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明細書 :抗体-多糖結合体及びそれを用いた高感度免疫測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年11月21日(2019.11.21)
発明の名称または考案の名称 抗体-多糖結合体及びそれを用いた高感度免疫測定方法
国際特許分類 C07K  16/00        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  14/78        (2006.01)
C07K  14/81        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
FI C07K 16/00 ZNA
C07K 19/00
C07K 14/78
C07K 14/81
G01N 33/543 545D
G01N 33/543 521
G01N 33/543 565E
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 31
出願番号 特願2018-562471 (P2018-562471)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2018/001690
国際公開番号 WO2018/135651
国際出願日 平成30年1月19日(2018.1.19)
国際公開日 平成30年7月26日(2018.7.26)
優先権出願番号 2017008331
優先日 平成29年1月20日(2017.1.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】松下 隆彦
【氏名】松岡 浩司
【氏名】幡野 健
【氏名】根本 直人
【氏名】新井 秀直
出願人 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002332、【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA56
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
要約
本発明は、水溶性多糖類の少なくとも一つの側鎖に、リンカーを介して抗体又は抗体複合体が結合してなる免疫測定用抗体-多糖結合体及びそれを使用した免疫測定用方法を提供することを目的とする。
プルラン等の水溶性多糖類の側鎖の官能基に、リンカーを介してVHH抗体等の抗体、又はステフィンA変異体等のクッションタンパク質と抗体からなる抗体複合体を結合させることで、水溶性多糖類が免疫測定用の固相表面に吸着した際に、抗体の配向制御が容易になり、また、構造が安定で多価化した抗体が、他のタンパク質と非特異吸着せずに目的タンパク質と結合できる、高感度なサンドイッチELISA法やイムノクロマト法等の免疫測定用抗体-多糖結合体及びそれを用いた高感度免疫測定方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶性多糖類、低分子抗体分子、並びに前記水溶性多糖類及び前記低分子抗体分子とをつなぐリンカーと、を含む免疫測定用抗体-多糖結合体であって、
前記リンカーは、前記低分子抗体分子のアミノ酸残基と反応する反応性官能基と、クッションタンパク質とを含むことを特徴とする、免疫測定用抗体-多糖結合体。
【請求項2】
前記水溶性多糖類は、プルラン、デキストラン、アガロース、カードラン及びグルコマンナンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫測定用抗体-多糖結合体。
【請求項3】
前記反応性官能基は、マレイミド基、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基、ピリジルジスルフィド基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の免疫測定用抗体-多糖結合体。
【請求項4】
前記クッションタンパク質は、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体及びジェラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫測定用抗体-多糖結合体。
【請求項5】
前記低分子抗体分子は、VHH抗体、IgNAR抗体、scFv及びペプチドアプタマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫測定用抗体-多糖結合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の免疫測定用抗体-多糖結合体を用いた免疫測定方法。
【請求項7】
前記免疫測定方法は、ELISA法又はイムノクロマト法であることを特徴とする、請求項6に記載の免疫測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的測定方法のひとつである、ELISA法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay;酵素免疫測定法)に関する。より詳細には、ELISA法のうち、後述するサンドイッチELISA法で試料を測定する際の検出感度を増強する方法及びその方法で使用する試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ELISA法は、ある試料溶液中に含まれる目的とする抗原(以下、「標的抗原」という。)を、これらの抗原を特異的に認識する抗体(以下、「特異抗体」ということがある。)で捕捉し、それに引き続いて酵素反応を利用した検出又は定量を行う方法である。上記標的抗原は、B細胞に抗体産生を生じさせる抗原決定基(エピトープ)を有する物質をいい、一定の長さ以上のペプチド、タンパク質、糖鎖等が含まれる。
本明細書において、「抗体」とは、天然抗体及び人工抗体の双方を含む。ここで、「天然抗体」とは、いずれかの脊椎動物が産生する抗体と同一のアミノ酸配列を有する抗体をいう。また、「人工抗体」とは、人工的に構築された抗体をいい、例えば、前記天然抗体のアミノ酸配列に適当な変異を導入した抗体その他、通常、自然界には存在しない構造を含むように改変を行った抗体をいう。
【0003】
上記のような抗原と抗体とを結合をさせた後に、試料溶液中に使用される酵素の基質を加えると、酵素活性に依存して色素が生成され、又は蛍光物質若しくは化学発光物質が生成される。そして、色素が生成された場合には吸光度を、また、蛍光物質又は化学発光物質が生成された場合には、蛍光又は化学発光等を測定して検出する。
【0004】
抗原と抗体との組合せによって、直接法、間接法、サンドイッチ法(以下、「サンドイッチ ELISA法」ということがある。)、競合法等に分類される。これらのうち、サンドイッチELISA法では、捕捉抗体及び検出抗体という2種類の抗体を使用する。前記捕捉抗体は、固相に結合させて使用するため、固相用抗体とも呼ばれる。このサンドイッチELISA法では、固相用抗体と検出抗体とで抗原を挟み込むことで抗原を検出し、定量する。
【0005】
サンドイッチELISA法では、通常、抗体として免疫グロブリン(以下、「IgG」、又は「全長抗体」ということがある。図1参照)が用いられる。IgGは単一分子の抗体であり、五量体となっている免疫グロブリンM(以下、「IgM」と略すことがある。)等と比べると、生体高分子としては分子量は小さいが、それでも分子量は約17万である。また、複数のドメインを有するIgGは人工的に合成することができない。このため、哺乳動物に抗原となる物質を一定の期間をおいて複数回投与(免疫)し、最終の投与の時から一定期間が経過した後に血液を採取し、血清中の抗体を精製する以外には、入手することができない。
【0006】
このように動物を免疫してIgGを入手するには、採決までの期間、動物を健常に飼育することが不可欠であり、また、投与する抗原も大量に必要である。さらに、採決した血液から血清を分離し、血清中の抗体を精製しなければならない。このため、所望の抗原と十分に結合し得る抗体を入手するためには、時間と費用が必要となる。
【0007】
こうした問題を解決するための1つの手段として、上述したようなIgGに代えて使用できる新たな抗原結合性分子の研究が進められてきた。こうした結合性分子としては、例えば、一本鎖ポリペプチドで構成され、かつ単体で標的物質を認識し、結合することのできる一本鎖抗体(single chain Fv:scFv)を挙げることができ、これらは単鎖抗体と呼ばれることもある。
単鎖抗体は、天然のもの、例えば、ラクダ科の動物が産生する一本鎖抗体(以下、シングルドメイン抗体、「VHH抗体」又は「VHH」ということがある。図1参照。Zhang L., et al., 1993, Nature, 362:446-448)と遺伝子組換えによってつくられた非天然のものとに大別される。非天然の単鎖抗体は、この抗原結合部位を構成する2つの可変領域断片(重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL))を柔軟なリンカーで結んで作製された組換え抗体断片であり、例えば、一本鎖Fv(scFv:single chain Fragment of variable region)(Pierce Catalog and Handbook, 1994 - 1995, Pierce Chemical Co., Rockford, IL)等を挙げることができる。これらの単鎖抗体は、比較的容易に微生物で発現させることができる。
【0008】
実際に、分子量がIgGの1/10未満であるVHHは、ファージディスプレイとその他の免疫反応を利用しないライブラリ(以下、「非免疫ライブラリ」ということがある。)を用いて人工的に作製することができる。
【0009】
ところで、一般的なIgGのKd(解離定数)は10-6~10-9 Mであり、これらのうち、10-9 Mを示すIgGは抗原親和性が高いと判断することができる。これに対し、非免疫ライブラリから得られるVHH抗体やIgNAR抗体のKdは10-5~10-8程度であり(非特許文献1及び非特許文献2参照)、IgGに比べて抗原親和性が低いことが知られている。
【0010】
ELISA法で安定した定量を行うためには、一定以上の抗原親和性が必要である。そして、抗原親和性を増強させる方法としては、多価化によるアビディティー(特異抗原との結合力)の導入が知られている。こうしたアビディティーを増強するには、動物細胞の発現系を用いて、VHH抗体のようなシングルドメイン抗体とタグ分子とを融合させた融合タンパク質として発現させ、その後、タグ分子を介して自己会合させることにより抗体多量体を構築した例が幾つか報告されている(以下、「従来技術1」という。非特許文献3参照)。
【0011】
ELISA法では、固相化抗原の抗原結合能が測定感度を上げる上で重要である。これまで、大腸菌等に産生させたリコンビナントVHH抗体を、ポリスチレン等の基材に直接物理吸着させると、上記VHH抗体が本来備えていた抗原結合力を失う傾向が非常に高いことが知られている(非特許文献4~6参照)。また、直接物理吸着させた固相化VHH抗体は、固相化IgG抗体に比べて、ELISA法に含まれる洗浄操作によって基材から剥離(脱落)しやすいことも知られている。
【0012】
上記のようなVHH抗体の直接物理吸着による抗原結合能の低下を改善する方法として、ストレプトアビジンとビオチンとを用いる方法がある。具体的には、基材表面にストレプトアビジンを吸着させ、VHH抗体をビオチンと結合させてビオチン化VHHとし、上記基材表面に吸着したストレプトアビジンを介してビオチン化VHHを間接的に固相化する方法(以下、「従来技術2」という。非特許文献7参照)が知られている。
また、VHH抗体の末端に基材に特異的に結合するペプチド(以下、「基材特異的結合ペプチド」という。)を融合させ、この基材特異的結合ペプチドを介することにより、VHHの配向を制御しながら固相化する方法(以下、「従来技術3」という。非特許文献8参照)などが知られている。
【0013】
また、酵素等のタンパク質又はペプチドは、金属又は金属酸化物等で構成された固体表面に吸着すると活性が低下する(すなわち、結合能が低下する)ことが知られており、こうしたタンパク質やペプチドの活性の低下を改善する方法が提案されている。「特定の配列からなるペプチド、およびクッションタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つを含む、固体表面に吸着できるクッション性吸着剤」を使用することによって、酵素を固相化した際の残存活性を使用しない場合よりも向上させることができることが報告されている(以下、「従来技術4」という。特許文献1参照)。
また、目的物質を結合するための足場として多糖を利用し、固相表面-(化学結合)-多糖-(化学結合)-目的物質(タンパク質、核酸など)という構成とすることで分子を検出するシステムが提案されている(以下、「従来技術5」という。特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】特開2008-054599
【特許文献2】特表2011-520111
【0015】

【非特許文献1】Immunol. Today, 2000, 21, 371-378.
【非特許文献2】Mol. Immunol. 2003, 40, 25-33
【非特許文献3】J. Immunol. Methods, 2007, 318, 88-94
【非特許文献4】J. Virol. 2008, 82, 9753-9764
【非特許文献5】Mol. Immunol. 1994, 31, 219-226
【非特許文献6】Anal. Biochem. 2003, 312, 113-124
【非特許文献7】PLoS One. 2013, 8, e83928
【非特許文献8】Biotechnol. Prog., 2015, 31, 1563-1570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のサンドイッチELISA法で使用されているIgGに代えて、VHH抗体を使用しつつ、測定感度を維持するためには、抗原親和性の向上と、基材への物理吸着後の活性の維持という2つの課題を解決する必要がある。
【0017】
従来技術1は、大腸菌等を用いて、VHH抗体の価数が2~10程度の多量体(多価化抗体)を構築し、抗原親和性を増強させるという点では優れた技術である。しかし、大腸菌等によって産生される上記のような多価化抗体の産生量は、VHH抗体単独を産生させる場合と比較すると少ないという問題がある。
【0018】
また、多価化抗体の構築が可能なVHH抗体の最大分子数(価数)又はVHH抗体同士の空間的距離は、自己会合性タグ分子の構造又は性質に大きく依存する。このため、望み得るアビディティーの増強効果とVHH多量体の設計の自由度が大きく制限されるという問題もある。このことは、VHH抗体が持つ抗原親和性に見合ったアビディティーの増強効果の付与、又は付与すべきアビディティーの調節が難しいことを意味し、産業上利用する上での汎用性に乏しいという問題につながる。
【0019】
また、多量体の構築のために導入したタグ分子が非特異的吸着を起こし、こうした非特異的吸着が、ELISA法の際に、ブランクや低濃度領域のノイズとなって、検出感度を低下させる要因となるという懸念もある。
【0020】
従来技術2及び3は、固相表面に抗体を間接的に吸着させることから、抗体分子のコンフォメーションの変化を防ぐという点では優れた技術である(図2(A)及び(B)参照)。ここで、コンフォメーションの変化は、物理吸着による抗体分子上の接触面に生じると考えられる。VHH抗体の特性から、サンドイッチELISA法で使用するIgGに代替させれば、常温保存が可能な、ロット差の小さい製品が開発できるとも考えられる。
【0021】
しかし、低分子抗体であるVHH抗体の分子量は、上述したようにIgGの10分の1未満と小さい。このため、基材との接触面積もIgGよりもはるかに小さくなり、VHHが安定して吸着されないという問題がある(図2(A)及び(B)参照)。さらに、分子量が小さいことに起因して、抗原結合部位の構造に、より直接的な影響が出やすいという懸念もある。このため、サンドイッチELISA法に用いられる全長抗体を単にVHH抗体に代えると、しばしば、検出感度が大きく低下するという問題がある。
【0022】
また、従来技術4は、クッション性固相吸着材を介して目的のタンパク質を固相表面に吸着させると、直接目的タンパク質を吸着させた場合よりも高い残存活性を維持できるという点では優れた技術である。ここでは、サーモコッカス・コダカレンシスのリボヌクレアーゼHII又はその変異体が、クッション性固相吸着材として用いられている。しかし、クッション性固相吸着材を用いても、全長抗体を使用したときの検出感度には及ばず、検出感度のさらなる向上が必要とされているという問題がある。
従来技術5は、目的物質を結合するための足場として、直鎖多糖であるデキストラン、分岐鎖多糖であるグリコーゲン及びアミロペクチンという多糖を利用し、検出感度の低下を抑制するという点では優れた発明である。
しかし、化学結合に適した固相表面を用意しなければならないこと、化学結合を二度行うため、手間がかかるという問題がある。また、標的認識を行なうことができる接触面が少ないという問題がある(図1(C)参照)。
【0023】
以上から、サンドイッチELISA法において、検出感度を低下させることなく、抗体に代えて使用できる低分子抗体を含む免疫測定用として使用可能な材料(結合体)に対する強い社会的要請があった。また、高感度サンドイッチELISA法で使用可能な、前記結合体を使用する高感度免疫測定方法に対する強い社会的要請もあった。
さらに、常温保存が可能で、製品のロット差が少ない、高感度サンドイッチELISA法用の試薬に対する強い社会的要請があった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような状況を鑑み、本発明の発明者等は、ELISA法の感度を増強するための方法及びその方法で使用する試薬の研究を行い、側鎖に反応性官能基を導入した水溶性多糖類に、低分子抗体分子を共有結合させて抗体-多糖結合体を構築した。そして、上記抗体-多糖結合体を上述したELISA法用捕捉抗体として用いることにより、ELISA法の検出感度を増強できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一態様は、水溶性多糖類、低分子抗体分子、並びに前記水溶性多糖類及び前記低分子抗体分子とをつなぐリンカーと、を含む免疫測定用抗体-多糖結合体であって、前記リンカーは、前記低分子抗体分子のアミノ酸残基と反応する反応性官能基と、クッションタンパク質とを含むことを特徴とする、免疫測定用抗体-多糖結合体である。
【0025】
ここで、前記水溶性多糖類は、抗体を結合する足場となり得るものであれば特に限定されず、直鎖状多糖類を使用すると、多糖類の鎖長の制御が容易であること、後述する抗体の配向制御又は前記多糖の側鎖の化学修飾が容易であること、多糖同士又は固相への非特異吸着を抑制できること、及び抗原抗体反応における立体障害を防止できることから好ましい。
【0026】
前記直鎖状水溶性多糖類としては、プルラン、デキストラン、アガロース、カードラン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、キトサン塩及び水溶性キチンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、これらの多糖類の側鎖の化学修飾が容易であることから好ましく、プルラン、デキストラン、アガロース、カードラン及びグルコマンナンからなる群から選ばれるいずれかであることが、反応性に富んだ水酸基が側鎖に多く含まれている点でより好ましい。
【0027】
ここで、前記反応性官能基は、マレイミド基、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基基と、クッションタンパク質とを含むものであることが好ましい。
ここで、前記反応性官能基は、マレイミド基、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基、ピリジルジスルフィド基、イミドエステル基、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、ヒドラジド基及びエポキシ基からなる群から選ばれるいずれかであることが、抗体又は抗体複合体との結合安定性の点から好ましく、これらの中でも、マレイミド基、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基及びピリジルジスルフィド基は、中性付近の条件下でスルフヒドリル基と特異的に反応するため、特に好ましい。
【0028】
前記クッションタンパク質は、基材に固定化された分子と固体表面との間に生じる直接的な相互作用の影響を緩和する機能を有するタンパク質であることが好ましく、例えば、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体及びジェラチンからなる群から選ばれるいずれかであることが、熱安定性が高く構造変化が起こりにくいことから好ましい。
【0029】
前記低分子抗体分子は、VHH抗体、IgNAR抗体、scFv及びペプチドアプタマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、抗原に対するアクセシビリティがよいという点から好ましい。前記抗体は、VHH抗体、IgNAR抗体、scFv及びペプチドアプタマーからなる群から選ばれるいずれかであることが、分子量が小さく熱安定性が高いことからさらに好ましい。
【0030】
本発明の別の態様は、上述した免疫測定用抗体-多糖結合体を用いた免疫測定方法である。ここで、前記免疫測定方法は、ELISA法又はイムノクロマト法であることが、高感度で迅速に測定ができる点で好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、本発明の免疫測定用抗体-多糖結合体では、抗体等がクッションタンパク質を含むリンカーを介して、水溶性多糖類と共有結合される。このため、非共有結合で結合された複合体と対比すると、より安定で、前記抗体の配向性の高い結合体を形成することができる。
また、水溶性多糖類の側鎖に導入する反応性官能基の量や構造を制御することで、結合されうる抗体分子の数や抗体同士の間隔を自在に設計することができる。そして、これによって、前記抗体-多糖結合体において誘起されうるアビディティー効果を制御することが可能となる。
さらに水溶性多糖類を使用していることから、水溶性多糖が有する分子シャペロン効果によって、抗原親和性を損なうことなく抗体の構造を安定化することができる。またこれとともに、多糖の有する親水性により非特異吸着を抑制することができ、抗原検出感度を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、通常抗体、重鎖抗体及びVHH抗体の模式図である。
【図2】図2は、固相表面に直接又は間接に吸着したVHH抗体の状態を模式的に示した図である。(A)はVHH抗体とタグが結合した複合体(以下、「抗体複合体」ということがある。)を用いた場合、(B)はVHH、クッションタンパク質(STM)及びタグが結合した複合体を用いた場合、(C)はVHHが足場としての糖鎖に直接結合された結合体を用いた場合、(D)はVHHがクッションタンパク質を介して上記糖鎖に結合された結合体を用いた場合を、それぞれ模式的に示した図である。
【図3】図3は、本発明の抗体-多糖結合体をサンドイッチELISA法に使用した場合の模式図である。
【図4A】図4Aは、本発明の抗体-多糖結合体の調製方法のフロー(その1)を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の抗体-多糖結合体の調製方法のフロー(その2)を示す。
【図5】図5は、VHH抗体-ステフィンA変異体からなる抗体複合体のアミノ酸配列を示す。

【0033】
【図6】図6は、1H NMRのスペクトルデータを示す。Aは、プルランの1H NMRのスペクトルデータを示す。Bは、プルランに結合したリンカーにエチレンジアミンを結合させたときの1H NMRのスペクトルデータを示す。Cは、プルランに結合したリンカーにヨードアセチル基を結合させたときの1H NMRのスペクトルデータを示す。Dは、プルランに結合したリンカーに、L-システインを結合させたときの1H NMRのスペクトルデータを示す。
【図7】図7は、VHH抗体のみを使用した場合、及びVHH抗体-プルラン結合体を使用した場合のサンドイッチELISA法における検出感度を示したグラフである。
【図8】図8は、VHH-クッションタンパク質(VHH-STM)の結合体を使用した場合のサンドイッチELISA法における検出感度を示したグラフである。
【図9】図9は、VHH-STM結合体を使用した場合、VHH-STM-プルラン結合体を使用した場合、及びマウスモノクローナル抗体を使用した場合のサンドイッチELISA法における検出感度を示したグラフである。
【図10】図10は、VHH抗体のみを使用した場合、及びVHH抗体-STM結合体を使用した場合のサンドイッチELISA法における検出感度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を、図3、図4A及びBを参照しつつ詳細に説明する。
本発明は、上述したように、(a)複数の側鎖を有する水溶性多糖類と、(b)低分子抗体分子とが、(c)前記側鎖と前記低分子抗体分子とをつなぐためのリンカーを介して結合された免疫測定用抗体-多糖結合体である(図3、工程1及び2参照)。

【0035】
先ず、(a)複数の側鎖を有する水溶性多糖類について、(a-1)水溶性多糖類と(a-2)複数の側鎖とに分けて、以下に説明する。
(a-1)水溶性多糖類
前記水溶性多糖類(図中、「PS」と示す)は、後述する免疫測定用基材等の固相表面(図中、「SP」と示す)上に、前記抗体等(図中、「VH」と示す)を固定するための足場として機能する(図3、工程3及び4参照)。すなわち、前記抗体等は、前記固相表面上に直接固定されないため、上述したようなコンフォメーションの変化が起きることを防止することができ、それによって抗原(図中、「AG」と示す)との結合能の低下をも避けることができるようになる。

【0036】
本明細書中、「多糖類」とは、単糖類二分子以上が脱水縮合して生ずる化合物であり、分子量については特に限定されない。また、「水溶性多糖類」とは、水に溶解する性質を有する多糖類をいい、反応性に富んだヒドロキシ基を側鎖に豊富に有するものをいう。こうした反応性に富むヒドロキシ基は化学修飾が容易であることから、後述するように、免疫測定用の基材等へ、上記水溶性多糖類を付着させるために使用される。また、後述するリンカーが側鎖に結合する際に、クッションタンパク質の配向性を制御する機能をも有する。一方で、目的とするタンパク質(以下、「標的タンパク質」ということがある。)以外のタンパク質の非特異吸着を抑制することができる。

【0037】
ここで、前記水溶性多糖類は、直鎖状多糖類及び分枝状多糖類に大別される。ここで、「直鎖状」とは、主鎖に分岐がないか、あってもその長さが主鎖の鎖長に対して十分短い状態にあることをいう。具体的には、分岐鎖の鎖長が主鎖の長さの1/2以下であることが好ましい。本発明においては、直鎖状多糖類を使用することが、鎖長の制御がし易く、前記抗体等を固定する足場を形成するという役割を十分に果たすことができること、及び抗原と非特異的な反応を起こしにくい点で好ましい。

【0038】
前記水溶性多糖は、1種類の単糖で構成される単純多糖(ホモ多糖)と複数の単糖で構成される複合多糖(ヘテロ多糖)とに大別することができる。上記単純多糖としては、例えば、プルラン、デキストラン、アガロース、カードラン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、キトサン塩及び水溶性キチン等を挙げることができる。
また、複合多糖としては、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の2つの糖がβ1-4、β1-3結合で連結したヒアルロン酸、及びβ-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸がβ1-4結合したアルギン酸塩、並びにこれらのナトリウム塩又はカリウム塩; D-ガラクトースを構成糖とするカラギーナン、主鎖に2個のグルコース、1個のグルクロン酸及び1個のラムノースの4つの糖が結合したジェランガム、グルコサミンがβ1-4結合したキトサン塩、-アセチル-D-グルコサミンが長く結合したキチンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ水溶液で部分的に脱アセチル化した水溶化キチン等を、挙げることができる。上記多糖類の側鎖の化学修飾が容易であるためである。

【0039】
これらの中でも、グルコース3分子がα1-4結合したマルトトリオースがα1-6結合で繋がった繰り返し構造を持つプルラン、グルコースを構成成分としたデキストラン、D-ガラクトースがβ1-4結合で3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースと繋がったアガロビオースがα1-3結合で連なった構造を持つアガロース、グルコースがβ1-3結合で連なった直鎖状の多糖類であるカードラン、グルコースとマンノースがおよそ2:3の割合でβ1-4結合したグルコマンナンを、以下の2つの理由から好適に使用することができる。

【0040】
まず第1の理由は、上述した多糖類の構成糖類の側鎖の官能基は、全て反応性の高いヒドロキシ基であるため、リンカーと当該官能基の結合が容易であることであり、第2の理由は、結合するリンカーの配向制御が容易になることである。これにより、リンカーに結合された低分子抗体分子が、免疫測定用基材等の上に秩序立って配置されるため、測定感度が一層向上するためである。なお、側鎖については後述する。

【0041】
(a-2)複数の側鎖
上記の水溶性多糖類には複数の側鎖が存在するが、これら複数の側鎖は前記多糖類の構成糖類の側鎖である。そして、少なくとも一つの側鎖の官能基に、後述する低分子抗体分子がリンカーを介して共有結合によって結合される。その際、先ず、前記水溶性多糖類の側鎖の官能基にリンカーを結合させ、次いで、前記リンカーと前記低分子抗体分子との間に共有結合を形成させ、免疫測定用抗体-多糖結合体を調製する(図4A及びB参照)。

【0042】
当該側鎖の官能基としては、ヒドロキシ基、ケトン基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホン基、チオール基、アミノ基、イミノ基、シアノ基及びニトロ基等を挙げることができる。

【0043】
(b)リンカー
本明細書中で、「リンカー」とは、上記水溶性多糖類と、後述する低分子抗体とを連結させる機能を有する連結基であって、少なくとも、前記低分子抗体分子のアミノ酸残基と反応する反応性官能基と、クッションタンパク質とを含んで構成される。この連結基は、低分子抗体とは、そのアミノ酸残基と上記クッションタンパク質を介して結合され、そして、上述した多糖の側鎖とは、結合し得る反応性官能基を介して連結される(図4B参照)。

【0044】
(b-1)反応性官能基
ここで、前記反応性官能基は、システイン側鎖中に存在するスルフヒドリル基、ポリペプチドのN末端やリジン残基の側鎖中に存在する第一級アミン、並びにポリペプチド基のC末端上、アスパラギン酸側鎖中及びグルタミン酸側鎖中に存在するカルボキシル基と反応する官能基等を挙げることができる。

【0045】
スルフヒドリル基と反応する官能基としては、ハロアセチル基、マレイミド基、アジリジン基、アクリロイル基、ビニルスルホン基、ピリジルジスルフィド基、チオール基、ジスルフィド基等を挙げることができる。

【0046】
第一級アミンと反応する官能基としては、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アシルアジド基、アルデヒド基、エポキシ基、イミドエステル基、カルボジイミド基等を挙げることができる。イミドエステル基を有する化合物には、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)が含まれる。

【0047】
カルボキシル基と反応する官能基としては、カルボジイミド基等である。カルボジイミド基を有する化合物には1-エチル-3-(-3ジメチルアミノプロピル)カルボン酸イミド塩酸塩や、N',N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドが含まれる。

【0048】
上記反応性官能基は、マレイミド基、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基、ピリジルジスルフィド基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、イミドエステル基、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、ヒドラジド基及びエポキシ基からなる群から選ばれるいずれかであることが、抗体等との反応の効率の点で好ましい。

【0049】
特に、マレイミド基はpH6.5-7.5の範囲で、ヨードアセチル基及びブロモアセチル基はpH 7.2~9の範囲で、それぞれスルフヒドリル基と特異的に反応して、安定したチオエーテル結合を形成する。また、ピリジルジスルフィドは、広範なpH領域でスルフヒドリル基と反応して、安定したジスルフィド結合を形成する。
多糖類そのものには無論のこと、スルフヒドリル基はないため、これらの反応性官能基が含まれることが、抗体等に含まれるスルフヒドリル基とリンカーとを中性付近のpHの溶液中で安定に結合させることができる点で好ましい。

【0050】
(b-2)クッションタンパク質
本明細書中、「クッションタンパク質」とは、前記リンカーに含まれ、低分子抗体と結合するタンパク質である。本来、クッションタンパク質は、生体高分子と固相表面との間に生じる直接的な相互作用の影響を緩和することを目的として用いられるものである。具体的には、例えば、固相(親水性ポリスチレン)上にポリスチレンタグを付けたクッションタンパク質をコートし、標的タンパク質をフレキシブルリンカーを介して連結するために使用される。いわば、クッションタンパク質が、固相と直接結合して、標的タンパク質を結合させるための足場として機能する。

【0051】
これに対し、本発明では、固相と直接結合する足場としての役割は、上述した水溶性多糖が担う。そして、クッションタンパク質は、低分子抗体の配向性を制御するという役割を担う。
前記リンカーには、少なくとも1分子のクッションタンパク質が含まれていればよい。クッションタンパク質を2分子以上含む場合には、それらは同一のタンパク質であってもよく、異なるタンパク質であってもよい。

【0052】
このため、本発明で使用するクッションタンパク質は、低分子抗体と抗原との結合に際してそれ自身が立体障害とならないようにするために、前記クッションタンパク質に結合している低分子抗体と同程度か、又はそれ以下の大きさのものであることが好ましい。
具体的には、例えば、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体、ジェラチン等を挙げることができる。これらのタンパク質は、熱安定性が高く構造変化が起こりにくいため、好適に使用することができる。
また、低分子抗体と前記リンカーに含まれるクッションタンパク質とは、ペプチド結合により直接結合されていてもよいし、間接的に結合されていてもよい。例えば、低分子抗体とクッションタンパク質との間に、タンパク質精製用のタグ配列や特定の認識配列等の遺伝子組換えの際に必要なペプチド配列等を挟んでいてもよい。また、2分子以上のクッションタンパク質が結合されている場合には、それらの間にも上記のようなタグ配列やペプチド配列が含まれていてもよい。

【0053】
また、本発明の免疫測定用抗体-多糖結合体は、ELISA法で使用するため、酵素活性や結合活性を有するタンパク質、又は他のタンパク質を非特異吸着するようなタンパク質は、クッションタンパク質としては不適格である。また、クッションタンパク質は、免疫測定に使用される固相用基材に親和性があること、自己会合しないことなどの性質を有するものであり、熱安定性が高く、構造が安定しているものであるといった特性を有する必要がある。

【0054】
本発明で使用するクッションタンパク質は、天然のタンパク質でもよいが、遺伝子組換技術によって作製した遺伝子から調製したタンパク質又はそれらを改変した変異体であってもよい。こうしたタンパク質の改変は、常法にしたがって行うことができる。

【0055】
合成した遺伝子から調製する場合は、例えば、目的のタンパク質(抗原)と結合する抗体の遺伝子とクッションタンパク質の遺伝子を含む融合遺伝子を作製して、この融合遺伝子を適切な発現系で発現させ、抗体とクッションタンパク質とを含む抗体複合体を直接調製してもよい。その場合、抗体複合体のアミノ酸配列に、精製用のタグ配列や、特定の認識配列等、遺伝子組換えの際に必要な配列を含めておくと、この融合タンパク質を容易に精製することができるようになる。また、クッションタンパク質のN末端又はC末端に、システイン、リジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸が配列されているように設計し、上記リンカーとの結合を確保するようにする。

【0056】
前記クッションタンパク質としては、熱安定性という点から、例えば、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体及びジェラチン等を好適に使用することができる。

【0057】
ここで、ステフィンA変異体は、遺伝子組換え技術によりステフィンAを改変して得られたタンパク質である。具体的には、野生型ステフィンAのアミノ酸配列の4番目のグリシンがトリプトファンに、48番目のバリンがアスパラギン酸に、71番目のリシンがアスパラギンに、72番目のセリンがグリシンに、及び73番目のロイシンがプロリンにそれぞれ変異したタンパク質がステフィンA変異体である。アミノ酸配列を図4に示す。このような変異を導入することによって、熱安定性が高く、構造変化が起こりにくいステフィンA変異体を得ることができ、本発明のELISA法の感度増強方法において、好適に使用することができる。

【0058】
アンキリン反復タンパク質変異体は、アンキリン反復タンパク質を、遺伝子組換え技術を用いて改変して得られたタンパク質である。このタンパク質は、例えば、所望のアミノ酸配列からなるアンキリン反復タンパク質モジュールを常法に従って調製し、得られたこのモジュールで、天然のアンキリン反復タンパク質の反復ドメインのN末端とC末端のキャッピンモジュール部分を置換することで得られる。このようにして、熱安定性が高く、構造変化が起こりにくいアンキリン反復タンパク質変異体を得ることができる。

【0059】
(c)低分子抗体分子
本明細書中において、「低分子抗体分子」とは、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)が部分的に欠損している抗体断片をいい、VH及びVLのいずれか、または両方を含んでいることが好ましい(図1参照)。VH又はVLのアミノ酸配列は、置換、欠失、付加および/または挿入を含むことができる。なお、上記可変領域はキメラ化やヒト化されていてもよい。

【0060】
抗体断片の具体例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、Fvなどを挙げることができる。また、低分子抗体の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv(single chain Fv)、ダイアボディー(Diabody)、Fab部分の可変部のみを結合させたsc(Fv)2(single chain (Fv)2)などに加えて、ラクダ科動物から得られる一本鎖重鎖抗体可変領域、軟骨魚類から得られるIgNAR抗体又はscFv、及びペプチドアプタマー等を挙げることができ、具体的には、VHH抗体、IgNAR抗体、scFv及びペプチドアプタマーからなる群から選ばれるいずれかのものを、好適に使用することができる。なお、これらの低分子抗体の多量体(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマー、ポリマー)も、本発明の低分子抗体に含まれる。

【0061】
以上のような低分子抗体は、全長抗体に比べて分子量が小さく熱安定性が高い、水溶液中での溶解性が高い、微生物による生産量が多い、変性状態からの再生が良好である、タンパク質工学の手法を用いた産生や改変が容易であるといった数多くの優れた特性を有していることが知られている。
上記低分子抗体は、例えば、パパイン、ペプシン、あるいはプラスミン等の酵素で抗体を処理して抗体断片を生成させて入手することができる。

【0062】
ここで、VHH抗体は、図1に模式的に示した通り、ラクダ科動物由来の12kDaのシングルドメイン抗体であり、熱安定性が高いという特性を有する。ここで、ラクダ科動物としては、ラマ、グアノコ、ビクーニャ、アルパカ、フタコブラクダ及びヒトコブラクダが挙げられる。VHH抗体は、これらの動物の血液を採取し、血清中から分離回収することもできる。また、これら抗体断片をコードする遺伝子が挿入された発現ベクターが導入された適切な宿主細胞、例えば、大腸菌を培養して発現した抗体断片を、宿主細胞を含む培養液から単離、精製して得ることもできる(例えば、Coら(J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976)、Betterら(Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496)、Plueckthunら(Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496)、Lamoyi(Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663)、Rousseauxら(Methods in Enzymology (1989) 121, 663-669)、Birdら(TIBTECH (1991) 9, 132-137)参照)。

【0063】
IgNAR(Ig-new antigen receptor)抗体は、軟骨魚類の重鎖抗体であり、軟骨魚類としては、サメ及びエイが挙げられる。また、scFv(single-chain variable fragment)は、抗体が抗原を認識するために必要な最小単位である重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)から構成される可変領域を、ペプチドリンカーで結合した単鎖可変領域フラグメントであり、分子量は約30kDaである。

【0064】
上記条件を満たすリンカーであれば、ペプチド性リンカー又は非ペプチド性リンカーのいずれかであってもよい。ペプチド性リンカーとしては、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体及びジェラチン等を挙げることができ、非ペプチド性リンカーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等の重合体等を挙げることができる。

【0065】
以上のようにして得られた、複数の側鎖を有する水溶性多糖類に、抗体又は抗体複合体を、以下で述べるようにしてリンカーを介して結合させ、免疫測定用抗体-多糖結合体を得ることができ、これをELISA法の感度の増強に使用することができる。ここで、免疫測定は、ELISA法、イムノクロマト法、イムノブロッティング法、ドットブロット法、マルチ蛍光マイクロビーズ法等その他の抗原及び抗体の結合反応を利用する方法を含むが、ELISA法又はイムノクロマト法を好適に利用することができる。

【0066】
以下に、水溶性多糖類としてプルランを使用した場合の免疫測定用抗体-多糖結合体の作製を例に挙げて説明する(図3A及びB参照)。
先ず、プルランの側鎖に結合させるリンカーは、リンカーの反応性官能基と、それと結合させる抗体等のアミノ酸残基との関係から、任意に組み合わせて公知の方法により調製することができる。

【0067】
例えば、プルランの水溶性多糖類の側鎖のヒドロキシ基に、抗体等のスルフヒドリル基と反応する反応性官能基を有するリンカーを結合させる場合には、先ず、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中で水溶性多糖類と1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)を所定の条件下で反応させ、側鎖にイミダゾール基を結合させる。その後、エチレンジアミンを加えて所定の条件下で反応させた後、ヨード酢酸NHSエステルを反応させて、水溶性多糖類の側鎖にヨードアセチル基を有するリンカーを調製することができる。具体的には、以下のような手順で、抗体等にVHH抗体及び水溶性多糖類にプルランを採用した抗体-多糖結合体である、VHH抗体-プルラン結合体を調製する。

【0068】
(1)インサート遺伝子の構築
所望のVHH抗体、例えば、抗ヒトサバイビンVHH抗体と、ステフィンA変異体とで構成される抗体複合体(以下、「VHH-STM複合体」ということがある。)を使用した場合を例に挙げて説明する。VHH-STM複合体のアミノ酸配列(配列番号1)をコードする遺伝子を合成する。この合成は、DNAの合成を受託する企業に依頼して行うことができる。

【0069】
下記表1に示す組成のPCR反応液を調製し、上記の遺伝子を、例えば、配列番号2~5に示すようなプライマーを用いて、所望の条件でPCRにより増幅させる。PCRプログラムは、例えば、(a) 95~98 ℃(10秒)、(b) 53~60 ℃(15秒)、(c) 65~72 ℃(30秒)とし、ステップ(a)~(c)を25~35サイクルとすることができる。

【0070】
【表1】
JP2018135651A1_000003t.gif

【0071】
得られたPCR産物を精製することにより、所望の量のVHH-STM複合体をコードしたインサート遺伝子を得ることができる。こうした精製は市販の精製キット(例えば、Qiagen社製のQIAquick PCR Purificationキット)用いて、このキットに添付されているマニュアルに従って行うことができる。なお、「VHH-STM複合体」では、タンパク質を示すことも可能である。

【0072】
(2)発現ベクターの構築
以下のようにして、形質転換用の発現ベクターを調製する。発現ベクターとして、複数の発現ベクターに、例えば、下記表2に示す4種類のシグナル配列を組み込んだものを使用することができる。3種類の発現ベクター(pBIC、pBICm及びpBICs)に、以下の表2に示す4種のシグナル配列を1つそれぞれ組み込むと、12種類の発現ベクターを調製することができる。

【0073】
【表2】
JP2018135651A1_000004t.gif

【0074】
(3)形質転換
形質転換は、市販のキット(例えば、BIC System(タカラバイオ(株)製))等を使用し、このキットに添付のマニュアルに従って行うことができる。すなわち、上記の発現ベクターと上記PCR産物とを混合したDNA溶液を、所望のバクテリアを含む溶液に加えて、適当なプレート培地に播種し、約28~35℃にて、一晩培養することにより、これらの菌の形質転換体を単一コロニーとして得ることができる。所望のバクテリアとしては、例えば、ブレビバシラス・コシネンシス(Brevibacillus choshinensis)等を挙げることができる。また、適当なプレート培地としては、例えば、MTNmプレート培地(10 g/L グルコース、10 g/L ファイトンペプトン、5 g/L エルリッヒ カツオエキス、2 g/L 酵母エキス B2、10 mg/L FeSO4・7H2O、10 mg/L MnSO4・4H2O、1 mg/L ZnSO4・7H2O、50 μg/mL ネオマイシン)等を挙げることができる。

【0075】
(4)液体培養
上記のようにして形質転換させた単一コロニーの菌を、適当な培地に懸濁して約30~33 ℃にて、1.5~2.5日間培養し、培養上清を回収し、形質転換された菌が産生したタンパク質の精製を行う。精製して得られたサンプルを、常法に従ってSDS-PAGE分析に供し、タンパク質の発現を確認する。
適当な培地としては、例えば、2SYN培地(20 g/L グルコース、40 g/L バクトソイトン(Bacto Soytone)、5 g/L バクト・イースト・エキストラクト(Bacto Yeast Extract)、0.15 g/L CaCl2・2H2O、50μg/mL ネオマイシン)等を挙げることができる。形質転換体が産生したタンパク質の精製は、市販のキット(例えば、His Spin Trap キット(GE Healthcare社製))を用いて、このキットに添付されたマニュアルに従って行うようにしてもよい。

【0076】
上記SDS-PAGEを、所望の染色液、例えば、クマシーブリリアントブルー(CBB)で染色し、CBB染色によって特異的なバンドが認められたサンプルから、菌体を回収する。その後、回収した菌体からプラスミドを抽出する。プラスミドの抽出は、市販のキット(例えば、Plasmid DNA Extraction Mini kit(Favorgen社製))等を用いて行うことができる。得られたプラスミドのシークエンス解析を常法に従って行い、VHH-STM複合体の配列が組み込まれていることを確認する。

【0077】
(5)VHH-STM複合体の調製
上記培養上清からVHH-STM複合体を調製し、保存する。先ず、得られた培養上清を、例えば、Amicon Ultra-15 (MWCO=3, Merck Millipore社製)にアプライし、次いで結合バッファー(例えば、約15~25 mM リン酸ナトリウム [pH 約7.4]、約450~550 mM NaCl又は5~15 mM Tris-HCl [pH 約8.0]、約450~550 mM NaCl)でバッファー交換を行う。

【0078】
引き続き、これを結合バッファーで平衡化したNi-NTA Agarose(Qiagen社製)に添加し、洗浄バッファー(例えば、約15~25 mM リン酸ナトリウム [pH 約7.4]、約450~550 mM NaCl, 約15~25 mM イミダゾール又は約5~15 mM Tris-HCl [pH 約8.0]、約450~550 mM NaCl、約15~25 mM イミダゾール)にて洗浄し、その後、溶出バッファー(約15~25 mM リン酸ナトリウム [pH 約7.4]、約450~550 mM NaCl, 約200~300 mM イミダゾール又は約5~15 mM Tris-HCl [pH 約8.0]、約450~550 mM NaCl、約200~300 mM イミダゾール)にてVHH-STM複合体を溶出させる。

【0079】
溶出後のVHH-STM複合体溶液を、例えば、Amicon Ultra-4 (MWCO=10, Merck Millipore社製)にアプライし、PBS(-)(約5~15 mM リン酸ナトリウム [pH 約7.4]、約100~200 mM NaCl)又はTBS(約25~75 mM Tris-HCl [pH 約8.0], 約100~200 mM NaCl)にバッファーを交換し、使用するまで-20℃にて保存する。

【0080】
(6)アミノ化プルランの調製
先ず、約9.5~10 mgのプルランを、チューブに入れた約900~1,000μLのDMSOに溶解させ、その後、約18~20μLの1~2 MのCDI/DMSO溶液をここに添加する。約45~55℃で30~50分間インキュベートした後、約45~55μLのエチレンジアミンを加えて、約45~55℃で約40~45時間、再びインキュベートする。インキュベート終了後、室温まで冷却し、約0.5~1.5 mLの2-プロパノールを加えて、15分間氷冷する。

【0081】
続いて、このチューブを約600~800×gで約4~8分間遠心して上清を除き、沈殿物を約0.5~1.5 mLの2-プロパノールに懸濁し、再度、約600~800×gで約4~8分間遠心して上清を除く。得られた沈殿物に約1.5~2.5 mLの蒸留水を加えて、約40~60 ℃でインキュベートして完全に溶解させ、その後、透析チューブを用いて、蒸留水中にて約20~30時間透析する。透析後に得られた溶液を、シリンジフィルター(孔径約0.45μm)に通し、その後凍結乾燥すると、約6~8mgのアミノ化プルラン(白色のアモルファス)を得ることができる。

【0082】
このアミノ化プルランを約0.5~1.5 mLの重水に溶解させ、NMR分析を行うと、グルコース1残基あたりの置換された水酸基の平均数(置換度;DS)を求めることができる。

【0083】
(7)ヨードアセチル化プルランの調製
以上のようにして調製した約120~145μLのアミノ化プルラン溶液/重水(約6~8mg/mL)に、約800~900μLの蒸留水、約300~400μLの0.1~0.3M ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 約8.4)、及び約60~80μLの約0.1~0.3M N-スクシンイミジル ヨードアセテート/DMSO溶液を加えて、室温で約0.5~2時間撹拌する。

【0084】
この反応液を、例えば、Amicon Ultra-0.5mL(NMWL:100,000)に移し、約12,000~16,000×gで、約20~26℃にて、約8~12分間遠心分離を行う。このデバイス中の膜透過液を廃棄した後、約300~500μLの濃縮液を加え、約12,000~16,000×gで、約20~26℃で、約8~12分間遠心分離を行う。この操作を3回繰り返して濃縮を行い、得られた濃縮液を、約1,500~2,500×gで、約20~26℃にて、1.5~2.5分間遠心分離を行うことにより、ヨードアセチル化プルランを得ることができる。

【0085】
上記の遠心によって回収した溶液の半分を、約500~700μLの重水で希釈し、NMR分析を行い、アミノ基のヨードアセチル化を確認する。

【0086】
(8)ヨードアセチル化プルランの反応性確認試験
上記のNMR測定用溶液を、Amicon Ultra-0.5 mL(NMWL:100,000)に移して、約12,000~16,000×gで、約20~26℃で約8~12分間遠心分離して濃縮する。膜透過液を廃棄した後、得られた濃縮液を約1,500~2,500×gで、約20~26℃で約1.5~2.5分間遠心分離し、得られたヨードアセチル化プルラン/重水溶液(約70~80 mg)に、約350~450μLの蒸留水、約160~180μLの約0.1~0.3 Mのホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 約8.4)、及び約30~40μLの約0.05~0.15 MのL-システイン溶液を加えて、室温で約1.5~3時間撹拌する。

【0087】
得られた反応溶液を、Amicon Ultra-0.5 mL(NMWL:100,000)に移して、約12,000~16,000×gで、約20~26℃で約8~12分間遠心分離する。膜透過液を廃棄した後に、得られた濃縮液に、約300~500μLの重水を加えて、約12,000~16,000×gで、約20~26℃で約8~12分間遠心分離を行う。この操作を、2~5回繰り返す。

【0088】
得られた濃縮液を、約1,500~2,500×gで、約20~26℃で約1~3分間遠心分離して回収した溶液を、約500~700μLの重水で希釈してNMR分析を行い、ヨードアセチル化プルランがL-システインのスルフヒドリル基と反応してチオエーテル結合を形成したことを確認する。

【0089】
(9)VHH-STM複合体とヨード化アセチル化プルランの反応
次いで、約40~60 mM ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液、約140~150μLの約4~6 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH 約8.4)に、上記のようにして調製した約18~22μLのVHH-STM複合体溶液と、約0.5~2.0μLのヨードアセチル化プルラン溶液とを加えて、約0~6℃で約10~14時間撹拌する。撹拌終了後に得られた反応溶液を、Amicon Ultra-0.5 mL(NMWL:100,000)に移して、約12,000~16,000×gで、約0~6℃で約8~12分間遠心分離する。膜透過液を廃棄した後、得られた濃縮液に、約300~500μLのホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 約8.4)を加えて、約12,000~16,000×gで、約20~26℃で約8~12分間遠心分離を行う。この操作を再度繰り返し、得られた濃縮液を、約1,500~2,500×gで、約0~6℃で約1.5~2.5分間遠心分離し、VHH抗体-プルラン結合体を得ることができる。

【0090】
この他、例えばプルランの水溶性多糖類の側鎖のヒドロキシ基に、抗体等の第一級アミンと反応する反応性官能基を有するリンカーを調製していく場合は、先ず、ヒドロキシ基を公知の酸化反応を利用してカルボン酸にする。或いは、クロロ酢酸やブロモ酢酸等を多糖類側鎖のヒドロキシ基と反応させてカルボキシメチル基を導入する。次に、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボキシイミド塩酸塩存在下、所定の条件下でNHSとカルボン酸をエステル化反応させて、水溶性多糖類の側鎖にイミドエステル基を有するリンカーを調製することができる。

【0091】
このようにして調製したリンカーと、所定の条件下で抗体等と結合させることができる。例えば、所定の条件下で、上記ヨードアセチル基を有するリンカーと、抗体等のシステインのスルフヒドリル基とを結合させ、本願発明の免疫測定用抗体-多糖結合体を調製することができる。また、上記、所定の条件下でイミドエステル基を有するリンカーと、抗体等のリジンの第一級アミンとを結合させ本願発明の免疫測定用抗体-多糖結合体を調製することができる。

【0092】
本発明の別の態様は、前記免疫測定用抗体-多糖結合体を用いた免疫測定方法である。
例えば、上記のようにして調製した、免疫測定用抗体-多糖結合体を用いて、サンドイッチELISA法を行うことができる。先ず、抗体-多糖結合体を所定の濃度のバッファーに溶解し、抗体-多糖結合体溶液を調製する。これを、96穴マイクロプレートに入れ、所定の条件下で、抗体-多糖結合体を固相に吸着させる。ここに、スキムミルク等のブロッキング剤を加え固相のブロッキングを行う。洗浄用のバッファーで数回洗浄し、溶液を除いたあと、所定の濃度の目的のタンパク質溶液を加え、所定の時間静置する(図2、工程3参照)。

【0093】
この際、抗体-多糖結合体の複数の抗体と複数の目的のタンパク質が結合でき、高いアビディティー効果が得られる。次いで、目的のタンパク質と結合できる一次抗体を加えて所定の時間静置した後、洗浄用のバッファーで数回洗浄する。その後、酵素標識済みの二次抗体を加え、所定の時間静置する。洗浄用のバッファーで、余分な二次抗体を洗い流したあと、酵素の基質を加え、酵素反応の生成物をプレートリーダー等で検出する。この際、抗体-多糖結合体を介して結合した複数の酵素標識により、高感度に目的のタンパク質を検出することができる(図2、工程4参照)。

【0094】
本発明のさらに別の態様は、低分子抗体とクッションタンパク質からなる抗体複合体である。前記クッションタンパク質は、ステフィンA変異体、アンキリン反復タンパク質変異体、コラーゲン、VHH抗体及びジェラチンからなる群から選ばれるいずれかであることが、熱安定性という点で好ましい。また、前記低分子抗体は、VHH抗体、IgNAR抗体、scFv及びペプチドアプタマーからなる群から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例のいずれにおいても使用する抗体複合体用VHHは以下の製造例に従って調製した。
(製造例)VHH抗体及びステフィンA変異体を含む抗体複合体用VHHの製造
(1)インサート遺伝子の構築
抗ヒトサバイビンVHH抗体及びステフィンA変異体からなる抗体複合体(以下、VHH-STM複合体という)のアミノ酸配列(配列番号1)をコードする遺伝子は、ユーロフィンジェノミクス(株)に委託して合成した(図4参照)。
【実施例】
【0096】
EVQLVESGGGSVQAGGSLRLSCAASGVSNTDMIMIWFRQAPGKEREGVLAAIYKNSTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAIYYCAAIRAVIGRHIRPHIYWGQGTQVTVSSEPKTPKPQGGGGSLVPRGGGGSMIPWGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTNETYGKLEAVQYKTQVDAGTNYYIKVRAGDNKYMHLKVFNGPPGQNEDLVLTGYQVDKNKDDELTGFSGGAYSSGAPPMPPFGGSHHHHHHC [配列番号1]
【実施例】
【0097】
表3に示す組成のPCR反応液を調製し、以下のプライマー(配列番号2~5)を用いて、上記遺伝子を以下の条件でPCRプログラムによる増幅を行った。
PCRプログラムは、(a)98 ℃(10秒)、(b)55 ℃(15秒)、(c)68 ℃(30秒)とし、ステップ(a)~(c)を30サイクル行った。
【実施例】
【0098】
【表3】
JP2018135651A1_000005t.gif
【実施例】
【0099】
[配列番号2]
pBIC1用フォワードプライマー:5’-AACGTGGTATCGGCTGAGGTTCAGCTTGTGGAGTC-3’
【実施例】
【0100】
[配列番号3]
pBIC2及びpBIC4用フォワードプライマー:5’-CCCATGGCTTTCGCTGAGGTTCAGCTTGTGGAGTC-3’
【実施例】
【0101】
[配列番号4]
pBIC3用フォワードプライマー:5’-AGTTCCGCATTCGCTGAGGTTCAGCTTGTGGAGTC-3’
【実施例】
【0102】
[配列番号5]
pBIC1~4共通リバースプライマー:5’-CATCCTGTTAAGCTTAGCAATGGTGATGGTGATGAT- 3’
【実施例】
【0103】
得られたPCR産物の精製は、QIAquick PCR purificationキット(Qiagen社製)を用いて、添付のマニュアルに従って行った。
【実施例】
【0104】
(2)発現ベクターの構築
発現ベクターとしては、3種類の発現ベクター(pBIC、pBICm及びpBICs)に、以下の表4に示す4種のシグナル配列を1つそれぞれ組み込んだ12種類の発現ベクター(タカラバイオ(株)製)を使用して調製した。
【実施例】
【0105】
【表4】
JP2018135651A1_000006t.gif
【実施例】
【0106】
(3)形質転換
形質転換には、BIC System(タカラバイオ(株)製)を使用し、このキットに添付のマニュアルに従って行った。即ち、上記12種類の発現ベクターと上記PCR産物を混合したDNA溶液を、解凍後に集菌したブレビバシラス・コシネンシス(Brevibacillus choshinensis) HPD31-SP3に加え、MTNmプレート培地(10 g/L グルコース、10 g/L ファイトンペプトン、5 g/L エルリッヒ カツオエキス、2 g/L 酵母エキス B2、10 mg/L FeSO4・7H2O、10 mg/L MnSO4・4H2O、1 mg/L ZnSO4・7H2O、50 μg/mL ネオマイシン)で、30 ℃にて一晩培養して形質転換させた。
【実施例】
【0107】
(4)液体培養
形質転換させた菌の単一コロニーは、2SYN培地(20 g/L グルコース、40 g/L バクトソイトン(Bacto Soytone)、5 g/L バクト・イースト・エキストラクト(Bacto Yeast Extract)、0.15 g/L CaCl2・2H2O、50 μg/mL ネオマイシン)で、30 ℃にて2日間培養した。また、発現ベクターpBIC3を使用した場合は、上記以外に2SYN+Arg培地(20 g/L グルコース、40 g/L バクトソイトン、5 g/L バクト・イースト・エキストラクト、0.15 g/L CaCl2・2H2O、50 μg/mL ネオマイシン、200 mM アルギニン)を用いて、30 ℃にて、2日間培養した。
【実施例】
【0108】
上記のようにして液体培養した後に培養上清を回収し、His Spin Trap キット(GE Healthcare社製)を用いて、このキットに添付されたマニュアルに従ってタンパク質の精製を行った。精製後に得られたサンプルを用いて、以下の条件でSDS-PAGE分析を行った。
アクリルアミドゲル用の濃縮ゲル(4%アクリルアミド, 125 mMのTris-HCl [pH 6.8], 0.1% SDS)、分離ゲル(12% アクリルアミド, 375 mM Tris-HCl [pH 8.8], 0.1% SDS)。及び泳動用ランニング緩衝液(25 mM Tris, 192 mM グリシン, 0.1% SDS)を調製した。上記サンプルは等量の2xSDSサンプルバッファー(125 mM Tris-HCl [pH 6.8], 4% SDS, 10% メルカプトエタノール, 10% グリセロール, 0.004 %ブロモフェノールブルー)を加えた後、95℃で15分程度加熱し、変性・還元した。電気泳動におけるサンプルの濃縮は10 mA定電圧で、分離は20 mA定電圧で行った。泳動後のポリアクリルアミドゲル上のタンパク質は、CBB溶液(0.25% クマシーブリリアントブルーR-250, 5%メタノール, 7.5%酢酸)にて染色した。
【実施例】
【0109】
その結果、いずれの発現ベクターを使用した場合でも、タンパク質の発現が確認された。特に、発現ベクターpBIC3を使用したサンプルにおいては、夾雑物が少なく、高純度のタンパク質の発現が確認された。
【実施例】
【0110】
上記SDS-PAGE分析をクマシーブリリアントブルー(CBB)で染色し、CBB染色によって特異的なバンドが認められたサンプルから、菌体を回収した。回収した菌体から、Plasmid DNA Extraction Mini Kit(Favorgen社製)を用いてプラスミドを抽出した。シークエンス解析は、ユーロフィンジェノミクス株式会社に依頼し、ダイターミネーター法を用いた4色蛍光修飾サンプルのキャピラリータイプDNAシークエンサー(アプライドバイオシステムス社製、ABI 3730XL)を使用して行った。その結果、VHH-STM複合体の配列が組み込まれていることが確認された。
【実施例】
【0111】
(比較例1)VHH-STM複合体の調製
上記培養上清から、VHH-STM複合体を以下のようにして調製した。
先ず、得られた培養上清をAmicon Ultra-15 (Merck Millipore社製、MWCO=3,000)にアプライし、次いで結合バッファー(20 mM リン酸ナトリウム [pH 7.4]、500 mM NaCl又は10 mM Tris-HCl [pH 8.0]、500 mM NaCl)でバッファー交換を行った。
【実施例】
【0112】
引き続き、これを結合バッファーで平衡化したNi-NTA Agarose(Qiagen社製)に添加した。続いて、洗浄バッファー(20 mMのリン酸ナトリウム [pH 7.4]、500 mMのNaCl, 20 mMのイミダゾール又は10 mMのTris-HCl [pH 8.0]、500 mMのNaCl、20 mMのイミダゾール)にて洗浄した後、溶出バッファー(20 mMのリン酸ナトリウム [pH 7.4]、500 mMのNaCl, 250 mMのイミダゾール又は10 mMのTris-HCl [pH 8.0]、500 mMのNaCl、250 mMのイミダゾール)にてVHH-STM複合体を溶出させた。
溶出後のVHH-STM複合体溶液をAmicon Ultra-4 (Merck Millipore社製、MWCO=10,000)にアプライし、PBS(-)(10 mMのリン酸ナトリウム [pH 7.4]、150 mMのNaCl)又はTBS(50 mMのTris-HCl [pH 8.0], 150 mMのNaCl)にバッファー交換をし、使用するまで-20℃にて保存した。
【実施例】
【0113】
(実施例1)VHH抗体-STM複合体-プルラン結合体の調製
(1)アミノ化プルランの調製
先ず、9.75mgのプルラン((株)林原製)を950μLのDMSO(関東科学(株)製)に溶解させた後、19.3μLの1.6M CDI/DMSO溶液を添加した。50℃で40分間インキュベートした後、50.2μLのエチレンジアミンを加えて、50℃で42時間インキュベートした。室温まで冷却した後、1mLの2-プロパノール((株)関東化学製)を加えて、15分間氷冷した。
【実施例】
【0114】
続いて、反応容器を、日立微量高速遠心機CF16RXII形及びアングルローター(T15A39-0535)(日立工機(株)製)を用いて700×gで6分間遠心して上清を除いた。沈殿物を、1 mLの2-プロパノールに懸濁して、700×gで6分間遠心して上清を除いた。沈殿物に2 mLの蒸留水を加えて、50℃でインキュベートして完全に溶解させた後、透析膜(スペクトラム・ラボラトリーズ(株)製、ポア3、再生セルロース、分画分子量3,500)を用いて、蒸留水で24時間透析した。透析した溶液を、ポアサイズが0.45μmのシリンジフィルター(アドバンテック(株)製)に通した後、凍結乾燥させ、6.73 mgの白色アモルファスのアミノ化プルランを得た。
【実施例】
【0115】
これを1 mLの重水に溶解させ、Bruker AVANCE 500(ブルカー(株)製)を用いて、500 MHzで1H NMRによる測定を行なった。その結果、α1,6-結合したグルコースのアノマープロトンピーク(4.92 ppm)の積分値を1としたとき、エチレンジアミン由来のメチレンプロトンピーク(2.91 ppm, -CH2-CH2-NH2)の積分値が1.54となることから、グルコース1残基あたりの置換された水酸基の平均数(置換度;DS)は0.77と算出された(図5のB参照)。
【実施例】
【0116】
(2)ヨードアセチル化プルランの調製
上記で調製した136μLのアミノ化プルラン溶液/重水(6.73 mg/mL)に、844μLの蒸留水、350μLの0.2M ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 8.4)、及び70μLの0.2MのN-スクシンイミジル ヨードアセテート/DMSO溶液を加えて、室温で一時間撹拌した。反応液を、Amicon Ultra-0.5mL(Merck Millipore社製、NMWL:100,000)に移して14,000×g、23℃で10分間遠心分離を行った。膜透過液を廃棄した後、400μLの濃縮液を加えて、14,000×g、23℃で10分間遠心分離を行った。この操作を3回行った後、濃縮液を、2,000×g、23℃で2分間遠心分離を行い、ヨードアセチル化プルランを得た。
【実施例】
【0117】
回収溶液の半分に、600μLの重水を加えて1H NMRによる測定を行った。エチレンジアミン由来のメチレンプロトンピーク(図5のB、2.91 ppm)が完全に低磁場シフトしたことから、アミノ基が定量的にヨードアセチル化されたことが確認された(図5のC参照)。
【実施例】
【0118】
(3)ヨードアセチル化プルランの反応性確認試験
上記のNMR測定用溶液を、Amicon Ultra-0.5 mL(NMWL:100,000)を用いて、14,000×g、23℃で10分間遠心分離して濃縮した。膜透過液を廃棄した後、濃縮液を2,000×g、23℃で2分間遠心分離を行い、得られた76mgのヨードアセチル化プルラン/重水溶液に、414μLの蒸留水、175μLの0.2M ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 8.4)、及び35μLの0.1 MのL-システイン溶液を加えて、室温で2時間撹拌した。反応溶液をAmicon Ultra-0.5 mL(NMWL:100,000)に移して、14,000×g、23℃で10分間遠心分離を行った。膜透過液を廃棄した後、濃縮液に400μLの重水を加えて、14,000×g、23℃で10分間遠心分離を行った。この操作を計3回行った。
【実施例】
【0119】
濃縮液を、2,000×g、23℃で2分間遠心分離して回収した回収溶液を、600μLの重水で希釈して1H NMRによる測定を行った。その結果、3.04, 3.13 ppm(システイン側, -S-CH2-)及び3.34 ppm(プルラン側, -S-CH2-)に特徴的なピークが検出され、ヨードアセチル化プルランがL-システインのスルフヒドリル基と反応してチオエーテル結合を形成したことが確認された(図5のD参照)。
【実施例】
【0120】
(4)VHH-STM複合体とヨード化アセチル化プルランの反応
50 mM ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液、144.4μLの5 mMのEDTA(pH 8.4)に、実施例1で調製した20.9μLのVHH-STM複合体溶液と、上記(2)で調製した1.0μLのヨードアセチル化プルラン溶液を加えて、4℃で12時間撹拌した。反応溶液をアミコンウルトラ-0.5デバイス(NMWL:100 k)に移して、14,000×g、4℃で10分間遠心分離を行った。膜透過液を廃棄した後、濃縮液に400μLのホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH 8.4)を加えて、14,000×g、23℃で10分間遠心分離を行った。この操作をもう一度繰り返した後、濃縮液を、2,000×g、4℃で2分間遠心分離を行い、VHH抗体-プルラン結合体を得た。
【実施例】
【0121】
(5)サンドイッチELISA法による抗原結合性の検討
(5-1)試薬の準備
実施例2で得られたVHH抗体-プルラン結合体を、50 mM Sodium borate buffer、5 mM EDTA(pH 8.4)で100倍希釈したVHH-プルラン結合体溶液を調製した。
50 mM Tris-HCl、138 mM NaCl、2.7 mM KCl (TBS、pH 7.6)、0.1% Tween-20を洗浄バッファーとして用いた。また、50 mM Tris-HCl, 138 mM NaCl、2.7 mM KCl (TBS、pH 7.6)、0.05% Tween-20、2 mg/mL Bovine Serum Albumin (Fraction V, Fatty Acids/IgG/Protease Free, WAKO, #017-25771) を反応バッファーとして用いた。
【実施例】
【0122】
ヒトサバイビン(1-142 aa, N末端カルモジュリンタグ, リコンビナント、#SUR0801)は、ATGen Co., Ltd.から購入した。上記反応バッファーを用いて、100 ng/mL、10 ng/mL、及び1 ng/mLサバイビン希釈系列を調製した。ウサギ抗サバイビンポリクローナル抗体(#NB500-201)はNovus Biologicals社から購入した。上記反応バッファーを用いて、0.1μg/mLのウサギ抗サバイビンポリクローナル抗体溶液を調製した。
【実施例】
【0123】
ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体HRP標識(#ab97051)はAbcam社から購入した。上記反応バッファーを用いて、0.2μg/mLのヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体HRP標識溶液を調製した。TMB溶液(ナカライテスク(株)製、ELISA法 POD基質TMB キット(Popular)-2液タイプ)を発色液として用いた。停止液として1 mol/L 硫酸を用いた。
【実施例】
【0124】
(5-2)サンドイッチELISA法
96穴マイクロプレートにVHH抗体(10 μg/mL, 100 μL/well)、又はVHH抗体-プルラン結合体溶液を100 μL/wellとなるように加え、4℃で12時間静置した。溶液を取り除き、スキムブロッカー原液(和光純薬工業(株)製)を200 μL/wellとなるように加えて室温で2時間静置した。溶液を取り除いて上記洗浄バッファーで3回洗浄した後、L-システイン/50 mMホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液及び5 mM EDTA(pH8.4)を100 μL/wellとなるように加えて、室温で1時間静置した。溶液を取り除いて上記洗浄バッファーで3回洗浄した後、上記サバイビン希釈系列を100 μL/wellとなるように加えて室温で1時間静置した。
【実施例】
【0125】
上記ウサギ抗サバイビンポリクローナル抗体を100 μL/wellとなるように加えて室温で1時間静置した。静置後、溶液を取り除いて洗浄バッファーで3回洗浄した後、上記ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体HRP標識を100 μL/wellとなるように加えて室温で1時間静置した。静置後、溶液を取り除いて洗浄バッファーで3回洗浄した。TMB溶液を100 μL/wellとなるように加えて30秒間攪拌した後、14分30秒静置した。静置後、上記停止液を100 μL/wellとなるように加えて30秒間攪拌し、直ちにプレートリーダー(Awareness Technology社製、ChroMate 4300シリーズ)で測定した(主波長450 nm, 副波長630 nm)。その結果、VHH抗体と比較して、VHH-プルラン複合体の方が、100ng/mLの濃度で抗原検出感度が有意に高いことが示された(図6参照)。
【実施例】
【0126】
(比較例2) 通常抗体のペアを用いたサンドイッチELISAによる比較試験
マウス抗サバイビンモノクローナル抗体(#WH0000332M1)はSigma-Aldrich社から購入した。96穴マイクロプレートにマウス抗サバイビンモノクローナル抗体のPBS(-)溶液(1 μg/mL)を100 μL/wellとなるように加え、4℃で12時間静置した。以後の操作は上述のサンドイッチELISAと同様に行った。
結果を図7に示す。比較例2の抗原検出の感度は比較例1より高かったが、本発明の実施例1は、通常抗体の感度を上回ることが確認された。
【実施例】
【0127】
(参考例) サンドイッチELISAによるクッションタンパク質の性能評価
(1)VHH-STM複合体の形成
VHH抗体-多糖結合体を固相化する場合、親水性の足場である多糖は、疎水性相互作用にほとんど寄与し得ない。このため、固相表面との物理吸着に関与しているのは、VHH抗体-多糖結合体に含まれるVHH抗体のうち、1つ又は複数のVHH抗体であると考えられた。この場合、固相表面と接触しているVHH抗体がいかに活性を維持しながら抗原結合に寄与するかが検出感度の向上には極めて重要である。この点を確認するために、以下の実験を行った。固相表面に吸着したVHH抗体又はVHH抗体複合体が抗原と結合しているときのイメージ図を、参考図2に示す。
【実施例】
【0128】
96穴マイクロプレートにSTMを含まない、下記の配列を有するVHH抗体(以下、R7-Aという。10 μg/mL)、及びVHH-STM複合体(10 μg/mL)をそれぞれ、100 μL/wellとなるように加え、4℃で12時間静置した。
【実施例】
【0129】
(STMを含まないVHH抗体R7-A)
Met Gly Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Ser Val Gln Ala
Gly Gly Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Val Ser Asn Thr
Asp Met Ile Met Ile Trp Phe Arg Gln Ala Pro Gly Lys Glu Arg Glu
Gly Val Leu Ala Ala Ile Tyr Lys Asn Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser
Val Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Gln Asp Asn Ala Lys Asn Thr Val
Tyr Leu Gln Met Asn Ser Leu Lys Pro Glu Asp Thr Ala Ile Tyr Tyr
Cys Ala Ala Ile Arg Ala Val Ile Gly Arg His Ile Arg Pro His Ile
Tyr Trp Gly Gln Gly Thr Gln Val Thr Val Gly Gly Gly Ser His His
His His His His Gly Gly Ser [配列番号10]
【実施例】
【0130】
(2)サンドイッチELISA法
上記実施例と同様の方法で評価を行った。その結果、図8に示すように、STMを持たないVHH抗体と比較して、VHH-STM複合体の方が、100 ng/mLの濃度で抗原検出感度が明らかに高いことが示された。以上の結果から、クッションタンパク質の存在が固相化にともなうVHH抗体の失活や剥離を効果的に抑制していることが確認された。
また、以上の結果から、図2の(A)と(B)とに模式的に示されるように、クッションタンパクを含む場合と含まない場合とを比較すると、クッションタンパク質を含むVHH抗体では固相化後も抗原結合活性が維持され、結果として検出感度が向上していた。多糖連結体においても同様の効果を期待できる。
従って、VHH抗体-多糖連結体(図2の(C))よりもVHH抗体-クッションタンパク-多糖連結体(図2の(D))は検出感度が高いと結論付けられた。
【実施例】
【0131】
クッションタンパク質としては、「SS25ペプチド、SS25’ペプチド、および/またはクッションタンパク質を含む、クッション性吸着剤」等を挙げることができる。


従来技術4では、クッションタンパク質が存在すれば、クッションタンパク質がない状態の活性(固相結合前を100%とした場合に、8%程度)よりも4倍程度は高くなることが示され、VHH抗体の活性が維持されたことでELISA検出感度の向上につながったものと考えられた。しかし、クッションタンパク質を使用しただけでは、全長抗体を使用して検出を行なった場合の検出感度には及ばなかった(図7参照)。
【実施例】
【0132】
これに対し、本発明のVHH-クッションタンパクを多糖に連結させたVHH-クッションタンパク-多糖結合体を使うことではじめて通常抗体の検出感度を上回ることができた(図7参照)。そして、本発明は固相表面-目的物質(VHH抗体:物理吸着)-リンカー(化学結合)-多糖-(化学結合)-目的物質(VHH抗体)という構成となるため、固相と多糖との間でも標的分子の認識が可能である。
【実施例】
【0133】
そして、リンカーにはクッションタンパク質が含まれるため、固相表面-リンカー-目的物質(VHH抗体:クッションタンパク質を介した結合-化学結合)-多糖(化学結合)-クッションタンパク質-目的物質(VHH抗体)という構成とすることができることも示された。すなわち、クッションタンパク質が存在することで、固相と多糖の間での高い標的分子の認識を可能にすることができるようになった。
以上の通り、多糖を足場とし、クッションタンパク質を介して単鎖抗体を結合させることによって、全長抗体を使用した場合以上の高い感度での標的タンパク質の検出が可能となった。
【実施例】
【0134】
なお、上記実施例においては、水溶性多糖としてプルランを用いたが、これに限定されない。デキストラン、アガロース、カードラン及びグルコマンナン等他の水溶性多糖も抗体を結合する足場としてとして有効なことが確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本願発明は、分析化学の分野において有用である。
【符号の説明】
【0136】
AB1:一次抗体
AB2:二次抗体
AG:抗原
EL:酵素標識
L:リンカー
PS:多糖類
SP:固相表面
VH:VHH抗体
【配列表フリ-テキスト】
【0137】
配列番号1:抗ヒトサバイビンVHH抗体-ステフィンA変異体を含む抗体複合体遺伝子
配列番号2:PCR用フォワードプライマー
配列番号3:PCR用フォワードプライマー
配列番号4:PCR用フォワードプライマー
配列番号5:PCR用リバースプライマー
配列番号6:発現ベクター用シグナル配列
配列番号7:発現ベクター用シグナル配列
配列番号8:発現ベクター用シグナル配列
配列番号9:発現ベクター用シグナル配列
配列10:STMを含まないVHH抗体(R7-A)の配列
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10