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明細書 :遊星歯車装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年11月21日(2019.11.21)
発明の名称または考案の名称 遊星歯車装置
国際特許分類 F16H   1/46        (2006.01)
FI F16H 1/46
国際予備審査の請求
全頁数 46
出願番号 特願2018-562412 (P2018-562412)
国際出願番号 PCT/JP2018/001290
国際公開番号 WO2018/135552
国際出願日 平成30年1月18日(2018.1.18)
国際公開日 平成30年7月26日(2018.7.26)
優先権出願番号 2017008496
2017008497
優先日 平成29年1月20日(2017.1.20)
平成29年1月20日(2017.1.20)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】藤本 康孝
【氏名】道家 輝
出願人 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3J027
Fターム 3J027FA19
3J027FA36
3J027FA50
3J027FB01
3J027FB31
3J027FB32
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC03
3J027GC14
3J027GC24
3J027GC26
3J027GE01
3J027GE05
要約 遊星歯車装置(30)は、3K型の複合遊星歯車機構を備える。複合遊星歯車機構は、第1内歯車(I1)、第2内歯車(I2)、および外歯車(S)と、第1遊星歯車(PI)と、第2遊星歯車(P)と、キャリア(H)と、を備える。第1遊星歯車(PI)は、第1内歯車(I1)に噛み合い、第1内歯車(I1)の半径よりも大きな直径を有する外歯車部(PI2)と、外歯車(S)に噛み合う内歯車部(PI1)とを具備する。第2遊星歯車(P)は、第2内歯車(I2)に噛み合い、第2内歯車(I2)の半径よりも大きな直径を有する。第1遊星歯車(PI)および第2遊星歯車(P)は相互の回転速度が同期されるように形成されている。
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の太陽歯車によって基本軸が構成される複合遊星歯車機構を備え、
前記複合遊星歯車機構は、
前記複数の太陽歯車として、少なくとも相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車および第2内歯車と、
前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する第1遊星歯車と、
前記第2内歯車に噛み合い、前記第2内歯車の半径よりも大きな直径および前記第1遊星歯車の歯数と異なる歯数を有する第2遊星歯車と、
前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を、各々の中心軸を回転中心として回転可能に支持するキャリアと、を備え、
前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車は相互の回転速度が同期されるように形成されており、
前記キャリアは、
前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸に同軸に配置される回転中心軸と、前記回転中心軸から直交方向の第1の方向に所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第1遊星歯車を回転可能に支持する第1偏心部と、前記回転中心軸から前記直交方向の第2の方向に前記所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第2偏心部と、を備え、
相互に前記直交方向に前記所定距離の2倍だけずれて配置されるとともに前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第1軸および第2軸を具備することによって、前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車の相互の回転速度を同期させる同期部材を備える、
ことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項2】
前記複合遊星歯車機構は、
2つの前記太陽歯車(K)および1つの前記キャリア(H)によって前記基本軸が構成される2K-H型の複合遊星歯車機構であって、
前記2つの前記太陽歯車(K)として、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車および第2内歯車を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記複合遊星歯車機構は、
3つの前記太陽歯車(K)によって前記基本軸が構成される3K型の複合遊星歯車機構であって、
前記3つの前記太陽歯車(K)として、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車、第2内歯車、および外歯車を備え、
前記第1遊星歯車は、
前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する外歯車部と、前記外歯車に噛み合う内歯車部とを備え、
前記第1偏心部および前記第2偏心部を、前記外歯車の前記中心軸を回転中心として回転可能に支持する支持部材を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
3つの太陽歯車(K)によって基本軸が構成される3K型の複合遊星歯車機構を備え、
前記複合遊星歯車機構は、
前記3つの太陽歯車であって、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車、第2内歯車、および外歯車と、
前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する外歯車部と、前記外歯車に噛み合う内歯車部とを具備する第1遊星歯車と、
前記第2内歯車に噛み合い、前記第2内歯車の半径よりも大きな直径および前記第1遊星歯車の歯数と異なる歯数を有する第2外歯車部と、前記外歯車に噛み合う第2内歯車部とを具備する第2遊星歯車と、
前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を、各々の中心軸を回転中心として回転可能に支持するキャリアと、を備え、
前記キャリアは、
前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸から直交方向の第1の方向に所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第1遊星歯車を回転可能に支持する第1偏心部と、前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸から前記直交方向の第2の方向に前記所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第2偏心部と、前記第1偏心部および前記第2偏心部を、前記外歯車の前記中心軸を回転中心として回転可能に支持する支持部材と、を備える、
ことを特徴とする遊星歯車装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、遊星歯車装置に関する。
本願は、2017年1月20日に出願された特願2017-008496号、及び特願2017-008497号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
産業機械、車両、ロボット、OA機器等の各種の駆動系又は動力等伝達系を構成する減速(増速)装置として、太陽歯車、遊星歯車、内歯車、及びキャリアから構成される遊星歯車機構が知られている(非特許文献1:「歯車応用機構の設計」)。遊星歯車機構は、他の減速装置に比べて、比較的高い減速比を実現可能にするとともに、減速比及び伝達トルクに比して機構又は構造が比較的コンパクトである。しかも、遊星歯車機構は、入力軸及び出力軸を同軸配置し得ることから、多種多様な駆動装置又は動力伝達装置等の駆動系又は動力伝達系において広く実用に供されている。
【0003】
遊星歯車機構として、例えば、単純遊星歯車機構、ラビニヨ遊星歯車機構、複合遊星歯車機構、及び不思議遊星歯車機構等が知られている。一般には、高効率、高トルク、及び高減速比の歯車機構は、各種産業機器又は民生機器などに多くの需要があるので、遊星歯車機構の他、波動歯車機構(ハーモニックギヤ)及びサイクロイド歯車機構などの歯車機構も開発され、実用化されている。
【0004】
このような各種歯車機構によって得られる減速比は、概ね以下のとおりであると考えられている。
単純遊星歯車機構(1段):減速比1/4~1/10程度
ラビニヨ遊星歯車機構(1段):減速比1/10程度
複合遊星歯車機構:減速比1/100程度
不思議遊星歯車機構:減速比1/100程度
波動歯車機構:減速比1/30~1/200
サイクロイド歯車機構:減速比1/60~1/200
【0005】
このような多種の歯車機構の中で、不思議遊星歯車機構、波動歯車機構、及びサイクロイド歯車機構は、比較的特殊な構造の歯車を使用した構成を有するので、生産性の低下、設計自由度向上の困難性、構造強度向上の困難性、又は製造コストの高額化等の課題が生じ易い。このため、汎用的な平歯車を用いた単純遊星歯車機構等の遊星歯車機構が、生産性、製造コスト、設計自由度、及び構造強度等の観点より望ましいと考えられる。殊に、複数の遊星歯車機構を組合せてなる複合遊星歯車機構は、上記のとおり、1/100程度の減速比を実現し得るので、高い減速比を要する遊星歯車装置の歯車機構として好ましく採用し得ると考えられる。
【0006】
遊星歯車機構においては、内歯車及び太陽歯車と噛合う複数個の遊星歯車が周方向に配列されるので、遊星歯車機構が機構的に成立するための制約又は設計条件として、同軸条件、組立条件、及び隣接条件の3条件が一般に考慮される。同軸条件は、太陽歯車、内歯車及びキャリアの軸心が同軸上に位置するための条件である。組立条件は、等間隔に配置された複数の遊星歯車が太陽歯車及び内歯車と噛合うための条件である。隣接条件は、隣り合う遊星歯車が互いに干渉しないための条件である。
【0007】
図24~図27は、太陽歯車、遊星歯車、内歯車、及びキャリアから構成される従来の遊星歯車機構の構成を示す概念図である。
【0008】
図24には、単純遊星歯車機構の構成が示されている。太陽歯車Sの歯数Zs、遊星歯車Pの歯数Zp、内歯車Iの歯数Zi、遊星歯車Pの個数N(自然数)を夫々設定するとともに、内歯車Iを固定し、太陽歯車Sを入力軸に設定し、キャリアHを出力軸に設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件、及び隣接条件は、下記数式(1)で表される。なお、図24において、符号Kは、太陽歯車S及び内歯車Iを包含する広義の太陽歯車を意味しており、図13に示す遊星歯車機構は、最も一般的な2K-H型に属する。
【0009】
【数1】
JP2018135552A1_000003t.gif

【0010】
図25には、ラビニヨ式遊星歯車機構の構成が示されている。太陽歯車Sの歯数Zs、径方向外方の遊星歯車P1の歯数Zp1、径方向内方の遊星歯車P2の歯数Zp2、内歯車Iの歯数Zi、遊星歯車P1、P2の個数2Nを夫々設定するとともに、内歯車Iを固定し、太陽歯車Sを入力軸に設定し、キャリアHを出力軸に設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件、及び隣接条件は、下記数式(2)で表される。なお、ラビニヨ式遊星歯車機構では、第1段の遊星歯車P2が回転方向を反転させることから、キャリアHを基準とすると、太陽歯車Sと内歯車Iとが同一方向に回転するので、減速比を示す下記数式(2)の分母において、太陽歯車Sの歯数Zsに掛かる符号が反転する。また、隣接条件は、複数の式によって定義されるが、これは、各式のいずれにも適合することによって隣接条件が満たされることを意味する。
下記数式(2)において、角度φは、太陽歯車Sの中心軸線と遊星歯車P1の中心軸線とを結ぶ直線と、太陽歯車Sの中心軸線と遊星歯車P2の中心軸線とを結ぶ直線とが交差する角度である。
【0011】
【数2】
JP2018135552A1_000004t.gif

【0012】
図24及び図25に示す遊星歯車装置は、同一構面内のギア列(ギアトレーン)によって構成されているが、前述のとおり、回転軸線方向に間隔を隔てた構面内に遊星歯車機構を夫々配置してなる複合遊星歯車機構は、単純遊星歯車機構及びラビニヨ遊星歯車機構に比べ、高減速比を実現する上で好ましく採用し得る歯車機構であると考えられる。しかし、複合遊星歯車機構においては、並置された遊星歯車機構が同軸条件、組立条件、及び隣接条件を夫々充足する必要が生じるので、上記設計条件を充足した上で高減速比を実現することは、実際には、極めて困難である。このため、遊星歯車機構の設計条件を緩和することを意図した複合遊星歯車機構の構成が、例えば、特許文献1~3において提案されている。
【0013】
特許文献1(PCT国際出願公開公報WO2007-017935号)に記載された複合遊星歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車、及び内歯車を有する2組の遊星歯車機構を備えている。この複合遊星歯車機構は、各遊星歯車機構の遊星歯車同士を同軸且つ一体的に連結するとともに、転位歯車の使用によって設計条件を緩和した構成を有する。
特許文献2(特開2008-275112号公報)に記載された複合遊星歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車、及び内歯車を有する2組の遊星歯車機構を連結するとともに、遊星歯車を非軸対称に配置することによって設計条件を緩和した構成を有する。
【0014】
図26は、特許文献3(PCT国際出願公開公報WO2012-060137号)に記載された複合遊星歯車機構の構成を示す概念図である。特許文献3の複合遊星歯車機構は、図26に示す如く、2組の遊星歯車機構の太陽歯車S1、S2を相互連結するとともに、共用のキャリアHによって各遊星歯車P1、P2の支軸及び軸受を独立に支持又は支承することにより、設計自由度を向上した構成を有する。
【0015】
以上説明した各種形式の遊星歯車機構は、いずれも、内歯車を備えた代表的な遊星歯車機構の構成を有するが、他の構成の遊星歯車機構として、図26に示す如く、内歯車を備えない形式の複合遊星歯車機構が知られている。
【0016】
図27に示す複合遊星歯車機構は、図25に示すラビニヨ式遊星歯車機構において内歯車I(図25)を太陽歯車S2(図27)に置換した構成の遊星歯車機構として把握し得る。図27に示す遊星歯車機構においては、太陽歯車S1、S2は、キャリアHを基準として逆方向に回転する。
【0017】
太陽歯車S1の歯数Zs1、太陽歯車S2の歯数Zs2、遊星歯車P1の歯数Zp1、遊星歯車P2の歯数Zp2、遊星歯車P1、P2の個数2Nを設定するとともに、太陽歯車S2を固定し、太陽歯車S1を入力軸に設定し、キャリアHを出力軸に設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件、及び隣接条件は、下記数式(3)で表される。なお、隣接条件は、下記のとおり複数の式によって定義されるが、これは、各式のいずれにも適合すべきことを意味する。
下記数式(3)において、角度φは、太陽歯車S1、S2の中心軸線と遊星歯車P1の中心軸線とを結ぶ直線と、太陽歯車S1、S2の中心軸線と遊星歯車P2の中心軸線とを結ぶ直線とが交差する角度である。
【0018】
【数3】
JP2018135552A1_000005t.gif

【0019】
また、図27に示す遊星歯車機構の変形として、中心軸を共有し且つ異なる歯数を有する2つの遊星歯車を備えた複合遊星歯車機構が、特許文献4(特開平7-301288号公報)等に記載されている。
【先行技術文献】
【0020】

【特許文献1】PCT国際出願公開公報WO2007-017935号
【特許文献2】特開2008-275112号公報
【特許文献3】PCT国際出願公開公報WO2012-060137号
【特許文献4】特開平7-301288号公報
【0021】

【非特許文献1】矢田恒二著「歯車応用機構の設計」(2012年2月1日 社団法人機械技術協会発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
一般に、減速機構を要する産業用機械又は車両、若しくは減速機構を有するロボットの関節部品等の技術分野においては、主として、遊星歯車機構を利用した減速装置が用いられてきた。しかしながら、近年の産業技術の高度化に伴い、従来の遊星歯車機構の設計限界以上の高減速比を備えた小型及び軽量の減速装置の開発が望まれている。例えば、ロボットの動力伝達系を構成する減速機においては、小型及び軽量であって、高い減速比(1/100~1/200)を実現することができ、しかも、比較的低コストで製造し得る構造又は機構の開発が、近年殊に望まれている。
【0023】
しかしながら、従来の遊星歯車機構においては、前述した設計条件の制約のために、高減速比、小型、及び軽量の遊星歯車機構を設計し難い事情がある。また、複合遊星歯車機構(図26及び図27)によれば、或る程度までは、減速比を増大し得るかもしれないが、100:1を超える高い減速比を有する小型及び軽量の遊星歯車機構の設計は、極めて困難である。加えて、従来の複合遊星歯車機構では、通常は、歯車の段数が3段以上に設定される結果、動力伝達効率が低下する傾向がある。
【0024】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ動力伝達効率を向上することが可能な小型且つ軽量な遊星歯車装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る遊星歯車装置は、複数の太陽歯車によって基本軸が構成される複合遊星歯車機構を備え、前記複合遊星歯車機構は、前記複数の太陽歯車として、少なくとも相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車および第2内歯車と、前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する第1遊星歯車と、前記第2内歯車に噛み合い、前記第2内歯車の半径よりも大きな直径および前記第1遊星歯車の歯数と異なる歯数を有する第2遊星歯車と、前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を、各々の中心軸を回転中心として回転可能に支持するキャリアと、を備え、前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車は相互の回転速度が同期されるように形成されており、前記キャリアは、前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸に同軸に配置される回転中心軸と、前記回転中心軸から直交方向の第1の方向に所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第1遊星歯車を回転可能に支持する第1偏心部と、前記回転中心軸から前記直交方向の第2の方向に前記所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第2偏心部と、を備え、相互に前記直交方向に前記所定距離の2倍だけずれて配置されるとともに前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第1軸および第2軸を具備することによって、前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車の相互の回転速度を同期させる同期部材を備える。
【0026】
(2)上記(1)に記載の遊星歯車装置では、前記複合遊星歯車機構は、2つの前記太陽歯車(K)および1つの前記キャリア(H)によって前記基本軸が構成される2K-H型の複合遊星歯車機構であって、前記2つの前記太陽歯車(K)として、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車および第2内歯車を備える。
【0027】
(3)上記(1)に記載の遊星歯車装置では、前記複合遊星歯車機構は、3つの前記太陽歯車(K)によって前記基本軸が構成される3K型の複合遊星歯車機構であって、前記3つの前記太陽歯車(K)として、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車、第2内歯車、および外歯車を備え、前記第1遊星歯車は、前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する外歯車部と、前記外歯車に噛み合う内歯車部とを備え、前記第1偏心部および前記第2偏心部を、前記外歯車の前記中心軸を回転中心として回転可能に支持する支持部材を備える。
【0028】
(4)本発明の一態様に係る遊星歯車装置は、3つの太陽歯車(K)によって基本軸が構成される3K型の複合遊星歯車機構を備え、前記複合遊星歯車機構は、前記3つの太陽歯車であって、相互の中心軸が同軸に配置される第1内歯車、第2内歯車、および外歯車と、前記第1内歯車に噛み合い、前記第1内歯車の半径よりも大きな直径を有する外歯車部と、前記外歯車に噛み合う内歯車部とを具備する第1遊星歯車と、前記第2内歯車に噛み合い、前記第2内歯車の半径よりも大きな直径および前記第1遊星歯車の歯数と異なる歯数を有する第2外歯車部と、前記外歯車に噛み合う第2内歯車部とを具備する第2遊星歯車と、前記第1遊星歯車および前記第2遊星歯車を、各々の中心軸を回転中心として回転可能に支持するキャリアと、を備え、前記キャリアは、前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸から直交方向の第1の方向に所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第1遊星歯車を回転可能に支持する第1偏心部と、前記第1内歯車および前記第2内歯車の各々の前記中心軸から前記直交方向の第2の方向に前記所定距離だけずれた位置に偏心して設けられるとともに前記第2遊星歯車を回転可能に支持する第2偏心部と、前記第1偏心部および前記第2偏心部を、前記外歯車の前記中心軸を回転中心として回転可能に支持する支持部材と、を備える。
【発明の効果】
【0029】
上記(1)に記載の態様に係る遊星歯車装置によれば、第1遊星歯車の直径は第1内歯車の半径よりも大きく形成され、第2遊星歯車の直径は第2内歯車の半径よりも大きく形成されているので、各々において歯数差を小さくすることができる。第1内歯車および第1遊星歯車の歯数差、並びに第2内歯車および第2遊星歯車の歯数差が小さく形成されることによって、遊星歯車装置の動力伝達効率を向上させることができる。歯数差の低減による動力伝達効率の増大は、遊星歯車装置の減速比が増大することに伴って促進され、減速比が100:1を超える場合、さらに200:1を超える場合には、より一層、顕著に動力伝達効率を向上させることができる。
さらに、遊星歯車装置を相互に噛み合う1対の外歯車および内歯車の組み合わせによって構成することができ、相互に噛み合う1対の外歯車の組み合わせを備える場合に比べて、動力伝達効率を向上させることができる。
この遊星歯車装置によれば、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ伝達効率を向上することができる小型且つ軽量な遊星歯車装置を提供することができる。
【0030】
さらに、第1遊星歯車および第2遊星歯車は、第1内歯車および第2内歯車の各中心軸の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されるので、第1遊星歯車および第2遊星歯車の偏心運動を相殺するようにして、ダイナミックバランスを向上させることができる。
キャリアの形状(つまり第1偏心部および第2偏心部の相対位置)に応じたクランク形状の同期部材を備えることによって、第1遊星歯車および第2遊星歯車の相互の回転速度を容易に同期させることができる。
【0031】
さらに、上記(2)の場合、2つの太陽歯車Kとして第1内歯車および第2内歯車を備えるので、太陽歯車として外歯車を備える場合に比べて、第1遊星歯車および第2遊星歯車の公転半径を縮小することができる。これによりキャリアが高速回転する際に第1遊星歯車および第2遊星歯車に作用する遠心力を低減することができ、第1遊星歯車および第2遊星歯車を支持する各軸受部材のラジアル負荷を低減することができる。また、相対的に直径が大きい回転要素である第1内歯車および第2内歯車によって回転駆動源のトルクを被駆動系機器に出力することができるので、大トルクを伝達する動力伝達系に好適に用いることができる。
【0032】
さらに、上記(3)の場合、第1遊星歯車の外歯車部の直径は第1内歯車の半径よりも大きく形成され、第2遊星歯車の直径は第2内歯車の半径よりも大きく形成されているので、各々において歯数差を小さくすることができる。第1内歯車および第1遊星歯車の外歯車部の歯数差、並びに第2内歯車および第2遊星歯車の歯数差が小さく形成されることによって、遊星歯車装置の動力伝達効率を向上させることができる。歯数差の低減による動力伝達効率の増大は、遊星歯車装置の減速比が増大することに伴って促進され、減速比が100:1を超える場合、さらに200:1を超える場合には、より一層、顕著に動力伝達効率を向上させることができる。
さらに、外歯車部および内歯車部を具備する第1遊星歯車を備えるので、遊星歯車装置を相互に噛み合う1対の外歯車および内歯車の組み合わせによって構成することができ、相互に噛み合う1対の外歯車の組み合わせを備える場合に比べて、動力伝達効率を向上させることができる。
【0033】
上記(4)に記載の態様に係る遊星歯車装置によれば、第1遊星歯車の外歯車部の直径は第1内歯車の半径よりも大きく形成され、第2遊星歯車の直径は第2内歯車の半径よりも大きく形成されているので、各々において歯数差を小さくすることができる。第1内歯車および第1遊星歯車の外歯車部の歯数差、並びに第2内歯車および第2遊星歯車の歯数差が小さく形成されることによって、遊星歯車装置の動力伝達効率を向上させることができる。歯数差の低減による動力伝達効率の増大は、遊星歯車装置の減速比が増大することに伴って促進され、減速比が100:1を超える場合、さらに200:1を超える場合には、より一層、顕著に動力伝達効率を向上させることができる。
さらに、外歯車部および内歯車部を具備する第1遊星歯車を備えるので、遊星歯車装置を相互に噛み合う1対の外歯車および内歯車の組み合わせによって構成することができ、相互に噛み合う1対の外歯車の組み合わせを備える場合に比べて、動力伝達効率を向上させることができる。
この遊星歯車装置によれば、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ伝達効率を向上することができる小型且つ軽量な遊星歯車装置を提供することができる。
【0034】
さらに、第1遊星歯車および第2遊星歯車は、第1内歯車および第2内歯車の各中心軸の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されるので、第1遊星歯車および第2遊星歯車の偏心運動を相殺するようにして、ダイナミックバランスを向上させることができる。
外歯車に噛み合う第2内歯車部を具備する第2遊星歯車を備えるので、第1遊星歯車および第2遊星歯車の相互の回転速度を容易に同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置を第1内歯車側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置を第2内歯車側から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置における内歯車および外歯車の噛み合い効率ηεと、内歯車および外歯車の歯数差Z(=Zin-Zout)との関係の一例を示すグラフ図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の第1実施例に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の第1実施例に係る遊星歯車装置を第1内歯車側から見た斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の第1実施例に係る遊星歯車装置を第2内歯車側から見た斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の第1実施例に係る遊星歯車装置の分解斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の第1実施例の変形例に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の第2実施例に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図12】本発明の第1の実施形態の第2実施例に係る遊星歯車装置を第1内歯車側から見た斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施形態の第2実施例に係る遊星歯車装置を第2内歯車側から見た斜視図である。
【図14】本発明の第1の実施形態の第2実施例に係る遊星歯車装置の分解斜視図である。
【図15】本発明の第2の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置を第1内歯車側から見た斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置を第2内歯車側から見た斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置の分解斜視図である。
【図19】本発明の第2の実施形態の参考例に係る遊星歯車装置における伝達効率ηと、基礎効率ηとの関係の一例を示すグラフ図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る遊星歯車装置の構成を示す概念図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る遊星歯車装置を第1内歯車側から見た斜視図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係る遊星歯車装置を第2内歯車側から見た斜視図である。
【図23】本発明の第2の実施形態に係る遊星歯車装置の分解斜視図である。
【図24】従来技術の一例に係る遊星歯車機構であって、太陽歯車、遊星歯車、内歯車、及びキャリアから構成される遊星歯車機構の構成図である。
【図25】従来技術の一例に係る遊星歯車機構であって、太陽歯車、遊星歯車、内歯車、及びキャリアから構成される遊星歯車機構の構成図である。
【図26】従来技術の一例に係る複合遊星歯車機構であって、太陽歯車、遊星歯車、内歯車、及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組み合わせて成る複合遊星歯車機構の構成図である。
【図27】従来技術の一例に係る複合遊星歯車機構であって、内歯車を備えず、太陽歯車、遊星歯車、及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組み合わせて成る複合遊星歯車機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第1の実施形態に係る遊星歯車装置について添付図面を参照しながら説明する。

【0037】
先ず、第1の実施形態の参考例について説明する。第1の実施形態の参考例による遊星歯車装置10は、図1から図4に示すように、いわゆる3つの太陽歯車Kによって基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)が構成される3K型の複合遊星歯車機構を備えている。遊星歯車装置10は、2つの太陽歯車Kである第1内歯車I1および第2内歯車I2と、1つの太陽歯車Kである外歯車Sと、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pと、キャリアHと、を備えている。

【0038】
第1内歯車I1および第2内歯車I2は、例えば平歯車である。第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々の中心軸X1,X2は同軸に配置されている。第1内歯車I1の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2内歯車I2の直径(例えば、ピッチ円直径など)よりも小さく形成されている。第1内歯車I1の歯数Zi1は、例えば第2内歯車I2の歯数Zi2よりも小さく形成されている。

【0039】
外歯車Sは、例えば平歯車である。外歯車Sの中心軸19(W)は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置されている。

【0040】
第1遊星歯車PIは、例えば内歯車および外歯車が一体的に形成された複合歯車であり、内歯車部PI1および外歯車部PI2を備えている。第1遊星歯車PIの内歯車部PI1は、例えば平歯車であり、外歯車Sに噛み合うように形成されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2は、例えば平歯車であり、第1内歯車I1に噛み合うように形成されている。第2遊星歯車Pは、例えば平歯車である。第2遊星歯車Pは、第2内歯車I2に噛み合うように形成されている。第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各々の中心軸Y1,Y2は同軸に配置されている。第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各中心軸Y1,Y2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。
第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは、例えば第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各中心軸Y1,Y2に平行な方向で対向する端部同士が一体的に連結されることによって、相互に固定されている。

【0041】
第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、少なくとも第1内歯車I1の半径(例えば、ピッチ円半径など)よりも大きく形成されている。第2遊星歯車Pの直径(例えば、ピッチ円直径など)は、少なくとも第2内歯車I2の半径(例えば、ピッチ円半径など)よりも大きく形成されている。これにより遊星歯車装置10は、例えばハイポサイクロイド機構などのように、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して単一の遊星歯車(つまり第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各々)のみを備えるように形成されている。第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数差と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの歯数差との各々は、例えば第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して複数の遊星歯車を備える場合に比べて、より小さくなるように形成されている。
第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2遊星歯車Pの直径(例えば、ピッチ円直径など)よりも小さく形成されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2と第2遊星歯車Pの歯数Zとは、相互に異なるように形成されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2は、例えば第2遊星歯車Pの歯数Zよりも小さく形成されている。

【0042】
第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の組み合わせと第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの組み合わせとのうち、何れか第1の組み合わせはダイヤメトラルピッチ歯車によって形成され、何れか第2の組み合わせはモジュールピッチ歯車によって形成されている。第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2は、例えばダイヤメトラルピッチ歯車によって形成されている。第2内歯車I2および第2遊星歯車Pは、例えばモジュールピッチ歯車によって形成されている。遊星歯車装置10は、モジュールピッチ歯車およびダイヤメトラルピッチ歯車の組み合わせによって形成されることによって、例えば単一のモジュールピッチ歯車のみで形成される場合などに比べて、第1内歯車I1および第2内歯車I2のピッチ円半径の差が、より小さく形成されている。第1内歯車I1および第2内歯車I2のピッチ円半径の差が小さく形成されることによって、第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数比(Zi1/Zpi2)と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの歯数比(Zi2/Z)との差が小さく設定される。これにより、例えば後述する数式(25),(26)に示すように、遊星歯車装置10の減速比gは、100:1を超える大きな減速比、好ましくは、200:1を超える大きな減速比に設定されている。
第1の組み合わせと第2の組み合わせとのうち、少なくとも何れか1つの組み合わせは、第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の軸間距離と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの軸間距離とを所定距離aに一致させるように、転位歯車によって形成されている。

【0043】
キャリアHは、一体化された第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pを、各々の中心軸Y1,Y2を回転中心として、回転可能に支持する。キャリアHは、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各中心軸Y1,Y2を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向に所定距離aだけずれた位置に配置させる。キャリアHは、第1遊星歯車PIを第1内歯車I1および外歯車Sに噛み合わせるとともに、第2遊星歯車Pを第2内歯車I2に噛み合わせる。
キャリアHは、例えば、第1偏心部材11および第2偏心部材12と、第1軸受部材13および第2軸受部材14と、第3軸受部材15および第4軸受部材16と、を備えている。第1偏心部材11および第2偏心部材12は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から所定距離aだけ偏心して設けられている。第1偏心部材11および第2偏心部材12の形状は、例えば円柱状に形成されている。第1偏心部材11および第2偏心部材12の各々の中心軸Z1,Z2は同軸に配置されている。第1偏心部材11および第2偏心部材12の各中心軸Z1,Z2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。

【0044】
第1軸受部材13および第2軸受部材14の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第1軸受部材13および第2軸受部材14は、例えばコロ軸受けなどである。第1軸受部材13は、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の中心部に設けられた装着孔部17に挿入されている。第1偏心部材11は、第1軸受部材13の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第2軸受部材14は、第2遊星歯車Pの中心部に設けられた装着孔部18に挿入されている。第2偏心部材12は、第2軸受部材14の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第1軸受部材13および第2軸受部材14は、第1偏心部材11および第2偏心部材12の各中心軸Z1,Z2を第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各中心軸Y1,Y2と同軸に配置させている。第1軸受部材13および第2軸受部材14は、第1偏心部材11および第2偏心部材12の各中心軸Z1,Z2を回転中心として、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pを相対的に第1偏心部材11および第2偏心部材12に対して回転可能に支持する。

【0045】
第3軸受部材15および第4軸受部材16の形状は、例えば円筒状に形成されている。第3軸受部材15および第4軸受部材16は、例えばコロ軸受けなどである。第3軸受部材15は、第1偏心部材11の中心軸Z1から直交方向に所定距離aだけずれて設けられた装着孔部20に挿入されている。装着孔部20の中心軸は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に設けられている。外歯車Sの中心軸19の第1の端部は、第3軸受部材15の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第4軸受部材16は、第2偏心部材12の中心軸Z2から直交方向に所定距離aだけずれて設けられた装着孔部21に挿入されている。装着孔部21の中心軸は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に設けられている。外歯車Sの中心軸19の第2の端部は、第4軸受部材16の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第3軸受部材15および第4軸受部材16は、外歯車Sの中心軸19を第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置させている。第3軸受部材15および第4軸受部材16は、外歯車Sの中心軸19を回転中心として、第1偏心部材11および第2偏心部材12を相対的に外歯車Sに対して回転可能に支持する。

【0046】
第1の実施形態の参考例による遊星歯車装置10は上記構成を備えており、次に、遊星歯車装置10の動力伝達効率(伝達効率η)について説明する。

【0047】
(A)一対の内歯車および外歯車の噛み合い効率
先ず、以下に一対の内歯車および外歯車の噛み合い効率について説明する。
一対の内歯車および外歯車の噛み合い効率ηεは、例えば、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、内歯車と外歯車との間の摩擦係数μと、内歯車および外歯車の噛み合い率因子εとによって、下記数式(4)に示すように記述される。

【0048】
【数4】
JP2018135552A1_000006t.gif

【0049】
上記数式(4)の内歯車および外歯車の噛み合い率因子εは、例えば、近寄り噛み合い率εと、遠のき噛み合い率εとによって、下記数式(5)に示すように記述される。

【0050】
【数5】
JP2018135552A1_000007t.gif

【0051】
上記数式(5)の近寄り噛み合い率εは、例えば、内歯車の歯数Zinと、噛み合い圧力角αと、内歯車の歯先円圧力角αainとによって、下記数式(6)に示すように記述される。

【0052】
【数6】
JP2018135552A1_000008t.gif

【0053】
上記数式(5)の遠のき噛み合い率εは、例えば、外歯車の歯数Zoutと、噛み合い圧力角αと、外歯車の歯先円圧力角αaoutとによって、下記数式(7)に示すように記述される。

【0054】
【数7】
JP2018135552A1_000009t.gif

【0055】
上記数式(6),(7)の噛み合い圧力角αは、例えば、インボリュート関数によって、下記数式(8)に示すように記述される。

【0056】
【数8】
JP2018135552A1_000010t.gif

【0057】
上記数式(8)のインボリュート関数inv(α)は、例えば、基準圧力角αと、内歯車の転位係数xinと、外歯車の転位係数xoutとによって、下記数式(9)に示すように記述される。

【0058】
【数9】
JP2018135552A1_000011t.gif

【0059】
上記数式(9)のインボリュート関数inv(α)は、例えば、基準圧力角αによって、下記数式(10)に示すように記述される。基準圧力角α(rad)は、例えばα=(20°/180°)πである。

【0060】
【数10】
JP2018135552A1_000012t.gif

【0061】
上記数式(6)の内歯車の歯先円圧力角αainは、例えば、内歯車の歯先円直径dainと、内歯車の基礎円直径dbinとによって、下記数式(11)に示すように記述される。

【0062】
【数11】
JP2018135552A1_000013t.gif

【0063】
上記数式(7)の外歯車の歯先円圧力角αaoutは、例えば、外歯車の歯先円直径daoutと、外歯車の基礎円直径dboutとによって、下記数式(12)に示すように記述される。

【0064】
【数12】
JP2018135552A1_000014t.gif

【0065】
上記数式(11)の内歯車の歯先円直径dainは、例えば、内歯車の基準円直径dinと、内歯車の歯末のたけhainとによって、下記数式(13)に示すように記述される。内歯車の基準円直径dinは、内歯車の歯数Zinと、モジュールmとによって記述される。内歯車の歯末のたけhainは、歯末のたけ係数coefhaと、内歯車の転位係数xinと、モジュールmとによって記述される。

【0066】
【数13】
JP2018135552A1_000015t.gif

【0067】
上記数式(11)の内歯車の基礎円直径dbinは、例えば、内歯車の基準円直径dinと、基準圧力角αとによって、下記数式(14)に示すように記述される。

【0068】
【数14】
JP2018135552A1_000016t.gif

【0069】
上記数式(12)の外歯車の歯先円直径daoutは、例えば、外歯車の基準円直径doutと、外歯車の歯末のたけhaoutとによって、下記数式(15)に示すように記述される。外歯車の基準円直径doutは、外歯車の歯数Zoutと、モジュールmとによって記述される。外歯車の歯末のたけhaoutは、歯末のたけ係数coefhaと、外歯車の転位係数xoutと、モジュールmとによって記述される。

【0070】
【数15】
JP2018135552A1_000017t.gif

【0071】
上記数式(12)の外歯車の基礎円直径dboutは、例えば、外歯車の基準円直径doutと、基準圧力角αとによって、下記数式(16)に示すように記述される。

【0072】
【数16】
JP2018135552A1_000018t.gif

【0073】
なお、転位に起因する中心距離修正係数yは、例えば、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、基準圧力角αと、噛み合い圧力角αとによって、下記数式(17)に示すように記述される。

【0074】
【数17】
JP2018135552A1_000019t.gif

【0075】
中心距離aは、例えば、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、中心距離修正係数yと、モジュールmとによって、下記数式(18)に示すように記述される。中心距離aは、内歯車および外歯車の軸間距離であって、遊星歯車装置10における第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の軸間距離と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの軸間距離との各々である。つまり中心距離aは、遊星歯車装置10における所定距離aと同一である。

【0076】
【数18】
JP2018135552A1_000020t.gif

【0077】
上記数式(17),(18)に基づき、噛み合い圧力角αは、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、中心距離aと、基準圧力角αとによって、下記数式(19)に示すように記述される。

【0078】
【数19】
JP2018135552A1_000021t.gif

【0079】
上記数式(9)に基づき、内歯車の転位係数xinおよび外歯車の転位係数xoutは、下記数式(20)に示すように記述されるので、上記数式(19)および下記数式(20)に基づき、内歯車の転位係数xinおよび外歯車の転位係数xoutは、中心距離aを用いて記述される。

【0080】
【数20】
JP2018135552A1_000022t.gif

【0081】
上記数式(4)によれば、歯数の項(1/Zout-1/Zin)と噛み合い率因子εとの各々が小さいほど、摩擦係数μに起因する効率低下が小さくなることが認められる。噛み合い率因子εは、内歯車および外歯車の転位係数xin,xoutに応じて変化するので、各転位係数xin,xoutの最適化によって噛み合い効率ηεを増大させることができる。
また、上記数式(4)に示す一対の内歯車および外歯車の噛み合い効率ηεと、内歯車および外歯車の歯数差Z(=Zin-Zout)との関係の一例は、例えば図5に示すグラフ図によって表される。図5に示すグラフ図においては、例えば、内歯車の歯数Zin=100および摩擦係数μ=0.1とされている。図5によれば、歯数差Z(=Zin-Zout)の減少に伴って、噛み合い効率ηεは増大傾向に変化することが認められる。

【0082】
(B)一対の外歯車(第1外歯車および第2外歯車)の噛み合い効率
次に、以下に一対の外歯車(第1外歯車および第2外歯車)の噛み合い効率について説明する。
一対の外歯車の噛み合い効率ηεは、例えば、第1外歯車の歯数Zout1と、第2外歯車の歯数Zout2と、第1外歯車と第2外歯車との間の摩擦係数μと、第1外歯車および第2外歯車の噛み合い率因子εとによって、下記数式(21)に示すように記述される。

【0083】
【数21】
JP2018135552A1_000023t.gif

【0084】
上記数式(21)の第1外歯車および第2外歯車の噛み合い率因子εは、例えば、近寄り噛み合い率εと、遠のき噛み合い率εとによって、上記数式(5)に示すように記述される。

【0085】
上記数式(5)の近寄り噛み合い率εは、例えば、第1外歯車の歯数Zout1と、噛み合い圧力角αと、第1外歯車の歯先円圧力角αaout1とによって、下記数式(22)に示すように記述される。

【0086】
【数22】
JP2018135552A1_000024t.gif

【0087】
上記数式(5)の遠のき噛み合い率εは、例えば、第2外歯車の歯数Zout2と、噛み合い圧力角αと、第2外歯車の歯先円圧力角αaout2とによって、下記数式(23)に示すように記述される。

【0088】
【数23】
JP2018135552A1_000025t.gif

【0089】
上記数式(4),(21)の各々の第2項によれば、一対の外歯車(第1外歯車および第2外歯車)の噛み合い効率は、一対の内歯車および外歯車の噛み合い効率よりも小さいことが認められる。

【0090】
(C)遊星歯車装置10の伝達効率
遊星歯車装置10において、例えば、外歯車Sは入力軸を構成し、第1内歯車I1は補助軸を構成し、第2内歯車I2は出力軸を構成する。外歯車Sは、例えば回転駆動源の出力軸に連結され、第2内歯車I2は、例えば被駆動系機器の動力伝達軸に連結され、第1内歯車I1は、例えば固定される。
遊星歯車装置10の定格出力トルクMoutは、例えば、定格入力トルクMinと、伝達効率ηと、減速比gとによって、下記数式(24)に示すように記述される。

【0091】
【数24】
JP2018135552A1_000026t.gif

【0092】
上記数式(24)の減速比gは、例えば、入力角速度ωinつまり外歯車Sの角速度ωと、出力角速度ωoutつまり第2内歯車I2の角速度ωi2と、第1歯数比i01と、第2歯数比i02とによって、下記数式(25)に示すように記述される。

【0093】
【数25】
JP2018135552A1_000027t.gif

【0094】
上記数式(25)の第1歯数比i01は、例えば、第1内歯車I1の歯数Zi1と、外歯車Sの歯数Zと、第1遊星歯車PIの内歯車部PI1の歯数Zpi1と、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2とによって、下記数式(26)に示すように記述される。
上記数式(25)の第2歯数比i02は、例えば、第1内歯車I1の歯数Zi1と、第2内歯車I2の歯数Zi2と、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2と、第2遊星歯車Pの歯数Zとによって、下記数式(26)に示すように記述される。

【0095】
【数26】
JP2018135552A1_000028t.gif

【0096】
上記数式(24),(25),(26)に基づき、第2歯数比i02がゼロよりも大きく、かつ第2歯数比i02が1よりも小さい場合の伝達効率ηは、下記数式(27)に示すように記述される。第2歯数比i02が1よりも大きい場合の伝達効率ηは、下記数式(28)に示すように記述される。
下記数式(27),(28)において、第1内歯車I1と第1遊星歯車PIの外歯車部PI2との噛み合い効率ηi1は、上記数式(4)の内歯車および外歯車を第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2とすることによって算出される。第2内歯車I2と第2遊星歯車Pとの噛み合い効率ηi2は、上記数式(4)の内歯車および外歯車を第2内歯車I2および第2遊星歯車Pとすることによって算出される。外歯車Sと第1遊星歯車PIの内歯車部PI1との噛み合い効率ηは、上記数式(4)の内歯車および外歯車を第1遊星歯車PIの内歯車部PI1および外歯車Sとすることによって算出される。

【0097】
【数27】
JP2018135552A1_000029t.gif

【0098】
【数28】
JP2018135552A1_000030t.gif

【0099】
上記数式(4)から(28)によれば、遊星歯車装置10の伝達効率ηは、例えば、第1内歯車I1および第2内歯車I2の転位係数xi1,xi2と、外歯車Sの転位係数xと、第1遊星歯車PIの内歯車部PI1および外歯車部PI2の転位係数xpi1,xpi2と、第2遊星歯車Pの転位係数xと、中心距離aに関連する転位量Xcとを変数とする関数として記述される。したがって、伝達効率ηを最大とする変数(xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,x,Xc)の最適化によって、遊星歯車装置10の伝達効率ηを最大効率に増大させることができる。

【0100】
(D)機構成立の条件
遊星歯車装置10においては、一対の内歯車および外歯車の歯数差が小さいので、伝達効率ηを最大とする変数(xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,x,Xc)の最適化が行なわれる際にトロコイド干渉を抑制する条件が考慮される。トロコイド干渉は、噛み合っている歯車の歯先が歯溝から抜け出る際に他の歯先に接触する干渉である。なお、遊星歯車装置10においては、歯車が軸方向に挿入されるように形成されることによってトリミング干渉は無視される。また、遊星歯車装置10においては、減速比gが大きくなるように形成され、平歯車の歯数が小さくなることは抑制されるので、インボリュート干渉は無視される。
一対の内歯車および外歯車の噛み合いにおいてトロコイド干渉を抑制するための条件は、例えば、内歯車の角度θinと、外歯車の角度θoutと、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、噛み合い圧力角αと、内歯車の歯先円圧力角αainとによって、下記数式(29)に示すように記述される。

【0101】
【数29】
JP2018135552A1_000031t.gif

【0102】
上記数式(29)の内歯車の角度θinは、例えば、中心距離aと、内歯車の歯先円直径dainと、外歯車の歯先円直径daoutと、外歯車の歯先円圧力角αaoutと、噛み合い圧力角αとによって、下記数式(30)に示すように記述される。

【0103】
【数30】
JP2018135552A1_000032t.gif

【0104】
上記数式(29)の外歯車の角度θoutは、例えば、中心距離aと、内歯車の歯先円直径dainと、外歯車の歯先円直径daoutとによって、下記数式(31)に示すように記述される。

【0105】
【数31】
JP2018135552A1_000033t.gif

【0106】
遊星歯車装置10においては、一対の内歯車および外歯車の歯数差が小さくなることに伴い、トロコイド干渉を抑制する条件が厳しくなるので、各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xの適用可能範囲は減少傾向に変化する。従って、各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xが最適化される際には、トロコイド干渉を抑制する条件を満たすための各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xの適用可能範囲が過剰に小さくならないように、歯数差または各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xの適用可能範囲に所定の下限範囲が設定される。

【0107】
上述したように、第1の実施形態の参考例による遊星歯車装置10によれば、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の直径は第1内歯車I1の半径よりも大きく形成され、第2遊星歯車Pの直径は第2内歯車I2の半径よりも大きく形成されているので、各々において歯数差を小さくすることができる。第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数差(Zi1-Zpi2)、並びに第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの歯数差(Zi2-Z)が小さく形成されることによって、遊星歯車装置10の動力伝達効率ηを向上させることができる。各歯数差の低減による動力伝達効率ηの増大は、遊星歯車装置10の減速比gが増大することに伴って促進され、減速比gが100:1を超える場合、さらに200:1を超える場合には、より一層、顕著に動力伝達効率ηを向上させることができる。
さらに、外歯車部PI2および内歯車部PI1を具備する第1遊星歯車PIを備えるので、遊星歯車装置10を相互に噛み合う1対の外歯車および内歯車の組み合わせによって構成することができ、相互に噛み合う1対の外歯車の組み合わせを備える場合に比べて、動力伝達効率ηを向上させることができる。
さらに、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは一体化されるので、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの相互の回転速度を容易に同期させることができる。

【0108】
さらに、2つの太陽歯車Kとして第1内歯車I1および第2内歯車I2を備えるので、太陽歯車Kとして外歯車を備える場合に比べて、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの公転半径を縮小することができる。これにより外歯車Sが高速回転する際に第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pに作用する遠心力を低減することができ、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pを支持する各軸受部材のラジアル負荷を低減することができる。また、相対的に直径が大きい回転要素である第1内歯車I1および第2内歯車I2によって回転駆動源のトルクを被駆動系機器に出力することができるので、大トルクを伝達する動力伝達系に好適に用いることができる。

【0109】
さらに、遊星歯車装置10をモジュールピッチ歯車およびダイヤメトラルピッチ歯車の組み合わせによって形成することによって、100:1を超える高い減速比、好ましくは、200:1を超える高い減速比を容易に実現することができる。なお、本願発明において、この組み合わせは好適ではあるが、この組み合わせに限定されるものではない。
さらに、いわゆる2つの太陽歯車KとキャリアHとによって基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)が構成される2K-H型の複合遊星歯車機構に比べて、キャリアHの回転速度が低下するので、動力伝達効率ηを向上させることができる。

【0110】
この遊星歯車装置10によれば、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ伝達効率を向上することができる小型且つ軽量な遊星歯車装置を提供することができる。

【0111】
以下、第1の実施形態の第1実施例について説明する。
第1実施例の遊星歯車装置30は、偏心運動を抑制するように、第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の噛み合いの位相と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの噛み合いの位相とが異なるように構成されている。
なお、以下において、上述した第1の実施形態の参考例と同一の構成については説明を省略または簡略化し、主に上述した参考例と異なる構成について説明する。

【0112】
第1実施例による遊星歯車装置30の構成において、上述した第1の実施形態の参考例の遊星歯車装置10と異なる点は、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの配置と、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2および第2遊星歯車Pの同期用に備えられる複数のクランク部材31と、キャリアHの構成と、である。
第1実施例による遊星歯車装置30は、図6から図9に示すように、2つの太陽歯車Kである第1内歯車I1および第2内歯車I2と、1つの太陽歯車Kである外歯車Sと、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pと、上述した第1の実施形態の参考例の遊星歯車装置10とは異なる構成のキャリアHと、を備えている。

【0113】
第1遊星歯車PIの中心軸Y1は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第1の方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。第2遊星歯車Pの中心軸Y2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。つまり第1遊星歯車PIの中心軸Y1と第2遊星歯車Pの中心軸Y2とは、直交方向に所定距離aの2倍(2a)だけずれた位置において平行に配置されている。第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されている。

【0114】
第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは、軸方向に所定の距離を置いて配置されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2は、例えば、軸方向において内歯車部PI1よりも第2遊星歯車Pに近い側に設けられている。内歯車部PI1は、例えば、軸方向において第2遊星歯車Pから離れる方向に外歯車部PI2から突出する部位に設けられている。第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは、例えば複数(4個など)のクランク部材31によって、各々の中心軸Y1,Y2を回転中心として、回転速度が同期される同期回転可能に支持されている。複数のクランク部材31は、例えば、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて等間隔を置いて配置されている。クランク部材31は、例えば、クランク軸32と、第5軸受部材33および第6軸受部材34と、を備えている。クランク軸32は、相互に所定距離aの2倍(2a)だけずれて連結された第1軸32aおよび第2軸32bを備えている。第1軸32aおよび第2軸32bの各々は、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各中心軸Y1,Y2に平行に配置されている。
第5軸受部材33および第6軸受部材34の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第5軸受部材33および第6軸受部材34は、例えばコロ軸受けなどである。第5軸受部材33は、第1遊星歯車PIに設けられた同期用装着孔部41に挿入されている。複数(4個など)の同期用装着孔部41は、第1遊星歯車PIの中心軸Y1の軸周りにおいて等間隔を置いて設けられている。クランク軸32の第1軸32aは、第5軸受部材33の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第6軸受部材34は、第2遊星歯車Pに設けられた同期用装着孔部42に挿入されている。複数(4個など)の同期用装着孔部42は、第2遊星歯車Pの中心軸Y2の軸周りにおいて等間隔を置いて設けられている。クランク軸32の第2軸32bは、第6軸受部材34の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第5軸受部材33および第6軸受部材34は、クランク軸32の第1軸32aおよび第1遊星歯車PIの中心軸Y1の軸間距離とクランク軸32の第2軸32bおよび第2遊星歯車Pの中心軸Y2の軸間距離とを同一に設定する。第5軸受部材33および第6軸受部材34は、相対的に第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各々をクランク軸32の第1軸32aおよび第2軸32bの各々に対して回転可能に支持する。

【0115】
キャリアHは、第1遊星歯車PIの中心軸Y1を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第1の方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置させる。キャリアHは、第2遊星歯車Pの中心軸Y2を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置させる。
キャリアHは、例えば、第3偏心部材51および第4偏心部材52と、第7軸受部材53および第8軸受部材54と、第9軸受部材55および第10軸受部材56と、を備えている。キャリアHの回転中心軸は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置されている。第3偏心部材51は、キャリアHの回転中心軸から直交方向の第1の方向に所定距離aだけ偏心して設けられている。第4偏心部材52は、キャリアHの回転中心軸から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけ偏心して設けられている。第3偏心部材51および第4偏心部材52の各々の形状は、例えば円柱状に形成されている。第3偏心部材51および第4偏心部材52は、例えば第3偏心部材51および第4偏心部材52の各中心軸Z3,Z4に平行な方向で対向する端部同士が一体的に連結されることによって、相互に固定されている。第3偏心部材51および第4偏心部材52の各中心軸Z3,Z4は、キャリアHの回転中心軸の直交方向において相互に所定距離aの2倍(2a)だけずれた位置においてキャリアHの回転中心軸に平行に設けられている。

【0116】
第7軸受部材53および第8軸受部材54の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第7軸受部材53および第8軸受部材54は、例えばコロ軸受けなどである。第7軸受部材53は、第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の中心部に設けられた装着孔部61に挿入されている。第3偏心部材51は、第7軸受部材53の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第8軸受部材54は、第2遊星歯車Pの中心部に設けられた装着孔部62に挿入されている。第4偏心部材52は、第8軸受部材54の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第7軸受部材53は、第3偏心部材51の中心軸Z3を第1遊星歯車PIの中心軸Y1と同軸に配置させている。第8軸受部材54は、第4偏心部材52の中心軸Z4を第2遊星歯車Pの中心軸Y2と同軸に配置させている。第7軸受部材53は、第3偏心部材51の中心軸Z3を回転中心として、第1遊星歯車PIを相対的に第3偏心部材51に対して回転可能に支持する。第8軸受部材54は、第4偏心部材52の中心軸Z4を回転中心として、第2遊星歯車Pを相対的に第4偏心部材52に対して回転可能に支持する。

【0117】
第9軸受部材55および第10軸受部材56の形状は、例えば円筒状に形成されている。第9軸受部材55および第10軸受部材56は、例えばコロ軸受けなどである。第9軸受部材55は、第3偏心部材51の中心軸Z3から直交方向の第2の方向に所定距離aだけずれて設けられた装着孔部63に挿入されている。装着孔部63の中心軸は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に設けられている。外歯車Sの中心軸19の第2内歯車I2側の端部は、第9軸受部材55の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第10軸受部材56は、第4偏心部材52の中心軸Z4から直交方向の第1の方向(つまり第2の方向の反対方向)に所定距離aだけずれて設けられた装着孔部64に挿入されている。装着孔部64の各々の中心軸は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に設けられている。外歯車Sの中心軸19の第2内歯車I2側の端部は、第10軸受部材56の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第9軸受部材55および第10軸受部材56は、外歯車Sの中心軸19を第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置させている。第9軸受部材55および第10軸受部材56は、外歯車Sの中心軸19を回転中心として、第3偏心部材51および第4偏心部材52を相対的に外歯車Sに対して回転可能に支持する。

【0118】
上述した第1実施例によれば、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されるので、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの偏心運動を相殺するようにして、ダイナミックバランスを向上させることができる。従って、上述した実施形態の遊星歯車装置10に比べて、より高速回転での適正な動作を実現することができる。
さらに、キャリアHの形状(つまり第3偏心部材51および第4偏心部材52の相対位置)に応じたクランク部材31を備えることによって、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの相互の回転速度を容易に同期させることができる。

【0119】
以下、上述した第1実施例の変形例について説明する。
上述した第1の実施形態の第1実施例による遊星歯車装置30は、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの回転速度を同期させるための複数(4個など)のクランク部材31を備えるとしたが、これに限定されない。
変形例による遊星歯車装置30は、複数のクランク部材31の代わりに、単一のクランク部材31と、キャリアHに対する単一のクランク部材31の相対的な位置関係を一定に維持するための冶具とを備えてもよい。
例えば、図10に示すように、変形例による遊星歯車装置30は、クランク部材31及びキャリアHの各々の中心部を回転可能に支持する支持部材65を備えている。

【0120】
以下、上述した第1の実施形態の第2実施例について説明する。
上述した第1の実施形態の第1実施例による遊星歯車装置30は、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの回転速度を同期させるためのクランク部材31を備えるとしたが、クランク部材31は省略されて、第2遊星歯車Pにおいて外歯車Sに噛み合う内歯車部(第2内歯車部Pa)が追加的に形成されてもよい。
第2実施例による遊星歯車装置70の構成において、上述した第1実施例の遊星歯車装置30と異なる点は、図11から図14に示すように、第2遊星歯車Pの構成と、外歯車Sの構成と、である。

【0121】
第2実施例による遊星歯車装置70の第2遊星歯車Pは、例えば内歯車および外歯車が一体的に形成された複合歯車であり、第2内歯車部Paおよび第2外歯車部Pbを備えている。第2遊星歯車Pの第2内歯車部Paは、例えば平歯車であり、外歯車Sに噛み合うように形成されている。第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbは、例えば平歯車であり、第2内歯車I2に噛み合うように形成されている。第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbは、例えば、軸方向において第2内歯車部Paよりも第1遊星歯車PIに近い側に設けられている。第2内歯車部Paは、例えば、軸方向において第1遊星歯車PIから離れる方向に第2外歯車部Pbから突出する部位に設けられている。

【0122】
第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbの直径(例えば、ピッチ円直径など)は、少なくとも第2内歯車I2の半径(例えば、ピッチ円半径など)よりも大きく形成されている。これにより遊星歯車装置70は、例えばハイポサイクロイド機構などのように、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して単一の遊星歯車(つまり第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各々)のみを備えるように形成されている。第1内歯車I1および第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数差と第2内歯車I2および第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbの歯数差との各々は、例えば第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して複数の遊星歯車を備える場合に比べて、より小さくなるように形成されている。
第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbの直径(例えば、ピッチ円直径など)よりも小さく形成されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2と第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbの歯数Zpbとは、相互に異なるように形成されている。第1遊星歯車PIの外歯車部PI2の歯数Zpi2は、例えば第2遊星歯車Pの第2外歯車部Pbの歯数Zpbよりも小さく形成されている。
第1遊星歯車PIの内歯車部PI1の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2遊星歯車Pの第2内歯車部Paの直径(例えば、ピッチ円直径など)と同一に形成されている。第1遊星歯車PIの内歯車部PI1の歯数Zpi1と第2遊星歯車Pの第2内歯車部Paの歯数Zpaとは、例えば同一に形成されている。

【0123】
第2実施例による遊星歯車装置70の外歯車Sは、例えば中心軸19(W)に一体的に設けられる第1歯車71と、中心軸19に装着される第2歯車72と、を備えている。第1歯車71および第2歯車72の各々の大きさ(例えば、ピッチ円半径など)および歯数は、例えば同一に形成されている。第2歯車72の中心部には、例えば中心軸19が挿入される挿入孔73が形成されている。第2歯車72は、挿入孔73に中心軸19が挿入された状態で挿入孔73と中心軸19との間に固定用のキー部材74が装着されることによって、中心軸19に固定されている。
第1歯車71は第1遊星歯車PIの内歯車部PI1に噛み合い、第2歯車72は第2遊星歯車Pの第2内歯車部Paに噛み合っているので、外歯車Sは、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの各々を、各中心軸Y1,Y2を回転中心として、回転速度を同期させつつ同期回転させる。
なお、第1遊星歯車PIにおいて、キャリアHの第3偏心部材51に装着される第7軸受部材53を挿入するための装着孔部61は、外歯車部PI2の中心部に設けられている。第2遊星歯車Pにおいて、キャリアHの第4偏心部材52に装着される第8軸受部材54を挿入するための装着孔部62は、第2外歯車部Pbの中心部に設けられている。

【0124】
上述した第2実施例によれば、第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pは外歯車Sに噛み合うので、外歯車Sによって第1遊星歯車PIおよび第2遊星歯車Pの相互の回転速度を容易に同期させることができる。
なお、上述した第2実施例において、外歯車Sの第1歯車71および第2歯車72の各々は、中心軸19(W)に一体的に設けられてもよいし、固定用のキー部材74などによって中心軸19(W)に固定されてもよい。

【0125】
以下、上述した第1の実施形態の変形例について説明する。
上述した第1の実施形態においては、各遊星歯車装置10,30,70の伝達効率ηを増大させるために、トロコイド干渉を抑制するための条件を満たしながら、各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xが最適化されるとしたが、これに限定されない。
変形例においては、各転位係数xi1,xi2,x,xpi1,xpi2,xの最適化に加えて、歯末のたけ係数coefhaの最適化によって歯数差および歯先円圧力角が変化させられてもよい。歯末のたけ係数coefhaが最適化されることによって、トロコイド干渉を抑制するための条件が緩和されるとともに、歯数差が小さくなり、各遊星歯車装置10,30,70の伝達効率ηを、より一層、増大させることができる。

【0126】
上述した第1の実施形態において、外歯車Sは入力軸を構成し、第1内歯車I1は補助軸を構成し、第2内歯車I2は出力軸を構成するとしたが、これに限定されない。第1内歯車I1、第2内歯車I2、および外歯車Sと、基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)とは、他の対応関係に設定されてもよい。各遊星歯車装置10,30,70の伝達効率ηは、第1内歯車I1、第2内歯車I2、および外歯車Sと、基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)との対応関係に応じて、上記数式(25)から(28)が変更されることによって算出される。

【0127】
以下、本発明の第2の実施形態に係る遊星歯車装置について添付図面を参照しながら説明する。

【0128】
先ず、第2の実施形態の参考例について説明する。第2の実施形態の参考例による遊星歯車装置80は、図15から図18に示すように、いわゆる2つの太陽歯車KとキャリアHとによって基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)が構成される2K-H型の複合遊星歯車機構を備えている。遊星歯車装置80は、2つの太陽歯車Kである第1内歯車I1および第2内歯車I2と、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2と、キャリアHと、を備えている。

【0129】
第1内歯車I1および第2内歯車I2は、例えば平歯車である。第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々の中心軸X1,X2は同軸に配置されている。第1内歯車I1の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2内歯車I2の直径(例えば、ピッチ円直径など)よりも小さく形成されている。第1内歯車I1の歯数Zi1は、例えば第2内歯車I2の歯数Zi2よりも小さく形成されている。

【0130】
第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、例えば平歯車である。第1遊星歯車P1は、第1内歯車I1に噛み合うように形成されている。第2遊星歯車P2は、第2内歯車I2に噛み合うように形成されている。第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各々の中心軸Y1,Y2は同軸に配置されている。第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各中心軸Y1,Y2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。
第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、例えば複数(4個など)のピン部材81によって一体的に連結されることによって、相互に固定されている。ピン部材81は、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各中心軸Y1,Y2に平行な方向に伸びるように配置されている。ピン部材81の両端部の第1の端部は第1遊星歯車P1に固定され、ピン部材81の両端部の第2の端部は第2遊星歯車P2に固定されている。

【0131】
第1遊星歯車P1の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、少なくとも第1内歯車I1の半径(例えば、ピッチ円半径など)よりも大きく形成されている。第2遊星歯車P2の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、少なくとも第2内歯車I2の半径(例えば、ピッチ円半径など)よりも大きく形成されている。これにより遊星歯車装置80は、例えばハイポサイクロイド機構などのように、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して単一の遊星歯車(つまり第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各々)のみを備えるように形成されている。第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の歯数差と第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の歯数差との各々は、例えば第1内歯車I1および第2内歯車I2の各々に対して複数の遊星歯車を備える場合に比べて、より小さくなるように形成されている。
第1遊星歯車P1の直径(例えば、ピッチ円直径など)は、例えば第2遊星歯車P2の直径(例えば、ピッチ円直径など)よりも小さく形成されている。第1遊星歯車P1の歯数Zp1と第2遊星歯車P2の歯数Zp2とは、相互に異なるように形成されている。第1遊星歯車P1の歯数Zp1は、例えば第2遊星歯車P2の歯数Zp2よりも小さく形成されている。

【0132】
第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の組み合わせと第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の組み合わせとのうち、何れか第1の組み合わせはダイヤメトラルピッチ歯車によって形成され、何れか第2の組み合わせはモジュールピッチ歯車によって形成されている。第1内歯車I1および第1遊星歯車P1は、例えばダイヤメトラルピッチ歯車によって形成されている。第2内歯車I2および第2遊星歯車P2は、例えばモジュールピッチ歯車によって形成されている。遊星歯車装置80は、モジュールピッチ歯車およびダイヤメトラルピッチ歯車の組み合わせによって形成されることによって、例えば単一のモジュールピッチ歯車のみで形成される場合などに比べて、第1内歯車I1および第2内歯車I2のピッチ円半径の差が、より小さく形成されている。第1内歯車I1および第2内歯車I2のピッチ円半径の差が小さく形成されることによって、第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の歯数比(Zi1/Zp1)と第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の歯数比(Zi2/Zp2)との差が小さく設定される。これにより、例えば後述する数式(33),(34)に示すように、遊星歯車装置80の減速比gは、100:1を超える大きな減速比、好ましくは、200:1を超える大きな減速比に設定されている。
第1の組み合わせと第2の組み合わせとのうち、少なくとも何れか1つの組み合わせは、第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の軸間距離と第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の軸間距離とを所定距離aに一致させるように、転位歯車によって形成されている。

【0133】
キャリアHは、一体化された第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2を、各々の中心軸Y1,Y2を回転中心として、回転可能に支持する。キャリアHは、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各中心軸Y1,Y2を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向に所定距離aだけずれた位置に配置させる。キャリアHは、第1遊星歯車P1を第1内歯車I1に噛み合わせるとともに、第2遊星歯車P2を第2内歯車I2に噛み合わせる。
キャリアHは、例えば、回転中心軸82と、偏心部83と、第1軸受部材84および第2軸受部材85と、を備えている。回転中心軸82は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置されている。偏心部83は、回転中心軸82から所定距離aだけ偏心して設けられている。偏心部83の形状は、例えば円柱状に形成されている。偏心部83の中心軸Zは、回転中心軸82から直交方向に所定距離aだけずれた位置において回転中心軸82に平行に設けられている。

【0134】
第1軸受部材84および第2軸受部材85の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第1軸受部材84および第2軸受部材85は、例えばコロ軸受けなどである。第1軸受部材84は、第1遊星歯車P1の中心部に設けられた装着孔部86に挿入されている。偏心部83の軸方向の第1の端部は、第1軸受部材84の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第2軸受部材85は、第2遊星歯車P2の中心部に設けられた装着孔部87に挿入されている。偏心部83の軸方向の第2の端部は、第2軸受部材85の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第1軸受部材84および第2軸受部材85は、偏心部83の中心軸Zを第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各中心軸Y1,Y2と同軸に配置させている。第1軸受部材84および第2軸受部材85は、偏心部83の中心軸Zを回転中心として、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2を相対的に偏心部83に対して回転可能に支持する。

【0135】
第2の実施形態の参考例による遊星歯車装置80は上記構成を備えており、次に、遊星歯車装置80の動力伝達効率(伝達効率η)について説明する。

【0136】
(B)遊星歯車装置80の伝達効率
遊星歯車装置80において、例えば、キャリアHは入力軸を構成し、第1内歯車I1は補助軸を構成し、第2内歯車I2は出力軸を構成する。キャリアHは、例えば回転駆動源の出力軸に連結され、第2内歯車I2は、例えば被駆動系機器の動力伝達軸に連結され、第1内歯車I1は、例えば固定される。
遊星歯車装置80の定格出力トルクMoutは、例えば、定格入力トルクMinと、伝達効率ηと、減速比gとによって、下記数式(32)に示すように記述される。

【0137】
【数32】
JP2018135552A1_000034t.gif

【0138】
上記数式(32)の減速比gは、例えば、入力角速度ωinつまりキャリアHの角速度ωと、出力角速度ωoutつまり第2内歯車I2の角速度ωi2と、歯数比iとによって、下記数式(33)に示すように記述される。

【0139】
【数33】
JP2018135552A1_000035t.gif

【0140】
上記数式(33)の歯数比iは、例えば、第1内歯車I1の歯数Zi1と、第2内歯車I2の歯数Zi2と、第1遊星歯車P1の歯数Zp1と、第2遊星歯車P2の歯数Zp2とによって、下記数式(34)に示すように記述される。

【0141】
【数34】
JP2018135552A1_000036t.gif

【0142】
上記数式(32),(33),(34)に基づき、歯数比iがゼロよりも大きく、かつ歯数比iが1よりも小さい場合の伝達効率ηは、下記数式(35)に示すように記述される。歯数比iが1よりも大きい場合の伝達効率ηは、下記数式(36)に示すように記述される。
下記数式(35),(36)において、基礎効率ηは、第1内歯車I1と第1遊星歯車P1との噛み合い効率ηと、第2内歯車I2と第2遊星歯車P2との噛み合い効率ηとによって、下記数式(37)に示すように記述される。下記数式(37)において、噛み合い効率ηは、上記数式(4)の内歯車および外歯車を第1内歯車I1および第1遊星歯車P1とすることによって算出される。噛み合い効率ηは、上記数式(4)の内歯車および外歯車を第2内歯車I2および第2遊星歯車P2とすることによって算出される。

【0143】
【数35】
JP2018135552A1_000037t.gif

【0144】
【数36】
JP2018135552A1_000038t.gif

【0145】
【数37】
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【0146】
遊星歯車装置80の伝達効率ηと、上記数式(37)に示す基礎効率ηとの関係の一例は、例えば図19に示すグラフ図によって表される。図19に示すグラフ図においては、例えば、モジュールm=1および減速比g=-1/200.6とされている。図19によれば、伝達効率ηとして実用的な値を得るためには、非常に高い基礎効率ηが必要であることが認められる。

【0147】
上記数式(4)から(20)および(32)から(37)によれば、遊星歯車装置80の伝達効率ηは、例えば、第1内歯車I1および第2内歯車I2の転位係数xi1,xi2と、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の転位係数xp1,xp2と、中心距離aに関連する転位量Xcとを変数とする関数として記述される。したがって、伝達効率ηを最大とする変数(xi1,xi2,xp1,xp2,Xc)の最適化によって、遊星歯車装置80の伝達効率ηを最大効率に増大させることができる。

【0148】
(D)機構成立の条件
遊星歯車装置80においては、一対の内歯車および外歯車の歯数差が小さいので、伝達効率ηを最大とする変数(xi1,xi2,xp1,xp2,Xc)の最適化が行なわれる際にトロコイド干渉を抑制する条件が考慮される。トロコイド干渉は、噛み合っている歯車の歯先が歯溝から抜け出る際に他の歯先に接触する干渉である。なお、遊星歯車装置80においては、歯車が軸方向に挿入されるように形成されることによってトリミング干渉は無視される。また、遊星歯車装置80においては、減速比gが大きくなるように形成され、平歯車の歯数が小さくなることは抑制されるので、インボリュート干渉は無視される。
一対の内歯車および外歯車の噛み合いにおいてトロコイド干渉を抑制するための条件は、例えば、内歯車の角度θinと、外歯車の角度θoutと、内歯車の歯数Zinと、外歯車の歯数Zoutと、噛み合い圧力角αと、内歯車の歯先円圧力角αainとによって、下記数式(38)に示すように記述される。

【0149】
【数38】
JP2018135552A1_000040t.gif

【0150】
上記数式(38)の内歯車の角度θinは、例えば、中心距離aと、内歯車の歯先円直径dainと、外歯車の歯先円直径daoutと、外歯車の歯先円圧力角αaoutと、噛み合い圧力角αとによって、下記数式(39)に示すように記述される。

【0151】
【数39】
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【0152】
上記数式(38)の外歯車の角度θoutは、例えば、中心距離aと、内歯車の歯先円直径dainと、外歯車の歯先円直径daoutとによって、下記数式(40)に示すように記述される。

【0153】
【数40】
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【0154】
遊星歯車装置80においては、一対の内歯車および外歯車の歯数差が小さくなることに伴い、トロコイド干渉を抑制する条件が厳しくなるので、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の適用可能範囲は減少傾向に変化する。従って、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2が最適化される際には、トロコイド干渉を抑制する条件を満たすための各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の適用可能範囲が過剰に小さくならないように、歯数差または各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の適用可能範囲に所定の下限範囲が設定される。

【0155】
上述したように、第2の実施形態の参考例による遊星歯車装置80によれば、第1遊星歯車P1の直径は第1内歯車I1の半径よりも大きく形成され、第2遊星歯車P2の直径は第2内歯車I2の半径よりも大きく形成されているので、各々において歯数差を小さくすることができる。第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の歯数差(Zi1-Zp1)、並びに第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の歯数差(Zi2-Zp2)が小さく形成されることによって、遊星歯車装置80の動力伝達効率ηを向上させることができる。各歯数差の低減による動力伝達効率ηの増大は、遊星歯車装置10の減速比gが増大することに伴って促進され、減速比gが100:1を超える場合、さらに200:1を超える場合には、より一層、顕著に動力伝達効率ηを向上させることができる。
さらに、遊星歯車装置80を相互に噛み合う1対の外歯車および内歯車の組み合わせによって構成することができ、相互に噛み合う1対の外歯車の組み合わせを備える場合に比べて、動力伝達効率ηを向上させることができる。
さらに、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は一体化されるので、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の相互の回転速度を容易に同期させることができる。

【0156】
さらに、2つの太陽歯車Kとして第1内歯車I1および第2内歯車I2を備えるので、太陽歯車Kとして外歯車を備える場合に比べて、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の公転半径を縮小することができる。これによりキャリアHが高速回転する際に第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2に作用する遠心力を低減することができ、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2を支持する各軸受部材のラジアル負荷を低減することができる。また、相対的に直径が大きい回転要素である第1内歯車I1および第2内歯車I2によって回転駆動源のトルクを被駆動系機器に出力することができるので、大トルクを伝達する動力伝達系に好適に用いることができる。

【0157】
ここで、遊星歯車装置80をモジュールピッチ歯車およびダイヤメトラルピッチ歯車の組み合わせによって形成すると、100:1を超える高い減速比、好ましくは、200:1を超える高い減速比を容易に実現することができることは、既に先願(特願2015-164100)で提案したが、本願発明は、この組み合わせは好適ではあるが、この組み合わせに限定されるものではない。

【0158】
さらに、本出願人は先の出願(特願2015-164100の図4及び特願2016-112434の図1)において、2個以上の遊星歯車(P1又はP2)を軸対称に配置してダイナミックバランスをとった遊星歯車装置を提案した。しかしながら、遊星歯車を軸対称に配置するためには、当該遊星歯車の直径を該当する内歯車の半径未満にする必要があった。そのため歯と歯との摩擦が生じ、減速比が高い場合の効率が急激に低下し、例えば減速比が200:1の場合に最適化しても、伝達効率が90%前後までしか向上しなかった。しかるに本願のような内歯車の半径以上の直径を有する遊星歯車を用いる構成では、減速比が200:1でも伝達効率を95%以上にすることができる。このような構成はダイナミックバランスが崩れるため、従来は慮外されていたものであるが、本発明者らは低速回転において十分使用できることを見出した。特に、遊星歯車の直径を該当する内歯車の直径の80%以上にすると、伝達効率が顕著に向上し、またダイナミックバランスの問題も減少することが判明した。

【0159】
以下、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態において、遊星歯車装置90は、偏心運動を抑制するように、第1内歯車I1および第1遊星歯車P1の噛み合いの位相と第2内歯車I2および第2遊星歯車P2の噛み合いの位相とが異なるように構成されている。
なお、以下において、上述した第2の実施形態の参考例と同一の構成については説明を省略または簡略化し、主に上述した参考例と異なる構成について説明する。

【0160】
第2の実施形態による遊星歯車装置90の構成において、上述した第2の実施形態の参考例の遊星歯車装置80と異なる点は、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の配置と、ピン部材81の代わりに第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の同期用に備えられる複数のクランク部材91と、キャリアHの構成と、である。
第2の実施形態による遊星歯車装置90は、図20から図23に示すように、2つの太陽歯車Kである第1内歯車I1および第2内歯車I2と、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2と、上述した参考例の遊星歯車装置80とは異なる構成のキャリアHと、を備えている。

【0161】
第1遊星歯車P1の中心軸Y1は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第1の方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。第2遊星歯車P2の中心軸Y2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置されている。つまり第1遊星歯車P1の中心軸Y1と第2遊星歯車P2の中心軸Y2とは、直交方向に所定距離aの2倍(2a)だけずれた位置において平行に配置されている。第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されている。

【0162】
第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、軸方向に所定の距離を置いて配置されている。第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、例えば複数(4個など)のクランク部材91によって、各々の中心軸Y1,Y2を回転中心として、各々の回転速度が同期される同期回転可能に支持されている。複数のクランク部材91は、例えば、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて等間隔を置いて配置されている。クランク部材91は、例えば、クランク軸92と、第3軸受部材93および第4軸受部材94と、を備えている。クランク軸92は、相互に所定距離aの2倍(2a)だけずれて連結された第1軸92aおよび第2軸92bを備えている。第1軸92aおよび第2軸92bの各々は、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各中心軸Y1,Y2に平行に配置されている。
第3軸受部材93および第4軸受部材94の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第3軸受部材93および第4軸受部材94は、例えばコロ軸受けなどである。第3軸受部材93は、第1遊星歯車P1に設けられた同期用装着孔部95に挿入されている。複数(4個など)の同期用装着孔部95は、第1遊星歯車P1の中心軸Y1の軸周りにおいて等間隔を置いて設けられている。クランク軸92の第1軸92aは、第3軸受部材93の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第4軸受部材94は、第2遊星歯車P2に設けられた同期用装着孔部96に挿入されている。複数(4個など)の同期用装着孔部96は、第2遊星歯車P2の中心軸Y2の軸周りにおいて等間隔を置いて設けられている。クランク軸92の第2軸92bは、第4軸受部材94の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第3軸受部材93および第4軸受部材94は、クランク軸92の第1軸92aおよび第1遊星歯車P1の中心軸Y1の軸間距離とクランク軸92の第2軸92bおよび第2遊星歯車P2の中心軸Y2の軸間距離とを同一に設定する。第3軸受部材93および第4軸受部材94は、相対的に第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各々をクランク軸92の第1軸92aおよび第2軸92bの各々に対して回転可能に支持する。

【0163】
キャリアHは、第1遊星歯車P1の中心軸Y1を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第1の方向に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置させる。キャリアHは、第2遊星歯車P2の中心軸Y2を、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけずれた位置において第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2に平行に配置させる。
キャリアHは、例えば、回転中心軸82と、第1偏心部97aおよび第2偏心部97bと、第5軸受部材98および第6軸受部材99と、を備えている。回転中心軸82は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2と同軸に配置されている。第1偏心部97aは、回転中心軸82から直交方向の第1の方向に所定距離aだけ偏心して設けられている。第2偏心部97bは、回転中心軸82から直交方向の第2の方向(つまり第1の方向の反対方向)に所定距離aだけ偏心して設けられている。第1偏心部97aおよび第2偏心部97bの各々の形状は、例えば円柱状に形成されている。第1偏心部97aおよび第2偏心部97bの各中心軸Z1,Z2は、回転中心軸82の直交方向において相互に所定距離aの2倍(2a)だけずれた位置において回転中心軸82に平行に設けられている。

【0164】
第5軸受部材98および第6軸受部材99の各々の形状は、例えば円筒状に形成されている。第5軸受部材98および第6軸受部材99は、例えばコロ軸受けなどである。第5軸受部材98は、第1遊星歯車P1の中心部に設けられた装着孔部86に挿入されている。第1偏心部97aは、第5軸受部材98の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第6軸受部材99は、第2遊星歯車P2の中心部に設けられた装着孔部87に挿入されている。第2偏心部97bは、第6軸受部材99の中心部に設けられた内周孔部に挿入されている。第5軸受部材98は、第1偏心部97aの中心軸Z1を第1遊星歯車P1の中心軸Y1と同軸に配置させている。第6軸受部材99は、第2偏心部97bの中心軸Z2を第2遊星歯車P2の中心軸Y2と同軸に配置させている。第5軸受部材98は、第1偏心部97aの中心軸Z1を回転中心として、第1遊星歯車P1を相対的に第1偏心部97aに対して回転可能に支持する。第6軸受部材99は、第2偏心部97bの中心軸Z2を回転中心として、第2遊星歯車P2を相対的に第2偏心部97bに対して回転可能に支持する。

【0165】
上述した第2の実施形態によれば、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2は、第1内歯車I1および第2内歯車I2の各中心軸X1,X2の軸周りにおいて、相互に180°だけずれた位置に配置されるので、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の偏心運動を相殺するようにして、ダイナミックバランスを向上させることができる。従って、上述した第2の実施形態の参考例の遊星歯車装置80に比べて、より高速回転に使用できる。
さらに、キャリアHの形状(つまり第1偏心部97aおよび第2偏心部97bの相対位置)に応じたクランク部材91を備えることによって、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の相互の回転速度を容易に同期させることができる。

【0166】
以下、上述した第2の実施形態の第1変形例について説明する。
上述した第2の実施形態による遊星歯車装置90は、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の回転速度を同期させるための複数(4個など)のクランク部材91を備えるとしたが、これに限定されない。
第1変形例による遊星歯車装置90は、複数のクランク部材91の代わりに、単一のクランク部材91と、キャリアHに対する単一のクランク部材91の相対的な位置関係を一定に維持するための冶具とを備えてもよい。

【0167】
以下、上述した第2の実施形態の第2変形例について説明する。
上述した第2の実施形態においては、各遊星歯車装置80,90の伝達効率ηを増大させるために、トロコイド干渉を抑制するための条件を満たしながら、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2が最適化されるとしたが、これに限定されない。
第2変形例においては、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の最適化に加えて、歯末のたけ係数coefhaの最適化によって歯数差および歯先円圧力角が変化させられてもよい。歯末のたけ係数coefhaが最適化されることによって、トロコイド干渉を抑制するための条件が緩和されるとともに、歯数差が小さくなり、各遊星歯車装置80,90の伝達効率ηを、より一層、増大させることができる。

【0168】
下記表1は、歯末のたけ係数coefhaをcoefha=1に固定して、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の最適化を行なった場合(最適化前)と、歯末のたけ係数coefhaおよび各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2の最適化を行なった場合(最適化後)との各々において、遊星歯車装置80の順駆動効率および逆駆動効率の一例を示している。下記表1において、各転位係数xi1,xi2,xp1,xp2は、例えば、-2以上かつ+2以下の範囲とされている。下記表1において、外歯車である第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2の各歯数Zp1,Zp2は、例えば、50以上かつ76以下の範囲とされている。下記表1において、内歯車である第1内歯車I1および第2内歯車I2の各歯数Zi1,Zi2は、例えば、(外歯車の歯数Z+内歯車および外歯車の歯数差Z)以上かつ80以下の範囲とされている。下記表1において、歯末のたけ係数coefhaは、例えば、0.6以上かつ1.0以下の範囲とされている。下記表1によれば、歯末のたけ係数coefhaを最適化する場合には、歯末のたけ係数coefhaを一定とする場合に比べて、遊星歯車装置80の順駆動効率を3.6%だけ向上させていることが認められる。さらに、一対の内歯車および外歯車の歯数差を5から4に低下させていることによって、中心距離aを低下させて、遊星歯車装置80の偏心運動が抑制されていることが認められる。

【0169】
【表1】
JP2018135552A1_000043t.gif

【0170】
上述した第2の実施形態において、キャリアHは入力軸を構成し、第1内歯車I1は補助軸を構成し、第2内歯車I2は出力軸を構成するとしたが、これに限定されない。第1内歯車I1、第2内歯車I2、およびキャリアHと、基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)とは、他の対応関係に設定されてもよい。各遊星歯車装置80,90の伝達効率ηは、第1内歯車I1、第2内歯車I2、およびキャリアHと、基本軸(入力軸、出力軸、および補助軸)との対応関係に応じて、上記数式(33)から(37)が変更されることによって算出される。

【0171】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、産業機械、車両、ロボット、OA機器等のような各種機械・機器の駆動系又は動力等伝達系を構成する遊星歯車装置に適用される。本発明の遊星歯車装置は、例えば、多関節構造のロボットに用いられる小型且つ軽量な減速機として、好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0173】
10…遊星歯車装置、I1…第1内歯車、I2…第2内歯車、S…外歯車、PI…第1遊星歯車、PI1…内歯車部、PI2…外歯車部、P…第2遊星歯車、H…キャリア、Pa…第2内歯車部、Pb…第2外歯車部、30…遊星歯車装置、31…クランク部材、32a…第1軸、32b…第2軸、51…第3偏心部材、52…第4偏心部材、55…第9軸受部材、56…第10軸受部材、70,80,90…遊星歯車装置、91…クランク部材、92a…第1軸、92b…第2軸、97a…第1偏心部、97b…第2偏心部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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