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明細書 :終末糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-214546 (P2019-214546A)
公開日 令和元年12月19日(2019.12.19)
発明の名称または考案の名称 終末糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/192       (2006.01)
A61P   3/06        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  27/12        (2006.01)
A61P  27/06        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  21/00        (2006.01)
A61K   9/20        (2006.01)
A61K   9/48        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
A61K   9/08        (2006.01)
A61K   9/10        (2006.01)
A61K   9/06        (2006.01)
A61K   9/12        (2006.01)
FI A61K 31/192
A61P 3/06
A61P 9/12
A61P 9/10 101
A61P 9/00
A61P 13/12
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 27/12
A61P 27/06
A61P 43/00 111
A61P 21/00
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 9/14
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/06
A61K 9/12
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2019-075258 (P2019-075258)
出願日 平成31年4月11日(2019.4.11)
優先権出願番号 2018111391
優先日 平成30年6月11日(2018.6.11)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中島 学
【氏名】小野 和彦
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100145403、【弁理士】、【氏名又は名称】山尾 憲人
【識別番号】100122297、【弁理士】、【氏名又は名称】西下 正石
【識別番号】100145104、【弁理士】、【氏名又は名称】膝舘 祥治
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C206
Fターム 4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB22
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA16
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA47
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA81
4C206ZA94
4C206ZC33
4C206ZC41
要約 【課題】終末糖化産物の生成を抑制可能な終末糖化産物生成抑制剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む終末糖化産物生成抑制剤である。式中、nは0から4の整数を示す。式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、HbA1c値の上昇を有意に抑制することができる。
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【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む終末糖化産物生成抑制剤。
【化1】
JP2019214546A_000009t.gif

(式中、nは0から4の整数を示す)
【請求項2】
式(1)で示される化合物が、4-フェニル酪酸を含む請求項1に記載の終末糖化産物生成抑制剤。
【請求項3】
式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するための医薬組成物。
【化2】
JP2019214546A_000010t.gif

(式中、nは0から4の整数を示す)
【請求項4】
式(1)で示される化合物が、4-フェニル酪酸を含む請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患が、アテローム性動脈硬化症を含む動脈硬化症、高脂血症、心血管疾患、脳血管障害、高血圧症、腎障害、慢性腎不全、認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む神経変性疾患、白内障、緑内障、並びにサルコペニアからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3又は請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤、注射剤及び吸入剤からなる群より選ばれる剤形のものである請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の医薬組成物を、対象に投与することを含む、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、終末糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸と還元糖の混合物を加熱すると褐変する現象は、一般にメイラード反応と呼ばれる。グリコシルヘモグロビン(HbA1c)が生体内で同定され、糖尿病、老化等の進行に伴って蛋白質の糖化反応が、生体内で進行することが明らかにされた。このような蛋白質の糖化反応における終末糖化産物(Advanced glycation end products、以下「AGEs」ともいう)について、糖尿病合併症、動脈硬化といった生活習慣病の発症、老化の進行等に関与することが報告されている。これらAGEsの体内蓄積は、腎糸球体組織硬化症、腎動脈硬化症などの糖尿病合併症だけでなく、アルツハイマー病などの神経変性疾患、皮膚の弾力性の低下や黄色化といった皮膚老化、骨の老化、眼球の老化、アルブミン蛋白の老化に深く関与することが報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アミノグアニジン等の化合物を含むメイラード反応阻害剤が記載されている。アミノグアニジンは、抗糖化作用を示す物質であるが、肝障害等の副作用のため、実用化には至っていない。また、特許文献2には、ケルセチン誘導体を有効成分として含む終末糖化産物生成抑制剤が記載されている。一方、特許文献3には、4-フェニル酪酸等を用いるヒトにおける不要な窒素の蓄積を緩和する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特公平6-67827号公報
【特許文献2】特開2017-66052号公報
【特許文献3】国際公開第1985/04805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、終末糖化産物の生成を抑制可能な終末糖化産物生成抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む終末糖化産物生成抑制剤である。式中、nは0から4の整数を示す。
【化1】
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【0007】
第二態様は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するための医薬組成物である。
【0008】
第三態様は、前記医薬組成物を対象に投与することを含む、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置方法である。
【0009】
さらに本発明は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の前記終末糖化産物生成抑制剤又は前記医薬組成物の製造における使用、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用であって、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置における使用、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置に使用される式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、終末糖化産物の生成又は蓄積を抑制する方法をも包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、終末糖化産物の生成を抑制可能な終末糖化産物生成抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】アルブミン糖化実験の結果を示すグラフである。
【図2】コラーゲン糖化実験の結果を示すグラフである。
【図3】マウスの体重変化を示すグラフである。
【図4】マウスの血糖値変化を示すグラフである。
【図5】マウスの総コレステロール値の変化を示すグラフである。
【図6】マウスのトリグリセリド値の変化を示すグラフである。
【図7】マウスのHbA1c値の変化を示すグラフである。
【図8】マウスの体重変化を示すグラフである。
【図9】マウスに対する経口ブドウ糖負荷試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、終末糖化産物生成抑制剤等を例示するものであって、本発明は、以下に示す終末糖化産物生成抑制剤等に限定されない。

【0013】
終末糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物は、下記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含む。医薬組成物は、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するために用いられる。

【0014】
【化2】
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【0015】
式中、nは0から4の整数を示し、1であることが好ましい。

【0016】
式(1)で表される化合物は、生体内における終末糖化産物の生成を抑制することができる。したがって、式(1)で表される化合物を含む医薬組成物を、対象者に投与することで、対象者における終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置することができる。また、健常者に投与することで、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患を予防することができる。

【0017】
式(1)で表される化合物のうち、nが1である4-フェニル酪酸のナトリウム塩は、尿素サイクル異常症への適応が認められている薬剤である。4-フェニル酪酸ナトリウムは、フェニル酢酸のプロドラッグといわれ、生体内でβ酸化によりフェニル酢酸に変換される。フェニル酢酸は、グルタミンと結合し、フェニルアセチルグルタミンを生成して腎臓より尿中に排泄されるとされている。このようなフェニル酢酸の排泄経路は尿素サイクルによるアンモニア排泄経路の代替経路と言われており、この経路を用いるフェニル酪酸ナトリウムの投与は、尿素サイクル異常症の長期的治療管理の標準的治療法として認められている。なお、式(1)で表される化合物が、生体内における終末糖化産物の生成を抑制する作用機序の詳細については未だ不明である。

【0018】
式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、公知の方法によって製造することができる。また、市販品から適宜選択することもできる。

【0019】
終末糖化産物生成抑制剤又は医薬組成物は、式(1)で表される化合物を薬学的に許容される塩として含んでいてもよい。式(1)で表される化合物の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属塩から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。また、置換アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)等が挙げられる。

【0020】
終末糖化産物生成抑制剤又は医薬組成物は、式(1)で表される化合物をプロドラッグの形態で含んでいてもよい。プロドラッグは、例えば、加水分解によって式(1)で表される化合物に体内で変換され得る化合物である。

【0021】
医薬組成物は、例えば、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種(以下、「特定疾患」ともいう)を処置するために用いられる。特定疾患には、例えば、アテローム性動脈硬化症を含む動脈硬化症、高脂血症、心血管疾患、脳血管障害、高血圧症、腎障害、慢性腎不全、認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む神経変性疾患、白内障、緑内障、サルコペニア等が含まれ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、特定疾患は、糖尿病合併症を含んでいてもよい。糖尿病合併症としては、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経症、糖尿病血管合併症等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。ここで、本明細書において用いられる「処置」とは、疾患について施される何らかの処置であればよく、例えば、疾患の治療、改善、進行の抑制(悪化の防止)等が挙げられる。

【0022】
医薬組成物は、式(1)で表される化合物に加えて、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;緩衝剤;矯味剤;懸濁化剤;乳化剤;着色剤;粘稠剤等が挙げられる。

【0023】
また、医薬組成物が液状製剤の場合、医薬組成物は有効成分に加えて溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、無痛化剤等を含んでいてもよい。液状製剤における溶剤としては、例えば、精製水、エタノール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油などが挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、D-マンニトールなどが挙げられる。緩衝剤またはpH調整剤としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコールなどが挙げられる。

【0024】
医薬組成物は、公知の糖尿病薬剤、AGEs生成抑制効果を有する他の薬剤等をさらに含んでいてもよい。他の薬剤としては、例えば、インスリン抵抗性改善薬、脂質異常症治療薬、アンジオテンシンII1型受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、メトホルミン等が例示される。

【0025】
医薬組成物の剤形としては、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等の錠剤;カプセル剤;発泡顆粒剤等の顆粒剤;散剤;エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等の経口液剤;シロップ剤(シロップ用剤);経口ゼリー剤;トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等の口腔用錠剤;口腔用スプレー剤;口腔用半固形剤;含嗽剤;輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射剤等の注射剤;腹膜透析用剤、血液透析用剤等の透析用剤;吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤等の吸入剤;坐剤;直腸用半固形剤;注腸剤;点眼剤;眼軟膏剤;点耳剤;点鼻粉末剤、点鼻液剤等の点鼻剤;膣錠;膣用坐剤;外用固形剤(外用散剤);リニメント剤、ローション剤等の外用液剤;外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤;軟膏剤;クリーム剤;ゲル剤;テープ剤、パップ剤等の貼付剤などが挙げられる。これらの中でも経口投与のし易さの点で、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤および含嗽剤が好ましく、生体内に吸収され易い点で、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤がより好ましい。

【0026】
また、医薬組成物は、エキス剤、丸剤、酒精剤、浸剤、煎剤、茶剤、チンキ剤、芳香水剤、流エキス剤等の生薬関連製剤に、式(1)で表される化合物を添加した剤形で使用することもできる。これら剤形は、糖尿病、糖尿病合併症等の特定疾患の程度、その他の疾病の程度、年齢、性別等の条件に応じて適宜選択される。

【0027】
医薬組成物の投与量は、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患の程度、その他の疾病の程度、年齢、性別等の条件に応じて適宜選択される。例えば、AGEsの生成を抑制することができる量(以下、「AGEs生成抑制有効量」とも称する)の式(1)で表される化合物を投与すればよい。AGEs生成抑制有効量は、各種の非臨床および臨床試験の少なくとも一方を含む、当業者に周知の方法を用いて適宜決定することができる。

【0028】
医薬組成物は、AGEs生成抑制有効量の式(1)で表される化合物を一度に投与するものであってもよく、間隔を置いて複数回に分けて投与するものであってもよい。複数回に分けて投与する場合は、一日に投与される式(1)で表される化合物の合計量がAGEs生成抑制有効量となればよく、例えば、食事の回数に合わせて投与してもよい。

【0029】
医薬組成物は、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患に罹患した対象者又は健常者のいずれに対しても投与することができる。AGEsとの関連性が高い糖尿病等の特定疾患に罹患した対象者に対して投与することが好ましい。例えば、糖尿病に罹患した対象者とは、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.1%(JDS値)以上で、且つ、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する者を指す:(1)空腹時血糖値が126mg/dL以上、(2)随時血糖値(空腹か食後かにかかわらず)が200mg/dL以上、および(3)ブドウ糖負荷後2時間値が200mg/dL以上。糖尿病診断基準の詳細は、日本糖尿病学会による「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」(同学会のホームページ等から入手可能)に記載されている。

【0030】
処置方法
処置方法は、有効量の前記医薬組成物を、対象に投与することを含み、終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患を処置する方法である。特に処置方法は、アテローム性動脈硬化症を含む動脈硬化症、高脂血症、心血管疾患、脳血管障害、高血圧症、腎障害、慢性腎不全、認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む神経変性疾患、白内障、緑内障、並びにサルコペニアからなる群から選択される少なくとも1種の特定疾患を処置する方法である。医薬組成物の詳細および投与方法は既述の通りである。処置の対象は、例えば、哺乳動物であり、哺乳動物はヒトを含む。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1
アルブミン糖化実験
ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(Ca,Mg不含)(DPBS:ナカライテスク社製)中のα-グルコース(ナカライテスク社製)の最終濃度が0.2mol/Lで、ヒトアルブミン(SIGMA社製)の最終濃度が8mg/mlとなるように、エッペンドルフチューブ(750μl/tube)に調整した。各チューブに4-フェニル酪酸ナトリウム(PBA;LKT Laboratories,Inc.社製)を所定の最終濃度になるように適量添加して、60℃で40時間インキュベーションした。インキュベーション後の糖化アルブミン(AGEs)の生成レベルを、マイクロプレートリーダー(TECAN)を用いて蛍光強度(励起波長370nm、検出波長440nm)を測定することで評価した。また、PBAの代わりに、陽性対照としてアミノグアニジン(AG;和光純薬社製)を用い、同様にしてAGEsの生成レベルを評価した。結果を図1に示す。図1にはコントロールを100%としたときの抑制率を併せて示す。また、水を用いたコントロールを100としたときの相対蛍光強度を表1に示す。
【実施例】
【0033】
【表1】
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【実施例】
【0034】
図1及び表1から、4-フェニル酪酸ナトリウムは、用量依存的にアルブミンの糖化抑制作用を有することが認められた。
【実施例】
【0035】
実施例2
コラーゲン糖化実験
コラーゲン抗糖化アッセイキット(グリセルアルデヒド)(コスモバイオ社製)を用いて、4-フェニル酪酸ナトリウム(PBA)のコラーゲン糖化抑制能を評価した。陽性対照にはキットに付属のアミノグアニジンを用いた。アッセイはキットに付属の説明書に準じて行い、37℃で24時間のインキュベーションで行った。結果を図2に示す。図2には、コントロールを100%としたときの抑制率を併せて示す。なお、「+」を付した数値は生成レベルを上昇させたことを意味する。また、水を用いたコントロールを100としたときの相対蛍光強度を表2に示す。
【実施例】
【0036】
【表2】
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【実施例】
【0037】
図2及び表2から、4-フェニル酪酸ナトリウムは、用量依存的にコラーゲンの糖化抑制作用を有することが認められた。
【実施例】
【0038】
実施例3
2型糖尿病モデルマウスであるKK/Ta Jclマウス(10週齢、オス、各群n=2)を通常飼料(CE-2)で飼育し、12週間に渡って被験物質として4-フェニル酪酸ナトリウム(PBA)を経口投与して、血糖値、総コレステロール値(T-cho)、トリグリセリド(TG)、尿糖、及び尿量の変化を調べた。具体的には、4-フェニル酪酸ナトリウム20mgを蒸留水200μLに溶解したものを、マウス用経口ゾンデを用いて1日1回連日経口投与した。コントロールには水のみを投与した。10週齢から14週齢までは、随時採血によって血糖値、総コレステロール値及びトリグリセリドを測定し、随時排尿から尿糖を測定した。また、15週齢以降は、1週毎に12時間の絶食後に採血して、空腹時血糖値(FBS)、総コレステロール値及びトリグリセリドを測定した。絶食時に代謝ケージにて蓄尿し、尿量及び尿糖を測定した。なお、体重については絶食直前に測定した。また、22週齢の実験終了時にHbA1cを測定した。
【実施例】
【0039】
血糖値はグルテストセンサーチップを用いて測定した。総コレステロール値及びトリグリセリドはそれぞれT-cho用チップ及びTG用チップ(富士ドライケム社製)を用いて測定した。尿糖は尿糖試験紙(新ウリエースGa)を用いて測定した。HbA1cはDCA Vantage HbA1cカートリッジ(シーメンスヘルスケア社製)を用いて測定した。
【実施例】
【0040】
HbA1cの測定結果を平均値として表3に示す。また、体重及び尿糖の変化を図3に、血糖値の変化を図4に、総コレステロール値(T-cho)の変化を図5に、トリグリセリド(TG)の変化を図6に示す。
【実施例】
【0041】
【表3】
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【実施例】
【0042】
図3に示すように、コントロールに比べて被験物質の投与群は、体重の増加が緩やかであり、尿糖の陽性化が遅延した。また、コントロールに比べて被験物質の投与群は、HbA1c値が低値であった。
【実施例】
【0043】
(実施例4)
2型糖尿病モデルマウスであるKK/Ta Jclマウス(10週齢、オス、各群n=5)を通常飼料(CE-2)で飼育し、6週間に渡って被験物質として4-フェニル酪酸ナトリウム(PBA)を5mg/day又は20mg/dayで経口投与して、体重、尿糖、HbA1cの変化を調べた。具体的には、4-フェニル酪酸ナトリウム5mg又は20mgを蒸留水200μLに溶解したものを、マウス用経口ゾンデを用いて1日1回連日経口投与した。コントロールには水のみを投与した。1週毎に12時間の絶食後採血して空腹時血糖を測定した。また、12時間の絶食後に自由摂食させた2時間後に再び採血して血糖値を測定した。HbA1cは2週毎に測定した。さらに、13週目に経口ブドウ糖負荷試験を行った。経口ブドウ糖負荷試験は、1.5g/kgのブドウ糖を経口投与した後、60分ごとに採血して血糖値を測定して行った。結果を表4、図7、図8及び図9に示す。図7はHbA1cの変化を示すグラフであり、HbA1cの測定結果を平均値として表4に示す。また、図8は体重変化及び尿糖検査の結果を示すグラフであり、図9は経口ブドウ糖負荷試験の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0044】
【表4】
JP2019214546A_000008t.gif
【実施例】
【0045】
図7及び表4から、コントロールに比べて被験物質の投与群はHbA1cが低値であった。図8から、コントロールに比べて被験物質は2型糖尿病モデルマウスにおける体重増加を緩和した。
【実施例】
【0046】
以上から、式(1)で表される化合物は、生体内におけるAGEsの生成を用量依存的に抑制できることが示された。また、式(1)で表される化合物は、2型糖尿病モデルマウスにおいて、HbA1cを低値に誘導できることが示された。また、モデルマウスにおける体重増加を緩和し、尿糖の陽性化を遅延させることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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