TOP > 国内特許検索 > 炭化水素の製造方法 > 明細書

明細書 :炭化水素の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5988243号 (P5988243)
公開番号 特開2014-051472 (P2014-051472A)
登録日 平成28年8月19日(2016.8.19)
発行日 平成28年9月7日(2016.9.7)
公開日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発明の名称または考案の名称 炭化水素の製造方法
国際特許分類 C07C   1/12        (2006.01)
C07C   9/02        (2006.01)
C07C   9/14        (2006.01)
B01J  29/46        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 1/12
C07C 9/02
C07C 9/14
B01J 29/46 M
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2012-198000 (P2012-198000)
出願日 平成24年9月10日(2012.9.10)
審査請求日 平成27年9月7日(2015.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】802000031
【氏名又は名称】公益財団法人北九州産業学術推進機構
発明者または考案者 【氏名】黎 暁紅
【氏名】馬 ▲亭▼
【氏名】陳 春
個別代理人の代理人 【識別番号】100139262、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 和昭
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特開2009-131835(JP,A)
特開2007-125515(JP,A)
特開2000-117108(JP,A)
特開平05-068883(JP,A)
特開平04-120191(JP,A)
特開平03-052825(JP,A)
特開平01-190638(JP,A)
調査した分野 C07C 1/00
B01J 29/00
C07C 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
二酸化炭素と水素とを反応させて炭素数1~9の炭化水素を製造する方法であって、
粒子サイズが0.1~5mmの、銅-亜鉛-アルミナ混合酸化物を主成分とし、二酸化炭素と水素とからメタノールを合成する反応を触媒するメタノール合成触媒と、
粒子サイズが0.1~5mmの、ゼオライトにパラジウム、ニッケルおよび銅から選択される1または複数の金属を担持させたゼオライト触媒であり、メタノールと水素から炭化水素と水が生成する反応を触媒する炭化水素合成触媒とを混合した混合触媒に、
二酸化炭素、水素および炭素数9以下の直鎖パラフィン系炭化水素を含む気体状の原料混合物を、反応温度250~350℃、反応圧力0.1~5MPaの条件下で接触させ、
前記混合触媒中の前記メタノール合成触媒が前記原料混合物中の前記直鎖パラフィン系炭化水素で被覆された状態で二酸化炭素および水素を気相反応させ、炭化水素を製造する工程を有することを特徴とする炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記混合触媒中の前記メタノール合成触媒と前記炭化水素合成触媒の重量比が1:2~2:1であることを特徴とする請求項記載の炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記直鎖パラフィン系炭化水素がn-ヘキサンであることを特徴とする請求項1または2記載の炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記ゼオライトが、ゼオライトZSM-5またはβ-ゼオライトであることを特徴とする請求項からのいずれか1項記載の炭化水素の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を製造に関する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
石油系または天然ガス系炭化水素のうち、常温常圧下ではガス状を呈するものを軽質炭化水素といい、主成分がプロパンおよびブタンであるものを圧縮し、あるいは同時に冷却して液状にしたものは液化石油ガス(LPG)とも呼ばれる。LPGは、可搬性に優れ、貯蔵や供給が比較的容易であることから、家庭用および業務用燃料として広く用いられている。LPGを始めとする軽質炭化水素は、天然ガスや原油から分離され、あるいは石油精製工程の副産物として回収されているが、LPGの需要の増大への対応、石炭や含炭素廃棄物の有効利用等の観点から、他の炭素源を原料とする炭化水素の合成法が研究されている。
【0003】
触媒の存在下で一酸化炭素と水素を反応させ、炭化水素を製造する方法としては、フィッシャー・トロプシュ反応が広く知られている。また、一酸化炭素または二酸化炭素と水素との反応により得られるメタノールをさらに水素化することにより炭化水素を合成する方法により製造する方法が知られている。
【0004】
一酸化炭素、二酸化炭素および水素の混合ガスからメタノールを気相反応により合成するプロセスは実用化されており(例えば、非特許文献1参照)、反応式は下記の式(1)および(2)で表される。
CO+2H = CHOH+21.6kcal …(1)
CO+3H = CHOH+HO+11.8kcal …(2)
上記の式(1)、(2)で表される反応は、いずれも体積減少を伴う発熱反応であるため、反応到達度を上昇させるためには、圧力を高く、温度を低くする必要がある。しかし、反応温度を低くすると反応速度が低下するため、これらの反応は触媒の存在下で行われる。気相合成法における実用的なメタノール合成触媒としては、銅-亜鉛触媒が挙げられる。酸化亜鉛系の触媒の活性温度は約400℃であるが、この温度では平衡変化率が低いので、非常に高い圧力(数10MPa)下で使用される。また銅系触媒は活性が高く、250~300℃、5~15MPaで使用される。
【0005】
また、上記の式(1)、(2)の反応を用いた気相法に代わるプロセスとして、液相法によるメタノール合成法が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平6-263666号公報
【特許文献2】特開平9-187654号公報
【特許文献3】特開2008-19176号公報
【0007】

【非特許文献1】「バイオマス資源を原料とするエネルギー変換技術に関する調査(III)」、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、平成12年度調査報告書、NEDO-GET-0004、平成13年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1記載の方法では、5~15MPaという高い温度および圧力を必要とする。そのため、反応設備が大がかりになると共に、加圧のためのエネルギーを必要とするという問題があった。また、平衡転化率が制限を受け、1パス当たりの転化率が低いという問題があった。さらに、触媒の劣化を防ぐための熱の除去が課題となっている。また、式(2)の反応や、メタノールの水素化反応により目的物であるメタノールおよび炭化水素と共に生成する水も、銅-亜鉛系メタノール合成触媒の劣化の原因となる。
【0009】
特許文献1、2記載の方法も、液相法であるにもかかわらず高圧を必要とする点で、依然として非特許文献1記載の方法と同様の上述の問題を有している。また、液相法に共通する課題として、大量の溶媒を必要とし、あるいは触媒と混合した反応液がスラリー状となるため、いずれの場合も反応速度が低下するという問題が挙げられる。
【0010】
また、一酸化炭素または一酸化炭素と二酸化炭素の混合物と水素から炭化水素を合成する方法は種々提案されているが、炭素源として二酸化炭素のみを用い、炭化水素を合成する方法については提案がなされていないのが現状である。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来法より低い温度および圧力で行うことができ、二酸化炭素と水素から高効率で炭化水素を製造することが可能な炭化水素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的に沿う本発明は、下記の[1]~[4]のいずれかに記載の炭化水素の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
[1] 二酸化炭素と水素とを反応させて炭素数1~9の炭化水素を製造する方法であって、
粒子サイズが0.1~5mmの、銅-亜鉛-アルミナ混合酸化物を主成分とし、二酸化炭素と水素とからメタノールを合成する反応を触媒するメタノール合成触媒と、
粒子サイズが0.1~5mmの、ゼオライトにパラジウム、ニッケルおよび銅から選択される1または複数の金属を担持させたゼオライト触媒であり、メタノールと水素から炭化水素と水が生成する反応を触媒する炭化水素合成触媒とを混合した混合触媒に、
二酸化炭素、水素および炭素数9以下の直鎖パラフィン系炭化水素を含む気体状の原料混合物を、反応温度250~350℃、反応圧力0.1~5MPaの条件下で接触させ、
前記混合触媒中の前記メタノール合成触媒が前記原料混合物中の前記直鎖パラフィン系炭化水素で被覆された状態で二酸化炭素および水素を気相反応させ、炭化水素を製造する工程を有する炭化水素の製造方法
] 前記混合触媒中の前記メタノール合成触媒と前記炭化水素合成触媒の重量比が1:2~2:1である上記[1]記載の炭化水素の製造方法。
] 前記直鎖パラフィン系炭化水素がn-ヘキサンである上記[1]または[2]記載の炭化水素の製造方法。
] 前記ゼオライトが、ゼオライトZSM-5またはβ-ゼオライトである上記[]から[]のいずれか1項記載の炭化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の炭化水素の製造方法では、銅-亜鉛系メタノール合成触媒とゼオライト触媒を混合して用いるため、二酸化炭素と水素との反応により生成したメタノールが、ゼオライト触媒の作用により迅速に水素化を受け炭化水素に転化する。そのため、必要以上に温度を下げたり圧力を上げたりすることなく、上記の式(2)の反応の平衡を生成物側にシフトさせることができる。そのため、本発明の炭化水素の製造方法によると、二酸化炭素を原料として、液化石油ガスやガソリンと同様に利用可能な軽質炭化水素を安価かつ効率的に製造することが可能になる。また、原料である二酸化炭素および水素と共に直鎖パラフィン系炭化水素を混合触媒に接触させることにより、銅-亜鉛系メタノール合成触媒の表面が直鎖パラフィン系炭化水素からなる疎水性の被膜で被覆された状態で反応を触媒させることができる。それにより、二酸化炭素と水素との反応により生成した水はメタノール合成触媒と接触できなくなるため、水によるメタノール合成触媒の失活を防ぐことができる。また、予め所定の粒子サイズにしたメタノール合成触媒とゼオライト触媒とを混合した混合触媒を用いることにより、ゼオライト触媒とメタノール合成触媒とが、後者の表面に形成された疎水性の被膜で隔てられた状態で適度な距離を保つことができる。そのため、ゼオライト触媒上におけるメタノールの水素化反応の際に生成する水によるメタノール合成触媒の失活も防ぐことができる。したがって、本発明の炭化水素の製造方法によると、反応中に触媒活性が低下することなく、長時間にわたって安定かつ効率的に炭化水素の製造を行うことができる。さらに、本発明の炭化水素の製造方法は、工場や発電所等から化石燃料の燃焼により排出されており、安価に入手可能な二酸化炭素を原料として炭化水素の製造を行うことを可能とするため、低コストであると共に、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減、ひいては環境負荷の低減にも貢献しうる方法である。特に、二酸化炭素の原料として、バイオマス燃料の燃焼により生成する二酸化炭素を用いる場合、本発明の方法は、バイオマスのガス化等のバイオマス利用技術に比べ、低コストでエネルギー効率に優れたバイオマス利用技術を提供するものでもある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】炭化水素の製造方法に用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図2】実施例1における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例1における、生成した炭化水素中の炭素数分布を示すグラフである。
【図4】実施例2における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例2における、生成した炭化水素中の炭素数分布を示すグラフである。
【図6】実施例3における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフである。
【図7】実施例3における、生成した炭化水素中の炭素数分布を示すグラフである。
【図8】比較例1における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフである。
【図9】比較例2における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。

【0016】
本発明の一実施の形態に係る炭化水素の製造方法(以下、「炭化水素の製造方法」、「本方法」と略称する場合がある。)は、二酸化炭素と水素とを反応させて炭素数1~9の炭化水素を製造する方法であって、粒子サイズが0.1~5mmのメタノール合成触媒と、粒子サイズが0.1~5mmの炭化水素合成触媒とを混合した混合触媒に、二酸化炭素、水素および炭素数9以下の直鎖パラフィン系炭化水素を含む気体状の原料混合物を、反応温度250~350℃、反応圧力0.1~5MPaの条件下で接触させ、混合触媒中のメタノール合成触媒が原料混合物中の直鎖パラフィン系炭化水素で被覆された状態で二酸化炭素および水素を気相反応させ、炭化水素を製造する工程を有している。

【0017】
<1>混合触媒
本方法において用いられる混合触媒は、粒子サイズが0.1~5mmのメタノール合成触媒と、粒子サイズが0.1~5mmの炭化水素合成触媒とを混合したものである。メタノール合成触媒および炭化水素合成触媒の粒子サイズは、共に0.1~5mm、好ましくは0.5~2mmである。両者の粒子サイズが5mmを超えると、単位体積当たりの表面積が小さくなるため、触媒効率が低下する。また、両者の粒子サイズが0.1mmを下回ると、メタノール合成触媒と炭化水素合成触媒の反応サイト間の距離が近くなりすぎ、後者が触媒するメタノールの水素化反応において生成する水により前者が失活を受けやすくなる。同様の理由により、混合触媒の調製時に、メタノール合成触媒および炭化水素合成触媒の原料混合物を粉砕したり、一方を他方に担持させることは好ましくない。

【0018】
メタノール合成触媒は、下記の式(2)の反応により、二酸化炭素と水素とからメタノールを合成する反応を触媒する任意の触媒をいう。
CO+3H = CHOH+HO+11.8kcal …(2)
メタノール合成触媒の例としては、銅-亜鉛系触媒、パラジウム-亜鉛-クロム系触媒、亜鉛-クロム系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられ、好ましくは銅-亜鉛系触媒である。銅-亜鉛系のメタノール合成触媒としては、銅および亜鉛を含む複合酸化物を主成分とする任意の触媒を用いることができ、具体例としては、銅-亜鉛-アルミナ混合酸化物を主成分とする触媒等が挙げられる。これらの触媒は、市販のものを用いてもよいし、任意の公知の方法を用いて合成してもよい。

【0019】
炭化水素合成触媒は、メタノールと水素から、炭化水素と水が生成する反応を触媒する任意の触媒をいう。炭化水素合成触媒の例としては、ゼオライトが挙げられるが、パラジウム、ニッケルおよび銅から選択される1または複数の金属を担持させた金属担持ゼオライト(ゼオライト触媒)が特に好ましい。金属を担持させていないゼオライトを触媒として用いた場合、オレフィンの生成率が高くなり、これが重合して混合触媒の周囲に析出したり、さらに熱分解を受けて炭化したりするため、目的とする炭素数1~9の炭化水素の生成率の低下や、触媒活性低下等の原因となる。そこで、上記の金属を担持させ、パラフィン系炭化水素の生成率を向上させる。ゼオライトとしては、任意のものを特に制限なく用いることができるが、具体例としては、ZSM-5、β-ゼオライト、SAPO、モルデナイト、Y型ゼオライト、USY等が挙げられ、適当な空孔サイズのものを選択することにより、合成される炭化水素の炭素数およびその分布をコントロールできる。特に好ましいゼオライトは、ZSM-5およびβ-ゼオライトである。ゼオライトは、市販のものを用いてもよいし、任意の公知の方法を用いて合成してもよい。

【0020】
金属の担持は、例えば、担持しようとする金属の塩、錯体等の水溶液にゼオライトの粉末を浸漬し、ゼオライトに溶液を含浸後乾燥することにより行うことができる。金属の担持量は0.1重量%以上であることが好ましい。担持量の上限は特に制限されないが、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。

【0021】
これらの触媒をそれぞれ別個に調製し、必要に応じて所定の粒子サイズに調整後、両者を混合することにより混合触媒が得られる。メタノール合成触媒と炭化水素合成触媒の混合比は特に制限されないが、両者の重量比が1:4~4:1の範囲内になることが好ましく、1:2~2:1の範囲内にあることがより好ましい。混合触媒は、粉末のまま用いてもよいが、所定の大きさおよび形状を有する顆粒状、ペレット状等に成形してもよく、熱交換器や反応器の表面に塗布した状態で用いてもよい。両触媒の混合および成形は、両触媒の粒子サイズを上記範囲から逸脱させない限りにおいて任意の方法を用いて行うことができるが、乾式法が好ましく用いられる。混合触媒の成形方法の具体例としては、押出成形法、打錠成形法等が挙げられる。

【0022】
混合触媒は、その効果を損なわない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分の具体例としては、シリカ、アルミナ等の不活性で安定な熱伝導体等が挙げられる。
また、必要に応じて、水素等の還元雰囲気で加熱する等の任意の公知の方法を用いて、還元処理を行ってもよく、必要に応じ、触媒の乾燥、活性化等を目的とする任意の前処理を行ってもよい。

【0023】
<2>反応条件
上記の触媒に、二酸化炭素、水素および炭素数9以下の直鎖パラフィン系炭化水素を含む気体状の原料混合物を接触させ、二酸化炭素と水素とを気相中で反応させ、炭素数1~9の炭化水素を得る。触媒床の方式は特に制限されず、固定床、沸騰床、流動床、移動床等の任意の方式のものを用いることができる。原料として用いられる二酸化炭素の起源は特に制限されないが、二酸化炭素源の具体例としては、高濃度の二酸化炭素を含み、安価で大量に利用可能な火力発電所の排気ガス、製鉄所の高炉ガス、化学プラント等が挙げられる。原料として用いられる水素の起源も特に制限されないが、高濃度の水素を含み、安価で大量に利用可能な製鉄所等のコークス炉ガス等を用いてもよく、水の電気分解等の方法により製造した水素を用いてもよい。環境負荷の低減や省エネルギーの観点から、水の電気分解に用いられる電気は、太陽光発電、風力発電等の自然エネルギーまたは再生可能エネルギーを利用して発電されたものであることが好ましい。

【0024】
原料である二酸化炭素および水素を、直鎖パラフィン系炭化水素と混合後、気体状の原料混合物を所定の圧力および温度に調整し、触媒に接触させることが好ましい。原料混合物は、各原料の分圧や熱伝導率の調節等のため、必要に応じて、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含んでいてもよい。本方法の実施に用いることができる反応装置の一例を図1に示す。図1中の略号の意味は、下記の通りである。
FIC:流量計つき流量制御装置
PIC:圧力計つき圧力制御装置
TIC:温度計つき温度制御装置
PI:圧力計
TI:温度計
GC:ガスクロマトグラフ
なお、直鎖パラフィン系炭化水素が常温常圧で液体の場合には、高圧ポンプを介して反応装置内に導入され、内部で気化される。直鎖パラフィン系炭化水素の分圧は、ポンプの流量を調整することにより制御される。

【0025】
本方法の全反応式は、下記の式(3)で表される。
nCO+(3n+1)H → C2n+2+2nHO …(3)
したがって、原料混合物中の二酸化炭素と水素の理論的モル比は、1:(3+1/n)である。したがって、二酸化炭素と水素のモル比は、1:3を超え1:4以下の適当な値に調節される。

【0026】
直鎖パラフィン系炭化水素と原料ガス(二酸化炭素+水素)のモル比は、好ましくは1:4~4:1、より好ましくは1:2~2:1である。直鎖パラフィン系炭化水素は、反応槽中で、メタノール合成触媒の表面に吸着され、その表面を被覆する疎水性の被膜を形成すると共に、触媒中または表面で発生する反応熱を周囲に伝達する熱媒体としても作用することができる。直鎖パラフィン系炭化水素の炭素数は、4以上8以下であることが好ましく、5または6であることが特に好ましい。特に好ましい直鎖パラフィン系炭化水素としてはn-ヘキサンが挙げられる。反応条件下で、n-ヘキサンは亜臨界状態の被膜を形成していると考えられ、触媒表面への反応ガスの接触を阻害することなく、メタノール合成触媒表面への水の接触を阻害し、触媒性能の劣化を防ぐことができる。なお、本方法で製造される炭化水素のうち、上記条件を満たす直鎖パラフィン系炭化水素の少なくとも一部を、原料ガスと混合する直鎖パラフィン系炭化水素として利用してもよい。

【0027】
触媒床接触直前の原料混合物の温度(反応温度)は、反応が円滑に進行する限りにおいて特に制限されないが、例えば、250℃以上であることが好ましい。反応温度の上限は、例えば350℃である。触媒床接触直前の原料混合物の圧力は、0.1~5MPa、好ましくは0.4~4MPaである。

【0028】
原料混合物の流量は、触媒1gあたり10~100mL/分であることが好ましく、20~50mL/分であることがより好ましい。

【0029】
このようにして得られる炭化水素は、炭素数1~9の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素を含んでいる。炭化水素の炭素数およびその分布は、使用される混合触媒中の炭化水素合成触媒(ゼオライトの種類および担持される金属)、反応条件(温度、圧力、原料混合物の流量)等に応じて変動し、典型的には、炭素数3および4の炭化水素(プロパンおよびブタン)が50重量%前後含まれているが、これには限定されない。

【0030】
炭化水素は、炭素数に応じて、液化石油ガスまたはガソリンの用途(燃料等)に使用することができる。炭化水素は、そのまま用いてもよいが、必要に応じて、蒸留等の任意の公知の手段で分離精製や異性化等の処理を行った上で用いてもよい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
図1に示す装置を用い、二酸化炭素、水素、n-ヘキサンおよびアルゴン(内標)の気体状の原料混合物(各成分のモル比および全圧は、各成分の圧力により調節した)を気化器中で所定の温度まで加熱し、電気炉中に設置した反応管中の混合触媒に接触させ、炭化水素の製造を行った。
【実施例】
【0032】
1.混合触媒の調製
(1)メタノール合成触媒
メタノール合成触媒として、銅/亜鉛/アルミナ系触媒を使用した。錠剤成形機を用いて、粉末状のメタノール合成触媒をディスク状に成形(40kg/cm、30秒間)後、0.37~0.84mmに破砕した。
【実施例】
【0033】
(2)炭化水素合成触媒
炭化水素合成触媒として、0.5重量%のパラジウム(Pd)を担持したZSM-5(Zeolyst社(米国)製、SiO/Alモル比が23のもの)を使用した。パラジウムの担持は、下記のイオン交換法を用いて行った。Pd(NHClの水溶液(6mg Pd/mL)を調製し、100mLに希釈した。0.5重量%のパラジウムを担持させるために必要な量の溶液を容器に計り取り、イオン交換水で希釈(25mL)後、3gのZSM-5を加え、得られた懸濁液を60~70℃で8時間撹拌した。懸濁液をろ過し、洗浄液に塩化物イオンが検出されなくなるまでイオン交換水で洗浄した。次いで、120℃で12時間乾燥後、500℃で2時間焼結し、粉末状の炭化水素合成触媒を得た。錠剤成形機を用いて、粉末状の炭化水素合成触媒をディスク状に成形(40kg/cm、30秒間)後、0.37~0.84mmに破砕した。
【実施例】
【0034】
(3)混合触媒の調製および前処理
上記のようにして得られたメタノール合成触媒および炭化水素合成触媒を、1:1の重量比で混合し、混合触媒を得た。これを固定床加圧流通式の反応管(内径6mm、全長30cm)に充填(グラスウール、ガラスビーズ、触媒、ガラスビーズの順で充填)し、窒素気流下(100mL/分)、250℃で2時間乾燥した。次いで高純度水素/窒素=5/95を流しながら(100mL/分)300℃で3時間加熱することにより、還元処理を行った。
【実施例】
【0035】
気体混合物中の二酸化炭素と水素のモル比は、1:3とし、二酸化炭素+水素とn-ヘキサンのモル比は、1:1または1:1.75とした。比較のために、n-ヘキサンを添加しない場合についても検討を行った。反応混合物の流量は、混合触媒1g当たり21mL/分または42mL/分とし、圧力は3MPaまたは4MPaとした。混合触媒接触直前の反応混合物の温度は、280℃に調節した。
【実施例】
【0036】
反応後の混合物は、反応間の下流側に設置された冷却器で冷却され、添加したn-ヘキサンおよび生成した炭化水素のうち高沸点のものは、ここで液化され、定期的にオフラインで分析された(FIDガスクロマトグラフ、島津製作所製GC-8A、ジーエルサイエンス社製TC-1カラム(内径0.25mm×長さ30m。膜厚1.00μm)使用。カラム温度60~230℃。)。一方、冷却器においても液化しない低沸点成分は、流路上に設置されたFID(炭化水素)またはTCD(一酸化炭素、二酸化炭素、メタンおよびアルゴン)ガスクロマトグラフ(ガスクロマトグラフ、島津製作所製GC-8A、ジーエルサイエンス社製InterCap
1カラム(内径0.25mm×長さ30m。膜厚1.50μm)使用。カラム温度60~230℃(FIDの場合)または100℃(TCDの場合))を用いて分析された。
【実施例】
【0037】
上述の手順により、反応管内にセットされた混合触媒の還元処理を行った後、反応器の温度を一旦室温に戻し、窒素および水素ガスを停止した。次いで、反応混合物を流しながら所定の圧力まで昇圧、次いで所定の温度まで昇温後、反応を開始した。冷却器の下流側で生成物のサンプリングを定期的に行い、分析を行った。
【実施例】
【0038】
各実施例および比較例における、二酸化炭素+水素とn-ヘキサンのモル比、混合触媒1g当たりの反応混合物の流量および圧力を表1に示す。
【実施例】
【0039】
【表1】
JP0005988243B2_000002t.gif
【実施例】
【0040】
各実施例および比較例における、二酸化炭素の転化率および一酸化炭素の選択率の経時変化を示すグラフを、それぞれ、図2、4、6、8、9に示す。また、各実施例における、炭化水素中の炭素数分布を示すグラフを、それぞれ、図3、5、7に示す。なお、図2、4、6、8、9における一酸化炭素の選択率とは、水性ガス逆シフト反応により生成する一酸化炭素が二酸化炭素の反応生成物に占める割合をいう。また、図3、5、7において、炭素数6のノルマルパラフィン(n-ヘキサン)の割合については、反応混合物に添加したn-ヘキサンも同時に検出されるため、実測値の代わりに、n-ペンタンおよびn-ヘプタンの割合の平均値を掲載した。
【実施例】
【0041】
図8、9(比較例1、2)と図2、4、6(実施例1、2、3)との比較より明らかなように、反応混合物がn-ヘキサンを含まない場合には、時間の経過と共に二酸化炭素の転化率が低下すると共に、一酸化炭素の選択率が急激に増加している。これは、反応により水の影響でメタノール合成触媒が失活し、水性ガス逆シフト反応が優勢となることに起因すると考えられる。一方、実施例1、2、3のいずれの場合においても、一酸化炭素の選択率は30%以下であると共に、二酸化炭素の転化率も30%以上の値を保持していた。これらの結果より、反応混合物にn-ヘキサンを添加することで、メタノール合成触媒の失活を抑制でき、長時間にわたり、高収率で炭化水素を製造できることが確認できた。
【実施例】
【0042】
また、実施例2と3の比較より、反応混合物の流量を減少させることにより、二酸化炭素の転化率が向上すると共に、炭素数の大きな炭化水素の生成割合が増大することが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8