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Specification :(In Japanese)熱流束センサおよびその較正方法、被測定物の異常検知方法並びにエンジンの動作異常検知方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6622559
Publication number P2017-083206A
Date of registration Nov 29, 2019
Date of issue Dec 18, 2019
Date of publication of application May 18, 2017
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)熱流束センサおよびその較正方法、被測定物の異常検知方法並びにエンジンの動作異常検知方法
IPC (International Patent Classification) G01N  25/18        (2006.01)
G01K   7/00        (2006.01)
FI (File Index) G01N 25/18 E
G01K 7/00 381D
Number of claims or invention 7
Total pages 17
Application Number P2015-209118
Date of filing Oct 23, 2015
Date of request for substantive examination Jul 20, 2018
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】中別府 修
Representative (In Japanese)【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
Examiner (In Japanese)【審査官】野田 華代
Document or reference (In Japanese)特開昭60-201224(JP,A)
特開平02-171626(JP,A)
特開平06-066611(JP,A)
特開2011-174851(JP,A)
特開2001-165782(JP,A)
特開2007-208262(JP,A)
米国特許第07338202(US,B1)
榎本良輝,四サイクルガソリン機関の燃焼室壁への直接熱損失,日本機械学会論文集(B編),日本,1985年,51巻471号(昭60-11),3631頁-3640頁
中尾裕典,高応答遮熱壁面における瞬間熱流束計測技術,マツダ技報,日本,2015年,No.32,222頁-227頁
Field of search G01N 25/00-72
G01K 7/00
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
基板と、前記基板側から絶縁層、抵抗体層、および保護層がこの順で積層された積層構造体と、を備え、
前記抵抗体層に抵抗体が設けられており、
前記抵抗体の代表スケールが、下記(2)式を満たし、
前記代表スケール=Lとされた第1抵抗体のほかに、前記第1抵抗体の代表スケールよりも代表スケールが小さい第2抵抗体を単数または複数備え、
前記抵抗体の抵抗値に基づいて、熱流束を求めることを特徴とする熱流束センサ。
L≧4×(a/f)0.5 ・・・(2)
ただし、L;抵抗体の代表スケール(m)
a;基板の温度伝導率
f;較正用発熱変動の周波数
【請求項2】
前記抵抗体の抵抗値と、前記抵抗体の抵抗温度係数に基づいて前記抵抗体の温度変化を求める請求項1に記載の熱流束センサ。
【請求項3】
前記積層構造体は、前記保護層に積層された導電性材料による遮蔽層を備える請求項1または2に記載の熱流束センサ。
【請求項4】
前記基板の基板厚さが、下記(1)式を満たす請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の熱流束センサ。
D≧2.3×(a/f)0.5 ・・・(1)
ただし、D;基板厚さ(m)
a;基板の温度伝導率(m2/s)
f;周期変動の計測に要求されるカットオフ周波数(Hz)
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の熱流束センサの較正方法であって、
前記抵抗体に交流発熱による既知の付与熱流束を与えるとともに、前記既知の付与熱流束を与えている間における前記抵抗体の温度変化を計測し、
前記熱流束センサの伝熱モデルを用いた非定常熱伝導解析によって計測熱流束を求め、
前記付与熱流束と前記計測熱流束との比較結果に基づいて、前記熱流束センサの伝熱モデルを調整することを特徴とする熱流束センサの較正方法。
【請求項6】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の熱流束センサによって、被測定物の異常を検知する被測定物の異常検知方法であって、
前記抵抗体に対して周期的発熱を生じさせながら、前記抵抗体の温度変化を前記熱流束センサによって測定し、
前記抵抗体の温度変化量に基づいて前記被測定物の異常を検知する被測定物の異常検知方法。
【請求項7】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の熱流束センサによって、エンジンの動作異常を検知するエンジンの動作異常検知方法であって、
運転中の前記エンジンの壁面温度または壁面熱流束を前記熱流束センサによって継続的に計測し、
前記壁面温度または壁面熱流束の計測結果に基づいて前記エンジンの動作異常を検知することを特徴とするエンジンの動作異常検知方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、熱流束センサおよびその較正方法、被測定物の異常検知方法並びにエンジンの動作異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの内壁面を通過する熱流束の測定は、エンジンからの熱損失を把握するために、エンジンの研究開発において重要視されてきた。エンジンの内壁面を通過する熱流束の測定方法として、従来、同軸型熱電対センサや薄膜熱電対センサによる表面温度計測と、非定常熱伝導解析を組み合わせた測定方法がある(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】榎本良輝、他2名、”四サイクルガソリン機関の燃焼室壁への直接熱損失:(第1報,ピストンおよびシリンダライナへの熱損失)”日本機械学会論文集(B編)、50巻456号(1984)、p1972-1980
【非特許文献2】榎本 良輝、他1名”四サイクルガソリン機関の燃焼室壁への直接熱損失:(第2報,シリンダヘッドおよび吸・排気弁への熱損失)”,日本機械学会論文集(B編)51巻471号、(1985)、p3631-3640
【非特許文献3】中尾裕典、他5名”高応答遮熱壁面における瞬時熱流束計測技術”、マツダ技報、No.32(2015)、p222-227
【非特許文献4】LeFeuvre, T., Myers, P., and Uyehara, O., "Experimental Instantaneous Heat Fluxes in a Diesel Engine and Their Correlation," SAE Technical Paper 690464, 1969, doi:10.4271/690464. P1717-1738
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記各非特許文献1~4に開示された熱流束の測定方法は、熱電対で計測したエンジン内壁面の温度に非定常熱伝導解析を組み合わせたものであり、非定常熱伝導解析を行う際のセンサの構造や各層の熱物性値を含む伝熱モデルの較正方法に難点がある。このため、センサが設計通りに制作されない限り、精度の良い計測が難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被測定物の熱流束を精度良く検出することができる熱流束センサおよびその較正方法、被測定物の異常検知方法並びにエンジンの動作異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決した本発明の一実施形態に係る熱流束センサは、基板と、前記基板側から絶縁層、抵抗体層、および保護層がこの順で積層された積層構造体と、を備え、
前記抵抗体層に抵抗体が設けられており、
前記抵抗体の代表スケールが、下記(2)式を満たし、
前記代表スケール=Lとされた第1抵抗体のほかに、前記第1抵抗体の代表スケールよりも代表スケールが小さい第2抵抗体を単数または複数備え、
前記抵抗体の抵抗値に基づいて、熱流束を求めることを特徴とする熱流束センサ。
L≧4×(a/f)0.5 ・・・(2)
ただし、L;抵抗体の代表スケール(m)
a;基板の温度伝導率
f;較正用発熱変動の周波数
【0007】
エンジンなどの被測定物における熱流束を計測するにあたり、近年、表面温度を計測する手段として薄膜測温抵抗体を微細加工により形成する技術が実用可能になっている。本発明では、被測定物の壁面の熱流束センサへ微細加工技術を応用し、基板に対して、基板側から絶縁層、抵抗体が設けられた抵抗体層、および保護層がこの順で積層された薄膜状の積層構造体を備えている。この薄膜状の積層構造体における抵抗体層に設けられた抵抗体の抵抗値に基づいて、熱流束を求めることにより、例えば非定常熱伝導解析を行う際の伝熱モデルの較正を適切に行うことができる。したがって、被測定物の熱流束を精度良く検出することができる。
また、熱流束センサが上記(2)式を満たすことにより、熱流束を求める際の伝熱モデルの較正をより精度良く行うことができる。
このため、第1抵抗体の代表スケールよりも代表スケールが小さい第2抵抗体を備えることにより、第1抵抗体で較正した伝熱モデルを第2抵抗体による測定値の非定常熱伝導解析に使用することができる。特に、代表スケールLの抵抗体と小型抵抗体は同じ基板上で同じ微細加工プロセスを経て制作することにより、代表スケールLの第1抵抗体で較正した伝熱モデルを、代表スケールが小さい小型の第2抵抗体による測定値の非定常熱伝導解析に使用することができる。さらに、第2抵抗体が複数設けられていることにより、被測定物の内部の多数の点で熱流束を計測できる。このため、被測定物の内部における局所熱流束を複数の位置で計測でき、乱流熱伝達を把握することができる。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る熱流束センサは、前記抵抗体の抵抗値と、前記抵抗体の抵抗温度係数に基づいて前記抵抗体の温度変化を求めるようにしてもよい。
【0009】
このように、抵抗体で計測された抵抗値と、抵抗体の抵抗温度係数に基づいて抵抗体の温度変化を求めることにより、被測定物の熱流束を精度良く検出することができる。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る熱流束センサは、前記積層構造体は、前記保護層に積層された導電性材料による遮蔽層を備えるようにしてもよい。
【0011】
このように、積層構造体は、前記保護層に積層された遮蔽層を備えることにより、エンジン内部における電磁ノイズの影響を低減することができ、熱流束の計測分解能を高めることができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る熱流束センサは、前記基板の基板厚さが、下記(1)式を満たすようにしてもよい。
D≧2.3×(a/f)0.5 ・・・(1)
ただし、D;基板厚さ(m)
a;基板の温度伝導率(m2/s)
f;周期変動の計測に要求されるカットオフ周波数(Hz)
【0013】
熱流束センサが上記(1)式を満たすことにより、被測定物における熱流束に周期変動が生じる場合の要求周波数以上の熱流束の周波数成分を精度良く検出することができる。ここで、周期変動のカットオフ周波数は、被測定物における熱流束が周期的に生じている場合における周期変動である。例えば、被測定物がエンジンである場合には、エンジンの回転周波数が周期変動となり、カットオフ周波数fは、エンジンの周期変動の計測に要求されるカットオフ周波数である。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る熱流束センサの較正方法は、上記の熱流束センサの較正方法であって、
前記抵抗体に交流発熱による既知の付与熱流束を与えるとともに、前記既知の付与熱流束を与えている間における前記抵抗体の温度変化を計測し、
前記熱流束センサの伝熱モデルを用いた非定常熱伝導解析によって計測熱流束を求め、
前記付与熱流束と前記計測熱流束との比較結果に基づいて、前記熱流束センサの伝熱モデルを調整することを特徴とする。
【0019】
このように、抵抗体に交流発熱による既知の付与熱流束を与えるとともに、既知の付与熱流束を与えている間における抵抗体の温度変化から非定常熱伝導解析によって計測熱流束を計測している。この計測熱流束が付与熱流束に一致するように伝熱モデルを調整するので、精度の良い伝熱モデルを生成することができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る被測定物の異常検知方法は、上記の熱流束センサによって、被測定物の異常を検知する被測定物の異常検知方法であって、
前記抵抗体に対して周期的発熱を生じさせながら、前記抵抗体の温度変化を前記熱流束センサによって測定し、
前記抵抗体の温度変化量に基づいて前記被測定物の異常を検知することを特徴とする。
【0021】
このように、抵抗体に対して周期的発熱を生じさせながら、前記抵抗体の温度変化を前記熱流束センサによって測定し、抵抗体の温度変化量に基づいて前記被測定物の異常を検知することにより、熱流束センサを用いて被測定物の異常を検出することができる。なお、被測定物の異常としては、例えば非測定物がエンジンである場合、エンジンの内壁面の付着物の状態変化がある。この場合、エンジンの内壁面に対する付着物の発生のよる異常を検知することができる。エンジンの内壁面に対して油や煤などの付着物が増加した場合には、温度変化量が低下する。このような異常を検知した場合には、エンジンの効率が低下する可能性があるので、例えば走行制御を行う際の制御態様を調整するなど対応を行うことができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係るエンジンの動作異常検知方法は、上記の熱流束センサによって、エンジンの動作異常を検知するエンジンの動作異常検知方法であって、
運転中の前記エンジンの壁面温度または壁面熱流束を前記熱流束センサによって継続的に計測し、
前記壁面温度または壁面熱流束の計測結果に基づいて前記エンジンの動作異常を検知することを特徴とする。
【0023】
このように、エンジンの運転中の壁面温度または壁面熱流束を前記熱流束センサによって継続的に計測し、壁面温度または壁面熱流束の計測結果に基づいてエンジンの動作異常を検知することにより、熱流束センサを用いてエンジンの異常作動を検出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る熱流束センサおよびその較正方法、被測定物の異常検知方法並びにエンジンの動作異常検知方法によれば、被測定物(エンジン)の熱流束を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)は、一実施形態に係る熱流束センサの側断面図、(B)は、その熱流束センサにおける抵抗体層を平面視した説明図である。
【図2】熱流束センサが取り付けられたエンジンの側断面図である。
【図3】伝熱モデルの説明図である。
【図4】熱流束計測の較正手順を示す図である。
【図5】熱流束の計測手順を示す図である。
【図6】実施例1の実験に用いた熱流束センサの要部概略図である。
【図7】実施例1の結果を示すグラフである。
【図8】実施例2の実験に用いた実験装置の概略図である。
【図9】実施例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る熱流束センサについて、図面を参照して具体的に説明する。

【0027】
図1(A)は、一実施形態に係る熱流束センサの側断面図、(B)は、その熱流束センサにおける抵抗体層を平面視した説明図である。図2は、熱流束センサが取り付けられたエンジンの側断面図である。熱流束センサ1は、例えば図2に示すように、エンジン5に取り付けられ、エンジン5における燃焼室51内の熱流束を検出する。図1に示すように、本実施形態に係る熱流束センサ1は、基板10および積層構造体20を備えている。また、基板10は、アダプタ40に収容されており、アダプタ40を介してエンジン5に取り付けられている。

【0028】
基板10は、エンジン5におけるエンジンブロック52を構成する材料と共通する材料で構成されている。基板10をエンジンブロック52と共通する材料で構成することにより、エンジン壁面の熱流束の計測精度を高めることができる。本実施形態では、エンジンブロック52はアルミニウム合金で形成されており、基板10もアルミニウム合金で形成されている。また、エンジン5のエンジンブロック52や熱流束センサ1の基板10は、鋳鉄であってもよい。また、エンジン5のエンジンブロック52や熱流束センサ1の基板10とは異なる材料で構成されていてもよい。基板10に用いられる材料としては、上記のアルミニウム合金や鋳鉄のほか、銅合金,真鍮,ステンレス鋼,炭素鋼,シリコンなどを挙げることができる。また、基板10をエンジンブロック52と異なる材料で構成する場合には、エンジンブロック52の材料と温度伝導率aが近い材料とすることが好適である。

【0029】
熱流束センサ1における基板10は、エンジン5の回転周波数以上の周波数の壁面熱流束を計測対象としており、基板10の基板厚さDは、下記(1)式を満たす厚さとされている。
D≧2.3×(a/f)0.5 ・・・(1)
ただし、D;基板厚さ(m)
a;基板の温度伝導率(m2/s)
f;周期変動の計測に要求されるカットオフ周波数(Hz)

【0030】
具体的に、本実施形態においては、基板厚さD=4(mm)、基板温度の温度伝導率a=50×10-6(m2/s)、カットオフ周波数f=16.7(Hz)である。表面温度データから熱伝導解析で熱流束を算出する手法には、熱流束の高周波数成分は正しく得られ、低周波数成分は減衰するハイパスフィルタの特性がある。このため、熱流束センサ1では、基板10の基板厚さDが上記(1)式を満たすことにより、熱流束に周期変動が生じるエンジン5における要求周波数以上の熱流束の周波数成分を精度良く計測できる。なお、基板厚さDについて、要求周波数以上の熱流束の周波数成分を精度良く計測するための上限は設定されないが、例えば熱流束センサ1が取り付けられるエンジンの部材の幅以下の厚さを上限とすることができる。また、要求周波数とは、被測定物における熱流束の変動周期によって定められ、本実施形態では、エンジンの回転周波数に基づいて定められる。

【0031】
基板10には、積層構造体20が設けられている。積層構造体20は、絶縁層21、抵抗体層22、保護層23、および遮蔽層24を備えている。このうち、絶縁層21と保護層23とは、厚さがマイクロメートルレベルの誘電体であり、遮蔽層24は、サブミクロンレベルの厚さの導電体である。絶縁層21、保護層23、および遮蔽層24の厚さおよび材質は、これらのものが望ましいが、他の厚さおよび材質であってもよい。

【0032】
基板10には、絶縁層21が積層され、絶縁層21には抵抗体層22が積層されている。また、抵抗体層22には保護層23が積層され、保護層23には遮蔽層24が積層されている。こうして、絶縁層21、抵抗体層22、保護層23、および遮蔽層24は、基板側からこの順で積層されている。

【0033】
絶縁層21は、絶縁材料で形成されており、絶縁層21に用いられる材料としては、上記の酸化シリコン膜のほか、例えば酸化アルミ膜、窒化シリコン膜、炭化シリコン膜を挙げることができる。また、絶縁層21の厚さは、0.5~2(μm)とするのが望ましい。また、抵抗体層22は、導電性の材料で形成されており、抵抗体層22に用いられる材料としては、例えば、白金、ニッケル、純鉄、タングステンを挙げることができる。

【0034】
図1(A)に示す抵抗体層22は、図1(B)に示す抵抗体25と薄膜配線31,32を備えている。抵抗体25は、測温部となるものであり、図1(A)に示すように、直線が複数回折り返されて形成された第1抵抗体25Aと、第1抵抗体25Aよりも代表スケールが小さい2つの第2抵抗体25Bを備えている。第1抵抗体25Aおよび第2抵抗体25Bには、いずれも電流用薄膜配線31および電圧用薄膜配線32が接続されている。電流用薄膜配線31および電圧用薄膜配線32は、いずれも駆動・計測回路60に接続されている。

【0035】
第1抵抗体25Aは、抵抗値100(Ω)レベル、温度係数0.002(1/K)レベル以上のものが汎用的で好適である。また、第2抵抗体25Bについても、抵抗値および温度係数は同様である。また、第1抵抗体25Aにおける抵抗体外形の代表スケールLは、下記(2)を満たす長さとされている。
L≧4×(a/f)0.5 ・・・(2)
ただし、L;抵抗体の代表スケール(m)
a;基板の温度伝導率(m2/s)
f;較正用発熱変動の周波数

【0036】
なお、代表スケール(代表長さ)とは、等価直径であり、本実施形態の第1抵抗体25Aのように、外形が長方形をなす場合には、代表スケールLは、下記(3)式で表すことができる。
L=(4×面積÷周長) ・・・(3)

【0037】
具体的に、第1抵抗体25Aは、外形を正方形とし、較正用発熱変動の周波数f=1000Hz、基板の温度伝導率a=60×10-6(m2/s)、代表スケールL=1(mm)とされている。抵抗体の代表スケールL(m)が、上記(2)式を満たす長さとされていることにより、熱流束計測の較正に一次元非定常熱伝導解析を好適に適用することができる。また、第2抵抗体25Bは、第1抵抗体25Aよりも代表スケールが小さい抵抗体である。

【0038】
抵抗体層22に積層された保護層23は、絶縁材料で形成されており、保護層23に用いられる材料としては、上記の酸化シリコン膜のほか、例えば、酸化アルミ膜、窒化シリコン膜、炭化シリコン膜を挙げることができる。また、絶縁層21および保護層23は、共通の材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。また、保護層23の厚さは、0.5~2(μm)とするのが望ましい。

【0039】
さらに、保護層23に積層された遮蔽層24は、保護層23の表面全体を覆っている。遮蔽層24に用いられる材料としては、上記のニッケル膜のほか、例えばクロム、アルミ、チタン、タングステン、銅を挙げることができる。また、遮蔽層24の厚さは、0.1~1(μm)とするのが望ましい。また、遮蔽層24は、基板10に電気的に接続され、基板10は、グランド電位に電気的に接続されている。この遮蔽層15によって、保護層23、抵抗体層22、および絶縁層21がエンジン5における燃焼室51内の電磁ノイズから保護されている。

【0040】
また、絶縁層21、抵抗体層22、保護層23および遮蔽層24の単位面積あたりの熱抵抗の総和が10K/(MW/m2)以下になるものとすることが好適である。具体的には、絶縁層21と保護層23とには、厚さ2μmの酸化シリコン膜を用い、遮蔽層24には厚さ0.5μmのニッケル膜を用いることができる。各層の単位面積あたりの熱抵抗の総和が10K/(MW/m2)以下になるものとすることにより、エンジン5の内壁面の熱流束を例えば誤差2%以内で計測することができる。

【0041】
また、基板10には、厚さ方向に貫通する貫通孔26が形成されており、貫通孔26には、貫通配線33が挿通しており、基板10の表面側における薄膜配線31,32と、基板の裏面側における配線34とをつないでいる。さらに、貫通孔26には、絶縁物27が充てんされており、貫通孔26内に挿通された貫通配線33を基板10と導通しないように保護している。なお、薄膜配線31,32の一端は、抵抗体25A,25Bに接続され、他端は貫通配線33に接続されている。配線34の一端は貫通配線33に接続され、他端は駆動・計測回路60に接続されている。抵抗体25A,25Bは、薄膜配線31,32、貫通配線33、配線34を介して駆動・計測回路60に接続されていることにより、積層構造体20から浮いた配線をなくしている。このため、積層構造体20の表面をエンジンの壁面に対して面一となりやすくすることができる。

【0042】
駆動・計測回路60は、電源を備えており、抵抗体25A,25Bに対して電流を供給する。また、駆動・計測回路60は、電流計および電圧計を備えており、抵抗体25A,25Bに供給する電流の電流値および電圧値を計測している。また、駆動・計測回路60は、計測した電流値および電圧値から抵抗体25A,25Bの抵抗値を計測する。

【0043】
駆動・計測回路60には、データ収集装置70が接続され、データ収集装置70には、演算装置であるコンピュータ80が接続されている。駆動・計測回路60は、抵抗体25A,25Bの抵抗値をデータ収集装置70に記憶させる。コンピュータ80では、データ収集装置70に記憶された抵抗体25A,25Bの抵抗値と、抵抗体25A,25Bの抵抗温度係数および基準抵抗値に基づいて、抵抗体25A,25Bの温度変化を算出する。また、算出した温度変化に基づいて一次元非定常熱伝導解析を行って熱流束を求める。

【0044】
熱流束センサ1が取り付けられるエンジン5は、図2に示すように、上記の燃焼室51およびエンジンブロック52のほか、吸気バルブ53、排気バルブ54、および図示しない点火プラグを備えている。また、エンジン5は、燃焼室51内を上下するピストン56およびピストン56を上下動させるコンロッド57を備えている。

【0045】
本実施形態において、熱流束センサ1は、エンジン5における排気バルブ54の近傍におけるエンジンブロック52に埋め込まれて取り付けられているが、エンジン5の他の位置に取り付けられていてもよい。例えば、エンジンブロック52における点火プラグの側方や、ピストン56の上面に取り付けられていてもよい。

【0046】
熱流束センサ1は、積層構造体20がエンジン5の燃焼室51に露出する形でエンジン5に取り付けられている。また、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)は、取り付けられたエンジンの燃焼室51の内面に対して面一となるようにされている。このため、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)は、たとえば、燃焼室51における側方に取り付けられる際には、エンジンブロック52の内側に形成されるシリンダの側壁の曲面に沿った曲面状としてもよい。また、ピストン56に取り付けられる場合などは、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)は、平面状としてもよい。ただし、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)と面一とされるシリンダの形状は、共通する必要はなく、例えば熱流束センサ1がシリンダの側壁に取り付けられる場合に、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)の形状を平面状としてもよい。また、積層構造体20における表面(遮蔽層24の表面)は、取り付けられたエンジンの燃焼室51に対して面一となるようにされているが、面一ではなく、表面から若干出っ張ったり、逆に引っ込んだりした態様であってもよい。

【0047】
以上の構成を有する熱流束センサ1では、積層構造体20における抵抗体25の抵抗値に基づいて、熱流束を求めている。このため、非定常熱伝導解析を行う際の伝熱モデルの較正を適切に行うことができる。したがって、被測定物の熱流束を精度良く検出することができる。また、積層構造体20における抵抗体25A,25Bは、遮蔽層24によって覆われている。このため、エンジン5における燃焼室51の熱流束を測定する際に、燃焼室51の電磁ノイズから保護層23や抵抗体層22などを保護することができる。

【0048】
また、熱流束を計測するにあたり、熱流束の定量性を較正することが求められる。熱流束の定量性の較正としては、例えば黒体炉からの放射やレーザ光の照射に対して測定熱流束を合わせる調整が行われる。しかし、センサ表面の吸収率の推定が困難であり、光エネルギーの入力量を正確に把握することが難しいため、熱流束の定量性に懸念がある。この点、本実施形態の熱流束センサ1では、積層構造体20における抵抗体25で発熱させ、計測した抵抗値に基づいて熱流束の定量性の較正を行っている。このため、センサ表面の吸収率の推定や光エネルギーの入力量の把握を行うことなく熱流束の定量性の較正を行うことができるので、精度の良い非定常熱伝導解析が可能となる。また、エンジン5に熱流束センサ1を設ける場合には、レーザ光などを用いた較正を行うことは困難であるが、抵抗体で発熱させた熱流束と抵抗値に基づいて熱流束の定量性の較正を行うことにより、エンジン5に設けた熱流束センサ1における熱流束の定量性の較正を容易に行うことができる。

【0049】
エンジン5の運転中、熱流束センサ1の表面には、油や煤が付着することがある。また、熱流束センサ1を長期間使用すると、経時変化によるセンサ内部の伝熱特性の変化により、計測値に誤差が生じる場合がある。このような誤差を排除するためには、熱流束センサの再較正を行うことが好適である。ところが、従来のレーザ光などを用いた較正はエンジンの運転中に実行することができず、エンジンの運転中の計測値の正確性を検証することができない。この点、本実施形態の熱流束センサ1では、エンジンの運転中にも熱流束センサ1の再較正を実行することができる。したがって、エンジンの運転中の計測値の正確性を検証することができる。さらには、エンジンの運転中に潤滑状況や燃焼状況を正確に検出することができる。したがって、省エネルギー運転などの目的を持った運転制御を実行する際に、理想的な省エネルギー運転に近づけることができる。

【0050】
また、エンジン5の内部は、火炎の電気伝導性、各種のラジカルの存在、点火プラグからの放電により電磁ノイズが高いレベルとなり、抵抗体25による温度計測に障害が生じる場合がある。この場合、保護層23の上に導電性材料による遮蔽層24を形成し、遮蔽層24をグランド電位の基板と電気的に接続されている。このため、遮蔽層24によって電磁ノイズを低減できるので、ノイズを低減した壁面温度の測定ができ、熱流束の計測分解能を高めることができる。

【0051】
次に、本実施形態における熱流束センサ1を用いた熱流束の計測について説明する。熱流束センサ1では、計測された第1抵抗体25Aの抵抗値に基づいて、一次元非定常熱伝導解析に用いる伝熱モデルの較正を行い、較正された伝熱モデルと、計測された第2抵抗体25Bの抵抗値に基づいて熱流束を計測する。そこで、伝熱モデルについて説明し、続いて、伝熱モデルの較正の手順を説明し、さらに続いて、熱流束の計測の手順について説明する。

【0052】
熱流束センサ1を用いた熱流束の計測では、第2抵抗体層22Bで測定された表面温度から、熱流束センサ1の構造および伝熱特性を反映した伝熱モデルの一次元非定常熱伝導解析を通し、熱流束が算出される。熱流束センサ1の伝熱モデルは、図3に示す構成をなし、保護層23における保護層熱抵抗Rh、抵抗体層22におけるセンサ層熱抵抗Rt、抵抗体層22と絶縁層21の間の界面における界面熱抵抗28の熱抵抗Ri、絶縁層21における絶縁層熱抵抗Rz、基板10における基板層熱抵抗Rkを備える。

【0053】
伝熱モデルを非定常熱伝導方程式に反映させるには、各層の厚さd、密度ρ、比熱c、熱伝導率λを与える。これらの数値について、較正によって、抵抗体層22と絶縁層21の間の界面熱抵抗Riと絶縁層21の熱容量を調整する。熱伝導解析では、一次元非定常熱伝導方程式を離散化した離散化式を代数的に解く。境界条件は、熱流束センサ1の表面には、抵抗体層22で測定された測定温度を与え、背面に断熱条件を与える。この解析により、熱流束センサ1内の温度分布に時系列データを得る。最後に、温度分布を用いて、熱流束センサ1が持つ単位面積当たりの総熱量の時間微分を計算して熱流束が算出される。一次元非定常熱伝導方程式は、下記(4)式で与えられる。
【数1】
JP0006622559B2_000002t.gif
ここで、ρ:密度
c:比熱
λ:熱伝導率
T:温度
t:時間
x:厚さ方向距離

【0054】
図3に示す伝熱モデルでは、各層の温度は、上記(4)式に示す一次元非定常熱伝導方程式に従うモデルと化し、各層の厚さd、密度ρ、比熱c、熱伝導率λを与える。

【0055】
次に、熱流束計測の較正について説明する。熱流束計測の較正は、伝熱モデルの較正であり、図4に示す手順で行う。まず、第1抵抗体25Aに対して、電圧信号Vexc.(t)、電流信号Iexc.(t)の交流電流を供給して、第1抵抗体25Aの周期的発熱を生じさせる(S1)。この周期的発熱を生じさせるまでが、いわば実験工程となる。また、以後のS7までの工程は解析工程となる。このとき、既知の付与熱流束qexc.(t)を与え(S2)、周期的発熱による第1抵抗体25Aの温度変化Tmeas.(t)を測定する(S3)。

【0056】
次に、測定した温度変化のデータを用いて、伝熱モデルの一次元非定常熱伝導解析を行い(S4)、算出熱流束qmeas.(t)を算出する(S5)。なお、一次元非定常熱伝導解析を行う際の伝熱モデルは、熱流束センサ1の基板10及び積層構造体20の各層の厚さ、温度伝導率等のセンサ情報(S11)の設計値に基づいて定められる設計伝熱モデルが伝熱モデルのデフォルトとして設定される(S12)。

【0057】
それから、S2で与えた付与熱流束qexc.(t)と、S5で算出した算出熱流束qmeas.(t)とを比較し、付与熱流束qexc.(t)と算出熱流束qmeas.(t)と差の絶対値が判定値未満となっているか否かを判定する(S6)。なお、判定値は、例えば付与熱流束qexc.(t)または算出熱流束qmeas.(t)の1%とすればよく、1%の値から適宜上下させた値としてもよい。例えば、判定値は、付与熱流束qexc.(t)または算出熱流束qmeas.(t)の例えば2%としてもよいし、0.5%としてもよい。

【0058】
ここで、付与熱流束qexc.(t)と算出熱流束qmeas.(t)と差の絶対値が付与熱流束qexc.(t)または算出熱流束qmeas.(t)の1%未満となっていないと判定された場合には(S6:NO)、伝熱モデルを修正する(S7)。伝熱モデルを修正するにあたり、算出熱流束qmeas.(t)の方が大きい場合は伝熱モデルの界面熱抵抗を減らし、算出熱流束qmeas.(t)の方が小さい場合は界面熱抵抗を増やす調整をする。続いてS4に戻り、伝熱モデルの一次元非定常熱伝導解析を再度行う。

【0059】
S6において、付与熱流束qexc.(t)と算出熱流束qmeas.(t)と差の絶対値が付与熱流束qexc.(t)または算出熱流束qmeas.(t)の1%未満となっていると判定されるまで、S4~S7までの工程を繰り返す。そして、付与熱流束qexc.(t)と算出熱流束qmeas.(t)と差の絶対値が付与熱流束qexc.(t)または算出熱流束qmeas.(t)の1%未満となっていると判定された場合に(S6:YES)、較正済の伝熱モデルが生成されて(S8)、伝熱モデルの較正が完了する。なお、熱流束センサ1の伝熱モデルの較正は、エンジン5の停止中および運転中のいずれにも行うことができる。

【0060】
次に、熱流束の計測の手順について説明する。熱流束の計測では、図5に示すように、抵抗体の抵抗値を計測する計測プロセスと、温度変化や熱流束を算出する解析プロセスと、が行われる。計測プロセスでは、熱流束センサ1における第2抵抗体25Bにおける温度変化に基づいて行う。熱流束の計測を行う際には、図5に示すように、第2抵抗体25Bの抵抗値を計測して、抵抗信号Rmeas.(t)を得る(S21)。

【0061】
続く解析プロセスでは、計測した抵抗値から第2抵抗体25Bの温度変化Tmeas.(t)を算出する(S22)。第2抵抗体25Bの温度変化は、第2抵抗体25Bの抵抗値と、第2抵抗体25Bの抵抗温度係数に基づいて算出する。続いて、算出した第2抵抗体25Bの温度変化と、較正した伝熱モデルを用いて、一次元非定常熱伝導解析を行う(S23)。この一次元非定常熱伝導解析によって、計測熱流束を求める(S24)。

【0062】
また、本実施形態においては、熱流束センサ1においてエンジン5の熱流束を計測するにあたり、第1抵抗体25Aで計測した抵抗値に基づいて、伝熱モデルの較正をしている。第1抵抗体25Aは、代表スケールが上記(2)式を満たす長さとされている。このため、熱流束を計測する際の伝熱モデルの較正を精度良く行うことができる。

【0063】
また、第1抵抗体25Aで計測された抵抗値および温度変化を用いて較正された伝熱モデルと、第2抵抗体25Bで計測した抵抗値に基づいて、熱流束を計測している。ここで、伝熱モデルを較正するための抵抗値を計測した第1抵抗体25Aと、エンジン5の熱流束を計測するための抵抗値を計測する第2抵抗体25Bは、共通の基板10において、絶縁層21に積層され、さらには、保護層23および遮蔽層24が積層されている。このように、共通した環境で第1抵抗体25Aおよび第2抵抗体25Bが形成されている。このため、第1抵抗体25Aで計測した抵抗値に基づいて較正された伝熱モデルと、第2抵抗体25Bで計測された抵抗値とによって、精度良く熱流束を計測することができる。また、第1抵抗体25Aは代表スケールLが上記(2)式を満たす長さとされている。さらに、第2抵抗体25Bは、基板10に対して複数設けられており、エンジン5の燃焼室51における複数の点で抵抗値および温度変化を計測することができる。このため、燃焼室51内における局所熱流束を複数の位置で計測することができ、乱流熱伝達を把握することができる。

【0064】
このように、本実施形態に係る熱流束センサ1においては、積層構造体20における抵抗体25の抵抗値に基づいて、熱流束を求めている。このため、非定常熱伝導解析を行う際の伝熱モデルの較正を適切に行うことができ、エンジンの熱流束を精度良く検出することができる。また、計測された抵抗体25の抵抗値と、抵抗体25の抵抗係数に基づいて抵抗体層の温度変化を求めている。したがって、エンジンの熱抵抗をさらに精度良く検出することができる。

【0065】
また、積層構造体20は、保護層23に積層された導電性材料による遮蔽層24を備えている。遮蔽層24はエンジンの燃焼室51内における電磁ノイズから保護層23や抵抗体層22などを保護している。このため、抵抗体25で抵抗値を測定する際の電磁ノイズの影響を小さくすることができるので、熱流束の計測分解能を高めることができる。

【0066】
さらに、基板10の基板厚さDが、上記(1)式を満たしている。このため、エンジン5の周波数である要求周波数以上の熱流束の周波数成分を精度良く検出することができる。また、抵抗体の代表スケールが上記(2)式を満たしている。したがって、熱流束を計測する際の伝熱モデルの較正をより精度良く行うことができる。

【0067】
また、本実施形態に係る熱流束センサ1は、燃焼室51内の熱流束の計測に用いるほか、エンジン5の異常の判定に利用することもできる。以下、熱流束センサ1をエンジン5の異常の判定に利用する態様について説明する。エンジン5の運転中に燃焼室51の内壁面に油や煤が付着した場合には、エンジン5の燃焼不良の原因などとなりえることから、エンジン5の状態が低下してエンジン5に異常が発生してしまうことがある。このような燃焼室51内における油や煤の付着についての状態判定を行うことが困難であった。また、エンジン5の燃焼状態が安定せず、例えば異常燃焼等があった場合には、省エネルギー運転の妨げとなることがあった。

【0068】
これらの問題に対して、熱流束センサ1の抵抗体25に周期的に交流電流を供給し、抵抗体25に周期的発熱を生じさせながら抵抗体25の温度変化を継続的に計測することができる。具体的には、抵抗体25に正弦波の交流電流を供給し、温度変化信号中の3倍高調波信号をロックインアンプで検出し、監視することによってエンジン5の異常を検知する。この場合、抵抗体25の温度変化量が所定のしきい値を超えた場合にエンジン5の異常を検知することができる。エンジンの異常としては、例えば、エンジン5の内壁面の付着物の状態変化がある。この場合、エンジン5の内壁面に対する付着物の発生のよる異常を検知することができる。このような異常を検知した場合には、エンジンの効率が低下する可能性があるので、例えば走行制御を行う際の制御態様を調整するなどの対応を行うことができる。

【0069】
また、他の監視方法として、本実施形態に係る熱流束センサ1を用いることにより、エンジン5の燃焼室51内の監視を行うことができる。具体的に、熱流束センサ1によって継続して抵抗体25の温度データまたは熱流束データを継続的に計測し、正常運転時のデータと比較することで、エンジン5の動作異常を判定することができる。正常運転時のデータとしては、予め記憶されたデータを用いることができるし、過去の履歴に基づくデータを用いることもできる。具体的な動作異常の判定の手順としては、所定時間ごとのサイクルで抵抗体25の温度または熱流束を継続的に計測し、直近のサイクルにおける温度データまたは熱流束データを、過去数サイクルの温度データまたは熱流束データと比較する。これらのデータ差が所定のしきい値を超える場合に、異常燃焼等があったと判定することができる。さらには、検出した異常に対してエンジンの運転条件を制御することで、正常な動作を継続することができる。また、異常の情報を蓄積・分析することによりエンジン5のトラブル防止およびトラブル改善に活用することができる。
【実施例】
【0070】
次に、本実施形態に係る熱流束センサ1の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1では、熱流束センサによって計測した抵抗体25の周期的発熱と温度変化に基づく伝熱モデルの較正の実験例について説明する。実験では、図6に示す抵抗体25および薄膜配線31,32を備える熱流束センサを用いた。実験に用いた熱流束センサにおいては、基板に厚さ0.2mmのシリコンを用い、絶縁層に厚さ2μmの酸化シリコンを用いた。また、絶縁層に積層された抵抗体層22は、外形1mmの正方形をなし、配線幅25μm、配線間隔25μmとされている。また、抵抗体25の抵抗値は210Ωであり、抵抗体層22の温度係数は0.0022(1/K)である。
【実施例】
【0071】
伝熱モデルは、基板、絶縁層、抵抗体層のセンサ構造と、これらを構成する材料の標準物性値を採用して作成した。また、較正作業として、周波数1000Hzの矩形波状の周期的発熱を抵抗体層22に与え、抵抗体層22の温度を測定して、測定熱流束と付与熱流束が一致するように、抵抗体層22と絶縁層との間における界面熱抵抗を調整した。較正の結果、界面熱抵抗は2.7K/(MW/m2)を導入した。
【実施例】
【0072】
図7に較正時の付与熱流束q_cal(±355kW/m2の矩形波)と測定温度ΔT_exc、較正の後の測定熱流束q_ excを示す。図7から分かるように、較正時の付与熱流束q_calと、高周波ノイズを除く較正後の測定熱流束q_ excは、近似する波形となった。また、較正時の付与熱流束q_calと、較正後の測定熱流束q_ excとの差は、付与熱流束q_calの1.4%となった。この結果から、伝熱モデルの較正によって精度の高い計測を行うことができる伝熱モデルに較正されていることが分かった。
【実施例】
【0073】
[実施例2]
実施例2では、実施例1に示した熱流束センサ1を用いて、ブタンガス・空気の予混合燃焼場での熱流束センサ1による温度変化および熱流束の計測例を示す。図8に示すように、実験装置4は、開放容器41を備えている。開放容器41の容量は、0.51リットルである。開放容器41には、点火プラグ42が取り付けられている。また、開放容器41の下端に熱流束センサ1が取り付けられている。
【実施例】
【0074】
図8に示す開放容器41内に、当量比1.2の予混合気を満たし、点火プラグ42の放電で着火、熱流束センサ1の表面温度Twおよび熱流束qwを測定した。また、熱流束についての積算値ewを算出した。その測定結果を図9に示す。なお、熱流束qwの計測点10点の移動平均値qw_avg10を合わせて示す。
【実施例】
【0075】
図9に示す計測結果では、火炎がセンサ面に到達する約80msの時間から熱流束センサの表面温度は上昇し、熱流束は約230kW/m2の最高値を取る鋭いピークを示した。またその後の約30msの時間で熱流束が収束していくことが分かった。このように、熱流束センサ1を用いることで、開放容器41内における予混合燃焼場の熱流束を計測することができることが分かった。
【実施例】
【0076】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…熱流束センサ
4…実験装置
10…基板
20…積層構造体
21…絶縁層
22…抵抗体層
23…保護層
24…遮蔽層
25…抵抗体
25A…第1抵抗体
25B…第2抵抗体
26…貫通孔
27…絶縁物
28…界面熱抵抗
31…電流用薄膜配線
32…電圧用薄膜配線
33…貫通配線
34…配線
40…アダプタ
41…開放容器
42…点火プラグ
5…エンジン
51…燃焼室
52…エンジンブロック
53…吸気バルブ
54…排気バルブ
56…ピストン
57…コンロッド
60…駆動・計測回路
70…データ収集装置
80…コンピュータ(演算装置)
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8