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明細書 :アップコンバージョン蛍光体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-151724 (P2019-151724A)
公開日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 アップコンバージョン蛍光体
国際特許分類 C09K  11/68        (2006.01)
FI C09K 11/68
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2018-037258 (P2018-037258)
出願日 平成30年3月2日(2018.3.2)
発明者または考案者 【氏名】山本 伸一
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000914、【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H001
Fターム 4H001XA08
4H001XA20
4H001XA42
4H001YA58
4H001YA67
4H001YA69
4H001YA70
要約 【課題】高強度および高純度の赤色光を放出するアップコンバージョン蛍光体を提供する。
【解決手段】CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、TmおよびCeを活性成分として有し、Ceの含有量がHoおよびTmのいずれとも等モル以上であるセラミックスからなることを特徴とするアップコンバージョン型蛍光体に関する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、TmおよびCeを活性成分として有し、
Ceの含有量がHoおよびTmのいずれとも等モル以上であるセラミックスからなることを特徴とするアップコンバージョン型蛍光体。
【請求項2】
赤外光照射により発光する赤色光の色度座標値が、XY色度において、X=0.55以上、および、Y=0.4以下であることを特徴とする請求項1に記載のアップコンバージョン型蛍光体。
【請求項3】
沈殿法によって得られた請求項1または2に記載のアップコンバージョン型蛍光体。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の赤色光を放出するアップコンバージョン蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
励起波長よりも短い波長の光を放出する蛍光体は、アップコンバージョン蛍光体と呼ばれている。低エネルギーの赤外線を照射することで、高エネルギーの可視光線を発光することが可能である。たとえば、低コスト・高出力の近赤外線半導体レーザーやLEDを励起光源とすることで、低コスト・高演色性白色LEDが実現可能であり、また、体に有害な紫外線励起の材料を使用せずに、近赤外線を使うことで、安全性が担保できるバイオイメージングや、太陽光に含まれる赤外線エネルギーを可視光のエネルギーに変換することで、太陽電池の高効率化が期待できる。
【0003】
アップコンバージョン蛍光体に使用される材料は、90数%の母体材料と数%の発光材料により構成され、発光材料が複数の光子を同時あるいは逐次的に吸収して、多段階励起された電子が上方の準位から遷移することで発光する。たとえば、特許文献1には、Ca(Yb1-x,Er(MOk+4で表される発光体が開示されている。しかしながら、発光強度も発光純度も低いものであった。
【0004】
また、CaとMoの複合酸化物を母体材料として、TmおよびYbを活性成分としたアップコンバージョン蛍光体も知られている。しかしながら、目的とする赤色発光(波長650nm)のほかに、緑色(550nm)と青色(460nm)の発光もあり、赤色の純度が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-149139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高強度および高純度の赤色光を放出するアップコンバージョン蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、赤色光を発するアップコンバージョン蛍光体について種々検討したところ、CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、Tmを活性成分として有するセラミックスにおいて、特定量のCeを配合すると、高強度および高純度の赤色光を放出することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、TmおよびCeを活性成分として有し、Ceの含有量がHoおよびTmのいずれとも等モル以上であるセラミックスからなることを特徴とするアップコンバージョン型蛍光体に関する。
【0009】
赤外光照射により発光する赤色光の色度座標値が、XY色度において、X=0.55以上、および、Y=0.4以下であることが好ましい。
【0010】
前記蛍光体は、沈殿法によって得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光体は、CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、Tmを活性成分として有するセラミックスにおいて、特定量のCeを含有するため、高強度および高純度の赤色光を放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の蛍光体5のXRDチャートである。
【図2】実施例の蛍光体1、5および10の発光スペクトルである。
【図3】実施例および比較例で作製した蛍光体を、XY色度図にプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアップコンバージョン蛍光体は、CaMoO系の複合酸化物を母材とし、Yb、Ho、TmおよびCeを活性成分として有し、Ceの含有量がHoおよびTmのいずれとも等モル以上であるセラミックスからなることを特徴とする。

【0014】
アップコンバージョン蛍光体とは、励起波長よりも短い波長の光を放出する蛍光体であって、低エネルギーの赤外線を照射することで、高エネルギーの可視光線を発光することが可能である。複数の光子を同時あるいは逐次的に吸収して多段階励起された電子が、上方の準位から遷移することで発光する。本発明のアップコンバージョン蛍光体では、緑色(550nm)を発光するHo3+)と、青色(480nm)を発光するTm3+)の遷移エネルギーを、Ce3+が吸収することで、緑色と青色の発光を抑制する。

【0015】
母材は、CaMoO系の複合酸化物であるが、他の金属酸化物を含んでも良い。他の金属酸化物としては、MgO、SrO、BaO、Al、CaO、MoO、Yなどが挙げられる。

【0016】
活性成分は、Yb、Ho、Tmとともに、Ceを含む必要がある。Ybの含有量は特に限定されないが、CaMoO1モルに対して、0.01~0.10モルが好ましく、0.03~0.08モルがより好まく、0.04モル~0.06モルがさらに好ましい。0.01モル未満では、アップコンバージョンによる発光効率が低い蛍光体となり、0.10モルを超えると、発光効率が飽和する現象が生じてしまい、材料コストがかさんで経済性を損なう傾向がある。Tm、Hoの含有量は特に限定されないが、CaMoO1モルに対して、0.001~0.010モルが好ましく、0.003~0.008モルがより好ましく、0.004~0.007モルがさらに好ましい。0.001モル未満では アップコンバージョンによる発光効率が低い蛍光体となり、0.010モルを超えると、発光効率が飽和する現象が生じてしまい、材料コストがかさんで経済性を損なう傾向がある。

【0017】
Ceの含有量は、HoおよびTmのいずれとも等モル以上であることが必要であるが、2倍モル以上が好ましい。2倍モル未満では、緑色および青色の発光抑制効果が不足しており、赤色発光の色純度が低くなる傾向がある。上限は特に限定されないが、20倍モル未満が好ましい。また、CaMoO1モルに対しては、0.01~0.10モルが好ましく、0.03~0.08モルがより好ましい。0.01モル未満では 緑色および青色の発光抑制効果が不足し、赤色発光の色純度が低くなり、0.10モルを超えると、アップコンバージョンによる発光効率が低下する傾向がある。

【0018】
本発明のアップコンバージョン型蛍光体は、赤外光照射により発光する赤色光の色度座標値が、XY色度において、Xは0.55以上が好ましく、0.60以上がより好ましい。一方、Yは0.4以下が好ましく、0.35以下がより好ましい。色度座標値が上記の範囲にあることにより、視覚的にも色純度が高い赤色発光を得ることができる。

【0019】
本発明のアップコンバージョン型蛍光体の製造方法は特に限定されないが、たとえば沈殿法、乾式混合、湿式混合などが挙げられる。なかでも、蛍光体を構成する元素が均一に分布して、高い発光効率と色純度が得られる点で、沈殿法が好ましい。沈殿法では、Ca、Mo、Yb、Ho、TmおよびCeの塩を水に溶解させ、沈殿剤を加えて、各金属を水酸化物として沈殿させた後に乾燥させ、焼成することによって製造することができる。使用する各金属の塩としては、水に溶解できれば問題なく、たとえば硝酸塩、塩化物、炭酸塩、シュウ酸塩などが使用できる。沈殿剤としては、たとえば尿素、シュウ酸カルシウムなどが挙げられる。焼成条件は特に限定されないが、焼成温度は700~1300℃が好ましく、焼成時間は1~10時間が好ましい。

【0020】
本発明のアップコンバージョン蛍光体は、発光効率も高く、白色LED、バイオイメージング、太陽電池などに好適に適用できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0022】
実施例1~10および比較例
母材がCaOとMoOの混合物であり、発光材料としてYb、Tm、Ho、およびCeを含む蛍光体を沈殿法により作製した。ビーカーに純水150mlを入れ、スターラーにより400rpmで攪拌しながら、Ca(NO・4HO、(NH・Mo24・4HO、Yb(NO・5HO、Ho(NO・5HO、Tm(NO・5HO、Ce(NO・5HO、および尿素(10g)をこの順で添加し、ラップで蓋をした後、10分間攪拌を継続した。Ce(NO・5HOを添加した時点では水溶液は透明であったが、沈殿剤として尿素を添加した後は、水溶液は白濁した。
【実施例】
【0023】
なお、Ca(NO・4HO、(NH・Mo24・4HO、Yb(NO・5HO、Ho(NO・5HO、Tm(NO・5HO、Ce(NO・5HOの添加量は、焼成後の蛍光体に含まれるCaMoO、Yb、Tm、Ho、およびCeが表1に記載のモル比となるように調整した。
【実施例】
【0024】
ビーカー中の水溶液を3時間かけて90℃まで加熱し、Ca、Mo、Yb、Tm、Ho、Ceそれぞれの水酸化物を充分に沈殿させた。沈殿物を純水により2回洗浄した。沈殿物の洗浄は、水溶液を10分間遠心分離処理することで水酸化物と不純物を分離させた後、遠心管中の上澄みを廃棄することにより行った。洗浄後の沈殿物を結晶皿中で100℃において2時間乾燥させた後、1000℃まで昇温し、3時間かけて焼成して、蛍光体を得た。
【実施例】
【0025】
<色度測定>
実施例で作製した蛍光体を分散型無機EL素子へ誘電体層として導入した。交流電圧を印加しながら980nmの近赤外線レーザー(200mW)を照射し、XY色度を測定した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0026】
【表1】
JP2019151724A_000002t.gif
【実施例】
【0027】
実施例1~10の蛍光体はCeの含有量の増大に応じてXY色度のX軸の値が増大し、Y軸の値が減少する傾向にあり、赤色光の純度が向上していた。
【実施例】
【0028】
実施例の蛍光体5のXRDチャートを、図1に示す。回折ピークから、CaMoO結晶が存在することがわかる。
【実施例】
【0029】
実施例の蛍光体1、5および10の発光スペクトルを、図2に示す。Ceの配合により、青色と緑色の発光が大きく抑制されていることがわかる。
【実施例】
【0030】
表1に示したXY値を、図3のXY色度図にプロットした。Ceの配合により、Y値が小さく、X値が大きくなり、緑み・青みが抑制され、赤みが大きくなっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のアップコンバージョン蛍光体は、発光強度も発光純度も高いため、高演色性白色LED、バイオイメージング、太陽電池の高効率化などに応用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2