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明細書 :非蒸発型ゲッタコーティング部品、容器、製法、装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年10月17日(2019.10.17)
発明の名称または考案の名称 非蒸発型ゲッタコーティング部品、容器、製法、装置
国際特許分類 F04B  37/04        (2006.01)
F04B  37/02        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
B01J   3/03        (2006.01)
B01D  53/04        (2006.01)
C23C  14/26        (2006.01)
C23C  14/24        (2006.01)
C23C  14/54        (2006.01)
FI F04B 37/04
F04B 37/02 A
B01J 3/00 K
B01J 3/03 J
B01D 53/04
B01D 53/04 220
C23C 14/26 A
C23C 14/24 T
C23C 14/54 B
国際予備審査の請求
全頁数 24
出願番号 特願2018-553025 (P2018-553025)
国際出願番号 PCT/JP2017/042682
国際公開番号 WO2018/097325
国際出願日 平成29年11月28日(2017.11.28)
国際公開日 平成30年5月31日(2018.5.31)
優先権出願番号 2016230510
優先日 平成28年11月28日(2016.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】間瀬 一彦
【氏名】菊地 貴司
出願人 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】230118913、【弁護士】、【氏名又は名称】杉村 光嗣
【識別番号】100181272、【弁理士】、【氏名又は名称】神 紘一郎
審査請求 未請求
テーマコード 3H076
4D012
4K029
Fターム 3H076AA24
3H076BB21
3H076BB38
3H076CC46
3H076CC55
4D012BA01
4D012CA20
4D012CB06
4D012CB20
4D012CD05
4D012CE03
4D012CF08
4D012CF10
4D012CG03
4D012CH10
4K029AA02
4K029BA17
4K029BA22
4K029BB02
4K029CA01
4K029DA01
4K029DA02
4K029DB03
4K029DB09
4K029DB14
4K029DB18
4K029JA02
要約 炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である非蒸発型ゲッタ材料層、及び/又は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である貴金属層を含むことを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング部品及び容器。低圧力下で非蒸発型ゲッタ材料及び/又は貴金属を蒸着法によりコーティングすることによって、非蒸発型ゲッタ材料層及び/又は貴金属層を形成する工程を含むことを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング部品及び容器の製造方法。NEG材料フィラメント及び/又は貴金属フィラメント、電流端子を備えることを特徴とする、NEGコーティング部品及び容器の製造装置。
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である非蒸発型ゲッタ材料層、及び/又は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である貴金属層を含むことを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング部品。
【請求項2】
真空容器の内面に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である非蒸発型ゲッタ材料層、及び/又は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である貴金属層がコーティングされていることを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング容器。
【請求項3】
低圧力下で基材に非蒸発型ゲッタ材料及び/又は貴金属を蒸着法によりコーティングすることによって、非蒸発型ゲッタ材料層及び/又は貴金属層を形成する工程を含むことを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング部品の製造方法。
【請求項4】
低圧力下で真空容器の内面に非蒸発型ゲッタ材料及び/又は貴金属を蒸着法によりコーティングすることによって、非蒸発型ゲッタ材料層及び/又は貴金属層を形成する工程を含むことを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング容器の製造方法。
【請求項5】
基材、非蒸発型ゲッタ材料フィラメント及び/又は貴金属フィラメント、電流端子を備えることを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング部品の製造装置。
【請求項6】
真空容器、非蒸発型ゲッタ材料フィラメント及び/又は貴金属フィラメント、電流端子を備えることを特徴とする、非蒸発型ゲッタコーティング容器の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非蒸発型ゲッタ(以下、「NEG」ともいう。)コーティング部品及び容器、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空科学技術の分野において、エネルギー消費量が少なく、広い圧力範囲での排気を可能にする真空ポンプとして、非蒸発型ゲッタ(NEG)を備えるNEGポンプが注目されている。NEGポンプは、真空中での加熱によりNEGの表面を清浄化し、非蒸発型ゲッタポンプを接続した真空装置内部に残留する気体を吸着させることによって、真空装置からの排気を行う真空ポンプである。
【0003】
これまでに、真空容器の容器本体の内面に、NEG材料、代表的には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びこれらの合金(以下、「Ti等のNEG材料」ともいう。)、をコーティングすることにより、真空容器の内面全体をNEGポンプにする研究が進められてきた(非特許文献1参照)。Ti等のNEG材料の中でも、特にTi及びZr及びHfは、200℃程度の比較的低温で活性化できることから好ましい。しかしながら、これらのNEG材料は、排気と、活性化と、大気圧に戻す工程(これを「大気圧ベント」ともいう。)とを繰り返すと、排気能力(NEG性能)が著しく低下するという問題があった(非特許文献2)。そこで、近年では、このようなNEG性能の低下が生じにくいコーティングとして、Ti等のNEG材料をコーティングした上にPd等の貴金属(パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びこれらの合金)(以下、「Pd等の貴金属」ともいう。)をコーティングすることが注目されてきている(非特許文献3参照)。Pd等の貴金属の中でも特にPdは、水素分子を表面で水素原子に解離し、固体内部に水素原子を拡散させる機能を持つことから好ましい。また、Pd等の貴金属は触媒作用を備えるため、その表面が炭素、窒素、酸素等で汚染されても、微量の酸素を導入して加熱すれば、清浄な表面を再生することができ、このため、NEG性能の低下が生じにくい。また、Pd等の貴金属の表面には室温で水(HO)が吸着しないので、HOを短時間で排気できるという利点もある。これらのNEG材料及びPd等の貴金属のコーティングには、従来的に、スパッタ法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4451498号公報
【0005】

【非特許文献1】C. Benvenuti et al., Vacuum 50 (1998) 57.
【非特許文献2】C. Benvenuti et al., Vacuum 60 (2001) 57.
【非特許文献3】C. Benvenuti et al., Vacuum 73 (2004) 139.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Ti等のNEG材料やPd等の貴金属の成膜にスパッタ法を用いる従来のNEGコーティング部品、NEGコーティング容器では、コストが高い、NEG材料層及び貴金属層が酸素等で汚染されやすい、内径が小さい(例えば、内径が10mm以下の)真空配管のコーティングが困難である、Ti等のNEG材料の活性化の温度が高くなる(例えば、Tiの場合は200℃以上)(非特許文献2参照)等という問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、排気能力(NEG性能)の低下が生じにくく、より内径が小さい容器にも適用できて、NEG活性化温度がより低い、NEGコーティング部品及び容器、並びに該部品及び容器の製造方法及び製造装置を低コストで製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明のNEGコーティング部品は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるNEG材料層、及び/又は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である貴金属層を含むことを特徴とする。
また、本発明のNEGコーティング容器は、真空容器の内面に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるNEG材料層、及び/又は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下である貴金属層がコーティングされていることを特徴とする。
本発明のNEGコーティング部品の製造方法は、低圧力下で基材にNEG材料及び/又は貴金属を蒸着法によりコーティングすることによって、NEG材料層及び/又は貴金属層を形成する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明のNEGコーティング容器の製造方法は、低圧力下で真空容器の内面にNEG材料及び/又は貴金属を蒸着法によりコーティングすることによって、NEG材料層及び/又は貴金属層を形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明のNEGコーティング部品の製造装置は、基材、NEG材料フィラメント及び/又は貴金属フィラメント、電流端子を備えることを特徴とする。
また、本発明のNEGコーティング容器の製造装置は、真空容器、NEG材料フィラメント及び/又は貴金属フィラメント、電流端子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排気能力の低下が生じにくく、より内径が小さい容器にも適用できて、NEG活性化温度がより低い、NEGコーティング部品、NEGコーティング容器を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は、Ti等のNEG材料コーティング及びPd等の貴金属コーティングが施されている本発明に従うNEGコーティング部品の一部を示す断面図であり、(B)は、本発明に従うTi等のNEG材料コーティング及びPd等の貴金属コーティングが施されている部品の製造方法及び製造装置の概略を示す図である。(B)では、上図に上面図を示し、下図に斜視図を示す。
【図2】(A)は、本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器及びその製造装置の一部を示す模式的断面図であり、(B)は、本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器の製造方法及び製造装置の概略を示す図である。
【図3】実施例1、実施例2、比較例1の真空容器における排気曲線を示す図である。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空排気開始からの時刻(時間)を示す。
【図4】実施例1、実施例2、比較例1の真空容器において、4×10-8Pa程度まで圧力が下がった時点で排気系に繋がる真空バルブを閉じたときの圧力の経時的な変化を示す図である。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空バルブを閉じてからの時刻(時間)を示す。
【図5】炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下の場合の非蒸発型ゲッタ材料層、貴金属層を示す図である。
【図6】炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が1モル%以下の場合の非蒸発型ゲッタ材料層、貴金属層を示す図である。
【図7】本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器及びその製造装置の一部を示す模式的断面図である。
【図8】実施例3及び比較例2の成形ベローズの圧力の経時的な変化を測定する装置の一部を示す模式的断面図である。
【図9】実施例3及び比較例2の成形ベローズにおいて真空排気及びベークを行い、10-7Pa~10-8Pa程度まで圧力が下がった時点で排気系に繋がるオールメタルバルブを閉じたときの圧力の経時的な変化を示す図である。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空バルブを閉じてからの時刻(分)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のNEGコーティング部品、NEGコーティング容器、並びに本発明のNEGコーティング部品、NEGコーティング容器の製造方法及び製造装置の実施形態について詳細に例示説明する。

【0012】
(NEGコーティング部品、NEGコーティング容器の製造方法)
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)のNEGコーティング部品の製造方法は、低圧力下で基材にTi等のNEG材料を蒸着法によりコーティングすることによってTi等のNEG材料層を形成する工程を含む。そして、この製造方法は、基材にコーティングされたTi等のNEG材料層上に更にPd等の貴金属を真空蒸着法によりコーティングすることによってPd等の貴金属層を形成する工程を含んでもよい。

【0013】
図1(A)は、Ti等のNEG材料コーティング及びPd等の貴金属コーティングが施されている本発明に従うNEGコーティング部品の一部を示す断面図であり、図1(B)は、本発明に従うTi等のNEG材料コーティング及びPd等の貴金属コーティングが施されている部品の製造方法及び製造装置の概略を示す図である。図1(B)では、上図に上面図を示し、下図に斜視図を示す。

【0014】
蒸着法としては、酸素等の不純物を低減できる真空蒸着(特に、金属フィラメントを抵抗加熱する方式の真空蒸着)が好ましい。
抵抗加熱する方式の真空蒸着においては、コーティングする金属(Ti、Pd等)のフィラメントを10-5Pa程度以下の低圧力下で通電加熱することで金属を昇華させてよい。

【0015】
真空蒸着によるNEGコーティング部品の製造方法では、例えば、10-5Pa程度以下の低圧力下で、電流端子に接続した直線状のフィラメントの周りにその軸方向に沿うように基材を配置し、電流端子からフィラメントに電流を供給して、金属(Ti、Pd等)の真空蒸着を行ってよい(図1(B)参照)。フィラメント電流値は、フィラメント断線の回避や危険性の低減の観点から、10A~100Aとしてよく、20A~50Aであることが望ましい。
ここで、図1(B)に示すように、4端子を備える電流端子(例えば、キヤノンアネルバ製の4ピン電流端子、定格電流値50A)に、Ti等のNEG材料、Pd等の貴金属のフィラメント(例えば、ニラコ社製)を接続して、Ti等のNEG材料、Pd等の貴金属に通電を行って、基材にTi等のNEG材料層、Pd等の貴金属層を順に形成してもよい。
またここで、図1(B)に示すように、直線状のフィラメントの周りに複数個(例えば、図1(B)に示す6個)の基材を、好適には上面図においてフィラメントに関して点対称となるように配置し、基材をフィラメントの延在方向に沿うように基材に対して設けられる回転導入を中心に一定速度で回転させながら、Ti等のNEG材料層、Pd等の貴金属層を順に形成してもよい。かかる手法によれば、NEGコーティングを効率的かつ均一に行うことが可能となる。
また、ここで、Ti等のNEG材料フィラメントを複数種類用意して、Ti-Zr-V等のNEG合金によるNEG材料層を形成してもよい。また、ここでPd等の貴金属フィラメントを複数種類用意して、Pd-Ag等の貴金属合金による貴金属層を形成してもよい。

【0016】
基材の形状やサイズとしては、特に限定されない。基材の材料としては、特に限定されないが、ステンレス(例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)、無酸素銅、銅合金、チタン、チタン合金、アルミ合金等が挙げられる。
フィラメントの直径としては、特に限定されないが、0.5mm~1.5mmとしてよい。フィラメントの長さとしては、特に限定されないが、10mm~4000mmとしてよい。なお、フィラメント加熱によりフィラメントが曲がることを防ぐためにフィラメント先端部を支える絶縁材料製の支えを設置してもよい。また、Ti等のNEG材料がPd等の貴金属フィラメントに蒸着することを防ぐ遮蔽板、Pd等の貴金属がTi等のNEG材料フィラメントに蒸着することを防ぐ遮蔽板を適宜設置してもよい。
加熱温度としては、金属種に応じて適宜定められてよく、コーティングを行う金属種の蒸気の圧力が10-2Pa~10-4Pa程度になる温度が望ましい。例えば、Tiについて1300℃~1600℃、Pdについて1000℃~1200℃としてよい。
真空蒸着を行う際の容器の圧力としては、真空蒸着を行う温度での金属種の蒸気の圧力の1/100程度以下の圧力であることが望ましい。例えば、Tiの蒸気の圧力が10-4Pa程度になる温度で昇華する場合は、真空容器の圧力は10-6Pa程度以下にすることが望ましい。この条件でコーティングを行えば、Tiコーティング中の残留ガスに由来する不純物は1モル%程度以下に抑えられると期待されるためである。

【0017】
なお、本実施形態において、基材にNEG材料を用いる場合はTi等のNEG材料層を形成することなく、NEG材料基材にPd等の貴金属層を形成してもよい。

【0018】
本実施形態のNEGコーティング容器の製造方法は、低圧力下で真空容器の内面にTi等のNEG材料を真空蒸着法によりコーティングすることによってTi等のNEG材料層を形成する工程を含む。そして、この製造方法は、真空容器の内面にコーティングされたTi等のNEG材料層上に更にPd等の貴金属を真空蒸着法によりコーティングすることによってPd等の貴金属層を形成する工程を含んでもよい。

【0019】
図2(A)は、本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器及びその製造装置の一部を示す模式的断面図であり、図2(B)は、本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器の製造方法及び製造装置の概略を示す図である。
図7は、本発明に従うTi等のNEGコーティング及びPd等の貴金属コーティング容器及びその製造装置の一部を示す模式的断面図である。

【0020】
真空蒸着法としては、ある程度広い面積にある程度均一に蒸着が行えることから、Ti等のNEG材料フィラメント及びPd等の貴金属フィラメントの抵抗加熱が好ましい。
真空蒸着によるNEGコーティング容器の製造方法では、例えば、低圧力条件下で、電流端子に接続した直線状のフィラメントを容器の内部の中心に配置し、電流端子からフィラメントに通電を行って、金属(Ti、Pd等)の蒸着を行ってよい(図2(B)参照)。フィラメント電流値は10A~100Aとしてよく、20A~50Aであることが望ましい。
また、ここで、中空型回転導入を設置して、一定速度でTi等のNEG材料フィラメント及び/又はPd等の貴金属フィラメントを電流導入ごと回転させながら、金属(Ti、Pd等)の蒸着を行ってもよい。このとき、回転は一方向としてもよいが、配線の捻れを防ぐ意味で一方向とそれとは反対方向との組み合わせとしてもよい。かかる手法によれば、NEGコーティングを広い面積にかつ均一に行うことが可能となる。
このとき、Ti等のNEG材料フィラメントを複数種類用意して、Ti-Zr-V等のNEG合金によるNEG材料層を形成してもよい。また、ここでPd等の貴金属フィラメントを複数種類用意して、Pd-Ag等の貴金属合金による貴金属層を形成してもよい。

【0021】
真空容器の形状やサイズとしては、Ti、Pd等のフィラメントを設置できる限り、特に限定されない。真空容器の材料としては、特に限定されないが、ステンレス(例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)、無酸素銅、銅合金、チタン、チタン合金、アルミ合金等が挙げられる。なお、真空容器の内面は、電解研磨あるいは化学研磨されていることが好ましい。
その他の真空蒸着の諸条件については、本実施形態のNEGコーティング部品の製造方法の場合と同様としてよい(図2(B)参照)。

【0022】
スパッタ法等を用いる従来の製造方法により製造されるNEGコーティング部品、NEGコーティング容器では、アルゴン等の希ガスイオンと基材との反応等により生成する水や酸素等の副生成物等のためにTi等のNEG材料層の内部及び表面にチタン化合物(酸化チタン等)が形成され、Ti等のNEG材料層の表面における水素の解離及びTi等のNEG材料内部における水素の吸蔵が生じにくくなる可能性がある。その結果、NEGの活性化温度が高くなる可能性がある。また、従来では、スパッタ法で使用されるアルゴン等の希ガスイオンと基材との反応等により生成する水や酸素等の副生成物のためにPd等の貴金属層の内部及び表面に酸化物が生成する場合もあり、Pd等の貴金属の表面における水素の解離能及びPd等の貴金属内部における水素の透過能が低下するおそれがある。その結果、NEGの活性化温度が高くなる可能性がある。
また、スパッタ法等を用いる従来の製造方法により製造されるNEGコーティング容器の形状は、プラズマを生成するのに必要な空間を有するもの(例えば、内径10mm以上のもの)に制限されている。
本実施形態の製造方法を用いて製造されるNEGコーティング部品、NEGコーティング容器は、酸素、炭素、窒素等の不純物を所定量以下でしか含まないTi等のNEG材料層を含むものであるため、Ti等のNEG材料表面の水素解離能とTi等のNEG材料内部の水素吸蔵能とが生じやすくなる。そのため、本実施形態によれば、Ti等のNEG材料の活性化温度を下げるとともに排気能力の低下が生じにくいNEGコーティング部品及びNEGコーティング容器を低コストで製造することができる。
そして、本実施形態では、スパッタ法におけるようなプラズマの使用がなく、得られるNEGコーティング部品、NEGコーティング容器は、酸素、炭素、窒素等の副生成物の含有が少ないPd等の貴金属層を含むものとなるため、Pd等の貴金属表面の水素解離能とPd等の貴金属内部の水素透過能との低下も抑制することができる。そのため、本実施形態によれば、排気と活性化と大気圧ベントとを繰り返しても排気能力の低下が生じにくいNEGコーティング部品、NEGコーティング容器を低コストで製造することができる。
また、本実施形態のNEGコーティング部品、NEGコーティング容器の製造方法は、製造においてプラズマ発生装置等の大規模な装置を要しないため、コストの低減を実現することが可能である。
さらに、本実施形態のNEGコーティング容器の製造方法は、プラズマを使用しないため内径が金属フィラメントの外径より2mm程度大きい形状の容器まで適用することができる。

【0023】
図1(B)に示すNEGコーティング部品の製造方法における、基材、Ti等のNEG材料フィラメント及びPd等の貴金属フィラメント、電流端子、回転導入等の各要素は、本実施形態において、NEGコーティング部品の製造装置を構成してよい。
同様に、図2(B)に示すNEGコーティング容器の製造方法における、真空容器、Ti等のNEG材料フィラメント及びPd等の貴金属フィラメント、電流端子、回転導入等の各要素は、本実施形態において、NEGコーティング容器の製造装置を構成してよい。

【0024】
本実施形態のNEGコーティング部品は、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるTi等のNEG材料層を含む。本実施形態のNEGコーティングは、Ti等のNEG材料層の上に、任意選択的に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるPd等の貴金属層を含んでいてもよい。なお、本実施形態のNEGコーティング部品は、基材としてNEG材料を用いる場合は、Ti等のNEG材料層を含まなくてもよい。
上記炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計は、本発明の効果を高める観点から、16モル%以下であることが好ましく、13モル%以下であることが更に好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。下限としては、特に限定されないが、0.0001モル%以上、0.01モル%以上、0.1モル%以上としてよい。

【0025】
Ti等のNEG材料層の厚さは、10μm~0.01μmとしてよく、2μm~0.1μmが好ましく、実用的には1μmであってよい。
Pd等の貴金属層の厚さは、1000nm~0.3nmとしてよく、100nm~1nmが好ましく、実用的には10nmであってよい。
なお、上記厚さは平均厚さとしてよい。
Ti等のNEG材料層は、基材の少なくとも一部、可能な限り広範囲に形成されていればよく、全面に形成されていることが好ましい。Pd等の貴金属層は、Ti等のNEG材料層の少なくとも一部、可能な限り広範囲に形成されていればよく、全面に形成されていることが好ましい。
その他のNEGコーティング部品の詳細については、本実施形態のNEGコーティング部材の製造方法に記載のとおりとしてよい。

【0026】
本実施形態のNEGコーティング容器は、真空容器の内面に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるTi等のNEG材料層の上に、任意選択的に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下であるPd等の貴金属層が、更にコーティングされたものとすることができる。ここで、真空排気後の真空容器内の圧力の時間変化、真空容器を200℃程度で加熱してNEGを活性化した後の真空容器内の圧力の時間変化、真空バルブを閉めた後の真空容器内の圧力の時間変化を測定することができる。
上記炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計は、本発明の効果を高める観点から、16モル%以下であることが好ましく、13モル%以下であることが更に好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。下限としては、特に限定されないが、0.0001モル%以上、0.01モル%以上、0.1モル%以上としてよい。

【0027】
NEGコーティング容器の詳細については、本実施形態のNEGコーティング容器の製造方法に記載のとおりとしてよい。

【0028】
本実施形態のNEGコーティング部品やNEGコーティング容器は、前述のとおり、Ti等のNEG材料層の水素解離能及び水素吸蔵能が生じやすく、また、Pd等の貴金属層の水素解離能及び水素透過能の低下も抑制することができ、排気と活性化と大気圧ベントとを繰り返すことがあったとしても、排気能力の低下が生じにくい。また、本実施形態のNEGや真空装置は、前述のとおり、低コストで製造することが可能である。

【0029】
ここで、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計を20モル%以下である非蒸発型ゲッタにおいて、本願所望の効果が得られることについて説明する。
図5に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下の場合の非蒸発型ゲッタ材料層、貴金属層を示す。大きな白抜きの丸印は非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子を表す。また、小さな斜線の丸印は炭素原子あるいは窒素原子あるいは酸素原子を表す。炭素原子、窒素原子、酸素原子の影響が少ない非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子の空隙はバツ印で表す。水素原子は当該空隙を通って非蒸発型ゲッタ層あるいは貴金属層に拡散するところ、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が20モル%以下の場合は、非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子4個あたりに空隙が少なくとも4個あることとなるので、水素を吸蔵する能力が高い非蒸発型ゲッタ材料を実現することができる。

【0030】
また、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計を1モル%以下である非蒸発型ゲッタにおいて、本願所望の効果が特に高まることについて説明する。
図6に、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が1モル%以下の場合の非蒸発型ゲッタ材料層、貴金属層を示す。大きな白抜きの丸印は非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子を表す。また、小さな斜線の丸印は炭素原子あるいは窒素原子あるいは酸素原子を表す。炭素原子、窒素原子、酸素原子の影響が少ない非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子の空隙はバツ印で表す。水素原子は当該空隙を通って非蒸発型ゲッタ層あるいは貴金属層を拡散するところ、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が1モル%以下の場合は、水素原子が通過できる空隙が極めて多いので、水素を吸蔵する能力が極めて高い非蒸発型ゲッタ材料を実現することができる。

【0031】
なお、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計を25モル%以下である非蒸発型ゲッタにおいても、非蒸発型ゲッタ金属原子あるいは貴金属原子3個あたりに空隙が少なくとも2個あることとなることから、本願所望の効果が得られる可能性がある。

【0032】
ここで、本実施形態のNEGコーティング装置の一例について例示説明する。
本実施形態の一例では、NEGコーティング装置には、ターボ分子ポンプや油回転ポンプ等から構成され、真空バルブを備える排気系、内面にNEGコーティングが施される真空容器、真空計、Ti等のNEG材料及びPd等の貴金属の金属蒸着源が取り付けられる。真空バルブの外周には真空バルブを150℃程度で均一に加熱することが可能なヒータが設置されている。ターボ分子ポンプの吸気部の外周にはターボ分子ポンプの吸気部を80℃程度で均一に加熱することが可能なヒータが設置されている。また、NEGコーティングを行う真空容器の外周面には、真空容器を200℃程度で均一に加熱することが可能なヒータが設置されている。ヒータとしては、シースヒータを真空容器の外周に均一に設置してもよい。
上述の本実施形態のNEGコーティング装置を用いて、NEGコーティングを行うことによって、本実施形態のNEGコーティング容器を製造することができる。

【0033】
本実施形態のNEGコーティング装置は、真空容器の内面の広い面積に短時間で均一にTi等のNEG材料層コーティング、Pd等の貴金属層コーティングを行うことができる。この非蒸発型ゲッタコーティングでは、Ti等のNEG材料層の水素解離能及び水素吸蔵能が生じやすく、また、Pd等の貴金属層の水素解離能及び水素透過能の低下も抑制することができる。また、本実施形態のNEGコーティング装置は、低コストでNEGコーティングを行うことが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
図2に示す構成を備える真空装置を組み立てた。具体的には、下記の手順に従った。
外径165mm、内径158.4mm、長さ426mmの円筒形状のSUS304L製の内面を電解研磨した容器を用意し、下部の外径152mmのコンフラットフランジに、VAT社製の超高真空仕様バタフライバルブ、エドワーズ社製の300リッター/秒の排気速度を持つ磁気浮上型ターボ分子ポンプ、50リッター/秒の排気速度を持つターボ分子ポンプ、フォアライントラップ、アイソレーションバルブ、油回転ポンプ等を備える排気系を、側部の外径70mmのコンフラットフランジに、L字管を介して真空計を取り付けた。Ti蒸着源として、キヤノンアネルバ製のタイバックポンプを、両側部の外径70mmのコンフラットフランジに1台ずつ設置した。Ti蒸着源からは真空計が見えないため、真空計及び真空計周辺の真空配管内壁にはTiは蒸着されない。また、容器の外周面にはシースヒータを均一に設置した。
真空装置を真空排気、ベークして、真空容器の圧力が5×10-8Paに達してから、タイバックポンプを作動して、平均Ti蒸着レート0.05nm/秒で、真空容器の内面にTiの蒸着を6時間行った。Ti蒸着中の真空容器の圧力は7×10-6Paであった。Ti層は容器の内面のほぼ全面に形成され、Ti層の平均厚さは、約1.1μmであった。
Ti層におけるTiに対する酸素、炭素、窒素(O、C、N)の割合(Ti層の成分を化学式TiCであらわした時の(X+Y+Z))は、(Ti蒸着中の真空容器のC、O、Nを含む残留気体の入射レート×吸着確率)/(平均Ti蒸着レート)から見積もることができる。残留気体の圧力1×10-4Paがおおよそ残留気体の入射レート0.3nm/秒に対応すること、残留ガスの80%以上は水素(H)であると推定されること、Ti表面の場合吸着確率は1程度であることから、Ti層に含まれるC、O、Nの割合は9モル%程度以下と示唆された。真空蒸着法の場合、Ti蒸着中の真空容器の残留気体の圧力を1×10-7Pa以下にすることは容易であるので、Ti層に含まれるC、O、Nの割合を1モル%程度以下にすることは容易である。
【実施例】
【0036】
(実施例2)
実施例1において、Ti蒸着後にいったん乾燥窒素で大気圧ベントし、片方のTi蒸着源をフィラメント式のPd蒸着源に交換し(図2(B)参照)、Ti層の上に、Pdコーティングを行った。
真空容器の内面にTi層が形成されている真空装置を、真空排気、ベークして、真空容器の圧力が7×10-8Paに達してから、Pd蒸着源を作動して、平均Pd蒸着レート0.01nm/秒で、真空容器の内面のTi層上にPdの蒸着を1000秒行った。Pd蒸着中の真空容器の圧力は2×10-4Paであった。Pd層は容器の内面のTi層上のほぼ全面に形成され、Pd層の平均厚さは、約10nmであった。
Pd層におけるPdに対する酸素、炭素、窒素(O、C、N)の割合(Pd層の成分を化学式PdCであらわした時の(X+Y+Z))は、(Pd蒸着中の真空容器のC、O、Nを含む残留気体の入射レート×吸着確率)/(平均Pd蒸着レート)から見積もることができる。Pd蒸着中の真空容器の圧力は2×10-4Paであること、残留気体の圧力1×10-4Paがおおよそ残留気体の吸着レート0.3nm/秒に対応すること、残留ガスの80%以上は水素(H)であると推定されること、Pd表面の場合吸着確率は0.001以下と推定されることから、Pd層に含まれるC、O、Nの割合は12モル%程度以下と示唆された。真空蒸着法の場合、Pd蒸着中の真空容器の圧力を1×10-5Pa以下にすることは容易であるので、Pd層に含まれるC、O、Nの割合を1モル%程度以下にすることは容易である。
【実施例】
【0037】
(比較例1)
一方、TiやPdのコーティングを行う前の真空容器を比較例1とした。
【実施例】
【0038】
TiやPdのコーティングの効果を評価するために、真空容器の内面にTiコーティングを行う前のもの(比較例1)と、真空容器の内面にTiコーティングを行った後のもの(実施例1)と、真空容器の内面にTiコーティングを行った上に更にPdコーティングを行った後のもの(実施例2)との間で、真空排気曲線を測定して比較した。
【実施例】
【0039】
図3に、実施例1、実施例2、比較例1の真空容器における排気曲線を示す。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空排気開始からの時刻(時間)を示す。
排気を開始した時点を0時間とした。0時間において、容器の内部は乾燥窒素で満たされ大気圧であった。排気開始2時間後から8時間後までの間、真空容器を最高温度185℃に加熱した(この工程を「ベーク」という。)。温度は、ベーク前に20℃、ベーク開始から1時間後は130℃、2時間後は157℃、3時間後は173℃、4時間後は180℃、5時間後は183℃、6時間後は185℃(ベーク終了)、ベーク終了から1時間後は92℃、2時間後は62℃、3時間後は47℃、4時間後は38℃、5時間後は32℃、であった。排気開始後5時間までは、Tiコーティングを行った実施例1及びTi及びPdコーティングを行った実施例2の方が、Tiコーティングを行わなかった比較例1の場合よりも圧力が高い。この結果は、Tiコーティング及びTi及びPdコーティングが大気圧において吸蔵した気体を放出しているためと考えられる。Tiコーティングを行った実施例1及びTi上にPdコーティングを行った実施例2では、ベーク直後にTiコーティングを行わなかった比較例1の場合よりも低い1×10-5Pa程度の比較的低圧力に達した。そして、1×10-7Paまで排気するのに要した時間は、Tiコーティングを行った実施例1の場合には約10時間であり、Ti及びPdコーティングを行った実施例2の場合には約9時間30分であったに対して、Tiコーティングを行わなかった比較例1の場合には約11時間であったことから、大気圧から1×10-7Paの圧力までの排気に要する時間が、実施例1では約1時間、実施例2では1時間30分、短縮される結果が得られた(図3参照)。この結果は、Tiコーティング及びTi及びPdコーティングが、ベーク後残留ガスを排気している(NEG性能を発揮している)ことを示している。
【実施例】
【0040】
図4に、実施例1、実施例2、比較例1の真空容器において、4×10-8Pa程度まで圧力が下がった時点で排気系に繋がる真空バルブを閉じたときの圧力の経時的な変化を示す。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空バルブを閉じてからの時刻(時間)を示す。
バルブを閉じた時点を0時間とした。実施例1の場合には、真空バルブ閉直後は、真空バルブからの脱ガスにより、圧力が1×10-6Pa程度まで悪化したものの、すぐに圧力が低下して、5時間後には2×10-7Pa程度まで低下した。
また、実施例2で、乾燥窒素で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を行ってから使用した場合には、真空バルブ閉直後は、真空バルブからの脱ガスにより、圧力が4×10-3Pa程度まで悪化したものの、すぐに圧力が低下して、1時間後には4×10-6Pa程度まで、5時間後には1×10-6Pa程度まで低下した。なお、排気開始直後には、バタフライバルブを閉める操作に伴い、バタフライバルブからNEGコートが剥がれる現象等により、バタフライバルブからの脱ガスが生じていたと考えられる。
実施例1、2に対して、比較例1の場合には、圧力が徐々に悪化し、バルブを閉じてから4時間30分後には1×10-4Pa程度にまで悪化した。
この結果は、容器の内面に真空蒸着したTi層、Ti層及びその上に真空蒸着したPd層が、最高温度185℃、6時間のベークにより活性化して、残留ガスの排気を行っている(NEG性能を発揮している)ことを示している。一方、Tiコーティングを行っていないSUS304L製の真空容器はNEG作用を示さず、真空バルブを閉じた後は真空容器内に真空ポンプがないため、真空容器の内壁からの脱ガスにより圧力上昇が起きたと考えられる。
【実施例】
【0041】
さらに、実施例2で、前述の使用後に複数回、大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を行ってから使用した場合についても、真空バルブを閉じたときの圧力の経時的な変化を測定した(図4参照)。
実施例2で、乾燥窒素で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を2回繰り返してから使用した場合には、真空バルブ閉から5時間後には6×10-7Pa程度まで低下した。また、実施例2で、乾燥窒素で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を2回繰り返し、さらに乾燥空気で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を行ってから使用した場合には、真空バルブ閉から5時間後には7×10-7Pa程度まで低下した。また、実施例2で、乾燥窒素で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を2回繰り返し、さらに乾燥空気で大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を2回繰り返してから使用した場合には、真空バルブ閉から5時間後には2×10-6Pa程度まで低下した(図4参照)。以上の結果は、Ti層の上にPd層を形成したNEGコーティング容器では、大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を4回繰り返してもNEG性能はそれほど低下しないことを示している。
【実施例】
【0042】
実施例2で、大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を4回繰り返した場合でも、排気開始後7時間程度までは、Ti及びPdコーティングを行った実施例2の方が、Tiコーティングを行わなかった比較例1の場合よりも圧力が高い(図3参照)。この結果は、Ti及びPd層が大気圧において吸蔵した気体を放出しているためと考えられる。この結果も、大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を4回繰り返してもNEG性能はそれほど低下しないことを示している。
【実施例】
【0043】
実施例1、2と比較例1との比較から、本発明のNEGコーティング容器では、(1)最高温度185℃、6時間のベークによりNEGが活性化して、残留ガスの排気を行うようになるため、1×10-7Pa以下の真空に達するまでの時間が短くなる、(2)容器と排気系との間を真空バルブで仕切っても、NEGコーティング容器が真空排気作用を持つため、真空容器内の圧力が低下する、(3)Ti層の上にPd層を形成したNEGコーティング容器では大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を4回繰り返してもNEG性能はそれほど低下しない、という特長を有する。また、本発明のNEGコーティング装置では、真空容器の内面に低コストでNEGコーティングを行うことができる。本発明に従って内面にNEGコーティングを施した真空容器を、粒子加速用真空装置、半導体やディスプレイ等の製造用真空装置、電子顕微鏡や光電子分光装置等の分析用真空装置に採用した場合、粒子加速あるいは製造あるいは分析に要する時間及びコストを削減でき、また、真空を維持するために真空ポンプを用いる必要がなくなり、大幅に製造コストを削減できるという利点がある。
【実施例】
【0044】
以下、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が1モル%以下の場合の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例3)
図7に示す構成を備える真空装置を組み立てた。具体的には、下記の手順に従った。
外径165mm、内径158.4mm、長さ426mmのSUS304L製の内面を電解研磨した容器を用意し、下部の外径152mmのコンフラットフランジに、VAT社製の超高真空仕様ゲートバルブ、エドワーズ社製の300リッター/秒の排気速度を持つ磁気浮上型ターボ分子ポンプ、50リッター/秒の排気速度を持つターボ分子ポンプ、フォアライントラップ、アイソレーションバルブ、油回転ポンプ等を備える排気系を、側部の外径70mmのコンフラットフランジに、L字管を介して真空計を取り付けた。真空容器の外径70mmのコンフラットフランジに短管、4方管、外径41.0mm、内径30.2mm、長さ80mmの成形ベローズ、チタン・パラジウム蒸着源を順に接続した。真空容器、短管、4方管、成形ベローズ、チタン・パラジウム蒸着源の外周面にはヒータを均一に設置した。
真空装置を真空排気、ベークして、真空容器の圧力が1.7×10-7Paに達してから、チタン蒸着源を作動して、平均Ti蒸着レート0.05nm/秒で、真空容器の内面にTiの蒸着を6時間行った。Ti蒸着中の真空容器の圧力は2.4×10-7Paであった。Ti層は成形ベローズの内面のほぼ全面に形成され、Ti層の平均厚さは、約1μmであった。
Ti層におけるTiに対する酸素、炭素、窒素(O、C、N)の割合(Ti層の成分を化学式TiCであらわした時の(X+Y+Z))は、(Ti蒸着中の真空容器のC、O、Nを含む残留気体の入射レート×吸着確率)/(平均Ti蒸着レート)から見積もることができる。残留気体の圧力1×10-4Paがおおよそ残留気体の入射レート0.3nm/秒に対応すること、残留ガスの80%以上は水素(H)であると推定されること、Ti表面の場合吸着確率は1程度であることから、Ti層に含まれるC、O、Nの割合は1モル%以下と推定した。
【実施例】
【0046】
次いで、Pd蒸着源を作動して、平均Pd蒸着レート0.007nm/秒で、真空容器の内面のTi層上にPdの蒸着を1430秒行った。Pd蒸着中の真空容器の圧力は1.3×10-7Paであった。Pd層は容器の内面のTi層上のほぼ全面に形成され、Pd層の平均厚さは、約10nmであった。
Pd層におけるPdに対する酸素、炭素、窒素(O、C、N)の割合(Pd層の成分を化学式PdCであらわした時の(X+Y+Z))は、(Pd蒸着中の真空容器のC、O、Nを含む残留気体の入射レート×吸着確率)/(平均Pd蒸着レート)から見積もることができる。Pd蒸着中の真空容器の圧力は1.3×10-7Paであること、残留気体の圧力1×10-4Paがおおよそ残留気体の吸着レート0.3nm/秒に対応すること、残留ガスの80%以上は水素(H)であると推定されること、Pd表面の場合吸着確率は0.001以下と推定されることから、Pd層に含まれるC、O、Nの割合は1モル%以下と推定した。
【実施例】
【0047】
(比較例2)
一方、Ti及びPdのコーティングを行う前の成形ベローズを比較例2とした。
【実施例】
【0048】
図8に、実施例3及び比較例2の成形ベローズの圧力の経時的な変化を測定する装置の一部を示す模式的断面図を示す。
Ti及びPdのコーティングの効果を評価するために、図8に示す構成を備える真空装置を組み立てた。具体的には、下記の手順に従った。
SUS304L製の内面を電解研磨した真空容器を用意し、上部の外径203mmのコンフラットフランジに、VAT社製の超高真空仕様ゲートバルブ、エドワーズ社製の450リッター/秒の排気速度を持つ磁気浮上型ターボ分子ポンプ、50リッター/秒の排気速度を持つターボ分子ポンプ、フォアライントラップ、アイソレーションバルブ、油回転ポンプ等を備える排気系を取り付けた。真空容器の側部の外径70mmのコンフラットフランジに超高真空仕様オールメタルゲートバルブ、成形ベローズ、0.2%ベリリウム銅合金製短管、真空計を順に接続した。真空容器、オールメタルバルブ、成形ベローズ、真空計の外周面にはヒータを均一に設置した。
成形ベローズとしては内面にTi及びPdのコーティングを行う前のもの(比較例2)と、Ti及びPdのコーティングを行った後のもの(実施例3)とを用いた。
【実施例】
【0049】
図9に、実施例3及び比較例2の成形ベローズにおいて真空排気及びベークを行い、10-7Pa~10-8Pa程度まで圧力が下がった時点で排気系に繋がるオールメタルバルブを閉じたときの圧力の経時的な変化を示す。図中、縦軸は、真空容器内の圧力(Pa)を示し、横軸は、真空バルブを閉じてからの時刻(分)を示す。
バルブを閉じた時点を0分とした。実施例3の場合には、133℃で12時間加熱した場合、真空バルブ閉後16時間にわたって、圧力が4.6×10-6Paに保たれた。また、真空を保ったまま、さらに176℃で3.5時間加熱した場合、真空バルブ閉後13時間にわたって、圧力が1.7×10-7Paに保たれた。また、真空を保ったまま、さらに200℃で3.5時間加熱した場合、真空バルブ閉後17時間にわたって、圧力が6.1×10-8Paに保たれた。
実施例3に対して、比較例2の場合には、圧力が徐々に悪化し、バルブを閉じてから50分後には5×10-2Pa程度にまで悪化した。
この結果は、容器の内面に真空蒸着したTi層及びその上に真空蒸着したPd層が、最高温度133℃、12時間のベークにより活性化して、残留ガスの排気を行っている(NEG性能を発揮している)ことを示している。一方、Ti及びPdのコーティングを行っていないSUS304L製の成形ベローズはNEG作用を示さず、オールメタルバルブを閉じた後は真空容器内に真空ポンプがないため、成形ベローズの内壁からの脱ガスにより圧力上昇が起きたと考えられる。
【実施例】
【0050】
実施例3と比較例2との比較から、本発明のNEGコーティング容器では、炭素原子、窒素原子、酸素原子の吸蔵量の合計が1モル%以下の場合には、少なくとも、最高温度133℃、12時間のベークによりNEGが活性化して、残留ガスの排気を行うようになる、という特長を有する。活性化に必要な加熱温度が133℃と低いため、許容加熱温度が低い真空装置に採用できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、大気圧ベント、再排気、再ベークの工程を繰り返した場合であっても、排気能力(NEG性能)の低下が生じにくいNEG及び真空装置を低コストで製造することができる。
本発明のNEG及び真空装置は、粒子加速用真空装置、半導体やディスプレイ等の製造用真空装置、表面分析用真空装置等に好適に用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8