TOP > 国内特許検索 > モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法 > 明細書

明細書 :モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-173071 (P2019-173071A)
公開日 令和元年10月10日(2019.10.10)
発明の名称または考案の名称 モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法
国際特許分類 C22B  34/34        (2006.01)
C22B   3/26        (2006.01)
C22B  34/14        (2006.01)
B01D  11/04        (2006.01)
FI C22B 34/34
C22B 3/26
C22B 34/14
B01D 11/04 B
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2018-060674 (P2018-060674)
出願日 平成30年3月27日(2018.3.27)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 英哉
【氏名】松村 達郎
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100113608、【弁理士】、【氏名又は名称】平川 明
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
【識別番号】100175190、【弁理士】、【氏名又は名称】大竹 裕明
審査請求 未請求
テーマコード 4D056
4K001
Fターム 4D056AB05
4D056AC02
4D056AC03
4D056AC04
4D056AC06
4D056AC07
4D056AC09
4D056AC11
4D056AC21
4D056AC22
4D056AC27
4D056AC29
4D056CA13
4D056CA27
4D056CA39
4K001AA17
4K001AA31
4K001BA01
4K001BA21
4K001CA03
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001DB26
4K001DB34
要約 【課題】鉱工業分野、原子力分野で利用できるモリブデン及び/又はジルコニウムの効率的な抽出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を、下記一般式(A)で表される化合物の存在下で有機溶媒に接触させることにより、モリブデン及び/又はジルコニウムを有機溶媒に溶解させて、効率良く抽出することができる。
JP2019173071A_000017t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(A)で表される化合物の存在下、前記準備工程で準備した酸性水溶液と有機溶媒を接触させる液液接触工程を含むことを特徴とする、モリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【化1】
JP2019173071A_000014t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記準備工程で準備した酸性水溶液が、硝酸イオン(NO)を含む、請求項1に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【請求項3】
さらに前記液液接触工程で接触させた酸性水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に逆抽出水溶液を接触させてモリブデン及び/又はジルコニウムを該逆抽出水溶液に逆抽出する逆抽出工程を含む、請求項1又は2に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【請求項4】
前記逆抽出工程で接触させる逆抽出水溶液が、硫酸イオン(SO2-)、過酸化水素(H)及び/又はシュウ酸(C)を含む、請求項3に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【請求項5】
前記準備工程で準備した酸性水溶液が、モリブデン及び/又はジルコニウムから選択される抽出対象元素とスカンジウム、イットリウム及びランタノイド、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ウランから選択される非抽出対象元素とを含み、前記抽出対象元素を抽出して、前記非抽出対象元素と分離する、請求項1~4の何れか1項に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【請求項6】
一般式(A)で表される化合物を含む、モリブデン及び/又はジルコニウムの抽出剤。
【化2】
JP2019173071A_000015t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
【請求項7】
一般式(A)で表される化合物。
【化3】
JP2019173071A_000016t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数8~20の炭化水素基を表す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法に関し、より詳しくはN,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド (DAHAA)等を用いたモリブデン及び/又はジル
コニウムの抽出分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レアメタルの1つであるモリブデンは、少量添加することによって金属材料の機能や物性を飛躍的に高めることができる。例えば、高速度鋼は、600℃付近まで硬さを持たせた
高速度切削が可能な鋼で、バイト、ドリル、歯科用刃物等に使われている。また、低合金耐熱鋼として、石油精製リアクタや火力発電ボイラ分野で使用されている。その他、モリブデン金属(線,板,棒,箔など)として、高温電気炉や原子炉関係の発熱体、自動車用ハロゲンランプなどの照明用品、電子機器部品、さらには石油精製用触媒にも利用されている。一方、ジルコニウムもレアメタルとして100%輸入に頼っており、用途は様々であ
るが、不定形耐火物や耐火煉瓦の原料として使用が最大の用途となっている。ジルコニウム酸化物のジルコニアは、比較的低純度のものは耐火物、研摩剤、窯業顔料等に用いられ、高純度ジルコニアは、PZT系固溶体セラミックスとして優れた圧電性、強誘電性、焦電
性を有することから、圧電フィルタやセンサー、アクチュエータ材料として広く実用されている。その他、自動車の排ガス浄化触媒向けとしての利用が近年急増している。また、金属ジルコニウムは、約90%が原子炉での核燃料の被覆管としての利用、他には化学工業
用の耐食材が中心となっている。
【0003】
モリブデンは、産業利用において重要性が高いものの地殻存在度が低く、安定供給に課題がある。日本国内で消費されるモリブデン鉱物は、アメリカ、中国、チリなどからの輸入されており、国内消費量の60日分以上の国家備蓄が定められている。生産量の8割が銅の副産物である。モリブデンは、近年需給が増して価格が高騰しており、安定した供給ルートの確保が課題となっている。
【0004】
ジルコニウムは、鉱石としてジルコンサンドとバデライトがあり、オーストラリア、南アフリカの2ヶ国で約7割が生産されている。また、中国、ウクライナ等でも生産が行われており、日本はその全量を輸入に頼っている。
ジルコニウムを回収又は精製する方法としては、浮遊選鉱法でジルコニウム鉱を比重の差を利用して珪砂を除き、さらに比重の差、磁性、電導性を利用して、選別し、ジルコン精鉱とする。その後、苛性ソーダ溶融工程、塩酸分解工程、水洗・濾過工程、焼成・粉砕工程によって、ジルコニア粉末としている。
【0005】
本発明者らは、モリブデンやジルコニウムなどの金属の分離に使用できる抽出剤として、ニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物を開示している(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2017-95774号公報
【特許文献2】特開2017-95407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉱工業分野や原子力分野で利用できるモリブデンやジルコニウムの効率的な分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を、N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の存在
下で有機溶媒に接触させることにより、モリブデン及び/又はジルコニウムを有機溶媒に溶解させて、効率良く抽出することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を準備する準備工程、並び
に下記一般式(A)で表される化合物の存在下、前記準備工程で準備した酸性水溶液と有機溶媒を接触させる液液接触工程を含むことを特徴とする、モリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
【化1】
JP2019173071A_000003t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
<2> 前記準備工程で準備した酸性水溶液が、硝酸イオン(NO)を含む、<1>
に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
<3> さらに前記液液接触工程で接触させた酸性水溶液と有機溶媒を分液する分液工程
、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に逆抽出水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、<1>又は<2>に記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
<4> 前記逆抽出工程で接触させる逆抽出水溶液が、硫酸イオン(SO2-)、過酸
化水素(H)及び/又はシュウ酸(CH)を含む、<3>に記載のモリブデ
ン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
<5> 前記準備工程で準備した酸性水溶液が、モリブデン及び/又はジルコニウムから
選択される抽出対象元素とモリブデン及び/又はジルコニウムから選択される非抽出対象元素とを含み、前記抽出対象元素を抽出して、前記非抽出対象元素と分離する、<1>~<4>の何れかに記載のモリブデン及び/又はジルコニウムの抽出分離方法。
<6>一般式(A)で表される化合物を含む、モリブデン及び/又はジルコニウムの抽出剤。
【化2】
JP2019173071A_000004t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
<7>一般式(A)で表される化合物。
【化3】
JP2019173071A_000005t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数8~20の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モリブデン及び/又はジルコニウムを効率良く抽出分離することができる。N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の化合物を用いることで、モリブデ
ン及び/又はジルコニウムを、希土類元素イオンやアルカリ土類金属元素イオンだけでなく、白金族元素とも効率よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】N,N-ジドデシル-2-ヒドロキシアセトアミドのH-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】N,N-ジドデシル-2-ヒドロキシアセトアミドの質量分析スペクトルを示す図である。
【図3】6価のモリブデンイオン(Mo(VI))、4価のジルコニウムイオン(Zr(IV))、種々の3価の希土類元素イオンであるイットリウムイオン(Y(III))、ランタンイオン(La(III))、ネオジムイオン(Nd(III))、ユウロピウムイオン(Eu(III))、種々の2価のアルカリ土類金属元素イオンである2価のストロンチウムイオン(Sr(II))、2価のバリウムイオン(Ba(II))、種々の白金族元素イオンであるルテニウムイオン(Ru(III))、ロジウムイオン(Rh(III))、パラジウムイオン(Pa(II))の分配比(D)とN,N-ジドデシル-2-ヒドロキシアセトアミド濃度との関係を表したグラフである。
【図4】6価のモリブデンイオン(Mo(VI))、4価のジルコニウムイオン(Zr(IV))、種々の3価の希土類元素イオンであるイットリウムイオン(Y(III))、ランタンイオン(La(III))、ネオジムイオン(Nd(III))、ユウロピウムイオン(Eu(III))、種々の2価のアルカリ土類金属元素イオンである2価のストロンチウムイオン(Sr(II))、2価のバリウムイオン(Ba(II))、種々の白金族元素イオンであるルテニウムイオン(Ru(III))、ロジウムイオン(Rh(III))、パラジウムイオン(Pa(II))の分配比(D)と硝酸濃度との関係を表したグラフである。
【図5】硝酸水溶液中の4価のジルコニウムイオン(Zr(IV))濃度と有機相中に抽出されたジルコニウムイオン(Zr(IV))濃度との関係および6価のモリブデンイオン(Mo(VI))濃度と有機相中に抽出されたモリブデンイオン(Mo(VI))濃度との関係を表したグラフである。
【図6】本発明の分離方法の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。

【0013】
<モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法>
本発明の一態様であるモリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法(以下、「本発明の抽出方法」と略す場合がある。)は、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸
性水溶液を準備する準備工程(以下、「準備工程」と略す場合がある。)、並びに下記一般式(A)で表される化合物(以下、「本発明の抽出剤」と称する場合がある。)の存在下、準備工程で準備した酸性水溶液と有機溶媒を接触させる液液接触工程(以下、「液液接触工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。

【0014】
【化4】
JP2019173071A_000006t.gif
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)

【0015】
本発明者らは、モリブデンやジルコニウムの効率的な抽出方法を求めて検討を重ねた結果、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を、一般式(A)で表される化合物の存在下で有機溶媒に接触させることにより、モリブデンやジルコニウムを有機溶媒に溶解させて、効率良く抽出することができることを見出したのである。濃度条件を選択することで、モリブデンのみを分離することができる。また、モリブデンのみを分離した後の水溶液からジルコニウムのみを分離することができる。

【0016】
N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の化合物は、炭化水素基の炭素数を変え
ることで、水に対しても有機溶媒に対しても親和性が高くできる。また、モリブデンやジルコニウムとの結合に非常に適した構造を有していると考えられる。そのため、水溶液と有機溶媒の液液接触によって、N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の化合物が
モリブデンやジルコニウムと会合し、水溶液中のモリブデンやジルコニウムが有機溶媒に可溶化して、抽出される。

【0017】
また、N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の化合物は、ジルコニウムやジル
コニウムを逆抽出し易くするという優れた特長も有している。即ち、ジルコニウムやジルコニウムが溶解した有機溶媒を硫酸水溶液、過酸化水素水溶液、シュウ酸水溶液等の逆抽出水溶液に接触させることによって、逆抽出水溶液にジルコニウムやジルコニウムを溶解させて回収することが可能となるのである。

【0018】
さらに、N,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等の化合物は、例えば水素イオン
濃度やアニオン濃度によって、それぞれの元素に対する親和性が変化するため、特定の元素を選択的に抽出することも可能となる。例えば、ジルコニウム鉱石であるバデライト中に含まれる不純物の銅、リン、ウラン、希土類元素からジルコニウムを効率的に分離抽出することが可能となる。

【0019】
なお、「希土類元素」とは、ランタノイド、スカンジウム、及びイットリウムの総称であり、「ランタノイド」とは、ランタノイドに属する金属元素を意味し、酸性水溶液や有機溶媒中の酸化数、状態等は特に限定されないものとする。

【0020】
なお、ランタノイドは、具体的にはランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)である。
なお、スカンジウム、イットリウム、ランタノイドの酸化数は、通常1~6価であり、それぞれの元素に応じた安定な酸化数を有しているが、3価、4価、5価が好ましく、3価が特に好ましい。

【0021】
また、「一般式(A)で表される化合物の存在下」とは、通常有機溶媒に一般式(A)で表される化合物が存在していることを意味し、予め有機溶媒に含有させていても、或いは酸性水溶液と有機溶媒を接触させるときに別途一般式(A)で表される化合物を添加するものであってもよいものとする。

【0022】
本発明の抽出方法は、モリブデン及び/又はジルコニウムの抽出方法であるが、抽出対象元素であるモリブデン及び/又はジルコニウムの具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。

【0023】
また、抽出対象元素であるモリブデン及び/又はジルコニウムは、どちらか1種類に限られず、2種類を抽出対象元素とするものであってもよい。

【0024】
(準備工程)
準備工程は、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を準備する工程であるが、準備方法は特に限定されず、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を入手しても、或いはモリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を自ら調製してもよい。
また、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む酸性水溶液を自ら調製する場合の調製方法も特に限定されず、モリブデン及び/又はジルコニウムを含む水溶液に酸を添加しても、或いはモリブデン及び/又はジルコニウムを溶解させるために酸性水溶液とし、それにモリブデン及び/又はジルコニウムを含んだものを添加してもよい。

【0025】
酸性水溶液は、抽出対象元素であるモリブデン及び/又はジルコニウムを含むものであれば、その他の元素を含むものであってもよい。その他の元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属元素、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)等のアルカリ土類金属元素、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の遷移金属元素等が挙げられる。

【0026】
酸性水溶液の水素イオン濃度は、通常0.001~12Mの範囲であり、好ましくは6.0M以下、より好ましくは4.0M以下、さらに好ましくは3.0M以下であり、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.1M以上、さらに好ましくは2.0M以上である。
また、モリブデン(Mo)を抽出対象元素とする場合の酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは6.0M以下、より好ましくは4.0M以下、さらに好ましくは3.0M以下であり、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.1M以上、さらに好ましくは2.0M以上である。
また、ジルコニウム(Zr)を抽出対象元素とする場合の酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは5.0M以下、より好ましくは4.0M以下、さらに好ましくは3.0M以下であり、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.1M以上、さらに好ましくは2.0M以上である。

【0027】
酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。なお、塩酸を使用する場合、酸性水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、酸性水溶液は硫酸イオン(SO2-)を含み、硝酸を使
用する場合、酸性水溶液は硝酸イオン(NO)を含むと表現することができる。ジルコニウムを抽出する場合、この中でも硝酸を使用すること、即ち酸性水溶液は硝酸イオン(NO)を含むことが好ましい。

【0028】
酸性水溶液の抽出対象元素であるモリブデン及び/又はジルコニウムの濃度は、通常0M(mol/dm)より大きく、0.1M以下の範囲であり、好ましくは0.05M以下、より好ましくは0.02M以下、さらに好ましくは0.01M以下である。上記範囲内であると、モリブデン及び/又はジルコニウムを効率良く抽出し易くなる。

【0029】
(液液接触工程)
液液接触工程は、下記一般式(A)で表される化合物の存在下、準備工程で準備した酸性水溶液と有機溶媒を接触させる工程であるが、一般式(A)で表される化合物の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。

【0030】
【化5】
JP2019173071A_000007t.gif

【0031】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表す。)
Rはそれぞれ独立して炭素数6~20の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。環状構造の場合、1または2個の炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい。また、Rの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。
Rとしては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2-エチルへキシル基、2,2-ジメチルへキシル基、フェニル基、フェニルメチル等、ピリジル基、ピコリル基が挙げられる。

【0032】
一般式(A)で表される化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化6】
JP2019173071A_000008t.gif

【0033】
上記一般式(A)で表される化合物は、Rはそれぞれ独立して炭素数8~20の炭化水素基を有する場合、新規化合物であり、化合物自体も本発明の範囲に含まれる。

【0034】
一般式(A)で表される化合物は例えば、以下のような反応により合成することができる。
【化7】
JP2019173071A_000009t.gif

【0035】
一般式(A)で表される化合物の使用量(存在量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒の容積を基準(有機溶媒に溶解している場合の濃度)とした場合、通常0.001~2M(mol/dm)の範囲であり、好ましくは0.005M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.05M以上であり、好ましくは1.5M以下、より好ましくは1M以下、さらに好ましくは0.1M以下である。上記範囲内であると、モリブデンやジルコニウムを効率良く抽出し易くなる。

【0036】
液液接触工程の操作手順は、特に限定されず、液液抽出に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。例えば、任意の容器に酸性水溶液と有機溶媒を投入し、振とう機等を用いて酸性水溶液と有機溶媒を十分に混合した後、遠心分離によって相分離させて、分液を行うことが挙げられる。また、容器の代わりに向流抽出装置等の抽出装置や分
液漏斗等の公知の抽出装置又は抽出器具を用いることもできる。

【0037】
なお、酸性水溶液と有機溶媒を振とうする場合の振とう時間は、通常5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。上記範囲内であると、モリブデンやジルコニウムをより効率良く抽出することができる。

【0038】
液液接触工程は、1回に限られず、接触と分液を複数回繰り返してもよい。液液接触工程の回数は、通常1回~20回の範囲であり、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上であり、好ましくは15回以下、より好ましくは10回以下、さらに好ましくは5回以下である。上記範囲内であると、モリブデンやジルコニウムを効率良く抽出し易くなる。

【0039】
また、一般式(A)で表される化合物の存在下で酸性水溶液と有機溶媒を接触させる方法は、例えば下記の(a)~(c)の方法が挙げられる。
(a)一般式(A)で表される化合物を含む有機溶媒溶液を、容器内等で酸性水溶液と接触させる方法。
(b)一般式(A)で表される化合物を含む酸性水溶液を、容器内等で有機溶媒と接触させる方法。
(c)一般式(A)で表される化合物と酸性水溶液と有機溶媒をそれぞれ容器等に投入し、接触させる方法。
この中でも、より効率良く抽出することができることから、(a)が特に好ましい。

【0040】
有機溶媒は、特に限定されず、水との液液抽出に利用される公知のものを適宜選択することができる。具体的には、n-ヘキサン、n-ドデカン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール1等のアルコール類、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。この中でも、疎水性が高いことから炭化水素系溶媒が好ましく、n-ドデカンが特に好ましい。

【0041】
接触させる酸性水溶液と有機溶媒の容積比(酸性水溶液/有機溶媒)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1/100~100/1の範囲であり、好ましくは1/50以上、より好ましくは1/10以上、さらに好ましくは1/5以上であり、好ましくは50/1以下、より好ましくは10/1以下、さらに好ましくは5/1以下である。上記範囲内であると、モリブデンやジルコニウムを効率良く抽出し易くなる。

【0042】
本発明の抽出方法は、前述の準備工程と液液接触工程を含むものであれば、その他の工程を含むものであってもよい。例えば、液液接触工程で接触させた酸性水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、前記分液工程で分液した有機溶媒に逆抽出水溶液を接触させる逆抽出工程(以下、「逆抽出工程」と略す場合がある。)、有機溶媒又は水を留去する溶媒留去工程等が挙げられる。以下、逆抽出工程の詳細について説明する。

【0043】
(逆抽出工程)
逆抽出工程は、分液工程で分液した有機溶媒に逆抽出水溶液を接触させる工程であるが、逆抽出水溶液としては、酸性水溶液又は過酸化水素水溶液が挙げられる。

【0044】
逆抽出工程で接触させる酸性水溶液の水素イオン濃度等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
逆抽出工程で接触させる酸性水溶液の水素イオン濃度は、通常0.1~12Mの範囲で
あり、好ましくは1M以下、より好ましくは0.1M以下、さらに好ましくは0.01M以下であり、好ましくは0.0001M以上、より好ましくは0.001M以上、さらに好ましくは0.01M以上である。

【0045】
また、モリブデン(Mo)を逆抽出する場合の酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましく5M以下、より好ましくは1M以下、さらに好ましくは0.5M以下であり、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.5M以上である。

【0046】
また、ジルコニウム(Zr)を逆抽出する場合の酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましく5M以下、より好ましくは1M以下、さらに好ましくは0.5M以下であり、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.5M以上である。

【0047】
逆抽出工程で接触させる酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸やシュウ酸等の有機酸が挙げられる。なお、塩酸を使用する場合、酸性水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、酸性水溶液は硫酸イオン(SO2-)を含み、硝酸を使用する場合、酸性水溶液は硝酸イオン(NO)を含むと表現することができる。モリブデンやジルコニウムを逆抽出する場合、この中でも硫酸やシュウ酸を使用すること、即ち酸性水溶液は硫酸イオン(SO2-)またはシュウ酸(C)を含むことが好ましい。
硫酸を使用する場合、ジルコニウムのみを逆抽出することができる。
一方、シュウ酸を使用する場合、ジルコニウム、モリブデンの両方を逆抽出することができる。

【0048】
また、逆抽出工程において接触させる逆抽出水溶液は過酸化水素水溶液でもよい。過酸化水素を用いることで、選択的にモリブデンを逆抽出することができる。逆抽出液における過酸化水素の濃度は例えば、0.1~1Mである。

【0049】
なお、酸性水溶液がジルコニウムとモリブデンの両方を含む場合、これらを別々に抽出するためには、図6で示すように、酸性溶液からジルコニウムとモリブデンを有機溶媒相に抽出した後、まず、硫酸を含む酸性水溶液を有機溶媒相に混合して、水層にジルコニウムを逆抽出し、その後、有機溶媒相に残存したモリブデンをシュウ酸水溶液、または過酸化水素によって逆抽出することが好ましい。

【0050】
逆抽出工程の操作手順は、特に限定されず、逆抽出に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。

【0051】
逆抽出工程において接触させる酸性水溶液と有機溶媒の容積比(酸性水溶液/有機溶媒)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1/100~100/1の範囲であり、好ましくは1/50以上、より好ましくは1/10以上、さらに好ましくは1/5以上であり、好ましくは50/1以下、より好ましくは10/1以下、さらに好ましくは5/1以下である。上記範囲内であると、モリブデンやジルコニウムを効率良く逆抽出し易くなる。

【0052】
<モリブデン及び/又はジルコニウムの分離回収方法>
前述のように、一般式(A)で表されるN,N-ジアルキル-2-ヒドロキシアセトアミド等
の化合物は、例えば水素イオン濃度やアニオン濃度によって、それぞれの元素に対する親和性が変化するため、特定の元素を選択的に抽出することも可能となる。図3は、酸性水溶液にモリブデン及びジルコニウムから選択される抽出対象元素と非抽出対象元素である
スカンジウム、イットリウム、及びランタノイド、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムの分配比(D)と2-ヒドロキシ-N,N-(ジドデシル)アセトアミ
ド濃度との関係を表したグラフである。この結果から、抽出対象元素を抽出し、非抽出対象元素と分離することにも利用することができる。

【0053】
なお、酸性水溶液が、モリブデンやジルコニウムから選択される抽出対象元素とスカンジウム、イットリウム、及びランタノイド、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムから選択される非抽出対象元素とを含み、抽出対象元素を抽出して、非抽出対象元素と分離する態様は、本発明の抽出方法の好ましい態様の1つである。かかる態様は、言い換えれば下記のように表現することができる。

【0054】
モリブデンやジルコニウムから選択される抽出対象元素とスカンジウム、イットリウム、及びランタノイド、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムから選択される非抽出対象元素を含む酸性水溶液を準備する準備工程、並びに一般式(A)で表される化合物の存在下、前記準備工程で準備した酸性水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象元素を抽出し、非抽出対象元素と分離する液液接触工程を含むことを特徴とする、モリブデン及び/又はジルコニウムの分離方法。

【0055】
非抽出対象元素であるとしては、スカンジウム、イットリウム、及びランタノイド、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ウラン等が挙げられる。
モリブデン(Mo)やジルコニウム(Zr)と、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(Lu)との分離は、特に困難であるが、これらの元素の分配比(後述の実施例1を参照。)に差が出る、即ちこれらの元素同士について十分な分離係数(後述の実施例1を参照。)が得られることを本発明者らは明らかとしている。特に分配比と分離係数が高くなるように、抽出装置、有機溶媒、添加剤等を選択することによって、これらを効率良く抽出分離することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0057】
<合成例>
下記式で表される2-ヒドロキシ-N,N-ジドデシルアセトアミド(以下、「DDdHAA
」と略す場合がある。)はトルエン溶媒中で、ジドデシルアミンと2,2-ジメチル-1,3-ジ
オキソラン-4-オンを反応させることにより合成した。得られた2-ヒドロキシ-N,N-ジドデシルアセトアミドのH-NMRスペクトルと質量分析スペクトルの結果を図1,2に示す。
【化8】
JP2019173071A_000010t.gif
【実施例】
【0058】
<実施例1:モリブデンやジルコニウムとスカンジウムとカンジウム、イットリウム及びランタノイド(ランタン、ネオジム、ユウロピウム)、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ウランとの抽出分離(分配比の抽出剤濃度依存性)>
3価のスカンジウムイオン(Sc(III))、3価のイットリウムイオン(Y(III))、及び種々の3価のランタノイドイオン(ランタンイオンLa(III),ユウロピウムイオンEu(III),ネオジムイオンNd(III))を濃度約1ppm含んだ3.0Mの硝酸水溶液と、DDdHAAをそれぞれ所定の濃度(0.01~0.1M)含んだn-ドデカン溶液をそれぞれ準備した。なお、硝酸として多摩化学工業株式会社製の超高純度分析用試薬TAMAPURE-AA-100を、希釈水として超純水製造装置(Milli-Q Merck Millipore社製)を用いて調製した超純水を、n-ドデカンとして和光純薬株式会社製の特級試薬を用いた。
【実施例】
【0059】
準備した硝酸水溶液とn-ドデカン溶液を等量(容積比)容器に投入し、振とう機(YS-8D 株式会社ヤヨイ社製)を用いて、25℃±1℃で20分間振とうした。その後、5分間遠心分離(CN-820 アズワン株式会社製)を行って相分離させ、水相と有機相からそれぞれ溶液をサンプリングし、溶液中の金属イオン濃度をICP-MS(Agilent7500cx アジレント・テクノロジー社製)により計測して、Mo(VI)、Zr(IV)、Sc(III)、Y(III)、及び3種のランタノイドイオンLn(III)、ストロンチウムイオン(II)、バリウムイオン(II)、ルテニウムイオン(III)、ロジウムイオン(III)、パラジウムイオン(III)、ウランイオン(VI)の濃度をそれぞれ定量した。得られた値から各イオンの分配比(D)を算出し、その値とDDdHAAとの関係をグラフにまとめた。結果を図3に示す。なお、分配比(D)、分離係数(SFMo/Ln)は、下記式により算出することができる。
【実施例】
【0060】
【数1】
JP2019173071A_000011t.gif
【実施例】
【0061】
図3の結果から、Mo(VI)、Zr(IV)及び種々の金属イオンの濃度の分配比は、何れもDDdHAAの増加に伴って増加することが明らかである。また、いずれの濃度であっても、Mo(VI)とZr(IV)の分離係数(SFMo/Zr)及びZr(IV)とランタノイドイオンの分離係数(SFZr/Ln)はそれぞれ、26.4以上、1987以上となり、Mo(III)とZr(III)、及びZr(III)と種々のランタノイドイオンとの分離が可能であることが明らかである。
【実施例】
【0062】
<実施例2:モリブデンやジルコニウムとスカンジウムとカンジウム、イットリウム及びランタノイド(ランタン、ネオジム、ユウロピウム)、ストロンチウム、バリウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ウランとの抽出分離(分配比の硝酸濃度依存性)>
DDdHAAの濃度を0.06Mとし、硝酸(HNO)の濃度をそれぞれ所定の濃度(0.01~3.0M)に変更した以外、実施例1と同様の方法により、Mo(VI)、Zr(IV)、及び種々の金属イオンの濃度を定量し、分配比(D)を算出して、その値と硝酸濃度との関係をグラフにまとめた。結果を図4に示す。
図4の結果から、Mo(VI)、Zr(IV)、及び種々の金属イオンの分配比は、硝酸濃度の増減に伴って増減する。また、例えば硝酸濃度3Mにおいて、Mo(VI)、Zr(IV)の分配比は、1を超える一方、種々の金属イオンの分配比は1未満となるため、Mo(VI)及びZr(IV)と、種々の金属イオンとの分離が可能であることが明らかである。
【実施例】
【0063】
<実施例3:ジルコニウム、モリブデンの抽出容量>
4価のジルコニウムイオン(Zr(IV))と6価のモリブデンイオン(Mo(VI))を所定の濃度(1~40mM)含んだ3Mの硝酸水溶液と、DDdHAAを0.05M含んだn-ドデカン溶液をそれぞれ準備した。
【実施例】
【0064】
準備した硝酸水溶液とn-ドデカン溶液を等量(容積比)容器にそれぞれ投入し、振とう機を用いて、25℃±1℃で20分間振とうした。その後、5分間遠心分離を行って相分離させ、有機相の溶液をサンプリングし、ICP-AES(ICPS-7510 株式会社島津製作所製)によりZr(IV)及びMo(VI)の濃度を定量した。準備した硝酸水溶液中のZr(IV)及びMo(VI)濃度(水相中の初期濃度)と有機相中に抽出されたZr(IV)及びMo(VI)濃度との関係をグラフにまとめた。結果を図5に示す。
図5の結果から、DDdHAAがジルコニウム、モリブデンに対して十分な抽出容量を持つことは明らかである。
【実施例】
【0065】
<実施例4:ジルコニウム及びモリブデンの抽出と逆抽出(逆抽出率の硫酸濃度依存性、過酸化水素濃度依存性、シュウ酸濃度依存性)>
4価のジルコニウムイオン(Zr(IV))及び6価のモリブデンイオン(Mo(VI))を所定の濃度を100ppm含んだ3Mの硝酸水溶液と、DDdHAAを0.05M含んだn-ドデカン溶液をそれぞれ準備した。
【実施例】
【0066】
準備した硝酸水溶液とn-ドデカン溶液を等量(容積比)容器にそれぞれ投入し、振とう機を用いて、25℃±1℃で20分間振とうした。その後、5分間遠心分離を行って相分離させ、有機相の溶液をサンプリングし、ICP-AES(ICPS-7510 株式会社島津製作所製)により、Zr(IV)及びMo(VI)の濃度を定量した。
【実施例】
【0067】
次に分離した有機相の溶液と、所定の濃度(0.3~3M)の硫酸水溶液、所定の濃度(0.1~1M)の過酸化水素水溶液、所定の濃度(0.03~0.3M)のシュウ酸水溶液、を等量(容積比)容器にそれぞれ投入し、振とう機を用いて、25℃±1℃で20分間振とうした。その後、5分間遠心分離を行って相分離させ、水相の溶液をサンプリングし、ICP-AES(ICPS-7510 株式会社島津製作所製)により、Zr(IV)及びMo(VI)の濃度を定量して、逆抽出率を決定した。結果を表1に示す。なお、逆抽出率は、下記式により算出することができる。
【実施例】
【0068】
【数2】
JP2019173071A_000012t.gif
【実施例】
【0069】
【表1】
JP2019173071A_000013t.gif
【実施例】
【0070】
表1の結果から、硫酸によってジルコニウムのみを逆抽出することができ、過酸化水素を用いることで、選択的にモリブデンを逆抽出することができる。さらに、シュウ酸では、ジルコニウム、モリブデンの両方を逆抽出することが可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の抽出方法によれば、放射性廃液や鉱石等に共存するモリブデンとジルコニウムを他の金属から分離して抽出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5