つの動力伝達部60とを主として備えている。このうち、第1シャフトS1、第2シャフトS2および第3シャフトS3は、同軸上に配置されており、いずれも図2および図3に示す第1軸線AX1を回転中心として自転可能に構成されている。

【0028】
ここで、第1軸線AX1の延在方向をX軸と定義し、図2における左右方向をY軸と定義し、図2における上下方向をZ軸と定義し、以降の説明においては、これらX軸、Y軸およびZ軸を使用して説明を行なう。また、第3シャフトS3から見て第1シャフトS1および第2シャフトS2が配置された側(すなわち正面側)に向けての方向をX1方向と定義し、その逆をX2方向と定義し、同様に、Y軸方向に沿った互いに逆向きの方向をそれぞれY1方向およびY2方向と定義するとともに、Z軸方向に沿った互いに逆向きの方向をそれぞれZ1方向およびZ2方向と定義して、以降の説明を行なう。

【0029】
太陽歯車10は、外周面に所定数の歯が形成された外歯歯車からなり、第1シャフトS1のX2方向側の端部付近に取付けられている。太陽歯車10は、第1シャフトS1に固定されることにより、第1軸線AX1を回転中心として第1シャフトS1と共に回転する。

【0030】
内歯車20は、内周面に所定数の歯が形成された内歯歯車からなり、太陽歯車10を取り囲むように太陽歯車10と同軸上に配置されている。内歯車20の内径は、太陽歯車10の外径よりも大きく構成されており、これにより太陽歯車10と内歯車20との間には、環状の空間が形成されている。太陽歯車10の外周面と内歯車20の内周面とは、この環状の空間を介して対向している。

【0031】
内歯車20は、内歯車20を取り囲むように配置された円筒状のホルダ21に固定されており、ホルダ21のX1方向側に位置する開口端には、当該開口端に設けられた開口を閉塞するようにエンドプレート22が固定されている。エンドプレート22の中央部には、貫通孔が設けられており、当該貫通孔には、第1シャフトS1が挿通されている。

【0032】
また、エンドプレート22の中央部には、X軸方向に沿って突出する円筒状の突出部が設けられており、当該突出部によって上述した第2シャフトS2が構成されている。これにより、内歯車20は、第1軸線AX1を回転中心として第2シャフトS2と共に回転する。

【0033】
なお、第1シャフトS1と第2シャフトS2との間には、第1シャフトS1および第2シャフトS2に介在するように複数の軸受71が設けられている。これにより、第1シャフトS1および第2シャフトS2は、第1軸線AX1上に配置されつつも、当該第1軸線AX1を回転中心として互いに独立して自転することができる。

【0034】
複数の遊星歯車30の各々は、外周面に所定数の歯が形成された外歯歯車からなり、いずれも太陽歯車10と内歯車20との間に形成された上述した環状の空間に配置されている。複数の遊星歯車30の各々は、太陽歯車10および内歯車20の双方に歯合している。

【0035】
ここで、複数の遊星歯車30は、第1軸線AX1を中心として回転対称に配置されていることが好ましく、本実施の形態においては、3つの遊星歯車30が、第1軸線AX1を中心として太陽歯車10の周方向に沿って均等に(すなわち120[°]毎に)配置されている。

【0036】
複数の遊星歯車30の各々は、第1軸線AX1と平行な方向に沿って延在する軸部31を有しており、当該軸部31は、遊星歯車30の軸方向の端面からX1方向およびX2方向の双方に向けて突出している。なお、複数の遊星歯車30の各々は、当該遊星歯車30に設けられた軸部31と共に回転する。

【0037】
キャリア40は、ケース体41と、支持体42と、エンドプレート43とを有している。ケース体41およびエンドプレート43は、複数の遊星歯車30よりも第3シャフトS3側(すなわちX2方向側)に配置されており、支持体42は、複数の遊星歯車30よりも第2シャフトS2側(すなわちX1方向側)に配置されることでホルダ21の中空部23に収容されている。

【0038】
ケース体41は、有底円筒状の形状を有しており、その底部が複数の遊星歯車30側に配置されている。ケース体41の底部の中央部には、貫通孔が設けられており、当該貫通孔には、第1シャフトS1のX2方向側の端部が挿通されている。また、ケース体41の底部の周縁部には、複数の貫通孔が設けられており、これら複数の貫通孔には、それぞれ複数の遊星歯車30の軸部31のうち、X2方向側に向けて突出する部分が挿通されている。

【0039】
ここで、ケース体41と第1シャフトS1との間には、ケース体41および第1シャフトS1に介在するように軸受72が設けられている。これにより、ケース体41および第1シャフトS1は、第1軸線AX1上に配置されつつも、当該第1軸線AX1を回転中心として互いに独立して自転することができる。

【0040】
また、ケース体41と遊星歯車30の各々の軸部31との間には、ケース体41および軸部31に介在するように軸受73が設けられている。これにより、複数の遊星歯車30の各々は、ケース体41によって回転可能に支承されている。

【0041】
なお、複数の遊星歯車30の各々の軸部31のうち、X2方向側に向けて突出する部分には、スペーサ32が取付けられている。当該スペーサ32は、複数の遊星歯車30とケース体41の底部との間に配置されており、これにより複数の遊星歯車30とケース体41との間の距離が確保されている。

【0042】
支持体42は、円筒状の形状を有しており、その周壁部には、複数の貫通孔が設けられている。これら複数の貫通孔には、それぞれ複数の遊星歯車30の軸部31のうち、X1方向側に向けて突出する部分が挿通されている。

【0043】
ここで、支持体42と遊星歯車30の各々の軸部31との間には、支持体42および軸部31に介在するように軸受74が設けられている。これにより、複数の遊星歯車30の各々は、支持体42によって回転可能に支承されている。

【0044】
なお、複数の遊星歯車30の各々の軸部31のうち、X1方向側に向けて突出する部分には、スペーサ33が取付けられている。当該スペーサ33は、複数の遊星歯車30と支持体42の周壁部との間に配置されており、これにより複数の遊星歯車30と支持体42との間の距離が確保されている。

【0045】
以上により、複数の遊星歯車30の各々は、ケース体41および支持体42によってX軸方向において挟み込まれることでこれらケース体41および支持体42を含むキャリア40によって回転可能に支承されることになる。これにより、複数の遊星歯車30の各々は、当該遊星歯車30に設けられた軸部31の軸線である第2軸線AX2(図2および図3参照)を回転中心として自転可能に構成されているとともに、第1軸線AX1を回転中心として公転可能に構成されている。

【0046】
エンドプレート43は、ケース体41のX2方向側に位置する開口端を閉塞するようにケース体41に固定されている。エンドプレート43の中央部には、貫通孔が設けられており、当該貫通孔には、第3シャフトS3が挿通されている。また、エンドプレート43の中央部には、X2方向側に向けて突出する円筒状の突出部が設けられている。

【0047】
ここで、エンドプレート43と第3シャフトS3との間には、エンドプレート43および第3シャフトS3に介在するように複数の軸受75が設けられている。これにより、エンドプレート43および第3シャフトS3は、第1軸線AX1上に配置されつつも、当該第1軸線AX1を回転中心として互いに独立して自転することができる。

【0048】
ケース体41およびエンドプレート43によって規定されるキャリア40の内部空間44には、ケース体41の底部側から複数の遊星歯車30の各々の軸部31の端部が挿入されているとともに、エンドプレート43側から第3シャフトS3の端部が挿入されている。

【0049】
内部空間44に挿入された複数の遊星歯車30の各々の軸部31の端部には、遊星歯車側動力伝達要素としての第1傘歯車34が設けられている。第1傘歯車34は、軸部31に固定されることにより、遊星歯車30と共に回転する。

【0050】
一方、内部空間44に挿入された第3シャフトS3の端部には、軸部材側動力伝達要素としての第2傘歯車51が設けられている。第2傘歯車51は、第3シャフトS3に固定されることにより、第3シャフトS3と共に回転する。

【0051】
複数の動力伝達部60は、上述した複数の遊星歯車30の各々に対応して設けられており、そのいずれもがキャリア40の内部空間44に収容されている。複数の動力伝達部60の各々は、複数の遊星歯車30の各々と第3シャフトS3との間の動力伝達を個別に行なうものである。

【0052】
複数の動力伝達部60の各々は、第1軸線AX1と非平行な方向に沿って延在する動力伝達軸部61と、動力伝達軸部61の一端側に設けられた第1動力伝達要素としての第3傘歯車62と、動力伝達軸部61の他端側に設けられた第2動力伝達要素としての第4傘歯車63とを含んでいる。第3傘歯車62および第4傘歯車63は、いずれも動力伝達軸部61に固定されることにより、動力伝達軸部61と共に回転する。

【0053】
複数の動力伝達軸部61は、X軸方向に沿って見た場合に、第1軸線AX1を中心として放射状に延びるように延在しており、本実施の形態においては、図2および図3に示すように、複数の動力伝達軸部61の各々の軸線である第3軸線AX3が、第1軸線AX1と交差している。

【0054】
ここで、本実施の形態においては、上述したように、3つの遊星歯車30が、第1軸線AX1を中心として太陽歯車10の周方向に沿って均等に(すなわち120[°]毎に)配置されているため、3つの動力伝達軸部61も、第1軸線AX1を中心として太陽歯車10の周方向に沿って均等に(すなわち120[°]毎に)配置されることになる。

【0055】
なお、図3に示すように、本実施の形態においては、第1軸線AX1と第3軸線AX3の各々とが成す角度θが90[°]となるように、複数の動力伝達軸部61の各々の姿勢が調整されている。

【0056】
複数の動力伝達部60の各々に設けられた第3傘歯車62は、対応する遊星歯車30の軸部31に設けられた第1傘歯車34に歯合している。これにより、対応付けて設けられた第1傘歯車34と第3傘歯車62との間において、動力伝達が行なえるように構成されている。

【0057】
一方、複数の動力伝達部60の各々に設けられた第4傘歯車63は、第3シャフトS3に設けられた第2傘歯車51に歯合している。これにより、第2傘歯車51と複数の第4傘歯車63との間において、動力伝達が行なえるように構成されている。

【0058】
ここで、複数の動力伝達軸部61の各々は、キャリア40に設けられた取付具によって軸受76を介することで回転可能に支承されている。これにより、複数の動力伝達部60の各々は、当該動力伝達部60に含まれる動力伝達軸部61の軸線である第3軸線AX3を回転中心として自転することができる。

【0059】
以上において説明した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aの構成を要約すると、以下のとおりとなる。

【0060】
遊星歯車装置1Aは、第1軸線AX1を回転中心として自転可能な太陽歯車10と、第1軸線AX1を回転中心として自転可能な内歯車20と、第1軸線AX1に平行な方向に沿って延在する軸部31を各々が有し、太陽歯車10および内歯車20の双方に各々が歯合することによって軸部31の第2軸線AX2を回転中心として各々が自転可能でかつ第1軸線AX1を回転中心として各々が公転可能な複数の遊星歯車30と、第1軸線AX1を回転中心として自転可能な第3シャフトS3と、複数の遊星歯車30の各々に対応して設けられ、複数の遊星歯車30の各々と第3シャフトS3との間の動力伝達を個別に行なう複数の動力伝達部60とを備えている。

【0061】
ここで、複数の遊星歯車30の軸部31の各々には、第1傘歯車34が設けられており、第3シャフトS3には、第2傘歯車51が設けられている。また、複数の動力伝達部60の各々は、第1軸線AX1に交差する方向に沿って延在する動力伝達軸部61と、動力伝達軸部61の一端側に設けられるとともに第1傘歯車34に歯合する第3傘歯車62と、動力伝達軸部61の他端側に設けられるとともに第2傘歯車51に歯合する第4傘歯車63とを含んでいる。

【0062】
このように構成することにより、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいては、複数の遊星歯車30が、当該複数の遊星歯車30に対応して設けられた複数の動力伝達部60を介して個別的に第3シャフトS3との間で動力伝達可能に接続されることになる。そのため、複数の遊星歯車30の公転動作および自転動作と第3シャフトS3の自転動作とに相関が持たされることになる。したがって、たとえば第3シャフトS3が出力軸として使用される場合には、複数の遊星歯車30の公転動作および自転動作の合成成分が、当該第3シャフトS3によって取り出されることになる。

【0063】
ここで、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいては、上述のとおり複数の遊星歯車30の公転動作のみならず自転動作についてもこれが動力伝達に利用できることになるため、駆動時において複数の遊星歯車30を比較的低速で回転させることが可能になる。そのため、高周波の噛み合い音の発生が抑制できるとともに、その音圧も比較的小さくできる。

【0064】
また、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいては、複数の遊星歯車30が第1軸線AX1を中心として回転対称に配置されるとともに、キャリア40によって自転可能に支承された構成であるため、駆動時において複数の遊星歯車30に加わる荷重が均等に分配されることになる。そのため、負荷容量が大きく取れることになり、結果として大きな動力の伝達が可能になる。

【0065】
以上のように、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aとすることにより、大きな動力の伝達が可能であり、しかも騒音の発生が大幅に抑制された遊星歯車装置とすることができる。なお、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aは、前述した分類に従えば、傘歯車を用いた2K-HV型の遊星歯車装置に該当することになる。

【0066】
ここで、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいては、後述する比較形態に係る遊星歯車装置1Y(図7参照)と同様に、複数の遊星歯車30の各々の軸部31、第3シャフトS3、および、複数の動力伝達部60の各々の動力伝達軸部61にある程度のスラスト荷重が加わってしまうものとなるが、当該スラスト荷重は、基本的にキャリア40等によって受け止めが可能な程度のものであり、遊星歯車装置1Aの性能自体に与える影響は、おおよそ無視できるものとなる。

【0067】
図4は、比較形態1に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図である。一方、図5(A)は、本実施の形態に係る遊星歯車装置のスケルトン図であり、図5(B)は、比較形態1に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。以下、これら図4および図5を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aとすることにより、駆動時において複数の遊星歯車30を比較的低速で回転させることができる理由について、比較形態1に係る遊星歯車装置1Xと比較しつつ詳細に説明する。

【0068】
図4に示すように、比較形態1に係る遊星歯車装置1Xは、一般的な2K-H型の遊星歯車装置であり、1つの第1シャフトS1と、1つの第2シャフトS2と、1つの太陽歯車10と、1つの内歯車20と、3つの遊星歯車30と、1つの第4シャフトS4を含む1つのキャリア40’とを主として備えている。このうち、第1シャフトS1、第2シャフトS2および第4シャフトS4は、同軸上に配置されている。

【0069】
比較形態1に係る遊星歯車装置1Xは、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと比較した場合に、第1シャフトS1、第2シャフトS2、太陽歯車10、内歯車20および複数の遊星歯車30の構成において基本的に同様であり、遊星歯車装置1Aが有する軸部材としての第3シャフトS3、キャリア40、複数の遊星歯車30の各々の軸部31に取付けられた第1傘歯車34、第3シャフトS3に取付けられた第2傘歯車51、および、複数の動力伝達部60に代えて、上述した第4シャフトS4を含むキャリア40’を備えている点において相違している。

【0070】
より詳細には、キャリア40’は、第1支持体45と、第2支持体46とを有しており、第1支持体45は、複数の遊星歯車30から見てX2方向側に配置されており、第2支持体46は、複数の遊星歯車30から見てX1方向側に配置されている。第2支持体46は、基本的に遊星歯車装置1Aが有する支持体42と同様のものである。

【0071】
第1支持体45は、多段に構成された略円柱状の形状を有しており、その太陽歯車10側の端面の中央部において第1シャフトS1を軸受を介して回転可能に支承するとともに、当該端面の周縁部において複数の遊星歯車30の軸部31を軸受を介して回転可能に支承している。また、第1支持体45には、X2方向側に向けて突出する円柱状の突出部が設けられており、当該突出部によって上述した第4シャフトS4が構成されている。

【0072】
この比較形態1に係る遊星歯車装置1Xにおいては、複数の遊星歯車30の公転動作とキャリア40’の自転動作とに相関が持たされることになる。したがって、たとえばキャリア40に含まれる第4シャフトS4が出力軸として使用される場合には、複数の遊星歯車30の公転動作および自転動作のうちの公転動作のみが、当該第4シャフトS4によって取り出されることになる。

【0073】
ここで、図5(A)を参照して、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいて、第3シャフトS3を入力軸とするとともに、内歯車20に接続された第2シャフトS2を出力軸として動作させる場合を想定し、内歯車20の歯数をZr1とし、複数の遊星歯車30の各々の歯数をZp1とするとともに、内歯車20の回転速度をNr1とし、複数の遊星歯車30の各々の回転速度をNp1とし、第3シャフトS3の回転速度をNS3とすると、下記式(1)の関係が成立し、その変速比は、Nr1/NS3は、下記式(2)で求められる。なお、ここでは、第1傘歯車34の歯数Za1と、当該第1傘歯車34に歯合する第3傘歯車62の歯数Za2とは、同じであり、また、第4傘歯車63の歯数Zb1と、当該第4傘歯車63に歯合する第2傘歯車51の歯数Zb2とは、同じであるとする。

【0074】
【数1】
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【0075】
【数2】
JP2019090487A_000004t.gif

【0076】
一方、図5(B)を参照して、比較形態1に係る遊星歯車装置1Xにおいて、第4シャフトS4を入力軸とするとともに、内歯車20に接続された第2シャフトS2を出力軸として動作させる場合を想定し、内歯車20の歯数をZr2とし、複数の遊星歯車30の各々の歯数をZp2とするとともに、内歯車20の回転速度をNr2とし、複数の遊星歯車30の各々の回転速度をNp2とし、第4シャフトS4の回転速度をNS4とすると、下記式(3)の関係が成立し、その変速比は、Nr2/NS4は、下記式(4)で求められる。

【0077】
【数3】
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【0078】
【数4】
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【0079】
ここで、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと比較形態に係る遊星歯車装置1Xとにおいて、内歯車20の歯数を同じ(すなわち、Zr1=Zr2=Zr)に設定するとともに、複数の遊星歯車30の各々の歯数を同じ(すなわち、Zp1=Zp2=Zp)に設定し、さらに、入力軸の回転速度を同じ(すなわち、NS3=NS4)に設定し、その上で入力軸と出力軸との間の変速比が同じ(すなわち、Nr1/NS3=Nr2/NS4)になる動作状態を想定すると、上記式(2)および上記式(4)より、下記式(5)の関係が導き出される。

【0080】
【数5】
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【0081】
このとき、遊星歯車装置の構成上、ZrおよびZpは、いずれも自然数であり、かつ、Zp<Zrの関係を必ず満たすことから、上記式(5)に基づき、Np1の絶対値は、Np2の絶対値よりも必ず小さくなることが分かる。ここで、上記式(5)において、Np1/Np2が負の値をとる理由は、第3シャフトS3の回転方向と第4シャフトS4の回転方向とが同じである場合に、複数の遊星歯車30の各々自転方向が、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと比較形態に係る遊星歯車装置1Xとで逆向きになることによる。

【0082】
以上に基づけば、本実施の形態の如くの傘歯車を用いた2K-HV型の遊星歯車装置とすることにより、比較形態1の如くの一般的な2K-H型の遊星歯車装置に比較して、駆動時において遊星歯車を比較的低速で回転させることが可能になることが理解できる。

【0083】
図6は、本実施の形態に係る遊星歯車装置の遊星歯車の回転速度と、比較形態1に係る遊星歯車装置の遊星歯車の回転速度とを比較したグラフである。ここで、図6に示すグラフは、上記式(5)に基づき、たとえば内歯車20の歯数Zrを60個に設定しつつ、複数の遊星歯車30の各々の歯数Zpを3個から24個の間で段階的に変化させた場合に、回転速度比Np1/Np2の値がどのように変化するかを表わしたものである。

【0084】
当該図6を参照して、仮に複数の遊星歯車30の各々の歯数Zpを21個とすれば、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aの複数の遊星歯車30の各々の回転速度Np1は、比較形態1に係る遊星歯車装置1Xの複数の遊星歯車30の各々の回転速度Np2の約1/2にまで減少することが理解でき、また、仮に複数の遊星歯車30の各々の歯数Zpを15個とすれば、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aの複数の遊星歯車30の各々の回転速度Np1は、比較形態1に係る遊星歯車装置1Xの複数の遊星歯車30の各々の回転速度Np2の約1/3にまで減少することが理解できる。

【0085】
<検証試験>
以下において説明する検証試験は、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aとすることにより、騒音をどの程度低減できるかを実測によって検証したものである。当該検証試験においては、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aを実際に試作したものを実施例とし、上述した比較形態1に係る遊星歯車装置1Xを実際に試作したものを比較例1とし、以下において説明する比較形態2に係る遊星歯車装置1Yを実際に試作したものを比較例2とし、これら実施例および比較例1,2に係る遊星歯車装置をそれぞれ実際に動作させることにより、発生する騒音の違いを測定した。

【0086】
図7は、比較形態2に係る遊星歯車装置の一部を破断した概略斜視図であり、図8は、当該比較形態2に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。まず、これら図7および図8を参照して、比較形態2に係る遊星歯車装置1Yの構成について説明する。

【0087】
図7および図8に示すように、比較形態2に係る遊星歯車装置1Yは、前述した分類に従えば、自在継手を用いた2K-HV型の遊星歯車装置に該当するものであり、1つの第1シャフトS1と、1つの第2シャフトS2と、1つの第3シャフトS3と、1つの太陽歯車10と、1つの内歯車20と、3つの遊星歯車30(後述する特定の1つの遊星歯車30’を含む)と、1つのキャリア40”と、1つの傾斜軸部材80と、2つの自在継手81,82とを主として備えている。このうち、第1シャフトS1、第2シャフトS2および第3シャフトS3は、同軸上に配置されている。

【0088】
比較形態2に係る遊星歯車装置1Yは、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと比較した場合に、第1シャフトS1、第2シャフトS2、第3シャフトS3、太陽歯車10、内歯車20および複数の遊星歯車30の構成において基本的に同様であり、遊星歯車装置1Aが有するキャリア40、複数の遊星歯車30の各々の軸部31に取付けられた第1傘歯車34、第3シャフトS3に取付けられた第2傘歯車51、および、複数の動力伝達部60に代えて、上述したキャリア40”、傾斜軸部材80および複数の自在継手81,82を備えている点において相違している。

【0089】
より詳細には、キャリア40”は、第3支持体47と、第4支持体48とを有しており、第3支持体47は、複数の遊星歯車30から見てX2方向側に配置されており、第4支持体48は、複数の遊星歯車30から見てX1方向側に配置されている。第4支持体48は、基本的に遊星歯車装置1Aが有する支持体42と同様のものである。

【0090】
第3支持体47は、円盤状の形状を有しており、その中央部において第1シャフトS1を軸受を介して回転可能に支承するとともに、その周縁部において複数の遊星歯車30の軸部31を軸受を介して回転可能に支承している。

【0091】
複数の遊星歯車30のうちの特定の1つの遊星歯車30’の軸部31は、その一部がキャリア40”よりもX2方向側に向けて突出するように構成されており、当該軸部31の端部には、自在継手81を介して傾斜軸部材80の一端が接続されている。また、第3シャフトS3のX1方向側の端部には、自在継手82を介して傾斜軸部材80の他端が接続されている。ここで、傾斜軸部材80は、その軸線が第3シャフトS3の軸線(すなわち第1軸線AX1)と所定の角度θ(ただし、0[°]<θ<90[°]である)を成すように傾斜して配置されている。

【0092】
この比較形態2に係る遊星歯車装置1Yにおいては、複数の遊星歯車30のうちの特定の1つの遊星歯車30’が、傾斜軸部材80および自在継手81,82を介して第3シャフトS3との間で動力伝達可能に接続されている。そのため、当該特定の1つの遊星歯車30’の公転動作および自転動作と第3シャフトS3の自転動作とに相関が持たされることになる。したがって、たとえば第3シャフトS3が出力軸として使用される場合には、特定の1つの遊星歯車30’の公転動作および自転動作の合成成分が、当該第3シャフトS3によって取り出されることになる。

【0093】
なお、比較形態2に係る遊星歯車装置1Yは、上述したように、特定の1つの遊星歯車30’の公転動作および自転動作と第3シャフトS3の自転動作とに相関が持たされる点において、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと比較的近いものであるが、自在継手81,82を介して傾斜軸部材80によって接続された構成であるため、駆動時において傾斜軸部材80が偏心回転することによって複数の遊星歯車30に加わる荷重にアンバランスが生じたり、傾斜軸部材80を介して接続された第3シャフトS3および遊星歯車に大きなスラスト荷重が発生したりする問題があるものである。そのため、当該比較形態2に係る遊星歯車装置1Yにおいては、負荷容量を大きく取ることができず、結果として大きな動力の伝達が困難になる問題がある。

【0094】
ここで、傾斜軸部材80の軸線を第1軸線AX1に対してより平行に近い状態に(理想的には、上述した角度θを80[°]以上に)設定することにより、ある程度は上述した問題の解消を図ることはできるものの、その場合には、装置が長大化する等の問題が別途発生してしまう。

【0095】
図9は、検証試験のシステム構成を示す図である。また、図10ないし図12は、それぞれ実施例、比較例1および比較例2に係る遊星歯車装置の評価結果を示すグラフであり、図13は、検証試験における音圧分布の比較結果を示すヒストグラムである。以下、これら図9ないし図13を参照して、本検証試験の試験条件および評価結果について説明する。

【0096】
本検証試験においては、図9に示すシステム構成にて、サンプルSとしての実施例および比較例1,2に係る遊星歯車装置を、それぞれ第1モータ101および第2モータ102を用いて駆動した。ここで、各サンプルSにおいては、太陽歯車の歯数Zsを30個とし、内歯車の歯数Zrを60個とし、複数の遊星歯車の各々の歯数Zpを15個とした。なお、複数の遊星歯車の総数は、いずれも3個である。

【0097】
サンプルSの鉛直上方には、騒音計103を設置した。騒音計103とサンプルSとの間の距離は、1200[mm]とした。騒音計103にて集音された騒音からは、第1モータ101および第2モータ102から発せられる騒音を差し引くこととし、これによりサンプルSから発せられる騒音のみを測定することとした。

【0098】
ここで、第1モータ101には、各サンプルSの第1シャフトS1を接続し、第2モータ102には、各サンプルSの第3シャフトS3または第4シャフトS4(すなわち、実施例および比較例2に係る遊星歯車装置においては第3シャフトS3を、比較例1に係る遊星歯車装置においては第4シャフトS4を)を接続した。また、各サンプルSの第2シャフトS2には、ヒステリシスブレーキ104をベルト105を介して接続した。なお、第1モータ101および第2モータ102の動作は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)106によって制御されるようにした。

【0099】
当該検証試験は、大きさが3.6[m]×4.4[m]×3.35[m]の無響室において行なった。当該無響室の暗騒音レベルは、-1[dB]であり、遮音特性は、91[dB(500[Hz])であり、逆二乗特性保証帯は、125[Hz]~4000[Hz]である。また、騒音の測定条件に関しては、周波数補正にA特性フィルタを使用することとし、窓関数を1/3オクターブに設定し、時間重み特性をスロー特性に設定した。

【0100】
上記試験条件のもと、サンプルSを所定の動作条件にて動作させ、測定された騒音の周波数分析波形を取得し、当該分析波形のピーク値における音圧レベル、周波数、その際の遊星歯車の回転速度との相関を求めた評価結果が、図10ないし図12に示したグラフである。これらグラフにおいては、縦軸に周波数f[Hz]をとるとともに、横軸に遊星歯車の回転速度Np[min-1]をとり、各プロットの大きさにて音圧[dB]を示している。さらに、これらグラフにおいては、噛み合い周波数(fz,2×fz,4×fz,8×fz)についてもあわせて表記している。ここで、噛み合い周波数fz[Hz]は、遊星歯車が1秒間に噛み合う噛み合い数を意味し、遊星歯車の歯数Zpおよび回転速度Npを用いてfz=Np×Zp/60で表わされる。また、図10ないし図12に示すグラフから、グラフ中のプロットを音圧ごとに分類し、各音圧における分布数(すなわちプロット数)を求めた比較結果が、図13に示したヒストグラムである。

【0101】
これら図10ないし図13から理解されるように、実施例に係る遊星歯車装置においては、比較例1に係る遊星歯車装置に比べて、高周波の噛み合い音の発生が抑制できているとともに、その音圧も比較的小さく抑制できている。これは、偏に、実施例に係る遊星歯車装置において、比較例1に係る遊星歯車装置に比べて、その駆動時において複数の遊星歯車を比較的低速で回転させることができるためである。

【0102】
なお、比較例2に係る遊星歯車装置においては、実施例に係る遊星歯車装置に比べて、さらに、高周波の噛み合い音の発生が抑制できているとともに、その音圧も比較的小さく抑制できていることが分かる。これは、比較例2に係る遊星歯車装置においては、実施例に係る遊星歯車装置と同様に、その駆動時において複数の遊星歯車を比較的低速で回転させることができるとともに、実施例に係る遊星歯車装置に比べて、歯車同士の噛み合い数が大幅に少ないことに起因している。

【0103】
しかしながら、当該比較例2に係る遊星歯車装置は、上述したように実施例に係る遊星歯車装置に比べて大きな動力の伝達が行なえないものであり、この点において、実施例に係る遊星歯車装置よりも不利なものと言える。

【0104】
以上の検証試験の評価結果に基づけば、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aとすることにより、騒音の発生が大幅に抑制できることが実験的にも確認されたと言える。

【0105】
ここで、図5(A)を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいては、第1傘歯車34の歯数Za1と、当該第1傘歯車34に歯合する第3傘歯車62の歯数Za2とを調整することにより、当該第1傘歯車34と第3傘歯車62との間において所定の変速比をもたせることができ、これと同様に、第4傘歯車63の歯数Zb1と、当該第4傘歯車63に歯合する第2傘歯車51の歯数Zb2とを調整することにより、当該第4傘歯車63と第2傘歯車51との間において所定の変速比をもたせることができる。

【0106】
換言すれば、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにあっては、第1傘歯車34と第3傘歯車62との組合せにより、または、第2傘歯車51と第4傘歯車63との組合せにより、あるいは、これら組合せの双方により、複数の遊星歯車30の軸部31と第3シャフトS3との間に減速機または増速機を設けることができる。

【0107】
ここで、図5(A)に示す遊星歯車装置1Aにおいて、第1傘歯車34の歯数Za1と第3傘歯車62の歯数Za2とを異ならせるとともに、第4傘歯車63の歯数Zb1と第2傘歯車51の歯数Zb2とを異ならせた場合を想定し、第1傘歯車34と第3傘歯車62との間における変速比をn1(ここで、n1=Za1/Za2である)と定義し、第4傘歯車63と第2傘歯車51との間における変速比をn2(ここで、n2=Zb1/Zb2である)と定義すると、上記式(1)および式(2)は、それぞれ下記式(6)および式(7)に書き換えられる。

【0108】
【数6】
JP2019090487A_000008t.gif

【0109】
【数7】
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【0110】
この場合において、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aと、上述した比較形態1に係る遊星歯車装置1Xとにおいて、内歯車20の歯数を同じ(すなわち、Zr1=Zr2=Zr)に設定するとともに、複数の遊星歯車30の各々の歯数を同じ(すなわち、Zp1=Zp2=Zp)に設定し、さらに、入力軸の回転速度を同じ(すなわち、NS3=NS4)に設定し、その上で、入力軸と出力軸との間の変速比が同じ(すなわち、Nr1/NS3=Nr2/NS4)になる動作状態を想定すると、上記式(7)および上記式(4)より、下記式(8)の関係が導き出される。

【0111】
【数8】
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【0112】
したがって、上述した本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいて、第1傘歯車34と第3傘歯車62との組合せにより、または、第2傘歯車51と第4傘歯車63との組合せにより、あるいは、これら組合せの双方により、複数の遊星歯車30の軸部31と第3シャフトS3との間に減速機または増速機を設けた場合には、複数の遊星歯車30の各々の回転速度を比較的低く抑えつつ、入力軸と出力軸との間の変速比を種々調節することが可能になる。

【0113】
一例としては、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aにおいて、第3シャフトS3を入力軸とするとともに、内歯車20に接続された第2シャフトS2を出力軸とし、上述した変速比n1,n2がn1×n2<1の条件を満たすように第1傘歯車34の歯数Za1、第3傘歯車62の歯数Za2、第4傘歯車63の歯数Zb1および第2傘歯車51の歯数Zb2をそれぞれ設定した場合には、事実上、内歯車20を拡径させて当該内歯車20に設けられた歯数Zrを増加させた場合と同様の効果を、遊星歯車装置1Aの体格を大型化させることなく実現することができる。

【0114】
そのため、この点において、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Aは、このような減速機または増速機を上述した特定の遊星歯車30’の軸部31と第3シャフトS3との間に設けることが事実上できない上述した比較形態2に係る遊星歯車装置1Yに比べ、設計自由度が大幅に拡大されるメリットをも有することになる。

【0115】
(変形例)
図14は、上述した実施の形態1に基づいた変形例に係る遊星歯車装置のスケルトン図である。以下、この図14を参照して、本変形例に係る遊星歯車装置1A’について説明する。

【0116】
図14に示すように、本変形例に係る遊星歯車装置1A’は、上述した実施の形態1に係る遊星歯車装置1Aが具備するキャリア40を基本軸の一つとしてさらに利用するものである。すなわち、上述した実施の形態1に係る遊星歯車装置1Aは、太陽歯車10に接続された第1シャフトS1と、内歯車20に接続された第2シャフトS2と、複数の動力伝達部60を介して複数の遊星歯車30に個別に接続された第3シャフトS3との合計で3つのシャフトを基本軸としたいわゆる3軸遊星歯車装置であったが、本変形例に係る遊星歯車装置1A’は、これにキャリア40に接続された第4シャフトS4をさらに基本軸として用いることにより、いわゆる4軸遊星歯車装置として構成したものである。なお、本実施の形態に係る遊星歯車装置1A’は、前述した分類に従えば、傘歯車を用いた2K-H-HV型の遊星歯車装置に該当することになる。

【0117】
ここで、キャリア40に接続された第4シャフトS4としては、たとえば図1において示されたキャリア40のエンドプレート43の中央部にX2方向側に向けて突出するように形成された突出部がそのまま利用することができる。

【0118】
このように構成された本変形例に係る遊星歯車装置1A’とすれば、上述した第1シャフトS1、第2シャフトS2、第3シャフトS3および第4シャフトS4を基本軸としつつ、これら基本軸の各々を適切に入力軸または基本軸あるいは補助軸として選択して使用することにより、当該遊星歯車装置1A’を様々な特徴的な動作を実現することができる新規な動力伝達装置として利用することが可能になる。

【0119】
(実施の形態2)
図15は、本発明の実施の形態2に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。以下、この図15を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Bについて説明する。

【0120】
図15に示すように、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Bは、上述した実施の形態1に係る遊星歯車装置1Aと比較した場合に、動力伝達部60が傾斜配置されている点においてのみその構成が相違している。

【0121】
具体的には、本実施の形態においては、第1軸線AX1と第3軸線AX3の各々とが成す角度のうち、小さい方の角度θが0[°]より大きく90[°]未満となるように(すなわち、第3軸線AX3の各々が傾斜するように)、複数の動力伝達軸部61の各々の姿勢が調整されている。これにより、第4傘歯車63は、第3傘歯車62よりもX2方向側に配置されることになる。

【0122】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、大きな動力の伝達が可能であり、しかも騒音の発生が大幅に抑制された遊星歯車装置とすることができる。

【0123】
(実施の形態3)
図16は、本発明の実施の形態3に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式背面図である。以下、この図16を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Cについて説明する。

【0124】
図16に示すように、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Cは、上述した実施の形態1に係る遊星歯車装置1Aと比較した場合に、複数の遊星歯車30の各々の軸部31に設けられた遊星歯車側動力伝達要素と、第3シャフトS3に設けられた軸部材側動力伝達要素と、複数の動力伝達部60の各々に設けられた第1動力伝達要素および第2動力伝達要素とが、いずれも傘歯車とは異なる動力伝達要素にて構成されている点において相違している。

【0125】
具体的には、本実施の形態においては、遊星歯車側動力伝達要素、軸部材側動力伝達要素、第1動力伝達要素および第2動力伝達要素が、それぞれ第1ハイポイド歯車34’、第2ハイポイド歯車51’、第3ハイポイド歯車62’および第4ハイポイド歯車63’にて構成されており、対応する第1ハイポイド歯車34’と第3ハイポイド歯車62’とが歯合しており、第2ハイポイド歯車51’と複数の第4ハイポイド歯車63’の各々とが歯合している。

【0126】
これに伴い、複数の動力伝達軸部61は、X軸方向に沿って見た場合に、おおよそ第1軸線AX1を中心として放射状に延びるように延在しているものの、厳密には、複数の動力伝達軸部61の各々の軸線である第3軸線AX3と第1軸線AX1とは交差しておらず、これらが食い違っている(すなわち、第3軸線AX3の各々と第1軸線AX1とが、いわゆる捩れの位置にある)。

【0127】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、大きな動力の伝達が可能であり、しかも騒音の発生が大幅に抑制された遊星歯車装置とすることができる。加えて、遊星歯車側動力伝達要素、軸部材側動力伝達要素、第1動力伝達要素および第2動力伝達要素としてハイポイド歯車を用いることにより、これらを傘歯車にて構成した場合に比べ、さらなる騒音の低減、より大きな動力の伝達、より大きな変速比の実現等を図ることもできる。

【0128】
(実施の形態4)
図17は、本発明の実施の形態4に係る遊星歯車装置の要部のみを示す模式側面図である。以下、この図17を参照して、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Dについて説明する。

【0129】
図17に示すように、本実施の形態に係る遊星歯車装置1Dは、上述した実施の形態1に係る遊星歯車装置1Aと比較した場合に、複数の遊星歯車30の各々の軸部31に設けられた遊星歯車側動力伝達要素と、第3シャフトS3に設けられた軸部材側動力伝達要素と、複数の動力伝達部60の各々に設けられた第1動力伝達要素および第2動力伝達要素とが、いずれも傘歯車とは異なる動力伝達要素にて構成されている点において相違している。

【0130】
具体的には、本実施の形態においては、遊星歯車側動力伝達要素、軸部材側動力伝達要素、第1動力伝達要素および第2動力伝達要素が、それぞれ第1摩擦車34”、第2摩擦車51”、第3摩擦車62”および第4摩擦車63”にて構成されており、対応する第1摩擦車34”と第3摩擦車62”とが摩擦係合しており、第2摩擦車51”と複数の第4摩擦車63”の各々とが摩擦係合している。

【0131】
なお、ここで言う摩擦車には、摩擦車の表面同士が直接的に接触することで摩擦係合するもののみならず、潤滑油等の流体を介してこれら摩擦車が対向配置されることによって動力伝達が行なわれる流体摩擦方式のものも含まれる。

【0132】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、大きな動力の伝達が可能であり、しかも騒音の発生が大幅に抑制された遊星歯車装置とすることができる。

【0133】
(その他の構成例)
上述した本発明の実施の形態1ないし4およびその変形例においては、3つの遊星歯車が設けられてなる遊星歯車装置を例示して説明を行なったが、遊星歯車の数は特に限定されるものではなく、少なくとも2つ以上の遊星歯車が設けられた遊星歯車装置であれば、基本的にどのようなものであっても本発明の適用が可能である。

【0134】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4およびその変形例においては、複数の遊星歯車の各々の軸部と、複数の動力伝達部の各々の動力伝達軸部と、軸部材(すなわち第3シャフト)とが、いずれもキャリアによって支承されるように構成した場合を例示したが、必ずしも軸部材は、キャリアによって支承されている必要はなく、これをキャリアとは異なるハウジング等の別部材によって支承することとしてもよい。

【0135】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0136】
1A~1D,1X,1Y,1A’ 遊星歯車装置、10 太陽歯車、20 内歯車、21 ホルダ、22 エンドプレート、23 中空部、30 遊星歯車、31 軸部、32,33 スペーサ、34 第1傘歯車、34’第1ハイポイド歯車、34” 第1摩擦車、40 キャリア、41 ケース体、42 支持体、43 エンドプレート、44 内部空間、45 第1支持体、46 第2支持体、47 第3支持体、48 第4支持体、51 第2傘歯車、51’第2ハイポイド歯車、51” 第2摩擦車、60 動力伝達部、61 動力伝達軸部、62 第3傘歯車、62’第3ハイポイド歯車、62” 第3摩擦車、63 第4傘歯車、63’第4ハイポイド歯車、63” 第4摩擦車、71~76 軸受、80 傾斜軸部材、81,82 自在継手、101 第1モータ、102 第2モータ、103 騒音計、104 ヒステリシスブレーキ、105 ベルト、106 PLC、AX1 第1軸線、AX2 第2軸線、AX3 第3軸線、S1 第1シャフト、S2 第2シャフト、S3 第3シャフト、S4 第4シャフト。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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