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明細書 :ミトコンドリアtRNA修飾の検出法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年10月31日(2019.10.31)
発明の名称または考案の名称 ミトコンドリアtRNA修飾の検出法
国際特許分類 G01N  27/62        (2006.01)
G01N  33/493       (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
G01N  30/72        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12Q   1/6806      (2018.01)
FI G01N 27/62 V
G01N 33/493 A
G01N 33/483 E
G01N 33/50 P
G01N 30/88 D
G01N 30/72 C
C12Q 1/68 ZNA
C12Q 1/6806 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 29
出願番号 特願2018-559612 (P2018-559612)
国際出願番号 PCT/JP2017/047099
国際公開番号 WO2018/124235
国際出願日 平成29年12月27日(2017.12.27)
国際公開日 平成30年7月5日(2018.7.5)
優先権出願番号 2016255808
優先日 平成28年12月28日(2016.12.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】富澤 一仁
【氏名】魏 范研
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102015、【弁理士】、【氏名又は名称】大澤 健一
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
2G045
4B063
Fターム 2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041GA09
2G045AA13
2G045AA16
2G045AA24
2G045AA25
2G045BA04
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB10
2G045BB20
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB11
2G045CB12
2G045CB17
2G045DA14
2G045FA34
2G045FB06
2G045FB08
2G045GC30
2G045JA01
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR35
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS07
4B063QS17
4B063QS28
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX10
要約 本発明の目的は、ミトコンドリア転移RNA(mt-tRNA)の修飾ヌクレオシドの検出法を提供することなどである。本発明により、タンデム質量分析を用いた、尿などの体液試料又は培養上清中の試料中の修飾ヌクレオシド(例えば、5-taurinomethyl-2-thiouridine(τm5s2U)、5-taurinomethyluridine(τm5U))、2-methylthio-N6-isopentenyl adenosine(ms2i6A))を検出することを含む、mt-tRNA中の修飾ヌクレオシド検出方法などが提供された。
特許請求の範囲 【請求項1】
被検動物におけるミトコンドリアtRNA(mt-tRNA)中に含まれる修飾ヌクレオシドの量を決定する方法であって、以下の工程:
(1)該被検動物由来の体液試料及び該被検動物由来の細胞の培養上清からなる群より選択される試料中の修飾ヌクレオシドの量を、タンデム質量分析法を用いて決定する工程、および
(2)工程(1)により決定された試料中の修飾ヌクレオシド量が、被検動物におけるmt-tRNAにおける該修飾ヌクレオシドの量に関連付けられる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記タンデム質量分析法が、前処理として液体クロマトグラフィー(LC)を含みイオン化源がエレクトロスプレーイオン化源(ESI)であるLC-ESI-MS/MSであり、かつ、使用される質量分析モードが選択反応モニタリングである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、被検動物由来の尿を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料がメタノールにより除タンパク処理された尿試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、ミトコンドリア病を疑われるヒトからの尿試料である、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
さらに以下の工程:
(3)工程(2)により関連づけられた被検動物におけるmt-tRNAにおける修飾ヌクレオシド量が、該被検動物におけるミトコンドリア病の疾患の程度に関連づけられる工程、を含む、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記修飾ヌクレオシドが、タウリン修飾ウリジンである請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記タウリン修飾ウリジンが、5-タウリノメチル 2-チオウリジン(τm5s2U)である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(1)が、
(a)τm5s2Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してτm5s2Uが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るτm5s2U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5s2Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりτm5s2U生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、396±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5s2U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5s2U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5s2Uの量に関連づけられる工程である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タウリン修飾ウリジンが、5-タウリノメイルウリジン(τm5U)である請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(1)が、
(a)τm5Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してτm5Uが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るτm5U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりτm5U生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、380±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5Uの量に関連づけられる工程、である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記修飾ヌクレオシドが、2-メチルチオ-N6—イソペンテニルアデノシン(ms2i6A)である請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記工程(1)が、
(a)ms2i6Aを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してms2i6Aが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るms2i6A前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、ms2i6Aが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりms2i6A生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、382±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆正イオンを、ms2i6A前駆正イオンが182±0.5のm/zを有するms2i6A生成正イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた182±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のms2i6Aの量に関連づけられる工程、である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タンデム質量分析により試料中のτm5s2Uの量を決定する方法であって、
(a)τm5s2Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してτm5s2Uが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るτm5s2U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5s2Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)タンデム質量分析によりτm5s2U生成イオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析が、396±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5s2U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5s2U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5s2Uの量に関連づけられる、方法。
【請求項18】
タンデム質量分析により試料中のτm5Uの量を決定する方法であって、
(a)τm5Uを含有することが疑われる試料をLCに供してτm5Uが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るτm5U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)タンデム質量分析によりτm5U生成イオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析が、380±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5Uの量に関連づけられる、方法。
【請求項19】
タンデム質量分析により試料中のms2i6Aの量を決定する方法であって、
(a)ms2i6Aを含有することが疑われる試料をLCに供してms2i6Aが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るms2i6A前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、ms2i6Aが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)タンデム質量分析によりms2i6A生成イオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析が、382±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆正イオンを、ms2i6A前駆正イオンが182±0.5のm/zを有するms2i6A生成正イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた182±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のms2i6Aの量に関連づけられる、方法。
【請求項20】
前記イオン化源がエレクトロスプレーイオン化源である、請求項17~19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
試料が体液試料又は細胞培養上清を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
試料が尿を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
試料が、除タンパク処理された体液試料又は細胞培養上清である、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリア転移RNA(mt-tRNA)修飾の検出法に関するものである。詳細には、タンデム質量分析を用いた試料中の修飾ヌクレオシドの検出方法、尿などの体液試料又は培養上清中の修飾ヌクレオシド、例えば、タウリン修飾ウリジン(5-taurinomethyl-2-thiouridine(τm5s2U)又は5-taurinomethyluridine(τm5U))や2-methylthio-N6-isopentenyl adenosine(ms2i6A)を検出することを特徴とする、mt-tRNA中の修飾ヌクレオシドの検出方法、当該方法を用いたミトコンドリア病の診断方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアにはミトコンドリアDNAに由来する22種類の転移RNA(tRNA)が存在し、同じくミトコンドリアDNAに由来する13種類のタンパク質が翻訳に必須である。mt-tRNAは多くの化学修飾を含むことが知られており、これまでにmt-tRNAを構成する塩基のうち、118箇所の塩基に計15種類の化学修飾が同定されている。例えば、mt-tRNAのうち、5つのtRNAが34番のウリジンにタウリン修飾を含む。そのうち、mt-tRNALeu及びmt-tRNATrpがタウリノメチル化(τm5U)されており、mt-tRNAGln、mt-tRNAGlu及びmt-tRNALysがタウリノメチルチオール化(τm5s2U)されている(図1)。また、mt-tRNATrpにおいては、37番目のアデノシンも修飾されms2i6Aとなっている。
【0003】
ミトコンドリアにおけるタウリン修飾の重要性はミトコンドリア病患者での知見から示唆されている(非特許文献1)。また、ms2i6Aもミトコンドリア病との関連が示唆されている。ミトコンドリア病は主にミトコンドリアDNAの点変異に起因し、エネルギー需要の多い心筋や骨格筋が障害される遺伝疾患である。一例をあげると、ミトコンドリアDNA点変異のうち、mt-tRNALeuをコードするDNA領域に生じるA3243G点変異、およびmt-tRNALysをコードするDNA領域に生じるA8344G点変異の頻度が特に高い。興味深いことに、A3243G点変異を有する患者では、mt-tRNALeuのτm5修飾が消失していた。また、A8344G点変異を有するミトコンドリア病患者でも、mt-tRNALysのτm5s2修飾が消失していた。これらのことから、タウリン修飾の低下がミトコンドリア病の発症原因であることが強く示唆されている。
【0004】
すなわち、タウリン修飾ウリジンを初めとする修飾ヌクレオシドの量を解析することにより、ミトコンドリア病が診断できる。しかし、従来の技術では、例えば、タウリン修飾ウリジンを解析するためには、患者から大量の筋組織を採取する必要があり、小児に多く発症するミトコンドリア病の診断には応用できなかった。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Wei, F.Y. et al. Cdk5rap1-mediated 2-methylthio modification of mitochondrial tRNAs governs protein translation and contribute to myopathy in mice and humans. Cell Metab. 21: 428-442 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、例えば、タウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドの検出方法を提供することなどである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、胚性幹(ES)細胞から得たRNA試料を酵素処理によりヌクレオシドに分解し、得られたヌクレオシドを液体クロマトグラフィーとそれに続くタンデム質量分析に付すことにより、τm5s2U又はτm5Uを検出することに成功した。また、mt-tRNAのタウリン修飾を阻害されているES細胞(Mto1-KO ES細胞)を作製し、当該細胞から得たRNA試料を用いて同様の解析を行ったところ、同様のシグナルは観察されないことが示された。従って、本検出方法により検出されたシグナルはτm5s2U又はτm5Uに特異的なものであることが示された。さらに本発明者らは、細胞の培養上清又は尿から得たRNA試料を用いることにより、RNA試料を分解する工程を経なくとも、τm5s2U又はτm5Uを検出でき得ることを見出した。
【0008】
発明者らはさらに本発見に基づいて鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の態様を含むものである:
{1}被検動物におけるミトコンドリアtRNA(mt-tRNA)中に含まれる修飾ヌクレオシドの量を決定する方法であって、以下の工程:
(1)該被検動物由来の体液試料及び該被検動物由来の細胞の培養上清からなる群より選択される試料中の修飾ヌクレオシドの量を、タンデム質量分析法を用いて決定する工程、および
(2)工程(1)により決定された試料中の修飾ヌクレオシド量が、被検動物におけるmt-tRNAにおける該修飾ヌクレオシドの量に関連付けられる工程、
を含む方法。
{2}前記タンデム質量分析法が、前処理として液体クロマトグラフィー(LC)を含みイオン化源がエレクトロスプレーイオン化源(ESI)であるLC-ESI-MS/MSであり、かつ、使用される質量分析モードが選択反応モニタリングである、上記{1}に記載の方法。
{3}前記試料が、被検動物由来の尿を含む上記{1}又は{2}に記載の方法。
{4}前記試料がメタノールにより除タンパク処理された尿試料である、上記{3}に記載の方法。
{5}前記試料が、ミトコンドリア病を疑われるヒトからの尿試料である、上記{1}~{4}のいずれか一つに記載の方法。
{6}さらに以下の工程:
(3)工程(2)により関連づけられた被検動物におけるmt-tRNAにおける修飾ヌクレオシド量が、該被検動物におけるミトコンドリア病の疾患の程度に関連づけられる工程、を含む、上記{1}~{5}のいずれか一つに記載の方法。
{7}前記修飾ヌクレオシドが、タウリン修飾ウリジンである上記{1}~{5}のいずれか一つに記載の方法。
{8}前記タウリン修飾ウリジンが、5-タウリノメチル 2-チオウリジン(τm5s2U)である上記{7}に記載の方法。
{9}前記工程(1)が、
(a)τm5s2Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してτm5s2Uが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るτm5s2U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5s2Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりτm5s2U生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、396±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5s2U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5s2U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5s2Uの量に関連づけられる工程である、上記{8}に記載の方法。
{10}前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である上記{9}に記載の方法
{11}前記タウリン修飾ウリジンが、5-タウリノメイルウリジン(τm5U)である上記{7}に記載の方法。
{12}前記工程(1)が、
(a)τm5Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してτm5Uが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るτm5U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりτm5U生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、380±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5Uの量に関連づけられる工程、である上記{11}に記載の方法。
{13}前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である上記{12}に記載の方法
{14}前記修飾ヌクレオシドが、2-メチルチオ-N6—イソペンテニルアデノシン(ms2i6A)である上記{1}~{5}のいずれか一つに記載の方法。
{15}前記工程(1)が、
(a)ms2i6Aを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィーに供してms2i6Aが濃縮された画分を得る工程、
(b)質量分析により検出し得るms2i6A前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、ms2i6Aが濃縮された画分をイオン化源に供する工程、及び
(c)タンデム質量分析(MS/MS)によりms2i6A生成イオンの量を決定する工程、
を含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析(MS/MS)が、382±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆正イオンを、ms2i6A前駆正イオンが182±0.5のm/zを有するms2i6A生成正イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた182±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のms2i6Aの量に関連づけられる工程、である上記{14}に記載の方法。
{16}前記試料が、被検動物由来の尿をメタノールにより除タンパク処理した尿試料である上記{15}に記載の方法
【0009】
また、本発明はさらに以下の態様を含むものである:
[1]タンデム質量分析により試料中のτm5s2Uの量を決定する方法であって、
(a)τm5s2Uを含有することが疑われる試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供してτm5s2Uが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るτm5s2U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5s2Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)タンデム質量分析によりτm5s2U生成イオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析が、396±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5s2U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5s2U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5s2Uの量に関連づけられる、方法。
[2]タンデム質量分析により試料中のτm5Uの量を決定する方法であって、
(a)τm5Uを含有することが疑われる試料をLCに供してτm5Uが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るτm5U前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、τm5Uが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)タンデム質量分析によりτm5U生成イオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)におけるタンデム質量分析が、380±0.5の質量対電荷比(m/z)を有する前駆負イオンを、τm5U前駆負イオンが124±0.5のm/zを有するτm5U生成負イオンを発生する条件下で、衝突反応に付し、該衝突反応により生じた124±0.5のm/zを有する生成イオン量を決定することを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のτm5Uの量に関連づけられる、方法。
[3]前記イオン化源がエレクトロスプレーイオン化源である、[1]又は[2]記載の方法。
[4]試料が体液試料又は細胞培養上清を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]試料が尿を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[6]試料が、除タンパク処理された体液試料又は細胞培養上清である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[7]被検動物におけるミトコンドリア(mt)-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定する方法であって、該被検動物由来の細胞の培養上清及び該被検動物由来の体液試料からなる群より選択される試料中のタウリン修飾ウリジンの量を決定することを含み、決定された試料中のタウリン修飾ウリジンの量が、被検動物におけるタウリン修飾ウリジンの量に関連付けられる、方法。
[8]試料が体液試料である、[7]記載の方法。
[9]試料が尿試料である、[7]記載の方法。
[10]タウリン修飾ウリジンがτm5s2Uである、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]タウリン修飾ウリジン量の決定が[1]記載の方法を用いて行われる、[10]記載の方法。
[12]タウリン修飾ウリジンがτm5Uである、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[13]タウリン修飾ウリジン量の決定が[2]記載の方法を用いて行われる、[12]記載の方法。
[14]試料中のタウリン修飾ウリジンの量を決定する方法が、
(a)除タンパク処理した尿試料1~100μLを液体クロマトグラフィー(LC)に供してタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジンイオンを発生させるのに適した条件下で、タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c)質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c)で決定されたイオンの量が、前記試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる、方法である、[9]記載の方法。
[15]試料がメタノールにより除タンパク処理された尿試料である、[9]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16][7]~[14]のいずれかに記載の方法により被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定することを含む、ミトコンドリア病の診断方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明において提供される修飾ヌクレオシド、例えば、タウリン修飾ウリジンや2-methylthio-N6-isopentenyl修飾(ms2i6修飾)アデノシンの検出方法によれば、尿などの体液試料や細胞培養上清などの様々な物質を含む試料中から、タウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドを特異的に検出することが可能となり得る。さらに、本発明において提供される被検動物中のタウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドの検出方法によれば、苦痛を伴う筋生検を行わず、尿などの生体試料から、非浸潤的にタウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドを検出することが可能となり得る。その上、該検出方法によれば、少量の試料から、タウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドを検出することが可能となり得、また、わずか数ステップの遠心や濃縮ですべての前処理が終了するため、非常に簡便であり、コストが低く、だれでも安定した結果を得ることが可能となり得る。さらに、本発明において提供されるタウリン修飾ウリジン等の修飾ヌクレオシドの検出方法を用いることで、ミトコンドリアの機能解析及びミトコンドリア病の診断が可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、タウリン修飾を含むミトコンドリアtRNAの配列を示す図である。哺乳動物では、5種類のmt-tRNAがタウリン修飾を有する。ミトコンドリアtRNALeu(UUR)とtRNALysは、アンチコドンの34位にタウリノメチルウリジン(τm5U)、ミトコンドリアtRNATrp、tRNAGlnとtRNAGluは、アンチコドンの34位にタウリノメチルチオールウリジン(τm5s2U)を含む。また、mt-tRNATrpは、37位にms2i6Aを含む。
【図2】図2は、従来のタウリン修飾ウリジンを検出する方法を示す図である。
【図3】図3は、微量検体でのタウリン修飾検出の流れを示す図である。100μLの培養上清又はヒト尿検体に500μLのメタノールを加えて、その後、15000 rpmで10分遠心し、上清を回収することにより除タンパクを行う。回収した上清を遠心エバポレーターで乾燥させる。最後に沈殿を100μLの蒸留水で溶解し、2μLをタンデム質量分析装置(島津製作所LCMS-8050)で分析する。
【図4】図4は、タンデム質量分析によるタウリン修飾検出法のバリデーションを示す図である。選択反応モニタリングを応用した質量分析によるτm5Uとτm5s2Uの検出法を検証するために、野生型のES細胞、及びタウリン修飾酵素であるMto1(mitochondrial translation optimization 1)を欠損したES細胞からtotal RNAを抽出し、タンデム質量分析器で分析した。τm5s2Uは分析開始後3分でピークが検出され、tm5Uは分析開始後2分でピークが検出された。それぞれのピークがタウリン修飾を含まないMto1-KO細胞由来のRNAで見られなかったことから、3分及び2分でみられたピークがそれぞれτm5s2Uとτm5Uに対応するものであることが実証された。選択反応モニタリングのパラメーターは次の通りである。τm5U:前駆イオン m/z 380、生成物イオン m/z 124;τm5s2U:前駆イオン m/z 396、生成物イオン m/z 124。
【図5】図5は、培養上清中のτm5Uとτm5s2Uの検出を示す図である。ヒト由来の培養細胞であるHeLa細胞(1.5 x 105 個)を直径3.5 cmの培養皿に撒き、2 mLのDMEM培地で一晩培養した。次に、100μLの培養液に対してメタノール抽出を行い、2μLを質量分析器で分析を行った。τm5s2Uとτm5Uに対応するピークを検出した。
【図6】図6は、ヒト尿中のτm5Uとτm5s2Uの検出を示す図である。
【図7】図7は、ミトコンドリア病(MERRF)患者と健常人の尿検体での、タウリン修飾ウリジン量を比較した結果を示す図である。矢印は、タウリン修飾ウリジン又は未修飾グアノシンのピークを示す。
【図8】図8は、ミトコンドリア病(CEPO)患者と健常人の尿検体での、2-methylthio-N6-isopentenyl adenosine(ms2i6A)、及びタウリン修飾ウリジン量を比較した結果を示す図である。対照として、未修飾の塩基の代表であるグアノシン量を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施態様に限定されるものではない。
なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本明細書において「及び/又は」は、いずれか一方、あるいは、両方を包含する意味で使用される。

【0013】
以下、本発明の詳細を説明する。本発明は、タンデム質量分析により試料中の修飾ヌクレオシド量(例えば、タウリン修飾ウリジン量)を決定する方法及び、被検動物由来の試料中の修飾ヌクレオシド(例えば、タウリン修飾ウリジン)の量を決定することを含む、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれる修飾ヌクレオシド量(例えば、タウリン修飾ウリジン量)を決定する方法などに関する。

【0014】
以下、本発明の測定対象である修飾ヌクレオシドとして、タウリン修飾ウリジンを例として本発明を説明するが、それに限定されるものではなく、何れの修飾ヌクレオシドも本発明の測定対象である。
例えば、本発明の測定対照である修飾ヌクレオシドとしては、これに限定されないが、上記5-taurinomethyl-2-thiouridine(τm5s2U)、5-taurinomethyluridine(τm5U))、2-methylthio-N6-isopentenyl adenosine(ms2i6A)に加え、2-methylthio-N6-threonylcarbamoyl adenosine(ms2t6A)、N6-methyladenosine (m6A)などをあげることができる。

【0015】
本発明において、5-taurinomethyl-2-thiouridine(τm5s2U)

【0016】
【化1】
JP2018124235A1_000003t.gif

【0017】
又は5-taurinomethyluridine(τm5U)

【0018】
【化2】
JP2018124235A1_000004t.gif

【0019】
を総称して、「タウリン修飾ウリジン」と称する場合がある。
本明細書中、「mt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量」とは、mt-tRNAに含まれるタウリン修飾されたウラシル基の量を意味し、「mt-tRNAがタウリン修飾ウリジンを含む」とは、mt-tRNAがタウリン修飾されたウラシル基を有することを意味する。

【0020】
1.被検動物の尿中のタウリン修飾ウリジンの量を決定することを含み、被検動物におけるタウリン修飾ウリジンの量を決定する方法

【0021】
本発明は、タンデム質量分析により試料中のタウリン修飾ウリジンの量を決定する方法(本明細書中、本発明の方法1とも称する。)を提供する。
本発明の方法1は、液体クロマトグラフィー(LC)に供してタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る工程を含みうる。

【0022】
本明細書において、クロマトグラフィーとは、固定相(または担体)と呼ばれる物質の表面又は内部を、移動相と呼ばれる物質が通過する過程により物質を分離させる技術を意味し、LCとは、移動相が液体であるクロマトグラフィーを意味する。また、分離能及び検出能を高めるという観点から、本発明においてLCは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(「高圧液体クロマトグラフィー」として知られることもある)であることが好ましい。

【0023】
本明細書において、用語「高速液体クロマトグラフィー」は、液体の移動相をポンプなどによって加圧して高密度充填カラムなどの固定相を通過させ、分析物を固定相及び移動相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、サイズ排除など)の差を利用して高性能に分離して検出する方法を指す。

【0024】
LCに用いることのできるクロマトグラフィーの種類としては、分配クロマトグラフィー、順相液体クロマトグラフィー(NPLC)、置換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを挙げることができる。
タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得られる限り限定されるものではないが、本発明に好ましく用いられるLCとしては、RPLCが挙げられる。
本明細書中、逆相液体クロマトグラフィーとは、極性移動相及び非極性固定相を使用するクロマトグラフィーを意味する。

【0025】
タウリン修飾ウリジンを濃縮できる限り特に限定されるものではないが、本発明においてタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得るためには、分離モードとしてRPLCを用いるHPLCである、逆相HPLCを行うことが好ましい。

【0026】
当業者であれば、用いる液体クロマトグラフィーの手法及び目的とする分析物などに応じて、LCに用いる適切な分析カラムを適宜選択することができる。本明細書で使用する用語「分析カラム」は、試料中での分析物の存在又は量の決定を可能にするために十分な分離を実行するために十分な特性を有するクロマトグラフィーカラムを意味する。
好ましい実施態様では、分析カラムは、直径が約2μmの粒子を含有する。
工程(a)において、逆相HPLCを用いる場合、分析カラムに用いる充填剤としては、例えば、シリカゲルやポリマーゲル基材に炭化水素鎖を結合した充填剤が挙げられる。工程(a)において、逆相HPLCを用いる場合、分析カラムに用いる好ましい充填剤としては、シリカゲル基材にオクタデシル基を結合した充填剤(ODS又はC18充填剤とも称する)が挙げられる。

【0027】
試料中での分析物の存在又は量の決定を可能にするために十分な分離を行える限り特に限定されるものではないが、例えばAcetonitrileやMethanolを溶出用の溶媒として用いることができる。
LCの条件の一例としては
システム :Shimazu LCMS8050
カラム :Inertsil ODS-3, 2μm (GL Sciences)
カラム長さ:150 mm
カラム内径:2.1 mm
溶出液 :A)30 mM Ammonium Acetate (pH 5.8)
:B)60% Acetonitrile
流速 :0.4 mL/min
カラム温度:50 ℃
注入量 :2 μL
が挙げられるが、これに限定されない。上記の条件下で四重極質量分析器LCMS(LCMS-8050;島津製作所)を用いてタウリン修飾ウリジンの検出を行った場合、τm5Uは2分±10%でピークが検出され、τm5s2Uは3分±10%でピークが検出され得る。

【0028】
タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分は、異なるLC-MS-MS構成においても、当業者であれば、実施例に記載の方法などを参照して得ることができる。

【0029】
本発明の方法1は、タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を、タウリン修飾ウリジンイオンを発生させるのに適した条件下で、イオン化源に供する工程を含む。
タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分のイオン化の方法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)、大気圧光イオン化法(APPI)、電子イオン化法(EI)、高速電子衝撃(FAB)/液体二次イオン化法(LSIMS)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、フィールドイオン化法、フィールド脱離法、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化法及びパーティクルビーム・イオン化法などが挙げられる。当業者であれば、測定する分析物、試料の種類、検出器の種類、正イオンモード又は負イオンモードの選択等に基づいて、イオン化法を選択することができる。タウリン修飾ウリジンが検出され得る限り特に限定されるものではないが、本発明の方法1においては、ESIを用いて行うことが好ましい。

【0030】
本明細書において用いる場合、用語「質量分析」又は「MS」とは、その質量によって化合物を特定するための分析技術であって、イオンの質量対電荷比(m/z)に基づいてイオンをフィルタリング、検出及び/又は測定する手法を指す。

【0031】
タンデムMS(MS/MSとも呼ばれる)は、第一の分析計で特定のイオン(前駆イオンとも呼ばれる)だけを取り出し、これを何らかの手段で解裂させ、生じた断片イオン(生成物イオンとも呼ばれる)を第二の質量計で分析する手法を意味する。
本発明において好ましい解裂手段としては、衝突励起が挙げられる。本発明の好ましい一態様としては、前駆イオンの衝突誘起解離(CID:Collision Induced Dissociation)によって断片化された生成物イオン量を決定する工程を含む。本明細書中、衝突誘起解離とは、選択した前駆イオンと中性分子との衝突を起こすことにより、前駆イオンの一部の結合を破壊することを指す。

【0032】
本発明の方法1においてタンデムMSは、仮にクロマトグラフィーにおいて目的とする分析物(タウリン修飾ウリジン)と同程度の保持時間を有しかつ前駆イオンと同じm/z値を有する夾雑物が存在していても、夾雑物から目的とする分析物と同じm/z値の生成物イオンが生じない限りその影響を排除できるという観点から、通常、選択反応モニタリング(SRM)を用いて行われる。

【0033】
本明細書中、「選択反応モニタリング」又は「SRM」とは、2以上の段数の多段階質量分析において、生成物イオンスペクトルを取得する代わりに、分析対象化合物から生じる特定の生成物イオンの信号量のみを連続的に検出するように質量分析計を動作させることを指す。SRMにおいて、タンデム質量分析は空間的(tandem mass spectrometry in space)であっても、時間的(tandem mass spectrometry in time)であってもよい。

【0034】
イオン化及びMSは、質量分析計を用いて行うことができる。一般に、質量分析計は、試料導入部、イオン化部(イオン源)、質量分離部(アナライザー)、検出部(検出器)、真空排気部(真空ポンプ)、装置制御部・データ処理部(データシステム)等から成る。
本発明の方法1において、タンデムMSに用いるアナライザーの例としては、トリプル四重極アナライザー、イオントラップアナライザー及び飛行時間型アナライザーなどが挙げられる。本発明の方法1においてタンデムMSに用いる好ましいアナライザーとしては、トリプル四重極アナライザー又は四重極飛行時間型(QTOF)アナライザーが挙げられる。本発明の方法1においては、SRMアッセイのために有利な市販の機器プラットフォームは、多くの場合、トリプル四重極アナライザーを用いているという観点から、トリプル四重極アナライザーを用いてタンデムMSを行うことがより好ましい。ここでいう「トリプル四重極」は、当業者が通常理解するように、四重極のみならず、四重極の代わりに多重極や積層電極を用いる場合も含む意味である。
本発明において、質量分析は、負イオンモードで行ってもよい。あるいは、質量分析は、正イオンモードで行ってもよい。本明細書で使用される場合、用語「正イオンモード」とは、正イオンが生成及び検出される質量分析法を指し、用語「負イオンモード」とは、負イオンが生成および検出される質量分析法を指す。
本発明の方法1の好ましい一実施態様において、タウリン修飾ウリジンは、負イオンモードで分析される。本発明の方法1のより好ましい一実施態様において、タウリン修飾ウリジンは、ESIによりイオン化され、負イオンモードで分析される。また、本発明の好ましい一態様において、ms2i6修飾アデノシンの検出は、正イオンモードで分析される。

【0035】
本発明の方法1は、工程(c)タンデム質量分析により、タウリン修飾ウリジン生成イオン(τm5s2U生成イオン及び/又はτm5U生成イオン)の量を決定する工程を含む。本発明の方法1の好ましい態様において、(c)タンデム質量分析によりタウリン修飾ウリジン生成イオンの量を決定する工程とを含み、工程(c)におけるタンデム質量分析が、タウリン修飾ウリジン前駆イオンがタウリン生成イオンを発生する条件下で、工程(b)においてイオン化されたイオンのうち、タウリン修飾ウリジン前駆イオンと同一のm/zを有する前駆イオンを衝突反応に付し、該衝突反応により生じた生成イオンの中で、タウリン生成イオンと同一のm/zを有する生成イオン量を決定することを含む。
上記工程(c)で決定されたイオンの量が、試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる。一実施態様において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、相対的定量であり得る。一実施態様において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、絶対的定量であり得る。

【0036】
本発明の方法1の好ましい一態様において、(c)タンデム質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程は、下記(c1)、(c2)及び(c3):
(c1)工程(b)によりイオン化されたイオンのうち、タウリン修飾ウリジン前駆イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、τm5s2Uの検出には396±0.5 m/zを有する負イオン、及び/又はτm5Uの検出には380±0.5 m/zを有する負イオン)を選択する工程と、
(c2)工程(c1)において選択されたイオンを、該タウリン修飾ウリジン前駆イオンがタウリン修飾ウリジン生成イオン(好ましくは124±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成負イオン)を発生する条件下で、衝突反応に付す工程と、
(c3)工程(c2)の該衝突反応により生じた、該タウリン修飾ウリジン生成イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、124±0.5のm/zを有する生成イオン)量を決定する工程
を含み、工程(c3)で決定されたイオンの量が、試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる。

【0037】
本明細書に示された任意の方法において、個別に検出し得る1以上の内部標準が試料中に提供されてもよく、この量も試料中で決定され得る。個別に検出し得る内部標準を利用する一実施態様においては、目的とする分析物及び試料中に存在する内部標準の両方の全部又は一部がイオン化されて、質量分析計で検出し得る複数のイオンを生成し、それぞれから生成された1種以上のイオンが質量分析により検出され得る。これらの実施態様において、目的とする分析物から発生させたイオンの存在又は量は、検出された内部標準イオンの量との比較により、試料中の目的とする分析物の量の存在に関連づけられ得る。
一実施態様において、タウリン修飾ウリジンイオンの量は、内部標準物質との比較により、試料中のタウリン修飾ウリジンの量と関連付けることができる。

【0038】
別の態様において、試料中の、目的とする分析物の量は、1以上の外部参照標準に対する比較により決定され得る。外部参照標準の例としては、タウリン修飾ウリジンでスパイクされた試料などが挙げられる。外部参照標準は、一般的に、分析される他の試料と同じ処理及び分析を受ける。

【0039】
SRMを用いる一実施態様において、タウリン修飾ウリジンの相対的な定量は、例えば、異なる試料中のタウリン修飾ウリジンのSRM特徴ピーク面積(例えば、特徴ピーク面積又は積分生成物イオン強度)を比較するなどのSRM手法によって、行うことができる。
SRMを用いる別の一実施態様において、タウリン修飾ウリジンの相対的な定量は、例えば、タウリン修飾ウリジンのSRM特徴ピーク面積を、同一試料中の異なる物質(例えば、未修飾ウリジン)からのSRM特徴ピーク面積と比較することによって、行うことができる。

【0040】
SRMを用いる一実施態様において、タウリン修飾ウリジンの絶対的な定量は、例えば、1つの生体試料中のタウリン修飾ウリジンのSRM特徴ピーク面積が、外部から添加された内部標準のSRM特徴ピーク面積に比較される、SRM手法によって決定することができる。
一実施態様において、内部標準は、1以上の重同位体で標識された、合成タウリン修飾ウリジンである。適切な同位体標識内部標準は、質量分析で分析された時に、それが天然のタウリン修飾ウリジン特徴ピークとは異なりかつ区別できるため対照ピークとして使用できる、予測可能で一貫性のあるSRM特徴ピークを生成するように合成され得る。従って、試料に既知量の内部標準を添加し、質量分析で分析した場合に、同一試料中の天然タウリン修飾ウリジンのSRM特徴ピーク面積を、内部標準のSRM特徴ピークと比較することができる。

【0041】
本発明において「試料」とは、タウリン修飾ウリジンを含み得る任意の試料を意味する。特に限定されるものではないが、試料としては、細胞培養上清又は体液試料が好ましく用いられる。一態様において、本発明において用いる試料は、ヒト由来である。
本明細書において、「体液」とは、個体の身体から単離できる任意の液体を意味する。体液の例としては、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗、脳脊髄液(CSF)などが挙げられる。好ましくは、体液は、尿又は血清であり、最も好ましくは尿である。
本明細書において、「細胞培養上清」とは、任意の細胞(好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞)を、培地中で一定期間培養することにより得られる培養物の上清を意味する。培養上清の調整に用いることのできる細胞の例としては、培養細胞、動物個体の身体から単離された細胞、又は動物個体の身体から単離された細胞由来の多能性幹細胞もしくは該多能性幹細胞から分化した細胞などの、動物個体の身体から単離された細胞由来の細胞などが挙げられる。細胞の培養条件は、タウリン修飾ウリジンを検出し得る限り特に限定されるものではないが、例えば、105~107の細胞を、細胞培養用培地2 mLを有する培養皿に播種し、1日以上培養した培養物の培養上清などが例示される。

【0042】
試料中のタンパク質により測定結果に猥雑なシグナルが混入することを避けるという観点から、試料は除タンパク処理されていることが好ましい。「除タンパク処理」の方法としては、一般に、タンパク質の変性による不溶化(過塩素酸、トリクロロ酢酸、メタりん酸などの酸の添加、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどの、水と混和可能な有機溶媒の添加、加熱・冷却)、並びに物理的な除去(メンブランフィルター(遠心ろ過デバイスなど)による限外ろ過、透析チューブによる透析、超遠心)などが挙げられる。また、内面逆相充填剤、ハイブリッド型充填剤、親水性ポリマー充填剤などの浸透制限充填剤を用いることにより、除タンパク処理を行うこともできる。タウリン修飾ウリジン量の決定に支障がない限り限定されるものではないが、好ましい除タンパク処理の方法の一例としては、水と混和可能な有機溶媒によるタンパク質変性による不溶化法を用いて除タンパク処理することが挙げられ、例えば、メタノールを用いて除タンパク処理することが挙げられる。除タンパク処理の方法は公知であり、定法に従って行うことができる。特に限定されるものではないが、例えば、除タンパク処理は、試料(好ましくは、体液試料又は細胞培養上清)に対して、該試料の0.2~20倍量、好ましくは1~5倍量のエタノール又はメタノールを添加し、タンパク質変性に十分な時間(例えば、15分間)反応させた後、変性したタンパク質を沈殿させるのに十分な条件下(例えば、12,000×gで15分間)で遠心分離を行い、上清(有機溶媒層)を回収することにより、除タンパク処理された試料を得ることができる。除タンパク処理を行った試料はそのまま、あるいは遠心エバポレーターなどにより乾燥し、蒸留水などの適当な溶媒に溶解させて、LCに用いることができる。

【0043】
液体クロマトグラフィーに付す試料の量としては、タウリン修飾ウリジンを検出可能な限り特に限定されるものではないが、例えば、除タンパク処理したヒト尿試料であれば1~100μLである。例えば、ヒト尿試料1~10μLを液体クロマトグラフィーに付すことにより、タウリン修飾ウリジン検出に十分なタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得ることができ得る。

【0044】
本発明の方法1のより好ましい態様としては、タンデム質量分析により試料(好ましくは、細胞培養上清又は体液試料、より好ましくは体液試料、さらに好ましくは尿であって、好ましくは除タンパク処理されており、より好ましくは水と混和可能な有機溶媒により除タンパク処理されており、さらに好ましくはメタノールを用いて除タンパク処理されている試料)中のタウリン修飾ウリジン(τm5s2U及び/又はτm5U)の量を決定する方法であって、
(a)タウリン修飾ウリジンを含有することが疑われる試料をLC(好ましくはHPLC、より好ましくは逆相HPLC)に供して該タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る工程と、
(b)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジン前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源(好ましくはESIイオン化源)に供する工程と、
(c1)工程(b)によりイオン化されたイオンのうち、該タウリン修飾ウリジン前駆イオンと同一のm/z(τm5s2Uの検出には396±0.5 m/zを有する負イオン、τm5Uの検出には380±0.5 m/zを有する負イオン)を有するイオンを選択する工程と、
(c2)工程(c1)において選択されたイオンを、前記タウリン修飾ウリジン前駆イオンがタウリン修飾ウリジン生成負イオン(すなわち、124±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成負イオン)を発生する条件下で、衝突反応に付す工程と、
(c3)工程(c2)の該衝突反応により生じた、該タウリン修飾ウリジン生成負イオンと同一のm/zを有するイオン(すなわち、124±0.5のm/zを有する生成イオン)量を決定することを含み、
工程(c3)で決定された生成イオンの量が、前記試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる、方法
が例示される。

【0045】
本発明の一実施態様において、試料中のτm5s2U及びτm5Uは同時に検出することもできる。

【0046】
2.被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定する方法
本発明は、さらに、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定する方法であって、該被検動物由来の細胞の培養上清及び該被検動物由来の体液試料からなる群より選択される試料中のタウリン修飾ウリジン量を決定することを含み、決定された試料中のタウリン修飾ウリジンの量が、被検動物におけるmt-tRNAのタウリン修飾ウリジンの量に関連付けられる、方法(本明細書中、本発明の方法2とも称する)を提供する。

【0047】
本発明の方法2によれば、該被検動物由来の細胞の培養上清又は被検動物の体液試料を用いることで、非侵襲的に被検動物体内の細胞中のmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定することが可能となり得る。

【0048】
被検動物由来の細胞としては、該被検動物から単離された細胞、及び該被検動物から単離された細胞を用いて作製した多能性幹細胞並びに該細胞から分化した細胞などが挙げられる。

【0049】
本発明の方法2において、測定の対象となる被検動物としては、例えば、哺乳動物(例:ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット等)、鳥類(例:ニワトリ等)などが挙げられ、好ましくは、哺乳動物である。

【0050】
本発明の一実施態様において、試料中のτm5s2U及びτm5Uは同時に検出することもできる。

【0051】
例えば、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、質量分析を用いて行うことができる。
本発明の方法2の一実施態様において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、
(b’)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジンイオンを発生させるのに適した条件下で、タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c’)質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程とを含み、工程(c’)で決定されたタウリン修飾ウリジンイオンの量が、前記試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられ、すなわち被検動物におけるmt-tRNAのタウリン修飾ウリジンの量に関連付けられる。

【0052】
試料中のタウリン修飾ウリジンの量が決定できる限り特に限定されるものではないが、タウリン修飾ウリジンが濃縮された画分のイオン化の方法としては、ESI、APCI、APPI、EI、FAB/LSIMS、MALDI、フィールドイオン化法、フィールド脱離法、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化法及びパーティクルビーム・イオン化法などが挙げられ、ESIを用いて行うことが好ましい。

【0053】
質量分析は、正イオンモードで行ってもよい。あるいは、質量分析は、負イオンモードで行ってもよい。好ましい一実施態様において、タウリン修飾ウリジンは、ESIによりイオン化され、負イオンモードで分析される。

【0054】
イオン化及びMSは、質量分析計を用いて行うことができる。本発明の方法2においてMSを用いる場合、MSに用いるアナライザーは、試料中のタウリン修飾ウリジンの量を決定できる限り特に限定されるものではないが、例えば、四重極(Q)アナライザー、トリプル四重極(QqQ)アナライザー、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)アナライザー、イオントラップ(IT)アナライザー、飛行時間型(TOF)アナライザー、及びハイブリッドタンデムアナライザー(Q-TOF、IT-TOF、Qトラップ、Q-FTICR)などが挙げられる。

【0055】
一態様において、本発明の方法2において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、タンデム質量分析を用いて行うことができる。本発明の方法2においてタンデム質量分析を用いる場合、タンデム質量分析は、例えば、選択反応モニタリング、前駆イオンスキャン又は生成物イオンスキャンを含む当該技術分野で公知の任意の方法により実施し得る。本発明の方法2においてタンデムMSを用いて試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定を行う場合、仮にクロマトグラフィーにおいて目的とする分析物(タウリン修飾ウリジン)と同程度の保持時間を有しかつ前駆イオンと同じm/z値を有する夾雑物が存在していても、夾雑物から目的とする分析物と同じm/z値の生成物イオンが生じない限りその影響を排除できるという観点から、選択反応モニタリング(SRM)を行うことが好ましい。本発明の方法2において、SRMは、タンデム質量分析は空間的(tandem mass spectrometry in space)であっても、時間的(tandem mass spectrometry in time)であってもよい。
タウリン修飾ウリジンの量が決定できる限り特に限定されるものではないが、本発明の方法2において質量分析に用いるアナライザーとしてはトリプル四重極アナライザー又はQTOFアナライザーが好ましく、SRMアッセイを用いる場合、SRMアッセイのために有利な市販の機器プラットフォームは、多くの場合、トリプル四重極アナライザーを用いているという観点から、アナライザーとしてはトリプル四重極アナライザーを用いて行うことが好ましい。

【0056】
本発明の方法1又は2において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定に際し、タウリン修飾ウリジンを実質的に含まないことを除いては被検試料と同様に調整した試料を、陰性対照試料として用いてもよい。例えば陰性対照試料として、Mto-1遺伝子をノックアウトした細胞の培養上清を用いてもよい。また、ミトコンドリア病に罹患していない健常動物群から被検試料と同様に調整した標準試料を陽性対照試料として用いてもよい。さらに、外部からタウリン修飾ウリジンを添加した試料を陽性対照として用いることもできる。

【0057】
決定された試料中のタウリン修飾ウリジン量に基づいて、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定することができる。
被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量の決定は、例えば試料中に提供される1以上の内部標準を用いて行うことができる。
一実施態様において、タウリン修飾ウリジンイオンの量は、内部標準物質との比較により、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量と関連付けることができる。
あるいは、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量の決定は、例えば試料中に提供される1以上の外部参照標準を用いて行うことができる。
内部標準又は外部標準を用いた定量は、あらかじめ作成した検量線を用いて行ってもよい。

【0058】
本発明の方法2において、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量の決定は、相対的定量であり得る。

【0059】
本発明の方法2の好ましい一実施態様としては、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定する方法であって、
(a’)該被検動物由来の細胞の培養上清及び該被検動物由来の体液試料からなる群より選択される1以上の試料(好ましくは、体液試料、より好ましくは尿であって、好ましくは除タンパク処理されており、より好ましくは水と混和可能な有機溶媒により除タンパク処理されており、さらに好ましくはメタノールを用いて除タンパク処理されている試料)から、タウリン修飾ウリジンが濃縮される画分を得る工程、
(b’)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジンイオンを発生させるのに適した条件下で、工程(a’)により得たタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c’)質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c’)で決定されたイオンの量が、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量に関連づけられる方法が例示される。

【0060】
上記工程(a’)において、タウリン修飾ウリジンが濃縮される画分を得るための方法は、試料中でのタウリン修飾ウリジン量の決定を可能にするために十分な分離を行える限り特に限定されるものではなく、当技術分野で公知の任意の方法により実施することができる。タウリン修飾ウリジンが濃縮される画分は、例えば、液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動を含む電気泳動、イムノアフィニティー分離を含むアフィニティー分離などの任意の方法又はこれらの組み合わせを行うことにより得ることができる。

【0061】
好ましい一態様において、(c’)タンデム質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程は、下記(c1’)、(c2’)及び(c3’):
(c1’)工程(b’)によりイオン化されたイオンのうち、タウリン修飾ウリジン前駆イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、τm5s2Uの検出には396±0.5 m/zを有する負イオン若しくは398±0.5 m/zを有する正イオン、及び/又はτm5Uの検出には380±0.5 m/zを有する負イオン、若しくは380±0.5 若しくは382±0.5 m/zを有する正イオン)を選択する工程と、
(c2’)工程(c1’)において選択されたイオンを、該タウリン修飾ウリジン前駆イオンがタウリン修飾ウリジン生成イオン(好ましくは、工程(c1’)にて選択したイオンが396±0.5 m/zを有する負イオン及び/又は380±0.5 m/zを有する負イオンである場合には、124±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成負イオンであり、工程(c1’)にて選択したイオンが398±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5及び/若しくは266±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成正イオンであり、及び/又は工程(c1’)にて選択したイオンが380±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5を有するタウリン修飾ウリジン生成正イオン、工程(c1’)にて選択したイオンが382±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、250±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成正イオン)を発生する条件下で、衝突反応に付す工程と、
(c3’)工程(c2’)の該衝突反応により生じた、該タウリン修飾ウリジン生成イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、工程(c1’)にて選択したイオンが396±0.5 m/zを有する負イオン及び/又は380±0.5 m/zを有する負イオンである場合には、124±0.5のm/zを有するイオンであり、工程(c1’)にて選択したイオンが398±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5及び/若しくは266±0.5のm/zを有する正イオンであり、及び/又は工程(c1’)にて選択したイオンが380±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5のm/zを有する正イオン、工程(c1’)にて選択したイオンが382±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、250±0.5のm/zを有する正イオン)量を決定する工程
を含み、工程(c3’)で決定されたイオンの量が、試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる。

【0062】
本発明の方法2のより好ましい一実施態様としては、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を決定する方法であって、
(a’’)該被検動物由来の細胞の培養上清及び該被検動物由来の体液試料からなる群より選択される1以上の試料(好ましくは、体液試料、より好ましくは尿であって、好ましくは除タンパク処理されており、より好ましくは水と混和可能な有機溶媒により除タンパク処理されており、さらに好ましくはメタノールを用いて除タンパク処理されている試料)を、LC(好ましくはHPLC)に供してタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る工程と、
(b’)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジンイオンを発生させるのに適した条件下で、工程(a’’)により得たタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源に供する工程と、
(c’)質量分析によりタウリン修飾ウリジンイオンの量を決定する工程とを含み、
工程(c’)で決定されたイオンの量が、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量に関連づけられる方法が例示される。

【0063】
本発明の方法2のより好ましい一実施態様としては、被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン(τm5s2U及び/又はτm5U)量を決定する方法であって、
(a’)該被検動物由来の細胞の培養上清及び該被検動物由来の体液試料からなる群より選択される1以上の試料(好ましくは、体液試料、より好ましくは尿であって、好ましくは除タンパク処理されており、より好ましくは水と混和可能な有機溶媒により除タンパク処理されており、さらに好ましくはメタノールを用いて除タンパク処理されている試料)から、タウリン修飾ウリジンが濃縮される画分を得る(好ましくは、該試料をLCに供してタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る)工程と、
(b’)質量分析により検出し得るタウリン修飾ウリジン前駆イオンを発生させるのに適した条件下で、工程(a’)により得たタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分をイオン化源(好ましくはESIイオン化源)に供する工程と、
(c1’)工程(b’)によりイオン化されたイオンのうち、タウリン修飾ウリジン前駆イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、τm5s2Uの検出には396±0.5 m/zを有する負イオン若しくは398±0.5 m/zを有する正イオン、及び/又はτm5Uの検出には380±0.5 m/zを有する負イオン、若しくは380±0.5 m/z若しくは382±0.5 m/zを有する正イオン)を選択する工程と、
(c2’)工程(c1’)において選択されたイオンを、該タウリン修飾ウリジン前駆イオンがタウリン修飾ウリジン生成イオン(好ましくは、工程(c1’)にて選択したイオンが396±0.5 m/zを有する負イオン及び/又は380±0.5 m/zを有する負イオンである場合には、124±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成負イオンであり、工程(c1’)にて選択したイオンが398±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5及び/若しくは266±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成正イオンであり、及び/又は工程(c1’)にて選択したイオンが380±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5を有するタウリン修飾ウリジン生成正イオン、工程(c1’)にて選択したイオンが382±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、250±0.5のm/zを有するタウリン修飾ウリジン生成正イオン)を発生する条件下で、衝突反応に付す工程と、
(c3’)工程(c2’)の該衝突反応により生じた、該タウリン修飾ウリジン生成イオンと同一のm/zを有するイオン(好ましくは、工程(c1’)にて選択したイオンが396±0.5 m/zを有する負イオン及び/又は380±0.5 m/zを有する負イオンである場合には、124±0.5のm/zを有するイオンであり、工程(c1’)にて選択したイオンが398±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5及び/若しくは266±0.5のm/zを有する正イオンであり、及び/又は工程(c1’)にて選択したイオンが380±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、126±0.5を有する正イオン、工程(c1’)にて選択したイオンが382±0.5 m/zを有する正イオンである場合には、250±0.5のm/zを有する正イオン)量を決定する工程
を含み、工程(c3’)で決定されたイオンの量が、試料中のタウリン修飾ウリジンの量に関連づけられる方法
が挙げられる。

【0064】
本発明の方法2の工程(a’)において、LCによりタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得る場合、液体クロマトグラフィーに付す試料の量は、タウリン修飾ウリジンを検出可能な限り特に限定されるものではないが、例えば、除タンパク処理したヒト尿サンプル1~100μLである。例えば、ヒト尿サンプル1~10μLを液体クロマトグラフィーに付すことにより、タウリン修飾ウリジン検出に十分なタウリン修飾ウリジンが濃縮された画分を得ることができ得る。

【0065】
本発明の方法2のさらに好ましい実施態様において、試料中のタウリン修飾ウリジンの量の決定は、本発明の方法1を用いて行われる。

【0066】
3.被検動物におけるミトコンドリア病の発症可能性の検査方法
本発明は、さらに本発明の方法2により決定された被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量と、ミトコンドリア病の発症可能性との間の負の相関に基づき、ミトコンドリア病の発症可能性を検査する方法(本明細書中、本発明の方法3とも称する)を提供する。

【0067】
ミトコンドリア病のヒトにおいては、ミトコンドリア病ではないヒトと比較して、mt-tRNAのタウリン修飾ウリジン量が低下していることが知られている。即ち、タウリン修飾ウリジンと、ミトコンドリア病の発症可能性との間の負の相関に基づき、ミトコンドリア病(好ましくは、タウリン修飾ウリジン量の低下により引き起こされるミトコンドリア病)の発症可能性を検査することができる。

【0068】
例えば、被検動物(例えば、被検対象であるヒト)のmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量が、ミトコンドリア病ではない陰性対照群(例、ミトコンドリア病ではないヒト)と比較して相対的に低い場合には、該被検動物は、ミトコンドリア病発症の可能性が高いと判定することができる。従って、本発明の方法2により決定された被検動物におけるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量と、このような判定基準と比較することにより、被検動物のミトコンドリア病の発症可能性を検査することが可能である。

【0069】
また、mt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、本発明の方法2において決定されるmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量と、このカットオフ値とを比較してもよい。例えば、本発明の方法2において決定される被検動物のmt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量が、前記カットオフ値を下回る場合、該被検動物はミトコンドリア病発症の可能性が高いと判定することができる。

【0070】
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の発症の判定をした場合に、高い診断感度及び高い診断特異度の両方を満足できる値である。例えば、ミトコンドリア病のヒトで高い陽性率を示し、かつ、ミトコンドリア病を発症していないヒトで高い陰性率を示す、試料中のタウリン修飾ウリジン量をカットオフ値として設定することが出来る。

【0071】
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、ミトコンドリア病のヒト及びミトコンドリア病を発症していないヒトの、mt-tRNA中に含まれるタウリン修飾ウリジン量を測定し、測定された値における診断感度および診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。
また、例えば、検出された値における診断効率(全症例数に対する、ミトコンドリア病のヒトを「ミトコンドリア病」と正しく判定した症例と、ミトコンドリア病を発症していないヒトを「ミトコンドリア病を発症していない」と正しく判定した症例との合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される値をカットオフ値とすることができる。

【0072】
試料中の1種のタウリン修飾ウリジン量に加えて、別のタウリン修飾ウリジン量又は他の指標(例えば、ミトコンドリアtRNAのチオメチル化修飾(ms2i6A)(Wei et al. Cell Metab. 21, 428, 2015))と組み合わせて、ミトコンドリア病の発症リスクと相関付けることにより、より高い精度での、ミトコンドリア病の発症リスクの判定が期待できる。

【0073】
本発明の方法3を用いて、ミトコンドリア病の素因を有する被検動物の同定方法、あるいはミトコンドリア病の診断又は素因の評価のためのデータを収集する方法が提供され得る。
各用語の定義は、特に言及しない限り、上記1又は2に記載したものと同一である。

【0074】
上記したように、タウリン修飾ウリジンの検出を例として、本発明を説明したが、本発明が他の修飾ヌクレオシドの検出に同様に用いることができることは当業者に明らかある。

【0075】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1:選択反応モニタリング法によるタウリン修飾の検出
選択反応モニタリングを応用した質量分析によるτm5Uとτm5s2Uの検出法を検証するために、野生型の胚性幹(ES)細胞(WT cells)、及びタウリン修飾酵素であるMto1を欠損したES細胞(Mto1-KO cells)からtotal RNAを抽出し、島津製作所製四重極質量分析器LCMS(LCMS-8050)に注入し、選択反応モニタリング法でタウリン修飾を検討した。尚、Mto1-KO細胞は、相同組換え法によってMto1遺伝子の第3-4エクソンを欠失させることによって作製した。
106個の細胞を1 mLのTrizol液(Invitrogen社)で懸濁し、0.2 mLのクロロフホルムを加えて12,000 x gで15分遠心し、total RNAを水相に分離した。その後、0.5 mLのイソプロパノールを加えてtotal RNAを析出させ、12,000 x gで15分遠心し、total RNAを沈殿させた。沈殿を70%エタノールで一度洗い、total RNAを完全に乾燥させた後、適当量の純水でtotal RNAを再溶解した。
分離カラムは逆相カラムであるInertsil ODS-3(150 mm×2.1mm I.D., 2μm)を使用した。移動相A:30 mM Ammonium Acetate (pH 5.8)、移動相B:60% Acetonitrileを用い、グラジェント分析(移動相B: 0min 1%→10min 35%→15min 100%→20min 100%→25min 1%)を行った。流速0.4mL/min,カラムオーブン温度50℃に設定した。試料注入量2μLとした。測定は負イオンモードにて行った。
質量分析は以下の条件で行った。
イオン化法(ESI)
ネブライザーガス流量: 3 L/min
インターフェース温度: 300度
ヒートブロック温度: 400度
ドライインガス流量 10 L/hr
衝突エネルギー(CE) 25
τm5Uに分析にあたっては、m/z値 380である前駆イオンを選択し、これを不活性ガスとの衝突により開裂反応を起こしてさらに断片化して、生成物イオンを示すm/z 124のピークを観察した。また、τm5s2Uに分析にあたっては、m/z値 396である前駆イオンを選択し、これを不活性ガスとの衝突により開裂反応を起こしてさらに断片化して、生成物イオンを示すm/z 124のピークを観察した。
その結果、正常の細胞由来のRNAにおいて、分析開始後3分と2分後にτm5s2Uとτm5Uに対応するピークを検出した。これらのピークがタウリン修飾酵素であるMto1を欠損した細胞に由来するRNAでは消失していたことから、これらのピークがτm5s2Uとτm5Uに対応するものであることが実証された(図4)。
【実施例】
【0077】
実施例2:細胞培養上清からのタウリン修飾の検出
次に、細胞培養上清を用いてタウリン修飾の検出を行った。ヒト由来の培養細胞であるHeLa細胞(1.5 x 105 個)を直径3.5 cmの培養皿に播種し、2mLのDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培地で一晩培養した。細胞培養上清100μLにメタノール500μLを加え、タウリン修飾されたヌクレオシドの抽出を行った。遠心エバポレーターで試料を15000 rpmで10分遠心し乾燥させた後、100μLの蒸留水を加え、再溶解した。2μLの試料を島津製作所製四重極質量分析器LCMS(LCMS-8050)に注入し、実施例1と同様の条件にて選択反応モニタリング法によりタウリン修飾を検討した。
【実施例】
【0078】
結果を図5に示す。質量分析器を用いたタウリン修飾解析により、培養上清からτm5U及びτm5s2Uを検出できることを見出した。
【実施例】
【0079】
実施例3:尿検体からのタウリン修飾の検出
実施例2の結果を踏まえ、生体試料を用いたタウリン修飾の検出を試みた。ヒト尿検体100μLを採取し、500μLのメタノールを加えて、除タンパクを行った。次に、15000 rpmで10分遠心し、上清を遠心濃縮装置で乾燥させた。最後に沈殿を100μLの蒸留水で溶解し、2μLを質量分析装置(島津製作所LCMS-8050)で分析した。その結果、多量のτm5Uと
【実施例】
【0080】
結果を図6に示す。
【実施例】
【0081】
実施例4:ミトコンドリア病患者における、タウリン修飾の検出
ミトコンドリア病の一つである赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)の患者2名から尿を採取し、尿中のタウリン修飾(τm5s2U)を質量分析法で分析した。対象として健常人2名から尿を採取し、同様にタウリン修飾(τm5s2U)を質量分析法で分析した。結果を図7に示す。
健常人と比べてMERRF患者ではτm5s2Uが顕著に低下した。一方、未修飾ヌクレオシドであるグアノシン(G)はMERRF患者と健常人では差が見られなかった。
【実施例】
【0082】
実施例5:尿検体からのタウリン修飾の検出
実施例2と同様に試料を調整し、正イオンモードで質量分析を行った。τm5s2Uの検出に際しては、398 m/zを有する前駆正イオンを選択し、126 m/zのプロダクト正イオンを検出した。τm5s2Uの検出に際しては、380 m/zを有する前駆正イオンを選択し、126 m/zのプロダクト正イオンを検出した。
正イオンモードにおいてもタウリン修飾は検出されたが、正イオンモードでの検出を行った場合、負イオンモードで行った場合と比較して、その検出感度は低かった。
【実施例】
【0083】
実施例6:他のミトコンドリア病の患者の尿検体からの他の修飾ヌクレオシドの検出
他のミトコンドリア病である慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CEPO)の患者を対象として、修飾ヌクレオシドである、ms2i6A、ならにびτm5s2U及びτm5Uの量を測定した。
CEPOは外眼筋麻痺や眼臉下垂、四肢筋力低下を主な症状とするミトコンドリア病の一種である。CEPOの70%にミトコンドリアDNAの欠失もしくは重複を認める。欠失するミトコンドリアDNAの領域は患者によって様々である。CEPOの遺伝子診断には、mtDNAの欠失や重複を検出するサザンブロット法とLong PCR法を併用する。一方、CEPOの場合は、患部である眼筋でしかミトコンドリアDNAの欠失が見つからないことがあるため、血液のみならず、眼筋の生検も必要であり、患者の負担が大きいという問題がある。
【実施例】
【0084】
CIPOから尿を採取し、尿中のms2i6A、ならびにτm5s2U及びτm5Uを質量分析法で分析した。対象として健常人から尿を採取し、同様に修飾ヌクレオシドを質量分析法で分析した。具体的には、以下のようにして行った。
100μLのヒト尿検体に500μLのメタノールを加えて、その後、15,000 rpmで10分遠心し、上清を回収することにより除タンパクを行った。回収した上清を遠心エバポレーターで乾燥させ、最後に沈殿を100μLの蒸留水で溶解し、2μLを質量分析装置(島津製作所LCMS-8050)で分析した。 ms2i6Aは、選択反応モニタリング法によって検出した。検出パラメーターは次の通りである。ms2i6A:前駆正イオン m/z 382、生成物イオン m/z 182; G:前駆正イオン m/z 284、生成物イオン m/z 152。τm5s2U及びτm5Uの検出パラメーターは、実施例1と同様である。結果を図8に示す。
健常人と比べてCIPOF患者ではms2i6Aが顕著に低下した。一方、同じミトコンドリアtRNA由来のτm5s2U及びτm5U、また未修飾ヌクレオシドであるグアノシン(G)はCIPO患者と健常人では差が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明において提供される修飾ヌクレオシド(例えば、ms2i6Aやタウリン修飾ウリジン)の検出方法によれば、尿などの体液試料や細胞培養上清などの様々な物質を含む試料中から、修飾ヌクレオシド(例えば、ms2i6Aやタウリン修飾ウリジン)を特異的に検出することが可能となり得る。さらに、本発明において提供される被検動物中の修飾ヌクレオシドの検出方法によれば、苦痛を伴う筋生検を行わず、尿などの生体試料から、非浸潤的に修飾ヌクレオシドを検出することが可能となり得る。その上、該検出方法によれば、該検出方法によれば、少量の試料から、修飾ヌクレオシドを検出することが可能となり得、また、わずか数ステップの遠心や濃縮ですべての前処理が終了するため、非常に簡便であり、コストが低く、だれでも安定した結果を得ることが可能となり得る。さらに、本発明において提供される修飾ヌクレオシドの検出方法を用いることで、ミトコンドリアの機能解析及びミトコンドリア病の診断が可能となり得る。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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