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明細書 :アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キット、アフリカツメガエル卵濃縮抽出液、並びに細胞周期の分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年11月14日(2019.11.14)
発明の名称または考案の名称 アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キット、アフリカツメガエル卵濃縮抽出液、並びに細胞周期の分析方法
国際特許分類 C07K  14/435       (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
C07K   1/34        (2006.01)
FI C07K 14/435
G01N 33/48 R
C07K 1/34
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 23
出願番号 特願2018-564660 (P2018-564660)
国際出願番号 PCT/JP2018/002546
国際公開番号 WO2018/139601
国際出願日 平成30年1月26日(2018.1.26)
国際公開日 平成30年8月2日(2018.8.2)
優先権出願番号 2017014441
優先日 平成29年1月30日(2017.1.30)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】島本 勇太
【氏名】高木 潤
出願人 【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4H045
Fターム 2G045AA24
2G045BB04
2G045BB05
2G045BB46
2G045CB01
2G045CB17
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA53
4H045EA50
4H045FA71
4H045GA15
要約 アフリカツメガエル卵抽出液から水分と固形分とを分画する分画工程と、前記水分及び前記固形分を別々に冷凍する冷凍工程と、を備えることを特徴とするアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
アフリカツメガエル卵抽出液から水分と固形分とを分画する分画工程と、
前記水分及び前記固形分を別々に冷凍する冷凍工程と、を備えることを特徴とするアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
【請求項2】
前記分画工程において、分画分子量が1000以上のろ過膜を用いる請求項1に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
【請求項3】
前記分画工程において、分画分子量が10000以上のろ過膜を用いる請求項1又は2に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
【請求項4】
前記冷凍工程において、-0.5℃/分以上-1.5℃/分以下の速度で前記水分及び前記固形分を冷凍する請求項1~3のいずれか一項に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
【請求項5】
水分分画用ろ過膜を備える遠心チューブを含むことを特徴とするアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
【請求項6】
前記水分分画用ろ過膜の分画分子量が1000以上である請求項5に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
【請求項7】
前記水分分画用ろ過膜の分画分子量が10000以上である請求項5又は6に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
【請求項8】
タンパク質濃度が83mg/mL以上103mg/mL以下であり、
分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%以下であり、且つ、
分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%以上であることを特徴とするアフリカツメガエル卵濃縮抽出液。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の工程で冷凍保存されたアフリカツメガエル卵抽出液の水分及び固形分を解凍し、混合して再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液を用いることを特徴とする細胞周期の分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キット、アフリカツメガエル卵濃縮抽出液、並びに細胞周期の分析方法に関する。
本願は、2017年1月30日に、日本に出願された特願2017-014441号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
アフリカツメガエル卵抽出液は、高度に同調された細胞周期を無細胞系(細胞膜の無い抽出液)で実現できる唯一の実験系である。この実験系では、特異的な抗体を用いて特定の因子を系から除くこと(免疫除去)により細胞周期の進行及び制御、並びにDNA複製及び分配制御に必要な因子を明確に同定するができる。
【0003】
また、細胞周期制御機構の解明では、単細胞である酵母を用いた研究が強力な手段となっており、これらの過程に関わる遺伝子が次々に同定されてきた。しかしながら、アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞系は、酵母と比較して以下の点で優れている。
(1)生化学的、生理学的な研究に適していること:例えば、M期促進因子MPFの実体であるcyclinB/Cdk1複合体は、アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞系により、初めて同定された(例えば、非特許文献1参照。)。(2)試験管内で部分的な再構成が可能であること。(3)酵母と異なりカエルは多細胞動物であり、ヒトにより近いモデルであること。
これまで、アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞系により、多細胞動物に特異的な細胞周期の制御機構が明らかにされてきた。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Lohka M. J. et al., “Purification of maturation-promoting factor, an intracellular regulator of early mitotic events”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 85, p3009-3013, 1988.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アフリカツメガエル卵抽出液は、冷凍保存すると、水の結晶化により、細胞質内の構成成分が損傷を受け、活性を失うため、用時調製する必要があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、長期間保存可能であり、細胞質内の活性が保持されたアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]アフリカツメガエル卵抽出液から水分と固形分とを分画する分画工程と、前記水分及び前記固形分を別々に冷凍する冷凍工程と、を備えることを特徴とするアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
[2]前記分画工程において、分画分子量が1000以上のろ過膜を用いる[1]に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
[3]前記分画工程において、分画分子量が10000以上のろ過膜を用いる[1]又は[2]に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
[4]前記冷凍工程において、-0.5℃/分以上-1.5℃/分以下の速度で前記水分及び前記固形分を冷凍する[1]~[3]のいずれか一つに記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法。
[5]水分分画用ろ過膜を備える遠心チューブを含むことを特徴とするアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
[6]前記水分分画用ろ過膜の分画分子量が1000以上である[5]に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
[7]前記水分分画用ろ過膜の分画分子量が10000以上である[5]又は[6]に記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット。
[8]タンパク質濃度が83mg/mL以上103mg/mL以下であり、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%以下であり、且つ、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%以上であることを特徴とするアフリカツメガエル卵濃縮抽出液。
[9][1]~[4]のいずれか一つに記載のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の工程で冷凍保存されたアフリカツメガエル卵抽出液の水分及び固形分を解凍し、混合して再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液を用いることを特徴とする細胞周期の分析方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期間保存可能であり、細胞質内の活性が保持されたアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の一実施形態を示す概略工程図である。
【図1B】本発明のアフリカツメガエル卵抽出液の再構築方法の一実施形態を示す概略工程図である。
【図2A】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での微小管及び染色体を蛍光染色した蛍光画像である。
【図2B】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合を示すグラフである。
【図2C】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の割合を示すグラフである。
【図2D】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の長さを示すグラフである。
【図2E】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の幅を示すグラフである。
【図2F】試験例1における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、未分画で冷解凍を施した抽出液、及び実施例1で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の総微小管シグナル強度を示すグラフである。
【図3A】異なる分画分子量の遠心フィルター装置を用いた実施例1(分画分子量100k)及び実施例2(分画分子量10k)で得られたフロースルー画分(水分画分)の容量を示すグラフである。
【図3B】試験例2における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、及び実施例2で再構築された抽出液)での閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合を示すグラフである。
【図3C】試験例2における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、及び実施例2で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の割合を示すグラフである。
【図3D】試験例2における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、及び実施例2で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の長さを示すグラフである。
【図3E】試験例2における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、及び実施例2で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の幅を示すグラフである。
【図3F】試験例2における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、及び実施例2で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の総微小管シグナル強度を示すグラフである。
【図3G】異なる遠心分離時間である実施例1(10分)、実施例3(5分)、及び実施例4(20分)で得られたフロースルー画分(水分画分)の容量を示すグラフである。
【図3H】試験例3における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、実施例3で再構築された抽出液、及び実施例4で再構築された抽出液)での閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合を示すグラフである。
【図3I】試験例3における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、実施例3で再構築された抽出液、及び実施例4で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の割合を示すグラフである。
【図3J】試験例3における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、実施例3で再構築された抽出液、及び実施例4で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の長さを示すグラフである。
【図3K】試験例3における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、実施例3で再構築された抽出液、及び実施例4で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の幅を示すグラフである。
【図3L】試験例3における分裂中期で細胞周期が停止した状態の各抽出液(新鮮な抽出液、実施例1で再構築された抽出液、実施例3で再構築された抽出液、及び実施例4で再構築された抽出液)での双極構造を有する紡錘体の総微小管シグナル強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と称する場合がある。
)について詳細に説明する。以下に示す本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。

【0012】
<アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法>
一実施形態において、本発明は、アフリカツメガエル卵抽出液から水分と固形分とを分画する分画工程と、前記水分及び前記固形分を別々に冷凍する冷凍工程と、を備えるアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法を提供する。

【0013】
従来のアフリカツメガエル卵抽出液は、冷凍保存すると、水の結晶化により、細胞質内の構成成分が損傷を受け、活性を失うため、用時調製する必要があった。
これに対し、本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法は、水分と固形分とを分画して冷凍保存することにより、水の結晶化による影響を受けにくく、細胞質内の構成成分が保持されるため、冷凍保存したアフリカツメガエル卵抽出液を解凍しても細胞質内の活性が失われず、細胞周期の分析等に用いることができる。また、本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法によれば、アフリカツメガエル卵抽出液を長期間(例えば、3ヶ月以上1年以下程度)冷凍保存することができる。

【0014】
なお、本明細書において、アフリカツメガエル卵抽出液に用いられる「卵」は、成熟した卵母細胞、すなわち、未受精卵を意味する。
また、本明細書において、「細胞質内の活性」とは、細胞質内に含まれる酵素等のタンパク質、又はオルガネラ(例えば、核、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体、リゾソーム、ペルオキシゾーム、液胞、リボソーム等)の活性を意味する。
本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の各工程について、図を参照しながら、以下に詳細に説明する。

【0015】
[分画工程]
まず、アフリカツメガエル卵抽出液から水分と固形分とを分画する。分画工程における温度条件は、0℃以上16℃以下(好ましくは4℃程度)にて行えばよい。
分画方法としては、特別な限定はなく、例えば、クロマトグラフィー、免疫沈降法、溶液組成の変化による分離法、ショ糖密度勾配遠心分離法、真空乾燥法、ろ過膜を用いた遠心分離法等が挙げられる。中でも、極めて容易に水分と固形分とを分画できることから、ろ過膜を用いた遠心分離法を用いることが好ましい。
遠心分離の条件は、例えば、0℃以上16℃以下(好ましくは4℃)、10000g以上20000g以下で、5分以上20分未満であればよい。

【0016】
図1は、本発明のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の一実施形態を示す概略工程図である。図1では、ろ過膜を用いた遠心分離法による分画方法が例示されている。
用いられるろ過膜の分画分子量は、1000以上であり、3000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、100000以上であることがさらに好ましい。

【0017】
分画工程において得られたアフリカツメガエル卵抽出液の水分画分は、タンパク質濃度が3.0mg/mL以下(好ましくは2.5mg/mL、より好ましい2.0mg/mL以下、さらに好ましくは1.8mg/mL)である。
また、前記水分画分における分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、10質量%以上であり、15質量%以上25質量%以下であることが好ましく、18質量%以上22質量%以下であることがより好ましい。一方、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、5質量%以下であり、1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。

【0018】
また、分画工程において得られたアフリカツメガエル卵抽出液の固形分画分(すなわち、アフリカツメガエル卵濃縮抽出液)は、タンパク質濃度が83mg/mL以上103mg/mL以下であることが好ましく、86mg/mL以上100mg/mL以下であることがより好ましく、88mg/mL以上98mg/mL以下であることがさらに好ましく、90mg/mL以上96mg/mL以下であることが特に好ましい。
また、前記固形分画分(すなわち、アフリカツメガエル卵濃縮抽出液)における分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、12質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上18質量%以下であることがさらに好ましい。一方、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、3質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上6質量%以下であることが更に好ましい。
ここで、タンパク質濃度を測定する方法としては、例えば、抗体抗原反応を利用した方法(例えば、ELISA法等)、タンパク質と試薬との反応を利用した比色法(例えば、ビシンコニン酸(BCA)法、ブラッドフォード法、ローリー法、ビウレット法等)等が挙げられる。
また、分子量を測定する方法としては、例えば、SDS-PAGE法、質量分析法(例えば、MALDI-Tof MS、ESI-QTof等)、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。

【0019】
[冷凍工程]
次いで、得られたアフリカツメガエル卵抽出液の水分及び固形分を別々に冷凍する。
冷凍方法としては、水分及び固形分をゆっくりと冷凍することが好ましい。具体的には、プログラム可能なフリーザー等を使用して、-0.5℃/分以上-1.5℃/分以下(好ましくは-1℃/分)の速度で、-80℃になるまで冷凍すればよい。
上記範囲の速度で冷凍することで、急激な温度変化による細胞質内の構成成分の損傷を防止することができる。

【0020】
冷凍された水分及び固形分は、例えば1日以上12ヶ月以下の保存期間を経ても、細胞質内の活性が保持されており、解凍後、混合することで、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築して、所望の分析に使用することができる。

【0021】
[抽出液調製工程]
また、本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法において、分画工程の前に、アフリカツメガエル卵抽出液を調製する抽出液調製工程を備えていてもよい。

【0022】
アフリカツメガエル卵抽出液の調製は、アフリカツメガエルを用いて、公知の方法(例えば、「Murray A. W., “Cell cycle extracts”, Methods Cell Biol., vol. 36,p581-605, 1991.」等参照。)に従い、細胞分裂停止因子によって細胞周期の停止した未受精卵から調製すればよい。
具体的には、まず、アフリカツメガエルに胎盤性性腺刺激ホルモンを注射し、排卵を誘導し、卵を得る。次いで、MMR液(100mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl、2mM CaCl、0.1mM EDTA、5mM HEPES)等に卵を浸し、コラゲナーゼ等の酵素処理によりゼリー状の膜を除去する。次いで、必要に応じて、抽出用バッファー(100mM KCl、0.1mM CaCl、1mM MgCl、5mM EGTA、50mM スクロース、及び10mM HEPESカリウム、pH7.7を含む)等を用いて、卵を洗浄して、卵の準備を行う。

【0023】
次いで、前記卵を破砕して、卵の細胞質を回収、すなわち、卵抽出液を調製する。このとき、得られた抽出液の安定性とタンパク質の発現効率を上げるため、細胞質分裂阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、及びエネルギー物質等の添加物を抽出用バッファーに添加してもよい。
卵の破砕方法としては、特別な限定はなく、例えば、ホモゲナイザーを用いた方法、超音波処理法、遠心分離法等が挙げられる。中でも、極めて容易に細胞質画分を回収できることから、遠心分離法を用いることが好ましい。
回収された細胞質画分は、さらに多孔性の膜等でろ過して細胞の破砕片等を除去してもよい。
本実施形態において用いられる卵抽出液は、任意の数の卵から調製することができるが、破砕処理や安定化剤の添加を容易にするため一定数量以上の卵を用いることが好ましく、少なくとも100個の卵から調製されることがより好ましい。
得られた卵抽出液は、新鮮なもの、例えば、調製後約8時間以内、好ましくは約3時間以内のものを上記分画工程において用いることにより、高い細胞質内の活性が得られる。

【0024】
<アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キット>
一実施形態において、本発明は、水分分画用ろ過膜を備える遠心チューブを含むアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キットを提供する。

【0025】
本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キットによれば、アフリカツメガエル卵抽出液に含まれる細胞質内の活性を保ちながら、長期間(例えば、3ヶ月以上1年以下程度)冷凍保存することができる。

【0026】
[遠心チューブ]
本実施形態における遠心チューブは、フィルターカップと回収チューブとからなり、フィルターカップは、水分分画用ろ過膜を備え、アフリカツメガエル卵抽出液が投入される容器である。また、回収チューブは、遠心時に当該抽出液がフィルターカップに備えられた水分分画用ろ過膜を通過したろ液を回収するための容器である。

【0027】
水分分画用ろ過膜の分画分子量は、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましく、100000以上であることが特に好ましい。

【0028】
水分分画用ろ過膜の材質としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等の不織布、ポリウレタン等の多孔質材料、及びこれらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0029】
遠心チューブの形状としては、例えば、柱状、錘状等が挙げられ、これらに限定されない。
また、遠心チューブの材質としては、例えば、金属、ガラス、セラミック、合成ポリマー等が挙げられ、これらに限定されない。

【0030】
[その他]
本実施形態のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存用キットは、さらに、アフリカツメガエル卵抽出液を調製するためのMMR液(100mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl、2mM CaCl、0.1mM EDTA、5mM HEPES)、胎盤性性腺刺激ホルモン、コラゲナーゼ、抽出用バッファー(100mM KCl、0.1mM CaCl、1mM MgCl、5mM EGTA、50mM スクロース、及び10mM HEPESカリウム、pH7.7を含む)等を備えていてもよい。

【0031】
<アフリカツメガエル卵濃縮抽出液>
一実施形態によれば、本発明は、タンパク質濃度が83mg/mL以上103mg/mL以下であり、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%以下であり、且つ、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%以上であるアフリカツメガエル卵濃縮抽出液を提供する。

【0032】
本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液は、冷凍保存しても、水の結晶化による影響を受けにくく、細胞質内の構成成分が保持されている。そのため、冷凍保存した本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液を解凍し、当該アフリカツメガエル卵濃縮抽出液を製造する際に生成された水分画分と混合することで、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築することができる。再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液は、細胞質内の活性が保持されており、DNAの複製、転写、転写物のプロセッシング、翻訳、及び翻訳されたタンパク質の修飾等の研究、導入された外来遺伝子の発現解析、細胞周期の分析、当該抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の製造等に用いることができる。

【0033】
本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液は、タンパク質濃度が83mg/mL以上103mg/mL以下(好ましくは86mg/mL以上100mg/mL以下、より好ましくは88mg/mL以上98mg/mL以下、さらに好ましくは90mg/mL以上96mg/mL以下)である。
また、本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液は、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%以下であり、12質量%以上20質量%以下であることが好ましく、14質量%以上18質量%以下であることがより好ましい。一方、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%以上であり、3質量%以上7質量%以下であることが好ましく、4質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。

【0034】
本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液の製造方法としては、例えば、上述の<アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法>の[分画工程]に記載の方法が挙げられる。

【0035】
<細胞周期の分析方法>
一実施形態において、本発明は、アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法の工程で冷凍保存されたアフリカツメガエル卵抽出液の水分及び固形分を解凍し、混合して再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液を用いる細胞周期の分析方法を提供する。

【0036】
本実施形態の細胞周期の分析方法によれば、アフリカツメガエル卵抽出液を用時調製する必要がないため、簡便且つ同時に多量の分析を行うことができる。
本実施形態において用いられるアフリカツメガエル卵抽出液の再構築方法の各工程について、図を参照しながら、以下に詳細に説明する。

【0037】
[解凍工程]
まず、冷凍保存されたアフリカツメガエル卵抽出液の水分及び固形分をそれぞれ解凍する。解凍方法としては、ゆっくりと解凍することが好ましい。具体的には、チューブを氷上に静置して、解凍すればよい。
係る解凍工程により、急激な温度変化による細胞質内の構成成分の損傷を防止することができる。

【0038】
[再構築工程]
次いで、解凍された水分及び固形分を混合し、0℃以上16℃以下(好ましくは4℃程度)、5分以上60分以下の条件で、インキュベートすることで、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築する。

【0039】
再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液は、新鮮なアフリカツメガエル卵抽出液(例えば、調製後約8時間以内、好ましくは約3時間以内のアフリカツメガエル卵抽出液)と同程度の細胞質内の活性を有するため、細胞周期の分析に用いることができる。
【実施例】
【0040】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
1.アフリカツメガエル卵抽出液の調製
(1)アフリカツメガエル卵抽出液の調製は、アフリカツメガエルを用いて、公知の方法(例えば、「Murray A. W., “Cell cycle extracts”, Methods Cell Biol., vol. 36,p581-605, 1991.」等参照。)に従い、細胞分裂停止因子によって細胞周期の停止した未受精卵から調製した。
具体的には、まず、アフリカツメガエルに胎盤性性腺刺激ホルモンを注射し、排卵を誘導し、卵を得た。次いで、MMR液(100mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl、2mM CaCl、0.1mM EDTA、5mM HEPES)等に卵を浸し、システイン等の還元処理によりゼリー状の膜を除去した。次いで、抽出用バッファー(100mM KCl、0.1mM CaCl、1mM MgCl、5mM EGTA、50mM スクロース、及び10mM HEPESカリウム、pH7.7を含む)を用いて、卵を洗浄した。
【実施例】
【0042】
(2)次いで、遠心分離法により、前記卵を破砕して、卵の細胞質を回収、すなわち、卵抽出液を調製した。得られた抽出液の安定性とタンパク質の発現効率を上げるため、細胞質分裂阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、及びエネルギー物質等の添加物を抽出用バッファーに添加した。ブラッドフォード法を用いて測定された卵抽出液のタンパク質濃度は、70mg/mLであった。
【実施例】
【0043】
2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存
(1)分画工程
次いで、遠心フィルター装置(UFC510024、分画分子量100k、ミリポア社製)を用いて、冷却遠心機(5424R、エッペンドルフ社製)で17,000×g、4℃、10分間の条件にて、「1.アフリカツメガエル卵抽出液の調製」で得られた抽出液200μLを遠心分離した。遠心分離後の濃縮抽出液(固形分画分)150μLとフロースルー画分(水分画分)50μLとをそれぞれ1.5mLの試験チューブに移した。
ブラッドフォード法を用いて測定された濃縮抽出液(固形分画分)のタンパク質濃度は93mg/mLであり、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、16質量%であり、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、5質量%であった。
また、ブラッドフォード法を用いて測定されたフロースルー画分(水分画分)のタンパク質濃度は1.8mg/mLであり、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、20質量%であり、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、3質量%であった。
【実施例】
【0044】
(2)冷凍工程
次いで、Chillette(登録商標) 12 Portable Tube Cooler(デンビルサイエンティフィック社製)を用いて、-1℃/分の条件にて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とをそれぞれクライオジェニック凍結した。
【実施例】
【0045】
3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築
(1)解凍工程
次いで、冷凍保存から7日後の濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とを氷上で静置して、解凍した。
【実施例】
【0046】
(2)再構築工程
次いで、解凍した濃縮抽出液(固形分画分)及びフロースルー画分(水分画分)を混合し、氷上にて20分間インキュベーションして、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築した。
【実施例】
【0047】
[試験例1]
1.紡錘体形成の確認
(1)間期から分裂中期への移行
次いで、実施例1において再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液に、膜を除去したアフリカツメガエルの精子の核(最終濃度:~400/μL)を添加し、16℃の温度条件下で間期から分裂中期に移行させた。また、対照群として、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液及び未分画で冷解凍を施した抽出液も準備し、上記と同様の操作を行い、間期から分裂中期に移行させた。
【実施例】
【0048】
(2)紡錘体の微小管の染色
次いで、各抽出液に、テトラメチルローダミン標識チューブリン(最終濃度500nM)を添加して、紡錘体の微小管を染色した。
【実施例】
【0049】
(3)紡錘体の観察
次いで、2μLの各抽出液をカバーガラス上に滴下し、4μLの固定用緩衝液(125mM Hepes、2.5mM EDTA、2.5M NaCl、50mM KCl、25mM MgCl、1μg/mL DAPI、10%ホルムアルデヒド、60%グリセロール含有)を用いて固定し、18mmのカバースリップを乗せた。精子添加から80分で、核を固定し、分裂中期への移行から90分で、分裂中期の紡錘体を固定した。20倍対物レンズ(Plan Apo、0.75NA、ニコン社製)、水銀ランプ(ニコン社製)、sCMOSカメラ(Neo sCMOS、Andor社製)、及び電動XYステージ(MS-2000、Applied Scientific Instrumentation社製)を装備した倒立落射蛍光顕微鏡を用いて、蛍光画像を撮像した。また、NIS-Elementsソフトウェア(バージョン4.50、ニコン社製)を使用して~10mm×~11mmの大きな画像を取得した。結果を図2Aに示す。図2Aにおいて、「Fresh」とは、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液を意味し、「Non-filtered」とは、未分画で冷解凍を施した抽出液を意味し、「Filtered」とは、実施例1において再構築された抽出液を意味する。また、スケールバーの長さは10μmを示している。
【実施例】
【0050】
図2Aから、実施例1において再構築された抽出液では、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液と同様に、微小管と染色体とからなる分裂中期の紡錘体が形成されていることが確かめられた。これに対し、未分画で冷解凍を施した抽出液では、分裂中期の紡錘体の形成が見られなかった。
【実施例】
【0051】
(4)中期紡錘体形態分析
次いで、DNAシグナルの大きな集合体を除いて得られた蛍光画像からDAPI染色されたDNAシグナルを検索し、画像解析パイプライン(Grenfell et al., 2016)を用いて、DNAシグナルの周辺の紡錘体形態及び微小管シグナル強度を分析した。結果を図2B~Fに示す。図2B~Fにおいて、「Fresh」とは、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液を意味し、「Non-filtered」とは、未分画で冷解凍を施した抽出液を意味し、「Filtered」とは、実施例1において再構築された抽出液を意味する。
なお、図2B、Cにおける「mean±SD」は、3つの独立した試験サンプルから算出された値である。
また、図2D~FにおけるボックスプロットはOrigin 2016(OriginLab)を使用して作成した。
【実施例】
【0052】
図2Bから、閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合は、未分画で冷解凍を施した抽出液では非常に低かった(試験を行った全精子DNAの58%、N=229)。一方、閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合は、新鮮な抽出液(試験を行った全精子DNAの89%、N=227)及び実施例1において再構築された抽出液(試験を行った全精子DNAの94%、N=177)では有意に高かった。
このことから、凍結融解により染色体周囲の微小管集合体の活性が減少するが、この減少は分画によって救済され得ることが示唆された。
【実施例】
【0053】
また、図2Cから、新鮮な抽出液では紡錘体のうち約53%が双極構造を有する紡錘体であった(N=201)。これに対し、未分画で冷解凍を施した抽出液では、双極構造を有する紡錘体の割合が、紡錘体全体の約10%であった(N=132)。
一方、実施例1において再構築された抽出液では、双極構造を有する紡錘体の割合が、紡錘体全体の約69%)であった(N=166)。
【実施例】
【0054】
また、図2D~Fから、双極構造を有する紡錘体での紡錘体の長さ、幅、及び総微小管シグナル強度は、新鮮な抽出液及び実施例1において再構築された抽出液では同等であった。
以上のことから、本発明の冷凍保存方法を用いた抽出液は、高活性の中期紡錘体集合体を形成可能であることが確かめられた。
【実施例】
【0055】
[実施例2]
1.アフリカツメガエル卵抽出液の調製
実施例1と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を調製した。
【実施例】
【0056】
2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存
(1)分画工程
次いで、遠心フィルター装置(UFC510024、分画分子量100k、ミリポア社製)の代わりに、遠心フィルター装置(UFC501024、分画分子量10k、ミリポア社製)を用いた以外は、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(1)と同様の方法を用いて、遠心分離を行い、濃縮抽出液(固形分画分)160μLとフロースルー画分(水分画分)40μLとを得た。
ブラッドフォード法を用いて測定された濃縮抽出液(固形分画分)のタンパク質濃度は72mg/mLであり、分子量が20000以上30000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、16質量%であり、分子量が100000以上150000以下のタンパク質の含有量が、総タンパク質量に対して、5質量%であった。
また、ブラッドフォード法を用いて測定されたフロースルー画分(水分画分)のタンパク質濃度は0.2mg/mL未満であった。
図3Aは、実施例1及び実施例2で得られたフロースルー画分(水分画分)の容量を示すグラフである。
図3Aから、分画分子量が100kである実施例1で得られたフロースルー画分(水分画分)のほうが、分画分子量が10kである実施例2で得られたフロースルー画分(水分画分)よりも、容量が多かった。
【実施例】
【0057】
(2)冷凍工程
次いで、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(2)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とをそれぞれ冷凍した。
【実施例】
【0058】
3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築
(1)解凍工程
次いで、冷凍保存から7日後の実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(1)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とを解凍した。
【実施例】
【0059】
(2)再構築工程
次いで、実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(2)と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築した。
【実施例】
【0060】
[試験例2]
1.紡錘体形成の確認
(1)間期から分裂中期への移行
試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(1)と同様の方法を用いて、実施例1及び実施例2で再構築された抽出液を間期から分裂中期へ移行させた。また、対照群として、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液も準備し、上記と同様の操作を行い、間期から分裂中期に移行させた。
【実施例】
【0061】
(2)紡錘体の微小管の染色
次いで、試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(2)と同様の方法を用いて、各抽出液に、テトラメチルローダミン標識チューブリン(最終濃度500nM)を添加して、紡錘体の微小管を染色した。
【実施例】
【0062】
(3)中期紡錘体形態分析
次いで、試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(4)と同様の方法を用いて、DNAシグナルの周辺の紡錘体形態及び微小管シグナル強度を分析した。結果を図3B~Fに示す。図3B~Fにおいて、「Fresh」とは、調製後約8時間以内の新鮮な抽出液を意味し、「10k」とは、分画分子量10kの遠心フィルター装置を用いて実施例2で再構築された抽出液を意味し、「100k」とは、分画分子量100kの遠心フィルター装置を用いて実施例1において再構築された抽出液を意味する。
なお、図3B、Cにおける「mean±SD」は、2つの独立した試験サンプルから算出された値である。
また、図3D~FにおけるボックスプロットはOrigin 2016(OriginLab)を使用して作成した。
【実施例】
【0063】
図3Bから、閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合は、新鮮な抽出液(N=155)、実施例2において再構築された抽出液(N=211)、及び実施例1において再構築された抽出液(N=169)では同程度であった。
また、図3Cから、双極構造を有する紡錘体の割合は、新鮮な抽出液(N=144)と比較して、実施例2において再構築された抽出液(N=190)ではやや低く、一方、実施例1において再構築された抽出液(N=149)では、有意に高かった。
【実施例】
【0064】
また、図3D~Fから、双極構造を有する紡錘体での紡錘体の長さ、幅、及び総微小管シグナル強度は、実施例1において再構築された抽出液及び実施例2において再構築された抽出液では同等であった。
以上のことから、分画分子量10kの遠心フィルター装置を用いた場合では、分画分子量100kの遠心フィルター装置を用いた場合よりも、双極構造を有する紡錘体の割合は低いが、いずれの分画分子量であっても、高活性の中期紡錘体集合体を形成可能であることが確かめられた。
【実施例】
【0065】
[実施例3]
1.アフリカツメガエル卵抽出液の調製
実施例1と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を調製した。
【実施例】
【0066】
2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存
(1)分画工程
次いで、遠心時間を10分の代わりに5分とした以外は、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(1)と同様の方法を用いて、遠心分離を行い、濃縮抽出液(固形分画分)170μLとフロースルー画分(水分画分)30μLとを得た。
【実施例】
【0067】
(2)冷凍工程
次いで、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(2)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とをそれぞれ冷凍した。
【実施例】
【0068】
3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築
(1)解凍工程
次いで、冷凍保存から7日後の実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(1)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とを解凍した。
【実施例】
【0069】
(2)再構築工程
次いで、実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(2)と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築した。
【実施例】
【0070】
[実施例4]
1.アフリカツメガエル卵抽出液の調製
実施例1と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を調製した。
【実施例】
【0071】
2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存
(1)分画工程
次いで、遠心時間を10分の代わりに20分とした以外は、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(1)と同様の方法を用いて、遠心分離を行い、濃縮抽出液(固形分画分)140μLとフロースルー画分(水分画分)60μLとを得た。
図3Gは、実施例1、3及び4で得られたフロースルー画分(水分画分)の容量を示すグラフである。
図3Gから、遠心時間が長くなるのに従い、フロースルー画分(水分画分)の容量が多くなることが明らかとなった。
【実施例】
【0072】
(2)冷凍工程
次いで、実施例1の「2.アフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存」の(2)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とをそれぞれ冷凍した。
【実施例】
【0073】
3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築
(1)解凍工程
次いで、冷凍保存から7日後の実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(1)と同様の方法を用いて、濃縮抽出液(固形分画分)とフロースルー画分(水分画分)とを解凍した。
【実施例】
【0074】
(2)再構築工程
次いで、実施例1の「3.アフリカツメガエル卵抽出液の再構築」の(2)と同様の方法を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築した。
【実施例】
【0075】
[試験例3]
1.紡錘体形成の確認
(1)間期から分裂中期への移行
試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(1)と同様の方法を用いて、実施例1、実施例3、及び実施例4で再構築された抽出液を間期から分裂中期へ移行させた。
【実施例】
【0076】
(2)紡錘体の微小管の染色
次いで、試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(2)と同様の方法を用いて、各抽出液に、テトラメチルローダミン標識チューブリン(最終濃度500nM)を添加して、紡錘体の微小管を染色した。
【実施例】
【0077】
(3)中期紡錘体形態分析
次いで、試験例1の「1.紡錘体形成の確認」の(4)と同様の方法を用いて、DNAシグナルの周辺の紡錘体形態及び微小管シグナル強度を分析した。結果を図3H~Lに示す。図3H~Lにおいて、「Centrifuge time(遠心時間) 5min」は、遠心時間5分で分画工程を行った実施例3において再構築された抽出液を意味し、「Centrifuge time 10min」とは、遠心時間10分で分画工程を行った実施例1において再構築された抽出液を意味し、「Centrifuge time
20min」とは、遠心時間20分で分画工程を行った実施例4において再構築された抽出を意味する。
なお、図3H、Iにおける「mean±SD」は、2つの独立した試験サンプルから算出された値である。
また、図3J~LにおけるボックスプロットはOrigin 2016(OriginLab)を使用して作成した。
【実施例】
【0078】
図3Hから、閾値を超えた微小管シグナルを有する精子DNAの割合は、実施例1において再構築された抽出液(N=134)、及び実施例3において再構築された抽出液(N=174)では同程度であり、実施例4において再構築された抽出液(N=177)ではやや低かった。
また、図3Iから、双極構造を有する紡錘体の割合は、実施例1において再構築された抽出液(N=126)と比較して、実施例3において再構築された抽出液(N=155)ではやや低く、実施例4において再構築された抽出液(N=123)では、有意に低かった。
【実施例】
【0079】
また、図3J~Lから、双極構造を有する紡錘体での紡錘体の長さ、幅、及び総微小管シグナル強度は、実施例1において再構築された抽出液、実施例3において再構築された抽出液、及び実施例4において再構築された抽出液では同等であった。
以上のことから、10分を超える長時間の遠心分離により、抽出液の活性が低下し、中期紡錘体の形成効率が低下することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のアフリカツメガエル卵抽出液の冷凍保存方法及び冷凍保存用キットによれば、アフリカツメガエル卵抽出液に含まれる細胞質内の活性を保ちながら、長期間(例えば、3ヶ月以上1年以下程度)冷凍保存することができる。
また、本発明のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液は、冷凍保存しても、水の結晶化による影響を受けにくく、細胞質内の構成成分が保持されている。そのため、冷凍保存した本実施形態のアフリカツメガエル卵濃縮抽出液を解凍し、当該アフリカツメガエル卵濃縮抽出液を製造する際に生成された水分画分と混合することで、アフリカツメガエル卵抽出液を再構築することができる。再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液は、細胞質内の活性が保持されており、細胞周期の分析等に用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
1…アフリカツメガエル卵抽出液、2…水分分画用ろ過膜、3…固形分、3a…冷凍した固形分、3b…解凍した固形分、4…水分、4a…冷凍した水分、4b…解凍した水分、5…再構築されたアフリカツメガエル卵抽出液、10…遠心チューブ。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図2C】
4
【図2D】
5
【図2E】
6
【図2F】
7
【図3A】
8
【図3B】
9
【図3C】
10
【図3D】
11
【図3E】
12
【図3F】
13
【図3G】
14
【図3H】
15
【図3I】
16
【図3J】
17
【図3K】
18
【図3L】
19