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明細書 :ディスプレイ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-154075 (P2020-154075A)
公開日 令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称 ディスプレイ装置
国際特許分類 G02B  27/02        (2006.01)
H04N   5/64        (2006.01)
FI G02B 27/02 Z
H04N 5/64 511A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2019-050959 (P2019-050959)
出願日 平成31年3月19日(2019.3.19)
発明者または考案者 【氏名】伊藤 勇太
【氏名】トビアス ラングロッツ
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
【識別番号】100109047、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 雄祐
【識別番号】100109081、【弁理士】、【氏名又は名称】三木 友由
【識別番号】100133215、【弁理士】、【氏名又は名称】真家 大樹
審査請求 未請求
テーマコード 2H199
Fターム 2H199CA12
2H199CA22
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA48
2H199CA59
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA69
2H199CA71
2H199CA86
要約 【課題】明るい環境下で高い視認性を得ることが可能なディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】光減衰ディスプレイ100は、入力側光学系110、PSLM120、出力側光学系130を備える。位相限定空間光変調器(PSLM)120は、画素毎に屈折率を制御可能である。入力側光学系110は、PSLM120の入射光の経路上に設けられ、第1偏光成分を抽出する。出力側光学系130は、PSLM120の出射光の経路上に設けられ、第2偏光成分を抽出する。光減衰ディスプレイ100は、PSLM120の画素ごとに、通過する色を制御可能である。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
画素毎に屈折率を制御可能な位相限定空間光変調器と、
前記位相限定空間光変調器の入射光の経路上に設けられ、第1偏光成分を抽出する入力側光学系と、
前記位相限定空間光変調器の出射光の経路上に設けられ、第2偏光成分を抽出する出力側光学系と、
を備え、
前記位相限定空間光変調器の画素ごとに、通過する色を制御可能であることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記位相限定空間光変調器は反射型であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記入力側光学系および前記出力側光学系は、
S偏光成分を透過する偏光子と、
前記偏光子の透過光を反射する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタの反射光を折り返すミラーと、
前記偏光ビームスプリッタと前記ミラーの間に挿入される第1レンズおよび1/4波長板と、
前記偏光ビームスプリッタの透過光が前記位相限定空間光変調器に入射する経路に設けられた第2レンズと、
を含み、前記偏光ビームスプリッタの透過光が前記位相限定空間光変調器に供給され、
前記偏光ビームスプリッタは、前記位相限定空間光変調器の反射光のうち、第2偏光成分を反射する前記出力側光学系として機能することを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ミラーに変えて、振幅空間光変調器を備えることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記位相限定空間光変調器を2段備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
前記位相限定空間光変調器は透過型であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、拡張現実感(Augmented Reality, AR)への期待が高まっており、そのキーデバイスであるヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mount Display)の開発が進められている。HMDは、現実世界の背景に、仮想世界(拡張世界)の画像や情報を重ねあわせて表示することができる。
【0003】
HMDは、ビデオシースルー型(VST:Video-see Through)型と光学シースルー(OST:Optical-see Through)型に大別できる。VST型は、現実世界の映像をカメラによりデジタル画像データに変換し、仮想世界の画像データを信号処理により合成して、ディスプレイに表示するものである。
【0004】
OST型は、現実世界の像はそのままユーザに提示しつつ、仮想世界の画像を光学的に合成するものである。図1は、従来のOST-HMDの原理を示す図である。OST-HMD2は、仮想世界の映像を提示するディスプレイ4と、現実世界の背景光L1と、ディスプレイ4の光L2を重ね合わせる光学系6を備える。図1の例では、光学系6はハーフミラーである。本明細書において、図1のOST-HMDの方式を加算型と称する。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2015-519595号公報
【0006】

【非特許文献1】G. Wetzstein, W. Heidrich, and D. Luebke. "Optical image processing using light modulation displays", In Computer Graphics Forum, volume 29, pages 1939-1944. Wiley Online Library, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、加算型のOST-HMDについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。OST-HMD2を屋外などの明るい環境下で使用するようなケースでは、背景光L1が非常に明るくなる一方で、ディスプレイ4の輝度には限界があるため、ディスプレイ4が表示する像の視認性が低下する。
【0008】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、明るい環境下での視認性を改善可能なディスプレイ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、ディスプレイ装置に関する。ディスプレイ装置は、画素毎に屈折率を制御可能な位相限定空間光変調器と、位相限定空間光変調器の入射光の経路上に設けられ、第1偏光成分を抽出する入力側光学系と、位相限定空間光変調器の出射光の経路上に設けられ、第2偏光成分を抽出する出力側光学系と、を備える。このディスプレイ装置は、位相限定空間光変調器の画素ごとに、通過する色を制御可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、明るい環境下での視認性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のOST-HMDの原理を示す図である。
【図2】実施の形態に係る光減衰ディスプレイの基本構成および原理を示す図である。
【図3】実施例1に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図4】図3のOSTディスプレイ装置の光学的に等価なセットアップを示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は、図3のOSTディスプレイ装置の可変カラーフィルタとしての特性(実測)を示す図である。
【図6】図6(a)~(c)は、OSTディスプレイ装置の入出力特性を示す図である。
【図7】CIExy色度図である。
【図8】OSTディスプレイ装置のブロック図である。
【図9】図9(a)、(b)は、図8のOSTディスプレイ装置の入力画像と出力画像を示す図である。
【図10】実施例2に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図11】図11(a)、(b)は、デュアルPSLM型のOSTディスプレイ装置の可変カラーフィルタとしての特性(実測)を示す図である。
【図12】CIExy色度図である。
【図13】実施例3に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図14】実施例4に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図15】実施例4に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図16】変形例4.1に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図17】変形例4.2に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図18】変形例4.3に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図19】実施例5に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図20】変形例5.1に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図21】変形例5.2に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図22】実施例6に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図23】実施例7に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図24】変形例7.1に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図25】実施例8に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図26】変形例8.1に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【図27】変形例8.2に係るOSTディスプレイ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。

【0013】
また図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。

【0014】
(基本構成)
初めに図2を参照して、光減衰ディスプレイ(Light Attenuation Display)100の基本構成を説明する。図2は、実施の形態に係る光減衰ディスプレイ100の基本構成および原理を示す図である。この光減衰ディスプレイ100は、入射光L1を受け、それに画像を合成して、出力光L4を出力する。後述するように光減衰ディスプレイ100は、OST-HMDとして利用することができる。OST-HMDの場合、現実世界の場面光(Scene Light)が入射光L1であり、それに拡張世界の画像を合成し、出力光L4をユーザに出力する。

【0015】
光減衰ディスプレイ100は、入力側光学系110、位相限定空間光変調器(PSLM:Phase-only Spatial Light Modulator)120、出力側光学系130を備える。入力側光学系110、PSLM120、出力側光学系130それぞれは透過型であってもよいし、反射型であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。

【0016】
入力側光学系110は、PSLM120への入射光L1の経路上に設けられ、第1偏光成分(たとえばS偏光)を抽出する。PSLM120は、マトリクス状に配置される複数の画素pixを有し、画素pix毎に屈折率、ひいては位相を制御可能に構成される。各画素に与えられる屈折率の変化は、偏光および波長依存性を有する。

【0017】
PSLM120には、第1偏光成分(S偏光)のみを含む入力側光学系110の出射光L2が入射する。PSLM120の各画素pは、入射光L2に含まれる波長ごとに異なる位相シフトを受け、これによりPSLM120の出射光L3の偏光方向が回転する。回転角は、波長毎に異なることに留意されたい。したがってPSLM120の出射光L3は、第1偏光成分(S偏光)と第2偏光成分(P偏光)の両方を含みうる。

【0018】
出力側光学系130は、PSLM120の出射光L3の経路上に設けられ、第1偏光成分(S偏光)を除去し、第2偏光成分(たとえばP偏光)のみを含む出力光L4を生成する。

【0019】
以上が光減衰ディスプレイ100の基本構成である。光減衰ディスプレイ100は、偏光と複屈折を利用したカラーフィルタとみなすことができる。以下にその動作原理を説明する。

【0020】
P偏光成分とS偏光成分を含む光が、角度0°にセットされた直線偏光子(単に偏光子という)に入射すると、P偏光成分のみが通過する。これは、線形システムを利用して式(1)で簡単に表すことができる。この表記法は、ジョーンズ計算法として知られている。
【数1】
JP2020154075A_000003t.gif
この計算法では、P偏光とS偏光を含む入射光が、列ベクトル[uで表記される。これをジョーンズベクトルという。uはP偏光(0°)の強度を、uはS偏光(90°)の強度を示す。このときの偏光子は、第1行第1列の要素のみが1で、残りが0の2行2列の行列(ジョーンズ行列)で表される。左辺の[1 0]は偏光子の透過光を表しており、P偏光のみが通過し、S偏光が除去されることを表する。

【0021】
偏光子が90°にセットされた場合、P偏光成分が除去され、S偏光成分のみが透過する。これは式(2)で表される。このときの偏光子は、第2行第2列の要素のみが1で、残りが0の2行2列の行列で表される。
【数2】
JP2020154075A_000004t.gif

【0022】
偏光子を45°にセットした場合のシステムは式(3)で表される。
【数3】
JP2020154075A_000005t.gif

【0023】
光減衰ディスプレイ100は、物質の複屈折を利用する。複屈折は、屈折率が入射光の偏光と方向に依存する物質の特性をいう。複屈折を示す物質は、光軸と垂直な偏光成分(通常光線)と、光軸と平行な偏光成分(異常光線)と、で異なる屈折率を示す。通常光線に対する屈折率をnor、異常光線に対する屈折率をnexと表記する。複屈折を示す物質において、通常光線と異常光線は、2(nex-nor)πd/λの位相シフト(遅延)を受ける。dは物質の厚みである。PSLMは、画素毎に、複屈折すなわち(nex-nor)を制御可能なデバイスである。

【0024】
ジョーンズ計算法において、PSLMはの振る舞いは、式(4)で表される。
【数4】
JP2020154075A_000006t.gif
但し、
β=(nex-nor)πd/λ
φ=2(nex+nor)πd/λ
-iφは一定の遅延であるから無視することとする。式(4)から、PSLMは、βを変化させることにより、遅延量(位相シフト量)を制御するデバイスと理解される。

【0025】
PSLMをカラーフィルタとして利用するにあたり、PSLMの各画素の液晶レイヤの配列方向が45°回転しているものと仮定する。回転はジョーンズ計算法において式(5)の行列R(θ)で表される。
【数5】
JP2020154075A_000007t.gif

【0026】
45°回転したPSLMのジョーンズ行列S45°は、式(6)で表される。
【数6】
JP2020154075A_000008t.gif

【0027】
図2の光減衰ディスプレイ100は、PSLMと、0°、90°の偏光子を結合したものであり、式(7)で表される。
【数7】
JP2020154075A_000009t.gif

【0028】
任意の直線偏光の光L1が光減衰ディスプレイ100に入射したとき、その透過率t(λ)は、式(8)で表される。
【数8】
JP2020154075A_000010t.gif

【0029】
式(8)のβは、画素毎に制御可能であるから、光減衰ディスプレイ100は、画素単位のカラーフィルタであることが理解される。

【0030】
なお光減衰ディスプレイ100を、一般的なディスプレイやプロジェクタと混同してはならない。一般的なディスプレイやプロジェクタは、カラーフィルタと、液晶ディスプレイやDMD(Digital Micromirror Device)、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)などのSLMおよび偏光子を備える。SLMの各画素には、赤、緑、青(R,G,B)のいずれか1色のみが入射する。そして画素毎に、対応する色の透過率(反射率)を制御しており、したがってSLMと偏光子は、色ごとの振幅変調デバイスとして機能する。

【0031】
これに対して本実施の形態に係る光減衰ディスプレイ100において、PSLM120の各画素への入射光L2は、連続スペクトルあるいは複数の波長成分を含んでいる。そして光減衰ディスプレイ100は、PSLM120の画素pixごとに、通過する色(あるいは遮断する色)を選択可能に構成される。つまり、光減衰ディスプレイ100は画素毎に、選択した色を減算することができる。つまり光減衰ディスプレイ100は、ピクセルレベルの色が可変なカラーフィルタと把握することができる。

【0032】
光減衰ディスプレイ100の利点を説明する。カラーフィルタを備える従来の表示システムでは、RGBの3個のサブピクセルが、1画素となるため、実効的な解像度が低い。またベイヤ配列に起因するモザイク処理が必須となり、これが解像度を一層低下させる。これに対して実施の形態に係る光減衰ディスプレイ100は、光減衰ディスプレイ100の1画素が、独立したカラーフィルタであることから、従来の表示システムに比べて、空間的な解像度が非常に高いという利点がある。

【0033】
またRGB方式では、3原色の線形結合でしか色を表現できないのに対して、本実施の形態では、図5(b)に示すように、透過する色の波長を連続的に変化させることができるため、色の再現性が高いという利点を有する。

【0034】
(実施例)
続いて、光減衰ディスプレイ100を利用して設計したOSTディスプレイ装置200について説明する。OSTディスプレイ装置200の設計においては、像が反転しないこと、視界の画角(拡大率)の変化が小さいこと、視差が小さいこと、透過率が高いこと、が要求される。

【0035】
(実施例1)
図3は、実施例1に係るOSTディスプレイ装置200を示す図である。OSTディスプレイ装置200は、環境光(現実世界の光)lを受け、減色することにより、拡張世界の画像をパターニングし、出力光lを出力する。

【0036】
OSTディスプレイ装置200は、偏光子(POL)202、偏光ビームスプリッタ(PBS)204、第1レンズ(L1)206、1/4波長板(QWP)208、ミラー(M1)210、第2レンズ(L2)212、反射型のPSLM214を備える。第1レンズ206は、ミラー210から焦点距離f、離間して配置される。第2レンズ212は、PSLM214から焦点距離f、離間して配置される。

【0037】
偏光子202は、入射光lのS偏光成分を透過し、P偏光を除去する。偏光ビームスプリッタ204は、偏光子202の透過光(S偏光)lを反射する。偏光ビームスプリッタ204は、プレート型であってもよいしキューブ型であってもよい。偏光子202の反射光lは、第1レンズ206、1/4波長板208を透過して第1レンズ206により反射し、1/4波長板208、第1レンズ206を透過して偏光ビームスプリッタ204に再入射する。1/4波長板208を2回通過することにより、偏光ビームスプリッタ204に再入射する光lは、P偏光を有しており、偏光ビームスプリッタ204を透過する。

【0038】
偏光ビームスプリッタ204の透過光lは、第2レンズ212を透過し、PSLM214に入射する。PSLM214は、画素毎に位相シフトを与える。PSLM214の反射光lはS偏光とP偏光を含みうる。この反射光lが偏光ビームスプリッタ204に再入射し、S偏光のみが反射され、OSTディスプレイ装置200の出力光lとなる。

【0039】
PSLM214は、図2のPSLM120に対応する。偏光子202、偏光ビームスプリッタ204、第1レンズ206、1/4波長板208、ミラー210、第2レンズ212は、図2の入力側光学系110に対応する。第2レンズ212および偏光ビームスプリッタ204は、図2の出力側光学系130に対応する。図3のように、PSLMを1個備えるOSTディスプレイ装置200を、シングルPSLM型という。

【0040】
図4は、図3のOSTディスプレイ装置200の光学的に等価なセットアップを示す図である。第2レンズ212によって、環境光は、PSLM214のピクセルにフォーカスされる。

【0041】
第1レンズ206および第1ミラー210は、像の上下、左右を、入力光lと出力光lとで一致させるために設けられる。

【0042】
なお、図3のOSTディスプレイ装置200は、観測者(利用者)の焦点が無限遠にあっていることを前提として設計されており、したがってOSTディスプレイ装置200に入射する環境光は実質的に平行光線とみなせ、現実世界の像は、十分に遠い位置に存在するものとする。なお図4では、OSTディスプレイ装置200に垂直に入射する光束のみを示しており、実際には異なる方向から入射する光束も存在する。各光束は、その入射角に応じたPSLM214のピクセルに入射し、また観測者の網膜の異なる位置で結像する。

【0043】
図3のOSTディスプレイ装置200によれば、屋外などの明るい環境下において、高い視認性を提供できる。また図3のOSTディスプレイ装置200は、反射型のPSLM214を用いているため、システム全体の透過率が高く、ユーザに明るい像を提供できるという利点がある。

【0044】
(測定結果)
図3のOSTディスプレイ装置200を実装し、その特性を測定した結果を説明する。測定に際しては、入力光として、Nanguang社のCN-900SA光源から出力される波長380~780nmを含む白色光を用いている。

【0045】
図5(a)、(b)は、図3のOSTディスプレイ装置200の可変カラーフィルタとしての特性(実測)を示す図である。PSLM214は、位相を8ビット(256階調)の制御コードにより制御可能ある。

【0046】
図5(a)は、13刻みの複数の制御コードにおけるOSTディスプレイ装置200の出力光のスペクトルを示す。スペクトルのピーク波長は、制御コードとともに変化しており、OSTディスプレイ装置200が可変のカラーフィルタとして機能することが理解される。図5(b)は、フィルタ特性をグレースケールで示したものである。

【0047】
図5(a)、(b)から分かるように、図3の構成では、ある制御コードに対して、離散的な2つの支配的な波長域が透過(あるいは遮光)している。ひとつの波長域のみをより選択的に透過させたい場合、デュアルPSLMセットアップを採用すればよく、これについては後述する。

【0048】
図6(a)~(c)は、OSTディスプレイ装置200の入出力特性を示す図である。図6(a)~(c)において、横軸は入力である8ビットの制御コードである。図6(a)は、制御コードとフィルタカラーの関係を示す。図6(b)は、強度の減衰を考慮したときの、制御コードとフィルタカラーの関係を示す。図6(c)は、正規化したXYZ色空間における観測されたフィルタカラーのノルムを相対強度として示す。

【0049】
図7は、CIExy色度図である。(i)は、OSTディスプレイ装置200により観測されるフィルタカラーのプロット群(以下、カラーパレットと称する)である。(ii)は、(i)のプロット群を囲む凸包を表す。(iii)の三角形はsRGB色空間を、(iv)はD65の白色点を示す。

【0050】
(カラーパレットの混色)
図7に示すように、OSTディスプレイ装置200の画素にある制御コードを与えたときに、その画素が発生する色は、(i)のプロット群が示す複数のカラーパレットのひとつである。ディスプレイとしては、(i)のカラーパレットの色のみでなく、それ以外の色が出力可能であることが望ましい。そこでOSTディスプレイ装置200は、カラーパレットに含まれる複数(2個あるいは3個以上)を時分割で切り替えて混色することにより、フィルターカラーの範囲を拡張する。

【0051】
図8は、OSTディスプレイ装置200のブロック図である。OSTディスプレイ装置200は、コントローラ230を含む。コントローラ230には、画像データS1が入力される。コントローラ230は、画像データS1の各画素について、その色を生成するために必要な2個(あるいは3個以上)の色を、複数のカラーパレットの中から選択する。そして、選択した色を時分割でPSLM214の画素PIXに出力する。これにより、カラーパレット以外の色を出力することが可能となる。

【0052】
図9(a)、(b)は、図8のOSTディスプレイ装置200の入力画像と出力画像を示す図である。シングルPSLMセットアップでは、入力画像に含まれる色の色域に対して、カラーパレットの色域が狭いことに起因して、出力画像にわずかな劣化が見られるが、ティーポットであることは確認できる。

【0053】
(実施例2)
カラーフィルタは、多段接続することにより、フィルタの特性をシャープにできることが知られている。図10は、実施例2に係るOSTディスプレイ装置200Aを示す図である。このOSTディスプレイ装置200Aは、デュアルPSLM型であり、図3のミラー210を取り除き、その代わりに第2のPSLM220を配置した構成である。

【0054】
図11(a)、(b)は、デュアルPSLM型のOSTディスプレイ装置200Aの可変カラーフィルタとしての特性(実測)を示す図である。2個のPSLM220,214のうち、一方には位相シフトθを、他方にはその2倍の位相シフトを与えている。

【0055】
図11(a)は、13刻みの複数の制御コードにおけるOSTディスプレイ装置200の出力光のスペクトルを示す。図11(b)は、フィルタ特性をグレースケールで示したものである。図11(a)、(b)と、図5(a)、(b)との対比から分かるように、デュアルPSLM型では、透過波長のピークをひとつに近づけることができる。

【0056】
図12は、CIExy色度図である。(i)は、OSTディスプレイ装置200Aのカラーパレットを示す。(ii)は、(i)のプロット群を囲む凸包を表す。(iii)の三角形はsRGB色空間を、(iv)はD65の白色点を示す。図12と図7の対比から分かるように、デュアルPSLM型では、シングルPSLM型に比べて、カラーパレットの色域を拡張できる。

【0057】
(実施例3)
図13は、実施例3に係るOSTディスプレイ装置200Bを示す図である。このOSTディスプレイ装置200Bは、図3のミラー210に代えて、反射型の振幅変調SLM222を備える。振幅変調SLM222としては、反射型液晶SLMや、DMDを用いることができる。

【0058】
実施例1あるいは2では、画素毎に色のみを制御することができたが、実施例3によれば、画素毎に、色と強度の両方を制御することができるため、より多彩な画像を提示することが可能となる。

【0059】
図14は、実施例4に係るOSTディスプレイ装置200Cを示す図である。このOSTディスプレイ装置200Cは、図3のOSTディスプレイ装置200のミラーM1と1/4波長板208のセットを、PSLM(214)と、入れ替えた構成である。図14において、PSLM240の反射光lはS偏光とP偏光を含む。このうち、偏光ビームスプリッタ204によってP偏光のみが透過する。偏光ビームスプリッタ204の透過光lは、1/4波長板244を通過し、ミラー242によって折り返される。1/4波長板244を往復で2回通過することにより、偏光ビームスプリッタ204に戻る光lは、S偏光となる。S偏光の光lは偏光ビームスプリッタ204によって反射され、出射光lとなる。

【0060】
(実施例4)
OSTディスプレイ装置200は、導光体を用いて構成することも可能である。図15は、実施例4に係るOSTディスプレイ装置300を示す図である。

【0061】
OSTディスプレイ装置300は、第1偏光板302、1次入力カプラ304、1次導光板306、1次出力カプラ308、第1レンズ310、ハーフミラー312、PSLM314、第2レンズ316、プリズム318、2次入力カプラ320、2次導光板322、2次出力カプラ324、第2偏光板326を含む。

【0062】
第1偏光板302は、入力光lのうち、第1偏向成分(たとえばP偏光)のみを透過する。第1偏光板302の透過光lは、1次導光板306の一端に設けられた1次入力カプラ304を介して1次導光板306に結合し、他端に向かって導波する。そして1次導光板306の他端において、1次出力カプラ308から出射する。1次出力カプラ308の出射光は、第1レンズ310およびハーフミラー312を透過し、PSLM314に入射する。PSLM314によって変調された反射光lは、第2レンズ316、プリズム318、2次入力カプラ320を経由して2次導光板322に入射する。2次導光板322を導波した光は、2次出力カプラ324から出力される。第2偏光板326は、2次出力カプラ324の出射光lから、第2偏向成分(S偏光)のみを抽出し、出力光l4を出力する。

【0063】
(変形例4.1)
第1偏光板302や第2偏光板326の配置は、図15のそれに限定されない。図16は、変形例4.1に係るOSTディスプレイ装置300Aを示す図である。この変形例4.1において、第1偏光板302および第2偏光板326の配置が図15のそれと異なっており、その他は同様である。第1偏光板302は、1次出力カプラ308と第1レンズ310の間に挿入してもよい。第2偏光板326は、第2レンズ316とプリズム318の間に挿入してもよいし、プリズム318と2次入力カプラ320の間に挿入してもよい。

【0064】
(変形例4.2)
図17は、変形例4.2に係るOSTディスプレイ装置300Bを示す図である。図17のOSTディスプレイ装置300Bでは、第1偏光板302、第2偏光板326が省略され、ハーフミラー312の代わりに、偏光ビームスプリッタ328が設けられる。

【0065】
(変形例4.3)
図18は、変形例4.3に係るOSTディスプレイ装置300Cを示す図である。図18のOSTディスプレイ装置300Cは、図15と比べてPSLM314の配置が異なっている。さらなる変形として、変形例4.1で説明したように、第1偏光板302や第2偏光板326の配置を変更してもよい。

【0066】
実施例4に関連してさらに、プリズム318を自由形状プリズムとしてもよい。また第2レンズ316、プリズム318、2次入力カプラ320を一体型の自由形状プリズムとしてもよい。

【0067】
(実施例5)
図19は、実施例5に係るOSTディスプレイ装置300Dを示す図である。このOSTディスプレイ装置300Dは、PSLM314に加えて、振幅変調SLM330を備える。振幅変調SLM330は、反射型液晶SLMでもよいしDMDでもよい。

【0068】
(変形例5.1)
図20は、変形例5.1に係るOSTディスプレイ装置300Eを示す図である。このOSTディスプレイ装置300Eは、図19と第1偏光板302および第2偏光板326の配置が異なっている。詳細については変形例4.1と同様である。

【0069】
(変形例5.2)
図21は、変形例5.2に係るOSTディスプレイ装置300Fを示す図である。このOSTディスプレイ装置300Fは、第1偏光板302、第2偏光板326が省略され、ハーフミラー312の代わりに、偏光ビームスプリッタ328が設けられる。詳細については変形例4.2と同様である。

【0070】
(実施例6)
実施例6は、実施例5のOSTディスプレイ装置300Dに、映像表示系を追加したものである。図22は、実施例6に係るOSTディスプレイ装置300Gを示す図である。このOSTディスプレイ装置300Gは、加算型と減算型のハイブリッドである。映像エンジン332は、ディスプレイ334とレンズ336を含み、AR用の映像を表示する。映像エンジン332の表示は、ハーフミラー338によって、PSLM314の反射光と合成される。

【0071】
このOSTディスプレイ装置300Gによれば、明るい環境下でも暗い環境下でも見やすい映像を提供できる。

【0072】
(変形例6.1)
実施例6においても、変形例4.1や変形例5.1と同様に、第1偏光板302および第2偏光板326の位置を変更してもよい。

【0073】
(変形例6.2)
実施例6においても、変形例4.2や変形例5.2と同様に、ハーフミラー312やハーフミラ-338の代わりに偏光ビームスプリッタを用いてもよい。

【0074】
(実施例7)
これまでの実施例では、反射型のPSLMを用いたが透過型を用いることも可能である。図23は、実施例7に係るOSTディスプレイ装置400を示す図である。第1偏光板402、第1レンズ404、第2レンズ406は図2の入力側光学系110に対応し、第3レンズ410、第4レンズ412、第2偏光板414は、図1の出力側光学系130に対応する。

【0075】
第1レンズ404および第2レンズ406を含む入射側のレンズ群は、3枚以上のレンズで構成されてもよい。同様に第3レンズ410、第4レンズ412を含む出射側のレンズ群は4枚以上のレンズで構成されてもよい。またこれらのレンズはフレネルレンズであってもよい。

【0076】
(変形例7.1)
実施例7においても、第1偏光板402および第2偏光板414の配置は限定されない。図24は、変形例7.1に係るOSTディスプレイ装置400Aを示す図である。第1偏光板402は、第2レンズ406とPSLM408の間に挿入され、第2偏光板414は、PSLM408と第3レンズ410の間に挿入される。

【0077】
(実施例8)
図25は、実施例8に係るOSTディスプレイ装置400Bを示す図である。このOSTディスプレイ装置400Bは、図23のOSTディスプレイ装置400に加えて、透過柄の振幅変調SLM416を備える。以下の実施例あるいは変形例において、振幅変調SLM416とPSLM408は入れ替えてもよい。

【0078】
(変形例8.1)
図26は、変形例8.1に係るOSTディスプレイ装置400Cを示す図である。この変形例では、第1偏光板402、第2偏光板414の位置が、図25と異なっている。

【0079】
(変形例8.2)
図27は、変形例8.2に係るOSTディスプレイ装置400Dを示す図である。このOSTディスプレイ装置400Dは、図25のOSTディスプレイ装置400Bに加えて、レンズ418,420をさらに備える。さらなる変形例として、第1偏光板402をPSLM408の隣に挿入したり、第2偏光板414を振幅変調SLM416の隣に挿入してもよい。あるいは、第1偏光板402と第2偏光板414でPSLM408を挟み込んでもよい。

【0080】
光減衰ディスプレイ100は、ヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
100 光減衰ディスプレイ
110 入力側光学系
120 PSLM
130 出力側光学系
200 OSTディスプレイ装置
202 偏光子
204 偏光ビームスプリッタ
206 第1レンズ
208 1/4波長板
210 ミラー
212 第2レンズ
214 PSLM
220 PSLM
222 振幅変調SLM
230 コントローラ
240 PSLM
242 ミラー
244 1/4波長板
300 OSTディスプレイ装置
302 第1偏光板
304 1次入力カプラ
306 1次導光板
308 1次出力カプラ
310 第1レンズ
312 ハーフミラー
314 PSLM
316 第2レンズ
318 プリズム
320 2次入力カプラ
322 2次導光板
324 2次出力カプラ
326 第2偏光板
328 偏光ビームスプリッタ
330 振幅変調SLM
332 映像エンジン
334 ディスプレイ
336 レンズ
400 OSTディスプレイ装置
402 第1偏光板
404 第1レンズ
406 第2レンズ
408 PSLM
410 第3レンズ
412 第4レンズ
414 第2偏光板
416 振幅変調SLM
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26