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明細書 :モータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-023035 (P2021-023035A)
公開日 令和3年2月18日(2021.2.18)
発明の名称または考案の名称 モータ
国際特許分類 H02K   1/12        (2006.01)
H01F   1/26        (2006.01)
H01F   1/153       (2006.01)
H01F   5/00        (2006.01)
H01F  27/28        (2006.01)
H01F  27/255       (2006.01)
H02K   1/02        (2006.01)
FI H02K 1/12 B
H01F 1/26
H01F 1/153 175
H01F 5/00 D
H01F 5/00 E
H01F 5/00 R
H01F 27/28 123
H01F 27/28 147
H01F 27/255
H02K 1/02 B
H02K 1/02 Z
H02K 1/02 A
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2019-138421 (P2019-138421)
出願日 令和元年7月29日(2019.7.29)
発明者または考案者 【氏名】水野 勉
【氏名】佐藤 光秀
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5E041
5E043
5H601
Fターム 5E041AA01
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA11
5E041BB03
5E041BD03
5E041BD09
5E041CA04
5E043AB01
5E043AB02
5H601AA28
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE27
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB13
5H601GB34
5H601GB49
5H601HH02
要約 【課題】高速動作に適した高効率で高トルクまたは高パワーを発生することができる小型のモータを提供する。
【解決手段】本モータは、ヨークに巻回した導線2が設けられたコアレス構造の固定子1と、前記固定子に対向するように永久磁石3が設けられた可動子を有するモータであって、任意の巻回における前記導線と、前記可動子の可動方向に隣接する巻回における前記導線との間に軟磁性体21が設けられたことを特徴とする。前記軟磁性体は樹脂に磁性粉を混ぜて固化させた磁性コンポジット材料であってもよい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨークに巻回した導線が設けられたコアレス構造の固定子と、前記固定子に対向するように永久磁石が設けられた可動子を有するモータであって、
任意の巻回における前記導線と、前記可動子の可動方向に隣接する巻回における前記導線との間に軟磁性体が設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記軟磁性体は、電磁鋼板、ナノ結晶板、圧粉、磁性コンポジット材のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記磁性コンポジット材はバインダに磁性粉を混ぜて固化させたものであることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記磁性粉はFe系アモルファス、純鉄、Fe-Si、ナノ結晶、センダストのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記導線の断面は平角形状であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
前記導線の断面は円形状であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記導線はα巻きに巻回されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記軟磁性体は前記ヨークに接する面を有し、前記軟磁性体の前記ヨークに接する面側には、前記可動子の可動方向と垂直な方向に前記導線を収納する溝が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記ヨークは軟磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
前記ヨークは電磁鋼板を積層して形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載のモータ。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、高速動作に適した高効率で高トルクを発生することができる小型のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー消費の増加にともなって国際的に地球温暖化問題への関心が高まり、消費エネルギーの低減が求められている。世界のエネルギー消費の中でモータに係る割合は約40%であると言われ、各分野で電動化が進む中、モータの高効率化は急務となっている。モータの高効率化はモータ体格を大きくすることである程度は達成可能であるが、大型化するとアプリケーションが限られてくる。
【0003】
小型のモータとしては、自動車エンジンに用いられるターボチャージャー、ターボ分子ポンプ、医療用ロボットに使用するモータなどがある。これらのモータは効率の他に超高速、例えば100,000rpmを超える回転数が求められている。小型で超高速回転を実現する手段としてスロットレス(コアレス)モータが適していると言われている(非特許文献1)。超高速回転下では誘起電圧の上昇を抑制する必要があり、そのため巻線部分のインダクタンスを減らした方が有利だからである。
【0004】
しかし、その一方でスロットレスモータはコアが無いため固定子と回転子の間のギャップ内の磁束密度が低く、よってトルクが小さくなる。また永久磁石からの磁束が巻線に鎖交し、巻線内の電流密度の偏りが発生するために交流銅損が発生する。このような課題に対し、巻線(コイル)全体に磁性シートを貼付け、交流銅損を低減するといったIPMモータが検討されている(非特許文献2)。
【0005】
また、トルクを改善する方法として、ムービングコイル型のコアレスモータの回転子にコイルを固定するためのモールド樹脂に磁性粉を混ぜ、回転軸方向に磁化配列させることにより、高トルク化を図る技術も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2006-25594号公報
【0007】

【非特許文献1】小森、他、「スロットレス超高速PMモータの高パワー密度設計」、電気学会産業応用部門大会、2013
【非特許文献2】鳥島、水野、他、「磁束経路制御技術を用いた平角線の銅損低減」,電気学会研究会資料、MAG-19-008、2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1の高効率化技術は、磁束が直接コイルに入らないように予めスロットに巻回されたコイルの、回転子(永久磁石)に近い側を磁性体で覆うものである。つまり、スロットを用いることを前提とした構成であって、スロットレス型のモータにそのまま適用しても効果が無いか、却って効率を落とすことになる。また、特許文献1の技術は、高トルク化を実現するため、磁性モールド材を磁化配列させているが、このようにするとインダクタンスの増加を招き、超高速回転には適さない、といった課題があった。また、コイル周辺を磁化配列させた場合、高磁場下で磁気飽和が生じるといった課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るモータは、ヨークに巻回した導線が設けられたコアレス構造の固定子と、前記固定子に対向するように永久磁石が設けられた可動子を有するモータであって、任意の巻回における前記導線と、前記可動子の可動方向に隣接する巻回における前記導線との間に軟磁性体が設けられたことを特徴とする。
【0010】
前記軟磁性体は、電磁鋼板、ナノ結晶板、圧粉、磁性コンポジット材のいずれかであってもよい。
【0011】
前記磁性コンポジット材はバインダに磁性粉を混ぜて固化させたものであってもよい。
【0012】
前記磁性粉はFe系アモルファス、純鉄、Fe-Si、ナノ結晶、センダストのいずれかであってもよい。
【0013】
前記導線の断面は平角形状であってもよい。
【0014】
前記導線の断面は円形状であってもよい。
【0015】
前記導線はα巻きに巻回されていてもよい
【0016】
前記軟磁性体は前記ヨークに接する面を有し、前記軟磁性体の前記ヨークに接する面側には、前記可動子の可動方向と垂直な方向に前記導線を収納する溝が形成されていてもよい。
【0017】
前記ヨークは軟磁性体で形成されていてもよい。
【0018】
前記ヨークは電磁鋼板を積層して形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、超高速動作しているスロット(コア)レス型のモータの固定子内の磁束経路を導線間に設けられた軟磁性体で制御することによってトルクやパワーの増加および巻線内の渦電流損失の低減を図ることができ、小型で高効率なモータを実現することが可能となる。さらに前記軟磁性体は、Fe等の金属または合金を含むため、比較的熱伝導性が良く、前記導線内で発生する熱を逃がす役割を果たし、発熱による直流抵抗の上昇も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本開示の一実施の形態のモータの断面図および詳細断面図
【図2】本開示の一実施の形態のモータの要部構成図
【図3】一般的なスロットレスモータの磁束経路を示す説明図
【図4】本開示の一実施の形態の効果を示す説明図
【図5】本開示の実施例1のモータにおける軟磁性体とその周辺の断面図
【図6】本開示の実施例1のモータにおけるステータの要部構成図
【図7】本開示の実施例2のモータにおけるステータの要部構成図
【図8】本開示の実施例3のモータにおけるステータの要部構成図
【図9】本開示の実施例4のモータの寸法図
【図10】本開示の実施例4の軟磁性体の特性を示すグラフ
【図11】本開示の実施例4および比較例の寸法図
【図12】本開示の実施例5および比較例の磁束密度と磁束線分布図
【図13】本開示の実施例5および比較例の電流密度と磁束線分布図
【図14】本開示の実施例5の効果を示すグラフ
【図15】本開示の実施例5の効果を示すグラフ
【図16】本開示の実施例5の効果を示すグラフ
【図17】本開示の実施例6の効果を示すグラフ
【図18】本開示の実施例7に対する比較例の部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図19】本開示の実施例7の一モデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図20】本開示の実施例7の他のモデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図21】本開示の実施例7の他のモデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図22】本開示の実施例8に対する比較例の部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図23】本開示の実施例8の一モデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図24】本開示の実施例8の他のモデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【図25】本開示の実施例8の他のモデルの部分構成図と交流銅損を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態においてモータは回転型モータとする。図1に本実施の形態におけるモータの断面図と、破線で描かれた円内の詳細断面図を示す。図1において、1は(固定子)ヨークであり、巻回された導線(以下、巻線)2とともに固定子を構成する。3は永久磁石であり、ヨーク4、シャフト5とともに可動子(以下、回転子)を構成する。永久磁石3は前記固定子に対向するように設けられ、予め図中白矢印で示す方向に着磁されている。

【0022】
図1の詳細断面図において、21は軟磁性体であり、任意の巻回における導線2と、ヨーク1の円周方向に隣接する巻回における導線との間に設けられている。言い換えれば、ヨーク1おいて、軟磁性体21を介さずに(単に絶縁層のみで)導線どうしが接して巻かれることはない。軟磁性体21の材料は、例えば、電磁鋼板、ナノ結晶板、圧粉、磁性コンポジット材であればよい。比透磁率の大きさの点では、電磁鋼板や圧粉が軟磁性体21の材料として適しているが、成型のしやすさという点では磁性コンポジット材が優れている。またヨーク1も電磁鋼板、ナノ結晶板、圧粉、磁性コンポジット材等の軟磁性体で形成されていてもよい。

【0023】
磁性コンポジット材料は樹脂等のバインダに磁性粉を混ぜて固化させたであってもよい。例えば、球状の磁性粉にエポキシ樹脂と希釈材を混合・攪拌・注型し、熱硬化させたものでもよい。磁性粉としては、例えばFe系アモルファス、純鉄、Fe-Si、ナノ結晶、センダストを用いることができる。形状としては球状が好ましい。扁平形状の磁性粉では、強磁場により配向が生じ、磁束密度が飽和する可能性があるからである。また、磁性コンポジット材料における磁性粉の分量は体積比で30~60%が好ましい。この範囲より低いと磁束経路が十分に制御されず、逆に高いと材料自身の剛性が低下する。軟磁性体21の具体的構造や磁性コンポジット材料の具体例については実施例1~4で改めて説明する。

【0024】
図1の詳細断面図において、20は巻線2の一部である導線である。導線20の断面は平角形状であっても円形状であってもよい。断面形状の詳細については実施例1と2で改めて説明する。本実施の形態では導線20は平角形状の断面を有するとする。ここで平角形状とは、長方形状であってもよいし、長方形の角が削られた多角形であってもよい。巻線2は2層のα巻であり、U-U’(図中はU上バー)相、V-V’(図中はV上バー)相、W-W’(図中はW上バー)相ごとに分布巻されたものであってもよい。

【0025】
図2に導線20の周辺の構成図を示す。図2において、導線20のヨーク1円周方向(図面左右の方向)に隣接する導線20との間には必ず軟磁性体21が設けられている。導線20と軟磁性体21は直接接していなくてもよい。磁気特性に影響を与えない程度であれば非磁性絶縁層23(例えば接着層)を設けてもよい。また、一層目(ヨーク1側)の巻線と二層目の巻線の間、および二層目の巻線と回転子3(図示せず)との間に軟磁性体21を設けてもよい。

【0026】
以上のように構成されたモータについて、以下、その作用(動作)を説明する。まず図3に一般のスロットレスモータ(軟磁性層21を用いないもの)における磁束線の経路を描いた概念図を示す(以下、Rectangular Copper Wire:略してRCW)。図3において、永久磁石(3)からの磁束φmは導体(20)内を鎖交し、巻線内で渦電流が生ずることで電流密度の偏りが生まれ、電流が流れる実効断面積が減少する。この結果、巻線抵抗が増加し、交流銅損が発生する。

【0027】
一方、巻線2が軟磁性体21(磁性コンポジット材料など)に埋め込まれた場合(以下、agnetic old oil:略してMMC)の磁束φmの経路を図4に示した。このように、巻線2が軟磁性体21に埋め込まれた構造のモータを、以降、埋込巻線形同期モータ(Interior Winding Synchronous Motor:IWSM)と称することがある。軟磁性体21の原料となる磁性コンポジット材料は空気より透磁率が高く、磁束の多くは軟磁性体21を通るため、巻線内で生ずる交流銅損はその分低減される。また、軟磁性体21に磁束を集中させることができるため、ギャップ磁束密度が増加し、トルクの増加が期待できる。導体20や軟磁性体21等の具体的な構成と動作については以下の実施例にて詳細に説明する。

【0028】
なお、本実施の形態においては、モータは回転型モータとしたが、回転型に限定されない。例えば、ヨークが長尺状であり可動子がレールに沿ってヨークと平行に動く、いわゆるリニアモータであってもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本開示の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では回転型モータにおける軟磁性体21の具体的な構成について説明する。図5に軟磁性体21とその周辺部品の断面図を示す。図5において、軟磁性体21はヨーク1(部分的に点線で表示)内接する円筒形状を成す。ヨーク1と内接する軟磁性体21の表面には、回転子の回転方向と垂直な方向すなわち図面上では紙面と垂直な方向に、巻回された導線20を収納する溝が形成されている。
【実施例】
【0030】
図5の要部構成図を図6に示す。軟磁性体21に設けられた溝に沿って平角状の導線20が巻回される。例えば、W相α巻きの場合、導線20を軟磁性体21に設けられた溝に埋め込みながら、W相とW’(図中はバーで表示)相を跨ぎながら、外周から内周に巻いて1層目を形成し、次に最内周から第2層目を巻きはじめ、最外周で巻き終えるようにすればよい。他相もすべて巻き終わった後、円筒状のヨーク1をかぶせることにより、図6に示されるように各導線20はヨークと軟磁性体21によって密閉される。なお図6において、導体20周りの空白は絶縁層であっても接着層であってもよい。導線20内部で発生した熱を軟磁性体21に逃がすことを考えると、この絶縁層等はできるだけ薄く、かつ熱伝導性がよいものが好ましい。
【実施例】
【0031】
(実施例2)
図7に本開示の実施例2のモータにおける固定子(ステータ)の要部断面図を示す。図7に示すように、平角線の代わりに、断面が円形状の導線を用いてもよい。軟磁性体21には予め溝が設けられているので、この溝に埋め込むように導線20を多層巻回すれば、同図のような巻線になる。なお、導線20は予めその表面を絶縁処理しておくのが好ましい。また巻回後、導線20と軟磁性体21の隙間にはエポキシ等の樹脂を充填してもよい。
【実施例】
【0032】
(実施例3)
本実施例では、軟磁性体21として、軟磁性テープを用いた例について説明する。図8において、平角状の導線20の両面には予め軟磁性テープ24a、24bが貼り付けられている。これをそのままα巻きに巻回すると、軟磁性テープどうしが図中点線で示される位置で密着し、最終的に軟磁性体21を形成する。なお、第1層(ヨーク1)側に巻回された導線と第2層側に巻回された導線の間に、軟磁性シート24cを挟んでもよい。また、第2層側に巻回された導線の回転子3(図示せず)側にも軟磁性シート24dを設けてもよい。なお、各軟磁性テープと各軟磁性シートの表面に接着層を設けてもよい。また一部に非磁性絶縁体23を設けてもよい。
【実施例】
【0033】
(実施例4)
本実施例ではモータの具体的な仕様や材料の組成等について説明する。まずモータ全体の形状と寸法を図9と表1に示す。図9において、モータは回転型のモータであり、(固定子)ヨーク1の外径Dは32mmとし、全長l(エル)(表1中Stack thickness)は60mmとしている。回転子(永久磁石3)Dの外径は20.2mmであるとし、固定子と回転子との間のギャップlは0.3mmとした。
【実施例】
【0034】
ヨーク1は高速域での渦電流損を極力抑えるため、電磁鋼板を使用してもよい。巻線2(導線20)の素材は銅であっても、アルミニウムであってもよい。また表面に絶縁膜が設けられたものであってもよい。永久磁石としては内部の渦電流損を低減するために抵抗率の高いNd-Fe-B系ボンド磁石を使用してもよい。
【実施例】
【0035】
巻線2については、巻数NはU、V、Wの各相、7巻回×2層=計14巻回としている。また導体20の幅W(長方形状断面の長辺)は1.0mm、厚さt(長方形状断面の短辺)は0.32mmとした。詳細については、表1と図9に示す。

【表1】
JP2021023035A_000003t.gif
【実施例】
【0036】
(固定子)ヨーク1は高速域で問題となる渦電流損の低減のため、0.1mm厚の電磁鋼板(JFEスチール社10JNHF600)を積層して作成した。また、磁性コンポジット材料には球状のFe系アモルファス合金粉(平均粉径2.6μm程度)を使用する。永久磁石3にはNEOMAX(株)社製のHIDENCE-1000を用いる。ヨークと磁性体の詳細を表2に示す。

【表2】
JP2021023035A_000004t.gif

【実施例】
【0037】
本実施例および以降の実施例では軟磁性体21としてコンポジット磁性材を用いる。図10(a)に当コンポジット磁性材の静磁性特性を、同図(b)に、同材料の鉄損特性を示した。この特性はインダクタキャンセル法を用いて測定した。図10(a)より明らかなように、本実施の形態で使用するコンポジット磁性材料は、H=180kA/mまで磁束密度の飽和は認められない。また、同図(b)より、使用する周波数(3.3kHz)での鉄損は無視できるレベルであることが判る。
【実施例】
【0038】
(実施例5)
本実施例では、比較例(図11(a))および本実施例(図11(b))の回転型モータにおける磁気特性を計算し、その結果について説明する。なお、本実施例では導線20の厚さをt=0.32とし、幅をw=1.0mmとした。計算はJMAG-Designer Ver.18.0による有限要素(FEM)法を用いて行った。導線20の素材は銅とした。軟磁性体21の磁気特性は、磁界の強さに応じて図10(a)から求めた。回転子は100,000rpmで回転しているとし、W、U、V相にはそれぞれ位相が120°ずれた3.3kHzの三相交流電流が流れているとした。その他詳細パラメータについては表3に示す。なお、本実施例において、非磁性絶縁体23は設けていない。

【表3】
JP2021023035A_000005t.gif
【実施例】
【0039】
図12(a)、(b)にそれぞれ比較例と本実施例のモータ内部の磁束密度分布を示した。このとき、U相に最大電流が流れているとした。比較例(図12(a))と比較して、巻線2の周りに軟磁性体21を配置した本実施例のモータ(図12(b))では磁束が軟磁性体21の内を通り、巻線に鎖交する磁束が低減していることが確認できる。また、軟磁性体21に磁束が集中するため、ギャップ磁束密度も増加する。また、図13(a)、(b)にそれぞれの電流密度分布を示した。軟磁性体21を配置することで巻線を鎖交する磁束が減少し、電流密度分布の偏りが低減されているのが確認できる。
【実施例】
【0040】
図14(a)にそれぞれ比較例と本実施例のモータのトルク—電流特性を示した。本実施例のモータ(図中MMC)は比較例(図中RCW)と比べてギャップ磁束密度が向上するため、同じ電流を加えたとき、43%もトルクが増加した。言うまでもなくトルク定数Ktも増加する。トルクリップルを確認するため、同図(b)に本実施例のモータ(図中MMC)を用いた場合のトルクの時間変化を示した。従来のスロット(コア)レスモータと同様、トルクリップルは無視できるほどに十分小さいことが示された。
【実施例】
【0041】
図15(a)~(c)にそれぞれ比較例と本実施例のモータの銅損の比較を示した。両者ともに電流の実効値をI=3.5Armsとしている。図15(a)は直流・交流銅損の合計値を表すが、比較例(RCW)より58%も低い結果が得られた。巻線20と重ねて軟磁性層21が設けられているため、電流密度の偏りが低下し交流銅損が低減したことが最大の要因であると考えられる。
【実施例】
【0042】
図15(b)は鉄損を比較したものである。比較例(図中RCW)よりも本実施例(MMC)の方が、却って鉄損が82%増えている。これは、軟磁性層21を設けたことにより、永久磁石3から(固定子)ヨーク1に磁束が流れやすくなり、その結果(固定子)ヨーク1の磁束密度が増加したためであると考えられる。なお、鉄損の中でも、(回転子)ヨークの渦電流損Pe_rおよびヒステリシス損Ph_r、永久磁石の渦電流損Pe_m、磁性材料の渦電流損Pe_mmおよびヒステリシス損Ph_mmについては、無視できるほど小さい値であった。
【実施例】
【0043】
図15(c)は上記銅損と鉄損を含めた全体的な効率の比較を行ったグラフである。また、損失ごとの詳細な比較を表4と表5に数値で示した。

【表4】
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【表5】
JP2021023035A_000007t.gif

図15(c)は同じトルクを出すために必要な電流を比較したものである。同じトルクを出すために必要な電流は比較例(RCW)よりも本実施例(MMC)の方が小さくて済む。よって、電流の2乗で示される直流銅損は本実施例(MMC)の方が少なくなる。また、上述のように交流銅損も低減される。鉄損は増加を考慮しても全体的には2.2%効率が向上する。図16はU相の相電圧を電気角1周期分で示したものである。本実施例(MMC)の場合、逆起電力定数の増加と巻線インダクタンスの増加により、相電圧は35%増加する。
【実施例】
【0044】
(実施例6)
本実施例では、図11(a)、(b)で示したモータにおいて、導線20の厚さをt=0.26mm、0.28mm、0.30mm、0.32mmと変化させ、さらに導線20の幅をw=0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mmと変化させたときのそれぞれの損失を計算し、導線20の幅と厚さの最適値を求めた。以下説明する。
【実施例】
【0045】
図17(a)に、巻線2を構成する導体20の幅と厚さを変えたときのトルクの計算結果を三次元的に示した。導体20の幅を変えてもトルクは顕著には変化しない。また、 図17(b)に巻線2(導体20)の幅を変化させたときの銅損を示した。銅損は巻線2の厚さt×幅wが小さいほど低くなる。断面積が小さくなるため、鎖交磁束も減るからである。なお、電流を固定して考えると、直流銅損は却って増加する。しかし、断面積を減らした分、軟磁性体の割合が多くなると考えると、磁束を誘導しやすくなり、交流銅損は低下する。ただし、導体断面積を小さくしていくと直流銅損が大きな割合を占めることとなる。このため、t=0.30mm、w=0.8mmのとき、銅損は最適条件となる。
【実施例】
【0046】
以上の結果を表6にまとめた。

【表6】
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巻線を軟磁性体に埋め込んで巻回したことにより、磁束の多くを軟磁性材体に誘導することができ、その結果、トルクの向上と交流損失の低減の両立を図ることが出来た。実施例では、トルク定数は43%増加し、銅損は58%低減した。このとき鉄損は82%増加したが、鉄損の増加分よりもトルク定数の増加、銅損の低減効果の方が大きいために、出力を固定したときの効率を比較したところ、比較例(RCW)の95.2%に対して実施例(MMC)は97.4%であり、2.2%の改善が確認された。このとき、1kW出力時の出力パワー密度は2.9W/gであった。
【実施例】
【0047】
また、巻線断面の寸法をパラメータとしたときの特性は、巻線断面積によってトルクはそれほど変化せず、銅損には最適値があることが確認された。最後に、本検討では回転子にいわゆるSPMと呼ばれる回転子の表面に永久磁石を配置したタイプのモータを用いたが、IWSMは固定子巻線のみを変更するものであり、回転子の中に永久磁石を埋め込んだIPMなどの回転子でも適用可能である。
【実施例】
【0048】
(実施例7)
本実施例では、平角断面形状を有する導線20の巻回のパターンを変えたときの回転型モータの銅損とその他電気磁気特性とトルク定数を計算した。計算モデルおよび回転子(永久磁石3)を0~100000rpmで回転させたときの銅損の変化を図18~図21に示す。モータ全体の形状寸法は図9に示したものと同様である。また、巻線に電流を供給して回転子を100000rpmで回転させたときの銅損、鉄損、出力および効率の計算結果を表7に示す。なお、表7において、R-0、R-1、R-2、R-3との表示はそれぞれ図18、図19、図20、図21で示されたモデルに対応している。

【表7】
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【実施例】
【0049】
図18(a)に示したモデルは、本実施例における比較例となる、U相、V相、W相それぞれに導線を12巻回×2層で巻いた一般的なスロットレス(コアレス)モータである。このモデルにおける、回転数に対する交流銅損の関係を、同図(b)に示す。ここで、24本の導線は2本ずつ並列に接続されていて、実質12巻回となっている。また、図19(a)に導線を軟磁性体に埋め込んだモータの断面図を示す。図18(b)と図19(b)とを比較すると、回転数0~100000rpmの範囲で、銅損(Pc)が約40%に低減している。
【実施例】
【0050】
表7においては、比較例(表7においてR-0)の交流銅損が46.19Wであったのに対し、導線を軟磁性体に埋め込んだモデル(R-1)では17.48Wに改善している。また、トルク定数を比較しても、比較例(R-0)の0.0174Nm/Aに対し、軟磁性体モデル(R-1)では0.0229Nm/Aと、30%以上も改善している。
【実施例】
【0051】
図19(a)で示されたモータをさらに改良したモデルを図20(a)、図21(a)に示す。いずれも相ごとの巻数が同じになるように並列数を減らしている。図20(a)で示されたモータは、残りの巻線のピッチを維持したまま1並列分を除去し、代わりに軟磁性体を充填したことを特徴とする(表7においてR-2)。一方、図22(a)で示されたモータは、巻線のピッチを倍にすることで導体間に軟磁性体を充填している(表7においてR-3)。
【実施例】
【0052】
いずれのモデルも本実施例の比較例のモータと比べると、交流銅損が10%以下まで低減する(図20(b)、図21(b)、表7)。軟磁性体によって磁束経路が制御され、導線と鎖交する磁束が減ったことが最大の理由と考えられる。交流銅損以外の特性を比較してみても、直流銅損は比較例(R-0)の約半分、トルク定数は比較例に対し約4割アップとなっている。効率については、比較例(R-0)の93.28%に対し、図20(a)のモデル(R-2)では97.68%、図21(a)のモデル(R-3)では97.80%と、4%以上の改善効果が確認された。
【実施例】
【0053】
(実施例8)
本実施例では、平角形状の断面の導線1本を円形状の断面の導線3本に置き換えた場合の回転型モータの銅損その他電気磁気特性とトルク定数を計算した。計算モデルおよび回転子(永久磁石3)を0~100000rpmで回転させたときの銅損の変化を図22~図25に示す。また、巻線に電流を供給して回転子を100000rpmで回転させたときの銅損、鉄損、出力および効率を表8に示す。なお、表8において、C-0、C-1、C-2、C-3との表示はそれぞれ図22、図23、図24、図25で示されたモデルに対応している。

【表8】
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【実施例】
【0054】
図22(a)に、本実施例における比較例となる、U相、V相、W相それぞれに導線を12巻回×6層で巻いた一般的なスロットレス(コアレス)モータの断面図を示す。併せて同図(b)に、回転数に対する交流銅損の関係を示す。ここで、相ごとの導体数は72本であり、導線を6本持ち12回巻とすることでこの本数を減らしている。なお、図22(a)~図25(a)で示されたモデルは、上記導線の形状と巻き数以外は、図18(a)~図21(a)で示されたモデルと全く同様であるとする。
【実施例】
【0055】
比較例どうし(表7のR-0と表8のC-0)を比較した場合、平角断面導線を3本の円形断面導線で置き換えた方が、交流銅損が39.59Wと平角断面導線の46.19Wよりも2割程度小さい。3本の円形断面導線の方が導体1本の断面積が小さいため、磁石の磁束による巻線内の渦電流経路が小さくなるためである。円形断面導線を軟磁性体に埋め込んだモデル(R-1とC-1)どうしの比較では、R-1の交流銅損が17.48Wであるのに対しC-1は12.05Wまで低減される。
【実施例】
【0056】
ところが、巻き数を減らしたモデル(C-2とC-3)では、平角断面導線(R-2とR-3)と比べて交流銅損はやや高くなる。また、直流銅損はC-3のモデルで6.65Wと比較例(C-0)の5.81Wよりも却って悪化する。鉄損では円形断面導線の方がやや有利である。最終的に効率で比較すると、R-2のモデルが97.68%であるのに対しC-2のモデルでは97.61%と、R-3のモデルが97.80%であるのに対しC-3のモデルでは97.87%と、僅差となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ガソリンエンジン用のターボチャージャー、ターボ分子ポンプ、医療用ロボットに用いられる超高速回転モータやリニアモータに利用することができる。また、損失が低く放熱性能も高いために、特に熱の発生を嫌う産業用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 (固定子)ヨーク
2 巻線
20 導体
21 軟磁性体
24a、24b 軟磁性テープ
24c 軟磁性シート
3 永久磁石
4 (回転子)ヨーク
5 シャフト

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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