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明細書 :2,5-ジチエニルピロール誘導体および被膜形成材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3440294号 (P3440294)
公開番号 特開2000-256357 (P2000-256357A)
登録日 平成15年6月20日(2003.6.20)
発行日 平成15年8月25日(2003.8.25)
公開日 平成12年9月19日(2000.9.19)
発明の名称または考案の名称 2,5-ジチエニルピロール誘導体および被膜形成材料
国際特許分類 C07D409/14      
C09D  4/00      
H01B  1/12      
FI C07D 409/14
C09D 4/00
H01B 1/12
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願平11-057838 (P1999-057838)
出願日 平成11年3月5日(1999.3.5)
審査請求日 平成13年5月10日(2001.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】394010252
【氏名又は名称】千葉大学長
発明者または考案者 【氏名】小倉 克之
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作 (外6名)
審査官 【審査官】冨永 保
調査した分野 C07D 409/14
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式
【化1】
JP0003440294B2_000002t.gif(Rは、水素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のピリジル基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアルケニル基である。)によって表されることを特徴とする、2,5-ジチエニルピロール誘導体。

【請求項2】
請求項1記載の2,5-ジチエニルピロール誘導体からなることを特徴とする、被膜形成材料。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装材料、有機金属メッキ材料、有機半導体等として使用できる、金属光沢を有する2,5-ジチエニルピロール誘導体に関するものである。

【0002】
【従来の技術】同一分子内に、連続するπ電子系を有する高分子化合物が、金属光沢を示すことが知られている。このような高分子化合物の金属光沢はπ電子系の自由電子に基づくものであり、半導体としての性質を示すことも期待されている。こうした高分子化合物としては、例えばポリアセチレンやポリ窒化硫黄が知られている。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの公知の高分子化合物は、いずれも、ドープ状態で不安定であるだけでなく、未ドープ状態でさえも不安定である。このため、空気中においても安定な、金属光沢を示す有機化合物が求められていた。また、π共役系を有する高分子化合物は、一般に有機溶媒に対する溶解度が低いために、有機溶媒を溶解させて溶液を製造し、この溶液を展開、塗布することによって被膜を形成することが困難であった。

【0004】
本発明の課題は、金属光沢を示しつつ、空気中においても安定な有機化合物を提供することである。また、本発明の課題は、有機溶媒に対して溶解し易い、被膜形成材料として優れた有機化合物を提供することである。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の一般式
【化2】
JP0003440294B2_000003t.gif(Rは、水素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のピリジル基等の芳香族基と、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアルケニル基である。)によって表されることを特徴とする、2,5-ジチエニルピロール誘導体に係るものである。

【0006】
また、本発明は、前記の2,5-ジチエニルピロール誘導体からなることを特徴とする、被膜形成材料に係るものである。

【0007】
前述したように、金属光沢を有する高分子化合物は幾つか知られているが、金属光沢を有する有機低分子化合物はまったく報告されていない。本発明者は、前述の特定構造のπ電子共役系を同一分子内に有する低分子化合物が、安定して金属光沢を示し、空気中で安定であり、かつ一般的な有機溶媒に対して可溶性であって、被膜形成材料としても優れていることを見いだし、本発明に到達した。

【0008】
前述のトリシアノエテニル基を含む化合物群は、結晶状態、あるいは薄膜状態において、鮮やかな金色、ブロンズ色等を呈した。しかも、アセトン、ベンゼン、クロロホルム等の一般の有機溶媒に対して可溶性であるにもかかわらず、その有機溶媒中に溶解させた後に、有機溶媒から容易に結晶を析出させることができる。例えば、この溶液を放置すると、金属色の結晶を析出する。また、前記化合物群を溶解させた有機溶媒を、適当な基材の表面に展開、塗布し、乾燥することによって、金属光沢を有する被膜を容易に形成できる。

【0009】
本発明の化合物は、熱に対しても驚くべく安定であるので、蒸着膜の形成にも利用できる。また、この化合物を融点以上に加熱し、溶融させ、ついでこの溶融物を冷却することによって、結晶を得ることができる。更に、本発明の化合物群は、安定な溶融状態を保つことができる上、比較的に高い電気伝導性を示す。

【0010】
なお、本発明の化合物群に対して、ヨウ素等をドープすることによって、その電気伝導度を一層向上させることができる。

【0011】
前述の一般式において、Rは、水素、置換もしくは無置換のアルキル基(シクロアルキル基を含む)、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のピリジル基等の芳香族基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアルケニル基である。ここで、Rを構成するアルキル基としては、炭素数1-18のアルキル基が好ましく、炭素数1-12のアルキル基が特に好ましい。アルキル基の置換基としては、炭素数1-18のアルコシキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ピリジル基等の芳香族基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、臭素、ヨウ素、塩素、フッ素が特に好ましい。

【0012】
芳香族基としては、前記のように、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のピリジル基等が好ましい。芳香族基の置換基としては、炭素数1-18(特に好ましくは1-12)のアルキル基、炭素数1-18(特に好ましくは1-12)のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、臭素、ヨウ素、塩素、フッ素、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオアルキル基が特に好ましい。アシル基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、1-18(特に好ましくは1-12)が好ましい。モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は、1-18が好ましい。

【0013】
特にRをアルキルフェニル基、あるいはアルコキシフェニル基とし、アルキル基あるいはアルコキシ基の炭素数を4-12とすると、本発明の化合物をスピンコートし、鏡面を形成することができる。

【0014】
本発明の化合物を製造する際には、例えば、下記の一般式
【化3】
JP0003440294B2_000004t.gifで表される化合物を、有機溶媒中でテトラシアノエチレンと反応させる。

【0015】
あるいは、上記の化合物を用い、ブチルリチウムやリチウムジイソプロピルアシドなどの塩基の作用で、下記の一般式
【化4】
JP0003440294B2_000005t.gifで表される金属化合物を得る。これをテトラシアノエチレンと反応させることによって、本発明の化合物を得る。

【0016】
本発明の化合物において、Rがt-ブトキシカルボニル基である場合には、化合物を加熱することにより、Rを水素に置換することができる。

【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
(実施例1)1-[(4-n-ヘキシルオキシ)フェニル]-2,5-ビス(2-チエニル)ピロール(205mg)を、N,N-ジメチルホルムアミド(30ml)に溶かし、テトラシアノエチレン(126mg)を加えた後、室温で24時間攪拌した。反応物に対して水を加えた後、トルエンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、溶出溶媒としてトルエンを使用して分離し、1-[(4-n-ヘキルシオキシ)フェニル]-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロール(212mg、収率83%)を得た。クロロホルム-ヘキサン混合溶媒によって再結晶させ、ブロンズ色の金属光沢を有する結晶を得た。この結晶の外観を図1の写真に示す。また、この理化学的性質を以下に示す。

【0018】
融点 215.2-216.5℃
1 H NMR(CDCl3 、300MHz) σ0.94(3H、t、J=7.0Hz、1.35-1.54(6H、m)、1.85(2H、tt、J=7.1Hz)、4.06(2H、t、J=6.5Hz)、6.74(1H、d、J=4.4Hz)、6.86(1H、dd、J=1.1および3.8Hz)、6.90(dd、1H、J=3.8および5.0Hz)、7.07(d、1H、J=4.4Hz)、7.07(d、2H、J=8.8Hz)、7.08(d、1H、J=4.5Hz)、7.17(dd、1H、J=1.1 および5.0Hz)、7.29(d、2H、J=8.9Hz)、7.73(d、1H、J=4.7Hz)
IR(KBr) 2363、2215、1655、1560、1491、1362、1252、1182cm-1
紫外-可視吸収スペクトル(THF) : λmax(ε/M-1cm-1):328(14000)、624(41000)

【0019】
(実施例2)窒素雰囲気下、1-(2-イソプロピル)-2,5-ジ(2-チエニル)ピロール(240mg、0.878mmol)のTHF溶液(30ml)を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(0.6ml、1.5M、0.9mmol)を滴下し、15分間攪拌した。その溶液を、テトラシアノエチレン(342mg、1.25mmol)のTHF溶液(50ml)中に-78℃で滴下し、15分間攪拌した。この反応溶液を室温に昇温し、30分間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加えて反応を停止させ、更に水(100ml)を加え、100mlのクロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、溶出溶媒として混合溶媒(クロロホルム-ヘキサン=5:1)を使用して分離し、1-(2-イソプロピル)-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロール(219mg、0.584mmol、収率67%)を金色結晶として得た。この理化学的性質を以下に示す。

【0020】
融点 179.0-180.0℃
1 H NMR(CDCl3 ) σ1.50(d、6H、J=7.0Hz)、4.83(セプテット、1H、J=7.0Hz)、6.35(d、1H、J=4.0Hz)、6.67(d、1H、J=4.0Hz)、7.11(dd、1H、J=3.6および5.1Hz)、7.44(dd、1H、J=1.4および3.6Hz)、7.27(d、1H、J=4.4Hz)、7.44(dd、1H、J=1.4および5.1Hz)、8.03(d、1H、J=4.4Hz)
IR(KBr) 2210、1500、1450、1430、1405、1380、1355、1290、1178、1105cm-1
紫外-可視吸収スペクトル(THF)
λmax(ε/M-1cm-1):585(39500)

【0021】
(実施例3-34)実施例1あるいは2と同様の操作に従って、表1、表2に掲げた各実施例の化合物を製造し、それぞれの融点、性状、1 H NMR、紫外-可視吸収スペクトルを測定した。表1、2には、各化合物の置換基R、融点、性状を示す。

【0022】
【表1】
JP0003440294B2_000006t.gif【0023】
【表2】
JP0003440294B2_000007t.gif【0024】なお、実施例13の化合物である1-(4-n-ドデシルフェニル)-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールの赤紫粉末を、140-145℃に加熱して溶融させ、次いで室温に冷却すると、金色結晶が得られた。

【0025】
また、図2には、実施例20の化合物である1-(2-ブロモフェニル)-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールの外観性状を示し、図3には、実施例27の化合物である1-(4-n-プロピルフェニル)-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールの外観性状を示す。

【0026】
(実施例36)実施例9の化合物である1-(4-n-ブチルフェニル)-2-(2-チエニル)-5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールのブロンズ色結晶のクロロホルム溶液を、200mlのナスフラスコに入れ、フラスコを回転させながらゆっくりとクロロホルムを蒸発させた。この結果、図4に示すような、ブロンズ色から金色の薄膜がナスフラスコの底面に形成された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3