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明細書 :樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-166638 (P2019-166638A)
公開日 令和元年10月3日(2019.10.3)
発明の名称または考案の名称 樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体
国際特許分類 B29C  65/20        (2006.01)
C25D  11/12        (2006.01)
C25D  11/18        (2006.01)
C25D  11/24        (2006.01)
C23C  28/00        (2006.01)
B32B  15/08        (2006.01)
B32B  37/14        (2006.01)
FI B29C 65/20
C25D 11/12 Z
C25D 11/18 306C
C25D 11/18 306Z
C25D 11/18 312
C25D 11/24 302
C23C 28/00 Z
B32B 15/08 Z
B32B 37/14 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2018-053610 (P2018-053610)
出願日 平成30年3月21日(2018.3.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人 日本機械学会、一般社団法人 日本機械学会 第1回若手ポスターシンポジウム 講演論文集、平成29年11月17日 一般社団法人日本複合材料学会、第9回日本複合材料会議(JCCM-9) 講演論文集、平成30年2月28日
発明者または考案者 【氏名】細井 厚志
【氏名】川田 宏之
【氏名】丁 ▲ジュンチョル▼
【氏名】岡本 和起
【氏名】阿部 暉
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 4F100
4F211
4K044
Fターム 4F100AA37
4F100AA37A
4F100AB10
4F100AB10B
4F100AH06
4F100AH06B
4F100AK01A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA31A
4F100BA31B
4F100BA41B
4F100DD01
4F100DD01B
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DH02
4F100DH02A
4F100EJ15
4F100EJ15B
4F100EJ67
4F100EJ67B
4F100GB31
4F100JB16
4F100JB16A
4F211AD03A
4F211AD24
4F211AD28
4F211AD33
4F211AD34
4F211TA01
4F211TD02
4F211TD13
4F211TH17
4F211TH20
4F211TH21
4F211TH22
4F211TN07
4F211TQ04
4K044AA06
4K044BA13
4K044BA18
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB11
4K044BB13
4K044BC05
4K044CA04
4K044CA17
4K044CA53
4K044CA59
4K044CA67
要約 【課題】様々な樹脂とアルミニウム材とを接合する際に、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく十分な接合強度を得ること。
【解決手段】本発明に係る樹脂金属接合体10の製造方法は、アルミニウム材11に、その表面側に開放する表面開放部14Aが形成された多数の孔部14を含むナノ凹凸構造12を作製するナノ凹凸構造作製工程と、表面開放部14Aから孔部14内に溶融状態の樹脂21を侵入させてから固化することで、アルミニウム材11と樹脂21を接合する接合工程とを順に行う。ナノ凹凸構造作製工程では、各孔部14の内部で相互に連通する連通部15が形成され、これら各孔部14及び連通部15で構成される内部空間を、各孔部14の各表面開放部14Aとは別の部位で外部に開放可能に形成する。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
樹脂とアルミニウム材を接合してなる樹脂金属接合体の製造方法において、
前記アルミニウム材に、その表面側に開放する表面開放部が形成された多数の孔部を含むナノ凹凸構造を作製するナノ凹凸構造作製工程と、前記表面開放部から前記孔部内に溶融状態の前記樹脂を侵入させてから固化することで、前記アルミニウム材と前記樹脂を接合する接合工程とを順に行い、
前記ナノ凹凸構造作製工程では、前記各孔部の内部で相互に連通する連通部が形成され、これら各孔部及び連通部で構成される内部空間を、前記各孔部の各表面開放部とは別の部位で外部に開放可能に形成することを特徴とする樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項2】
前記ナノ凹凸構造作製工程では、前記アルミニウム材を陽極酸化処理することで、当該アルミニウム材の表面に不規則なポーラス構造のポーラスアルミナを形成した後、エッチング処理により前記ポーラスアルミナの表面側の一部分を除去することで、前記ナノ凹凸構造を作製することを特徴とする請求項1記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ凹凸構造作製工程では、第1段階として、前記陽極酸化処理及び前記エッチング処理を行った後、第2段階として、前記第1段階と同一条件で前記陽極酸化処理を行った後、前記第2段階よりも短時間で前記エッチング処理を行うことを特徴とする請求項2記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ凹凸構造作製工程と前記接合工程との間に、前記ナノ凹凸構造をなす前記アルミニウム材の表面側にシランカップリング処理を行うシランカップリング処理工程を行い、
前記接合工程では、シランカップリング処理後の前記アルミニウム材の表面側に前記樹脂を接合することを特徴とする請求項1、2又は3記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化樹脂であり、
前記接合工程では、加熱によって溶融状態となった前記樹脂の接合部分と、前記ナノ凹凸構造をなす前記アルミニウム材の接合部分とを相互に接近させる方向に押圧するホットプレス処理により、前記各接合部分が接合されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項6】
樹脂とアルミニウム材の接合体において、
前記樹脂に接合する前記アルミニウム材の接合部分には、表面側が開放する表面開放部を有する不規則なポーラス構造をなす多数の孔部と、前記各孔部の内部で相互に連通する連通部とからなる内部空間を有し、当該内部空間は、前記各孔部の各表面開放部とは別の部位で外部に開放し、前記内部空間に前記樹脂が入り込むことで、前記樹脂と前記アルミニウム材とが噛み合った状態で接合していることを特徴とする樹脂金属接合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体に係り、特に、ボルトやリベット等の接合部材を用いることなく、熱可塑性若しくは熱硬化性の炭素繊維強化樹脂とアルミニウム材とを接合する樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維と樹脂の複合材として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が知られており、このCFRPとしては、母材に熱硬化性樹脂を用いた熱硬化性のCFRPの他に、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)がある。これらCFRPは、軽量且つ高強度であるため、航空機や自動車等の部品として広く用いられている。特に、自動車分野では、適材適所に種々の材料を採用するマルチマテリアル化がなされる傾向があり、成形性の観点から熱可塑性樹脂を母材としたCFRTPが用いられている。当該CFRTPは、保管や量産性に優れており、後加工も容易でリサイクル可能等の理由から、製造コストが安価となる。
【0003】
これらCFRPが航空機や自動車等の部品の材料として用いられる際には、金属材料からなる他の部品との接合が必要になる。例えば、航空機では、CFRP製の部品とアルミニウム製の部品との接合に、ボルトやリベット等の接合部材が多く用いられる。しかしながら、このような接合部材を用いた接合は、ボルトやリベット自体の重量が嵩み、CFRPを用いることによる軽量化のメリットを阻害する要因となるばかりか、ボルト孔が損傷発生の起点となり易く、近年では、これらCFRP等の樹脂とアルミニウム材等の金属材料との接合をボルトレス化することが求められている。
【0004】
ところで、特許文献1~3には、ボルトやリベット等の接合部材を用いずに、CFRPと金属とを接合する様々な手法が開示されている。すなわち、特許文献1には、金属表面にナノメートルオーダの微細凹凸を設けた上で、当該金属表面とCFRPとをエポキシ系接着剤を用いて接着する方法が開示されている。また、特許文献2には、金属表面にトリアジンチオール誘導体を含有する層を形成した上で、当該層とCFRP間に熱可塑性樹脂層を更に設け、熱可塑性樹脂層を溶融させることで、金属とCFRPを接合する方法が開示されている。更に、特許文献3には、1000~100000本の単繊維を含有する短冊状の繊維束からなる炭素繊維を40~80重量%含有した熱可塑性樹脂と、接合面の面粗度が1~100μmとなる金属とを振動溶着する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-269534号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/074083号公報
【特許文献3】特開2016-34734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の方法にあっては、接着剤としてエポキシ樹脂が必要になることから、接着剤の硬化に時間がかかるばかりか、接着剤の経年劣化による接着強度の低下を招来するとともに、当該接着剤の存在によりリサイクル性が低下するという問題がある。また、前記特許文献2の方法にあっては、接合対象の金属とCFRPとの間に、トリアジンチオール誘導体層及び熱可塑性樹脂層が介在することになるため、金属とCFRPの接合体の高重量化を招来するとともに、特許文献1と同様にリサイクル性が低下するという問題がある。更に、前記特許文献3の方法にあっては、使用できる炭素繊維複合材料が限られており、広い種類のCFRPに適用することができない。
【0007】
なお、前記特許文献1の背景技術として、アルミニウム合金をエッチングすることで、アルミニウム合金の表面に凹凸を形成してから、当該孔部に溶融した熱可塑性樹脂を高圧で射出して侵入させることで、当該熱可塑性樹脂とアルミニウム合金を接合する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、前記孔部の形状から、当該孔部に樹脂を十分侵入させるには射出成形が前提であり、複雑な形状の樹脂と金属との接合が困難になる。また、前記孔部の形状がある一定の領域に延びるなだらかな谷状になるため、当該孔部に樹脂が係合するスパイク効果が不十分となり得る。従って、特許文献1で提案されているように、この背景技術の手法のみでは十分な接着強度が得られず、接着剤を併用する必要性が生じる。
【0008】
また、前記特許文献2の背景技術として、微小なポーラスが表面に形成されたアルミニウム材に樹脂を射出することでポーラス内に樹脂が入り込んで固化するアンカー効果により、CFRTPとアルミニウム材とを接合する方法が開示されている。この方法にあっても、射出成形が前提であることから、複雑な形状の樹脂と金属との接合が困難である。加えて、アルミニウム材に形成されたポーラスは、それぞれ表面に対して垂直方向に延びる規則的な形状をなすが、それぞれ独立した各ポーラス内に存在する空気の逃げ場が無いことから、それぞれのポーラスの奥まで樹脂が行き渡り難い。このため、当該ポーラスに対する前述の接合処理では、射出成形が必要であり、射出成形を行わないのであれば、真空下で成形を行う必要性が生じる等、成形条件に制約が生じる。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、様々な樹脂とアルミニウム材とを接合する際に、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく、十分な接合強度が得られる樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、主として、樹脂とアルミニウム材を接合してなる樹脂金属接合体の製造方法において、前記アルミニウム材に、その表面側に開放する表面開放部が形成された多数の孔部を含むナノ凹凸構造を作製するナノ凹凸構造作製工程と、前記表面開放部から前記孔部内に溶融状態の前記樹脂を侵入させてから固化することで、前記アルミニウム材と前記樹脂を接合する接合工程とを順に行い、前記ナノ凹凸構造作製工程では、前記各孔部の内部で相互に連通する連通部が形成され、これら各孔部及び連通部で構成される内部空間を、前記各孔部の各表面開放部とは別の部位で外部に開放可能に形成する、という手法を採っている。
【0011】
また、本発明は、樹脂とアルミニウム材の接合体において、前記樹脂に接合する前記アルミニウム材の接合部分には、表面側が開放する表面開放部を有する不規則なポーラス構造をなす多数の孔部と、前記各孔部の内部で相互に連通する連通部とからなる内部空間を有し、当該内部空間は、前記各孔部の各表面開放部とは別の部位で外部に開放し、前記内部空間に前記樹脂が入り込むことで、前記樹脂と前記アルミニウム材とが噛み合った状態で接合する、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、樹脂との接合部分となるアルミニウム材の表面側に、相互に不規則に配置された多数の孔部を有するナノ凹凸構造が作製され、溶融状態の樹脂を各孔部に侵入させて固化することで、樹脂とアルミニウム材とが接合される。ここで、各孔部の内部は連通部を介して相互に連通した状態となっており、これら各孔部及び連通部で構成される内部空間は、それぞれの孔部の表面開放部とは別の部位で開放している。従って、各表面開放部から各孔部内に樹脂が侵入すると、各孔部内の空気が内部空間の開放部位から抜けながら、内部空間に樹脂を十分に行き渡らせることができる。しかも、各孔部が不規則な形状となることから、内部空間に充填された樹脂が、アルミニウム材の内部で複雑に絡み合って固化することになり、アルミニウム材と樹脂の接着面積が増大し、強固なアンカー効果を得ることができる。このため、本発明によれば、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく、強固に接合された樹脂とアルミニウム材との接合体を得ることができる。加えて、本発明に係る製造方法では、射出成形が必須ではなく、熱可塑性樹脂熱及び硬化性樹脂の何れにも適用することができ、様々な樹脂をアルミニウム材に接合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態で作製されたナノ凹凸構造を有するアルミニウム材を模式的に表した断面図である。
【図2】(A)、(B)は、本実施形態に係る樹脂金属接合体の製造方法での接合工程を順に模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の詳細と実施例について、適宜図面を使用しながら以下に説明する。

【0015】
本発明は、樹脂とアルミニウム材を接合してなる樹脂金属接合体の製造方法に係り、特に、樹脂とアルミニウム材との接合方法に特徴を有する。前記製造方法は、樹脂との接合部分となるアルミニウム材の表面側にナノ凹凸構造を作製するナノ凹凸構造作製工程と、ナノ凹凸構造が形成されたアルミニウム材の表面にシランカップリング処理を行うシランカップリング処理工程と、シランカップリング処理後のアルミニウム材の表面を樹脂の接合部分に接合する接合工程とが順に行われる。

【0016】
本発明においては、前記樹脂として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の所定の樹脂に適用可能であり、当該CFRPとして、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)と、母材に熱硬化性樹脂が用いられた熱硬化性のCFRPとの双方の適用が可能である。なお、CFRTPとしては、母材樹脂としてポリアミド(MXD6、PA6、PA66、PA12等)の他に、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、エポキシ、AS樹脂、ABS樹脂等が用いられたもの等、様々な種類のものを適用できる。

【0017】
また、本発明においては、前記アルミニウム材として、純アルミニウムの他に、アルミニウムを主成分としたアルミニウム合金の適用が可能である。

【0018】
前記ナノ凹凸構造作製工程では、脱脂したアルミニウム材を酸性の電解液中で陽極酸化することにより、アルミニウム材の表面に多孔性酸化被膜であるポーラスアルミナ層を形成する陽極酸化処理と、陽極酸化処理で形成された多数のポーラスを有するポーラスアルミナ層の表面側の一部分を除去するエッチング処理とが順に行われる。

【0019】
前記陽極酸化処理は、金属を陽極として電解液中で通電して当該金属の表面に酸化皮膜を形成する公知の手法が採用され、電解液としては、例えば、クエン酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、スルファミン酸、ホウ酸、クロム酸、マロン酸、セレン酸等を含むものが用いられる。

【0020】
前記エッチング処理では、リン酸、クロム酸、シュウ酸等の少なくとも1種類を含む酸性の処理液に、ポーラスアルミナ層を含むアルミニウム材の部分を浸漬してポーラスアルミナ層の表面側の一部分を除去することで、断面構造を模式的に表した図1に示されるように、アルミニウム材11の表面側にナノ凹凸構造12が形成される。このナノ凹凸構造12は、前記表面側に開放する表面開放部14Aを有する多数の孔部14と、これら各孔部14の内部で相互に連通する連通部15とが形成された状態となっている。各孔部15は、アルミニウム材11の表面から内部に向ってそれぞれ不規則に延びており、各孔部15と連通部15により構成される内部空間は、各表面開放部14Aとは別の開放部分16で外部に開放するようになっている。以上のように形成されたナノ凹凸構造12の部分は、樹脂と接合するアルミニウム材11の接合部分11Aとなる。

【0021】
前記シランカップリング処理工程では、ナノ凹凸構造12が形成されたアルミニウム材11を樹脂により強固に接合するために、前記内部空間を含むナノ凹凸構造12の部分にシランカップリング剤が塗布される。ここで用いられるシランカップリング剤としては、主として、イソシアネート基を有するものが用いられるが、本発明はこれに限らず、アミノ基、メルカプト基、チオール基、ジスルフィド基、シアノ基、ハロゲン基、スルフォン基を有するものを用いることもできる。

【0022】
前記接合工程では、前記樹脂が熱可塑性のCFRTPである場合、図2(A)に示されるように、加熱によって溶融状態となった樹脂21の接合部分21Aとアルミニウム材11の接合部分11Aとを相互に接近する方向に押圧するホットプレス処理により、各接合部分11A,21A同士が接合される。具体的に、ここでのホットプレス処理は、シランカップリング剤が接合部分11Aに塗布されたアルミニウム材11をホットプレートH等に載置する等によって加熱し、その接合部分11Aに樹脂21の接合部分21Aを重ね合わせて樹脂21を溶融させた上で、樹脂21をアルミニウム材11に向かって加圧したまま、樹脂21を冷却して固化させることで、アルミニウム材11と樹脂21とが接合される。なお、ホットプレス処理の温度条件としては、母材樹脂の種類によって異なり、ガラス転移温度以上で、所望とする形状を維持可能な温度未満に設定される。

【0023】
また、前記樹脂21が熱硬化性のCFRPの場合、当該樹脂21を成形する際に、その接合部分21Aにアルミニウム材11の接合部分11Aを重ね合わせた状態で行われる。例えば、半硬化状態のプリプレグシートを使い、オートクレーブ等によって加圧しながら硬化させる過程で、アルミニウム材11を樹脂21に接合させる。

【0024】
以上の接合工程においては、表面開放部14Aから各孔部14内に樹脂21が入り込む際に、当該孔部14内に存在する空気が連通部15を通じて開放部分16から外部に抜け易くなり、アルミニウム材11の各孔部14及び連通部15からなる内部空間のほぼ全域に樹脂21を行き渡らせることができる。そして、当該樹脂21が固化することで、アルミニウム材11の内部に不規則に樹脂21が張り巡らされる形で相互に絡み合うことになり、アルミニウム材11と樹脂21の接触面積が増大し、アンカー効果を高めてそれらの接合を強固にすることができる。

【0025】
前記製造方法で得られた樹脂金属接合体10は、図2(B)に示されるように、アルミニウム材11の孔部14と連通部15からなる内部空間に樹脂21が入り込むことで、これらアルミニウム材11と樹脂21とが噛み合って接合した状態となる。

【0026】
なお、本発明においては、前記シランカップリング処理工程を省略して、前記ナノ凹凸構造作製工程の後に前記接合工程に移行しても良いが、シランカップリング処理工程を経た方が、アルミニウム材11と樹脂21との接合強度を高めることができる。

【0027】
次に、樹脂金属接合体10の製造方法に係る一実施例について説明する。

【0028】
アルミニウム材11としては、A5052のアルミニウム材からなる板材を用い、樹脂21としては、母材をポリアミド(PA6)として炭素繊維と複合させた熱可塑性のCFRTPからなる板材を用い、次の手順により、アルミニウム材11と樹脂21の接合体10が得られた。

【0029】
先ず、ナノ凹凸構造作製工程により、アルミニウム材11の表面にナノ凹凸構造12を作製する。すなわち、ここでは、最初に、アルミニウム合金に対して脱脂等の前処理を行った。ここでの脱脂は、アセトン中にアルミニウム材を浸し、超音波洗浄により行った。当該前処理後、

【0030】
その上で、陽極酸化処理及びエッチング処理を2段階で行った。先ず、第1段階として、2重量%のエチレングリコールと2重量%のクエン酸を1:2で混合した電解液を用い、温度283K、電圧400Vで9時間、陽極酸化処理を行った後、温度336Kの6重量%のリン酸と1.5重量%のクロム酸の混合液で60分間エッチング処理を行った。

【0031】
その後、第2段階として、第1段階と同一条件の陽極酸化処理を行った後、エッチング処理を行った。ここでのエッチング処理は、第1段階に対し、時間を20分に短縮したが、その他の条件は同一とした。すると、図1に模式的に示されるナノ凹凸構造12がアルミニウム材11の表面側に形成された。

【0032】
以上の工程で得られたナノ凹凸構造は、アルミニウム材11の表面に一様な高さを有するポーラス状のナノ構造が作製され、ポーラスの穴径約700nm、最大高さ500nmとなった。

【0033】
なお、陽極酸化処理及びエッチング処理については、第2段階の処理を省略し、第1段階のみにすることも可能で、この場合、第1段階のエッチング処理の時間が20分間とされる他は、前述の第1段階と同条件での処理がなされる。

【0034】
以上のように、陽極酸化処理及びエッチング処理を前述の2段階で行うことで、1段階のみの場合よりも、各孔部14がより不規則に並んだポーラス構造を形成することが可能になる。このように陽極酸化処理及びエッチング処理を2段階で行った場合、先ず、第1段階で、アルミニウム材11の表面側のポーラス層の大部分を除去し、表面側に突出する先端の尖った針状の突起を多数形成してから、第2段階で不規則な並びのポーラスが作製される。

【0035】
次に、シランカップリング処理工程により、アルミニウム材11の表面側のナノ凹凸構造12の部分にシランカップリング処理が施される。ここでは、先ず、アルミニウム材11をアセトンに浸漬しながら超音波洗浄を行う。そして、純水で1重量%に希釈した3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを主成分とするシランカップリング剤に、アルミニウム材11を15分間浸漬した後、オーブンにて383Kで乾燥させた。

【0036】
次に、接合工程により、ナノ凹凸構造12が作製されたアルミニウム材11と樹脂21との各接合部分11A,21Aが接合される。ここでは、シランカップリング剤が塗布されたアルミニウム材11について、図2(A)に示されるように、接合部分11A側を上向きにして、573Kに加熱したホットプレートH上に載置し、接合部分11Aに樹脂21の接合部分21Aを重ね合わせる。その上で、接合部分21A側が溶融状態になった樹脂21の同図中上方から39.2N(0.13MPa)の圧力を加えて加圧状態とし、そのまま3分間放置する。その後、当該加圧状態を維持したまま、ホットプレートHの電源を落とし、空冷により室温程度まで温度を低下させることで、樹脂21を固化させてアルミニウム材11に接合し、図2(B)のような樹脂金属接合体10が得られた。

【0037】
本発明者らによって行われた樹脂金属接合体10の接合強度実験(JISK6850の引張せん断試験)によれば、本実施例に係る樹脂金属接合体10の接合強度は、20.6MPaとなった。一方、前記実施例と同一のアルミニウム材11について、ナノ凹凸構造12を作製せずに、シランカップリング処理を行ってから実施例と同一の樹脂21とを接合してなる従来の樹脂金属接合体(比較例1)について、前述と同一条件の接合強度実験を行うと、その接合強度が約15%低下し、17.4MPaとなった。

【0038】
以上の実験結果によれば、本実施例に係る樹脂金属接合体10は、各比較例に係る従来の樹脂金属接合体よりも、アルミニウム材11と樹脂21との接合強度が高くなることが実証された。

【0039】
なお、他の実施例として、母材をMXD6としたCFRTPを樹脂21とし、その他の条件を前記実施例と同一にして樹脂金属接合体10を形成した。当該他の実施例に係る樹脂金属接合体10では、前述の接合強度実験による接合強度が24.8MPaと更に増大した。

【0040】
また、本発明は、前述した樹脂の他の樹脂にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 樹脂金属接合体
11 アルミニウム材
11A 接合部分
12 ナノ凹凸構造
14 孔部
14A 表面開放部
15 連通部
16 開放部分
21 樹脂
21A 接合部分
H ホットプレート
図面
【図1】
0
【図2】
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