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明細書 :ヒトゲノムDNA検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年10月24日(2019.10.24)
発明の名称または考案の名称 ヒトゲノムDNA検出方法
国際特許分類 C12Q   1/6888      (2018.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/6888 ZNAZ
C12N 15/09 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 77
出願番号 特願2018-554221 (P2018-554221)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2017/042943
国際公開番号 WO2018/101375
国際出願日 平成29年11月30日(2017.11.30)
国際公開日 平成30年6月7日(2018.6.7)
優先権出願番号 2016233119
優先日 平成28年11月30日(2016.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】明石 英雄
【氏名】船越 広大
出願人 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100113860、【弁理士】、【氏名又は名称】松橋 泰典
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
審査請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
要約 被験試料中のヒトゲノムDNAを高感度に検出及び/又は定量する方法を提供すること。
46のヒトAluサブファミリーのコンセンサス配列を代表する一つの「ヒトAluモデル配列」を同定し、このヒトAluモデル配列を用いてAlu検出用PCRプライマー・プローブ候補を選択する。次に、ヒトAlu配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列であって、且つ、ダイマーの形成を最小限に抑え得るオリゴヌクレオチド配列からなるプライマー・プローブセットを、独自のクライテリアを用いて選択する。このようにして得られたAlu検出用PCRプライマー・プローブを用いて定量リアルタイムPCRを行うことにより、被験試料中のヒトゲノムDNAを高感度に検出及び/又は定量することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群及びリバースプライマー群から、以下のクライテリア1’~7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程A’を含む、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法;
[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【請求項2】
以下のクライテリア1~7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程Aを含む、請求項1記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法;
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【請求項3】
ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、請求項1又は2記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法。
【請求項4】
非ヒト生物がげっ歯類である請求項1~3のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法により設計されたヒトAlu検出用PCRプライマー対。
【請求項6】
以下の(a)又は(a’)のフォワードプライマー及び(b)又は(b’)のリバースプライマーにより構成される、ヒトAlu検出用PCRプライマー対。
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
【請求項7】
配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、請求項6記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対。
【請求項8】
配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、請求項6記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対。
【請求項9】
被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、請求項5~8のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法。
【請求項10】
被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列のうち、請求項5~8のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群から、以下のクライテリア8’~11’を満たすプローブを選択する工程B’を含む、ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法;
[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【請求項12】
以下のクライテリア8~11を満たすプローブを選択する工程Bを含む、請求項11記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法;
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【請求項13】
工程B’又はBにより複数のプローブが選択されたとき、以下のクライテリア12~15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブを選択する工程Cをさらに含む、請求項11又は12記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法。
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
【請求項14】
ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、請求項11~13のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法。
【請求項15】
非ヒト生物がげっ歯類である、請求項11~14のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法。
【請求項16】
請求項11~15のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法により設計された、ヒトAlu検出用PCRプローブ。
【請求項17】
配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるヒトAlu検出用PCRプローブ。
【請求項18】
配列番号42又は149に示されるヌクレオチド配列からなる、請求項17記載のヒトAlu検出用PCRプローブ。
【請求項19】
プローブの5’末端が蛍光物質により、3’末端がクエンチャー物質によりそれぞれ標識されている、請求項16~18のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブ。
【請求項20】
請求項5~8のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対と、請求項16~19のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブとを備えた、ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセット。
【請求項21】
請求項20記載のヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、以下の(I)~(III)の工程を含む、方法。
(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;
(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;
(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDNA量を算出する工程;
【請求項22】
被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項5~8のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対及び/又は請求項16~18のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、それを用いて設計されたヒトAlu検出用PCRプライマー対や、該ヒトAlu検出用PCRプライマー対を用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法等に関する。また、本発明は、ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、それを用いて設計されたヒトAlu検出用PCRプローブや、該ヒトAlu検出用PCRプローブ及び上記ヒトAlu検出用PCRプライマーを用いて、被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
Alu配列は、レトロトランスポゾンであるSINE(short interspersed element)の一種であり、ヒトを含む霊長類のゲノムに特異的に存在する反復配列である。Alu配列は、レフトモノマー及びライトモノマーと呼ばれる2つの7SL RNA由来配列と、それらに挟まれたA-rich配列から構成されている。Alu配列は霊長類のゲノムに特異的な配列であるが、その一部を構成する7SL RNA由来配列はげっ歯類のゲノム中にも存在することが分かっている。また、最近の研究により、ヒトゲノム中のAlu配列は全てが同一の配列からなるものではなく、46のサブファミリーからなることが明らかにされている(非特許文献1)。
【0003】
Alu配列は、ヒトゲノム中に100万コピー以上存在し、ヒトゲノムの10%以上を占めることが知られている。ヒトゲノムの全長は約30億ヌクレオチド対であることから、単純に計算すると、ヒトゲノムDNA3000ヌクレオチド対につき平均1コピーのAlu配列が存在していることになる。重量に換算すると、一倍体のヒトゲノム全体の重さは3pgであることから、0.003fgのヒトゲノムDNAに平均1コピーのAlu配列が含まれると考えられる。このように、Alu配列はごく微量のヒトゲノムDNAにも必ず存在し、また、霊長類に特異的なヌクレオチド配列であることから、ヒト細胞の検出・定量のための理想的な標的であると考えられている。
【0004】
Alu配列を標的とした定量リアルタイムPCR法(以下、「Alu-qPCR」と称する場合がある)を用いてヒトゲノムを検出・定量する方法は、これまでに複数報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献2等)。また、Alu-qPCRのためのキットとして、Innoquant(登録商標)(InnoGenomics Technologies 社製)や、Femto(登録商標)Human DNA Quantification Kit(ZYMO RESEARCH社製)が既に市販されている。さらに、Alu-qPCRを利用して、マウス等に異種移植したヒト幹細胞の生着・増殖の程度を確認できること(非特許文献3)、血中DNA濃度を測定して癌の診断ができること(非特許文献4)、法医学分野で使用される陳旧試料中のヒトゲノムDNAを検出できることが報告されている(非特許文献5)。
【0005】
しかし、これまでに報告されているAlu-qPCRはいずれも十分な感度を持つものではない。すなわち、理論的には、リアルタイムPCRにより0.1fg程度のヒトゲノムDNAからAluを検出できるはずであるが、既知のAlu-qPCRでは数pg以上のヒトゲノムDNAが必要であるとされており(非特許文献5)、理論的な検出限界と比較して極めて低い感度しか得られていない。また、既知のAlu-qPCR用プライマーには、ヒト以外の生物種ゲノムの一部と同一のヌクレオチド配列が含まれており、他の生物種由来のゲノムDNAとヒトゲノムDNAとが混在したサンプルを用いた場合に、微量のAluを特異的に検出することは不可能であった。以上のことから、より高い感度と特異性を有するAlu-qPCRの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平8-105887号公報
【0007】

【非特許文献1】Wheeler et al., Nucleic Acids Res, 41, D70-82. 2013
【非特許文献2】McBride, C., Gaupp, D. and Phinney, D.G. (2003) Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy, 5, 7-18.
【非特許文献3】Terrovitis JV, Smith RR, Marban E. Assessment and optimization of cell engraftment after transplantation into the heart. (2010) Circ. Res. 106, 479-494.
【非特許文献4】Heitzer E, Ulz P., Geigl JB. Circulating tumor DNA as a liquid biopsy for cancer. (2015) Clin. Chem. 61, 112-123.
【非特許文献5】Lee SB, McCord B, Buel E. Advances in forensic DNA quantification: a review. (2014) Electrophoresis. 35, 3044-3052.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ヒトAlu配列を特異的に増幅することができ、さらに、プライマーダイマー(ホモダイマー及びヘテロダイマー)形成を最小限に抑え得るヒトAlu検出用PCRプライマー対、及び該ヒトAlu検出用PCRプライマー対による増幅産物に特異的にハイブリダイズするプローブであって、さらに、上記プライマー対とプローブ間でのヘテロダイマー形成及びホモダイマー形成を最小限に抑え得るヒトAlu検出用PCRプローブを提供することにある。さらに、本発明の課題は、かかるヒトAlu検出用PCRプライマー対及びプローブを用いて、被験試料中のヒトゲノムDNAを高感度に検出及び/又は定量する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行い、46のヒトAluサブファミリーのコンセンサス配列を代表する一つの「ヒトAluモデル配列」を同定し、このAluモデル配列を用いてヒトゲノム中のAlu配列を最も多くカバーするプライマー・プローブセットの設計を試みた。まず、本発明者らは一般的なプライマー・プローブ設計プログラム(Primer3)を用いて、上記ヒトAluモデル配列からプライマー対及びプローブを設計したが、かかるプライマー対及びプローブを用いてAlu-qPCRを行っても、従来技術と同程度の低い感度(検出限界値がヒトゲノムDNA数pg以上)しか得られなかった。
以上の結果から、本発明者らは、Aluを高感度に検出するためのプライマー・プローブを設計するためには、通常の設計プログラムでは不十分であると考え、独自のクライテリアを設定する必要があると考えた。当該技術分野においては、PCRプライマー及びプローブを設計するためのクライテリアは無数に報告されているが、本発明者らは自身のそれまでの経験に基づいて、以下のクライテリア1~7をヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計のために、以下のクライテリア8~15をヒトAlu検出用PCRプローブの設計のためにそれぞれ設けた。
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
【0010】
上記クライテリアを設定するにあたって、発明者らは、一般的なプライマー・プローブ設計において強く推奨されている2つの条件、すなわち、(1)プローブのTm値はプライマーのTm値より10℃程度高く設計すること;(2)プライマーの3’末端はTとしないこと;という条件(例えば、Apte, A. and Daniel, S. (2009) PCR primer design. Cold Spring Harb Protoc, 2009)を無視した。また、従来技術においては、Aluが霊長類特異的な配列であることから、プライマー及びプローブがヒト以外の生物のゲノムDNAにハイブリダイズする可能性について全く考慮されていなかった。これに対して、本発明者らは、ヒト以外の生物のゲノムDNAが混在する試料からもヒトAluを特異的に検出し得るプライマー対及びプローブを得るために、上記クライテリア1及び8を設けた。さらに、上記クライテリア3、7、及び12はこれまでに報告のない、全く新しいクライテリアである。
【0011】
本発明者らは、上記クライテリア1~7を用いて、一組のプライマー対(フォワードプライマー:GGTGAAACCCCGTCTCTACT(配列番号18)、リバースプライマー:GGTTCAAGCGATTCTCCTGC(配列番号19))、及び4つのプローブ(ATACAAAAATTAGCCGGGCG(配列番号37)、TACAAAAATTAGCCGGGCGT(配列番号39)、CGCCCGGCTAATTTTTGTAT(配列番号42)、ACGCCCGGCTAATTTTTGTA(配列番号47))を選択した。上述の通り、上記クライテリアは、一般的なプライマー・プローブ設計において強く推奨されている2つの条件を無視しており、その結果、実際に選択されたプローブのTm値はフォワードプライマー及びリバースプライマーのTm値と比較して1~2℃低く、また、フォワードプライマーの3’末端はTであった。
【0012】
さらに、本発明者らは、これらのプライマー対及びプローブを組み合わせてAlu-qPCRを行い、その結果、(1)被験試料がヒトゲノムDNAのみを含む場合には、0.1fg~10ngの範囲のヒトゲノムDNAを定量的に測定することが可能であること(2)被験試料がヒトゲノムDNAとげっ歯類ゲノムDNAとを含む場合には、1fg~10ngの範囲のヒトゲノムDNAを定量的に測定することが可能であること、(3)被験試料が断片化ヒトゲノムDNA(20kbp~250bp)であっても、10fg~10ngの範囲で定量的な測定が可能であること、(4)被験試料が家畜・ペット動物由来ゲノムDNAを含む場合でも、10fg~10ngの範囲のヒトゲノムDNAを定量的に測定することが可能であること、(5)被験試料が陳旧試料(数百年前の古人骨由来の試料)であっても、10fg~10ngの範囲のヒトゲノムDNAを定量的に測定することが可能であることを明らかにした。
【0013】
また、発明者らは、より高度に断片化されたヒトゲノムDNA(100bp)の定量が可能なプライマー・プローブセットを設計するために上記クライテリア1~11を改良し、以下のプライマー用クライテリア1’~7’及びプローブ用必須クライテリア8’~11’を設けた。
[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【0014】
本発明者らは、上記クライテリア1’~7’を用いて、一組のプライマー対(フォワードプライマー:GGCGGAGGTTGCAGTGAG(配列番号123)、リバースプライマー:GTCTCGCTCTGTCGCCCA(配列番号148))を選択し、さらに、上記クライテリア8’~11’と上記クライテリア13、15とを用いて、1つのプローブ(TGCAGTGGCGCGATCTCG(配列番号149))を選択した。そして、本発明者らは、これらのプライマー対及びプローブを組み合わせてAlu-qPCRを行い、その結果、100bpに断片化されたヒトゲノムDNAにおいても、10fg~10ngの範囲での定量的な測定が可能であることを明らかにした。以上のように、発明者らは、独自のクライテリアにより設計されたヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブを用いて、理論的検出限界に近い感度(すなわち、従来技術と比較して数百倍以上の感度)を有するAlu-qPCRが可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群及びリバースプライマー群から、[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア1’~7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程A’を含む、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(2)[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア1~7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程Aを含む、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(3)ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、上記(1)又は(2)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(4)非ヒト生物がげっ歯類である上記(1)~(3)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法により設計されたヒトAlu検出用PCRプライマー対に関する。
【0016】
また、本発明は、
(6)以下の(a)又は(a’)のフォワードプライマー及び(b)又は(b’)のリバースプライマーにより構成される、ヒトAlu検出用PCRプライマー対
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;や、
(7)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、上記(6)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対や、
(8)配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、上記(6)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対や、
(9)被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、上記(5)~(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法や、
(10)被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、上記(9)記載の方法に関する。
【0017】
さらに、本発明は、
(11)配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列のうち、上記(5)~(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群から、[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア8’~11’を満たすプローブを選択する工程B’を含む、ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(12)[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア8~11を満たすプローブを選択する工程Bを含む、上記(11)記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(13)工程Bにより複数のプローブが選択されたとき、[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上である;[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;のクライテリア12~15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブを選択する工程Cをさらに含む、上記(11)又は(12)記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(14)ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、上記(11)~(13)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(15)非ヒト生物がげっ歯類である、上記(11)~(14)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(16)上記(11)~(15)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法により設計された、ヒトAlu検出用PCRプローブに関する。
【0018】
また、本発明は、
(17)配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるヒトAlu検出用PCRプローブや、
(18)配列番号42又は149に示されるヌクレオチド配列からなる、請求項17記載のヒトAlu検出用PCRプローブや、
(19)プローブの5’末端が蛍光物質により、3’末端がクエンチャー物質によりそれぞれ標識されている、上記(16)~(18)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブや、
(20)上記(5)~(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対と、上記(16)~(19)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブとを備えた、ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットや、
(21)上記(20)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDN
A量を算出する工程;の(I)~(III)の工程を含む方法や、
(22)被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、上記(21)記載の方法や、
(23)上記(5)~(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対及び/又は上記(16)~(18)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キットに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒトAlu配列を特異的且つ高感度に検出できるヒトAlu検出用PCRプライマー対及びプローブを提供することができる。また、かかるヒトAlu検出用PCRプライマー対及びプローブ用いたAlu-qPCRにより、条件の悪い試料(他生物ゲノムDNAが多量に混在した試料や、DNAが高度の断片化された試料など)からでも、0.1~10fg程度のヒトゲノムDNAを特異的に検出及び/又は測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】RNase A及び/又はRNase T1を用いて細胞から抽出された核酸に、DNA及びRNAがどのような割合で含まれるかを示す図である。図中、白カラムは、抽出されたサンプル中の核酸濃度(DNA及びRNA濃度)を紫外線吸光度法により調べた結果を、黒カラムは、抽出されたサンプル中のDNA濃度をPicoGreenDNA定量法により調べた結果を、それぞれ示す。
【図2】McBrideのプライマー・プローブセットを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Human genomic DNA(Log10pg)」はスタンダードサンプル(テンプレート3)に含まれるヒトゲノムDNA量をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~1ngの間で直線性が認められた。
【図3】McBrideのプライマー・プローブセットを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「mouse」はマウスゲノムDNA(テンプレート2)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、マウスゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート4)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1pg~10ngの間で直線性が認められた。
【図4-1】Aluのマルチプルアライメントに基づいて作成された位置特異的スコアマトリックスを示す図である。
【図4-2】Aluのマルチプルアライメントに基づいて作成された位置特異的スコアマトリックスを示す図である。
【図4-3】Aluのマルチプルアライメントに基づいて作成された位置特異的スコアマトリックスを示す図である。
【図5】Aluモデル配列(配列番号5)を示す図である。
【図6】Aluモデル配列における、Primer3のフォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブのそれぞれの位置を示す図である。
【図7】Primer3のプライマー・プローブセットを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Mouse」はマウスゲノムDNA(テンプレート2)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、マウスゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート4)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が100fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図8】Aluモデル配列のポジション#1~#264について、それぞれのポジションを開始点とする19ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列がマウス、ラット、及びギニアピッグゲノム中にいくつ存在するか示す図である。図中、「Position#」はAluモデル配列中のポジション#を、「Nucleotide」はAluモデル配列中の各ポジション#におけるヌクレオチドの種類をそれぞれ示す。また、「Mouse Blast」、「Rat Blast」、及び「Guinea pig Blast」はそのポジション#から連続する19ヌクレオチドのヌクレオチド配列が、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中に何か所存在するかを示す。
【図9】Primer3のフォワードプライマー(配列番号6)及びリバースプライマー(配列番号7)において形成される二次構造を示す図である。
【図10】McBrideのプライマー・プローブセット(フォワードプライマー;配列番号1、リバースプライマー;配列番号2、及びプローブ;配列番号3)の2分子間において形成される二次構造を示す図である。
【図11】Aluモデル配列における、本発明のフォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16のそれぞれの位置を示す図である。
【図12】本発明のプライマー・プローブセットA(フォワードプライマーF10;配列番号18、リバースプライマーR1;配列番号19、及びプローブP16;配列番号42)の2分子間において形成される二次構造を示す図である。
【図13】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Human genomic DNA(Log10pg)」はスタンダードサンプル(テンプレート3)に含まれるヒトゲノムDNA量をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が0.1fg~1ngの間で直線性が認められた。
【図14】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Mouse」はマウスゲノムDNA(テンプレート2)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、マウスゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート4)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図15】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Rat」はラットゲノムDNA(テンプレート5)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、ラットゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート6)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図16】本発明のプライマー・プローブセットCを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Rat」はラットゲノムDNA(テンプレート5)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、ラットゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート6)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図17】本発明のプライマー・プローブセットDを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「Buf.」は、バッファーのみ(テンプレート1)を、「Rat」はラットゲノムDNA(テンプレート5)をそれぞれ示す。また、「Human genomic DNA(Log10pg)」は、ラットゲノムDNAを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート6)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図18】異種移植モデルマウスの肺に含まれるヒトゲノムDNAを、本発明のプライマー・プローブセットAを用いて定量した結果を示す図である。(a)は、0.5fg/μLから5ng/μLのヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肺由来のゲノムDNAと混合スタンダードサンプル(テンプレート8)を用いて作成した検量線を示す。また、(b)は、上記検量線に基づいて、異種移植モデルマウスの肺全体に含まれるヒトMSCの数を算出した結果を示す。
【図19】異種移植モデルマウスの腎臓に含まれるヒトゲノムDNAを、本発明のプライマー・プローブセットAを用いて定量した結果を示す図である。(a)は、0.5fg/μLから5ng/μLのヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNAと混合スタンダードサンプル(テンプレート11)を用いて作成した検量線を示す。また、(b)は、上記検量線に基づいて、異種移植モデルマウスの腎臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した結果を示す。
【図20】異種移植モデルマウスの肝臓に含まれるヒトゲノムDNAを、本発明のプライマー・プローブセットAを用いて定量した結果を示す図である。(a)は、0.5fg/μLから5ng/μLのヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肝臓由来のゲノムDNAと混合スタンダードサンプル(テンプレート11)を用いて作成した検量線を示す。また、(b)は、上記検量線に基づいて、異種移植モデルマウスの肝臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した結果を示す。
【図21】腎皮膜下移植モデルマウスの腎臓に含まれるヒトゲノムDNAを、本発明のプライマー・プローブセットを用いて定量し、かかる定量値に基づいて算出した、各マウス腎臓におけるヒト細胞の数を示す図である。横軸のcell数は、そのモデルマウスの腎臓に始めに移植したヒト細胞の数を表す。
【図22】本発明のプライマー・プローブセットAに含まれる連続する16~20ヌクレオチドからなる配列が、様々な生物種(マウス、ラット、ギニアピッグ、クマ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、ブタ、微生物)のゲノム中にいくつ存在するかを示す図である。図中、「101F」はフォワードプライマーF10を、「206R」はリバースプライマーR1を、「144RH」はプローブP16をそれぞれ示す。また、図中、「20」は上記プライマー及びプローブ中の連続する20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列(全長)が各生物種のゲノム中にいくつ存在するかを、「19」は上記プライマー及びプローブ中の連続する19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が各生物種のゲノム中にいくつ存在するかを、「18」は上記プライマー及びプローブ中の連続する18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が各生物種のゲノム中にいくつ存在するかを、「17」は上記プライマー及びプローブ中の連続する17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が各生物種のゲノム中にいくつ存在するかを、「16」は上記プライマー及びプローブ中の連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列(全長)が各生物種のゲノム中にいくつ存在するかを、それぞれ示す。
【図23】実施例17において作製された断片化ヒトゲノムDNA(20kbp)の長さの分布を示す図である。
【図24】実施例17において作製された断片化ヒトゲノムDNA(1000bp)の長さの分布を示す図である。
【図25】実施例17において作製された断片化ヒトゲノムDNA(250bp)の長さの分布を示す図である。
【図26】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はバッファーのみ(テンプレート1)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」は20kbpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル(テンプレート18)をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図27】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はバッファーのみ(テンプレート1)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」は1000bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル(テンプレート19)をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図28】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はバッファーのみ(テンプレート1)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」は250bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル(テンプレート20)をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図29】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はニワトリゲノムDNAのみ(テンプレート21)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」はニワトリゲノムDNAとヒトゲノムDNAとを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート22)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図30】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はブタゲノムDNAのみ(テンプレート23)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」はブタゲノムDNAとヒトゲノムDNAとを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート24)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図31】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はウシゲノムDNAのみ(テンプレート25)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」はウシゲノムDNAとヒトゲノムDNAとを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート26)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図32】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はイヌゲノムDNAのみ(テンプレート27)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」はイヌゲノムDNAとヒトゲノムDNAとを混合させたスタンダードサンプル(テンプレート28)に含まれるヒトゲノムDNA量を示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図33】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRにより得られた増幅曲線を示す図である。図中、「畑内-17」は畑内17号由来のサンプル(テンプレート30)を、「畑内-26」は畑内17号由来のサンプル(テンプレート31)を、「畑内-45」は畑内45号由来のサンプル(テンプレート32)ををそれぞれ示す。
【図34】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はバッファーのみ(テンプレート1)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」はヒトゲノムDNAのみを含むスタンダードサンプル(テンプレート29)それぞれを示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【図35】本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRによって、古人骨中のヒトゲノムDNA量を定量した結果を示す図である。古人骨由来サンプル(テンプレート30~32)の定量はduplicateで行い、Ct値の平均値からサンプル中のヒトゲノムDNA濃度を算出した。
【図36】既知のプローブ法によるAlu-qPCR用PCRプライマー・プローブセットと、本発明との違いを示す図である。図中の「Type」欄における、「F」はフォワードプライマーを「R」はリバースプライマーを、「H」は加水分解プローブをそれぞれ示す。また、「クライテリア#」欄は、既知の各プライマー・プローブ配列が本発明のクライテリア1~7(プライマーに対して)及びクライテリア8~13(プローブに対して)を満たすか否かを示す(満たす場合は「X」、満たさない場合は空欄)。
【図37】既知のプローブ法によるAlu-qPCR用PCRプライマー・プローブセットと、本発明との違いを示す図である。図中の「Type」欄における、「F」はフォワードプライマーを「R」はリバースプライマーを、「H」は加水分解プローブをそれぞれ示す。また、「Mouse」、「Rat」、及び「Guinea pig」欄の「0」は、既知の各プライマーに含まれる連続する20ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかを示し、「-1」は、既知の各プライマーに含まれる連続する19ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかを示し、「-2」は、既知の各プライマーに含まれる連続する18ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(18ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかをそれぞれ示す。さらに、「Human」欄の「0」は、既知の各プライマーに含まれる連続する20ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がヒトのゲノム中にいくつ存在するかを示す。また、図中の「*」はTaqMan-MGB効果を考慮せずに算出したTm値であることを示し、「**」はラットゲノムデータベースNW_007906637におけるポジション#807~1566の配列を含むヒット数を示す。
【図38】既知のインターカレーター法によるAlu-qPCR用PCRプライマー・プローブセットと、本発明との違いを示す図である。図中の「Type」欄における、「F」はフォワードプライマーを「R」はリバースプライマーをそれぞれ示す。「クライテリア」欄は、既知の各プライマー配列が本発明のクライテリア1~7を満たすか否かを示す(満たす場合は「X」、満たなない場合は空欄)。また、「Mouse」、「Rat」、及び「Guinea pig」欄の「0」は、既知の各プライマーに含まれる連続する20ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかを示し、「-1」は、既知の各プライマーに含まれる連続する19ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかを示し、「-2」は、既知の各プライマーに含まれる連続する18ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(18ヌクレオチド長以下)がマウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中にいくつ存在するかをそれぞれ示す。さらに、「Human」欄の「0」は、既知の各プライマーに含まれる連続する20ヌクレオチドからなる配列、又は全長配列(19ヌクレオチド長以下)がヒトのゲノム中にいくつ存在するかを示す。
【図39】Aluモデル配列のポジション#1~#266について、それぞれのポジションを開始点とする18ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列がマウス、ラット、及びギニアピッグゲノム中にいくつ存在するか示す図である。図中、「Position」はAluモデル配列中のポジション#を示す。また、「Mouse Blast」、「Rat Blast」、及び「Guinea pig Blast」はそのポジション#から連続する18ヌクレオチドのヌクレオチド配列が、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中に何か所存在するかを示す。
【図40】Aluモデル配列のポジション#1~#266について、それぞれのポジションを開始点とする17ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列がマウス、ラット、及びギニアピッグゲノム中にいくつ存在するか示す図である。図中、「Position」はAluモデル配列中のポジション#を示す。また、「Mouse Blast」、「Rat Blast」、及び「Guinea pig Blast」はそのポジション#から連続する17ヌクレオチドのヌクレオチド配列が、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中に何か所存在するかを示す。
【図41】本発明のフォワードプライマーF34’(配列番号123)及びリバースプライマーR20’(配列番号148)において形成されるプライマーダイマーの二次構造を示す図である。
【図42】実施例22において作製された断片化ヒトゲノムDNA(100bp)の長さの分布を示す図である。
【図43】本発明のプライマー・プローブセットEを用いたAlu-qPCRの結果を示す図である。図中の「ネガティブコントロール」はバッファーのみ(テンプレート1)を、「ヒトゲノムDNA量(Log10pg)」は100bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル(テンプレート33)をそれぞれ示す。各ヒトゲノムDNA量におけるCt値に基づいて検量線を作成した結果、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法)
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法」(以下、単に「本発明のプライマー対設計方法」とも称する)としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群及びリバースプライマー群から、以下のクライテリア1’~7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程A’を含むものであれば特に制限されない。
[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;

【0022】
上記本発明のプライマー対設計方法の特に好適な例としては、以下のクライテリア1~7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程Aを含むものを挙げることができる。
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;

【0023】
上記「ヒトAluモデル配列」としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるものであれば特に制限されないが、配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなるものが特に好ましい。また、上記本発明のプライマー対設計方法においては、常法にしたがって「ヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群」(以下、単に「フォワードプライマー群」とも称する)、及び「ヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるリバースプライマー群」(以下、単に「リバースプライマー群」とも称する)を選定することができる。具体的には、例えば、Primer3、ProbeFinder Software、CODEHOP、Gene Finder等の公知のプライマー設計プログラムに、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の一部又は全部を入力することにより、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」を選定することができる。

【0024】
上記「工程A’」としては、上記「フォワードプライマー群」及び「リバースプライマー群」の中からクライテリア1’~7’の全てを満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定する工程であれば特に制限されず、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」にクライテリア1’~7’をどのような順序で適用させてもよいが、クライテリア1’~7’を順次適用させて選定する工程であることが好ましい。具体的には、上記「工程A’」の例としては、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」を構成するそれぞれのプライマーがクライテリア1’~4’を満たすか否かを判定し、クライテリア1’~4’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーがそれぞれ一つずつであった場合には、その1対の組合せについてクライテリア5’~7’を満たすか否かを判定し、また、クライテリア1’~4’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーが複数であった場合には、全てのフォワードプライマー及びリバースプライマーの組合せについてクライテリア5’~7’を満たすか否かを判定する工程を挙げることができる。
また、上記「工程A」としては、上記「フォワードプライマー群」及び「リバースプライマー群」の中からクライテリア1~7の全てを満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定する工程であれば特に制限されず、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」にクライテリア1~7をどのような順序で適用させてもよいが、クライテリア1~7を順次適用させて選定する工程であることが好ましい。具体的には、上記「工程A」の例としては、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」を構成するそれぞれのプライマーがクライテリア1~4を満たすか否かを判定し、クライテリア1~4を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーがそれぞれ一つずつであった場合には、その1対の組合せについてクライテリア5~7を満たすか否かを判定し、また、クライテリア1~4を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーが複数であった場合には、全てのフォワードプライマー及びリバースプライマーの組合せについてクライテリア5~7を満たすか否かを判定する工程を挙げることができる。

【0025】
上記クライテリア1’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれのプライマーに含まれる連続した17以上ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しないものであれば特に制限されず、また、上記クライテリア1を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれのプライマーに含まれる連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しないものであれば特に制限されない。ここで、上記「非ヒト生物」としては、ヒトAlu検出の対象となる被験試料中にその一部が混入し得るヒト以外の生物であれば特に制限されず、ヒト以外の動物、植物、細菌、原生生物、ウイルス等のどのような生物であってもよいが、ヒト以外の哺乳動物であることが好ましく、げっ歯類動物であることがさらに好ましい。具体的には、上記「非ヒト生物」の例としては、マウス、ラット、ギニアピッグ、イヌ、ウサギ、ニワトリ、ウマ、ウシ、ネコ、クマ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ、ホヤ、ヤツメウナギ、線虫、ウニ、プラナリア、シロイヌナズナ、イネ、コムギ、タバコ、ショウジョウバエ、カイコ、ミツバチ、大腸菌、枯草菌、藍藻などを挙げることができるが、なかでも、マウス、ラット、及びギニアピッグ等のげっ歯類動物を好ましく挙げることができる。

【0026】
また、上記クライテリア1’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定する方法としては、具体的には、配列データベース(例えば、GenBank、DDBJ、EMBL等)及びホモロジーサーチ用ソフトウェア(例えば、BLAST(登録商標)等)などを利用する方法を例示することができる。このようなホモロジーサーチによって、上記「非ヒト生物」のゲノム中に、上記「ヒトAluモデル配列」に含まれる連続する17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列がいくつ存在するかを知ることができる。また、かかるホモロジーサーチの結果を上記「ヒトAluモデル配列」にマッピングすることにより、クライテリア1’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを設計可能なヒトAluモデル配列中の領域を特定し、この情報に基づいて、クライテリア1’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定することができる。同様に、上記クライテリア1を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定する方法としては、具体的には、配列データベース(例えば、GenBank、DDBJ、EMBL等)及びホモロジーサーチ用ソフトウェア(例えば、BLAST(登録商標)等)などを利用する方法を例示することができる。このようなホモロジーサーチによって、上記「非ヒト生物」のゲノム中に、上記「ヒトAluモデル配列」に含まれる連続する19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列がいくつ存在するかを知ることができる。また、かかるホモロジーサーチの結果を上記「ヒトAluモデル配列」にマッピングすることにより、クライテリア1を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを設計可能なヒトAluモデル配列中の領域を特定し、この情報に基づいて、クライテリア1を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定することができる。

【0027】
上記クライテリア2’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれのヌクレオチド長が18以上のものであれば特に制限されないが、例えば、フォワードプライマー及びリバースプライマーのそれぞれが、20~60ヌクレオチド長、より好ましくは20~40ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~30ヌクレオチド長、より好ましくは20~25ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~23ヌクレオチド長、より好ましくは20ヌクレオチド長、さらに好ましくは19ヌクレオチド長、より好ましくは18ヌクレオチド長のプライマー対を挙げることができる。プライマーは同じヌクレオチド長であってもよいし、異なるヌクレオチド長であってもよい。また、上記クライテリア2を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれのヌクレオチド長が20以上のものであれば特に制限されないが、例えば、フォワードプライマー及びリバースプライマーのそれぞれが、20~60ヌクレオチド長、より好ましくは20~40ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~30ヌクレオチド長、より好ましくは20~25ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~23ヌクレオチド長、より好ましくは20ヌクレオチド長のプライマー対を挙げることができる。プライマー対において、フォワードプライマーとリバースプライマーは同じヌクレオチド長であってもよいし、異なるヌクレオチド長であってもよい。

【0028】
上記クライテリア3’及び3を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれのプライマーの少なくとも5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであれば特に制限されないが、プライマーの5’末端及び3’末端のヌクレオチドがG又はCであることがさらに好ましい。

【0029】
上記クライテリア4’及び4を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、それぞれプライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTであれば特に制限されないが、プライマーの3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列のうちの、2つがA又はTであることがさらに好ましい。

【0030】
上記クライテリア5’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されず、また、上記クライテリア5を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されない。さらに、上記クライテリア6’及び6を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されずない。また、上記クライテリア7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されず、上記クライテリア7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されない。上記クライテリア5’~7’又は5~7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーの選定方法としては、特に制限されないが、例えば、「http://rna.urmc.rochester.edu/RNAstructure.html」からダウンロードできるRNAstructure、「http://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/old/dna/form1.cgi」からダウンロードできるmfold等の公知のプログラムにより、フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において形成される二次構造を予測し、その結果に基づいてフォワードプライマー及びリバースプライマーが上記クライテリア5’~7’又は5~7を満たすか否かを判定する方法を好ましく挙げることができる。

【0031】
(本発明のヒトAlu検出用PCRプライマー対)
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー対」(以下、単に「本発明のプライマー対」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対設計方法により設計されたものであれば特に制限されないが、具体的には、以下の(a)又は(a’)のフォワードプライマー及び(b)又は(b’)のリバースプライマーにより構成されるプライマー対を好適に例示することができる。
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマー、又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチド(例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個)が欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;

【0032】
上記本発明のプライマー対としては、上記フォワードプライマーと、上記リバースプライマーとをどのように組み合わせてもよく、上記(a)のフォワードプライマーと上記(b)のリバースプライマーの組合せ、上記(a’)のフォワードプライマーと上記(b’)のリバースプライマーの組合せ、上記(a)のフォワードプライマーと上記(b’)のリバースプライマーの組合せ、上記(a’)のフォワードプライマーと上記(b)のリバースプライマーの組合せのいずれのプライマー対であってもよいが、なかでも、上記(a’)のフォワードプライマーと上記(b’)のリバースプライマーの組合せ、又は上記(a)のフォワードプライマーと上記(b’)のリバースプライマーの組合せを特に好適に例示することができる。なかでも、上記本発明のプライマー対としては、配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成されるプライマー対、又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成されるプライマー対を特に好適に例示することができる。以下の実施例16に示すように、配列番号18及び19に示されるヌクレオチド配列中に含まれる16ヌクレオチド以上の連続するヌクレオチド配列は、マウス、ラット、ギニアピッグ、クマ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、ブタ、及び微生物のいずれのゲノム中にも殆ど存在しないことが確認されている。したがって、上記(a)に記載の「配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー」、及び(b)に記載の「配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるリバースプライマー」からなるプライマー対は、ヒトAlu配列を特異的に増幅することができる。

【0033】
(本発明のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法)
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法」(以下、単に「本発明のプローブ設計方法」とも称する)としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列のうち、上記本発明のプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群から、以下のクライテリア8’~11’を満たすプローブを選択する工程B’を含むものであれば特に制限されない。
[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;

【0034】
上記本発明のプローブ設計方法の特に好適な例としては、以下のクライテリア8~11を満たすプローブを選択する工程Aを含むものを挙げることができる。
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;

【0035】
また、本発明のプローブ設計方法は、上記工程B’又はBにより複数のプローブが選択されたとき、さらに以下のクライテリア12~15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブ選択する工程Cをさらに含むものであってもよい。
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;

【0036】
上記「本発明のプローブ設計方法」における「フォワードプライマー」及び「リバースプライマー」とは、上記本発明のプライマー対を構成するフォワードプライマー及びリバースプライマーをそれぞれ意味する。また、上記「ヒトAluモデル配列」としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるものであれば特に制限されないが、配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなるものが特に好ましい。さらに、上記本発明のプローブ設計方法においては、常法にしたがって「上記本発明のプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群」(以下、単に「プローブの群」とも称する)を選定することができる。具体的には、例えば、Primer3、ProbeFinder Software、CODEHOP、Gene Finder等の公知のプライマー設計プログラムに、上記本発明のプライマー対により増幅される領域のヌクレオチド配列の一部又は全部を入力することにより得られるプローブ、及び該プローブに相補的なヌクレオチド配列からなるプローブを、上記「プローブの群」として選定することができる。

【0037】
上記「工程B’」としては、上記「プローブの群」からクライテリア8’~11’を満たすプローブを選択する工程であれば特に制限されないが、上記「プローブの群」にクライテリア8’~11’を順次適用させて選択する工程であることが好ましい。また、上記「工程B」としては、上記「プローブの群」からクライテリア8~11を満たすプローブを選択する工程であれば特に制限されないが、上記「プローブの群」にクライテリア8~11を順次適用させて選択する工程であることが好ましい。

【0038】
上記「工程C」としては、クライテリア8’~11’を満たす複数のプローブから、上記クライテリア12~15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブを選択する工程であれば特に制限されず、プローブの使用目的や標識方法、選択されたプローブの数等に応じて、上記クライテリア12~15から選択される1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つのクライテリアを使用することができるが、クライテリア8’~11’を満たす複数のプローブから、上記クライテリア13、15を満たすプローブを選択する工程を特に好ましく例示することができる。また、上記「工程C」としては、クライテリア8~11を満たす複数のプローブから、上記クライテリア12~15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブを選択する工程であってもよく、上記クライテリア12~15から選択される1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つのクライテリアを使用することができるが、クライテリア8~11を満たす複数のプローブから、上記クライテリア12~15の全てを満たすプローブを選択する工程を特に好ましく例示することができる。上記「工程C」において上記クライテリア12~15から選択される2つ以上を用いる場合には、どのような順序でクライテリアを用いてもよい。

【0039】
上記クライテリア8’を満たすプローブとしては、プローブ中の連続した17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しないものであれば特に制限されず、ここで、上記「非ヒト生物」とは、上記クライテリア1’における「非ヒト生物」と同様のものを指す。また、上記クライテリア8’を満たすプローブを選定する方法としては、具体的には、配列データベース(例えば、GenBank、DDBJ、EMBL等)及びホモロジーサーチ用ソフトウェア(例えば、BLAST(登録商標)等)などを利用する方法を例示することができる、このようなホモロジーサーチによって、上記「非ヒト生物」のゲノム中に、上記「ヒトAluモデル配列」に含まれる連続する17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列がいくつ存在するかを知ることができる。また、かかるホモロジーサーチの結果を上記「ヒトAluモデル配列」にマッピングすることにより、クライテリア8’を満たすプローブを設計可能なヒトAluモデル配列中の領域を特定し、この情報に基づいて、クライテリア8’を満たすプローブを選定することができる。同様に、上記クライテリア8を満たすプローブとしては、プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しないものであれば特に制限されず、上記クライテリア8を満たすプローブを選定する方法としては、具体的には、配列データベース(例えば、GenBank、DDBJ、EMBL等)及びホモロジーサーチ用ソフトウェア(例えば、BLAST(登録商標)等)などを利用する方法を例示することができる、このようなホモロジーサーチによって、上記「非ヒト生物」のゲノム中に、上記「ヒトAluモデル配列」に含まれる連続する19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列がいくつ存在するかを知ることができる。また、かかるホモロジーサーチの結果を上記「ヒトAluモデル配列」にマッピングすることにより、クライテリア8を満たすプローブを設計可能なヒトAluモデル配列中の領域を特定し、この情報に基づいて、クライテリア8を満たすプローブを選定することができる。

【0040】
上記クライテリア9’を満たすプローブとしては、ヌクレオチド長が18以上のものであれば特に制限されないが、例えば、20~60ヌクレオチド長、より好ましくは20~40ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~30ヌクレオチド長、より好ましくは20~25ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~23ヌクレオチド長、より好ましくは20ヌクレオチド長、さらに好ましくは19ヌクレオチド長、より好ましくは18ヌクレオチド長のプローブを挙げることができる。また、上記クライテリア9を満たすプローブとしては、ヌクレオチド長が20以上のものであれば特に制限されないが、例えば、20~60ヌクレオチド長、より好ましくは20~40ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~30ヌクレオチド長、より好ましくは20~25ヌクレオチド長、さらに好ましくは20~23ヌクレオチド長、より好ましくは20ヌクレオチド長のプローブを挙げることができる。

【0041】
上記クライテリア10’を満たすプローブとしては、フォワードプライマーとプローブの組合せ、及びリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されず、上記クライテリア10を満たすプローブとしては、プローブ同士の組合せ、フォワードプライマーとプローブの組合せ、及びリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されない。また、上記クライテリア11’又は11を満たすプローブとしては、プローブ同士の組合せ、フォワードプライマーとプローブの組合せ、及びリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されない。上記クライテリア10’、10、11’、又は11を満たすプローブの選定方法としては、特に制限されないが、例えば、RNAstructure、Mfold等の公知のプログラムにより、プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において形成される二次構造を予測し、その結果に基づいてプローブが、上記クライテリア10’、10、11’、又は11を満たすか否かを判定する方法を好ましく挙げることができる。

【0042】
さらに、上記クライテリア12を満たすプローブとしては、フォワードプライマーとプローブの組合せ、又はリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まないものであれば特に制限されず、上記クライテリア12を満たすプローブの選定方法としては、特に制限されないが、例えば、RNAstructure、Mfold等の公知のプログラムにより、フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において形成される二次構造を予測し、その結果に基づいてプローブが上記クライテリア12を満たすか否かを判定する方法を好ましく挙げることができる。

【0043】
上記クライテリア13を満たすプローブとしては、プローブの5’末端のヌクレオチドがGでないものであれば特に制限されず、具体的には、プローブの5’末端のヌクレオチドがA、T、又はCであるプローブを挙げることができる。このクライテリアを満たすプローブは、その5’末端を蛍光物質により標識したときに、Gによるクエンチングを回避することができる。したがって、加水分解プローブや分子ビーコンプローブとしての使用が想定されるプローブを選択する場合には、上記クライテリア13を満たすプローブを選択することが好ましい。

【0044】
上記クライテリア14を満たすプローブとしては、プローブ同士の組合せ、フォワードプライマーとプローブの組合せ、及びリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せの二分子間のそれぞれで、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上、好ましくは-6.8kcal/mol以上、より好ましくは-6.5kcal/mol以上、さらに好ましくは-6.3kcal/mol以上、より好ましくは-6.0kcal/mol以上、さらに好ましくは-5.8kcal/mol以上、より好ましくは-5.5kcal/mol以上、さらに好ましくは-5.3kcal/mol以上、より好ましくは-5.0kcal/mol以上、さらに好ましくは-4.8kcal/mol以上、より好ましくは-4.5kcal/mol以上、さらに好ましくは-4.3kcal/mol以上、より好ましくは-4.0kcal/mol以上のものであれば特に制限されない。ここで、上記「自由エネルギーの変化」は、プローブ同士の組合せ、フォワードプライマーとプローブの組合せ、及びリバースプライマーとプローブの組合せのそれぞれの組合せにおける二分子間でそれぞれ異なるものであってもよい。上記クライテリア14を満たすプローブの選択方法としては、特に制限されないが、例えば、RNAstructure、Mfold等の公知のプログラムにより、プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において形成される二次構造を予測し、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化(ΔG°)を算出して、プローブが上記クライテリア14を満たすか否かを判定する方法を好ましく挙げることができる。

【0045】
上記クライテリア15を満たすプローブとしては、選択対象となる複数のプローブのヌクレオチド長を比較したときに、ヌクレオチド長が最も短いものであれば特に制限されない。

【0046】
(本発明のヒトAlu検出用PCRプローブ)
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプローブ」(以下、単に「本発明のプローブ」とも称する)としては、上記本発明のプローブ設計方法により設計されたものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブ、又は配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるプローブを好適に例示することができるが、なかでも、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブであることが好ましく、配列番号42又は149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブであることがさらに好ましい。

【0047】
上記本発明のプローブは、上記本発明のプライマー対による増幅産物を検出及び/又は定量するために標識物質で標識されていることが好ましく、より迅速又はより高感度で検出又は定量する観点から、蛍光物質で標識されていることが好ましい。蛍光物質以外の上記標識物質としては、ビオチン、ビオチンとアビジンの複合体、あるいはペルオキシダーゼ等の酵素が挙げられ、上記蛍光物質としては、ルシフェラーゼ等の蛍光タンパク質のほか、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、6-FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、TET(6-カルボキシ-4,7,2’,7’-テトラクロロフルオレセイン)、JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)、Cy3、Cy5、HEX(4,7,2’,4’,5,’,7’-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)等の蛍光色素が好ましく挙げられる。また、上記本発明のプローブは、蛍光物質(レポーター蛍光色素)とクエンチャー物質(クエンチャー蛍光色素)で二重標識されていることがより好ましく、蛍光物質(レポーター蛍光色素)により5’末端が、クエンチャー物質(クエンチャー蛍光色素)により3’末端がそれぞれ標識されていることが特に好ましい。蛍光物質(レポーター蛍光色素)の例としては前述の蛍光色素が挙げられ、クエンチャー物質(クエンチャー蛍光色素)の例としては、6‐カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)等のローダミン系蛍光色素や、BHQ-1([(4-(2-ニトロ-4-メチル-フェニル)-アゾ)-イル-((2-メトキシ-5-メチル-フェニル)-アゾ)]-アニリン)、BHQ-2([(4-(1-ニトロ-フェニル)-アゾ)-イル-((2,5-ジメトキシ-フェニル)-アゾ)]-アニリン)等のブラックホールクエンチャーが挙げられるが、なかでも、蛍光物質(レポーター蛍光色素)として6-FAM(6-カルボキシフルオレセイン)を、クエンチャー物質(クエンチャー蛍光色素)としてBHQ-1([(4-(2-ニトロ-4-メチル-フェニル)-アゾ)-イル-((2-メトキシ-5-メチル-フェニル)-アゾ)]-アニリン)を特に好適に例示することができる。

【0048】
(本発明のヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセット)
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセット」(以下、単に「本発明のプライマー・プローブセット」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対及び上記本発明のプローブを備えたものであれば特に制限されないが、(1)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、又は47に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;(2)配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号149に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;(3)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、47、又は149に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;
(1)~(3)のいずれかであることが好ましく、なかでも、(4)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号42に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;又は、上記(2)であることがさらに好ましい。また、本発明のプライマー・プローブセットは、本発明のプライマー対と、2つ以上の本発明のプローブとを備えたものであってもよく、例としては、配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、及び47に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブ群のうちの2つ以上を備えたプライマー・プローブセットを挙げることができる。

【0049】
(本発明のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法)
本発明の「本発明のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法」(以下、単に「本発明の検出・定量方法」とも称する)としては、被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、上記本発明のプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であれば特に制限されないが、特に、上記本発明のプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、以下の(I)~(III)の工程を含む方法であることが好ましい。
(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;
(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;
(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDNA量を算出する工程;

【0050】
上記「被験試料」としては、ヒトゲノムDNAを含み得る試料であれば特に制限されず、ヒトゲノムDNA以外に、非ヒト生物由来のDNAをさらに含み得るものであってもよい。上記「被験試料」の例としては、非ヒト生物由来の生体試料、陳旧試料、法医学試料、古生物試料等を挙げることができ、なかでも、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料や古人骨由来の陳旧試料を好ましく挙げることができる。また、上記「非ヒト動物」の例としては、マウス、ラット、ギニアピッグ、イヌ、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウシ等の非ヒト哺乳動物を挙げることができ、マウス、ラット、ギニアピッグ等のげっ歯類動物をより好ましく挙げることができる。さらに、上記「ヒト細胞」としては、ヒト幹細胞、ヒトがん細胞、ヒト体細胞、ヒト生殖細胞等のヒト由来の細胞であればどのような種類の細胞であってもよいが、ヒト間葉系幹細胞、ヒト造血幹細胞、ヒト神経幹細胞、ヒトiPS細胞、ヒトES細胞、ヒト体細胞由来胚性幹細胞等のヒト幹細胞を特に好適に例示することができる。なお、本明細書において「陳旧試料」とは、様々な環境下で数日~数百万年以上経過した「新鮮でない試料」を指し、経過時間の下限としては例えば2日、1週間、2週間、1ヶ月、3か月、1年、3年などが挙げられ、経過時間の上限としては、5年、10年、20年、40年、100年、200年、400年、600年、5000年、1万年などが挙げられる。なかでも、「古人骨由来の陳旧試料」とは、ヒトDNAを検出及び/又は定量する時点から数年以上前の人骨由来の試料を意味し、かかる陳旧試料には、ヒトDNAを検出及び/又は定量する時点から数年~200万年前、50~1万年前、100~1万年前、200~1万年前、300~1万年前、400~1万年前、50~5000年前、100~5000年前、200~5000年前、300~5000年前、400~5000年前、50~600年前、100~600年前、200~600年前、300~600年前、400~600年前の人骨由来の試料が挙げられる。

【0051】
また、上記被験試料よりDNAを抽出する方法としては、「プロテイナーゼK/フェノール抽出法」、「プロテイナーゼK/フェノール/クロロホルム抽出法」、「アルカリ溶解法」、「ボイリング法」、市販のDNA抽出カラムを用いた方法等の公知の方法であれば特に制限されないが、RNaseによるRNA分解工程を含む方法であることが好ましく、RNase A及びRNase TによるRNA分解工程を含む方法であることがさらに好ましい。具体的には、上記被験試料よりDNAを抽出する方法としては、「プロテイナーゼK/フェノール抽出法」においてプロテイナーゼK処理工程の前に、RNase A及びRNase T1を用いてRNA分解処理を行う方法を好適に例示することができる。

【0052】
上記「本発明のプライマー対を用いたPCR」としては、上記本発明のプライマー対を用いたPCRであれば特に制限されず、PCR増幅産物をサイクルの終わりに検出するエンドポイントPCR法であっても、PCR増幅産物の増加をリアルタイムでモニタリングするリアルタイムPCR法であってもよい。エンドポイントPCR法において増幅産物を検出する方法としては、PCRを終えた反応液をそのままアガロースなどを使用した慣用のゲル電気泳動に付し、泳動後のDNA断片をエチジウムブロマイド染色、蛍光試薬などで検出する方法を例示することができる。また、リアルタイムPCR法において増幅産物を検出する方法としては、非特異的DNAインターカレート色素を、あらかじめPCR反応液中に添加し、増幅産物の二重鎖DNAを経時的に検出するインターカレーション法を例示することができる。上記インターカレーション法においては、SYBR(登録商標)GreenI、SYBR(登録商標)GreenII、SYBR(登録商標)Gold、BEBO、YO-PRO-1、LCGreen(登録商標)、SYTO-9、SYTO-13、SYTO-16、SYTO-60、SYTO-62、SYTO-64、SYTO-82、POPO-3、TOTO-3、BOBO-3、TO-PRO-3、YO-PRO-1、PicoGreen(登録商標)、SYTOX Orange、EvaGreen(登録商標)等の非特異的DNAインターカレート色素を用いることができるが、なかでも、SYBR(登録商標)GreenIを用いることが好ましい。

【0053】
また、上記「本発明のプライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCR」としては、蛍光標識した本発明のプローブを用いるプローブ法であることが好ましい。ここで使用される本発明のプローブのタイプは特に制限されず、例として加水分解プローブ、分子ビーコンプローブ、サイクリングプローブ、Eprobe(登録商標)、Qprobe(登録商標)、スコーピオンプローブ、hybridization-probe等を挙げることができるが、なかでも、加水分解プローブを好ましく挙げることができる。加水分解プローブは、通常、核酸プローブの5’末端が蛍光物質(レポーター蛍光色素)で修飾され、3’末端が消光物質(クエンチャー)で修飾されたリニアオリゴヌクレオチドである。分子ビーコンプローブは、通常、核酸プローブの5’末端が蛍光物質(レポーター蛍光色素)で修飾され、3’末端が消光物質(クエンチャー)で修飾された、ステムループ構造を取り得るオリゴヌクレオチドである。サイクリングプローブは、通常、RNAとDNAからなるキメラオリゴヌクレオチドであり、一方の末端が蛍光物質(レポーター蛍光色素)で修飾され、他方の末端が消光物質(クエンチャー)で修飾されたオリゴヌクレオチドである。Eprobeは、通常、チミンヌクレオチドに蛍光色素を2つ有する人工核酸であり、ターゲットと結合していない1本鎖の状態では蛍光発光が抑制され、ターゲットと結合すると蛍光を発する。Qprobeは、通常、シトシンを末端とするオリゴヌクレオチドであり、その末端のシトシンが蛍光物質で標識されており、グアニン消光プローブとも呼ばれる。スコーピオンプローブは、通常、核酸プローブの一方の末端が蛍光物質(レポーター蛍光色素)で修飾され、3’末端が消光物質(クエンチャー)で修飾された、ヘアピンループ構造を取り得るオリゴヌクレオチドである。hybridization-probeは、3’末端が蛍光色素で修飾されたオリゴヌクレオチドからなるドナープローブと、5’末端が蛍光色素で修飾されたオリゴヌクレオチドからなるアクセプタープローブから構成されており、これらプローブがターゲットに結合すると両方の蛍光色素が近接して、ドナープローブの蛍光色素の蛍光によってアクセプタープローブの蛍光色素が励起して発光するものである。

【0054】
上記PCRは、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)、ア・ラボラトリーマニュアル(A laboratory manual)等の文献に記載の方法に従って行うこともできるし、KOD-Plus-Neo(東洋紡績社製)、TaKaRa PCR Amplification Kit(TaKaRa社製)、TaqMan(登録商標)Real-Time PCR Master Mixes(Thermo Fisher Scientific社製)等の市販のPCR用キットを用いて、製品添付の説明書に従って行うこともできる。また、上記PCRには、被検試料から得られた核酸と、本発明のプライマー対又は本発明のプローブ・プライマーセットの他、PCR反応に必要な各試薬を用いることができる。かかる試薬としては、核酸を重合させる酵素(例えばポリメラーゼ)、核酸の材料となる物質(例えばdNTP)、核酸増幅反応用のバッファー(例えば、Tris-Cl等の緩衝作用を有する成分や、Tween20等の界面活性剤など)、及び、Mg2+からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる他、PCRの種類に応じて、必要な試薬を追加的に用いることもができる。

【0055】
上記PCRを行う際には、用いる核酸増幅反応の種類などに応じて、市販の核酸増幅装置を用いることができ、なかでも、プローブのシグナル(好ましくは蛍光シグナル)を測定し得る装置も備えた核酸増幅装置を好ましく挙げることができる。核酸の増幅と、蛍光シグナルの測定の両方が可能なリアルタイムPCR装置として、Applied Biosystems社製の7500 real-time PCR instrument、Bio-RAD社製のCFX96、Roche社製のLight cycler 480等を挙げることができる。

【0056】
工程(I)及び(II)は、工程(I)に次いで工程(II)の順序であっても、工程(II)に次いで工程(I)の順序であってもよく、あるいは、工程(I)及び工程(II)は同時に実施されてもよいが、工程(I)及び工程(II)が同時に実施されることが好ましい。上記工程(III)は、工程(I)及び(II)を実施した後に実施される。

【0057】
上記工程(II)において用いる「標準試料」としては、既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料であれば特に制限されないが、PCR反応用のチューブごとに添加されるヒトゲノムDNAの量が、例えば、1fg~10ng、好ましくは0.1fg~10ng、より好ましくは0.01fg~10ng、さらに好ましくは0.001fg~10ng、より好ましくは0.0001fg~100ngの範囲となるように調製された標準試料を挙げることができる。また、上記「標準試料」は、ヒトゲノムDNAに加えて、被験試料に含まれ得る非ヒト生物由来のゲノムDNAをさらに含んでいてもよい。さらに、上記「標準試料」に含まれるヒトゲノムDNAは、上記「被験試料」の種類に応じて断片化されたものであってもよく、例えば、20kbp~100bpの範囲の適切なサイズに断片化されたヒトゲノムDNAを用いることができる。

【0058】
上記工程(II)において「検量線を作成する」方法としては、例えば、上記標準試料を鋳型としたリアルタイムPCRによって得られる蛍光シグナルの強度レベルを、ヒトゲノムDNAの量に対してプロットすることより作成する方法や、上記標準試料を鋳型としたリアルタイムPCRによって得られる蛍光シグナルのCt値を、ヒトゲノムDNAの量に対してプロットすることより作成する方法を挙げることができる。ここで、「Ct値」とは、リアルタイムPCRにおいて、増幅曲線と閾値(Threshold)が交差するサイクル数を意味し、PCR増幅産物の生成に由来する蛍光量がある所定量(閾値)に達するときのサイクル数を表す。Ct値は試料中に最初に含まれる標的DNA量が多い程小さく、逆に試料中に含まれる標的DNA量が少ない程大きくなる。上記工程(III)においては、被験試料のリアルタイムPCRによって得られた蛍光シグナルの強度レベル又はCt値を、上記検量線と比較することにより被験試料に含まれるヒトゲノムDNA量を算出することができる。

【0059】
(本発明のヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キット)
本発明の「ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キット」(以下、単に「本発明のキット」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対及び/又は上記本発明のプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キットであれば特に制限されない。本発明のキットには、一般にこの種の検出キットに用いられる成分(例えば、担体、pH緩衝剤、安定剤など)の他、取扱説明書等の添付文書を含んでいてもよい。また、本発明のキットには、標準試料として用いるためのヒトゲノムDNA、ネガティブコントロールとして用いるための非ヒト生物由来DNA(例えば、マウスゲノムDNA、ラットゲノムDNA、ギニアピッグゲノムDNA等)がさらに含まれていてもよい。

【0060】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
[Alu-qPCRの理論的検出限界値]
本発明者らは、以下の(1)~(4)の計算に基づいて、Alu-qPCRにより理論的には0.06~0.15fg程度のヒトゲノムDNAからAlu配列を検出することが可能であると算出した。
(1)ヒトゲノムDNAにおけるAlu配列の出現頻度
Alu配列はヒトゲノム全体に100万コピー以上存在している。ここで、ヒトゲノムDNAの全長は30億ヌクレオチド対であることから、以下の式1のように単純に出現頻度を計算すると、3000ヌクレオチド対の長さのヒトゲノムDNAに少なくとも1コピー以上のAlu配列が存在することになる。
[式1] 30億ヌクレオチド対/100万コピー=3000ヌクレオチド対
また、ヒト体細胞は2倍体であることを踏まえて、ヒトゲノムDNAにおけるAlu配列の出現頻度を重量に換算すると、1つのヒト体細胞に含まれるヒトゲノムDNA(30億ヌクレオチド対×2=60億ヌクレオチド対)の重量は6pgであり、1つのヒト体細胞に含まれるAlu配列は200万コピーであるから、Alu配列は0.003fgのヒトゲノムDNAに少なくとも1コピー以上存在することになる(式2)。
[式2] 6pg/200万コピー=0.003fg
【実施例1】
【0062】
(2)抽出工程後のヒトゲノムDNA断片のサイズ、数、及び重量
上述の通り、1つのヒト体細胞に含まれるヒトゲノムDNAの全長は60億ヌクレオチド対であるが、通常の方法によってヒト細胞からゲノムDNAを抽出すると、物理的な力が加わることによりゲノムDNAはランダムに切断され、2~5万ヌクレオチド対のDNA断片になることが知られている。すなわち、抽出工程後のヒトゲノムDNA断片は、それぞれが2~5万ヌクレオチド対の長さの、12~30万個のDNA断片に断片化される(式3)。
[式3] 60億ヌクレオチド対/2~5万ヌクレオチド対=12~30万断片
また、これを重量に換算すると、総重量6pgのヒトゲノムDNAが、12~30万個に断片化される計算になるので、それぞれの断片の重量は0.02~0.05fgとなる(式4)。
[式4] 6pg/12~30万断片=0.02~0.05fg
【実施例1】
【0063】
(3)抽出DNA断片含まれるAlu配列
上記(1)で述べたように、Alu配列は3000ヌクレオチド対のヒトゲノムDNAに1コピー以上含まれると考えられる。一方、上記(2)で述べたように、抽出されたヒトゲノムDNA断片は2~5万ヌクレオチド対の長さであるから、1つの断片には数個~十数個のAlu配列が含まれると想定できる。このような計算に基づき、本発明者らは、Alu配列の分布に偏りがある可能性を考慮しても、1つの断片に少なくとも1コピーのAlu配列が含まれると仮定できると判断した。
【実施例1】
【0064】
(4)Alu-qPCRに必要なヒトゲノムDNAの量
通常のリアルタイムPCR法においては、テンプレート中に標的配列が3コピー以上存在していれば、該標的配列を増幅して検出することが可能であるとされている。一方、上記(3)で述べたように、抽出後のヒトゲノムDNAにおいては、1つのDNA断片に1コピー以上のAlu配列が含まれると考えられることから、理論的には3つ以上のDNA断片が試料中に含まれていれば、リアルタイムPCR法によりAlu配列を検出することが可能である。すなわち、重量に換算すると、0.06~0.15fgのヒトゲノムDNAがテンプレート中に含まれていれば(式5)、リアルタイムPCR法によりAlu配列を検出することが可能である。以上のことから、理論的にはAlu-qPCRにより0.1fg程度のヒトゲノムDNAからAlu配列の検出が可能であると考えられる。
[式5] 0.02~0.05fg×3=0.06~0.15fg
【実施例2】
【0065】
[ゲノムDNAの精製方法の検討]
次に、本発明者らは、Alu-qPCRのテンプレートとして用いるゲノムDNAの精製方法について検討した。細胞や組織から抽出したゲノムDNAには、RNAが混入することが知られている(Sambrook, J. and Russel, D.W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor, NY.)。一般的には、RNAの混入はPCR反応を阻害しないと考えられており、Molecular Cloning等に記載のプロトコールにおいても、PCR用のサンプル(テンプレート)に含まれるにどの程度RNAが混入しているかはあまり注意を払われていない。
しかし、微量のDNAを鋳型としてPCRを行う場合には、大量のRNAの混入が増幅効率に影響を及ぼす可能性が考えられる。なぜなら、DNA-RNAの結合のほうがDNA-DNAの結合よりも安定であることから、プライマー・プローブがRNAにトラップされてしまい、本来の標的であるDNAにハイブリダイズできない可能性があるからである。したがって、本発明のAlu-qPCRのように、微量のヒトゲノムDNAの定量を行う場合には、テンプレートへのRNAの混入を最小限に抑える必要がある。
そこで、本発明者らは、RNAの混入を最小限に抑えるためのゲノムDNA抽出条件を検討した。具体的には、培養したヒト線維芽細胞(NHDF細胞)をトリプシンで剥離させて回収し、遠心分離した(400xg、室温、5分間)。得られた細胞ペレットをTBSで懸濁し、細胞数をカウントした。LoBindチューブ(エッペンドルフ社製)に100万細胞ずつ分注した後に遠心分離した(1000xg、4℃、10分間)。上清を除去した後に、TE(50μL)を加えて細胞をよく懸濁し、さらに、RNase A(Nippon Gene社製)及び/又はRNase T1(Invitrogen社製)を含むLysisバッファー(450μL)を加え、37℃で1時間インキュベートした。次に、プロテイナーゼK溶液(和光純薬工業社製)を最終濃度が100μg/mLとなるよう加え、50℃で一晩インキュベートした後に、同量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1(ナカライテスク社製;以下「PCI」と称する場合がある)を加えてボルテックスで混和した。遠心分離(最大速度、4℃、15分間)して、水層(上層)を回収し、再度PCIを加えてボルテックスで混和して遠心分離(最大速度、4℃、15分間)した。水層を回収して、0.2倍量の10M酢酸アンモニウム(Nippon Gene社製)及び2.5倍量の100%EtOH(和光純薬社製)を加えて転倒混和した後に、遠心分離した(最大速度、4℃、15分間)。上清を完全に除去して70%EtOHで洗浄し、ペレットを10分乾燥させた後に、TEバッファー(pH8.0)を適量加えてペレットを溶解させた。得られたサンプル中に含まれる核酸濃度を、紫外線吸光度法及びPicoGreen DNA定量法により測定した。紫外線吸光度法では、NanoDropを用いてA260の吸光度を測定した。また、PicoGreen DNA定量法では、Quant-iT(登録商標) PicoGreen(登録商標)dsDNA Reagent and Kits(Invitrogen社製)を用いて、該キットに添付の説明書に従ってDNAの定量を行った。
紫外線吸光度法により得られた核酸濃度を全核酸量(ゲノムDNA及びRNA)とし、また、PicoGreenDNA定量法で得られた核酸濃度をゲノムDNA量として、各抽出サンプルにおいてどの程度の割合でRNAが混入しているかを調べた。結果を図1に示す。RNase A及びRNase T1のいずれも使用しない場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は76.1%であった。また、RNase A(20又は200μg/mL)のみを使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちゲノムDNAが占める割合は60.5~43.3%であり、RNase T1(100U又は1000U)のみを使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は65.2~43.3%であった。これに対して、RNase A(20μg/mL)及びRNase T1(100U)を組み合わせて使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は58.6%であり、さらに、RNase A(200μg/mL)及びRNase T1(1000U)を組み合わせて使用した場合には、RNAが占める割合は32.0%であった。
Molecular Cloningには、細胞・組織からのゲノムDNA抽出プロトコールが複数記載されているが、それらのプロトコールではRNaseは全く使用されないか、又は、RNase Aのみが使用されている。図1の結果から、このようなMolecular Cloningに記載の一般的なプロトコールに従って抽出されたゲノムDNAには、多量のRNAが混入することが明らかとなった。また、ゲノムDNA抽出の際に200μg/mLのRNase Aと1000UのRNase T1とを組み合わせて使用することにより、RNAの混入を大幅に抑えることが可能であることが明らかとなった。これらの結果に基づいて、以下の実験では、細胞又は組織からのゲノムDNAの抽出の際に200μg/mLのRNase A及び1000U/mLのRNase T1によるRNA分解処理を行い、また、サンプル中のDNA濃度の測定は全てPicoGreenDNA定量法により行った。
【実施例3】
【0066】
[既知のプライマー・プローブセットの感度及び特異性の確認]
(1)既知のプライマー・プローブセット
本発明者らは、まず既に当該技術分野において使用されているプライマー・プローブセットの感度及び特異性を確認した。実験には、2003年にMcBrideらにより報告されたフォワードプライマー(CATGGTGAAACCCCGTCTCTA;配列番号1)、リバースプライマー(GCCTCAGCCTCCCGAGTAG;配列番号2)、及びプローブ(ATTAGCCGGGCGTGGTGGCG;配列番号3)を用いた(McBride et al., (2003) Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy, 5, 7-18.、Lee et al., (2009) Intravenous hMSCs improve myocardial infarction in mice because cells embolized in lung are activated to secrete the anti-inflammatory protein TSG-6. Cell Stem Cell, 5, 54-63.)。また、上記プローブの5’末端はFAMで、3’末端はTAMRAでそれぞれ標識した(以下、かかるプライマー・プローブセットを「McBrideのプライマー・プローブセット」と称する場合がある)。
【実施例3】
【0067】
(2)テンプレートの調製
PCRには、以下のテンプレート1~4を用いた。(なお、テンプレート3の調製にはEASY Dilutionバッファーを、テンプレート2及び4の調製にはTEバッファーをそれぞれ用いた。)
テンプレート1:バッファーのみ(TEバッファー、又はEASY Dilutionバッファー)
テンプレート2:50ng/μLのマウスゲノムDNA
テンプレート3:0.0005fg/μLから5ng/μLまでの11段階の濃度のヒトゲノムDNAのみを含むスタンダードサンプル
テンプレート4:0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、マウスゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
上記テンプレート3及び4を用いたPCRでは、得られた増幅曲線の適切な位置に閾値(Threshold)を設定してCt値(Threshold Cycle)を算出し、ヒトゲノムDNAの各量におけるCt値をプロットすることにより検量線を作成する。この検量線の直線性が認められる範囲が、PCRによる検出が可能なヒトゲノムDNAの量である。すなわち、テンプレート3及び4を用いることにより、ヒトゲノムDNAのみを含むサンプル、又はヒト及びマウスゲノムDNAを含む混合物サンプルに対する検出限界値を決定することができる。一方、上記テンプレート1及び2はネガティブコントロールサンプルであり、テンプレート1及び2を用いたPCRにより検出されるシグナルは非特異的なものである。すなわち、テンプレート1及び2におけるCt値が低いほどPCRの特異性が低いことを意味する。
【実施例3】
【0068】
(3)リアルタイムPCR
McBrideのプライマー・プローブセットと上記テンプレート1~4とを用いて、論文(McBride et al., (2003) Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy, 5, 7-18.、Lee et al., (2009) Intravenous hMSCs improve myocardial infarction in mice because cells embolized in lung are activated to secrete the anti-inflammatory protein TSG-6. Cell Stem Cell, 5, 54-63.)に記載された条件と同様の条件でPCRを行った。
【実施例3】
【0069】
(4)McBrideのプライマー・プローブセットによるリアルタイムPCRの結果
図2及び3に示すように、テンプレート1のCt値は30程度であり(図2及び3の「BUF.」)、テンプレート2のCt値も30程度であった(図3の「Mouse」)。また、図2に示すように、テンプレート3のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が1fg~1ngの間で直線性が認められた(図2)。これに対し、テンプレート4のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が1pg~10ngの間では直線性が認められたが、ヒトゲノムDNAの量が100fg以下では直線性は認められなかった(図3)。これらの結果から、McBrideのプライマー・プローブセットの検出限界値は、テンプレートがヒトゲノムDNAのみを含む場合には1fgであるが、テンプレートがヒトゲノムDNAとマウスゲノムDNAとを含む場合には1pgまで低下してしまうことが明らかとなった。これらの結果から、McBrideのプライマー・プローブセットは特異性が低く、微量のヒトゲノムDNAを検出・定量することはできないことが示された。
【実施例4】
【0070】
[ヒトAluモデル配列の同定]
以上のように、実施例3の結果はMcBrideのプライマー・プローブセットの感度及び特異性が低いことを示している。この原因として、本発明者らは、a)McBrideのプライマー・プローブセットがヒトゲノム中のAlu配列を十分にカバーするように設計されていない可能性があること、また、b)プライマー及び/又はプローブ同士での非特異的結合と、マウスゲノムDNAに対する非特異的結合とによりバックグラウンドが上昇することの2点にあると考えた。
そこで本発明者らは、上記a)の問題を解決するために、Alu配列に関する最新のデータ(Wheeler et al., Nucleic Acids Res, 41, D70-82. 2013)に基づいて、46のAluサブファミリーのコンセンサス配列を代表する一つの「ヒトAluモデル配列」を同定し、このヒトAluモデル配列を用いてヒトゲノム中のAlu配列の最も多くカバーするプライマー・プローブセットの設計を試みた。
具体的には、Dfam1.3データベースに登録されている46のAluサブファミリーの全てのコンセンサス配列を基に、ClustalW2プログラムを用いてマルチプルアライメントを作成した。さらに、作成したマルチプルアライメント全体を確認して一部を手動で再アライメントした後に、かかるマルチプルアライメントの各ポジションにおけるA、T、G、及びCの出現頻度を、46のサブファミリーごとの構成因子数(ヒトゲノム中のコピー数)を重率として算出して位置特異的スコアマトリックスを作成した(図4-1~図4-3)。本発明者らは、この位置特異的スコアマトリックスを使用して、ヒトゲノム中のAlu配列を最大数カバーする「ヒトAluモデル配列」の同定を試みた。
【実施例4】
【0071】
上記位置特異的スコアマトリックスに基づいて、ヒトAluモデル配列の原型を以下のように決定した。このヒトAluモデル配列の原型において、YはC又はTを、SはC又はGを、RはA又はGをそれぞれ示す。
ヒトAluモデル配列の原型(配列番号4):
GGCCGGGCGCGGTGGCTCACGCCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCCGAGGCGGGGGATCACTGAGGCAGGAGTTCGAGACCAGCCTGGCCAACATGGTGAAACCCCGTCTCTACTAAAAATACAAAAATTAGCCGGGCGTGGTGGCGGCCTGTATCCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCGGGAGGCGGAGGTTGCAGTGAGCCGAGATCGCGCCACTGCACTCCAGCCTGGGGACAGAGGAGACTCGTCTCAAAAAAAAAAAAAAAAAA
【実施例4】
【0072】
次に、上記ヒトAluモデル配列の原型において、「Y」、「S」、又は「R」で示した各ポジションを詳細に検討し、最終的に以下のヒトAluモデル配列を同定した(図5)。
ヒトAluモデル配列(配列番号5):
GGCCGGGCGCGGTGGCTCACGCCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCCGAGGCGGGCGGATCACTTGAGGTCAGGAGTTCGAGACCAGCCTGGCCAACATGGTGAAACCCCGTCTCTACTAAAAATACAAAAATTAGCCGGGCGTGGTGGCGCGTGCCTGTAATCCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCGGGAGGCGGAGGTTGCAGTGAGCCGAGATCGCGCCACTGCACTCCAGCCTGGGCGACAGAGCGAGACTCTGTCTCAAAAAAAAAAAAAAAAAA
【実施例5】
【0073】
[Primer3(初期設定)を用いたプライマー・プローブセットの設計]
次に、本発明者らは、プライマー設計プログラムPrimer3(Primer3web version 4.0.0)の初期設定を用いて、上記ヒトAluモデル配列の部分配列又はその相補配列からなる、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブの組合せを選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)及びii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列(ポジション#1~#300)を入力した。
i)Mispriming Library (repeat library):RODENT_AND_SIMPLE
ii)Pick hybridization probe (internal oligo), or use oligo below:チェックする
そして、出力された中から「quality」が最も高い(すなわち、「objective functionの値」が最も低い)プライマー及びプローブの組合せを選定した。選出された組合せは、フォワードプライマー:CGGATCACTTGAGGTCAGGA(配列番号6;ヒトAluモデル配列のポジション#57~#76)、リバースプライマー:GGTTCAAGCGATTCTCCTGC(配列番号7;ヒトAluモデル配列のポジション#206~#187の相補配列)、プローブ:TGGTGAAACCCCGTCTCTAC(配列番号8;ヒトAluモデル配列のポジション#100~#119)である(図6)。これらのプライマー及びプローブを合成し、さらに、プローブの5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した(以下、かかるプライマー及びプローブの組合せを「Primer3のプライマー・プローブセット」と称する場合がある)。
【実施例6】
【0074】
[Primer3のプライマー・プローブセット感度及び特異性]
(1)リアルタイムPCRの条件
実施例3に記載のテンプレート1、2、及び4と,実施例5に記載のPrimer3のプライマー・プローブセットとを用いて以下のようにPCRサンプルを調製した。
PCRサンプル調製:
テンプレート 2μL
TaqMan Universal Master MixII, no UNG
(Applied Biosystems社製) 10μL
フォワードプライマー(10μM) 0.4μL
リバースプライマー(10μM) 0.4μL
プローブ(12.5μM) 0.5μL
水 6.7μL
トータル 20μL
【実施例6】
【0075】
7500 real-time PCR instrument(Applied Biosystems社
製)を用いて、以上のように調製したPCRサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、60℃で1分のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
【実施例6】
【0076】
(2)Primer3のプライマー・プローブセットによるリアルタイムPCRの結果
図7に示すように、テンプレート1及び2のCt値は30~35程度であった(図7の「Buf.」及び「mouse」)。これらの結果は、McBrideのプライマー・プローブセットと同様に、プライマー・プローブセットでもプライマー・プローブ同士、及びプライマー・プローブとマウスゲノムDNAとの非特異的結合が起こっていることを示唆するものである。
また、図7に示すように、テンプレート4のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が100fg~10ngの間では直線性が認められたが、それ以下では直線性は認められなかった。これらの結果から、Primer3のプライマー・プローブセットを用いたAlu-qPCRの検出限界値は100fgであることが明らかとなった。以上のことから、ヒトAluモデル配列に基づいてPrimer3(初期設定)でプライマー・プローブセットを選定しても、McBrideのプライマー・プローブセットと同様の、低感度のプライマー・プローブセットしか得られないことが明らかとなった。
【実施例7】
【0077】
[プライマー対及びプローブ選定クライテリアの設定]
(1)クライテリアの設定
上記実施例3及び6の結果から、McBrideのプライマー・プローブセット及びPrimer3のプライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRでは、ヒトゲノムDNAを含まないネガティブコントロールサンプル(テンプレート1及びテンプレート2)においても非特異的なシグナルが検出されること、また、ヒトゲノムDNAとマウスゲノムDNAとを含むサンプル(テンプレート4)を用いた場合には、検出限界値が100fg~1pg程度まで大幅に低下することが明らかとなった。
以上のことから、本発明者らは、ネガティブコントロールサンプルで見られたような非特異的なシグナルによるバックグラウンドの増大が、リアルタイムPCRの検出感度を低下させる最も大きな要因となっていると考えた。そして、本発明者らは、Alu-qPCRの感度を上げるためには、プライマー及びプローブ配列の選定過程において、プライマー・プローブ間での非特異的結合、及び、プライマー・プローブとマウスゲノムDNAとの非特異的結合が起こるような配列を避ける必要があると考え、そのために独自のプライマー及びプローブ選定クライテリアを設定した。具体的には、プライマー対の選定のために以下のクライテリア1~7を設定し、さらに、プローブの選定のために以下のクライテリア8~15を設定した。なお、以下、クライテリア1~7を「プライマー用クライテリア」、クライテリア8~11を「プローブ用必須クライテリア」、クライテリア12~15を「プローブ用補足クライテリア」と称する場合がある。
【実施例7】
【0078】
(2)プライマー用クライテリア
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1~3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【実施例7】
【0079】
(3)プローブ用必須クライテリア
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【実施例7】
【0080】
(4)プローブ用補足クライテリア
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
【実施例7】
【0081】
(5)プライマー用クライテリアの説明
クライテリア1について:
本発明者らは、ヒトゲノムDNAと他生物のゲノムDNAとが混在したサンプルをテンプレートとして使用する場合に、プライマーによる他生物ゲノムDNAの非特異的な増幅を防ぐために、クライテリア1を設けた。本発明者らは、異種移植モデル動物の臓器におけるヒト細胞の検出を想定して、本実施例においては、クライテリア1における「非ヒト生物」として、マウス、ラット、及びギニアビッグを設定して以下の実験をおこなった。
クライテリア1を満たすヌクレオチド配列を選定するために、ヒトAluモデル配列のポジション#1~#282のヌクレオチド配列(ポジション#283~#300のポリAを除いたヌクレオチド配列)を入力配列として、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム全体のBLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:all assemblies top-level, Annotation Release 105
ラットゲノム:all assemblies, Annotation Release 105
ギニアピッグゲノム:Cavpor3.0 reference Annotation Release 102
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
上記パラメータは、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノムにおける、ヒトAluモデル配列のポジション#1~#282に含まれる19ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と100%マッチする領域を最大限抽出できるように設定したものである。BLAST検索の結果、ヒトAluモデル配列中の連続する19ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と100%マッチするヌクレオチド配列が、マウスでは6055か所、ラットでは2951か所、ギニアピッグでは13298か所存在することが分かった。続いて、これらのげっ歯類ゲノム中の相補配列の全てを抽出し、ヒトAluモデル配列上にマッピングした。さらに、各相補配列について、19ヌクレオチドの連続する部分配列が開始するヒトAluモデル配列中のポジションを特定した。
以上の結果を図8にまとめた。図8では、ヒトAluモデル配列のポジション#1~#264について、それぞれのポジションを開始点とする19ヌクレオチドの連続配列がマウス、ラット、及びギニアピッグゲノム中にいくつ存在するか示されている。例えば、図8のポジション#1においては、マウス、ラット、及びギニアピッグの欄はいずれも「0」と記載されている。これはポジション#1から開始する19ヌクレオチドの連続配列(ポジション#1~#19の配列)と同一のヌクレオチド配列が、マウス、ラット、及びギニアピッグのいずれのゲノムにも存在しないことを示している。また、図8のポジション#11においては、マウスの欄に「30」、ラットの欄に「24」、ギニアピッグの欄に「1162」とそれぞれ記載されている。これはポジション#11から開始する19ヌクレオチドの連続配列(ポジション#11~#20の配列)と同一のヌクレオチド配列が、マウスゲノム中には30箇所、ラットゲノム中には24箇所、ギニアピッグゲノム中には1162箇所存在することを示している。
図8において、本発明者らは、クライテリア2の「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さがそれぞれ20ヌクレオチド以上である」という条件も考慮して、ヒトAluモデル配列のポジション#1~#282のうち、クライテリア1を満たすことができるポジションは白で、クライテリア1を満たすことができないポジションはグレーでそれぞれ示した。
さらに、参考として、McBrideのプライマー・プローブセット及びPrimer3のプライマー・プローブセットのヌクレオチド配列中に、げっ歯類ゲノムとの19ヌクレオチドの完全相補配列が存在するかを検証した結果、Primer3のフォワードプライマーは3個、McBrideのフォワードプライマーは7個、McBrideのリバースプライマーは79個、McBrideのプローブは186個の完全相補配列が存在することが分かった。特に、McBrideのリバースプライマーは全長が19ヌクレオチドであるため、プライマー全体がげっ歯類ゲノム配列と完全にマッチする。上述の通り、McBrideのプライマー・プローブセットは、テンプレート4(ヒト及びマウスゲノムの混合サンプル)を用いた場合に感度が著しく低下するが、これはMcBrideのプライマーがげっ歯類ゲノム配列を認識することが原因であると考えられる。
【実施例7】
【0082】
クライテリア2について:
本発明者らのこれまでの経験から、プライマーに十分な特異性を持たせるためには、その長さが20ヌクレオチド以上であることが好ましいことが分かっている。このため、プライマー長を20ヌクレオチド以上とするクライテリア2を設定した。
【実施例7】
【0083】
クライテリア3について:
クライテリア1及び2により、げっ歯類ゲノムと19ヌクレオチド以上の相補性を有するプライマーはほとんど除去されるが、げっ歯類ゲノムと18ヌクレオチド以下の相補性を有するプライマーが依然として残っている。このため、本発明者らは、プライマー全長(20ヌクレオチド以上)が鋳型となるヌクレオチド配列とマッチする場合(すなわち、Alu配列に対して特異的に結合する場合)と、プライマーの内の18ヌクレオチドしか鋳型となるヌクレオチド配列にマッチしない場合(すなわち、Alu配列以外の配列に非特異的に結合した場合)との間でTm値の違いが最大となるようにプライマーを設計することで、PCRによる非特異的な増幅を防ごうと考えた。
全長が20ヌクレオチドであって、そのうちの連続する18ヌクレオチドがげっ歯類ゲノムに交叉するプライマーを想定すると、該プライマーの両末端の2ヌクレオチドはげっ歯類ゲノムと相補的結合を形成しない可能性がある。最近接塩基対法によるTm値の予測によれば、プライマー末端のヌクレオチドがテンプレートと相補的結合を形成しない場合、その末端のヌクレオチドがG又はCであるときは、A又はTのときと比較して、Tm値が低下することが知られている。このため、プライマーが特異的に結合した場合と、非特異的に結合した場合のTm値の差が最も大きくするために、プライマーの5’又は3’両末端のうち、少なくとも一方の末端をG又はCとすること、また、末端のヌクレオチドがG又はCでない場合には、末端から2番目のヌクレオチドをG又はCとするという、クライテリア3を設けた。
【実施例7】
【0084】
クライテリア4について:
プライマーと標的配列とが相補的に結合したときに、プライマーの3’末端側の結合の安定性が低くなるように(ギブスの自由エネルギーが高くなるように)設計した方が、プライマーの特異性が高いという報告がある(Rychlik, W. (1995) Selection of primers for polymerase chain reaction. Mol Biotechnol, 3, 129-134)。一方、クライテリア3は、プライマーの3’末端又は末端から2番目のヌクレオチドがG又はCとするように設定している。G又はCの自由エネルギーは、A又はTと比較して低いことから、クライテリア3によりプライマーの3’末端近傍の安定性が極端に高くなる可能性が考えられる。このような可能性を防ぐために、3’末端から1~3番目のヌクレオチドのうちの少なくとも一つをA又はTとするクライテリア4を設定した。
【実施例7】
【0085】
クライテリア5~7について:
プライマー同士での相補鎖の形成は、非特異的シグナル上昇や、増幅効率低下の原因となることが知られている。実際に、二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて確認したところ、Primer3のプライマー・プローブセットにおいては、フォワードプライマーの3’末端と、リバースプライマーとの間で連続5ヌクレオチドの相補鎖が形成されることが明らかとなった(図9)。本発明者らは、このようなプライマー間での相補鎖形成(ホモダイマー及び/又はヘテロダイマー形成)が、Primer3のプライマー・プローブセットによるAlu-qPCRのバックグラウンドの上昇と、それに伴う感度の低下の要因となっていると考えた。そこで、プライマー間での相補鎖形成が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア5~7を設定した。
【実施例7】
【0086】
(6)プローブ用必須クライテリアの説明
クライテリア8について:
クライテリア1~7を満たすプライマー対はヒトAlu配列に特異的なものであるが、非特異的なヌクレオチド配列の増幅が起こる可能性は0ではない。このため、非特異的な増幅産物にハイブリダイズしないプローブを用いることは、Alu-qPCRの特異性を高めるために重要である。したがって、非ヒト生物のゲノム配列を増幅しないようなヌクレオチド配列からなるプローブを選択するために、クライテリア8を設定した。
【実施例7】
【0087】
クライテリア9について:
本発明者らのこれまでの経験から、プローブに十分な特異性を持たせるためには、その長さが20ヌクレオチド以上であることが好ましいことが分かっている。このため、20ヌクレオチド以上のプローブを選択するために、クライテリア9を設定した。
【実施例7】
【0088】
クライテリア10及び11について:
プライマーとプローブ、又はプローブ同士での相補鎖形成は、非特異的なヌクレオチド配列の増幅や、標的とするヌクレオチド配列の増幅効率低下の原因となることが知られている。実際に、RNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて確認したところ、McBrideのプライマー・プローブセットにおいては、フォワードプライマーとプローブ、リバースプライマーとプローブ、及びプローブ同士の間で、G及びCのみからなる連続4ヌクレオチドの相補鎖が形成されることが明らかとなった(図10)。本発明者らは、このようなプライマー・プローブ間での相補鎖形成が、McBrideのプライマー・プローブセットによるAlu-qPCRのバックグラウンドの上昇と、それに伴う感度の低下の要因となっていると考えた。そこで、プライマーとプローブ、又はプローブ同士での相補鎖形成が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア10及び11を設定した。
【実施例7】
【0089】
(7)プローブ用補足クライテリアの説明
上記クライテリア8~11により、Alu-qPCR用プライマーとして使用可能なプローブを選定することができる。しかし、上記クライテリア8~11を満たすプローブが複数選定された場合には、クライテリア12~15のうち1以上のクライテリアを用いて、より望ましい性質を持つプローブを選定することができる。
【実施例7】
【0090】
クライテリア12について:
上述の通り、本発明者らは、McBrideのプライマー・プローブセットの感度が低下する原因の一つが、フォワードプライマーとプローブ、リバースプライマーとプローブ、及びプローブ同士の間で、G及びCのみからなる連続4ヌクレオチドの相補鎖が形成されることにあると考えた(図10)。そこで、このようなプライマー・プローブ間における相補鎖形成(ホモダイマー及び/又はヘテロダイマー形成)が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア12を設定した。
【実施例7】
【0091】
クライテリア13について:
種々の蛍光分子はグアニン塩基に近接することでクエンチングされることが知られている。このため、プローブの5’末端を蛍光物質により標識する場合には、該5’末端のヌクレオチドがGでないことが望ましい。このため、クライテリア13を設定した。
【実施例7】
【0092】
クライテリア14について:
上記「クライテリア10及び11について」で述べたように、プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間における結合安定化エネルギーが高いと、非特異的なヌクレオチド配列の増幅や、標的とするヌクレオチド配列の増幅効率低下が起こる可能性がある。このことから、プライマー・プローブ間で最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が-7kcal/mol以上となるプローブを選定するために、クライテリア14を設定した。
【実施例7】
【0093】
クライテリア15について:
加水分解プローブ法では、5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャー物質でそれぞれ標識したプローブを用いる。このプローブは鋳型にハイブリダイズしてもクエンチャーによって蛍光を発することはない。しかし、伸長反応の際に、プライマーを起点としたDNAの伸張が起こり、それが鋳型にハイブリダイズしたプローブの5’末端まで達すると、ポリメラーゼによってプローブが加水分解され、プローブから蛍光色素が遊離して蛍光を発する。従って、加水分解プローブ法においては、ポリメラーゼによるプライマーの伸張反応がプローブのハイブリダイズする位置に達する前に、プローブが鋳型とハイブリダイズしている必要がある。プローブの鋳型へのハイブリダイズは、プローブの長さが短いほど速やかに起こることが知られている。そこで、ヌクレオチド長が最も短いプローブを選択するために、クライテリア15を設定した。
【実施例8】
【0094】
[本発明のプライマー対の選定]
(1)プライマー候補の選定
プライマー設計プログラムPrimer3を用いてヒトAluモデル配列から、複数のプライマー候補配列を選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)~iii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列(ポジション#1~#300)を入力した。
i)Task値:pick_primer_list
ii)Numbers To Return値:150
iii)Mispriming Library (repeat library)値:RODENT_AND_SIMPLE
上記i)及びii)の設定は、設計できる全てのプライマー配列を得るためのものであり、上記iii)の設定はげっ歯類配列との交叉を避けるためのものである。この選定の結果、106個のフォワードプライマー候補、及び102個のリバースプライマー候補が得られた。
【実施例8】
【0095】
(2)クライテリア1~4を用いた選定
クライテリア1によるフォワードプライマーの選定は図8を用いて行った。具体的には、選定の対象となるプライマー候補の5’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42~56、63~67、85、88~95、99~111、121~127、137~139、187~238、244~249、及び252~260)である場合には該フォワードプライマーはクライテリア1を満たすと判断し、選定の対象となるフォワードプライマー候補の5’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1~35、37~41、57~62、68~84、86、87、96~98、112~120、128~136、140~186、239~243、250、251、及び261~264)である場合には該フォワードプライマーはクライテリア1を満たさないと判断した。また、クライテリア1によるリバースプライマーの選定においては、選定の対象となるプライマー候補の3’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42~56、63~67、85、88~95、99~111、121~127、137~139、187~238、244~249、及び252~260)である場合には該フォワードプライマー候補はクライテリア1を満たすと判断し、選定の対象となるフォワードプライマー候補の3’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1~35、37~41、57~62、68~84、86、87、96~98、112~120、128~136、140~186、239~243、250、251、及び261~264)である場合には該フォワードプライマー候補はクライテリア1を満たさないと判断した。この結果、上記106個のフォワードプライマー候補から、クライテリア1を満たすものとして49個の候補を選定し、また、上記102個のリバースプライマー候補から、クライテリア1を満たすものとして48個の候補を選定した。
【実施例8】
【0096】
続いて、クライテリア2~4による選定を目視にて行った結果、上記106個のフォワードプライマー候補のうち、クライテリア2を満たすものは64個、クライテリア3を満たすものは68個、クライテリア4を満たすものは93個であり、クライテリア1~4を全て満たすものは12個であった。さらに、上記102個のリバースプライマー候補のうち、クライテリア2を満たすものは59個、クライテリア3を満たすものは68個、クライテリア4を満たすものは79個であり、クライテリア1~4を全て満たすものは14個であった。
さらに、以上のようにして選定されたプライマー候補のうち、ヒトAluモデル配列のポジション#187又は#193を開始点とする2つのフォワードプライマー候補は、対になるリバースプライマーが存在しないために除外し、また、ヒトAluモデル配列のポジション#83、84、又は85を開始点とする6つのリバースプライマーは、対となるフォワードプライマーが存在しないために除外した。以上の結果、クライテリア1~4を満たすフォワードプライマー候補として表1に示す10個のヌクレオチド配列を、クライテリア1~4を満たすリバースプライマー候補として表2に示す8個のヌクレオチド配列を選定した。
【実施例8】
【0097】
【表1】
JP2018101375A1_000002t.gif
【実施例8】
【0098】
【表2】
JP2018101375A1_000003t.gif
【実施例8】
【0099】
(3)クライテリア5~7を用いた選定
Rochester大学のMathews Lab(http://rna.urmc.rochester.edu/index.html)から提供される二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて、表1及び表2に示されるプライマー候補の中からクライテリア5~7を満たす組合せを選定した。
具体的には、まず、表1及び表2に示されるプライマー候補のそれぞれについて、同一のヌクレオチド配列からなる2つの分子間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、i)いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;ii)いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;iii)いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;というi)~iii)の条件を満たすプライマー候補を選定した。その結果、表1に記載の10個のフォワードプライマー候補のうち、上記i)を満たすものは7個、上記ii)を満たすものは10個、上記iii)を満たすものは10個であり、上記i)~iii)を全て満たすものは7個であった。また、表2に記載の8個のリバースプライマー候補のうち、上記i)を満たすものは8個、上記ii)を満たすものは6個、上記iii)を満たすものは5個であり、上記i)~iii)を全て満たすものは5個であった。
以上の解析により、上記i)~iii)を全て満たすと判断された7個のフォワードプライマー候補と、5個のリバースプライマー候補とを選定し、続いて、フォワード及びリバースプライマーの組合せの二次構造予測を行った。これらのフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとして考えられる35パターンについて、それぞれの二次構造をRNAstructureにより予測し、上記i)~iii)の条件を全て満たす組合せを探した。その結果、フォワードプライマー候補F10とリバースプライマー候補R1との組合せのみが上記i)~iii)を全て満たすことが分かった。以上の結果から、クライテリア1~7を満たすプライマーとして、フォワードプライマーF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)及びリバースプライマーR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)が選定された。
【実施例9】
【0100】
[本発明のプローブの選定]
(1)プローブの必要性について
リアルタイムPCRにおいて蛍光を検出する方法としては、増幅産物に非特異的に結合する試薬を用いるインターカレーター法と、増幅産物に特異的なヌクレオチド配列に結合する試薬を用いるプローブ法の2種類がある。インターカレーター法では非特異的なヌクレオチド配列も検出されてしまうため、特異性の観点からプローブ法の方が優れていると一般的に考えられている。また、本発明では、リアルタイムPCRによりサンプルに含まれるAluのコピー数を測定することを目指しているが、ゲノム中ではAlu同士の距離が20ヌクレオチド以下となるような非常に近い位置に存在する場合も多いため(Stenger, J.E., Lobachev, K.S., Gordenin, D., Darden, T.A., Jurka, J. and Resnick, M.A. (2001) Biased distribution of inverted and direct Alus in the human genome: implications for insertion, exclusion, and genome stability. Genome Res, 11, 12-27.)、PCR酵素の伸張時間などによって単一のAluのみを増幅する条件を設定することはほとんど不可能である。このため、本発明者らは、リアルタイムPCRによるAlu定量のためにはプローブ法が適していると考え、実施例8で選定したフォワード及びリバースプライマー(F10及びR1)と組み合わせて使用するプローブの選定を行った。
【実施例9】
【0101】
(2)プローブ候補の選定
プライマー設計プログラムPrimer3を用いて、フォワードプライマーF10及びリバースプライマーR1により増幅される領域におけるプローブ候補を選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)~vii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列のポジション#120~#186のヌクレオチド配列を入力した。
i)Pick left primer, or use left primer below値:チェックを外す
ii)Pick right primer, or use right primer below (5' to 3' on opposite strand)値:チェックを外す
iii)Pick hybridization probe (internal oligo), or use oligo below値:チェックする
iv)Task値:pick_primer_list
v)Numbers To Return値:100
vi)Internal Oligo Mishyb Library値:RODENT_AND_SIMPLE
vii)Internal Oligo TmのMax値:68℃
上記i)~vii)の設定はプローブを設計するためのものであり、上記iv)及びv)の設定は設計できる全てのプライマー配列を得るためのものであり、上記vi)の設定はげっ歯類配列との交叉を避けるためのものである。また、上記vii)の設定は、プローブのTm値はプライマーのTmより10℃程度高いことが望ましいという報告に基づいたものである(Holland, P.M., Abramson, R.D., Watson, R. and Gelfand, D.H. (1991) Detection of specific polymerase chain reaction product by utilizing the 5'----3' exonuclease activity of Thermus aquaticus DNA polymerase. Proc Natl Acad Sci U S A, 88, 7276-7280.、Bustin, S.A. (2000) Absolute quantification of mRNA using real-time reverse transcription polymerase chain reaction assays. Journal of molecular endocrinology, 25, 169-193.)。この選定の結果、76個のプローブ候補が得られた。
【実施例9】
【0102】
(3)クライテリア8及び9を用いた選定
クライテリア8によるプローブの選定は、クライテリア1と同様に、図8を用いて行った。具体的には、選定の対象となるプローブ候補の5’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42~56、63~67、85、88~95、99~111、121~127、137~139、187~238、244~249、及び252~260)である場合には該プローブ候補はクライテリア8を満たすと判断し、選定の対象となるプローブ候補の5’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1~35、37~41、57~62、68~84、86、87、96~98、112~120、128~136、140~186、239~243、250、251、及び261~264)である場合には該プローブ候補はクライテリア8を満たさないと判断した。その結果、上記76個のプローブ候補のうち、25個がクライテリア8を満たすことが分かった。さらに、この25個のプローブ候補から、クライテリア9による選定を目視にて行い、20個のプローブ候補を選定した。
選定された20個のプローブ候補はいずれもヒトAluモデル配列のポジション#121~#146の領域内のヌクレオチド配列であった。ここで、本発明者らは、ヒトAluモデル配列のポジション#121~#146の領域中に、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中の19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列が含まれていないかを再度確認した。具体的には、ヒトAluモデル配列のポジション#121~#146のヌクレオチド配列を入力配列として、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム全体のBLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:all assemblies top-level, Annotation Release 105
ラットゲノム:all assemblies, Annotation Release 105
ギニアピッグゲノム:Cavpor3.0 reference Annotation Release 102
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
このBLAST検索の結果、ヒトAluモデル配列のポジション#128を開始点とする19ヌクレオチドのヌクレオチド配列(ポジション#128~#146)と100%マッチするヌクレオチド配列が、げっ歯類ゲノム中に存在することが新たに分かった。この結果を考慮すると、クライテリア8及び9の両方を満たすプローブ候補は以下の表3に示す13個に絞られた。また、プローブはセンス鎖・アンチセンス鎖のどちらであってもよいので、表3に示す13個のプローブ配列に加えて、表4に示すそれらの相補配列もプローブ候補として選定した。
【実施例9】
【0103】
【表3】
JP2018101375A1_000004t.gif
【実施例9】
【0104】
【表4】
JP2018101375A1_000005t.gif
【実施例9】
【0105】
(4)クライテリア10及び11を用いた選定
Rochester大学のMathews Lab(http://rna.urmc.rochester.edu/index.html)から提供される二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて、表3及び4に示されるプローブ候補の中からクライテリア10及び11を満たすものを選定した。具体的には、まず、表3及び表4に示される26個のプローブ候補のそれぞれについて、同一のヌクレオチド配列からなる2つの分子間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、i)いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;ii)いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;というi)及びii)の条件を満たすか否かを確認した。その結果、表3及び4に記載の26個のプローブ候補全てが、上記i)及びii)を満たすことが分かった。
次に、表3及び表4に示される26個のプローブ候補のそれぞれと、フォワードプライマーF10及びリバースプライマーR1との間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、上記i)及びii)の条件を満たすか否かを確認した。その結果、表3及び4に記載の26個のプローブ候補全てが、上記i)及びii)を満たすことが分かった。以上のことから、表3及び4に記載の26個のプローブ候補はいずれも、クライテリア10及び11を満たすことが分かった。
【実施例9】
【0106】
本発明者らは、上記26個のプローブは同程度のプローブとしての機能を有するであろうと予測したが、より好ましい性質を有するプローブを得るために、プローブ用補足クライテリア(クライテリア12~15)を用いてさらなる選定を行った。具体的には、まず、上記26個の候補から、クライテリア12を満たす13個の候補(プローブP14~P26)を選定した。次に、これらの13個の候補から、クライテリア13を満たす11個(P16~P26)の候補を選定した。さらに、これらの11個の候補から、クライテリア14を満たす7個の候補(P14~P20)を選定した。最後に、これらの7個の候補から、クライテリア15を満たすP16を選定した。図11に、選定されたフォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16のヒトAluモデル配列における位置を示した。また、図12に、RNAstructureを用いて予測されたフォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16の間の二次構造を示す。
また、本発明者らは、クライテリア8~15を満たすP16は最もプローブに適していると考えられるが、クライテリア8~11、13、及び15を満たすP11とP13、クライテリア8~13、及び15を満たすP21も、P16と同程度のプローブとしての機能を果たすであろうと予測した。したがって、本発明者らは、P11、P13、P16、及びP21を本発明のプローブとして選択した。
【実施例10】
【0107】
[本発明のプライマー・プローブセットA~D]
以上のようにして、本発明のAlu-qPCRに用いるフォワードプライマーとしてF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)が、リバースプライマーとしてR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)が、プローブとしてP11(ATACAAAAATTAGCCGGGCG;配列番号37)、P13(TACAAAAATTAGCCGGGCGT;配列番号39)、P16(CGCCCGGCTAATTTTTGTAT;配列番号42)、及びP21(ACGCCCGGCTAATTTTTGTA;配列番号47)が選定された。
以下、プローブP16、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットA」と、プローブP11、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットB」、プローブP13、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットC」と、プローブP21、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットD」と、それぞれ称する場合がある。さらに、上記本発明のプライマー・プローブセットA~Dを総称して「本発明の20ntのプライマー・プローブセット」と称する場合がある。
【実施例11】
【0108】
[本発明のプライマー・プローブセットAの感度及び特異性の確認]
(1)リアルタイムPCRの条件
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、実施例3に記載のテンプレート1~4に加えて、以下のテンプレート5及び6を用いた(なお、テンプレート5及び6の調製にはTEバッファーを用いた)。
テンプレート5:50ng/μLのラットゲノムDNA
テンプレート6:0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ラットゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
本発明のプライマー・プローブセットAと上記テンプレート1~6とを用いて以下のようにPCRサンプルを調製した。
テンプレート 2μL
TaqMan Universal Master MixII, no UNG
(Applied Biosystems社製) 10μL
フォワードプライマー(10μM) 0.4μL
リバースプライマー(10μM) 0.4μL
プローブ(12.5μM) 0.5μL
水 6.7μL
トータル 20μL
7500 real-time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いて、以上のように調製したPCRサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
【実施例11】
【0109】
(2)本発明のプライマー・プローブセットAによるリアルタイムPCRの結果
図13~15に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は40程度か、又は、シグナルが全く検出されない場合もあった(図13及び14の「Buf.」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットAにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート2及び5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図14の「Mouse」、図15の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットAはマウス及びラットゲノムDNAのいずれにも非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート3のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が0.1fg~1ngの間で直線性が認められた(図13)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAのみを含む場合には、本発明のプライマー・プローブセットAにより0.1fgまでの検出が可能であることが明らかとなった。また、テンプレート4のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図14)。さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図15)。すなわち、ヒトゲノムDNAとマウス又はラットゲノムDNAとを含むサンプルをテンプレートとして用いた場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットAにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
【実施例12】
【0110】
[本発明のプライマー・プローブセットCの感度及び特異性の確認]
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP13を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、本発明のプライマー・プローブセットCと、上記テンプレート1、3、5、及び6とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real-time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
【実施例12】
【0111】
(1)本発明のプライマー・プローブセットCによるリアルタイムPCRの結果
図16に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は50程度であった(図16の「Buf.」)。これの結果は、本発明のプライマー・プローブセットCにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図16の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットCはラットゲノムDNAに非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図16)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAとラットゲノムDNAとを含む場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットCにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットCを用いたAlu-qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
【実施例13】
【0112】
[本発明のプライマー・プローブセットDの感度及び特異性の確認]
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP21を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、本発明のプライマー・プローブセットDと、上記テンプレート1、3、5、及び6とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real-time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
【実施例13】
【0113】
(1)本発明のプライマー・プローブセットDによるリアルタイムPCRの結果
図17に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は検出できなかった(図17の「Buf.」)。これの結果は、本発明のプライマー・プローブセットDにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図17の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットDはラットゲノムDNAに非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図17)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAとラットゲノムDNAとを含む場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットDにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットDを用いたAlu-qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
【実施例14】
【0114】
[マウスに異種移植したヒト細胞の検出]
(1)異種移植モデルマウスの作製とDNAの抽出
NOD-scidマウス(7週齢、雄)の尾静脈に、50万細胞のヒト間葉系幹細胞(ヒトMSC)を注射投与して異種移植モデルマウスを作製した(計18例)。投与から1日、3日、及び1週間後にマウスを安楽死させて肺、腎臓、肝臓を摘出し(各6例ずつ)、すぐに液体窒素で凍結させて-80℃で保存した。各臓器を凍結粉砕して、200μg/mLのRNase A及び1000U/mLのRNase T1を含むLysisバッファーを加え、37℃で1時間インキュベートした。続いて、プロテイナーゼK溶液(和光純薬工業社製)を最終濃度が100μg/mLとなるよう加え、50℃で2晩インキュベートした後に、同量のPCI(ナカライテスク社製)を加えてボルテックスで混和した。遠心分離(最大速度、4℃、15分間)して、水層(上層)を回収し、再度PCIを加えてボルテックスで混和して遠心分離(最大速度、4℃、15分間)した。水層を回収して、0.2倍量の10M酢酸アンモニウム(Nippon Gene社製)及び2.5倍量の100%EtOH(和光純薬社製)を加えて転倒混和した後に、遠心分離した(最大速度、4℃、15分間)。上清を完全に除去して70%EtOHで洗浄し、ペレットを10分間風乾させた後に、TEバッファー(pH8.0)を適量加えてペレットを溶解させた。得られたサンプル中に含まれるDNA濃度をPicoGreen DNA定量法により測定した。また、ヒトMSCを投与していないコントロールマウス(計3例)からも肺、腎臓、及び肝臓を採取し、上記と同様の方法でゲノムDNAを抽出して定量した。
【実施例14】
【0115】
(2)テンプレートの調製
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート7~15を調製した。なお、テンプレート9、12、及び15は定量対象サンプルであり、異種移植モデルマウスの各臓器から抽出したゲノムDNAを50ng/μLとなるように希釈して作製した。テンプレート7、10、及び13はそれぞれ、テンプレート9、12、及び15に対応するネガティブコントロールサンプルである。また、テンプレート8、11、及び14はそれぞれ、テンプレート9、12、及び15の定量のための検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。なお、テンプレート7~15の調製にはTEバッファーを用いた。
テンプレート7:
50ng/μLのコントロールマウスの肺由来のゲノムDNA
テンプレート8:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肺由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート9:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの肺由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート10:
50ng/μLのコントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNA
テンプレート11:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート12:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの腎臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート13:
50ng/μLのコントロールマウスの肝臓由来のゲノムDNA
テンプレート14:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肝臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート15:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの肝臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
【実施例14】
【0116】
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート7~15とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real-time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いて、調製したサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
【実施例14】
【0117】
(4)異種移植モデルマウスの肺に含まれるヒト細胞の算出
テンプレート8により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた(図18(a))。この検量線に基づいて、テンプレート9に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後のサンプルには、それぞれ、平均24.775pg/μL、3.186pg/μL、及び0.232pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった。また、この数値に、テンプレート9を調製の際の希釈倍率と、肺から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの肺全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後の肺全体には、それぞれ、79345.527pg、8851.071pg、及び674.765pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの肺全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の肺には1万個以上のMSCが存在するが、3日後には1316個、1週間後には74個に減少することが分かった(図18(b))。
【実施例14】
【0118】
(5)異種移植モデルマウスの腎臓に含まれるヒト細胞の算出
テンプレート11により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図19(a))。この検量線に基づいて、テンプレート12に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後のサンプルには、それぞれ、平均0.0782pg/μL、0.0095pg/μL、及び0.0014pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図19(a))。また、この数値に、テンプレート12を調製の際の希釈倍率と、腎臓から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの腎臓全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後の腎臓全体には、それぞれ、1260.5989pg、165.4567pg、及び25.8333pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの腎臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の腎臓には191個のMSCが存在しており、3日後には22個、1週間後には4個に減少することが分かった(図19(b))。以上のことから、異種移植モデルマウスにおいて、移植から1週間後でもMSCが腎臓に存在していることが明らかとなった。従来の報告では、尾静注によってヒト細胞を移植された異種移植モデルマウスにおいては、肺以外にはヒト細胞の生着は認められないとされていた。図19に示す結果は、移植されたヒトMSCが、マウス腎臓に生着することを示すはじめての結果である。
【実施例14】
【0119】
(6)異種移植モデルマウスの肝臓に含まれるヒト細胞の算出
テンプレート14により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた(図20(a))。この検量線に基づいて、テンプレート15に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日後のサンプルには、平均0.023pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図20(a))。3日後、1週間後のサンプルは検出限界以下であった。また、この数値に、テンプレート15を調製の際の希釈倍率と、肝臓から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの肝臓全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日後の肝臓全体には、715.940pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの肝臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の肝臓には107個のMSCが存在していたが、3日後及び1週間後では検出限界以下となることが分かった(図20(b))。
【実施例15】
【0120】
[マウス腎皮膜下に移植したヒト細胞の検出]
(1)腎皮膜下移植モデルマウスの作製とDNAの抽出
培養したヒト線維芽細胞(NHDF細胞)をPBS中に懸濁して段階希釈することにより、1000細胞/50μL、100細胞/50μL、及び10細胞/50μLの細胞懸濁液を調製した。イソフルランを用いてマウスに麻酔をかけ、背部を切って腎臓を露出させた後、腎皮膜を破らないように注射針(30G)を刺し、上記細胞懸濁液(それぞれ50μL)を注射投与した。手術部位を縫合して12時間後にマウスを安楽死させ、腎臓を摘出し、すぐに液体窒素で凍結させて-80℃で保存した。実施例14と同様の方法により、腎臓からゲノムDNAを抽出して濃度を測定した。
【実施例15】
【0121】
(2)テンプレートの調製とリアルタイムPCR
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート16及び17を調製した。テンプレート17は定量対象サンプルであり、テンプレート16は検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。これらのテンプレートと本発明のプライマー・プローブセットAとを用いて、実施例14と同様の条件でPCRを行った。なお、テンプレート16及び17の調製にはTEバッファーを用いた。
テンプレート16:
腎皮膜下移植モデルマウスの腎臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート17:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
【実施例15】
【0122】
(3)腎皮膜下移植モデルマウスに含まれるヒト細胞の算出
上記PCRによって、10、100、及び1000細胞のNHDF細胞が移植されたマウス腎臓におけるヒトゲノムDNA量を定量した。PCRの結果に基づいて、各マウス腎臓におけるヒト細胞の数を算出したところ、10細胞を移植した腎臓では3個程度の、100細胞を移植した腎臓では50個程度の、1000細胞を移植した腎臓では300個程度のヒト細胞が存在することが明らかとなった(図21)。
【実施例16】
【0123】
[様々な動物種ゲノムに対する本発明のプライマー・プローブセットAの交叉性]
本発明のプライマー・プローブセットAが、様々な動物種ゲノムに対して交叉する可能性を調べた。具体的には、フォワードプライマーF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)、リバースプライマーR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)、及びプローブP16(CGCCCGGCTAATTTTTGTAT;配列番号42)のそれぞれに含まれる16~20ヌクレオチドの配列について、様々な生物種(マウス、ラット、ギニアピッグ、クマ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、ブタ、及び微生物)のゲノム全体に対するBALST検索を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:GPIPE/10090/105/all_top_level
ラットゲノム:GPIPE/10116/105/all_top_level
ギニアピッグゲノム:GPIPE/10141/102/ref_top_level
クマゲノム:GPIPE/29073/100/ref_top_level
ウシゲノム:GPIPE/9913/105/ref_top_level
ウサギ:GPIPE/9986/102/ref_top_level
ニワトリ:GPIPE/9031/103/ref_top_level
ブタ:GPIPE/9823/105/ref_top_level
微生物:prok_complete_genomes及びref_prok_rep_genomes
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
【実施例16】
【0124】
BLAST検索の結果、フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16に含まれる16以上の連続する配列は、マウス、ラット、ギニアピッグ、クマ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、ブタ、及び微生物のいずれにも殆ど存在しないことが明らかとなった(図22)。なお、図22に示すように、ウシ及び微生物のゲノム中には、上記本発明のプライマーと20塩基連続して同一の配列が見いだされた。しかし、これらの結果は、ウシ及び微生物ゲノムのデータベースにヒトゲノム配列の一部が誤って登録されていることに起因するものである可能性が高いと考えられる。なぜなら、微生物ゲノムにおける当該配列の周辺を詳細に調べると、かかる配列は、1)Aluモデル配列全体と相同性を示し、また、2)微生物ゲノム中の位置が不明で孤立しており、さらに、3)ヒトゲノム配列との相同性が極めて高いものであるからである。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRにより、様々な動物種のゲノムDNAが混在するサンプルにおいてもAluを特異的に検出・定量できることが示された。
【実施例17】
【0125】
[断片化されたヒトゲノムDNA(20kbp~250bp)の定量]
(1)ヒトゲノムDNAの断片化
本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRにより、断片化されたヒトゲノムDNAをどの程度の感度で定量することが可能かを調べた。具体的には、DNA Shearing システム M220(コバリス社製)を用いて、ヒトゲノムDNAを3つのサイズ(20kbp、1000bp、及び250bp)に断片化した。そして、LabChip GX Touchシステム(パーキンエルマー社製)を用いて、DNAが所望の長さに断片化されていることを確認した(図23~25)。
(2)テンプレートの調製
次に、上記(1)により作製した断片化ヒトゲノムDNA(20kbp、1000bp、及び250bp)を、EASY Dilutionバッファーを用いて段階希釈し、以下のようにテンプレート18~20を調製した。
テンプレート18:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、20kbpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
テンプレート19:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、1000bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
テンプレート20:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、250bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート18~20とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)断片化DNAに対する感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図26~28に示す。テンプレート18~20(20kbp、1000bp、及び250bpの長さの断片化DNAを用いたスタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、いずれの場合でも10fg~10ngの間で検量線の直線性が認められた(図26~28)。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRは、定量対象サンプルに含まれるDNAが高度に断片化されている場合であっても、その感度を維持できることが示された。
【実施例18】
【0126】
[家畜・ペット動物由来ゲノムDNAが混在したサンプルにおける定量]
(1)ニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAの抽出
家畜・ペット動物由来ゲノムDNAが混在したサンプルにおける、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRの定量限界を調べた。具体的には、市販の食用ニワトリ肉、ブタ肉、及びウシ肉を液体窒素で凍結し、実施例14と同様の方法によりそれぞれのゲノムDNAを抽出して濃度を測定した。また、イヌ(ビーグル)から採取した血液(1mL)から、QIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、実施例14と同様の方法で濃度を測定した。
(2)テンプレートの調製
上記(1)により抽出したニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート21~28を調製した。テンプレート21、23、25、及び27はそれぞれ、テンプレート22、24、26、及び28に対応するネガティブコントロールサンプルである。
テンプレート21:
50ng/μLのニワトリゲノムDNA
テンプレート22:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ニワトリゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したニワトリゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート23:
50ng/μLのブタゲノムDNA
テンプレート24:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ブタゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したブタゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート25:
50ng/μLのウシゲノムDNA
テンプレート26:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ウシゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したウシゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート27:
50ng/μLのイヌゲノムDNA
テンプレート28:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、イヌゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したイヌゲノム混合スタンダードサンプル
【実施例18】
【0127】
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート21~28とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)家畜・ペット動物由来ゲノムDNA混合サンプルにおける感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図29~32に示す。テンプレート22(ニワトリゲノム混合スタンダードサンプル)及び26(ウシゲノム混合スタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が1fg~10ngの間で直線性が認められた(図29及び31)。また、テンプレート24(ブタゲノム混合スタンダードサンプル)及び28(イヌゲノム混合スタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg~10ngの間で直線性が認められた(図30及び32)。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu-qPCRによれば、ニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAが多量に混在したサンプルからでも、微量のヒトゲノム(検出限界:1~10fg)を特異的に検出・定量することが可能であることが示された。
【実施例19】
【0128】
[陳旧試料の定量]
(1)古人骨からのDNAの抽出
古人骨等の陳旧試料に含まれるヒトゲノムDNAは、微量かつ断片化が進んでいること、また、土壌中に存在する様々な他生物ゲノムDNAによって汚染されていることから、その定量は困難であることが知られている。本実験では、本発明のAlu-qPCRによって江戸時代(1600~1800年ごろ)の古人骨由来のサンプル中に含まれるヒトゲノムDNAの定量を行った。具体的には、江戸時代古人骨(畑内遺跡から出土した3個体;以下それぞれ「畑内17号」、「畑内26号」、「畑内45号」と称する)からAdachi et al.(Phylogenetic analysis of the human ancient mitochondrial DNA. J. Archaeol. Sci., 31, 1339-1348. 2004)に記載の方法によって採取された試料を以下の実験に用いた。
(2)テンプレートの調製
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート29~32を調製した。なお、テンプレート30~32は定量対象サンプルであり、古人骨から抽出した1μLのゲノムDNAサンプルを用いた。また、テンプレート29は、テンプレート30~32の定量のための検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。
テンプレート29:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、1kbpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル
テンプレート30:
畑内17号由来のサンプル
テンプレート31:
畑内26号由来のサンプル
テンプレート32:
畑内45号由来のサンプル
【実施例19】
【0129】
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート29~32とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)古人骨由来サンプルの定量
テンプレート29~32のリアルタイムPCRにより得られた増幅曲線を図33に、テンプレート29のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて作成した検量線を図34にそれぞれ示す。図33に示すように、古人骨由来サンプル(テンプレート30~32)の増幅曲線はいずれも検量線が直線の範囲(10fg~10ng)に入っており、本発明のAlu-qPCRによって正確に定量できることが明らかとなった。また、図34に示す検量線に基づいて、テンプレート30~32に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した結果、畑内17号、畑内26号、及び畑内45号由来のサンプルには、それぞれ2.19pg/μL、0.11pg/μL、及び0.61pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図35)。
【実施例20】
【0130】
[本発明と従来技術との比較]
(1)プローブ法による従来技術と本発明との比較
既知のプローブ法によるAlu-qPCR用PCRプライマー・プローブセット(以下の文献1~5に記載されたプライマー・プローブセット)が、上記クライテリア1~11を満たすか否かを確認した。その結果、図36に示すように、既知のプローブ法によるAlu-qPCR用PCRプライマー・プローブセットはいずれも、「本発明のプライマー対設計方法」及び「本発明のプローブ設計方法」を満たすものではないことが明らかとなった。
文献1:McBride, C., Gaupp, D. & Phinney, D. G. Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy 5, 7-18 (2003).
文献2:Nicklas, J. A. & Buel, E. Simultaneous determination of total human and male DNA using a duplex real-time PCR assay. J. Forensic Sci. 51, 1005-1015 (2006).
文献3:Preston Campbell, J. et al. TRIzol and Alu qPCR-based quantification of metastatic seeding within the skeleton. Sci. Rep. 5, 12635; 10.1038/srep12635 (2015).
文献4:Walker, J. A. et al. Multiplex polymerase chain reaction for simultaneous quantitation of human nuclear, mitochondrial, and male Y-chromosome DNA: application in human identification. Anal. Biochem. 337, 89-97 (2005).
文献5:Zhang, W. et al. Development and qualification of a high sensitivity, high throughput Q-PCR assay for quantitation of residual host cell DNA in purification process intermediate and drug substance samples. J. Pharm. Biomed. Anal. 100, 145-149 (2014).
【実施例20】
【0131】
さらに、上記の既知プライマー・プローブセットのTm値を算出するとともに、各配列についてヒト及びげっ歯類ゲノムに対するBLAST検索した。その結果、図37に示すように、上記文献1、3~5のプライマー・プローブセットでは、プローブのTm値がプライマーのそれよりも5~10度程度高く設計されていた。また、上記文献1~5のプライマー・プローブセットはいずれも、その中に含まれる連続する18塩基からなる配列と同一の配列が、マウス、ラット及び/又はギニアピッグのゲノム中に2ヶ所以上存在することが明らかとなった(図37)。
【実施例20】
【0132】
(2)インターカレーター法(SYBR Green)による従来技術と本発明との比較
既知のインターカレーター法によるAlu-qPCR用PCRプライマーセット(以下の文献6~13に記載されたプライマーセット)が、上記クライテリア1~7を満たすか否かを確認した。さらに、上記の既知プライマー・プローブセットのTm値を算出するとともに、各配列についてヒト及びげっ歯類ゲノムに対するBLAST検索した。
その結果、図38に示すように、既知のインターカレーター法によるAlu-qPCR用PCRプライマーセットはいずれも、「本発明のプライマー対設計方法」を満たすものではないことが明らかとなった。また、以下の文献6~13のプライマーセットはいずれも、その中に含まれる連続する18塩基からなる配列と同一の配列が、マウス、ラット及び/又はギニアピッグのゲノム中に2ヶ所以上存在することが明らかとなった。
文献6:Mira, E., Lacalle, R. A., Gomez-Mouton, C., Leonardo, E. & Manes, S. Quantitative determination of tumor cell intravasation in a real-time polymerase chain reaction-based assay. Clin. Exp. Metastasis 19, 313-318 (2002).
文献7:Nehmann, N., Wicklein, D., Schumacher, U. & Muller, R. Comparison of two techniques for the screening of human tumor cells in mouse blood: quantitative real-time polymerase chain reaction (qRT-PCR) versus laser scanning cytometry (LSC). Acta Histochem. 112, 489-496 (2010).
文献8:Nicklas, J. A. & Buel, E. Development of an Alu-based, real-time PCR method for quantitation of human DNA in forensic samples. J. Forensic Sci. 48, 936-944 (2003).
文献9:Opel, K. L., Fleishaker, E. L., Nicklas, J. A., Buel, E. & McCord, B. R. Evaluation and quantification of nuclear DNA from human telogen hairs. J. Forensic Sci. 53, 853-857 (2008).
文献10:Schneider, T., Osl, F., Friess, T., Stockinger, H. & Scheuer, W. V. Quantification of human Alu sequences by real-time PCR--an improved method to measure therapeutic efficacy of anti-metastatic drugs in human xenotransplants. Clin. Exp. Metastasis 19, 571-582 (2002).
文献11:Umetani, N. et al. Increased integrity of free circulating DNA in sera of patients with colorectal or periampullary cancer: direct quantitative PCR for ALU repeats. Clin. Chem. 52, 1062-1069 (2006).
文献12:Walker, J. A. et al. Human DNA quantitation using Alu element-based polymerase chain reaction. Anal. Biochem. 315, 122-128 (2003).
文献13:Witt, N. et al. An assessment of air as a source of DNA contamination encountered when performing PCR. J. Biomol. Tech. 20, 236-240 (2009).
【実施例21】
【0133】
[本発明のプライマー・プローブセットEの設計]
(1)クライテリアの改良
実施例17に記載のとおり、本発明の20ntのプライマー・プローブセットを用いたAlu-qPCRは、被験試料中のDNAが250bpの長さに断片化された場合であっても、高感度にヒトゲノムDNAを検出・定量できることが確認された。そこで本発明者らは、さらに小さなサイズ(100bp)に断片化されたヒトゲノムDNAを定量できるプライマー・プローブセットの設計を試みた。具体的には、本発明者らは、18ヌクレオチド長以上のプライマー及び/又はプローブを設計するために、上記クライテリア1、2、5、及び7~10を改良して、以下の修正クライテリア1、2、5、及び7~10を設定した(下線は変更箇所を示す)。
【実施例21】
【0134】
[修正クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[修正クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[修正クライテリア5]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[修正クライテリア7]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[修正クライテリア8]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[修正クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[修正クライテリア10]フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1~3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
【実施例21】
【0135】
18ヌクレオチド長以上のプライマー及び/又はプローブを設計する際には、上記修正クライテリア1、2、5、及び7~10と、上記クライテリア3、4、6、及び11(必要に応じてさらに上記クライテリア12~15)とを組み合わせて用いる(なお、本願明細書においては、上記修正クライテリア1、2、5、及び7と、上記クライテリア3、4、及び6とを組み合わせたプライマー用クライテリアを「クライテリア1’~7’」と称する場合があり、また、上記修正クライテリア8~10と、上記クライテリア11とを組み合わせたプローブ用クライテリアを「クライテリア8’~11’」と称する場合がある)。また、19ヌクレオチド長のプライマー及び/又はプローブを設計する場合には、上記修正クライテリア1において「フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列であって、かつ、上記修正クライテリア8において「プローブ中の連続した18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列を選定し、18ヌクレオチド長のプライマー及び/又はプローブを設計する場合には、上記修正クライテリア1において「フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列であって、かつ、上記修正クライテリア8において「プローブ中の連続した17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列を選定する。
【実施例21】
【0136】
なお発明者らは、上記修正クライテリア1において「フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列を選択するために図39を、上記修正クライテリア1において「フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない」配列を選択するために図40をそれぞれ作成した。
【実施例21】
【0137】
(2)改良されたクライテリアを用いたプライマー対及びプローブの選定
プライマー設計プログラムPrimer3web4.1.0を用いてヒトAluモデル配列から複数のプライマー候補を選定した。具体的には、Primer3の「Old Secondary Structure Alignments」を使用し、パラメータを以下のように設定した上で、ヒトAluモデル配列(ポジション#1~#300)を入力した。
i)Max Self Complementarity:5.0
ii)Max 3’ Self Complementarity:4.0
iii)Max Pair Complementarity:5.0
iv)Max 3' Pair Complementarity:5.0
次に、Primerによって選定された候補の中から、図40を用いてクライテリア1’を満たす候補を選定した後に、さらに、クライテリア2’、5’、及び7’を満たすプライマー対を選定した。このようにして選定された39個のフォワードプライマー候補(F1’~F39’)及び20個のリバースプライマー候補(R1’~R20’)を、表5及び6にそれぞれ示す。表5及び6における「位置#」は、各プライマーの開始点となるヒトAluモデル配列のポジション#を示す。
【実施例21】
【0138】
【表5】
JP2018101375A1_000006t.gif
【実施例21】
【0139】
【表6】
JP2018101375A1_000007t.gif
【実施例21】
【0140】
最終的に、上記候補から、ヒトAluモデル配列中の100塩基以下の配列を増幅可能なプライマー対として、フォワードプライマーF34’(GGCGGAGGTTGCAGTGAG;配列番号123)及びリバースプライマーR20’(GTCTCGCTCTGTCGCCCA;配列番号148)を選定した。図41に、RNAstructureを用いて予測されたプライマーダイマーの(フォワードプライマーF34’同士、及びリバースプライマーR20’同士)の二次構造を示す。
【実施例21】
【0141】
また、フォワードプライマーF34’及びリバースプライマーR20’によって増幅されるヒトAluモデル配列の中から、クライテリア8’、9’、10、11、及び13、15を満たすプローブとして、ポジション#248から開始するアンチセンス方向の配列(TGCAGTGGCGCGATCTCG;配列番号149)を選定した。なお、以下、かかるプローブを「プローブP1’」と称する。また、以下、フォワードプライマーF34’、リバースプライマーR20’、及びプローブP1’の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットE」と称する場合がある。
【実施例22】
【0142】
[断片化されたヒトゲノムDNA(100bp)の定量]
(1)ヒトゲノムDNAの断片化
本発明のプライマー・プローブセットEを用いたAlu-qPCRにより、100bpに断片化されたヒトゲノムDNAをどの程度の感度で定量することが可能かを調べた。具体的には、DNA Shearing システム M220(コバリス社製)を用いて、ヒトゲノムDNAを100bpに断片化した。そして、LabChip GX Touchシステム(パーキンエルマー社製)を用いて、DNAが所望の長さに断片化されていることを確認した(図42)。
(2)テンプレートの調製
次に、上記(1)により作製した断片化ヒトゲノムDNAを、EASY Dilutionバッファーを用いて段階希釈し、以下のようにテンプレート33を調製した。
テンプレート33:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、100bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットEと、上記テンプレート33とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)断片化DNAに対する感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図43に示す。テンプレート33(100bp、の長さの断片化DNAを用いたスタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、10fg~10ngの間で検量線の直線性が認められた(図43)。この結果から、本発明のプライマー・プローブセットEを用いたAlu-qPCRは、100bp程度に高度に断片化されたヒトゲノムDNAも、高感度で検出・定量できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明によれば、被験試料中のヒトゲノムDNAを高感度に検出し得る方法を提供することができる。特に、本発明によれば、従来技術では定量できなかった条件の悪い試料(例えば、他生物ゲノムが多量に混在する試料やDNAが高度に断片化された陳旧試料など)からでも、ヒトゲノムDNAを高感度に検出・定量することが可能となる。したがって、かかる方法により、異種移植モデル動物におけるヒト細胞の生着・増殖を正確に確認することができる。また、かかる方法は、法医学試料や古生物試料等に含まれる微量のヒトゲノムDNAの検出にも利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4-1】
3
【図4-2】
4
【図4-3】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17
【図17】
18
【図18】
19
【図19】
20
【図20】
21
【図21】
22
【図22】
23
【図23】
24
【図24】
25
【図25】
26
【図26】
27
【図27】
28
【図28】
29
【図29】
30
【図30】
31
【図31】
32
【図32】
33
【図33】
34
【図34】
35
【図35】
36
【図36】
37
【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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