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明細書 :プラズマ発生装置、プラズマスパッタリング装置及びプラズマスパッタリング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年11月21日(2019.11.21)
発明の名称または考案の名称 プラズマ発生装置、プラズマスパッタリング装置及びプラズマスパッタリング方法
国際特許分類 C23C  14/35        (2006.01)
H05H   1/46        (2006.01)
FI C23C 14/35 Z
H05H 1/46 L
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2018-565548 (P2018-565548)
国際出願番号 PCT/JP2018/002876
国際公開番号 WO2018/143164
国際出願日 平成30年1月30日(2018.1.30)
国際公開日 平成30年8月9日(2018.8.9)
優先権出願番号 2017015548
優先日 平成29年1月31日(2017.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】高橋 和貴
【氏名】福島 潤
【氏名】安藤 晃
【氏名】佐々木 保正
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081086、【弁理士】、【氏名又は名称】大家 邦久
【識別番号】100121050、【弁理士】、【氏名又は名称】林 篤史
審査請求 未請求
テーマコード 2G084
4K029
Fターム 2G084AA04
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB12
2G084BB13
2G084BB14
2G084BB26
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF04
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
2G084FF31
2G084FF38
4K029AA07
4K029BA03
4K029BA08
4K029BA09
4K029BA12
4K029BA43
4K029BA58
4K029BB07
4K029BD01
4K029BD11
4K029CA05
4K029CA06
4K029DA04
4K029DC01
4K029DC25
4K029DC27
4K029DC34
4K029DC35
4K029DC40
4K029DC43
4K029JA01
要約 本発明は、内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管、静磁場を印加可能な第1の電磁石または永久磁石群及び高周波アンテナを有した1個または複数個のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置の下流域に配設された、湾曲した磁力線構造を形成可能な第2の電磁石と、永久磁石を埋没しかつ冷却機構を備えた直流または高周波電圧印加可能なターゲット機構と、ターゲット機構に対向する基板ステージと、基板ステージ周囲の第2の永久磁石群と、ターゲット材料とターゲット機構の間の断熱機構とを備えていることを特徴とするプラズマスパッタリング装置に関する。本発明のプラズマスパッタリング装置は、基板ダメージがなく、ターゲット材の昇温機構を兼ね備え、大口径基板への均一成膜が可能であり、磁性体ターゲットにおいても薄膜形成が可能な高速スパッタリングが可能である。
特許請求の範囲 【請求項1】
内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管、静磁場を印加可能な第1の電磁石または永久磁石群及び高周波アンテナを有した1個または複数個のプラズマ発生装置により1個または複数個のプラズマを発生させ、下流域に配設された第2の電磁石による湾曲した磁力線構造によりプラズマを真空層へ流してターゲット近傍に局所化し、前記ターゲットへイオンを引き込むことを特徴とするプラズマスパッタリング方法。
【請求項2】
前記ターゲットへイオンを引き込む際に、ターゲット材へ流入するイオンエネルギーにより昇温させる請求項1に記載のプラズマスパッタリング方法。
【請求項3】
基板ステージ近傍の永久磁石による磁力線構造によって、ターゲット機構に対向する前記基板ステージへのイオン入射エネルギーを抑制して成膜する請求項1または2に記載のプラズマスパッタリング方法。
【請求項4】
プラズマ発生装置からターゲットへの湾曲した磁力線と干渉しない位置、またはその位置よりもターゲットから離れた位置へ基板を設置し、基板へのプラズマダメージを抑制する請求項1~3のいずれかに記載のプラズマスパッタリング方法。
【請求項5】
プラズマ発生装置と同等またはそれ以上の面積を有するターゲットを配置し、ターゲット材料以外へのイオン照射を抑制する請求項1~4のいずれかに記載のプラズマスパッタリング方法。
【請求項6】
内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管、静磁場を印加可能な第1の電磁石または永久磁石群及び高周波アンテナを有した1個または複数個のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置の下流域に配設された、湾曲した磁力線構造を形成する第2の電磁石と、ターゲット機構と、ターゲット機構に対向する基板ステージとを備えていることを特徴とするプラズマスパッタリング装置。
【請求項7】
前記ターゲット機構に、永久磁石が埋設され、直流または高周波電圧印加可能である請求項6に記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項8】
前記ターゲット機構が冷却機構を有する請求項6または7に記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項9】
ターゲット材料と前記ターゲット機構の間に断熱機構を有する請求項6~8のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項10】
前記基板ステージ周囲に第2の永久磁石群を有する請求項6~9のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項11】
前記第1の電磁石及び第2の電磁石または永久磁石を埋没したターゲット機構によって形成される湾曲した磁力線構造と干渉しない位置、またはその位置よりもターゲットから離れた位置へ基板を設置した請求項6~10のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項12】
プラズマ発生装置と同等またはそれ以上の面積を有するターゲットを配置し、ターゲット材料以外へのイオン照射を抑制する請求項6~11のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項13】
前記第1の電磁石または第1の永久磁石群が前記絶縁管の長手方向の静磁場を印加可能であり、前記高周波電力供給装置が周波数2MHz~100MHz帯の高周波電力供給装置であり、前記絶縁管周囲に誘導結合性高周波アンテナが設置されている請求項6~12のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項14】
基板ステージ周囲の第2の永久磁石群が、基板表面に平行方向の静磁場を印加可能な永久磁石群である請求項10~13のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項15】
第2の電磁石の励磁電流を時間的に変動させる手段を有する請求項6~14のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
【請求項16】
内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管と、前記絶縁管の静磁場を印加可能な第1の電磁石または第1の永久磁石群と、2MHz~100MHz帯の周波数を有する高周波電力供給装置と、前記絶縁管周囲に設置された誘導結合性高周波アンテナとを備えていることを特徴とするプラズマ発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置、プラズマスパッタリング装置及びプラズマスパッタリング方法に関する。さらに詳しく言えば、高周波電力供給装置を備えたプラズマ発生装置と静磁場印加機構を備えたプラズマ制御装置とプラズマによるターゲット加熱機構とターゲット機構に対向する基板ステージを備えたプラズマスパッタリング装置、及びその装置を用いたプラズマスパッタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、磁気記録デバイスなどの製造分野においては、薄膜形成装置として、プラズマ中のイオンをターゲット材へ引き込み、イオン衝撃により飛散する粒子を基板表面に堆積させるスパッタ装置が広く利用されている。単位時間あたりにスパッタされるターゲット材の厚さは引き込むイオン電流、すなわちターゲット材表面のイオン密度に比例関係にあることから、産業的に生産性を確保する高速スパッタ装置を実現するためには、高密度プラズマをターゲット近傍に生成する必要がある。
【0003】
デバイスの微細化の進展または薄膜結晶の高品質化の要求が高まるにつれて、基板へのイオンダメージが大きな問題となり、幅広く使用されているマグネトロンスパッタ法では、ターゲット材と基板の間に直接プラズマを形成するため、イオンダメージの回避が困難であり、高密度プラズマ生成時にはこの問題が顕著化してしまう。またプラズマ生成のための放電とイオン引き込みを同一の電源で同時に行うため、ターゲット材へ流入するイオン量とそのエネルギーを独立に制御することが不可能である。また、マグネトロンスパッタ法では、ターゲット表面に存在する漏れ磁束でプラズマ閉じ込めを行うため、磁性体ターゲットにおいては使用が困難である。
【0004】
プラズマ生成とイオン引き込みを独立に制御可能なスパッタ装置として、誘導結合性プラズマ源またはヘリコン波プラズマ源内部に基板とターゲットを挿入したスパッタ装置が開示されている(特開2003-289070号公報;特許文献1)。この方式では基板が直接プラズマに曝されるため、基板へのイオンダメージを回避することは困難であり、その対策については言及されていない。
【0005】
ダメージフリースパッタ装置として、例えばヘリコン波励起スパッタ装置が開示されている(特開2002-329669号公報;特許文献2)。一般にプラズマ生成部とイオン引き込みを別途用意するこのような方式においては、最もスパッタ効率の良いと考えられるターゲットと基板を対向に設置した配置を取ることが困難である。
【0006】
基板にプラズマが流入する場合、基板へ流入するイオンエネルギーは基板前面に発生するシース構造の電位降下で決定されるため、結果として高エネルギーイオンが基板へ流入し損傷を引き起こすと考えられる。この電位降下は電子温度によって決定されるため、基板表面での電子温度を低下させる必要がある。
これまでにプラズマの流れ方向に垂直に磁力線を印加する磁気フィルタ方式を採用することで電子温度を低下させる手法は開示されているが(特開2005-183062号公報;特許文献3)、スパッタリング装置において基板へ流入するイオンエネルギーに関しては一切言及されていない。
【0007】
ヘリコン波励起プラズマス発生装置及び誘導結合性プラズマ発生装置では、一般的に円筒状の絶縁管内でプラズマを生成する特徴を有している(例えば、特許文献1及び特許第3224443号公報;特許文献4)。このような円筒状絶縁管の内部にて高周波電磁場により高密度プラズマを発生した際に、絶縁管内壁へのプラズマの損失を抑制することは困難であり、プラズマ源の下流域で高密度プラズマを維持することが困難である。さらにプラズマの高密度化及び大電力化を進めた際には、中性粒子枯渇と呼ばれる現象に起因してプラズマ分布が変化するために損失が顕著になり、プラズマ源の下流域のプラズマ密度が減少することも報告されている(非特許文献1及び2)。
【0008】
プラズマ源の下流域において高密度プラズマを維持する手法として、ターゲット背面に永久磁石を設置し収束磁場を形成することでプラズマを収束する手法がこれまでに開示されている(特開2015-135883号公報;特許文献5)。
【0009】
また、プラズマスパッタリング法では、基板上への成膜レートや形成される薄膜特性が、ターゲット温度に応じて変化することが明らかであり、広範な範囲でターゲット表面温度を制御することが求められる。さらに、ターゲット材料の昇温により蒸着現象が起こる場合には、成膜の高速化が可能であり(非特許文献3)、ターゲット材料が昇温により昇華する材料の場合には、固体ターゲットからの昇華現象によりさらに高速成膜が可能となる。
【0010】
プラズマスパッタリングにより薄膜デバイスの生産性を確保するためには、一連のプロセスを比較的大口径のウエハに対して高速で実施することが可能なプラズマスパッタリング装置の開発が必要とされている。
【0011】
形成されるプラズマ密度の分布は、中性ガスの電離度によって変化することが知られており(非特許文献1及び2)、反応性ガスを用いたスパッタ方式においては、導入するガス種によってプラズマ分布が大きく変化すると考えられる。したがって、例えば特許文献1及び2に記載のスパッタリング装置では、導入するガス種に応じてプラズマ生成部の設計を調整する必要があり、生産性、スパッタリング装置の汎用性という観点から改良の余地がある。
【0012】
特許文献1及び4記載のプラズマスパッタリング装置及びプラズマ発生方式では、プラズマ源の下流域において高密度プラズマを維持できないという問題点があり、基板ダメージを抑制するためにプラズマ生成部とスパッタ部を別途用意するプラズマスパッタリング装置においては、高速スパッタリングを実現することが困難である。
【0013】
特許文献2のプラズマスパッタリング装置では、直線状の磁力線に沿ってプラズマがターゲット領域へと輸送されるため、基板配置角度に制限があり、最もスパッタリング効率が良いとされる基板とターゲット材を対向に配置することが困難である。
【0014】
特許文献2、4、5のプラズマスパッタリング装置においては、基板前面のシース構造形成による高エネルギーイオン流入を避けることが困難であり、基板へのイオンダメージを抑制する必要がある。
【0015】
特許文献1、2、4、及び5のプラズマスパッタリング装置においては、ターゲット材の昇温機構を備えておらず、種々のターゲット材の最適プロセスへと対応することができない。
【0016】
特許文献1、2、4、及び5のプラズマスパッタリング装置においては、単一のプラズマ源のみを有しており、生産性を考慮した大口径基板への均一成膜のためのプラズマ密度分布調整がプラズマ源の設計のみで決定されるため、プロセスガス種によって生じる分布の変化への柔軟な対応が困難である。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】特開2003-289070号公報
【特許文献2】特開2002-329669号公報
【特許文献3】特開2005-183062号公報
【特許文献4】特許第3224443号公報
【特許文献5】特開2015-135883号公報
【0018】

【非特許文献1】Physical Review Letters, 114,195001(2015)
【非特許文献2】Applied Physics Letters, 108,074103 (2016)
【非特許文献3】Surface and Coating Technology,308,168(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上の事情を鑑み、本発明の目的は、基板ダメージのない高速スパッタリング装置を提供すること、ターゲット材の昇温機構を兼ね備えた高速スパッタリング装置を提供すること、大口径基板への均一成膜を可能とする高速スパッタリング装置を提供すること、イオンダメージの少ない高品質な結晶性薄膜形成が可能なスパッタリング装置を提供すること、及び磁性体ターゲットにおいても薄膜形成が可能なスパッタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は下記[1]~[5]のプラズマスパッタリング方法、[6]~[15]のプラズマスパッタリング装置、及び[16]のプラズマ発生装置を提供する。
[1] 内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管、静磁場を印加可能な第1の電磁石または永久磁石群及び高周波アンテナを有した1個または複数個のプラズマ発生装置により1個または複数個のプラズマを発生させ、下流域に配設された第2の電磁石による湾曲した磁力線構造によりプラズマを真空層へ流してターゲット近傍に局所化し、前記ターゲットへイオンを引き込むことを特徴とするプラズマスパッタリング方法。
[2] 前記ターゲットへイオンを引き込む際に、ターゲット材へ流入するイオンエネルギーにより昇温させる前項1に記載のプラズマスパッタリング方法。
[3] 基板ステージ近傍の永久磁石による磁力線構造によって、ターゲット機構に対向する前記基板ステージへのイオン入射エネルギーを抑制して成膜する前項1または2に記載のプラズマスパッタリング方法。
[4] プラズマ発生装置からターゲットへの湾曲した磁力線と干渉しない位置、またはその位置よりもターゲットから離れた位置へ基板を設置し、基板へのプラズマダメージを抑制する前項1~3のいずれかに記載のプラズマスパッタリング方法。
[5] プラズマ発生装置と同等またはそれ以上の面積を有するターゲットを配置し、ターゲット材料以外へのイオン照射を抑制する前項1~4のいずれかに記載のプラズマスパッタリング方法。
[6] 内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管、静磁場を印加可能な第1の電磁石または永久磁石群及び高周波アンテナを有した1個または複数個のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置の下流域に配設された、湾曲した磁力線構造を形成する第2の電磁石と、ターゲット機構と、ターゲット機構に対向する基板ステージとを備えていることを特徴とするプラズマスパッタリング装置。
[7] 前記ターゲット機構に、永久磁石が埋設され、直流または高周波電圧印加可能である前項6に記載のプラズマスパッタリング装置。
[8] 前記ターゲット機構が冷却機構を有する前項6または7に記載のプラズマスパッタリング装置。
[9] ターゲット材料と前記ターゲット機構の間に断熱機構を有する請求項6または7に記載のプラズマスパッタリング装置。
[10] 前記基板ステージ周囲に第2の永久磁石群を有する請求項6~9のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[11] 前記第1の電磁石及び第2の電磁石または永久磁石を埋没したターゲット機構によって形成される湾曲した磁力線構造と干渉しない位置、またはその位置よりもターゲットから離れた位置へ基板を設置した前項6~10のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[12] プラズマ発生装置と同等またはそれ以上の面積を有するターゲットを配置し、ターゲット材料以外へのイオン照射を抑制する前項6~11のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[13] 前記第1の電磁石または第1の永久磁石群が前記絶縁管の長手方向の静磁場を印加可能であり、前記高周波電力供給装置が周波数2MHz~100MHz帯の高周波電力供給装置であり、前記絶縁管周囲に誘導結合性高周波アンテナが設置されている前項6~12のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[14] 基板ステージ周囲の第2の永久磁石群が、基板表面に平行方向の静磁場を印加可能な永久磁石群である前項10~13のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[15] 第2の電磁石の励磁電流を時間的に変動させる手段を有する前項6~14のいずれかに記載のプラズマスパッタリング装置。
[16]内径が拡大し端部または側部にガス導入口を備えた絶縁管と、前記絶縁管の静磁場を印加可能な第1の電磁石または第1の永久磁石群と、2MHz~100MHz帯の周波数を有する高周波電力供給装置と、前記絶縁管周囲に設置された誘導結合性高周波アンテナとを備えていることを特徴とするプラズマ発生装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラズマスパッタリング方法、プラズマスパッタリング装置、及びプラズマ発生装置によれば、プラズマ源の下流域に高密度プラズマを生成することが可能となり、湾曲磁場によりターゲット材へのプラズマ照射効率を向上させることができる。すなわち、プラズマ生成部の下流域にターゲット材と基板を対向して配置することにより、高成膜速度で薄膜形成が実現できる。また、湾曲磁場及び永久磁石群を有する基板ステージ機構により基板へのイオン流入量及びエネルギーを抑制可能であることから、基板へのダメージを抑制した高速薄膜形成または高品質結晶薄膜形成が可能となる。また、ターゲット材の表面をイオンの入射エネルギーにより昇温できることから、各種ターゲット材に応じた最適プロセスを実現でき、ターゲット材料の蒸発及び昇華現象を重畳した高速成膜も可能となる。
【0022】
さらには、真空容器槽に1個または複数個のプラズマ発生装置を取り付けることにより大口径ターゲット及び大口径基板を用いた成膜が可能であり、第2の電磁石の励磁電流を高速変動することでターゲットへのイオン引き込みの時間平均分布を制御できることから、大口径かつ均一な薄膜形成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のプラズマスパッタリング装置の原理図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置を示す概略図である。
【図3】本発明のプラズマスパッタリング方法及びプラズマスパッタリング装置において、非磁性体または磁性体ターゲットを使用した際の磁力線構造概略図であり、従来のマグネトロンスパッタリング法において、ターゲット材を非磁性材料とした際の磁力線構造(3a)、ターゲット材を磁性材料とした際の磁力線構造(3b)、本発明において、ターゲット材を非磁性材料とした際の磁力線構造(3c)、ターゲット材を磁性材料とした際の磁力線構造(3d)を示す。
【図4】複数個のプラズマ発生装置を真空槽に設置した場合のプラズマスパッタリング装置の一例の概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置内部にて、第2の電磁石(8)の励磁電流を高速変動させた場合の磁力線構造計算結果を示す。
【図6】内径が一定の場合のプラズマ発生装置及び本発明の内径が拡大するプラズマ発生装置を使用した際の、下流6cmにおいて計測したプラズマ密度の、第一の電磁石(7)の励磁電流依存性の計測結果を示す。
【図7】本発明のターゲットホルダへ永久磁石を用いて湾曲磁場構造(M1)を適用した場合、及び湾曲磁場構造を適用しない場合の、ターゲット位置に相当する下流6cmにおいて計測したイオン密度の、アンテナ(4)へ投入する高周波電力依存性を示すグラフである。
【図8】ターゲットホルダ内部の永久磁石のみで湾曲した磁力線を形成した際の、放電の様子を示す写真である。
【図9】ターゲット材料を強磁性材料であるNdFeBとし、ターゲット表面の温度を計測した結果を示すグラフである。
【図10】サファイア基板上に約100μmの厚さで製膜したGaNをターゲットとし、スパッタリング後のターゲット表面を撮影した写真である。
【図11】アルゴンと窒素の混合ガスを本発明のプラズマスパッタリング装置(20)へと導入し、ターゲット材料にアルミターゲットを用いて反応性スパッタリングによりサファイア基板上に製膜した際の、基板のX線回折分析結果を示すグラフである。
【図12】アルゴンと窒素の混合ガスを本発明のプラズマスパッタリング装置(20)へと導入し、ターゲット材料にアルミターゲットを用いて反応性スパッタリングによりサファイア基板上に製膜した際の、基板断面のTEM像である。
【図13】純アルゴンガスを本発明のプラズマスパッタリング装置(20)へと導入し、ターゲット材料にGaNを用いて反応性スパッタリングによりGaN基板上に製膜した際の、成膜部分の基板断面のTEM像である。
【図14】本発明のプラズマスパッタリング方法及びプラズマスパッタリング装置において、第二の電磁石(8)に流す電流値を変化させた際に、真空層(1)側面のビューポートから撮影したプラズマ発光の様子を示す写真である。
【図15】本発明のプラズマスパッタリング方法及びプラズマスパッタリング装置において、基板表面に磁場構造(M2)を形成する永久磁石群(17)を設置した場合及び設置しない場合の、スパッタリングプロセス時の基板表面温度の計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
<基本装置構成>
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)は、真空槽(1)と、真空排気ポンプ(Pump)、プラズマ発生装置(21)と、第2の電磁石(8)を含むターゲット機構(22)と、基板ステージ(23)とを具備する。

【0025】
真空槽(1)は予め真空排気ポンプ(Pump)によって10-5Pa以下の高真空状態としておく。プラズマ発生装置(21)にガス導入口(G1)または(G2)より導入されたガスの一部はプラズマ発生装置(21)において電離され高密度プラズマが発生される。絶縁管(2)の内径が拡大し磁力線(M1)と壁の距離が離れるため、プラズマは絶縁管(2)の内壁と接触せず真空槽(1)へと流れ出す。このプラズマは電磁石(8)及び永久磁石(11)によって湾曲される磁力線構造(M1)に沿って真空槽(1)の内部を流れ、ターゲット材(2a)に向かって流入する。高周波電源(15)及びインピーダンス整合器(14)によりバイアスされたターゲットへとプラズマ中のイオンが加速され引き込まれ、ターゲット材がスパッタされ、飛散した粒子群が、ターゲットに対向して設置した基板(3a)へと堆積し薄膜が形成される。その後基板搬送ロボット(図示せず)によって真空槽(1)の外へと搬送され、薄膜形成プロセスが完了する。

【0026】
以下に、本発明に係るプラズマ発生装置(21)、プラズマスパッタリング装置(20)、ダメージを抑制可能な基板ステージ(23)、昇温可能なターゲット機構(22)、複数個のプラズマ発生装置(21)を接続したプラズマスパッタリング装置(24)、及び第2の電磁石(8)によるイオン引き込み分布の制御法について説明する。

【0027】
<プラズマ発生装置>
本発明で使用するプラズマ発生装置(21)は、静磁場印加条件下におけるMHz帯の高周波電力によってプラズマを生成する、いわゆる誘導電磁場により電子加熱を行う有磁場型ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合性プラズマ)または大電力化高周波電力投入時にはプラズマ・波動相互作用によって電子加熱を行うヘリコン波プラズマ発生装置を改良したものである。プラズマ生成領域に相当する絶縁管を、長手方向に内径が変化する構造を有する絶縁管(2)(例えば、ガラス管やセラミックス管)として、絶縁管(2)の上流端または側壁にガス導入口(G1、G2)を有する構造となっている。絶縁管(2)を真空フランジ(3)によりOリングシールまたは高真空接着剤シールを用いて真空槽(1)へと接続し、内部を真空状態にした後に、マスフローコントローラを介してG1またはG2よりガスを導入し、内部圧力を0.01から10Paの範囲にある指定の値で一定に保つ。内径が拡大した領域に1個または複数個の電磁石(7)を設置しこれらに直流電流を流すことで絶縁管(2)の内径が小さい領域の壁面を通過する磁力線が、絶縁管(2)の内径が拡大した領域の壁面と交差しない磁力線形状(M1)を形成する。絶縁管(2)の内径が小さい領域において、絶縁管外側に水冷が可能な高周波アンテナ(4)を巻きつけ、例えば13.56MHzの高周波電源(6)と可変コンデンサを含むインピーダンスマッチング回路(5)を用いて高周波電力を投入することで、または例えば2~100MHzの範囲で周波数可変な広帯域高周波アンプ(6)と固定コンデンサ(5)からなるマッチング回路を用いて高周波電力を投入することで、プラズマを生成する。ここで生成されたプラズマは磁力線(M1)に沿って下流域へと流れるが、絶縁管(2)の内径が拡大するために磁力線が絶縁管内壁と交差せず、プラズマの壁面への損失が抑制され、結果として下流域において1017~1019-3の高密度プラズマが得られる。

【0028】
<プラズマスパッタリング装置>
本発明におけるプラズマスパッタリング装置(20)は、電磁石(8)または永久磁石(11)によってプラズマ発生装置(21)から発生する磁力線を湾曲し、プラズマ発生装置(21)で生成した高密度プラズマを、ターゲット表面へと効率よく流し、イオン引き込みによりスパッタリングを行うものである。真空槽(1)においてプラズマ発生装置(21)と垂直方向の真空槽壁面へ絶縁フランジ(9)を介して、水冷機構(W1)を備えかつ永久磁石(11)を内蔵したターゲットホルダ(10)を設置する。ターゲット材を冷却する場合には直接ターゲット材(2a)をターゲットホルダ(10)へ設置する構造とする。ターゲットホルダ(10)へ、例えば13.56MHzの高周波電源(15)と可変コンデンサを含むインピーダンスマッチング回路(14)を用いて高周波電圧を印加することで、または例えば400kHz~100MHzの範囲で周波数可変な広帯域高周波アンプ(15)と固定コンデンサ(14)からなるマッチング回路を用いて高周波電圧を印加することで、またはターゲット材(2a)が導電性材料であり、ターゲットホルダ(10)と電気的に接触している場合には直流電圧(図示せず)を印加する。これにより、プラズマ発生装置(21)より流れてきたプラズマ中のイオンを引き込み、イオン衝撃によりターゲット材(2a)がスパッタされる。ターゲット機構の対向位置には冷却水(W2)を導入した基板ステージ(23)を設置し、ターゲット材よりスパッタされた粒子が基板(3a)へと堆積し薄膜が形成される。この際に、基板位置を、プラズマ発生装置(21)から湾曲してターゲット機構(22)へ向かう磁力線が通過しない領域に設定することで、またはその位置よりターゲットから離れた領域に設定することで、基板(3a)へのプラズマ流入を抑制しイオンダメージを軽減することができ、高品質結晶薄膜形成が実現できる。

【0029】
ここで磁性体をターゲット材とした際の本発明の動作特性について、最も一般的に使用されているマグネトロンスパッタ方式との違いについて図3を基に説明する。

【0030】
一般的なマグネトロンスパッタ方式では、図3aに示すようにターゲット背後に設置した永久磁石群からのターゲット表面への漏れ磁束によりプラズマの閉じ込めを改善することでプラズマを維持し、スパッタを実現するものである。したがって、ターゲット材料を磁性体とした場合には、図3bに示すように磁気回路が構成されるため漏れ磁束が減少し、プラズマの維持が困難である。

【0031】
一方、本発明の方式においては、非磁性体ターゲットの場合には図3cのような磁力線が形成されるが、磁性体ターゲットを使用した場合にも磁気閉回路が構成されないため、磁場形状は図3dのように図3cの場合とほぼ変化せず、さらに別途設置するプラズマ発生源(21)によってプラズマ密度が調整可能であるため、効率よく磁性体材料のスパッタリングも可能である。したがって図1中のターゲット材(2a)は、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの強磁性体材料であっても同様にスパッタが可能である。また、ターゲット材(2a)は、金属なら何でもよく、また無機セラミック材料、絶縁体材料、半導体材料も使用可能である。

【0032】
<基板ステージ機構>
湾曲磁場(M1)により形状制御した状態であっても、中性粒子とプラズマ中のイオン及び電子が衝突する際には、磁力線を横切るプラズマの拡散過程により、少量ではあるが基板へのプラズマ流入が起こりうる。基板(3a)へのイオンダメージをさらに抑制するために、基板ステージ(16)周辺に永久磁石群(17)を設置し、基板(3a)の表面に沿った磁力線(M2)を形成する。プラズマの流れに対して垂直方向の磁力線を横切ってプラズマが拡散する場合には電子温度が低下することが知られており、磁場強度が強い場合に電子温度低下の効果が顕著になる(特許文献3など)。基板表面におけるシース構造による電圧降下Vshは、次式で与えられる。
【数1】
JP2018143164A1_000003t.gif
式中、Te、M、meはそれぞれ電子温度、イオン質量、電子質量である。

【0033】
したがって、電子温度Teの低下に伴いシース電圧降下Vshが小さくなるため、基板へ流入するイオンエネルギーを低下させることが可能であり、結果としてイオン損傷によるダメージが抑制される。一方、ターゲット材(2a)よりスパッタされた粒子の主な成分は電気的に中性状態であり、永久磁石群(17)による磁力線(M2)の影響を受けることなく薄膜形成に寄与する。またターゲット材(2a)よりスパッタされる粒子がイオン化している場合にも、イオンは質量が大きく磁力線の効果を受けにくいため磁力線(M2)の影響を受けず、さらには電圧降下Vshを抑制しているため低エネルギー状態で基板へと堆積し薄膜形成に寄与することができる。

【0034】
また、前述のように、基板位置を、プラズマ発生装置(21)から湾曲してターゲット機構(22)へ向かう磁力線が通過しない領域に、またはよりターゲットから離れた領域に設定することで、プラズマ発生装置(21)からのイオン及びターゲット表面から発生する高エネルギー粒子の基板への流入を抑制することが可能であり、プラズマダメージを抑制した薄膜形成に寄与することができる。

【0035】
<昇温可能なターゲット機構>
前述のようにターゲット機構(22)においては、永久磁石(11)をターゲットホルダ(10)へと内蔵しているため、安定した永久磁石特性を維持するためには、冷却機構(W1)は必須である。そこでターゲットを昇温するためには、図1に示すように、ターゲット材(2a)とターゲットホルダ(10)の間にセラミックス等で構成される断熱板(12)を挿入することで、ターゲットのみの昇温が可能となる。ターゲットへ吸収されるエネルギー(Et)はおおよそ引き込まれるイオンのエネルギーに相当する。ターゲットへ流入する単位時間当たりのおおよそのエネルギーEtは、次式で算出される。
【数2】
JP2018143164A1_000004t.gif
式中、nはプラズマ密度、ボーム速度uB=(eTe/MAr1/2、Sはターゲット面積、eは電荷素量、Eiはアルゴンイオンの引き込みエネルギーである。

【0036】
例えば、典型的なプラズマ密度n=1018-3、電子温度Te=3eV、プラズマ半径5cm、アルゴンイオンエネルギーEi=500eVとした際には、最大で1kW級の電力をターゲット材表面へと投入することが可能であり、ターゲット材(2a)の昇温が可能となる。

【0037】
<大口径ターゲット機構>
前述のようなプラズマスパッタリング装置においては、真空槽(1)へのイオン流入により真空槽壁面からの不純物飛散またはアウトガスが薄膜の結晶性や品質に大きく影響する。プラズマによるターゲット材料以外からの粒子混入を避けるため、ターゲット材(2a)の直径はプラズマ発生装置(21)と同等またはそれ以上の直径とするのが好ましい。また成膜前には十二分なプレスパッタリングを実施し、真空槽(1)の壁面をターゲット材料でコーティングし、壁面からの不純物混入の影響を軽減するのが好ましい。

【0038】
<複数個のプラズマ発生装置(21)を接続したプラズマスパッタリング装置>
図4は複数個のプラズマ発生装置(21)を接続したプラズマスパッタリング装置の概略図である。真空槽(1)の壁面に複数個のプラズマ発生装置(21)を接続し、それぞれ独立にプラズマを生成する。第2の電磁石(8)の磁場強度及び永久磁石(11)によってそれぞれのプラズマ発生装置からの磁力線がターゲット機構(22)へと湾曲されるようにコイル電流及び永久磁石強度を調整することで各プラズマ発生装置から流れ出すプラズマがターゲット材(2a)へと流入することが可能となる。これにより、新たなプラズマ発生装置開発が不要となり、各種プロセスに柔軟に対応でき、大口径ターゲットを用いた成膜及び大口径基板への成膜が可能となる。

【0039】
<第2の電磁石によるイオン引き込み分布の制御法>
図5は、プラズマ発生装置(21)に含まれる第1の電磁石(7)の電流を一定とし、ターゲット機構(22)に含まれる第2の電磁石(8)の電流を変動させた場合の、各代表的時間における磁力線構造である。最終的に磁力線(M1)が集中する、すなわちプラズマが照射される位置が時間によって移動する。これによりイオン引き込み量の時間平均値は均一な分布となるため、均一な薄膜形成が可能となる。

【0040】
以上、説明したように、本発明のプラズマスパッタリング装置、プラズマスパッタリング方法及びプラズマ発生装置によれば、代表的な金属材料である銅(Cu)、アルミニウム(Al)では成膜速度100nm/分以上、好ましくは成膜速度200nm/分以上の高速で成膜できる。また、本発明では、成膜用の高周波電源のパワーを上げると、成膜速度500nm/分以上、好ましくは1μm/分以上の高速成膜ができる。

【0041】
また、本発明のプラズマスパッタリング装置、プラズマスパッタリング方法及びプラズマ発生装置によれば、イオンダメージを抑制した状態で成膜することが可能であるため、窒化物、酸化物に代表される化合物半導体材料の結晶薄膜形成、または各種強磁性体材料の結晶薄膜形成ができる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【実施例1】
【0042】
本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置(21)に関する実施例である。図6は、内径が拡大する絶縁管(2)を用いた場合と、従来のプラズマ発生装置と同様の内径が一定の絶縁管を用いた場合に、周波数可変の高周波電源(6)と固定コンデンサからなるマッチング回路(5)を用いてプラズマを生成し、プラズマ発生装置出口より約6cmの位置で計測したプラズマ密度の、第1の電磁石(7)の励磁電流、すなわち磁場強度依存性を示すグラフである。ここでは、下流域の湾曲磁場用の第2の電磁石(8)及びターゲット機構の永久磁石(11)は使用しておらず、真空槽(1)内部において磁力線は発散しており、絶縁管(2)の効果を示している。なお、プラズマを生成させるガスとしてはアルゴン(Ar)を用いた。
【実施例1】
【0043】
励磁電流が2A以下の場合において、内径が一定の従来型の絶縁管を用いた場合(□)と本発明における内径が拡大した絶縁管(2)を用いた場合(●)に明確な差は見られないが、第1の電磁石の励磁電流が2A以上において、本発明における内径が拡大した絶縁管(2)を用いた場合に、下流域にてプラズマ密度が大きく増大していることが分かる。すなわち磁場強度を増加させてプラズマを構成する荷電粒子の回転半径が減少し、磁力線に沿ってプラズマが運動する際に、本発明における内径が拡大する絶縁管の効果が顕著に現れることが分かった。したがって、内径が拡大した絶縁管と磁力線構造を用いることで、プラズマ発生装置の下流域に高密度プラズマを維持できることが明らかとなった。
【実施例2】
【0044】
図7は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、本発明によるプラズマ発生装置(21)を真空槽(1)へと接続し、湾曲磁場構造を適用しない場合と、ターゲットホルダ(10)に湾曲磁場構造用の永久磁石(11)を内蔵して湾曲磁場構造を適用した場合の両者において、周波数可変の高周波電源(6)と固定コンデンサからなるマッチング回路(5)を用いてプラズマを生成し、ターゲット位置に近いプラズマ発生装置出口より約6cmの位置で計測したプラズマ密度の、高周波電源(6)の出力電力依存性の計測結果を示すグラフである。
【実施例2】
【0045】
湾曲磁場構造を適用しない場合(□)に比べて、湾曲磁場構造を適用した場合(●)の方が、数倍高いイオン密度が得られていることが分かる。当該データはターゲット近傍で計測していることに留意すると、第2の電磁石(8)または永久磁石(11)により湾曲磁場構造を適用することで、プラズマ発生装置(21)により生成したプラズマを、ターゲット機構(22)へと局所的に流し込むことが可能であることが分かる。
【実施例3】
【0046】
図8は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、本発明によるプラズマ発生装置(21)を真空槽(1)へと接続し、ターゲットホルダ(10)に湾曲磁場構造用の永久磁石(11)を内蔵して湾曲磁場構造を適用した場合の両者において、周波数可変の高周波電源(6)と固定コンデンサからなるマッチング回路(5)を用いてプラズマを生成し、真空槽(1)の側壁のビューポートより撮影したプラズマの写真である。ここで、図8中の左側にプラズマ発生装置(21)があり、図中左上側にはターゲット機構(22)、その対向側に基板ホルダを設置している。
【実施例3】
【0047】
図8中、中央にプラズマ発生装置(21)で生成したプラズマ(P)が、湾曲磁場構造によって真空槽(1)内部にて湾曲していることが分かる。その対向側に設置した基板ステージ機構にはプラズマが照射されておらず。湾曲磁場の効果が確認された。これにより基板へのイオンダメージを抑制した成膜プロセスが可能であることが分かる。
なお、ターゲット材(2a)として銅(Cu)を用い、本発明のプラズマスパッタリング装置、プラズマスパッタリング方法及びプラズマ発生装置で成膜実験を実施したところ、
プラズマ発生装置(21)の高周波電力を100W、ターゲットバイアスを-1kV以上の条件で、基板(3a)上への成膜速度が150nm/分の高速成膜が可能になった。
【実施例4】
【0048】
表1は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、高周波電力100W、ターゲットバイアス-500V程度とした際の、ターゲット材料を銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及び鉄(Fe)に変えた際のスパッタリングレート(成膜レート)(sputtering rate)の計測結果を、材料固有の値であるスパッタイールド(sputter yield)(単一イオンによってスパッタされる原子数)と共に示す。
【実施例4】
【0049】
【表1】
JP2018143164A1_000005t.gif
【実施例4】
【0050】
材料による成膜レートの違いはおおよそスパッタイールドで決定されており、強磁性材料であるFe、Niにおいても、非磁性材料であるCu、Alと同程度の成膜レートが得られており、ターゲットに磁性材料を用いた場合であっても非磁性材料と同等のプラズマ生成・維持、及びスパッタリング成膜が可能となった。
【実施例5】
【0051】
図9は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、ターゲット材料を強磁性材料の一つである厚さ20mmのNdFeBとし、高周波電力を600W、ターゲットバイアスを-600V程度とし、イオン衝撃による昇温のための断熱材を使用した際のターゲット温度計測結果である。
【実施例5】
【0052】
実施例3と同様に、強磁性体であっても非磁性体と同様にイオン衝撃によるスパッタリングを起こすことが可能であり、断熱材を使用することによってターゲット材料の温度を1200K程度まで数分間で昇温することが可能になった。なおこの昇温機構に関しては、本実施例である強磁性材料に限定されない。
【実施例6】
【0053】
図10は、窒化物半導体の一種であるGaNを15mm×15mmのサファイア基板上に100μm製膜したものをターゲットとし、局所的なイオン衝撃によるスパッタリング及び昇温を行った後のターゲット表面の写真である。
【実施例6】
【0054】
プラズマ照射部は表面が昇温されるため、イオンスパッタリング現象に加えて昇華現象が重畳され、高速で成膜可能であることが示唆され、プラズマ照射部は高速で材料がスパッタされていることが示された。
【実施例7】
【0055】
図11は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、ターゲット材料をAlとし、アルゴンと窒素の混合ガスを用いて反応性スパッタリングによりサファイア基板上に成膜した薄膜のX線回折スペクトルである。サファイア(Al23)基板及びサンプルホルダー(×印)に由来するピーク以外には、AlN(0002)及びAlN(0004)由来のピークのみが顕著に観測されており、高品質の窒化アルミニウム(AlN)薄膜が結晶成長できることが分かる。
【実施例7】
【0056】
また図12は本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)によって製膜したAlNの断面TEMであり、サファイア基板上にAlN結晶が形成されていることが確認された。
【実施例7】
【0057】
図13は、サファイア基板上にAlN薄膜及びGaN薄膜をヘテロエピタキシャル成長させた基板上に、窒化ガリウム(GaN)をアルゴンスパッタした際の断面TEM像である。図13より、GaNに関しても、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)によって結晶成長可能であることを示している。
【実施例8】
【0058】
図14は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、本発明によるプラズマ発生装置(21)を真空槽(1)へと接続し、第二の電磁石(8)によって湾曲磁場構造を形成した場合において、13.56MHz高周波電源(6)と可変コンデンサからなるマッチング回路(5)を用いてプラズマを生成し、第二の電磁石(8)の励磁電流を変化させた際に、真空槽(1)の側壁のビューポートより撮影したプラズマの写真である。
【実施例8】
【0059】
前述の図5に記載の通り、電磁石励磁電流を変化させることによりターゲット材(2a)へのプラズマが照射される位置が時間によって移動することが確認され、均一なスパッタリング成膜が可能である。
【実施例9】
【0060】
図15は、本発明の一実施形態に係るプラズマスパッタリング装置(20)にて、ターゲット材料をCuとし、プラズマ発生用の高周波電源(6)の電力とターゲットへの直流印加電圧を変化させ、磁場構造M2用の永久磁石群の有無の条件で、基板(3a)の表面温度を計測した結果である。
基板ステージ機構に関して既述の通り、基板表面近傍の磁力線構造M2によって基板へのイオン入射エネルギーが低下可能であるため、図16に示すようにイオン流入による基板温度上昇を抑制することが可能であり、低ダメージ薄膜形成が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1a:プラズマ発生装置
2a:ターゲット材
3a:基板
M1:湾曲磁力線
M2:基板表面の磁力線
P:プラズマの流れを示す矢印
T:ターゲットから飛散する粒子
1:真空槽
2:絶縁管
3:接続真空フランジ
4:高周波アンテナ
5:プラズマ発生装置用のマッチング回路
6:プラズマ発生装置用の高周波電源
7:第1の電磁石
8:第2の電磁石
9:絶縁フランジ
10:ターゲットホルダ
11:湾曲磁場用の永久磁石
12:断熱機構
14:ターゲットバイアス用のマッチング回路
15:ターゲットバイアス用の高周波電源
16:基板ステージ
17:磁場構造M2用の永久磁石群
20:プラズマスパッタリング装置
21:プラズマ発生装置
22:ターゲット機構
23:基板ステージ機構
G1、G2:ガス導入口
W1、W2:冷却機構
Pump:真空排気ポンプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14