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明細書 :データ作成方法及びデータ使用方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6422616号 (P6422616)
登録日 平成30年10月26日(2018.10.26)
発行日 平成30年11月14日(2018.11.14)
発明の名称または考案の名称 データ作成方法及びデータ使用方法
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
FI G01N 21/64 E
G01N 33/48 M
C12Q 1/04
請求項の数または発明の数 17
全頁数 37
出願番号 特願2018-513685 (P2018-513685)
出願日 平成29年12月22日(2017.12.22)
国際出願番号 PCT/JP2017/047414
優先権出願番号 2016249896
優先日 平成28年12月22日(2016.12.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年3月14日(2018.3.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】野村 暢彦
【氏名】八幡 穣
【氏名】清川 達則
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110002147、【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
審査官 【審査官】伊藤 裕美
参考文献・文献 特開2015-008727(JP,A)
特表2006-526767(JP,A)
国際公開第2016/011534(WO,A1)
特表2012-511905(JP,A)
特表2015-522249(JP,A)
特表2010-527017(JP,A)
特開2016-034925(JP,A)
国際公開第2010/101225(WO,A1)
吉村正俊他,蛍光指紋分光法とPLS判別分析による菌種判別の試み,平成28年度公益社団法人日本分光学会年次講演会,2016年 6月 7日,第52頁
調査した分野 G01N 21/64
C12Q 1/00-1/70
C12M 1/00-1/42
G01N 33/48-33/98
要約 データ作成方法は、所定の波長の光の焦点を所定の焦点面上の1つの座標に配置して、該座標に位置する試料に光からなる励起光を照射することによって、試料由来の自家蛍光を取得して、自家蛍光の強度データ及び/又はスペクトルデータを含む自家蛍光データを生成する自家蛍光データ生成ステップと、所定の焦点面上の1つの座標に照射光を照射することによって、試料が散乱させた反射光を取得し、該反射光の強度データを生成する反射光データ生成ステップと、所定の焦点面上の1つの座標における自家蛍光データと、反射光データとを対応付けた対応データを作成する対応データ作成ステップとを含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
共焦点顕微鏡を用いて試料を同定又は評価するためのデータを作成するデータ作成方法において、
前記共焦点顕微鏡の光学系を経由して出射される所定の波長の励起光の焦点を、前記共焦点顕微鏡によって走査する三次元空間における所定の面上の1つの座標に配置して、該座標に位置する試料に前記励起光を照射することによって、該励起光を照射した座標における試料由来の自家蛍光を取得する処理を、前記所定の平面上の互いに異なる複数の座標において実施して、該所定の平面における各座標の自家蛍光の強度データ及び/又はスペクトルデータを含む自家蛍光データを生成する自家蛍光データ生成ステップと、
前記所定の面上の1つの座標に、前記共焦点顕微鏡の光学系を経由して出射される照射光を照射することによって、該照射光を照射した座標において前記試料が散乱させた反射光を取得する処理を、前記所定の平面上の互いに異なる複数の座標において実施し、該所定の平面における各座標の反射光の強度データを生成する反射光データ生成ステップと、
前記所定の面上の座標における前記自家蛍光データと、前記反射光の強度データとを対応付けた対応データを作成する対応データ作成ステップと
互いに異なる平面において、前記自家蛍光データ生成ステップ、前記反射光データ生成ステップ、及び前記対応データ作成ステップを繰り返す繰り返しステップとを含む、
データ作成方法。
【請求項2】
前記自家蛍光データ生成ステップにおいて、波長の異なる複数の励起光の照射を実施し、該複数の励起光により得られた各自家蛍光の前記スペクトルデータにより構成されるスペクトルプロファイルデータを含む前記自家蛍光データを作成する、
請求項に記載のデータ作成方法。
【請求項3】
前記反射光データ生成ステップは、前記波長の異なる複数の励起光のいずれかの励起光を用いて前記反射光を取得する、
請求項に記載のデータ作成方法。
【請求項4】
前記反射光データ生成ステップは、前記波長の異なる複数の励起光のすべての励起光を用いて前記反射光を取得する、
請求項に記載のデータ作成方法。
【請求項5】
前記自家蛍光データ生成ステップは、前記反射光データ生成ステップにおいて所定の強度以上の反射光が得られた座標においてのみ実施する、
請求項1~のいずれかに記載のデータ作成方法。
【請求項6】
前記自家蛍光データ生成ステップは、前記反射光データ生成ステップにおいて所定の強度以上の反射光が得られた複数の座標と、該複数の座標によって取り囲まれる領域であって、前記試料の内部に相当する領域の内部に位置する一つ又は複数の座標とにおいて実施する、
請求項1~のいずれかに記載のデータ作成方法。
【請求項7】
前記励起光及び前記照射光は、少なくとも一方がレーザ光である、
請求項1~のいずれかに記載のデータ作成方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のデータ作成方法によって前記対応データを生成し、複数の試料の自家蛍光データを比較することによって、試料の状態との相関を見出すデータ使用方法。
【請求項9】
機械学習により前記相関が見出されるものである、請求項に記載のデータ使用方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載のデータ作成方法によって前記対応データを生成し、既知試料の自家蛍光データと未知試料の自家蛍光データとを比較することによって、未知試料の同定又は評価を行うデータ使用方法。
【請求項11】
機械学習により既知試料の特徴付けが行われるものである、請求項10に記載のデータ使用方法。
【請求項12】
試料が、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、真菌類細胞、微細藻類細胞、細菌類、古細菌類、ウイルス、ファージのいずれか及びそれらが産生する胞子、芽胞、膜小胞のいずれかである請求項11のいずれかに記載のデータ使用方法。
【請求項13】
前記試料の状態が、試料の代謝状態又は生理状態に関するものである請求項又はに記載のデータ使用方法。
【請求項14】
前記未知試料の同定が、生物学上の分類菌の病原型又は菌の抗原型を同定するものである請求項10又は11に記載のデータ使用方法。
【請求項15】
前記未知試料の同定が、微生物学上の株又は亜株である請求項10又は11に記載のデータ使用方法。
【請求項16】
前記未知試料の評価が、代謝状態又は生理状態に関するものである請求項10又は11に記載のデータ使用方法。
【請求項17】
共焦点顕微鏡を用いて試料を同定又は評価するために作成されたデータを使用するデータ使用方法において、
前記共焦点顕微鏡の光学系を経由して出射される所定の波長の励起光の焦点を、前記共焦点顕微鏡によって走査する三次元空間における所定の面上の1つの座標に配置して、該座標に位置する試料に前記励起光を照射することによって、該励起光を照射した座標における試料由来の自家蛍光を取得する処理を、前記所定の平面上の互いに異なる複数の座標において実施して、該所定の平面における各座標の自家蛍光の強度データ及び/又はスペクトルデータを含む自家蛍光データを生成する自家蛍光データ生成ステップと、
前記所定の面上の1つの座標に、前記共焦点顕微鏡の光学系を経由して出射される照射光を照射することによって、該照射光を照射した座標において前記試料が散乱させた反射光を取得する処理を、前記所定の平面上の互いに異なる複数の座標において実施し、該所定の平面における各座標の反射光の強度データを生成する反射光データ生成ステップと、
前記所定の面上の座標における前記自家蛍光データと、前記反射光の強度データとを対応付けた対応データを作成する対応データ作成ステップと
前記自家蛍光データ生成ステップ、反射光データ生成ステップ、及び対応データ作成ステップを互いに異なる複数の面において繰り返す繰り返しステップと、
前記繰り返しステップにより得られた前記対応データを用いて、所定の特性を有する集団を抽出する抽出ステップとを含む、
データ使用方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば微生物が発した自家蛍光を測定することによってデータを作成するデータ作成方法、及びそのデータを使用するデータ使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物種の同定を行う際には、コッホの法則で体系化されたように、検体から微生物を単離して培養するのが一般的である。これに対して、微生物の単離や培養を行わずに微生物種を同定する技術として、次世代シークエンサー技術に基づいたメタゲノム解析によって微生物種を同定する種別同定方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、メタゲノム解析によって決定された塩基配列と、既知の微生物の塩基配列とを比較することによって、検体中に存在する微生物の微生物種を同定することができる。
【0003】
このほかに微生物種を同定する技術として、コロニーが発する自家蛍光を検出することによって微生物種の同定を行う方法が知られている(例えば、特許文献2、3を参照)。特許文献2、3によれば、微生物に対して非侵襲で微生物種を検出することができる。さらに、蛍光染色された細胞に励起光を照射することによって該細胞が発する蛍光を撮像して得られる撮像画像であって、波長帯域が異なる励起光に基づく複数の撮像画像を用いて細胞を検出する技術が知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【0004】
近年、微生物の動態を探るため、共焦点顕微鏡を用いて三次元空間における微生物の位置やその空間における動きを把握する研究が行われている(例えば、非特許文献1、2を参照)。これらの研究は、例えば微生物集団と微生物によって生産される細胞外マトリクス成分の複合体(バイオフィルム)の形成過程を経時的三次元的に観察することにおいて大きな成果をあげてきたが、当該方法を自家蛍光に基づく微生物の同定・評価に応用するという着想は報告されていない。また、前述の特許文献1~4において、三次元空間における空間的な位置やその空間における動きを把握するといった、微生物種の同定に加え、非侵襲の微生物の位置情報を取得することについては考慮されていない。さらには、空間上の1つの座標における、試料の発する自家蛍光と反射光の両者を対応させて記録するという着想は、前記の先行技術文献に記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-204813号公報
【特許文献2】特表2012-511905号公報
【特許文献3】特表2005-502354号公報
【特許文献4】国際公開第2003/008634号
【0006】

【非特許文献1】R.J.Palmer and C.Sternberg:Curr.Opin.Biotech.,10,263(1999).
【非特許文献2】Y.Yawata,K.Toda,E.Setoyama,J.Fukuda,H.Suzuki,H.Uchiyama and N.Nomura:J.Biosci.Bioeng.,110,377(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試料を非侵襲のまま解析することができるとともに、その対象の空間的な位置情報を取得することができるデータ作成方法及びデータ使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るデータ作成方法は、所定の波長の励起光の焦点を所定の焦点面上の1つの座標に配置して、該座標に位置する試料に前記励起光を照射することによって、試料由来の自家蛍光を取得して、自家蛍光の強度データ及び/又はスペクトルデータを含む自家蛍光データを生成する自家蛍光データ生成ステップと、前記所定の焦点面上の1つの座標に照射光を照射することによって、前記試料が散乱させた反射光を取得し、該反射光の強度データを生成する反射光データ生成ステップと、前記所定の焦点面上の1つの座標における前記自家蛍光データと、前記反射光の強度データとを対応付けた対応データを作成する対応データ作成ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記所定の焦点面上の互いに異なる複数の座標において実施されるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、互いに異なる複数の焦点面において実施されるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記自家蛍光データ生成ステップにおいて、波長の異なる複数の励起光の照射を実施し、該複数の励起光により得られた各自家蛍光の前記スペクトルデータにより構成されるスペクトルプロファイルデータを含む前記自家蛍光データを作成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記反射光データ生成ステップは、前記波長の異なる複数の励起光のいずれかの励起光を用いて前記反射光を取得することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記反射光データ生成ステップは、前記波長の異なる複数の励起光のすべての励起光を用いて前記反射光を取得することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記自家蛍光データ生成ステップは、前記反射光データ生成ステップにおいて所定の強度以上の反射光が得られた座標においてのみ実施することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記自家蛍光データ生成ステップは、前記反射光データ生成ステップにおいて所定の強度以上の反射光が得られた複数の座標と、該複数の座標によって取り囲まれる領域であって、前記試料の内部に相当する領域の内部に位置する一つ又は複数の座標とにおいて実施することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るデータ作成方法は、上記発明において、前記励起光及び前記照射光は、少なくとも一方がレーザ光であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明に係るデータ作成方法によって前記対応データを生成し、複数の試料の自家蛍光データを比較することによって、試料の状態との相関を見出すことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、機械学習により前記相関が見出されるものであることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明に係るデータ作成方法によって前記対応データを生成し、既知試料の自家蛍光データと未知試料の自家蛍光データとを比較することによって、未知試料の同定又は評価を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、機械学習により既知試料の特徴付けが行われるものであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、試料が、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、真菌類細胞、微細藻類細胞、細菌類、古細菌類、ウイルス、ファージのいずれか及びそれらが産生する胞子、芽胞、膜小胞のいずれかであることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、前記試料の状態が、試料の代謝状態又は生理状態に関するものであることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、前記未知試料の同定が、生物学上の界、門、綱、目、科、属、種、品種、病原型又は抗原型を同定するものであることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、前記未知試料の同定が、微生物学上の株又は亜株であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、前記未知試料の評価が、代謝状態又は生理状態に関するものであることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るデータ使用方法は、上記発明において、所定の波長の光の焦点を所定の焦点面上の1つの座標に配置して、該座標に位置する試料に前記光からなる励起光を照射することによって、試料由来の自家蛍光を取得して、自家蛍光の強度データ及び/又はスペクトルデータを含む自家蛍光データを生成する自家蛍光データ生成ステップと、前記所定の焦点面上の1つの座標に照射光を照射することによって、前記試料が散乱させた反射光を取得し、該反射光の強度データを生成する反射光データ生成ステップと、前期所定の焦点面上の1つの座標における前記自家蛍光データと、前記反射光の強度データとを対応付けた対応データを作成する対応データ作成ステップと、前記自家蛍光データ生成ステップ、反射光データ生成ステップ、及び対応データ作成ステップを互いに異なる複数の焦点面において繰り返す繰り返しステップと、前記繰り返しステップにより得られた前記対応データを用いて、所定の特性を有する集団を抽出する抽出ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、試料を非侵襲のまま解析することができるとともに、その対象の空間的な位置情報を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの概略構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態に係るデータ解析方法を説明するフローチャートの一例である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの走査方法を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける走査によって生成される合焦画像を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおいて表示される三次元画像を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける同定対象の一例であって、Streptococcus mitis(S.mitis)が写った検体画像を示す図である。
【図7A】図7Aは、波長が405nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。
【図7B】図7Bは、波長が405nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図である。
【図8A】図8Aは、波長が458nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。
【図8B】図8Bは、波長が458nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図である。
【図9A】図9Aは、波長が488nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。
【図9B】図9Bは、波長が488nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図である。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける同定対象の一例であって、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a.)が写った検体画像を示す図である。
【図11A】図11Aは、波長が405nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。
【図11B】図11Bは、波長が405nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図である。
【図12A】図12Aは、波長が458nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。
【図12B】図12Bは、波長が458nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図である。
【図13A】図13Aは、波長が488nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。
【図13B】図13Bは、波長が488nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図である。
【図14】図14は、S.mitisとA.a.とが存在する合焦画像を示す図である。
【図15】図15は、図14に示す合焦画像において、S.mitisに配色を行った画像を示す図である。
【図16】図16は、S.mitisとA.a.とが存在する複数の合焦画像を三次元で表現した三次元画像を示す図である。
【図17】図17は、S.mitis及びA.a.にそれぞれ配色を行った三次元画像を示す図である。
【図18】図18は、図17に示す三次元画像からS.mitisを抽出した三次元画像を示す図である。
【図19】図19は、反射光に基づく三次元画像(a)、S.mitis及びA.a.にそれぞれ配色を行った三次元画像(b)、及びS.mitisに配色を行った三次元画像(c)を示す図である。
【図20】図20は、特性の異なる油脂酵母(子嚢菌)を示す画像であって、油脂高生産株の自家蛍光画像(a)、油脂低蓄積株の自家蛍光画像(b)、及び油脂高生産株と油脂低蓄積株とを混合した自家蛍光画像(c)をそれぞれ示す図である。
【図21】図21は、図20の(a)に示す油脂高生産株の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図22】図22は、図20の(b)に示す油脂低蓄積株の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図23】図23は、土壌細菌であるパエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図24】図24は、土壌細菌であるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図25A】図25Aは、野生株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図25B】図25Bは、各励起光を照射した際に取得される野生株大腸菌の自家蛍光画像を示す図である。
【図26A】図26Aは、チロシン過剰生産株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図26B】図26Bは、各励起光を照射した際に取得されるチロシン過剰生産株大腸菌の自家蛍光画像を示す図である。
【図27】図27は、野生株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像(a)と、チロシン過剰生産株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像(b)とを示す図である。
【図28A】図28Aは、野生株のカビ(Aspergillus nidulans)の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図28B】図28Bは、各励起光を照射した際に取得される野生株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光画像を示す図である。
【図29A】図29Aは、変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図29B】図29Bは、各励起光を照射した際に取得される変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光画像を示す図である。
【図30】図30は、野生株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図31】図31は、変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。
【図32A】図32Aは、腸管上皮ガン細胞の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図32B】図32Bは、各励起光を照射した際に取得される腸管上皮ガン細胞の自家蛍光画像を示す図である。
【図33】図33は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおいて生成された共焦点反射顕微鏡画像と、自家蛍光画像とを重ね合わせた画像とについて説明する図である。
【図34】図34は、本発明の実施の形態の変形例1に係る顕微鏡システムにおける記録部が記録するデータについて説明する図である。
【図35】図35は、各増殖フェイズにおけるパエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)の共焦点反射顕微鏡画像、各励起光を照射した際に取得される自家蛍光画像、及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図36】図36は、各増殖フェイズにおけるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の共焦点反射顕微鏡画像、各励起光を照射した際に取得される自家蛍光画像、及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図37】図37は、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)とが混在している共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。
【図38】図38は、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)とに対してそれぞれ設定された色相を、共焦点反射顕微鏡画像に重畳した画像を示す図である。
【図39】図39は、本発明の実施の形態の変形例2に係るデータ解析方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。

【0030】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの概略構成を模式的に示す図である。同図に示す顕微鏡システム1は、共焦点レーザスキャン顕微鏡100により取得された画像データに基づいて、画像中に写り込んだ対象の種別、例えば微生物の微生物種の同定を行って、その同定結果や取得した画像の表示を行うシステムである。この顕微鏡システム1は、図1に示すように、レーザ光を照射して検体の自家蛍光又は反射光を取得する共焦点レーザスキャン顕微鏡100と、顕微鏡システム1を統括的に制御する制御装置200と、共焦点レーザスキャン顕微鏡100が取得した光に基づく画像データ等の各種データを生成する画像処理装置300と、画像処理装置300が生成した表示用の画像データに基づく画像を表示する表示装置400とを備える。ここで、微生物は、細菌、菌類、ウイルス、微細藻類、及び原生動物等を含んでいる。なお、本実施の形態において、撮像対象となる試料は、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、真菌類細胞、微細藻類細胞、細菌類、古細菌類、ウイルス、ファージのいずれか、及びそれらが産生する胞子、芽胞、膜小胞のいずれかである。

【0031】
共焦点レーザスキャン顕微鏡100は、ステージ101と、対物レンズ102と、レーザ光源103と、レンズ104と、コリメートレンズ105と、ビームスプリッター106と、結像レンズ107と、コンフォーカルピンホール108と、検出器109と、走査ミラー110とを備える。以下、ステージ101の検体載置面と平行な平面上の直交する二つの軸をX軸、Y軸とし、この平面に直交する軸をZ軸とする。なお、Z軸は、対物レンズ102の光軸と平行であるものとして説明する。

【0032】
ステージ101は、検体を載置する。ステージ101は、制御装置200の制御のもと、例えばモータ等の駆動源を用いてZ軸方向に移動可能に構成される。検体は、微生物を含む溶液や培地であり、例えばシャーレやスライドガラス等の保持部材によって保持された状態でステージ101に載置されている。

【0033】
対物レンズ102は、ビームスプリッター106が反射したレーザ光をステージ101に向けて集光するとともに、ステージ101上の検体からの光を平行光にしてビームスプリッター106に入射させる。

【0034】
レーザ光源103は、所定の波長を有するレーザ光を出射する。具体的に、レーザ光源103は、検体を励起するための励起波長に応じた波長のレーザ光を出射する。レーザ光源103は、使用する波長のレーザ光をそれぞれ出射可能な複数の光源を有するものであってもよいし、白色のレーザ光を照射して、フィルタによって出射する光の波長を選択できるようにしてもよい。

【0035】
レンズ104は、レーザ光源103が発したレーザ光を放射状のレーザ光として出射する。

【0036】
コリメートレンズ105は、レンズ104を通過した放射状のレーザ光を平行光に変換して、ビームスプリッター106に出射する。

【0037】
ビームスプリッター106は、入射する光の一部を通過させ、残りの光を反射する。具体的に、ビームスプリッター106は、レーザ光源103から出射された光の一部を対物レンズ102側に折り曲げるとともに、対物レンズ102から入射した光の一部を通過させることによって結像レンズ107に入射させる。ビームスプリッター106は、例えばハーフミラーを用いて構成され、入射したレーザ光のうち、半分のレーザ光を通過させるとともに、残りの半分のレーザ光を反射する。

【0038】
結像レンズ107は、ビームスプリッター106を通過した光を結像する。

【0039】
コンフォーカルピンホール108は、結像レンズ107によって結像された光の少なくとも一部を通過させる。コンフォーカルピンホール108には、光が通過可能な孔であるピンホール108aが形成されている。また、コンフォーカルピンホール108は、対物レンズ102と共役な位置に設けられる。このため、コンフォーカルピンホール108では、対物レンズ102の焦点面からの光がピンホール108aを通過し、合焦していない位置からの光が遮断される。例えば、結像レンズ107により結像されるレーザ光のスポット径が0.2μmである場合、結像位置において、約0.03μmの範囲からの光がピンホール108aを通過する。なお、ピンホール108aの径と、焦点空間の大きさは設定の変更が可能である。

【0040】
検出器109は、入射した光を設定された波長帯域に分離する反射型回折格子と、得られた光を光電変換するとともに、変換した電気信号の電流増幅を行う複数の光電子増倍管(PhotoMultiplier Tube:PMT、以下、チャンネルということもある)とを用いて構成される。検出器109は、例えば反射型回折格子によって互いに波長帯域の異なる32個の光に分離し、分離した光が、32個の光電子増倍管にそれぞれ入射する。各光電子増倍管は、入射した光をそれぞれ光電変換して電気信号を出力する。

【0041】
走査ミラー110は、制御装置200による制御のもと、検体の焦点面P上におけるレーザ光の照射位置を制御する。走査ミラー110は、例えばX位置制御ミラーと、Y位置制御ミラーとを用いて構成され、XY平面上の所定の位置にレーザ光を導光する。走査ミラー110は、制御装置200による制御のもと、各位置制御ミラーの角度を変化させることによってレーザ光の照射位置を予め設定された走査経路に沿って移動させる。

【0042】
次に、制御装置200の構成について説明する。制御装置200は、制御部201と、入力部202とを備える。なお、制御装置200は、当該制御装置200の動作に必要な各種情報を記録する記録部(図示せず)を備えている。

【0043】
制御部201は、演算及び制御機能を有するCPU(Central Processing Unit)や各種演算回路等を用いて構成される。制御部201は、記録部が格納する情報を読み出して各種演算処理を実行することによって顕微鏡システム1を統括して制御する。制御部201は、レーザ制御部203と、走査制御部204とを有する。

【0044】
レーザ制御部203は、制御プログラムや、入力部202が受け付けた指示情報に基づいて、レーザ光源103によるレーザ光の出射を制御する。具体的に、レーザ制御部203は、レーザ光の出射タイミングの制御や、出射するレーザ光の波長の制御を行う。レーザ制御部203は、例えば、パルス制御によってレーザ光を間欠的に出射する制御を行う。

【0045】
走査制御部204は、制御プログラムや、入力部202が受け付けた指示情報に基づいて、ステージ101のZ方向の位置の制御や、走査ミラー110によるレーザ光の照射位置の制御を行う。

【0046】
入力部202は、各種情報の入力を受け付ける。入力部202は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて構成される。

【0047】
次に、画像処理装置300の構成について説明する。画像処理装置300は、検出信号受信部301と、データ生成部302と、二次元画像生成部303と、三次元画像生成部304と、データ解析部305と、色相重畳部306と、記録部307とを有する。

【0048】
検出信号受信部301は、検出器109から、各チャンネルの電気信号を受信する。検出信号受信部301は、受信した各チャンネルの電気信号と、走査面上の位置情報(レーザ光照射位置)とを対応付けてデータ生成部302に出力する。なお、検出信号受信部301は、反射光検出用と、自家蛍光検出用とを個別に設けるようしてもよい。

【0049】
データ生成部302は、検出信号受信部301から受信した電気信号に基づく光の強度と、走査面上の位置情報とを対応付けたデータを生成する。データ生成部302は、自家蛍光データ生成部302aと、反射光データ生成部302bと、対応データ生成部302cとを有する。

【0050】
自家蛍光データ生成部302aは、検出信号受信部301が受信した自家蛍光に係る電気信号であって、各チャンネルの電気信号を取得して、所定の焦点面上の1つの座標ごとに強度データ及び/又は蛍光スペクトル(スペクトルデータ)を生成する。自家蛍光データ生成部302aは、走査面上の一つの位置について、照射された励起光が一つの場合は、一つの蛍光スペクトルを生成し、互いに異なる複数の波長の励起光が異なるタイミングで照射された場合には、励起光に応じて複数の蛍光スペクトルを生成する。ここでいう「蛍光スペクトル」とは、励起光として所定の波長のレーザ光を照射した際に生じた自家蛍光の「波長に対する強度分布」を意味する。また、ここでいう「強度」とは、例えば得られた自家蛍光を光電変換した信号値を指す。蛍光スペクトルは、例えばプロット間を補完して平滑化処理等が施されている波形からなる。なお、本発明では複数の蛍光スペクトルからなるデータをスペクトルプロファイルデータと呼ぶことがある。本明細書において、「自家蛍光データ」とは、自家蛍光の強度データ、スペクトルデータ及びスペクトルプロファイルデータのいずれか又はすべてを含む。自家蛍光データ生成部302aは、走査面上の各位置(所定の焦点面上の複数の座標)について、励起波長に応じて生成される蛍光スペクトルを対応付けた自家蛍光データを生成する。

【0051】
反射光データ生成部302bは、検出信号受信部301が受信した、検体が反射した反射光に係る検出信号を取得して、この取得した検出信号に基づく反射光の強度と、走査面上の位置情報とを対応付けた反射光データを生成する。反射光データ生成部302bは、例えば、各チャンネルの電気信号に基づく光の強度を合算して、その走査面上の位置における反射光の強度とする。

【0052】
対応データ生成部302cは、所定の焦点面上の1つの座標における自家蛍光データと反射光データからなる、対応データを生成する。対応データ生成部302cは、複数の座標において自家蛍光データ及び反射光データが生成されていれば、各座標について、自家蛍光データと反射光データとを対応付けた対応データを生成する。また、同一の座標において複数の励起光による自家蛍光データが生成されていれば、その座標に各自家蛍光データを対応付ける。

【0053】
ここで、所定の焦点面上の1つの座標において反射光データと自家蛍光データとを対応付けることの意義について述べる。反射光の強度は、所定の焦点面上の1つの座標における、細胞等の検体の存在を反映する。当該座標に検体(細胞)が存在しなければ反射光の強度は低く、検体(細胞)が存在すれば高い強度の反射光が得られる。高倍率での反射光を取得すれば、細胞の輪郭部分からの反射光、細胞内部からの反射光、さらには核など内部の細胞内小器官からの反射光を得ることもできる。このようにして、ある座標における検体(細胞)の有無、或いは、ある座標が検体(細胞)のどの部位に相当するかの情報を取得し、これと当該座標における自家蛍光データを用いることにより、これまで不可能であった個々の細胞レベル、さらには細胞内小器官レベルでの同定又は評価を行うことが可能となる。

【0054】
二次元画像生成部303は、データ生成部302が生成した各種データに基づいて、1フレームの表示用画像に対応する二次元画像データを生成する。二次元画像生成部303は、例えば、反射光に基づく合焦画像データを生成する場合、反射光データ生成部302bが生成した反射光データに基づいて、画素位置ごとに輝度情報を付与した合焦画像データを、走査した走査面の数に応じて一つ又は複数生成する。また、二次元画像生成部303は、照射した励起光により生じた自家蛍光による蛍光画像データを生成する場合、対応データ生成部302cが生成した対応データのうちの蛍光スペクトルと、データ解析部305による解析結果とに基づいて、画素位置ごとに輝度情報を付与した蛍光画像データを、走査した走査面の数に応じて一つ又は複数生成する。二次元画像生成部303は、生成された1フレームの二次元画像データに対してゲイン処理、コントラスト処理、γ補正処理等の公知の技術を用いた画像処理を行うとともに、表示装置400の表示仕様に応じた処理を施すことによって表示用の画像データを生成する。以下、反射光に基づく合焦画像を、共焦点反射顕微鏡(CRM)画像ということもある。

【0055】
三次元画像生成部304は、二次元画像生成部303が生成した二次元画像データをもとに、三次元画像データを生成する。三次元画像生成部304は、各フレームにおける輝度情報を、三次元空間上に付与することによって三次元画像データを生成する。

【0056】
ここで、レーザ光照射位置は、二次元画像生成部303及び三次元画像生成部304が生成する画像データの空間情報と対応付いている。空間位置は、二次元であればX軸上の画素の位置(X位置)及びY軸上の画素の位置(Y位置)からなる位置情報であり、三次元であればX位置、Y位置、及びZ軸上の画素の位置(Z位置)からなる位置情報である。例えば、走査面は、Z軸と直交する平面に対応し、走査面上の位置は、その走査面におけるX位置とY位置とによって表現される。

【0057】
データ解析部305は、データ生成部302において生成された対応データを用いて、検体に関する各種データ解析を行う。データ解析部305は、例えば、検体の種別の同定や、状態の評価、所定の特性を有する検体の抽出などを行う。具体的に、データ解析部305は、検体の同定を行う場合、記録部307に記録されている同定テーブルを参照して、解析対象の位置に対応付いている蛍光スペクトルと一致するスペクトルパターンを有する種別が存在するか否かを同定する。データ解析部305は、レーザ光の照射位置と、同定した種別とを対応付けた同定情報を生成する。

【0058】
色相重畳部306は、データ解析部305の同定情報に基づいて、画像中の対応する画素位置に、設定された色相を重畳する。具体的に、色相重畳部306は、表示対象画像が三次元画像であり、赤色に配色する微生物種が設定されている場合、三次元画像データに対して、該当する微生物種であると同定された画素位置に赤色を配色する処理を施す。色相重畳部306は、色相を重畳した重畳画像データを表示装置400に出力する。この重畳画像データは、二次元画像データ又は三次元画像データに、色相に関する情報を付与したデータである。

【0059】
記録部307は、画像処理装置300の動作を実行するためのプログラムを含む各種プログラムを記録する。記録部307は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)や、演算パラメータ等を記録するRAM(Random Access Memory)等を用いて構成される。

【0060】
記録部307は、データ解析部305が種別の同定に用いる同定テーブル等、解析を行うために必要なデータを記録する解析情報記録部308を有する。同定テーブルは、例えば微生物の種別(微生物種)を同定するものである場合、励起波長ごとに特徴付けられる蛍光スペクトルを一つ又は複数含むスペクトルパターンと、微生物種とが対応付けられている。同定テーブルに限らず、入力された情報に対して、対応する情報を出力可能なデータ形式であればよい。解析情報記録部308は、データ解析部305により生成された同定情報等の解析結果を記録してもよい。

【0061】
表示装置400は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)を用いて構成され、画像処理装置300にて生成された画像等を表示する。表示装置400は、制御装置200にて生成された各種情報を表示するようにしてもよい。

【0062】
次に、顕微鏡システム1によるデータ解析方法について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係るデータ解析方法を説明するフローチャートの一例である。以下、得られた自家蛍光に基づいて、検体の解析を行って重畳画像データを生成する流れを説明する。

【0063】
本実施の形態に係るデータ解析方法では、まず、制御部201の制御のもと、検体に対し、反射光を取得するために予め設定された波長又は波長帯域の光を照射する(ステップS1)。検出信号受信部301が、この光により生じた自家蛍光、又は検体が反射する反射光に応じた検出信号を取得する。本実施の形態では、反射光取得用の光であるレーザ光の焦点位置を三次元的に走査して自家蛍光又は反射光を取得し、三次元空間のデータを生成するものとして説明する。

【0064】
ここで、顕微鏡システム1による走査方法について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの走査方法を説明する図である。共焦点レーザスキャン顕微鏡100では、あるZ位置の焦点面において、XY平面上を走査して検体からの光を受光した後、Z位置を変更して、変更後のZ位置におけるXY平面上を走査する。例えば、図1に示すZ走査範囲Rにおいて設定されたZ位置ごとに走査を行って、各Z位置において焦点面上の複数の位置から光(反射光又は自家蛍光)を得る。共焦点レーザスキャン顕微鏡100では、生成する画像に応じて、ビームスプリッター106や、検出器109の構成を適宜変更可能である。

【0065】
例えば、図3に示すように、焦点面P1におけるレーザ光の走査を行った後、ステージ101をZ軸方向に移動して、移動後にレーザ光の焦点が配置される焦点面P2におけるレーザ光の走査を行う。これを、予め設定されているZ走査範囲Rにおける焦点面P3、P4、P5、P6、P7、・・・と順次走査を行う。

【0066】
XY平面における走査方法について、例えば、図3に示すように、矩形をなす焦点面(図3では焦点面P7)の一つの角部からレーザ光を照射して、照射領域であるスポットSPからの光を受光する。このスポットSPをジグザグに走査することによって、焦点面P7において、1枚の二次元画像(合焦画像)を生成するためのデータ数に対応する光を取得することができる。このスポットSPの径を、例えば一つの画素(モニタに表示される1つのドットに相当)のサイズと略同等とすれば、二次元画像及び三次元画像の色を画素単位で表現することができ、さらには同定情報に対応する視覚情報を画素単位で配色することが可能である。「画素のサイズと略同等」とは、例えば、スポットSPを円とした場合、画素に内接する大きさとほぼ同じサイズのことをいう。なお、上述した走査経路は一例であり、焦点面を走査できれば、この経路に限らない。なお、スポットSPの径は、光学顕微鏡の分解能の限界である約0.2μmを下限として、コンフォーカルピンホールの径を変更することにより適宜調節しうる。

【0067】
ステップS1に続くステップS2において、反射光データ生成部302bは、検出信号受信部301が受信した反射光に係る検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて反射光データを生成する(反射光データ生成ステップ)。

【0068】
ステップS2に続くステップS3において、制御部201の制御のもと、検体に対し、自家蛍光を取得するために予め設定された波長又は波長帯域の光(励起光)を照射する。なお、本フローチャートでは、自家蛍光を取得するための励起光と、反射光を取得するための照射光(例えば同じ波長の励起光)とを異なるタイミングで照射して取得するものとして説明するが、試料に対して励起光を一回のみ照射し、検出時間に差を設けることによって自家蛍光及び反射光を取得するようにしてもよい。

【0069】
その後、自家蛍光データ生成部302aは、検出信号受信部301が受信した自家蛍光に係る検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて自家蛍光データを生成する(ステップS4:自家蛍光データ生成ステップ)。この自家蛍光データは、ステップS1において検体に照射された励起光によって生じた自家蛍光の蛍光スペクトルを含んでいる。

【0070】
なお、ステップS1、2及びステップS3、4の各データ生成処理は、ステップS3、4を先に行ってもよいし、並行して処理を実行するようにしてもよい。

【0071】
ステップS4に続くステップS5において、制御部201は、ステップS3で照射した自家蛍光取得用の励起光の波長(又は波長帯域)とは異なる波長(又は波長帯域)の励起光を照射するか否かを判断する。制御部201は、予め設定されている走査条件や、入力部202を介して設定された走査条件を参照し、さらに照射すべき励起光があるか否かを判断する。

【0072】
ステップS2、S4では、1スポット、すなわち、あるZ位置の焦点面における一点について、ある一つの励起波長のレーザ光を照射した際に取得される自家蛍光の蛍光スペクトル、又は反射光強度が生成される。予め設定されている励起波長が複数の場合は、各励起波長のレーザ光の走査を繰り返すことによって、同じ位置において異なる励起波長の蛍光スペクトルを生成する。この繰り返しにより、複数の焦点面における各位置の、励起波長に応じた蛍光スペクトルが生成される。ここでいう「焦点面」とは、レーザ光の光軸と直交する面であって、レーザ光の焦点が配置されている面のことをさす。

【0073】
制御部201は、ステップS3で照射した波長とは異なる波長の励起光の照射をする必要があると判断した場合(ステップS5:Yes)、ステップS3に戻り、設定される励起光を用いた走査を繰り返す。これに対し、制御部201は、さらなる励起光の照射を行う必要がないと判断した場合(ステップS5:No)、ステップS6に移行する。

【0074】
ステップS6において、対応データ生成部302cは、ステップS2で生成された反射光の強度と、ステップS3で生成された蛍光スペクトルとを対応付けた対応データを生成する(対応データ作成ステップ)。この際、複数の励起光の照射により複数の蛍光スペクトルが生成されている場合は、一つのレーザ光照射位置について、複数の蛍光スペクトルと、反射光の強度とが対応付けられる。また、反射光の強度は、一つのレーザ光照射位置について、波長(又は波長帯域)が異なるすべての励起光について取得した反射光の強度を合算した合算値として用いてもよいし、予め設定されている波長の励起光により取得された反射光の強度を用いてもよい。

【0075】
ステップS6に続くステップS7において、データ解析部305は、ステップS5において生成された対応データをもとに、検体の解析処理を行う。本実施の形態では、データ解析部305が、各スポット位置における微生物の種別の同定を行う。解析処理の具体例については後述する。

【0076】
ステップS7に続くステップS8において、二次元画像生成部303、三次元画像生成部304及び色相重畳部306が、対応データに基づいて画像データを生成する。ステップS7では、まず、二次元画像生成部303が、対応データにおける反射光データを用いて複数の合焦画像データを生成する。

【0077】
図4は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける走査によって生成される合焦画像を説明する図である。対応データ生成部302cにより生成された対応データのうちの反射光の強度に基づいて、二次元画像生成部303が画像処理を行うことによって、図4に示すような、各焦点面において反射された光に基づくN枚の合焦画像D、D、・・・、Dが得られる(Nは3以上の自然数)。二次元画像生成部303は、各位置において得られた反射光の強度を輝度情報に変換し、レーザ光の照射位置に応じて配列した合焦画像データを生成する。すなわち、二次元画像生成部303は、反射光により生成される画像と、レーザ光の照射位置に関する位置情報(例えばZ位置)とを含む二次元画像データを生成する。

【0078】
複数の合焦画像データ(合焦画像D、D、・・・、D)が生成されると、三次元画像生成部304が、三次元空間の直交座標系において、各合焦画像の輝度情報を対応付けることによって、三次元空間上の輝度に応じて検体像を表現する三次元画像データを生成する。

【0079】
図5は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおいて表示される三次元画像を説明する図である。三次元画像生成部304は、図5に示すような、輝度に応じた明るさの点の集合によってなる三次元画像を含む三次元画像データを生成する。なお、図5では、輝度に応じて濃淡を変化させたグレースケールの三次元画像を示しているが、色相の条件等は適宜設定の変更が可能である。

【0080】
三次元画像データを生成後、色相重畳部306が、データ解析部305が生成した同定情報と、予め設定された条件とに応じて、各位置(二次元空間又は三次元空間上の位置)において重畳する色相を選択して、三次元画像生成部304が生成した三次元画像データに色相を重畳した重畳画像データを生成する。例えば、検体中に微生物であるStreptococcus mitis(S.mitis)と、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a.)とが存在し、S.mitisを赤色に配色し、A.a.を緑色に配色する条件が設定されている場合、色相重畳部306は、重畳対象の画像に対し、S.mitisと同定されたレーザ光照射位置に対応する画像の位置(画素位置)に赤色、A.a.と同定されたレーザ光照射位置に対応する画像の位置に緑色を重畳する処理を施す。

【0081】
ステップS8に続くステップS9において、画像処理装置300は、制御装置200の制御のもと、色相重畳部306により生成された重畳画像データを、表示装置400に表示させる。以上説明した処理により、励起光の照射により取得した検体像を解析結果(種別)に応じて配色した重畳画像が、表示装置400に表示される。

【0082】
続いて、ステップS7における解析処理について、図面を参照して説明する。ステップS7における解析処理では、処理内容に応じて、生物学上の界、門、綱、目、科、属、種、品種、病原型又は抗原型を同定したり、微生物学上の株又は亜株を同定したり、未知試料又は既知試料の代謝状態又は生理状態に関する試料の状態を評価したりする。ここでは、ステップS7における解析処理の一例を図6~図19を参照して説明する。まず、自家蛍光に基づく蛍光スペクトルについて、図6~図13Bを参照して説明する。以下、S.mitis及びA.a.の画像と蛍光スペクトルとを例に挙げて説明する。

【0083】
図6は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける同定対象の一例であってS.mitisが写った検体画像を示す図である。なお、図の左下にはスケールが表示されている。図6は、予め設定された波長又は波長帯域のレーザ光を照射して得られた合焦画像を示している。図6に示すような合焦画像を表示することによって、微生物(ここではS.mitis)の二次元における配置を視覚的に確認することが可能である。

【0084】
図7Aは、波長が405nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。図7Bは、波長が405nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図であって、図7Aに示す指示位置P1における蛍光スペクトルを示す図である。

【0085】
同様にして、波長が458nm、488nmのレーザ光を照射した際の蛍光画像及び蛍光スペクトルを図8A,8B、図9A,9Bに示す。図8Aは、波長が458nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。図8Bは、波長が458nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図であって、図8Aに示す指示位置P1における蛍光スペクトルを示す図である。図9Aは、波長が488nmの励起光を照射した際に撮像されるS.mitisの蛍光画像を示す図である。図9Bは、波長が488nmの励起光を照射した際に検出されるS.mitisの蛍光スペクトルを示す図であって、図9Aに示す指示位置P1における蛍光スペクトルを示す図である。

【0086】
図7B、図8B及び図9Bに示すように、励起波長により異なる蛍光スぺクトルが得られる。S.mitisは、405nm、458nm及び488nmの励起光による自家蛍光パターンについて、図示したような固有のパターンを有している。

【0087】
続いて、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a.)の画像及び蛍光スペクトルについて、図10~図13Bを参照して説明する。図10は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおける同定対象の一例であって、A.a.が写った検体画像を示す図である。図10は、図6と同様に、予め設定された波長又は波長帯域のレーザ光を照射して得られた合焦画像を示している。

【0088】
また、図11Aは、波長が405nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。図11Bは、波長が405nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図であって、図11Aに示す指示位置P2における蛍光スペクトルを示す図である。図12Aは、波長が458nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。図12Bは、波長が458nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図であって、図12Aに示す指示位置P2における蛍光スペクトルを示す図である。図13Aは、波長が488nmの励起光を照射した際に撮像されるA.a.の蛍光画像を示す図である。図13Bは、波長が488nmの励起光を照射した際に検出されるA.a.の蛍光スペクトルを示す図であって、図13Aに示す指示位置P2における蛍光スペクトルを示す図である。

【0089】
図11B、図12B及び図13Bについても、励起波長により異なる蛍光スペクトルが得られていることがわかる。A.a.は、405nm、458nm及び488nmの励起光による自家蛍光パターンについて、図示したような固有のパターンを有している。

【0090】
また、S.mitisとA.a.との蛍光スペクトルを比較しても、それぞれスペクトルのパターンが異なっていることが分かる。このように、微生物は、種別に応じて固有の自家蛍光パターンを有している。

【0091】
そこで、本実施の形態では、データ解析部305が、得られた自家蛍光パターンから微生物種を同定する。解析情報記録部308には、例えば、既知の微生物に関して、それぞれの蛍光スペクトルのパターンと微生物種とを対応付けた同定テーブルが記録されている。データ解析部305は、解析情報記録部308に記録されている同定テーブルを参照して、ピーク位置等から入力された未知の自家蛍光パターンの微生物種を同定する。この際、データ解析部305は、例えばZ軸方向の位置ごと、レーザ光の照射位置ごとに微生物種の同定を行い、同定した種別とともに、レーザ光の照射位置を含む同定情報を生成する。なお、レーザ光のスポット径(照射位置)と、画素位置とが1対1で対応していることを前提に説明しているが、間引き等で複数の画素位置、及びZ軸方向で隣り合う複数の合焦画像について一括して微生物種を同定する場合はこの限りではない。

【0092】
上述した色相の重畳について、図14及び図15を参照して、二次元画像である合焦画像に色相を重畳した場合を説明する。図14は、S.mitisとA.a.とが存在する合焦画像を示す図である。図14に示すように、合焦画像から微生物の存在位置は把握できるものの、それぞれの自家蛍光を受光して画像化したのみでは、S.mitisとA.a.とを区別することはできない。

【0093】
図15は、図14に示す合焦画像において、S.mitisに配色を行った画像を示す図である。図14に示す合焦画像に対して、色相重畳部306によって、S.mitisであると同定された位置に赤色を重畳すると、混在する微生物のなかから、S.mitisを識別することができる。また、画像中にS.mitis及びA.a.のみ存在することが分かっていれば、残りの微生物がA.a.であることも識別可能である。

【0094】
次に、上述した色相重畳処理を、三次元画像に適用した場合について、図16~図19を参照して説明する。図16は、S.mitisとA.a.とが存在する複数の合焦画像を三次元で表現した三次元画像を示す図である。図17は、S.mitis及びA.a.にそれぞれ配色を行った三次元画像を示す図である。図18は、図17に示す三次元画像からS.mitisを抽出した三次元画像を示す図である。図19は、反射光に基づく三次元画像であって、微生物種に応じた配色を行っていない三次元画像(a)、S.mitis及びA.a.にそれぞれ配色を行った三次元画像(b)、及びS.mitisに配色を行った三次元画像(c)を示す図である。

【0095】
図16及び図19の(a)に示す三次元画像では、図14に示す合焦画像と同様に、三次元画像から微生物の空間的な位置は把握できるものの、S.mitisとA.a.とを区別することはできない。

【0096】
図16及び図19の(a)に示す三次元画像に対して、色相重畳部306によって、S.mitisに赤色を重畳し、かつA.a.に緑色を重畳すると、微生物が混在する空間から、S.mitisとA.a.とをそれぞれ識別することができる(図17及び図19の(b)参照)。また、図18及び図19の(c)に示すように、S.mitisを抽出することにより、視線方向(例えば図19の(c)ではY軸方向)においてA.a.の奥に存在するS.mitisの位置を空間的に把握することが可能である。

【0097】
上述した画像生成処理は、共焦点レーザスキャン顕微鏡100によりレーザ光を照射して、検体が発した反射光又は自家蛍光を受光することによって可能である。このため、従来のような、微生物の単離及び培養や、塩基配列の決定を行わずに微生物の同定を行うことができ、特に、微生物を生きたまま、ありのままに観察を行い、かつ微生物種の同定を行うことができる。これにより、微生物の動態(例えば、生長や移動)を経時的に追うことが可能となる。例えば、図15に示す三次元画像データを経時的に生成し、時系列に沿って切り替え表示を行って動画表示させることによって、微生物の経時的な動きを観察することができる。この際、同定した微生物を配色すれば、複数の微生物が混在する中での、特定の微生物の動態を追うことも可能である。

【0098】
また、データ解析部305は、上述した種別の同定のほか、検体の状態の評価や、クラスタリング等の解析を行うことができる。以下、データ解析部305が行う解析処理の例を、図面を参照して説明する。

【0099】
図20は、特性の異なる油脂酵母(子嚢菌)であるリポマイセス・スターキー(Lipomyces starkey)を示す画像であって、油脂高生産株の自家蛍光画像(a)、油脂低蓄積株の自家蛍光画像(b)、及び油脂高生産株と油脂低蓄積株とを混合した自家蛍光画像(c)をそれぞれ示す図である。図20に示すように、子嚢菌であっても、油脂を高生産する油脂高生産株(図20の(a)参照)と、油脂の蓄積能が比較的低い状態の油脂低蓄積株(図20の(b)参照)とでは、自家蛍光の色(波長)や菌自体の大きさが異なる(図20の(c)参照)。

【0100】
図21は、図20の(a)に示す油脂高生産株の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図22は、図20の(b)に示す油脂低蓄積株の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図21、22は、使用する励起光の波長(波長帯域)に付された番号(Excitation No.)を示す第1軸と、検出器109による光の分解能(上述した実施の形態では32チャンネル)に合わせて分割した自家蛍光の波長帯域の番号(Emission(ch))を示す第2軸と、検出した各チャンネルの自家蛍光の相対強度を示す第3軸とが、互いに直交している三次元直交座標系を示している。図21、22に示すように、各株の蛍光スペクトルは、三次元の自家蛍光の相対強度の分布として表現され、油脂高生産株と油脂低蓄積株とで異なっている。

【0101】
図23は、土壌細菌であるパエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図24は、土壌細菌であるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図23、24についても、図21、22と同様に、使用する励起光の波長(波長帯域)に付された番号(Excitation No.)を示す第1軸と、検出器109による光の分解能(32チャンネル)に合わせて分割した自家蛍光の波長帯域(Emission Wavelength)を示す第2軸と、検出した各チャンネルの自家蛍光の相対強度を示す第3軸とが、互いに直交している三次元直交座標系を示している。ここで、パエニバシラス・ポリミキサは、グラム陽性の細菌である。また、シュードモナス・プチダは、グラム陰性の細菌である。図23、24に示すように、土壌細菌においても、自家蛍光の相対強度の分布は、菌の種類で異なっている。

【0102】
このような相対強度の分布を、株の状態等と対応付けて解析情報記録部308に記録させておき、データ解析部305が、検出信号から得られる自家蛍光のパターンと、解析情報記録部308に記録されている相対強度の分布とを比較することによって、株の状態の評価、ここでは油脂の蓄積能の評価や土壌細菌の特定を行う。

【0103】
また、野生株の大腸菌(以下、野生株大腸菌という)と、チロシン過剰生産株の大腸菌(以下、チロシン過剰生産株大腸菌という)とにおいても、自家蛍光の色(波長に対する強度分布)に差異がみられる。図25Aは、野生株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。図25Bは、各励起光を照射した際に取得される野生株大腸菌の自家蛍光画像を示す図である。図25A及び図25Bに示す画像は、同一の走査面を走査した際に得られた画像である。図25Bは、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光画像である。

【0104】
図26Aは、チロシン過剰生産株大腸菌の共焦点画像を示す図である。図26Bは、各励起光を照射した際に取得されるチロシン過剰生産株大腸菌の自家蛍光画像を示す図である。図26A及び図26Bに示す画像は、同一の走査面を走査した際に得られた画像である。図26Bは、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光画像である。

【0105】
図25B及び図26Bに示すように、励起光の波長を514nm及び543nmとしたときの蛍光強度又は色に大きな差がある。この差により、検体から得られる自家蛍光の強度分布から、例えば、野生株大腸菌とチロシン過剰生産株大腸菌とが混在するなかで、二つの大腸菌を選別することが可能である。

【0106】
また、野生株大腸菌と、突然変異株の大腸菌(以下、変位株大腸菌という)とにおいても、自家蛍光のパターンに差異がみられる。図27は、野生株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像(a)と、チロシン過剰生産株大腸菌の共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像(b)とを示す図である。図27は、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光像である。

【0107】
図27の(a)及び図27の(b)に示すように、自家蛍光のパターンとして、特に励起光の波長を488nmとしたときの蛍光強度に大きな差がある。この差により、検体から得られる自家蛍光パターンから、例えば、野生株大腸菌と変位株大腸菌とが混在するなかで、二つの大腸菌を選別することが可能である。

【0108】
また、野生株のカビ(Aspergillus nidulans)と、変異株のカビ(Aspergillus nidulans)とにおいても、自家蛍光の色(波長に対する強度分布)に差異がみられる。図28Aは、カビ(Aspergillus nidulans)の野生株の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。図28Bは、各励起光を照射した際に取得されるカビ(Aspergillus nidulans)の野生株の自家蛍光画像を示す図である。図28A及び図28Bに示す画像は、同一の走査面を走査した際に得られた画像である。図28Bは、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光画像である。

【0109】
図29Aは、変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。図29Bは、各励起光を照射した際に取得される変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光画像を示す図である。図29A及び図29Bに示す画像は、同一の走査面を走査した際に得られた画像である。図29Bは、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光画像である。図29A、30Bは、窒素代謝能が変化した変異株を示している。

【0110】
図28B及び図29Bに示すように、野生株と変異株とでは、特に励起光の波長を633nmとしたときの蛍光強度又は色に大きな差がある。この差により、検体から得られる自家蛍光の強度分布から、例えば、野生株大腸菌とチロシン過剰生産株大腸菌とが混在するなかで、二つの大腸菌を選別することが可能である。

【0111】
図30は、野生株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図31は、変異株のカビ(Aspergillus nidulans)の自家蛍光のスペクトルプロファイルを示す図である。図30、31についても、図23、24と同様に、使用する励起光の波長(波長帯域)に付された番号(Excitation No.)を示す第1軸と、検出器109による光の分解能(32チャンネル)に合わせて分割した自家蛍光の波長帯域(Emission Wavelength)を示す第2軸と、検出した各チャンネルの自家蛍光の相対強度を示す第3軸とが、互いに直交している三次元直交座標系を示している。図30、31に示すように、カビ(Aspergillus nidulans)においても、自家蛍光の相対強度の分布は、野生株と変異株とで異なっている。

【0112】
ここで、同じ野生株、変異株であっても、当てる励起光の光源の特性や、株そのものの個体差によって自家蛍光のパターンが若干異なるため、同じ野生株であっても図31、32に示す自家蛍光のスペクトルプロファイルとは完全に一致しない場合がある。本変形例1では、同一種の株において得られた自家蛍光のパターンに対し、画像処理を施してパターンの特徴を抽出する。例えば、自家蛍光によって得られたオリジナルの画像(自家蛍光の強度データの分布)をもとに、二値化や、微小オブジェクトの除去、エッジ平滑化、膨張させた平滑化、収縮させた平滑化、主要オブジェクトの抽出、骨組み抽出、分岐部抽出、分岐部マスク処理、分岐部除去処理、微小セグメント除去等の処理を施して特徴を抽出することによって野生株と変異株とを識別する。例えば、複数の自家蛍光画像を用いて機械学習させることによって既知試料の特徴付けを行い、野生株と変異株とを識別することも可能である。

【0113】
図32Aは、腸管上皮ガン細胞の共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。図32Bは、各励起光を照射した際に取得される腸管上皮ガン細胞の自家蛍光画像を示す図である。図32Bは、励起光の波長を、405nm、458nm、488nm、514nm、543nm及び633nmとしてそれぞれ照射した際に得られた自家蛍光画像である。図32A、図32Bに示す腸管上皮ガン細胞においても、上述したようにして、自家蛍光スペクトルプロファイルや自家蛍光パターンを特徴付けることによって、識別することが可能となる。

【0114】
以上説明した本発明の一実施の形態では、検体の自家蛍光パターンと、検体からの反射光データと、レーザ光の照射位置とを対応付けた対応データを作成して、この対応データに基づいて検体の解析を行うようにしたので、検体の空間的な位置情報を持たせ、検体を非侵襲のまま解析することができる。

【0115】
また、上述した実施の形態では、検体の未知の自家蛍光パターンを取得して、既知の自家蛍光パターンとの比較によって微生物種を同定し、反射光に基づいて生成された画像において、同定した微生物種に対応する位置に色相を重畳するようにしたので、微生物の空間的な位置情報を視覚的に把握することができる。

【0116】
図33は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムにおいて生成された共焦点反射顕微鏡画像と、自家蛍光画像とを重ね合わせた画像とについて説明する図である。図33の(a)は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像を示す図である。図33の(a)に示す共焦点反射顕微鏡画像及び自家蛍光画像は、位置関係が対応付いている。図33の(b)は、図33の(a)に示す共焦点反射顕微鏡画像における領域Rを拡大した画像、及び図33の(a)に示す自家蛍光画像における領域Rを拡大した画像を示す。図33の(c)は、図33の(b)に示す共焦点反射顕微鏡画像と自家蛍光画像とを重ね合わせた画像であって、共焦点反射顕微鏡画像に対して、所定の透過率に設定した自家蛍光画像を重畳した画像である。図33の(c)に示すように、共焦点反射顕微鏡画像と自家蛍光画像とを重ね合わせて表示することによって、所望の菌の画像における存在位置や、個々の菌の存在領域を容易に把握することができる。

【0117】
なお、上述した実施の形態では、図2に示すフローチャートにおいて、予め設定されている波長の光のみにより反射光を取得するものとして説明したが、自家蛍光取得用の励起光が複数ある場合に、この複数の励起光に合わせて、波長が異なるすべての励起光を照射して、各励起光について反射光を取得するようにしてもよい。また、複数の励起光の照射により取得した場合、各レーザ光照射位置に対応付けられる複数の反射光の強度のうち、最大の強度を抽出して反射光データを作成してもよいし、複数の反射光の強度の平均値を算出して反射光データを作成してもよい。

【0118】
(変形例1)
次に、上述した実施の形態の変形例1について、図34を参照して説明する。なお、本変形例1に係る顕微鏡システムの構成は、上述した顕微鏡システム1の構成と同じであるため、説明を省略する。上述した実施の形態では、予め記録されている蛍光スペクトルのパターンに基づいて種類や状態を特定するものとして説明したが、本変形例1では、予め記録されている蛍光スペクトルのパターンから機械学習により既知試料を特徴付けし、異なる種別又は状態の試料間の境界を設定することによって、検体の種類の特定や、状態の評価を行う。

【0119】
図34は、本発明の実施の形態の変形例1に係る顕微鏡システムにおける記録部が記録するデータについて説明する図である。本変形例1では、図34に示すように、ある特定の種を表現する蛍光スペクトルとして、一部が異なる複数の蛍光スペクトルデータのデータセット311、312が、解析情報記録部308に記録されている。データ解析部305は、各データセット311、312に基づいて決定される領域を参照し、入力された検体の種別や状態を特定する。

【0120】
例えば、データセット311は、油脂高生産株の油脂酵母(子嚢菌)を表現する自家蛍光の蛍光強度を示す複数の教師データ311a、311b、311c、311d、311e、・・・を有する。教師データ311a、311b、311c、311d、311e、・・・は、それぞれが油脂高生産株を表現する自家蛍光強度であり、互いに少なくとも一部が異なっているパターンを有している。

【0121】
また、データセット312は、油脂低蓄積株の油脂酵母(子嚢菌)を表現する自家蛍光の蛍光強度を示す複数の教師データ312a、312b、312c、312d、312e、・・・を有する。教師データ312a、312b、312c、312d、312e、・・・は、それぞれが油脂低蓄積株を表現する自家蛍光強度であり、互いに少なくとも一部が異なっているパターンを有している。

【0122】
データ解析部305では、まず、データセット311、312について、予め設定されている境界であって、油脂高生産株を表現する自家蛍光強度の領域と、油脂低蓄積株を表現する自家蛍光強度の領域とを分ける境界に最も近い自家蛍光の強度を、教師データを参照して各領域から抽出する。その後、この抽出した各領域の強度の位置に基づいて油脂高生産株と油脂低蓄積株との境界を再設定する。この際に再設定される境界は、励起光の波長(Excitation No.)と、自家蛍光の波長(チャンネル)とによって区分される部分的な境界である。この処理を、励起光の波長と自家蛍光の波長との組ごとにそれぞれ境界を算出し、これらの境界を繋ぐことによって、上述した第1軸、第2軸及び第3軸からなる三次元空間において、油脂高生産株を表現する自家蛍光強度の領域と、油脂低蓄積株を表現する自家蛍光強度の領域との境界を決定する。例えば、6つの励起光、32チャンネルの場合、192個の部分的な境界が設定され、これらの境界が繋げられる。このような境界の決定は、公知の方法、例えばサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)を用いて構成される。又は、データセット311、312について、油脂高生産株を表現する自家蛍光プロファイルと、油脂低蓄積株を表現する自家蛍光プロファイルを区別する非線形の境界を定義するニューラルネットワークまたは畳み込みニューラルネットワークを構築するようにしてもよい。例えば、6つの励起光、32チャンネルの場合、192次元のベクターをニューラルネットワークの第一層への入力として、或いは6行32列の行列を畳み込みニューラルネットワークの第一層への入力として用いる。このような非線型の境界の決定は、公知の方法、例えば誤差逆伝播方法や、あるいは転位学習法を用いて行われる。

【0123】
ここで、機械学習による判別の一例について、図35、図36を参照して説明する。同じ種類の細胞であっても、生理状態(増殖フェイズ)によって自家蛍光のスペクトルプロファイルが異なる。図35は、各増殖フェイズにおけるパエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)の共焦点反射顕微鏡画像、各励起光を照射した際に取得される自家蛍光画像、及び蛍光スペクトルを示す図である。図36は、各増殖フェイズにおけるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の共焦点反射顕微鏡画像、各励起光を照射した際に取得される自家蛍光画像、及び蛍光スペクトルを示す図である。図35、図36では、6時間、8時間、10時間、24時間、30時間、52時間の各増殖フェイズにおける共焦点反射顕微鏡画像と、励起光(波長:405 nm、458 nm、488 nm、514 nm、543 nm、633 nm)における自家蛍光画像と、自家蛍光スペクトルファイルとを示している。なお、図35、図36において、各画像中に示す白線は、その白線の一端から他端までの長さが20μmに相当することを示している。

【0124】
図35、図36に示すように、同じ細胞であっても、自家蛍光画像やその自家蛍光のスペクトルプロファイルが異なっていることが分かる。これらのスペクトルプロファイルを、細胞の種別を対応付けて機械学習させることによって、増殖フェイズによらず細胞を識別することができる。このように、様々な生理状態の自家蛍光のスペクトルプロファイルを用いて訓練させて、試料の相関を見出すことによって、どのような生理状態であっても細胞を識別可能な機械学習モデルを構築することができる。また、上述したように、自家蛍光画像(自家蛍光の強度データの分布)を用いて特徴付けしたものを訓練させることによっても機械学習モデルを構築することができる。

【0125】
ここで、機械学習モデルによる識別結果について、図37及び図38を参照して説明する。図37は、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)とが混在している共焦点反射顕微鏡画像を示す図である。図38は、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)とに対してそれぞれ設定された色相を、共焦点反射顕微鏡画像に重畳した画像を示す図である。なお、図38に示す画像は、図37に示す共焦点反射顕微鏡画像における菌の輝度を反転しつつ背景を黒色にし、その上に識別結果に応じた色相を重畳している。図38に示す画像では、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)を緑色で表現し、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を赤色で表現している。

【0126】
パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)とが混在している共焦点反射顕微鏡画像(図37参照)に対し、機械学習により高精度に識別された結果に応じて色相を重畳した画像(図38参照)では、二つの菌が色分けされている。このようにして、色相を重畳した画像から、各菌の位置を識別することができる。

【0127】
本変形例1では、解析情報記録部308に記録されるデータセット311、312をもとに、機械学習を行って、入力される蛍光スペクトルから、油脂高生産株又は油脂低蓄積株を特定するようにした。これにより、記録されている蛍光スペクトルのパターン以外のスペクトルデータが入力された場合であっても、検体の特定を行うことが可能となる。

【0128】
なお、上述した変形例1では、二つの種類を特定する例を説明したが、三つ以上の種類や状態を特定する場合であっても、同様にして各自家蛍光の強度分布に基づき境界が設定され、入力された自家蛍光のスペクトルから、検体が特定される。

【0129】
(変形例2)
次に、上述した実施の形態の変形例2について、図39を参照して説明する。なお、本変形例2に係る顕微鏡システムの構成は、上述した顕微鏡システム1の構成と同じであるため、説明を省略する。上述した実施の形態では、走査領域全体をスキャンして自家蛍光データを取得するものとして説明したが、本変形例2では、反射光データから、自家蛍光を取得すべき位置を特定し、特定した位置にのみ励起光の照射を行う。

【0130】
図39は、本発明の実施の形態の変形例2に係るデータ解析方法を説明するフローチャートである。以下、得られた自家蛍光に基づいて、検体の解析を行って重畳画像データを生成する流れを説明する。

【0131】
本変形例2に係る画像生成方法では、まず、制御部201の制御のもと、検体に対し、反射光を取得するための照明光(好ましくはレーザ光)を照射する(ステップS11)。検出信号受信部301が、この照明光により生じた反射光を取得する。本ステップS11で使用する照明光は、検体からの反射光を取得するためのものであり、自家蛍光を取得する励起光等の特定の波長帯域の光を用いてもよいし、白色光を用いてもよい。ステップS11では、走査領域全体のスキャンを行う。

【0132】
ステップS11に続くステップS12において、反射光データ生成部302bは、検出信号受信部301が受信した反射光に係る検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて反射光データを生成する(反射光データ生成ステップ)。

【0133】
ステップS12に続くステップS13において、データ解析部305は、反射光データを参照して、反射光を受信した位置、すなわち検体が存在する位置を判定する。データ解析部305は、例えば、予め設定された閾値以上の強度を取得した位置を、検体存在位置として判定する。ここで設定する閾値としては、例えばノイズと判定される強度よりも大きい値が設定される。

【0134】
ステップS13に続くステップS14において、制御部201による制御のもと、検体が存在すると判定された位置に対し、励起光(好ましくはレーザ光)を照射する。検出信号受信部301が、この励起光により生じた自家蛍光を取得する。

【0135】
その後、自家蛍光データ生成部302aは、検出信号受信部301が受信した自家蛍光に係る検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて自家蛍光データを生成する(ステップS15:自家蛍光データ生成ステップ)。この自家蛍光データは、ステップS13において検体が存在すると判定された位置にのみ蛍光スペクトルが付与される。すなわち、自家蛍光データは、取得した蛍光スペクトルを走査位置に応じて並べてみたときに歯抜けのデータとなっている。

【0136】
ステップS15に続くステップS16において、制御部201は、ステップS14で照射した励起光の波長(又は波長帯域)とは異なる波長(又は波長帯域)の励起光を照射するか否かを判断する。制御部201は、予め設定されている走査条件や、入力部202を介して設定された走査条件を参照し、さらに照射すべき励起光があるか否かを判断する。制御部201は、ステップS14で照射した波長とは異なる波長の励起光の照射をする必要があると判断した場合(ステップS16:Yes)、ステップS14に戻り、検体が存在すると判定された位置について、励起光を用いた走査を繰り返す。これに対し、制御部201は、さらなる励起光の照射を行う必要がないと判断した場合(ステップS16:No)、ステップS17に移行する。

【0137】
ステップS17において、対応データ生成部302cは、ステップS12で生成された反射光の強度と、ステップS15で生成された蛍光スペクトルとを、レーザ光照射位置と対応付けた対応データを生成する(対応データ作成ステップ)。

【0138】
ステップS17に続くステップS18において、データ解析部305は、ステップS17において生成された対応データをもとに、検体の解析処理を行う。ステップS18では、例えば、上述した実施の形態のように、データ解析部305が、自家蛍光取得位置(検体存在位置)における微生物の種別の同定を行う。

【0139】
ステップS18に続くステップS19において、二次元画像生成部303、三次元画像生成部304及び色相重畳部306が、対応データに基づいて画像データを生成する。ステップS19では、まず、二次元画像生成部303が、対応データにおける反射光データを用いて複数の合焦画像データを生成する。

【0140】
ステップS19に続くステップS20において、画像処理装置300は、制御装置200の制御のもと、色相重畳部306により生成された重畳画像データを、表示装置400に表示させる。以上説明した処理により、励起光の照射により取得した検体像に、解析結果(種別)に応じて配色した重畳画像が、表示装置400に表示される。

【0141】
本変形例2によれば、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、自家蛍光を取得する位置を、反射光データから絞るようにしたので、上述した実施の形態と比して、自家蛍光を取得するための走査時間を短縮し、データ量を削減することができる。

【0142】
なお、細胞によっては内部に気泡や液胞が存在しており、この気泡や液胞の位置(座標)では照明光が反射されず、反射光が得られない場合がある。このため、上述した変形例2において、反射光データから判定される検体存在位置に加え、この検体存在位置に基づいて検出される検体の内部全体の領域に励起光を照射して自家蛍光を取得するようにしてもよい。例えば、検体が存在すると判定された複数の位置、すなわち複数の座標と、その複数の座標によって取り囲まれる領域の内部の全座標に励起光を照射して、その座標における自家蛍光を取得する。このようにすることによって、検体、例えば細胞において気泡や液胞により反射光が得られなかった部分があったとしても、細胞全体(特に、気泡や液胞等により反射光が得られない部分)に励起光を照射して自家蛍光を取得することが可能となる。

【0143】
上述した実施の形態及び変形例のほか、例えば、データ解析部305が、未知試料に対し、所定の特性を有する検体を抽出するようにしてもよい。具体的には、図2に示すステップS6において、所定の励起波長に対して、所定の波長の自家蛍光を発する検体や、所定の蛍光スペクトルを有する検体を抽出する(抽出ステップ)。この抽出処理により生成された情報を、ステップS7で画像化、例えば抽出した部分について、反射光画像に色相を重畳してその画像を表示してもよいし、抽出情報生成後、ステップS7、S8は行わずに処理を終了するようにしてもよい。

【0144】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。上述した実施の形態では、検体中の微生物からの自家蛍光に基づいて蛍光スペクトルを生成し、微生物の種別を同定するものとして説明したが、微生物種に限らず、例えば分離した細胞等、レーザ光の照射によって特有の蛍光スペクトルを示す生物であれば適用することが可能である。

【0145】
また、上述した実施の形態では、三次元空間を走査して、自家蛍光データ、反射光データ及び対応データを生成するものとして説明したが、二次元空間(図3に示すXY平面、XZ平面及びYZ平面のいずれか)を走査して自家蛍光データ、反射光データ及び対応データを生成してもよいし、図3に示すX方向、Y方向及びZ方向のうちのいずれか一つの方向に走査するようにしてもよいし、空間における、ある一点の自家蛍光及び反射光を取得して自家蛍光データ、反射光データ及び対応データを生成してもよい。

【0146】
また、上述した実施の形態では、三次元画像を生成して表示するものとして説明したが、二次元画像を表示、又は視覚情報を重畳するものであってもよいし、ユーザからの操作入力によって表示する画像を選択するようにしてもよい。

【0147】
また、上述した実施の形態では、検体からの反射光により二次元画像及び三次元画像を生成するものとして説明したが、この他、特定の波長あるいは可視光によって可視化する手法、例えば共焦点反射顕微鏡法による立体可視化や微分干渉法による二次元の可視化、透過光による二次元の可視化等、公知の手法を用いて二次元画像や三次元画像を生成するようにしてもよい。

【0148】
また、上述した実施の形態では、検出器109が、反射型回折格子及び光電子増倍管(PMT)を用いて構成されるものとして説明したが、この他、例えば、音響光学ビームスプリッター(例えば、ライカ社のAOBS(登録商標))、高感度検出器(HyD検出器)、及び検出器の前段に設けられる可動スリット構造からなる検出器としてもよい。この検出器は、上述した構成により、例えば1nmごとの波長に分離したデータを取得することが可能である。

【0149】
また、上述した実施の形態では、画像に対して設定された色相を重畳するものとして説明したが、色相に限らず、網掛けを重畳する等、視覚的に識別可能なものであれば適用可能である。

【0150】
また、上述した実施の形態では、レーザ光を用いて反射光又は自家蛍光を取得するようにしたが、レーザ光のような指向性の高い光に限らず、指向性の低い光(例えばハロゲンランプによる光)を集光して試料に照射することによって反射光又は自家蛍光を取得するようにしてもよい。例えば、レーザ光により自家蛍光を取得し、ハロゲンランプを用いて反射光を取得したり、ハロゲンランプを用いて自家蛍光を取得し、レーザ光により反射光を取得したり、ハロゲンランプを用いて自家蛍光及び反射光を取得したりしてもよい。また、光の波長は、フィルタを通過したものや、プリズムによって分光したものでもよい。

【0151】
また、上述した実施の形態では、複数の励起波長ごとの蛍光スペクトルを用いて種別を同定するものとして説明したが、同定可能であれば、一つの励起波長に対応する蛍光スペクトルにより種別を同定するようにしてもよい。また、上述した実施の形態では、得られた蛍光スペクトルと、既知の蛍光スペクトルのピーク位置を比較して解析するものとして説明したが、ピークの強度や、ピークの強度比等を用いて解析するようにしてもよい。強度を用いて解析する場合、自家蛍光データは、位置ごとかつ励起波長ごとに検出された自家蛍光の強度を対応付けたデータとなる。

【0152】
このように、本発明は、請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な実施の形態を含みうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上のように、本発明にかかるデータ作成方法及びデータ使用方法は、試料を非侵襲のまま解析することができるとともに、その対象の空間的な位置情報を取得するのに有用である。
【符号の説明】
【0154】
1 顕微鏡システム
100 共焦点レーザスキャン顕微鏡
101 ステージ
102 対物レンズ
103 レーザ光源
104 レンズ
105 コリメートレンズ
106 ビームスプリッター
107 結像レンズ
108 コンフォーカルピンホール
109 検出器
110 走査ミラー
200 制御装置
201 制御部
202 入力部
203 レーザ制御部
204 走査制御部
300 画像処理装置
301 検出信号受信部
302 データ生成部
302a 自家蛍光データ生成部
302b 反射光データ生成部
302c 対応データ生成部
303 二次元画像生成部
304 三次元画像生成部
305 データ解析部
306 色相重畳部
307 記録部
308 解析情報記録部
400 表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7A】
6
【図7B】
7
【図8A】
8
【図8B】
9
【図9A】
10
【図9B】
11
【図10】
12
【図11A】
13
【図11B】
14
【図12A】
15
【図12B】
16
【図13A】
17
【図13B】
18
【図14】
19
【図15】
20
【図16】
21
【図17】
22
【図18】
23
【図19】
24
【図20】
25
【図21】
26
【図22】
27
【図23】
28
【図24】
29
【図25A】
30
【図25B】
31
【図26A】
32
【図26B】
33
【図27】
34
【図28A】
35
【図28B】
36
【図29A】
37
【図29B】
38
【図30】
39
【図31】
40
【図32A】
41
【図32B】
42
【図33】
43
【図34】
44
【図35】
45
【図36】
46
【図37】
47
【図38】
48
【図39】
49