TOP > 国内特許検索 > 非水電解質二次電池用正極の製造方法 > 明細書

明細書 :非水電解質二次電池用正極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-031065 (P2020-031065A)
公開日 令和2年2月27日(2020.2.27)
発明の名称または考案の名称 非水電解質二次電池用正極の製造方法
国際特許分類 H01M   4/1391      (2010.01)
H01M   4/525       (2010.01)
H01M   4/505       (2010.01)
C01G  53/00        (2006.01)
FI H01M 4/1391
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00 A
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2019-209082 (P2019-209082)
分割の表示 特願2015-044090 (P2015-044090)の分割、【原出願日】平成27年3月5日(2015.3.5)
出願日 令和元年11月19日(2019.11.19)
発明者または考案者 【氏名】手嶋 勝弥
【氏名】是津 信行
【氏名】内田 修平
【氏名】平田 和希
【氏名】加美 謙一郎
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000604、【氏名又は名称】特許業務法人 共立
審査請求
テーマコード 4G048
5H050
Fターム 4G048AA04
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA01
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA09
5H050FA04
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA13
5H050GA22
5H050HA02
要約 【課題】電池電位を高電位化できる非水電解質二次電池用正極の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池用正極の製造方法は、KCO及びNbよりなる薄膜の原料と、KClよりなるフラックスとを混合し、加熱し、冷却した後に水で洗浄してフラックスを除去して薄膜化合物を製造し、前記薄膜化合物の溶液を調製し、正極活物質を有する正極活物質層の表面に塗布することを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
CO及びNbよりなる薄膜の原料と、KClよりなるフラックスとを混合し、加熱し、冷却した後に温水で洗浄してフラックスを除去して薄膜化合物を製造し、
前記薄膜化合物の溶液を調製し、正極活物質を有する正極活物質層の表面に塗布することを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項2】
前記薄膜化合物をHCl溶液に浸漬した後、水で洗浄し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)水溶液に浸漬した後に、前記薄膜化合物の溶液を調製する請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項3】
前記正極活物質は、層状構造のLiNiαMnβCoγδ(α+β+γ+δ=1,0<α,0<β,0<γ,0≦δ,M:遷移金属元素及びアルミニウムより選ばれる1種以上)よりなる請求項1~2のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度を備える電池として、非水電解質二次電池の使用が携帯電話、ノートパソコン等の小型民生機器に進められている。非水電解質二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池を例示できる。リチウムイオン二次電池は、近年では、定置型蓄電システム、ハイブリッド自動車、電気自動車などの大型機器への使用が検討されている。大型機器への適用は、小型機器と比較して、高容量や大電流が要求される。
【0003】
リチウムイオン二次電池の容量は、リチウムイオン(Liイオン)を電気化学的に脱挿入する正極活物質の組成により、変化する。正極活物質としては、LiCoOやLiMn、LiFePOなどの複合酸化物が用いられる。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質を有する正極活物質層を正極集電体の表面に形成した正極と、負極活物質を有する負極活物質層を負極集電体の表面に形成した負極とが、非水電解質を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。そして、電極活物質層(正極活物質層,負極活物質層)は、電極活物質粉末をバインダや導電材とともに混合してなる合材を集電体の表面に塗布して形成される。
リチウムイオン二次電池では、電池容量等の電池性能の向上が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1に、正極と樹脂層(セパレータ)との間に配置され、主成分としてフッ化アルミニウムを含有し、10nm以上1μm以下の厚さを有する絶縁層を備える非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-127983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の二次電池では、正極や樹脂層だけでなく絶縁層も電解液と接触するように構成されている。また、絶縁層は正極表面とセパレータ表面とが接触しない程度の大きさの微細孔があけられている。この構成では正極と電解液と間で電子授受が行われるので、系外に漏れて流れる電流(いわゆる漏洩電流)が生じる。そのため、電池電位を4.5V以上に高電位化するのが困難であった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、電池電位を高電位化できる非水電解質二次電池用正極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは正極の構造について検討を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の非水電解質二次電池用正極の製造方法は、KCO及びNbよりなる薄膜の原料と、KClよりなるフラックスとを混合し、加熱し、冷却した後に温水で洗浄してフラックスを除去して薄膜化合物を製造し、前記薄膜化合物の溶液を調製し、正極活物質を有する正極活物質層の表面に塗布することを特徴とする。
【0010】
本発明の非水電解質二次電池用正極の製造方法は、前記薄膜化合物をHCl溶液に浸漬した後、水で洗浄し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)水溶液に浸漬した後に、前記薄膜化合物の溶液を調製することが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用正極の製造方法は、前記正極活物質が、層状構造のLiNiαMnβCoγδ(α+β+γ+δ=1,0<α,0<β,0<γ,0≦δ,M:遷移金属元素及びアルミニウムより選ばれる1種以上)よりなることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を示す構成図である。
【図2】実施形態のコイン型のリチウムイオン二次電池の構成を示す構成図である。
【図3】実施例の薄膜化合物のXRDピークを示す図である。
【図4】実施例の薄膜化合物のSEM写真である。
【図5】実施例の試料1の二次電池の充放電特性を示す図である。
【図6】実施例の試料2の二次電池の充放電特性を示す図である。
【図7】実施例の試料3の二次電池の充放電特性を示す図である。
【図8】実施例の試料4の二次電池の充放電特性を示す図である。
【図9】実施例の各試料の二次電池のレート試験での放電容量を示す図である。
【図10】実施例の各試料の二次電池のサイクル試験での放電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を用いて本発明を具体的に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用正極の製造方法を、正極及びリチウムイオン二次電池の製造に適用した形態を用いて具体的に説明する。

【0013】
[実施形態]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、図1にその概略構成を示した電池である。本形態の二次電池1は、正極2,負極3,非水電解質4,セパレータ5を有する。

【0014】
(正極)
正極2は、正極集電体20と、その表面に形成された正極活物質層21と、正極活物質層21の表面に形成された薄膜22と、を有する。正極活物質層21は、正極活物質を結着材(バインダ)や導電材とともに混合してなる正極合材を正極集電体20の表面に塗布・乾燥して形成される。正極活物質層21は、乾燥後に圧縮してもよい。
薄膜22は、それを形成する材質が含まれる溶液を調整し、正極活物質層21の表面に塗布・乾燥して形成される。

【0015】
(正極活物質)
正極活物質は、層状構造のLiNiαMnβCoγδ(α+β+γ+δ=1,0<α,0<β,0<γ,0≦δ,M:遷移金属元素及びアルミニウムより選ばれる1種以上)よりなる。この組成の正極活物質は、アルカリ金属(Li)を基準電位として、4.2V以上の電位差でアルカリ金属イオン(Li)の吸蔵と放出が行える。このことから、正極活物質が上記の組成を有することで、高い電池電圧の二次電池1となる。

【0016】
なお、組成式中のMは遷移金属元素及びアルミニウムより選ばれる一種以上である。遷移金属元素は、周期表で第3族~第12族に含まれる元素である。好ましい遷移金属としては、Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Zr,Nb,Mo,Ta等の元素をあげることができる。

【0017】
正極活物質は、その製造方法が限定されるものではなく、それぞれの金属元素を含有する化合物(例えば、酸化物や硝酸塩)を混合して焼成することで製造できる。また、薄膜22と同様に、フラックス法で製造しても良い。

【0018】
(導電材)
導電材は、正極2の電気伝導性を確保する。導電材としては、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。

【0019】
(結着材)
結着材は、正極活物質粒子や導電材を結着する。結着剤としては、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。

【0020】
(正極合材)
正極合材は、溶媒に分散させて正極集電体20に塗布される。溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶媒を使用する。例えば、NMP,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N-N-ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで正極活物質をスラリー化する場合もある。

【0021】
正極集電体20は、例えば、アルミニウム,ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。

【0022】
(薄膜)
薄膜22は、正極活物質層21の表面に形成される。

【0023】
なお、本形態において薄膜とは、正極活物質層21の表面に形成されたときに正極活物質層21よりも薄く形成された物質を示すものであり、膜状の化合物であっても、正極活物質層21の表面上に積層した層状の化合物であっても、いずれでもよい。

【0024】
ここで、薄膜22は、電池容量を発揮するものではないため、その厚さが薄いことが好ましい。好ましくは、単層の化合物である。

【0025】
薄膜22は、その材質が限定されない。なお、薄膜22は、非水電解質4から正極活物質にLiイオンが挿入・脱離することが阻害されない。このような条件を満たす薄膜22を形成する材質としては、NbO系の酸化物,TiO系の酸化物,VO系の酸化物,WO系の酸化物などの化合物を挙げることができる。

【0026】
薄膜22は、その厚さが薄いことが好ましく、単層の化合物から形成されることが好ましい。単層の化合物を形成する方法は限定されるものではないが、フラックス法で層状化合物の結晶を析出し、各層を剥離して製造する。層状化合物から単層の化合物を剥離する方法は、例えば、層状化合物の結晶の各層の間に嵩高い化合物(例えば、イオン)を挿入することで、生成した層状化合物から単層を剥離できる。

【0027】
薄膜22を、正極活物質層21の表面に形成する方法は限定されるものではなく、例えば、薄膜22を形成する化合物が分散(又は溶解)した溶液を、スピンコート法やスプレー法等で塗布・乾燥させることで形成できる。また、薄膜22は、正極活物質層21の表面上で直接結晶の生成反応を進行する方法で形成してもよい。

【0028】
薄膜22をスピンコート法で形成する場合に、薄膜22を形成する化合物が分散(又は溶解)した溶液は、0.1mass%以上で当該化合物を含有することが好ましく、0.5mass%以上で含有することがより好ましい。薄膜22を形成する化合物を多く含有する溶液から薄膜22を形成することで、薄膜22を形成する化合物同士がすき間を生じることなく配されることとなり、薄膜22による正極活物質層21と非水電解質4との間で電子授受を抑制できる効果がより確実に発揮できる。

【0029】
(負極)
負極3は、正極2と同様に、負極集電体30と、その表面に形成された負極活物質層31と、を有する。負極活物質層31は、負極活物質のみから形成しても、負極活物質を結着材(バインダ)や導電材とともに混合してなる負極合材を負極集電体30の表面に塗布・乾燥して形成しても、いずれでもよい。負極合材から形成された負極活物質層31は、乾燥後に圧縮してもよい。

【0030】
(負極活物質)
負極活物質は、Liイオンを吸蔵・放出可能な材料であれば限定されるものではない。例えば、金属リチウム,リチウム合金,金属酸化物,金属硫化物,金属窒化物,炭素材料,シリコン材料などを挙げることができる。

【0031】
炭素材料は、例えば、黒鉛,コークス,炭素繊維,球状炭素,粒状炭素などの黒鉛系材料もしくは炭素系材料を挙げることができる。炭素材料は、熱硬化性樹脂,等方性ピッチ,メソフェーズピッチ,メソフェーズピッチ系炭素繊維,気相成長系炭素繊維,メソフェーズ小球体などに対して、熱処理を行って得られる黒鉛系材料もしくは炭素系材料であってもよい。シリコン材料としては、例えば、非晶質(アモルファス)シリコン,微結晶シリコン,多結晶シリコンを挙げることができ、これらのうちで二つ以上を組み合わせて用いても良い。シリコン材料では、結晶性が高くなるにつれて電気伝導度も高くなることが知られている。

【0032】
(導電材)
導電材は、負極3の電気伝導性を確保する。導電材としては、正極2の導電材と同様に、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。更に、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどの導電性プラスチックを用いてもよい。

【0033】
(結着材)
結着材は、負極活物質粒子や導電材を結着する。結着剤としては、正極2の結着材と同様に、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。

【0034】
(負極合材)
負極合材は、溶媒に分散させて負極集電体30に塗布される。溶媒としては、通常は結着剤を溶解する水やNMP等の溶媒を使用する。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで負極活物質をスラリー化する場合もある。

【0035】
負極集電体30としては、従来の集電体を用いることができ、銅、ステンレス、チタンあるいはニッケルなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。

【0036】
(非水電解質)
非水電解質4は、正極2と負極3の間でLiイオン(荷電担体)の輸送を行う。非水電解質4は、特に限定されるものではない。二次電池1が使用される雰囲気下で物理的、化学的、電気的に安定して存在でき、二次電池1として一般的に用いられる液体が好ましい。有機溶媒に支持塩を溶解させた非水電解質(非水電解液とも称される)であることが好ましい。

【0037】
(溶媒)
有機溶媒は、アルカリ金属に溶媒和する一般的な溶媒を用いてよい。例えば、環状炭酸エステル,環状エステル,鎖状エステル,環状エーテル,鎖状エーテル,ニトリル類などを挙げることができる。

【0038】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC),エチレンカーボネート(EC),ジメチルスルホキシド(DMSO)などを挙げることができる。環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン,γ-バレロラクトン,γ-カプロラクトン,δ-ヘキサノラクトン,δ-オクタノラクトンなどを挙げることができる。鎖状エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC),ジエチルカーボネート(DEC),エチルメチルカーボネート(EMC)などを挙げることができる。環状エーテルとしては、オキセタン,テトラヒドロフラン(THF),テトラヒドロピラン(THP)などを挙げることができる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシエタン(DME),エトキシメトキシエタン(EME),ジエトキシエタン(DEE)などを挙げることができる。ニトリル類としては、アセトニトリル,プロピオニトリル,グルタロニトリル,メトキシアセトニトリル,3-メトキシプロピオニトリルなどを挙げることができる。その他、ヘキサメチルスルホルトリアミド(HMPA),アセトン(AC),N-メチル-2-ピロリドン(NMP),ジメチルアセトアミド(DMA),ピリジン,ジメチルホルムアミド(DMF),エタノール,ホルムアミド(FA),メタノール,水などを溶媒に用いてもよい。

【0039】
これらの溶媒のうちカーボネート系溶媒を含む電解液を用いることで、高温での安定性が高くなる。ポリエチレンオキサイドなどの固体高分子に上記の電解質を含んだ固体高分子電解質やリチウムイオン伝導性を有するセラミック、ガラス等の固体電解質も使用可能である。

【0040】
有機溶媒には、上記の各溶媒のうち2種以上を混合した混合溶媒を用いてもよい。例えば、誘電率の高い環状エステルと、粘度低減を目的とする鎖状エステルとの混合液などを挙げることができる。サイクル特性の向上を目的として、ビニレンカーボネート(VC),フルオロエチレンカーボネート(FEC)などのような不飽和結合を有する不飽和化合物を添加してもよい。

【0041】
(支持塩)
支持塩は、支持に適した任意の塩を用いることができる。例えば、アルカリ金属がリチウムの場合は、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO,LiSbF,LiSCN,LiClO,LiAlCl,NaClO,NaBF,NaIや、これらの誘導体等の塩化合物などを挙げることができる。電気特性を向上させる観点から、LiPF,LiBF,LiClO,LiAsF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO,LiN(FSO,LiN(CFSO)(CSO),LiCFSOの誘導体,LiN(CFSOの誘導体,LiC(CFSOの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の塩を用いることが好ましい。

【0042】
また、高負荷放電特性を得るために、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等の比誘電率の大きな物質を含めることが好ましい。

【0043】
また、支持塩には、上述した支持塩に代えて(あるいは加えて)、オキサラト錯体やオキサラト誘導体錯体を用いてもよい。オキサラト錯体やオキサラト誘導体錯体として、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムビス(オキサラト)シランなどを挙げることができる。なお、リチウム以外のアルカリ金属(例えばナトリウムやカリウムなど)についても同様の支持塩を用いてよい。

【0044】
上述した有機溶媒や支持塩に代えて(あるいは加えて)、非水電解質二次電池に用いることができるイオン液体を用いてもよい。イオン液体のカチオン成分としては、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムや、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオンなどが該当する。アニオン成分としては、BFやN(SOCF2-などを挙げることができる。また、非水電解質はゲル化剤を含有させることによりゲル状としてもよい。

【0045】
(セパレータ5)
セパレータ5は、正極2と負極3との間に介在し、正極2と負極3が接触しないように絶縁するとともに、Liイオンの移動を阻害しない状態で非水電解質4(非水電解液)を保持する。セパレータ5は、一般的な多孔質樹脂や、酸化ケイ素,窒化ケイ素などを用いることができる。例えば、多孔質のポリプロピレン樹脂よりなるものを挙げることができる。

【0046】
セパレータ5は、正極2と負極3の絶縁を確実にするために、正極2と負極3の少なくとも一方よりも大きな形状とすることが好ましい。セパレータ5の厚さは限定されるものではなく、任意に設定できる。例えば、1μm以上30μm以下の厚さとすることができる。この場合、1μmよりも薄く成形すると絶縁が不十分になり、30μmよりも厚く成形すると、二次電池内でセパレータ5の占める容積が増加し、正極2と負極3の占める割合が減少する。その結果、二次電池1の体積あたりの電池容量が小さくなる。

【0047】
[その他の構成]
本形態の二次電池1は、正極2,負極3及び非水電解質4を有する上記の構成を有していれば、具体的な形状については限定されるものではない。例えば、その構成を図2に示したコイン型の二次電池1を挙げることができる。なお、図2中、上記の構成と同一構成の部材は、同じ参照符号を付与している。
図2に示す二次電池1は、正極2,負極3,非水電解質4,セパレータ5を、電池ケース6に封入して形成される。
正極2,負極3,非水電解質4及びセパレータ5は、上記の構成と同様である。
電池ケース6は、ロアーケース60,アッパーケース61から形成され、両ケース60,61の間をシール部材62でシールする。

【0048】
[二次電池の変形形態]
上記した形態では、コイン型の二次電池1を例示したが、本発明の非水電解質二次電池はこの形態に限定されるものではない。
二次電池1は、その形状には特に制限を受けず、円筒型,角型等、種々の形状の電池や、ラミネート外装体に封入した不定形状の電池とすることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例として、正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
【実施例】
【0050】
(実施例)
本例のリチウムイオン二次電池1は、図2にその構成を示したコイン型のリチウムイオン二次電池1と同様の構成である。本例の正極2は、上記の実施形態に記載の図1の構成を備える。本例の正極2は、正極集電体20、正極活物質層21、薄膜22を有する。
【実施例】
【0051】
(薄膜の形成)
薄膜22を生成する原料として、KCO(0.928g)とNb(5.353g)を準備する。これらの化合物を、5.353gのKClよりなるフラックスとともに十分に混合する。
【実施例】
【0052】
混合粉末をアルミナ製のるつぼに投入し、加熱炉で加熱した。加熱炉での加熱は、1000(℃/時間)の昇温速度で、予め設定された温度(800℃)まで加熱・昇温した。そして、この加熱温度で5時間保持した後、250(℃/時間)の降温速度で、300℃まで降温・冷却した。
それから、室温まで放冷し、温水で洗浄してフラックスを除去した。
以上により、本例の薄膜を形成する化合物(薄膜化合物)が製造された。
薄膜化合物について、XRD及びSEMで観察を行った。XRD測定結果を図3に、SEM写真を図4に、それぞれ示した。
図3に示したように、薄膜化合物は、KNbの組成を有していることが確認できた。また、図4に示したように、薄膜化合物は、薄層の形状を有していることが確認できた。
【実施例】
【0053】
得られた薄膜化合物を、1mol/LのHCl溶液に72時間攪拌・浸漬してプロトン交換を行った。その後、溶液のpHが7になるまで蒸留水で洗浄を繰り返した。そして、Tetrabutylammonium Hydroxide(40wt%水溶液)(TBAOH)に、薄膜化合物を浸漬し、遮光状態で72時間振とうする。
その後、遠心分離操作を行い、コロイド沈殿物を除去する。更に、遠心分離操作を行い、単層のナノシート構造の薄膜化合物の分散溶液を抽出した。
【実施例】
【0054】
抽出された分散溶液は、分散溶液全体の質量を100mass%としたときに、薄膜化合物を0.1mass%,0.5mass%,1mass%で含有する三種類が準備された。
【実施例】
【0055】
(正極の形成)
抽出した分散溶液を、正極集電体20の表面上に正極活物質層21が形成された正極(市販品,宝泉株式会社製,商品名:HS-LIB-P-NMC-001,正極活物質:LiNi0.33Mn0.33Co0.33)の表面に滴下し、2000rpmで60秒間回転した(スピンコート法)。
乾燥工程を施し、本例の正極2が製造された。
製造された本例の正極2は、正極集電体20、その表面上に形成された正極活物質層21の表面上に形成された薄膜22を有する。
【実施例】
【0056】
(その他の二次電池の構成)
負極(対極)には、金属リチウムを用いた。図2中の負極活物質層31に相当する。
非水電解質4は、エチレンカーボネート(EC)30体積%とジエチルカーボネート(DEC)70体積%との混合溶媒に、LiPFを1モル/リットルとなるように溶解させて調製されたものを用いた。
試験セルは、組み立てられた後に、1/3C×2サイクルの充放電での活性化処理が行われた。
以上により、試験セル(ハーフセル)が製造された。
【実施例】
【0057】
試験セルは、薄膜化合物を1mass%で含む分散溶液から製造された二次電池1を試料1、0.5mass%の分散溶液から製造された二次電池1を試料2、0.1mass%の分散溶液から製造された二次電池1を試料3、薄膜22を形成しない二次電池を試料4とした。
【実施例】
【0058】
(充放電試験)
製造された各試料の二次電池1に対し、0.25Cの充放電レートで4.6V-2.8Vの充放電を3サイクル繰り返した。このときの電池容量を図5~図8に示した。図5は試料1の二次電池1の測定結果を、図6は試料2の二次電池1の測定結果を、図7は試料3の二次電池1の測定結果を、図8は試料4の二次電池1の測定結果を、それぞれ示した。
【実施例】
【0059】
図5~図7に示したように、正極2の表面に薄膜22が形成された試料1~3の二次電池1は、薄膜22が形成されていない試料4と比較して、大きな電池容量を備えていることが確認できる。
【実施例】
【0060】
また、試料1~3の二次電池1の充放電容量の特性は、各サイクルごとの変化が少ない。これに対し、薄膜22が形成されていない試料4では、サイクルごとの充放電容量のズレが大きくなっていることが確認できる。
【実施例】
【0061】
その上で、図5~7に示したように、薄膜22の形成量が多くなるほど(薄膜化合物の分散量が大きくなるほど)、電池容量を増加する効果を発揮できることが確認できる。
【実施例】
【0062】
また、薄膜22の形成量が多くなるほど(薄膜化合物の分散量が大きくなるほど)、充放電容量の特性のズレが生じなくなり、電池容量の低下を抑制する効果を発揮できることが確認できる。
【実施例】
【0063】
(レート試験)
製造された各試料の二次電池1に対し、所定の充放電レートで4.6V-2.8Vの充放電を所定のサイクル数、繰り返した。このときの放電容量を図9に示した。なお、充放電は、0.25C,0.5C,1C,2C,4C,10Cの各レートで行われた。そして、図9には、0.25Cでの1,2,3,19,20,21サイクルでの放電容量,0.5Cでの4,5,6サイクルでの放電容量,1Cでの7,8,9サイクルでの放電容量,2Cでの10,11,12サイクルでの放電容量,4Cでの13,14,15サイクルでの放電容量,10Cでの16,17,18サイクルでの放電容量をそれぞれ示した。
【実施例】
【0064】
図9に示したように、いずれの二次電池1においても、充放電レートが0.25Cでは、充放電を繰り返しても放電容量の変化(低下)がほとんど生じないことがわかる。
【実施例】
【0065】
そして、充放電レートが高くなるほど、試料1~3の放電容量と試料4の放電容量の差が大きくなっている。その上で、4Cという高いレートでの充放電では、試料4の放電容量が大きく低下しているのに対し、試料1~3では実用可能な程度の放電容量を備えていることが確認できる。
【実施例】
【0066】
(サイクル試験)
製造された試料1,2,4の二次電池1に対し、1Cの充放電レートで4.6V-2.8Vの充放電を100サイクル繰り返した。このときの放電容量を図10に示した。
【実施例】
【0067】
図10に示したように、70サイクル近傍から、薄膜22が形成されていない試料4では、放電容量が大きく低下していることが確認できる。これに対し、薄膜22を有する試料1~2では、このような放電容量の大きな低下が確認できず、サイクル特性に優れていることも確認できる。
【実施例】
【0068】
以上に示したように、正極活物質層21の表面にKNbよりなる薄膜22を有する各試料の正極2及び二次電池1は、4.6Vと高い電位での充放電を繰り返しても、電池特性の低下が抑えられている。
【実施例】
【0069】
このことは、正極活物質に含まれるNiの価数が変化して酸素が脱離しようとしても、薄膜22が当該酸素が非水電解質5に移動することを規制している可能性がある。この酸素の移動の規制により、正極活物質の不可逆容量の発生が抑えられる。この結果、電池特性の低下が抑えられるとも考えられている。
【実施例】
【0070】
また、薄膜22を形成した正極活物質層21を分析した結果、薄膜22は正極活物質層21の表面だけに存在しているわけではなく、正極活物質層21の空隙に沿って内部の正極活物質や導電材、バインダ表面を覆っていることが確認できた。
【実施例】
【0071】
すなわち、本発明に係る試料1~3の二次電池1は、電池特性に優れたものとなる効果を発揮する。
【符号の説明】
【0072】
1:リチウムイオン二次電池
2:正極
20:正極集電体 21:正極活物質層
3:負極
30:負極集電体 31:負極活物質層
4:非水電解質
5:セパレータ
6:電池ケース
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9