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明細書 :多発性骨髄腫治療用医薬用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-202941 (P2019-202941A)
公開日 令和元年11月28日(2019.11.28)
発明の名称または考案の名称 多発性骨髄腫治療用医薬用組成物
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/6813      (2018.01)
A61K  31/472       (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12N  15/115       (2010.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 45/00
C12Q 1/02
C12Q 1/6813 Z
A61K 31/472
A61K 31/7088
A61K 39/395 D
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 19/08
A61P 43/00 111
A61K 48/00
C07K 16/18
C12N 15/115 Z
C12N 15/113 130Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-097003 (P2018-097003)
出願日 平成30年5月21日(2018.5.21)
発明者または考案者 【氏名】松岡 雅雄
【氏名】河野 和
【氏名】畑 裕之
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100126664、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 慎吾
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100189337、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 龍
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C084
4C085
4C086
4H045
Fターム 4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
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4B063QQ79
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4B063QR35
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4B063QX01
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC201
4C085AA13
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
要約 【課題】本発明は、多発性骨髄腫の治療に用いられる医薬用組成物及び多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法を提供することを課題とする。
【解決手段】AMPD1(adenosine monophosphate deaminase 1)阻害剤を有効成分とし、多発性骨髄腫の治療に用いられることを特徴とする、医薬用組成物、又は、多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理することにより、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する、多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
AMPD1(adenosine monophosphate deaminase 1)阻害剤を有効成分とし、多発性骨髄腫の治療に用いられることを特徴とする、医薬用組成物。
【請求項2】
多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する作用を備える、請求項1に記載の医薬用組成物。
【請求項3】
前記AMPD1阻害剤が、抗AMPD1抗体、AMPD1と結合する低分子化合物、AMPD1と結合するアプタマー、又はAMPD1遺伝子の転写産物と結合するRNA若しくは当該RNAをコードするDNAである、請求項1又は2に記載の医薬用組成物。
【請求項4】
前記AMPD1阻害剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項3に記載の医薬用組成物。
【化1】
JP2019202941A_000005t.gif
[式中、X及びXは、それぞれ独立して炭素原子又は窒素原子を表し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。]
【請求項5】
多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理することにより、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する、多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法。
【請求項6】
低酸素環境下で、多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理する、請求項5に記載の多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性骨髄腫の治療に用いられる医薬用組成物、及び当該組成物を用いて多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫は、抗体(免疫グロブリン)産生細胞である形質細胞の悪性腫瘍であり、主に高齢者に発症する。多発性骨髄腫の主な症状は、血清中のMタンパク質濃度の上昇、及びこれに伴う臓器障害である。臓器障害としては、貧血、腎障害、高カルシウム血症、及び骨病変が挙げられる。多発性骨髄腫の治療法としては、プロテアソーム阻害剤や免疫調整薬などを用いた化学療法が中心であり、若年者には大量メルファラン療法併用の自家末梢血幹細胞移植も行われる。
【0003】
多発性骨髄腫の治療剤としては、これまで多くの薬剤が開発されており、その生存期間は延長している。しかし、治療抵抗性の症例も多く、また、副作用による治療継続が困難な場合も多い。このように、化学療法による多発性骨髄腫の根治は困難であり、長期的な予後は悪いままである。そこで、骨髄腫細胞に対する特異性が高く、既存の治療標的とは異なる新しい多発性骨髄腫治療剤の開発が強く望まれている。
【0004】
骨髄腫細胞における遺伝子発現が解析されており、骨髄腫細胞において特異的に発現している遺伝子群の1つにAMPD1(adenosine monophosphate deaminase 1)が報告されている(非特許文献1参照。)。また、骨髄腫細胞に由来する培養細胞株においても、AMPD1が高発現している(非特許文献2参照。)。AMPDは、プリン分解経路の鍵酵素であり、アデニル酸(AMP)をイノシシ酸(IMP)に変換し、アンモニアを産生する経路を触媒する酵素である。AMPDのうち、AMPD1は、骨格筋のみに発現するとされている。骨格筋は嫌気性代謝に依存する速筋と好気性代謝に依存する遅筋に分類され、速筋でAMPD活性が強い。運動等により骨格筋でのATP消費が合成を上回ると、AMPの蓄積とともにAMPD1の活性化が起こり、AMPをIMPへ分解する。この結果、増加したヒポキサンチンをはじめとする尿酸前駆物質が血中に放出され、肝臓にて尿酸に代わる。例えば、AMPD1遺伝子変異による筋AMPD欠損症は、常染色体性劣性遺伝の酵素異常症であり、労作後の易疲労感、痙攣、筋痛を示す疾患である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Hruz et al.,Advances in Bioinformatics,2008,Article ID 420747.
【非特許文献2】Barretina et al.,Nature,2012,vol.483,p.603-607.
【非特許文献3】Admyre et al.,Chemistry & Biology,2014,vol.21,p.1486-1496.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多発性骨髄腫の治療に用いられる医薬用組成物及び多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、多発性骨髄腫細胞においてAMPD1の発現を抑制することにより細胞死が誘導されること、また、AMPD1阻害剤により多発性骨髄腫細胞の増殖が有意に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
[1] 本発明の第一の態様に係る医薬用組成物は、AMPD1(adenosine monophosphate deaminase 1)阻害剤を有効成分とし、多発性骨髄腫の治療に用いられることを特徴とする。
[2] 前記[1]の医薬用組成物は、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する作用を備えることが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]の医薬用組成物としては、前記AMPD1阻害剤が、抗AMPD1抗体、AMPD1と結合する低分子化合物、AMPD1と結合するアプタマー、又はAMPD1遺伝子の転写産物と結合するRNA若しくは当該RNAをコードするDNAであることが好ましい。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの医薬用組成物としては、前記AMPD1阻害剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0009】
【化1】
JP2019202941A_000002t.gif

【0010】
[式中、X及びXは、それぞれ独立して炭素原子又は窒素原子を表し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。]
[5] 本発明の第二の態様に係る多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法は、多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理することにより、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制することを特徴とする。
[6] 前記[5]の多発性骨髄腫細胞の増殖抑制方法としては、低酸素環境下で、多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医薬用組成物は、多発性骨髄腫細胞で特異的に発現しているAMPD1に対する阻害剤を有効成分とし、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制する。このため、当該医薬用組成物は、多発性骨髄腫の治療用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1において、多発性骨髄腫細胞株におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図2】実施例1において、正常な造血細胞におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図3】実施例1において、多発性骨髄腫細胞株と多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図4】実施例1において、多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞及びCD138陰性細胞におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図5A】実施例1において、B細胞性腫瘍におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図5B】実施例1において、B細胞性腫瘍におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図6】実施例1において、白血病細胞株及びT細胞株におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図7】実施例1において、多発性骨髄腫患者の各細胞におけるAMPD1遺伝子の転写産物のバンドの染色像を示した図である。
【図8】実施例1において、多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺検体の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図9】実施例1において、多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺検体の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図10】実施例1において、形質細胞腫患者の生検の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図11】実施例1において、形質細胞腫患者の生検の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図12】実施例1において、ホジキンリンパ腫患者の生検の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図13】実施例1において、濾胞性リンパ腫患者の生検の抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色の染色像である。
【図14A】実施例2において、NCI-H929細胞にAMPD1 shRNAを導入した細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量の測定結果を示した図である。
【図14B】実施例2において、MM.1s細胞にAMPD1 shRNAを導入した細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量の測定結果を示した図である。
【図14C】実施例2において、NCI-H929細胞にAMPD1 shRNAを導入した細胞の細胞溶解液の抗AMPD1抗体を用いたウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図15A】実施例2において、NCI-H929細胞にAMPD1 shRNAを導入したAMPD1遺伝子ノックダウン細胞株の生細胞数(×10/mL)の測定結果を示した図である。
【図15B】実施例2において、MM.1s細胞にAMPD1 shRNAを導入したAMPD1遺伝子ノックダウン細胞株の生細胞数(×10/mL)の測定結果を示した図である。
【図16A】実施例3において、通常の酸素濃度環境下(Normoxia)と低酸素濃度環境下(Hypoxia)で培養したNCI-H929細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量の測定結果を示した図である。
【図16B】実施例3において、通常の酸素濃度環境下と低酸素濃度環境下で培養したMM.1s細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量の測定結果を示した図である。
【図16C】実施例3において、通常の酸素濃度環境下と低酸素濃度環境下で培養したKMS-12PE細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量の測定結果を示した図である。
【図16D】実施例3において、通常の酸素濃度環境下と低酸素濃度環境下で培養したNCI-H929細胞、MM.1s細胞、及びKMS-12PE細胞の細胞溶解液の抗AMPD1抗体を用いたウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図17A】実施例4において、式(1-1)化合物濃度が0~500μMの培養液中で通常の酸素濃度環境下と低酸素濃度環境下で培養したKMS-12PE細胞の細胞生存率(%)の測定結果を示した図である。
【図17B】実施例4において、式(1-1)化合物濃度が0~500μMの培養液中で通常の酸素濃度環境下と低酸素濃度環境下で培養したNCI-H929細胞の細胞生存率(%)の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る医薬用組成物は、AMPD1阻害剤を有効成分とし、多発性骨髄腫の治療に用いられることを特徴とする。AMPD1は多発性骨髄腫細胞に特異的に発現しており、AMPD1の酵素活性が阻害されると、多発性骨髄腫細胞の増殖が抑制される。この多発性骨髄腫細胞に対する増殖抑制作用により、本発明に係る医薬用組成物は多発性骨髄腫の治療薬となる。

【0014】
AMPD1阻害剤としては、細胞内のAMPD1の酵素活性を低減させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、AMPD1に結合してその酵素活性を抑制又は失活させるものであってもよく、AMPD1の不活性変異体や酵素活性に必要な部分領域を欠損している部分タンパク質であってもよく、これらを細胞内で発現させ得るものであってもよい。また、AMPD1遺伝子の発現を抑制するものであってもよい。

【0015】
AMPD1に結合してその酵素活性を抑制又は失活させるものとしては、例えば、抗AMPD1抗体、AMPD1と結合する低分子化合物、AMPD1と結合するアプタマーが挙げられる。AMPD1と結合するアプタマーとしては、核酸アプタマーであってもよく、ペプチドアプタマーであってもよい。核酸アプタマーからなるAMPD1阻害剤は、例えば、SELEX法のような、ランダムな核酸ライブラリーを用いてAMPD1全長タンパク質又はその部分タンパク質と特異的に結合し、その酵素活性を抑制するアプタマーをスクリーニングする方法により取得できる。ランダムなペプチドライブラリーや低分子化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより、ペプチドアプタマーや低分子化合物からなるAMPD1阻害剤も同様にして取得できる。スクリーニングを行う核酸、ペプチド、低分子化合物等のライブラリーは、公知の様々なライブラリーを用いることができる。AMPD1に結合するタンパク質としては、例えば、AMPD1を特異的に認識する抗体が挙げられる。抗AMPD1抗体は常法により製造できる。

【0016】
AMPD1の不活性変異体や酵素活性に必要な部分領域を欠損している部分タンパク質も、AMPD1阻害剤として機能し得る。AMPD1の不活性変異体等は、細胞内において内在性のAMPD1タンパク質と競合し、AMPD1の酵素活性が抑制又は阻害される。このため、これらの競合阻害性タンパク質を多発性骨髄腫細胞に十分量導入することにより、AMPD1タンパク質の発現を抑制した場合と同様に、多発性骨髄腫細胞の細胞増殖を抑制し得る。AMPD1阻害剤としては、これらの競合阻害性タンパク質そのものであってもよく、これらの発現カセットが搭載されたベクターであってもよい。競合阻害性タンパク質又はその発現カセットが搭載されたベクターは、常法により、製造することができる。

【0017】
AMPD1阻害剤が、抗AMPD1抗体、AMPD1と結合する低分子化合物、AMPD1の核酸アプタマー、又はAMPD1のペプチドアプタマーの場合、AMPD1との結合能を有する部位に加えて、又はそれ以外に、その他の機能性部位を有していてもよい。当該その他の機能性部位としては、AMPD1の酵素活性阻害機能を損なわないものであれば特に限定されるものではない。当該他の機能性部位としては、例えば、Hisタグ、Mycタグ、Flagタグ等のタンパク質等の精製に汎用されているタグペプチド等が挙げられる。

【0018】
AMPD1阻害剤がAMPD1遺伝子の発現を抑制するものである場合、特に限定されるものではなく、AMPD1阻害剤は、ゲノムDNAからAMPD1遺伝子を削除する方法に使用される化合物であってもよく、RNA干渉によるAMPD1遺伝子の発現抑制に使用される化合物であってもよい。RNA干渉は、AMPD1遺伝子の転写産物と結合するRNA若しくは当該RNAをコードするDNAを用いて常法により行うことができる。具体的には、AMPD1遺伝子のcDNAの部分領域(RNAi標的領域)のセンス鎖とアンチセンス鎖からなる二本鎖構造を有するsiRNA(small interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)又はmiRNA(micro RNA)等のRNAが、AMPD1阻害剤となる。また、これらのRNAを細胞内で転写させるためのDNAが組み込まれており、細胞内においてsiRNA等を生産させることができるRNAi誘導ベクターも、AMPD1阻害剤となる。siRNA、shRNA、RNAi誘導ベクターの作製、細胞への導入等は、常法により行うことができる。また、RNAi誘導ベクターは、市販の各種RNAiベクターの塩基配列に、RNAi標的領域の塩基配列を挿入することによって作製することもできる。

【0019】
本発明において用いられるAMPD1阻害剤としては、公知のAMPD1阻害剤をそのまま用いることもできる。AMPD1阻害剤としては、例えば、下記一般式(1)で表される低分子化合物が挙げられる(非特許文献3参照。)。一般式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して炭素原子又は窒素原子を表し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルコキシ基を表す。下記一般式(1)で表される化合物はキラル中心があり、当該式で表される化合物には、各立体異性体も含まれる。本発明において用いられるAMPD1阻害剤としては、AMPD活性が高いことから、式(1-1)で表される化合物が好ましい。

【0020】
【化2】
JP2019202941A_000003t.gif

【0021】
【化3】
JP2019202941A_000004t.gif

【0022】
多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理することにより、多発性骨髄腫細胞の増殖を抑制することができる。ここで、「多発性骨髄腫細胞をAMPD1阻害剤で処理する」とは、多発性骨髄腫細胞の細胞内にAMPD1阻害剤を導入して、当該細胞内のAMPD1の機能を阻害する又はAMPD1遺伝子の発現を抑制することを意味する。

【0023】
骨髄腫細胞内において、AMPD1発現は低酸素環境で上昇する。このため、多発性骨髄腫細胞のAMPD1阻害剤による処理は、低酸素環境下で行うことが好ましい。低酸素環境下とは、酸素濃度が大気の酸素濃度(20容量%)よりも低い環境下を意味し、好ましくは酸素濃度が5容量%以下の環境であり、より好ましくは酸素濃度が0.1~5容量%の環境であり、さらに好ましくは、0.5~2.5容量%の環境である。

【0024】
AMPD1阻害剤により処理する多発性骨髄腫細胞は、生体内の骨髄等に存在する細胞であってもよく、培養細胞株のように培養容器内で培養される細胞であってもよい。例えば、処理対象である多発性骨髄腫細胞が培養細胞株のように培養容器内で培養されている細胞の場合には、当該細胞をAMPD1阻害剤を含む培地で培養し、エンドサイトーシスを利用して細胞内に取り込ませることができる。その他、リポフェクション法、リン酸カルシウム沈殿法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法等の公知の導入方法でAMPD1阻害剤を細胞内に導入させてもよい。

【0025】
AMPD1阻害剤により処理する多発性骨髄腫細胞が動物の生体内の細胞の場合、本発明に係る医薬用組成物を動物に投与する投与経路は、特に限定されるものではない。例えば、本発明に係る医薬用組成物の投与経路としては、経口投与、経静脈投与、腹腔内投与、注腸投与等が挙げられる。

【0026】
本発明に係る医薬用組成物が投与される動物は、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物等が挙げられる。

【0027】
本発明に係る医薬用組成物は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤、徐放剤などの経口用固形剤、溶液剤、シロップ剤などの経口用液剤、注射剤、注腸剤、スプレー剤、貼付剤、軟膏剤などに製剤化することができる。製剤化は、製剤上の必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動化剤、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等を配合して常法により行うことができる。

【0028】
本発明に係る医薬用組成物の投与量は、多発性骨髄腫細胞のAMPD1活性を低減させるために十分な量のAMPD1阻害剤を当該多発性骨髄腫細胞に導入することが可能な量であればよく、処理対象の多発性骨髄腫細胞のAMPD1活性の強さ、処理対象の多発性骨髄腫細胞を含む動物の生物種、性別、年齢、体重、用法(投与経路、剤型、1日当たりの投与回数など)、有効成分としたAMPD1阻害剤の種類等を考慮して適宜決定される。

【0029】
例えば、AMPD1阻害剤処理により多発性骨髄腫細胞内のAMPD1の機能を阻害する場合、AMPD1阻害剤処理(本発明に係る医薬用組成物による処理)がなされた多発性骨髄腫細胞の増殖能が、処理前の細胞の増殖能を100%とした場合に、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、よりさらに好ましくは30%以下、特に好ましくは0%(完全に死滅した状態)になるように、本発明に係る医薬用組成物の投与量を決定することが好ましい。また、AMPD1阻害剤処理により多発性骨髄腫細胞内のAMPD1の発現を抑制させる場合、AMPD1阻害剤処理がなされた多発性骨髄腫細胞のAMPD1の発現量を100%とした場合に、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、よりさらに好ましくは30%以下、特に好ましくは0%(完全に発現していない状態)になるように、本発明に係る医薬用組成物の投与量を決定することが好ましい。

【0030】
本発明に係る医薬用組成物が含むAMPD1阻害剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。また、当該医薬用組成物は、AMPD1阻害剤以外の他の有効成分を含有していてもよい。当該他の有効成分としては、例えば、AMPD1阻害作用を有さない多発性骨髄腫への治療剤等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
<細胞株及び検体>
以降の実施例等において、多発性骨髄腫細胞株として、KMS-12BM、KMS-12PE、KMM1、KMS11、U266、RPMI-8226、NCI-H929、及びMM1.Sを使用した。白血病細胞株としてHL-60、K562を、T細胞株としてCEM、MOLT-4、MT2を使用した。各細胞株は、10% FBS(fatal bovine serum)含有RPMI1640培養液(Sigma-Ardrich社製)を用いて、酸素濃度20容量%、二酸化炭素濃度5容量%、及び温度37℃の培養条件下で培養した。低酸素条件での実験の際には、パーソナルマルチガスインキュベーター(ASTEC社製)内で各細胞株を酸素濃度1容量%、二酸化炭素濃度5容量%、及び温度37℃の培養条件下で培養した。
【実施例】
【0033】
骨髄腫患者由来の骨髄検体は、まず、Ficoll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare社製)に重層し、遠心後、単核球層のみを採取し、CD138 microbeads(Miltenyi Biotech社製)を用いて骨髄腫細胞を純化した。B細胞性腫瘍(原発性マクログロブリン血症(WM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL))の患者のリンパ節と末梢血の検体は、単核球層採取後にCD19 microbeads(Miltenyi Biotech社製)を用いて腫瘍細胞を純化した。患者検体は、インフォームドコンセントの後に患者の同意を得られたものを使用した。
【実施例】
【0034】
<AMPD1の発現量の測定1>
以降の実施例等において、AMPD1遺伝子の発現量は、RT-PCR法又はリアルタイムRT-PCR法により測定した。
AMPD1遺伝子の発現量を測定する対象の細胞のRNAを、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出し、得られたRNAからcDNAをReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)を用いて合成した。得られたcDNAを鋳型として、RT-PCR法又はリアルタイムRT-PCR法を行い、AMPD1の遺伝子の発現量を測定した。リアルタイムRT-PCR法では、THUNDERBIRD Probe qPCR Mix (TOYOBO社製)とEco(商標)Real-Time PCR System(Illumina社製)を用いた。内在性コントロールとしてACTB遺伝子を用い、ΔΔCt法により各検体のAMPD1遺伝子発現量を比較した。
【実施例】
【0035】
<AMPD1の発現量の測定2>
以降の実施例等において、AMPD1の発現量は、ウェスタンブロット法によっても測定した。
AMPD1遺伝子の発現量を測定する対象の細胞から、M-PER(登録商標)Mammalian Protein Extraction Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)、Phosphatase Inhibitor Cocktail(Nacalai Tesque社製)、Protease Inhibitor Cocktail(Nacalai Tesque社製)を用いて細胞溶解液を調製した。得られた細胞溶解液は、NuPAGE Bis-Tris precast gel(Thermo Fisher Scientific社製)で電気泳動した後、iBlot(登録商標)Gel Transfer Device(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて当該ゲルのタンパク質をPVDF膜に転写した。この転写膜は、1時間のブロッキング処理した後に、一次抗体を含む溶液中で16時間インキュベートし、その後洗浄した。洗浄後の転写膜を、horseradish peroxidase結合二次抗体(GE Healthcare社製)を含む溶液中で30分間インキュベートした。その後、当該転写膜中の目的のタンパク質を、ECL prime western blotting detection reagent (GE Healthcare社製)を用いて発色させて検出した。なお、一次抗体として、抗AMPD1抗体(Sigma-Aldrich社製)、抗Actin抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)を使用した。
【実施例】
【0036】
<免疫染色>
以降の実施例等において、抗AMPD1抗体を用いた酵素免疫染色は、以下の通りにして測定した。
まず、造血器腫瘍病変部のパラフィン包埋組織を2~3μmに薄切した組織切片を準備した。この組織切片に対して、抗AMPD1抗体 (Sigma-Aldrich社製)を用いて酵素免疫染色を行った。抗原賦活化処理では、組織切片を0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液に浸透させた後、121℃で20分間オートクレーブした。内因性ペルオキシダーゼ除去には、3%過酸化水素水(Wako Pure Chemical Industries社製)を用いた。発色には、diamino benzidine(Wako Pure Chemical Industries社製)を用いた。
まず、造血器腫瘍病変部のパラフィン包埋組織を2~3μmに薄切した組織切片を準備した。この組織切片に対して、抗AMPD1抗体 (Sigma-Aldrich社製)を用いて酵素免疫染色を行った。抗原賦活化処理では、組織切片を0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液に浸透させた後、121℃で20分間オートクレーブした。内因性ペルオキシダーゼ除去には、3%過酸化水素水(Wako Pure Chemical Industries社製)を用いた。発色には、diamino benzidine(Wako Pure Chemical Industries社製)を用いた。
【実施例】
【0037】
<細胞生存率の検出>
以降の実施例等において、細胞生存率(%)は、生死判定試薬法7-AAD(7-Amino-actinomycinD)を用いて測定した。
細胞生存率を測定する対象の細胞を7-AAD(BioLegend社製)染色し、BD FACSVerse(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences社製)にて解析し、7-AAD陰性細胞を生細胞として測定した。測定された生細胞数と死細胞数から、細胞生存率([生細胞数]/([生細胞数]+[死細胞数])×100(%))を算出した。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
各血球系細胞におけるAMPD1の発現を調べた。
【実施例】
【0039】
(1)多発性骨髄腫細胞株におけるAMPD1の発現
多発性骨髄腫細胞株であるNCI-H929、MM1.S及びKMS-12PEにおけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。比較対象として、骨格筋とPBMC(末梢血単核球細胞)についても同様にして測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図1に示す。AMPD1遺伝子の発現は、骨格筋と多発性骨髄腫細胞株で確認できたが、PBMCでは確認されなかった。
【実施例】
【0040】
(2)正常な造血細胞におけるAMPD1の発現
健常人から採取された造血組織から分離した、骨髄形質細胞検体4つ(BM PC-1~BM PC-4)、リンパ節細胞検体2つ(LN-1及びLN-2)、PBMC検体2つ(PBMC-1及びPBMC-2)におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図2に示す。AMPD1遺伝子の発現は、PBMCとリンパ節では確認されず、骨髄形質細胞では確認された。
【実施例】
【0041】
(3)多発性骨髄腫細胞株と多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞におけるAMPD1の発現
多発性骨髄腫細胞株(KMM1、KMS11、KMS-12PE、RPMI-8226、及びKMS-12BM)と多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞検体4つ(MM pt-1~MM pt-4)におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図3に示す。AMPD1遺伝子の発現は、発現量の多寡はあるものの、KMS-12BM以外の全ての多発性骨髄腫細胞株と多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞検体で確認された。
【実施例】
【0042】
(4)多発性骨髄腫患者のCD138陽性細胞及びCD138陰性細胞におけるAMPD1の発現
多発性骨髄腫患者の骨髄のCD138陽性細胞検体2つ(MM Pt-1 CD138+~MM Pt-2 CD138+)と、同じ多発性骨髄腫患者の骨髄のCD138陰性細胞検体2つ(MM Pt-1 CD138-~MM Pt-2 CD138-)におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図4に示す。AMPD1遺伝子は、多発性骨髄腫患者の骨髄の細胞のうち、CD138陽性細胞では発現していたが、CD138陰性細胞では発現していなかった。
【実施例】
【0043】
(5)B細胞性腫瘍におけるAMPD1の発現
B細胞性腫瘍のうち、CLL患者由来の骨髄検体3つ(CLL-1~CLL-3)とWM患者由来の骨髄検体3つ(WM-1~WM-3)とDLBCL患者由来の骨髄検体3つ(DLBCL-1~DLBCL-3)とFL患者由来の骨髄検体3つ(FL-1~FL-3)におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。比較対象として、多発性骨髄腫細胞株(KMS-12PE)についても同様にして測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図5A及び図5Bに示す。AMPD1遺伝子は、CLL患者、WM患者、DLBCL患者、及びFL患者の骨髄細胞では発現していなかった。
【実施例】
【0044】
(6)白血病細胞株及びT細胞株におけるAMPD1の発現
白血病細胞株2つ(HL-60、K562)とT細胞株3つ(CEM、MOLT-4、MT2)におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。比較対象として、多発性骨髄腫細胞株(KMS-12PE)についても同様にして測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図6に示す。AMPD1遺伝子は、白血病細胞株とT細胞株のいずれでも発現していなかった。
【実施例】
【0045】
(7)多発性骨髄腫患者の各細胞におけるAMPD1の発現
多発性骨髄腫患者から採取された骨髄のCD138陽性細胞検体(Pt-1 CD138+)、CD138陰性細胞検体(Pt-1 CD138-)、リンパ節(LN)、PBMC、及び顆粒球におけるAMPD1遺伝子の発現量を、RT-PCR法により測定した。比較対象として、多発性骨髄腫細胞株(KMS-12PE)についても同様にして測定した。
RT-PCR法により増幅された各遺伝子の転写産物のバンドの染色像を図7に示す。AMPD1遺伝子は、骨髄のCD138陽性細胞に特異的に発現していた。
【実施例】
【0046】
(8)多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺検体におけるAMPD1の発現局在
多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺検体2つ(MM BM As-1及びMM BM As-2)、形質細胞腫(plasmacytoma)患者の生検2つ(P Bs-1及びP Bs-2)、ホジキンリンパ腫患者の生検1つ(HL Bs-1)、及びFL患者の生検1つ(FL Bs-1)に対して、抗AMPD1抗体を用いて酵素免疫染色を行い、AMPD1の発現とその局在を調べた。
酵素免疫染色の染色像を図8~13に示す。多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺検体2つでは、AMPD1の染色が確認されたが(図8及び9)、その他の細胞種患者の生検では、AMPD1の染色が確認されなかった(図10~13)。これらの結果からも、AMPD1が多発性骨髄腫細胞に特異的に発現していることが確認できた。
【実施例】
【0047】
[実施例2]
RNA干渉により多発性骨髄腫細胞におけるAMPD1遺伝子の発現を抑制し、その影響を調べた。
【実施例】
【0048】
<AMPD1遺伝子ノックダウン細胞株の樹立>
AMPD1遺伝子のcDNAの部分領域と同じ塩基配列を含むAMPD1 shRNA2種類(shRNA#2及びshRNA#3)とコントロール shRNAのベクタープラスミドをそれぞれ、HEK-293T細胞にレンチウイルスとコトランスフェクションし、レンチウイルスベクターを作製した。作製されたレンチウイルスベクターを回収し、NCI-H929細胞とMM.1s細胞にポリブレンを用いて導入した後、0.5μg/mL ピューロマイシン二塩酸塩(Wako Pure Chemical Industries社製)含有培養液を用いてセレクションを行った。ノックダウン効率は、ピューロマイシンを添加して3日後の細胞からRNAを抽出し、AMPD1遺伝子発現をリアルタイムRT-PCR法により測定して判定した。また、RNA干渉後の細胞におけるAMPD1の発現の有無を、ウェスタンブロット法によっても測定した。
【実施例】
【0049】
NCI-H929細胞に各shRNAを導入した細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量(コントロール shRNAを導入した細胞のAMPD1遺伝子発現量を1とする)を図14Aに、MM.1s細胞に各shRNAを導入した細胞のAMPD1遺伝子の相対発現量を図14Bに、それぞれ示す。また、NCI-H929細胞に各shRNAを導入した細胞におけるAMPD1の発現を確認したウェスタンブロットの結果を図14Cに示す。この結果、NCI-H929細胞とMM.1s細胞のいずれにおいても、shRNA#2又はshRNA#3を導入することにより、AMPD1の発現が抑制されていた。
【実施例】
【0050】
NCI-H929細胞又はMM.1s細胞にAMPD1 shRNA(shRNA#3)又はコントロール shRNAを導入した細胞をshRNAの導入から1、3、5、又は8日目まで培養した細胞について、細胞生存率(%)を調べた。
NCI-H929細胞にshRNAを導入した細胞の生細胞数(×10/mL)の測定結果を図15Aに、MM.1s細胞にshRNAを導入した細胞の生細胞数(×10/mL)の測定結果を図15Bに、それぞれ示す。この結果、NCI-H929細胞とMM.1s細胞のいずれにおいても、shRNA#3を導入してAMPD1の発現を抑制したAMPD1遺伝子ノックダウン細胞株は、細胞の増殖が顕著に抑制されていた。
【実施例】
【0051】
[実施例3]
骨格筋は嫌気性代謝に依存する速筋と好気性代謝に依存する遅筋に分類され、速筋でAMPD活性が強い。そこで、骨髄腫細胞におけるAMPD1の発現に対する酸素濃度の影響を調べた。
【実施例】
【0052】
多発性骨髄腫細胞株のうち、NCI-H929細胞、MM.1s細胞、及びKMS-12PE細胞を、通常の酸素濃度環境下(20容量%:Normoxia)と低酸素濃度環境下(1容量%:Hypoxia)で培養し、培養開始から24時間後及び72時間後のAMPD1遺伝子の相対発現量(通常の酸素濃度環境下で24時間培養した細胞の発現量を1とする。)を調べた。NCI-H929細胞の結果を図16Aに、MM.1s細胞の結果を図16Bに、KMS-12PE細胞の結果を図16Cに、それぞれ示す。また、培養から72時間後の細胞の細胞溶解液を調製し、AMPD1の発現をウェスタンブロットで確認した。結果を図16Dに示す。
【実施例】
【0053】
いずれの多発性骨髄腫細胞株においても、低酸素濃度環境下で培養した細胞のほうが、通常の酸素濃度環境下で培養した細胞よりも、AMPD1遺伝子の発現量が有意に多く、AMPD1発現は低酸素環境で上昇することがわかった。
【実施例】
【0054】
[実施例4]
式(1-1)化合物は、細胞内AMP濃度を増加させてAMPKの活性化を誘導することを利用して糖尿病の治療薬の候補物質として開発されたAMPD1阻害剤である(非特許文献3)。式(1-1)化合物による処理により、RNA干渉により得られたAMPD1遺伝子ノックダウン細胞株と同様に多発性骨髄腫細胞における増殖抑制効果が得らえるか調べた。式(1-1)化合物は、Sundia MediTech Company Ltd.(Shanghai, China)にて合成されたものを用いた。
【実施例】
【0055】
具体的には、多発性骨髄腫細胞株のうち、NCI-H929細胞及びKMS-12PE細胞をそれぞれ、式(1-1)化合物濃度が0~500μMの培養液で72時間、通常の酸素濃度環境下(20容量%:Normoxia)又は低酸素濃度環境下(1容量%:Hypoxia)で培養し、細胞生存率(%)を測定した。
【実施例】
【0056】
KMS-12PE細胞の測定結果を図17Aに、NCI-H929細胞の測定結果を図17Bに、それぞれ示す。この結果、KMS-12PE細胞における式(1-1)化合物のIC50は、通常の酸素濃度環境下では71.8μM、低酸素濃度環境下では21.3μMであった。NCI-H929細胞における式(1-1)化合物のIC50は、通常の酸素濃度環境下では64.8μM、低酸素濃度環境下では44.5μMであった。このように、いずれの多発性骨髄腫細胞株でも、式(1-1)化合物により細胞内のAMPD1の活性が阻害されて細胞増殖が有意に抑制されることが確認できた。さらにこの式(1-1)化合物による多発性骨髄腫細胞に対する細胞増殖抑制効果は、低酸素濃度環境下でより高い効果が得られることが確認された。
【実施例】
【0057】
なお、多発性骨髄腫患者由来のPBMCを通常の酸素濃度環境下、式(1-1)化合物濃度が0~500μMの培養液で72時間培養したところ、その細胞生存率に対する式(1-1)化合物の影響は観察されなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14A】
14
【図14B】
15
【図14C】
16
【図15A】
17
【図15B】
18
【図16A】
19
【図16B】
20
【図16C】
21
【図16D】
22
【図17A】
23
【図17B】
24