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明細書 :光反射素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-191296 (P2019-191296A)
公開日 令和元年10月31日(2019.10.31)
発明の名称または考案の名称 光反射素子
国際特許分類 G02F   1/01        (2006.01)
FI G02F 1/01 D
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2018-081467 (P2018-081467)
出願日 平成30年4月20日(2018.4.20)
発明者または考案者 【氏名】根尾 陽一郎
【氏名】冨田 誠
【氏名】松本 貴裕
出願人 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100170818、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 秀輝
審査請求 未請求
テーマコード 2K102
Fターム 2K102AA22
2K102AA24
2K102AA40
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD08
2K102DA03
2K102DB08
2K102DD04
2K102DD08
2K102EA02
2K102EA16
2K102EB02
2K102EB14
要約 【課題】反射率を能動的に制御し得る光反射素子を提供する。
【解決手段】光反射素子1は、光100を受けると共に光101を出射する上導電膜7と、上導電膜7に対して、上導電膜7の厚み方向に離間して配置された下導電膜9と、上導電膜7及び下導電膜9の間に配置されて、上導電膜7及び下導電膜9のそれぞれに接する電気光学膜8と、上導電膜7及び下導電膜9に電気的に接続されて、電気光学膜8に電圧を印加する電源6と、を備える。上導電膜7、電気光学膜8及び下導電膜9は、光導波路部12を構成する。上導電膜7及び下導電膜9は、電気伝導性を有する。電気光学膜8は、電源6から印加された電圧に応じて屈折率が変化する。電気光学膜8の屈折率は、上導電膜7及び下導電膜9の屈折率より大きい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
入射光を受けると共に出射光を出射する第1導電層と、
前記第1導電層に対して、前記第1導電層の厚み方向に離間して配置された第2導電層と、
前記第1導電層及び前記第2導電層の間に配置されて、前記第1導電層及び前記第2導電層のそれぞれに対して電気的及び光学的に接する電気光学層と、
前記第1導電層及び前記第2導電層に電気的に接続されて、前記電気光学層に電圧を印加する電源と、を備え、
前記第1導電層、前記電気光学層及び前記第2導電層は、光導波路部を構成し、
前記第1導電層及び前記第2導電層は、電気伝導性を有し、
前記電気光学層は、前記電源から印加された電圧に応じて屈折率が変化し、
前記電気光学層の屈折率は、前記第1導電層及び前記第2導電層の屈折率より大きい、光反射素子。
【請求項2】
前記第2導電層は、負の誘電率を有する金属薄膜であり、前記電気光学層から放射された光に応じて表面プラズモンを生成する、請求項1に記載の光反射素子。
【請求項3】
前記光導波路部が導波モードであるとき、前記第2導電層において前記表面プラズモンが生成される、請求項2に記載の光反射素子。
【請求項4】
前記第1導電層上には、所定の入射角度を有する光を前記電気光学層に対して前記入射光として提供するプリズムが配置される、請求項2又は3に記載の光反射素子。
【請求項5】
前記第1導電層は、金であり、
前記電気光学層は、一次電気光学効果又は二次電気光学効果を有するPLZTセラミックスであり、
前記第2導電層は、銀である、請求項1~4の何れか一項に記載の光反射素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、表面プラズモン共鳴を利用する光素子を開示する。この光素子は、プリズムと、当該プリズムに設けられたMIM(Metal-Insulator-Metal)多層構造と、を有する。
【0003】
非特許文献1の光素子は、光素子へ入射する光の条件及び特性に応じて光学特性が変化する。例えば、光が表面プラズモン共鳴条件を満たさない場合、表面プラズモン共鳴が発生しない。従って、光は反射してプリズムから出射される。つまり、光素子の反射率は所定値を有する。一方、入射光が表面プラズモン共鳴条件を満たす場合、表面プラズモン共鳴が発生する。従って、光は表面プラズモン共鳴によって吸収されるのでプリズムから出射される光は減少する。つまり、光素子の反射率は低下する。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】セカットズヘアー、シンジ ハヤシ、ディミトリー ブイ ネステレンコ、アヌアルラモウニ、シハム レフキ、ヒデカズ イシトビ、ヤスシ イノウエ、サトシカワタ 著(ZOUHEIR SEKKAT, SHINJI HAYASHI,DMITRY V. NESTERENKO, ANOUAR RAHMOUNI, SIHAM REFKI, HIDEKAZU ISHITOBI, YASUSHI INOUYE,AND SATOSHI KAWATA)、「金属誘電体多層構造におけるプラズモニック結合モード:ファノ共振と特大増強(Plasmonic coupled modes in metal-dielectric multilayer structures:Fano resonance and giant field enhancement)」、オプティクスエクスプレス2008(OPTICSEXPRESS 2008)、(アメリカ合衆国)、オプティカルソサエティ オブ アメリカ(Optical Society of America)、2016年9月5日、No. 18、Vol. 24、pp. 20080-20088。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した光学特性の変化は、入射する光の条件の変化によって生じるものである。そうすると、入射光の条件等に変化がなければ、光学特性の変化も生じない。つまり、上述した光学特性の変化は、受動的な変化である。
【0006】
そこで、本発明では、光学特性である反射率を能動的に制御し得る光反射素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、入射光を受けると共に出射光を出射する第1導電層と、第1導電層に対して、第1導電層の厚み方向に離間して配置された第2導電層と、第1導電層及び第2導電層の間に配置されて、第1導電層及び第2導電層のそれぞれに対して電気的及び光学的に接する電気光学層と、第1導電層及び第2導電層に電気的に接続されて、電気光学層に電圧を印加する電源と、を備え、第1導電層、電気光学層及び第2導電層は、光導波路部を構成し、第1導電層及び第2導電層は、電気伝導性を有し、電気光学層は、電源から印加された電圧に応じて屈折率が変化し、電気光学層の屈折率は、第1導電層及び第2導電層の屈折率より大きい。
【0008】
光導波路部に導かれた光は、導波モード条件が満たされる場合には光導波路部に閉じ込められ、導波モード条件が満たされない場合には光導波路部から出射される。換言すると、導波モード条件が満たされる場合には素子から出射される光が減るので、見かけの反射率が低下する。一方、導波モード条件が満たされない場合には光導波路部から出射されるので、見かけの反射率は大きくなる。この導波モード条件は、光導波路部を構成する電気光学層の屈折率の影響を受ける。つまり、第1導電層及び第2導電層を介して電源から提供された電圧によって電気光学層の屈折率が変化すると、導波モード条件も変化する。そうすると、電気光学層の屈折率を変化させることにより、入射光の条件によらず、光学特性である反射率を能動的に制御することができる。
【0009】
一形態において、第2導電層は、負の誘電率を有する金属薄膜であり、電気光学層から放射された光に応じて表面プラズモンを生成してもよい。この構成によれば、光導波路部における共振系と表面プラズモン共鳴系とが結合される。その結果、入射光の変化に対する反射率の変化を所望の態様に設定することが可能になる。従って、電気光学層の屈折率の変化に対する反射率の変化を所望の態様に設定することができる。
【0010】
一形態において、光導波路部が導波モードであるとき、第2導電層において表面プラズモンが生成されてもよい。この構成によれば、電気光学層の屈折率の変化量に対する屈折率の変化量を大きくすることができる。
【0011】
一形態において、第1導電層上には、所定の入射角度を有する光を電気光学層に対して入射光として提供するプリズムが配置されてもよい。この構成によれば、電気光学層に対して入射光を好適に導くことができる。
【0012】
一形態において、第1導電層は、金であり、電気光学層は、一次電気光学効果又は二次電気光学効果を有するPLZTセラミックスであり、第2導電層は、銀であってもよい。この構成によれば、所望の反射率を好適に得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学特性である反射率を能動的に変化させ得る光反射素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態に係る光反射素子の構造を示す図である。
【図2】図2は、光導波路部の特性と表面プラズモン部の特性とを示すグラフである。
【図3】図3は、結合共振系の特性を示すグラフである。
【図4】図4の(a)部及び(b)部は、光導波路部の共振角度と表面プラズモン部の共鳴角度とを異ならせたときの特性を示すグラフである。
【図5】図5の(a)部及び(b)部は、光導波路部の共振角度と表面プラズモン部の共鳴角度とを一致させたうえで、電気光学膜の厚みを変更したときの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0016】
図1に示すように、光反射素子1は、光100(入射光)を受け入れて、光100と同等又はそれ以下の光101(出射光)を出射する。より詳細には、光反射素子1は、出射する光101の強度を変化させる。ここで、入射した光束に対し出射した光束の比率を反射率と定義する。そうすると、光反射素子1は、反射率を変化させることができると言える。この反射率の変化は、反射する(反射率:1)又は反射しない(反射率:0)という二値制御のみならず、中程度に反射する態様(反射率:0以上1以下)も含む。そして、光反射素子1は、単体の特性として反射率を能動的に変化させることができる。ここでいう「能動的」とは、光反射素子1が光100の入射条件とは別の要因であって、光反射素子1が備える構成要素の特性を制御することにより反射率を変化させることを言う。つまり、入射する光100の特性(例えば入射角度)が一定であっても、光反射素子1の反射率を所望の値に制御できる。つまり、光反射素子1は、駆動部を有することなく電圧制御のみで光の反射を制御できる。従って、光反射素子1は、高い効率を有し、高速動作が可能であって、高画素アレイを容易に構成し得る。例えば、光反射素子1は、スクリーンに画像を投影するプロジェクタやヘッドアップディスプレイなどに用いられる。

【0017】
光反射素子1は、プリズム2と、基板3と、MIM多層膜4と、電源6と、を有する。光100は、プリズム2に入射した後に基板3を介してMIM多層膜4に到達する。MIM多層膜4は、電源6から印加される電圧に応じて反射率が変化する。その結果、MIM多層膜4は、反射率に基づいた光101を出射する。

【0018】
プリズム2は、所定の入射角度θを有する光100をMIM多層膜4に対して提供する。
MIM多層膜4に対して提供される光100は、例えば、MIM多層膜4に対する入射角度が後述する光導波路部12の共振及び表面プラズモン生成部13の共鳴を生じさせるものとしてよい。プリズム2は、三角柱状を呈し、入射面2aと結合面2bと出射面2cとを有する。例えば、プリズム2の断面において、入射面2a及び出射面2cは、互いに長さが等しい等辺であり、結合面2bは、底辺である。結合面2bは、基板3を介してMIM多層膜4に光学的に接続されている。つまり、プリズム2は、入射面2aから受け入れた光を結合面2bを介してMIM多層膜4に提供する。また、プリズム2は、MIM多層膜4から提供された光を結合面2bから受け入れて、出射面2cから出射する。

【0019】
基板3は、光反射素子1の基体である。基板3は、例えば酸化シリコン(SiO)であり、その厚みは一例として190ナノメートル程度である。基板3は、プリズム2が固定される主面3aと、MIM多層膜4が設けられる裏面3bと、を有する。

【0020】
MIM多層膜4は、いわゆる金属-絶縁体-金属の構成を有する。具体的には、MIM多層膜4は、上導電膜7(第1導電層)と、電気光学膜8(電気光学層、EO層)と、下導電膜9(第2導電層)と、を有する。これらの上導電膜7、電気光学膜8及び下導電膜9は、厚み方向に沿ってこの順に積層されている。つまり、基板3の裏面3bは、上導電膜7の主面7aに対面する。上導電膜7の裏面7bは、電気光学膜8の主面8aに対面する。電気光学膜8の裏面8bは、下導電膜9の主面9aに対面する。

【0021】
なお、上導電膜7と電気光学膜8とは、光学的及び電気的に接続されていればよいので、物理的な接触は必ずしも必要ではない。つまり、薄膜を介して上導電膜7と電気光学膜8とが接続されてもよい。例えば、基板3と上導電膜7との間には、厚みが1ナノメートル程度のチタン薄膜11が設けられてもよい。また、上導電膜7と電気光学膜8との間にも、チタン薄膜11が設けられてもよい。さらに、下導電膜9と電気光学膜8との間にも、チタン薄膜11が設けられてもよい。

【0022】
下導電膜9の裏面9bは、空気102に晒されている。なお、下導電膜9の裏面9bには、さらに別の追加層が設けられてもよいが、当該追加層の屈折率は、電気光学膜8の屈折率より小さいことを要する。

【0023】
上導電膜7は、例えば、金の薄膜であり、その厚みは一例として35ナノメートルである。従って、上導電膜7は、金属層であるので、電気伝導性を有する。なお、上導電膜7は、電気伝導性を有していればよく、採用し得る金属材料に特に制限はない。

【0024】
電気光学膜8は、印加される電圧に応じてその光学特性が変化する材料により構成されている。電気光学膜8の厚みは、例えば200ナノメートルである。例えば、電気光学膜8は、PLZTを採用してよい。PLZTは、下記式(1)の化学式により示される。
【数1】
JP2019191296A_000003t.gif

【0025】
PLZTは、その組成比に応じて種々の光学特性を発現させ得る。例えば、PLZTは、一次電気光学特性及び二次電気光学特性を示す。一次電気光学特性とは、いわゆるポッケルス効果であって、屈折率が電界強度の1乗に比例して変化する効果であり、PbZrOのモル比及びLaのモル比により示される組成比の範囲においてその特性を示す。また、二次電気光学特性とは、いわゆるカー効果であって、屈折率が電界強度の2乗に比例して変化する効果であり、一次電気光学特性を示す組成比の範囲とは重複しない組成比の範囲においてその特性を示す。

【0026】
下導電膜9は、例えば、銀の薄膜であり、その厚みは一例として100ナノメートルである。従って、下導電膜9は、金属層であるので、電気伝導性を有する。

【0027】
電源6は、電気光学膜8に対して電圧を印加する。電源6の一方の出力端は、上導電膜7に電気的に接続される。電源6の他方の出力端は、下導電膜9に電気的に接続される。電源6は、図示しない制御装置によって出力電圧を制御し得る。電源6は、例えば、電気光学膜8に対して0.1ボルト以上50ボルト以下の範囲に含まれる直流電圧を印加する。

【0028】
以下、光反射素子1の動作について詳細に説明する。光反射素子1は、機能的にみると、光導波路部12と、表面プラズモン生成部13と、を含む。

【0029】
光導波路部12は、上導電膜7と、電気光学膜8と、下導電膜9と、を含む。光導波路部12は、導波モード条件を満たすとき、導波モードを示す。導波モードとは、上導電膜7と下導電膜9との間(電気光学膜8の内部)に光100を閉じ込める状態をいう。導波モードは、上導電膜7及び下導電膜9における全反射の条件と、上導電膜7及び下導電膜9の間での共振条件と、が満たされることによって生じる。つまり、上述の所定の条件は、全反射の条件と共振条件とを含む。

【0030】
全反射の条件は、上導電膜7の屈折率と電気光学膜8の屈折率との関係、下導電膜9の屈折率と電気光学膜8の屈折率との関係、上導電膜7への光の入射角度、及び下導電膜9への光の入射角度に基づく。そこで、例えば、全反射の条件のため、電気光学膜8の屈折率は、上導電膜7及び下導電膜9の屈折率よりも大きい。共振条件は、上導電膜7と下導電膜9との間隔(電気光学膜8の厚み)、電気光学膜8の屈折率、上導電膜7及び下導電膜への光の入射角度、及び光100の波長に基づく。

【0031】
図2のグラフG1a、G1bは、光導波路部12の光学特性を示す。グラフG1a、G1bでは、光導波路部12単体の光学特性を示しており、表面プラズモン生成部13の影響は無視したものである。横軸は入射角度θを示す。縦軸は反射率を示す。ここでいう入射角度θとは、プリズム2の入射面2aに対する角度をいう(図1参照)。また、反射率とは、入射面2aに入射する光100の強度と、出射面2cから出射される光100の強度と、の比率をいう。グラフG1aが示すように、入射角度θが変化すると、反射率が変化することがわかる。そして、入射角度θが導波モード共振角度θRWG1であるとき、反射率はゼロである。この導波モード共振角度θRWG1では、プリズム2の出射面2cから光100が出射しない。換言すると、入射した光100は、全て光導波路部12に閉じ込められたことを示す。つまり、導波モード条件(全反射の条件、導波路共振条件)を満たした状態である。一方、入射角度θが導波モード共振角度θRWG1からずれた場合には、所定の反射率を示す。つまり、上導電膜7において一部の光が透過して、プリズム2の出射面2cから出射したことを意味する。

【0032】
上述のとおり、光導波路部12の光学特性は、光100の入射角度θの変化に伴う。一方、導波モード条件には、電気光学膜8の屈折率も含まれている。例えば、電気光学膜8の屈折率を僅かに大きくすると、光導波路部12の光学特性は、グラフG1aに示される特性から、グラフG1bに示される特性に変化する。つまり、電気光学膜8の屈折率制御により、入射角度θに変化がなくとも、反射率の変化が生じる。

【0033】
表面プラズモン生成部13は、電気光学膜8と下導電膜9とを含む。表面プラズモン生成部13は、所定の条件を満たすとき、表面プラズモン共鳴を示す。表面プラズモン共鳴とは、下導電膜9中の自由電子が外部から入力された振動によって加振された状態である。より詳細には、表面プラズモン共鳴が生じた状態とは、外部から入力される振動の波数ベクトルが、自由電子の波数ベクトルと、一致した状態をいう。この外部から入力された振動は、電気光学膜8から下導電膜9に提供された光100に起因するエバネッセント波による。エバネッセント波を生じさせるためには、互いに接する2個の媒質の誘電率の符号が逆である必要がある。従って、下導電膜9には、所定の条件下において誘電率が負となる材料を用いる。このような材料には、金、銀、アルミニウムが挙げられる。

【0034】
表面プラズモン共鳴が生じたとき、自由電子を振動させるエネルギとして光100が用いられる。つまり、光100のエネルギは自由電子の振動エネルギに転換されて、光100が下導電膜9に吸収されたように見える。その結果、プリズム2から光100が出射されない。従って、表面プラズモン共鳴条件を満たす状態では、反射率はゼロとなる。

【0035】
表面プラズモン共鳴条件は、下記式(2)により示される。
【数2】
JP2019191296A_000004t.gif

式(2)は、エバネッセント波の分散関係を示す。表面プラズモン共鳴が生じた状態において、式(2)に示される波数ベクトルkは、表面プラズモンの分散関係を示す波数ベクトルkと一致する。

【0036】
図2のグラフG2a、G2bは、表面プラズモン生成部13の光学特性を示す。グラフG2aが示すように、入射角度θに応じて反射率が変化する。そして、入射角度θがプラズモン共鳴角度θRP1、θRP2であるとき、表面プラズモンが生じて光100が吸収されるので、反射率はゼロになる。

【0037】
ここで式(2)は、屈折率の項(n)を含む。この屈折率は、光100が入射する側の媒質、つまり電気光学膜8の屈折率である。いま、電気光学膜8に電圧を印加して屈折率を変化させたとする。この仮定において、式(2)の波数ベクトルkを表面プラズモンの分散関係を示す波数ベクトルkと一致させるためには、入射角度θの変化を要する。例えば、電気光学膜8の屈折率(n)をわずかに変化させると、波数ベクトルkを満たす入射角度θは、第1のプラズモン共鳴角度θRP1から第2のプラズモン共鳴角度θRP2に変化する。すなわち、表面プラズモン生成部13の光学特性は、グラフG2aに示す特性から、グラフG2bに示す特性に変化する。つまり、電気光学膜8の屈折率制御により、入射角度θに変化がなくとも、反射率の変化が生じる。

【0038】
上記は、光導波路部12及び表面プラズモン生成部13がそれぞれ単独で存在した場合の説明である。実施形態に係る光反射素子1は、光導波路部12及び表面プラズモン生成部13と、が結合されている。従って、光反射素子1は、光導波路部12が有する共振系と、表面プラズモン生成部13が有する共鳴系とが、結合された結合共振系としての光学特性を有する。結合の態様は、光導波路部12の導波モード共振角度と、表面プラズモン生成部13の表面プラズモン共鳴角度との関係により設定してよい。共振角度と共鳴角度を一致させると、図3のグラフG3a、G3bに示されるような特性が得られる。

【0039】
図3に示すように、この結合共振系において、光導波路部12の導波モード共振角度θRWG3と、表面プラズモン生成部13の表面プラズモン共鳴角度θRP3とは、互いに等しいとする。つまり、結合共振系において、導波モードが生じるときには、同時に表面プラズモンも生じている。グラフG3aは、第1屈折率を有する場合の特性を示し、グラフG3bは、第2屈折率を有する場合の特性を示す。第2屈折率は、第1屈折率よりもわずかに大きいものとする。

【0040】
例えば、プリズム2に対して光100が一定の入射角度θで照射され続ける形態を仮定する。まず、電気光学膜8を第1屈折率に設定する。このとき、結合共振系の光学特性は、グラフG3aであるので、反射率はゼロである。次に、入射する光100の状態は変化させず、電気光学膜8の屈折率を第2屈折率に設定する。つまり、入射角度θは変更しない。このとき、結合共振系の光学特性は、グラフG3bであるので、反射率は0.8程度である。つまり、屈折率を制御することにより、反射率をゼロから0.8程度へ変化させ得る。さらに、屈折率の変化量によっては、結合共振系の特性を、グラフG3a、G3bとの間として示される曲線として選択することもできる。

【0041】
ここで、光導波路部12の光学特性(図2のグラフG1a)と、表面プラズモン生成部13の光学特性(図2のグラフG2a)と、結合共振系の光学特性と、(図3のグラフG3a)を比較すると、光導波路部12に表面プラズモン生成部13を結合することにより、光導波路部12の光学特性が変化していることがわかる。具体的には、入射角度θの変化量に対する反射率の変化量が変わっている。つまり、結合共振系の特性は、光導波路部12と表面プラズモン生成部13との結合の態様によって所望の特性に設定することができる。

【0042】
また、結合の結果、グラフG3aは、極大値を示す。このときの入射角度θは、導波モードを生じさせる導波モード共振角度θRWG3であると共に、表面プラズモンを生じさせる表面プラズモン共鳴角度θRP3である。入射された光100のエネルギは、表面プラズモンとして下導電膜9に蓄えられるが、その一部は下導電膜9から電気光学膜8に向けて再放出される。そして、最終的にプリズム2の出射面2cから出射される。従って、入射した光100の一部が反射しているように見える。

【0043】
光導波路部12に導かれた光100は、導波モード条件が満たされる場合には光導波路部12に閉じ込められ、導波モード条件が満たされない場合には光導波路部12から出射される。換言すると、導波モード条件が満たされる場合には光導波路部12から出射される光が減るので、反射率が低下する。一方、導波モード条件が満たされない場合には光導波路部12で反射或いは出射されるので、反射率は大きくなる。この導波モード条件は、光導波路部12を構成する電気光学膜8の屈折率の影響を受ける。つまり、上導電膜7及び下導電膜9を介して電源6から提供された電圧によって電気光学膜8の屈折率が変化すると、導波モード条件も変化する。そうすると、電気光学膜8の屈折率を変化させることにより、光100の条件によらず、光学特性である反射率を能動的に制御することができる。

【0044】
下導電膜9は、負の誘電率を有する銀の薄膜であり、電気光学膜8から放射された光100に応じて表面プラズモンを生成する。この構成によれば、光導波路部12の共振系と表面プラズモン生成部13の共鳴系とが結合される。その結果、光100の変化に対する反射率の変化を所望の態様に設定することが可能になる。従って、電気光学膜8の屈折率の変化に対する反射率の変化を所望の態様に設定することができる。

【0045】
入射した光100が光導波路部12に閉じ込められるとき、下導電膜9において表面プラズモンが生成される。この構成によれば、電気光学膜8の屈折率の変化量に対する屈折率の変化量を大きくすることができる。

【0046】
上導電膜7には、所定の入射角度を有する光100を電気光学膜8に対して提供するプリズム2が配置される。この構成によれば、電気光学膜8に対して光100を好適に導くことができる。

【0047】
上導電膜7は、金であり、電気光学膜8は、一次電気光学効果又は二次電気光学効果を有するPLZTセラミックスであり、下導電膜9は、銀である。この構成によれば、所望の反射率を好適に得ることができる。

【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されない。

【0049】
例えば、光反射素子1は、表面プラズモン生成部13を有さず、光導波路部12を有するものであってもよい。この場合には、電気光学膜8の厚みを実施形態に係る電気光学膜8よりも厚くする。例えば、電気光学膜8の厚みは、1000ナノメートルである。

【0050】
上記実施形態では、結合共振系を構成するにあたり、導波モード共振角度と、表面プラズモン共鳴角度とを一致させた。しかし、これらの角度条件は一致していなくともよい。つまり、それぞれの共振角度、共鳴角度を互いに異ならせてもよい。この場合の結合共振系は、図4の(a)部及び図4の(b)部に示されるようなファノ干渉と呼ばれる特性を示す。図4の(a)部及び図4の(b)部に示される特性は、導波モード共振角度と表面プラズモン共鳴角度との差異が1度である場合に示される。また、図4の(a)部と図4の(b)部に示す特性との相違は、電気光学膜8の厚みである。具体的には、図4の(a)部の特性を示す電気光学膜8の厚みは、図4の(b)部の特性を示す電気光学膜8の厚みよりも薄い。図4の(a)部及び図4の(b)部に示されるように、導波路モード共振角度と表面プラズモン共鳴角度とを互いに異ならせる構成によれば、非対称なスペクトルを得ることができる。なお、下導電膜9を構成する銀によれば、プラズモン共鳴角度θRPは45度である。従って、電気光学膜8の厚みを変えて導波モード共振角度θRWGを調整している。

【0051】
例えば、結合共振系を構成するにあたり、導波モード共振角度と、表面プラズモン共鳴角度とを一致させたうえで、電気光学膜8の厚みを変更することにより、さらに特性を変化させてもよい。例えば、図5の(a)部及び図5の(b)部は、互いに異なる厚みを有する電気光学膜8を含む結合共振系の特性を示す。具体的には、図5の(a)部の特性を示す電気光学膜8の厚みは、図5の(b)部の特性を示す電気光学膜8の厚みよりも薄い。これらに示されるように、劇的なスペクトル変化である特性を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…光反射素子、2…プリズム、2a…入射面、2c…出射面、3…基板、4…MIM多層膜、6…電源、7…上導電膜(第1導電層)、8…電気光学膜(電気光学層)、9…下導電膜(第2導電層)、11…チタン薄膜、12…光導波路部、13…表面プラズモン生成部、100…入射する光、101…出射される光、102…空気、θ…入射角度、θRWG…導波モード共振角度、θRP…プラズモン共鳴角度、k…波数ベクトル。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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