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Specification :(In Japanese)工作機械の主軸システム

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2019-209399A
Date of publication of application Dec 12, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)工作機械の主軸システム
IPC (International Patent Classification) B23B  19/02        (2006.01)
F16C  19/06        (2006.01)
F16C  41/00        (2006.01)
F16C  35/12        (2006.01)
F16C  32/04        (2006.01)
B23Q  17/00        (2006.01)
FI (File Index) B23B 19/02 B
F16C 19/06
F16C 41/00
F16C 35/12
F16C 32/04 A
B23Q 17/00 A
Number of claims or invention 7
Filing form OL
Total pages 15
Application Number P2018-105077
Date of filing May 31, 2018
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】近藤 英二
Applicant (In Japanese)【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 3C029
3C045
3J102
3J217
3J701
F-term 3C029EE00
3C045FD03
3C045FD12
3C045FD16
3C045FD23
3J102AA01
3J102AA09
3J102BA03
3J102BA17
3J102CA02
3J102CA11
3J102CA22
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3J102GA07
3J217JA02
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3J217JA24
3J217JB23
3J217JB26
3J217JB68
3J217JB84
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
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3J701EA74
3J701FA01
3J701FA41
3J701GA31
Abstract (In Japanese)【課題】加工精度及び加工能率を向上することができる工作機械の主軸システムを提供する。
【解決手段】主軸システム1は、スピンドルモータ2と、スピンドル3と、スピンドル筐体4と、転がり軸受5と、能動制御磁気軸受6と、を備える。スピンドル3は、回転軸AXの方向の+Z端でスピンドルモータ2と連結され、回転軸AXの方向の-Z端で回転工具Tが装着される。スピンドル筐体4は、スピンドル3を収容する。転がり軸受5は、回転工具Tよりもスピンドルモータ2に近い第1の位置Z1で、スピンドル筐体4とスピンドル3との間に挿入され、スピンドル3をラジアル方向に支持する。能動制御磁気軸受6は、スピンドルモータ2よりも回転工具Tに近い第2の位置Z2で、スピンドル筐体4とスピンドル3との間に挿入され、スピンドル3のラジアル方向の変位を制御可能である。
【選択図】図1
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
回転軸の方向の一端で回転工具が装着されるスピンドルと、
前記スピンドルを収容するスピンドル筐体と、
第1の位置で、前記スピンドル筐体と前記スピンドルとの間に挿入され、前記スピンドルをラジアル方向に支持する転がり軸受と、
前記第1の位置よりも前記回転工具に近い第2の位置で、前記スピンドル筐体と前記スピンドルとの間に挿入され、前記スピンドルの前記第2の位置でのラジアル方向の変位を制御可能な能動制御磁気軸受と、
を備える、工作機械の主軸システム。
【請求項2】
前記能動制御磁気軸受は、
前記スピンドルの前記第2の位置の端部に固定された強磁性体と、
前記強磁性体に対して、前記スピンドルのラジアル方向に配置され、前記強磁性体を前記スピンドルのラジアル方向に吸引する電磁コイルと、
前記電磁コイルに流す電流を制御する制御部と、
を備える、
請求項1に記載の工作機械の主軸システム。
【請求項3】
前記能動制御磁気軸受は、
前記スピンドルのラジアル方向の変位を検出する変位センサを備え、
前記制御部は、
前記変位センサで検出された変位に基づいて、フィードバック制御を行い、前記電磁コイルに電流を流す電流を制御する、
請求項2に記載の工作機械の主軸システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記変位センサで検出された変位及びフィードバック制御の制御情報の少なくとも1つを記録又はモニタリング可能である、
請求項3に記載の工作機械の主軸システム。
【請求項5】
前記制御部は、
比例要素及び積分要素の少なくとも一方を含むフィードバック制御を行う、
請求項3又は4に記載の工作機械の主軸システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記フィードバック制御により生成された電流指令をバイアス電流値で補正し、
前記バイアス電流値で補正された電流指令に従って、前記電磁コイルに電流を流す、
請求項5に記載の工作機械の主軸システム。
【請求項7】
前記スピンドルは、その他端に接続されたモータ又は前記第1の位置と前記第2の位置に挿入されたビルトインモータにより回転駆動される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の工作機械の主軸システム。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタなどの回転工具用の工作機械に対する加工精度、加工能率の向上に対する要求が一段と高まっている(例えば、特許文献1参照)。その上、工作機械には、複雑な形状の加工品を加工できるようにすることが求められるようになってきている。加工品を複雑な形状に加工するには、長くて小径な回転工具の使用が不可欠である。さらには、安定した加工を行うため、工作機械に対して加工状態を監視する機能を有することが求められている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2003-89026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転工具を用いた切削加工における加工精度、加工能率を低下させる主な要因は、びびり振動の発生と切削抵抗によるたわみである。回転工具に小径で長いものを用いた場合には、回転工具の特性、すなわち剛性及び減衰がどのようなものであっても、びびり振動及びたわみの影響がさらに大きくなるのは明らかである。
【0005】
回転工具の先端での剛性と減衰に影響を与えるのが、回転工具を保持するスピンドルを回転可能に支持する軸受である。スピンドルを支持する軸受は、スピンドルモータ側に1つ、回転工具側に1つ必要となり、少なくとも2つの軸受が必要となる。
【0006】
軸受として一般的なものに転がり軸受がある。スピンドルを受動的に接触支持する軸受である転がり軸受を用いた場合には、スピンドルの剛性を高めスピンドルを安定して回転させることができる。しかしながら、スピンドルを支持する軸受を2つとも転がり軸受とした場合には、長くて小径な回転工具に発生するびびり振動やたわみを低減するのには限界がある。
【0007】
一方、非接触な方法で、能動的にスピンドルを軸支する軸受として、能動制御磁気軸受がある。スピンドルを支持する軸受として磁気軸受を使った場合には、回転工具の運動制御が可能となるため、長くて小径な回転工具のびびり振動の低減、回転工具のたわみの制御及び状態監視機能を期待することができる。しかしながら、スピンドルを支持する軸受を2つとも能動制御磁気軸受とした場合には、制御系が複雑となって、切削抵抗などの外乱に対する安定性が低下するおそれがある。また、能動制御磁気軸受は、高価であるという不都合もある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、加工精度及び加工能率を向上することができる工作機械の主軸システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械の主軸システムは、
回転軸の方向の一端で回転工具が装着されるスピンドルと、
前記スピンドルを収容するスピンドル筐体と、
第1の位置で、前記スピンドル筐体と前記スピンドルとの間に挿入され、前記スピンドルをラジアル方向に支持する転がり軸受と、
前記第1の位置よりも前記回転工具に近い第2の位置で、前記スピンドル筐体と前記スピンドルとの間に挿入され、前記スピンドルの前記第2の位置でのラジアル方向の変位を制御可能な能動制御磁気軸受と、
を備える。
【0010】
この場合、前記能動制御磁気軸受は、
前記スピンドルの前記第2の位置の端部に固定された強磁性体と、
前記強磁性体に対して、前記スピンドルのラジアル方向に配置され、前記強磁性体を前記スピンドルのラジアル方向に吸引する電磁コイルと、
前記電磁コイルに流す電流を制御する制御部と、
を備える、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記能動制御磁気軸受は、
前記スピンドルのラジアル方向の変位を検出する変位センサを備え、
前記制御部は、
前記変位センサで検出された変位に基づいて、フィードバック制御を行い、前記電磁コイルに電流を流す電流を制御する、
こととしてもよい。
【0012】
前記制御部は、
前記変位センサで検出された変位及びフィードバック制御の制御情報の少なくとも1つを記録又はモニタリング可能である、
こととしてもよい。
【0013】
前記制御部は、
比例要素及び積分要素の少なくとも一方を含むフィードバック制御を行う、
こととしてもよい。
【0014】
前記制御部は、
前記フィードバック制御により生成された電流指令をバイアス電流値で補正し、
前記バイアス電流値で補正された電流指令に従って、前記電磁コイルに電流を流す、
こととしてもよい。
【0015】
前記スピンドルは、その他端に接続されたモータ又は前記第1の位置と前記第2の位置に挿入されたビルトインモータにより回転駆動される、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スピンドルの軸受として、回転工具に近い方は磁気軸受が用いられ、遠い方は転がり軸受が用いられる。これにより、転がり軸受によりスピンドルの安定した回転を確保しつつ、能動制御磁気軸受により、電磁力を用いた外乱に強い制御系を採用することにより、回転工具のびびり振動の低減、回転工具のたわみの制御をすることができ、さらには加工状態を監視することができる。この結果、加工精度及び加工能率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る工作機械の主軸システムの構成を示す模式図である。
【図2】能動制御磁気軸受におけるステータの構成を示す上面図である。
【図3】打撃試験において制御磁気軸受のロータを打撃した場合のコンプライアンスの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る工作機械の主軸システムにおける自由振動のパラメータの一例を示す図である。
【図5】スピンドルの能動制御磁気軸受の位置でのばね特性の一例を示す図である。
【図6】能動制御磁気軸受の電磁コイルのステップ応答の一例を示す図である。
【図7】電磁コイル電流とスピンドルのたわみとの関係を示す図である。
【図8】能動制御磁気軸受の制御部の内部構成を示すブロック図である。
【図9】能動制御磁気軸受のコントローラにおけるフィードバック制御系の構成を示す制御ブロック図である。
【図10】(A)は、PID制御及びPI制御の制御パラメータの一例を示す図である。(B)は、PID制御のステップ応答の一例を示す図である。(C)は、PI制御のステップ応答の一例を示す図である。
【図11】(A)は、スピンドルの変位が振動する様子を示すグラフである。(B)は、スピンドルの変位に対応する磁力の変化を示すグラフである。
【図12】工作機械の主軸システムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。本実施の形態に係る工作機械の主軸システムは、回転工具を用いて切削加工を行うマシニングセンタに適用される。この主軸システムは、回転工具を回転させるスピンドルに発生するびびり振動の低減又はたわみの制御及び加工状態の監視を実現すべく、回転工具を回転させるスピンドルを支持する軸受を、回転工具から遠い方では転がり軸受を採用し、近い方では能動制御磁気軸受を採用する点に特徴を有する。

【0019】
図1に示すように、主軸システム1は、主軸モータとしてのスピンドルモータ2と、回転体としてのスピンドル3と、回転軸筐体としてのスピンドル筐体4と、転がり軸受5と、能動制御磁気軸受6と、を備える。

【0020】
スピンドルモータ2は、不図示のマシニングセンタの筐体に収容されている。スピンドルモータ2の固定子は、マシニングセンタの筐体に固定されている。スピンドルモータ2の回転子は、連結部2Aを介してスピンドル3の回転軸AXの+Z端に連結されている。スピンドルモータ2の回転子は、数千回転[rpm]から、数万回転[rpm]での回転が可能である。

【0021】
スピンドル3は、回転軸AXの方向に延びる円柱状の部材であり、例えば金属製(例えば炭素鋼)である。スピンドル3は、スピンドルモータ2の回転、すなわち回転子の回転ンに従って、回転軸AX周りに回転する。

【0022】
スピンドル3の回転軸AXの方向の-Z側端には、チャック3Aが取り付けられている。チャック3Aには回転工具Tが取り付けられる。すなわち、スピンドル3の回転軸AXの-Z側端には回転工具Tが装着される。回転工具Tには、例えばエンドミルがある。スピンドルモータ2の回転により、スピンドル3及び回転工具Tが回転し、X、Y、Z軸方向に可動な加工テーブル8に固定されたワークWの切削加工が行われる。

【0023】
スピンドル筐体4は、マシニングセンタの筐体の一部である。スピンドル筐体4は、円筒状の筐体であり、その内部にスピンドル3を回転軸AX周りに回転可能に収容する。図1では、スピンドル筐体4は、一部が破断して、その断面が図示されている。

【0024】
転がり軸受5は、転動体(接触玉)を2つの部品の間に置くことで荷重をラジアル方向に支持する軸受である。転がり軸受5は、回転工具Tよりもスピンドルモータ2に近い第1の位置Z1で、スピンドル筐体4とスピンドル3との間に挿入されている。本実施の形態では、転がり軸受5が2つ取り付けられている。

【0025】
能動制御磁気軸受6は、回転体を磁気浮上によって能動的に支持する軸受である。能動制御磁気軸受6は、第1の位置Z1よりも回転工具Tに近い第2の位置Z2で、スピンドル筐体4とスピンドル3との間に挿入されている。能動制御磁気軸受6は、スピンドル3の第2の位置Z2でのラジアル方向の変位を制御可能である。能動制御磁気軸受6は、磁気浮上による非接触支持を行うため、摩耗が生じない。そのため、潤滑油が不要であり、軸受の寿命は半永久的である。

【0026】
能動制御磁気軸受6は、強磁性体としてのロータ10と、電磁コイルを備えるステータ11と、変位センサ12と、制御部13と、を備える。

【0027】
ロータ10は、スピンドル3の第2の位置Z2に固定される強磁性体から成る部材である。ロータ10は、図2に示すように、スピンドル3と同心に取り付けられた円環状の部材である。強磁性とは、隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質の磁性をいう。ロータ10としては、例えば、ケイ素鋼板が用いられる。ケイ素鋼板とは、鉄に少量のケイ素を加えた合金であり、透磁率が比較的高く、安価であることから変圧器やモータの鉄心用の磁性材料として最も多く用いられている。

【0028】
ステータ11は、図2に示すように、スピンドル3及びロータ10と同心に配置された円環状の部材である。ステータ11とロータ10との間には、空隙が設けられている。ステータ11は、全体で8つの電磁石ユニット20を備える。8つの電磁石ユニット20は、ロータ10及びスピンドル3を中心とする円周上に均等に配列されている。ここで、ロータ10及びスピンドル3の中心をXYZ直交座標系の原点とする。この場合、Z軸とスピンドル3の回転軸AXとが一致する。

【0029】
電磁石ユニット20は、鉄心21と、コイル22とを備える。鉄心21は、例えばケイ素鋼板である。コイル22に電流が流れることにより、電磁石ユニット20には、ロータ10に対する磁界による吸引力が発生する。なお、8つの電磁石ユニット20では、コイル22に電流が流れたときのスピンドル3の極性の向きは、原点Oを中心とする半径方向に関して同じである。

【0030】
電磁石ユニット20は、2つで一組のユニットを構成する。ステータ11は、このようなユニットとして、駆動部11xp、11xn、11yp、11ynを備える。駆動部11xpは、ロータ10及びスピンドル3の+X側に配置されており、駆動部11xnは、ロータ10及びスピンドル3の-X側に配置されている。さらに、駆動部11ypは、ロータ10及びスピンドル3の+Y側に配置されており、駆動部11ynは、ロータ10及びスピンドル3の-Y側に配置されている。

【0031】
駆動部11xpを構成する一対の電磁石ユニット20のコイル22に電流を流すと、それらが電磁石となり、ロータ10及びスピンドル3を+X方向に磁力fEM(図8参照)で吸引する。一方、駆動部11xnを構成する一対の電磁石ユニット20のコイル22に電流を流すと、それらが電磁石となり、ロータ10及びスピンドル3を-X方向に磁力fEMで吸引する。駆動部11xp,11xnのいずれか一方がスピンドル3及びロータ10を吸引することにより、スピンドル3及びロータ10のX位置を制御する。

【0032】
また、駆動部11ypを構成する一対の電磁石ユニット20のコイル22に電流を流すと、それらが電磁石となり、ロータ10及びスピンドル3を+Y方向に磁力fEMで吸引する。一方、駆動部11ynを構成する一対の電磁石ユニット20のコイル22に電流を流すと、それらが電磁石となり、ロータ10及びスピンドル3を-Y方向に磁力fEMで吸引する。駆動部11yp,11ynのいずれか一方は、スピンドル3及びロータ10を吸引することにより、スピンドル3及びロータ10のY位置を制御する。

【0033】
変位センサ12は、スピンドル3及びロータ10のラジアル方向の変位、具体的にはX軸方向の変位X、Y軸方向の変位Yを検出する。変位センサ12は、静電容量センサ又は渦電流センサなどが用いられる。検出された変位X,Yは、制御部13のフィードバック制御の観測量として用いられる。

【0034】
上述のように、ステータ11は、ロータ10の位置を、X軸方向、Y軸方向に制御する。

【0035】
このように、本実施の形態に係る主軸システム1は、スピンドル3が、回転工具Tから遠い方は転がり軸受5、近い方は能動制御磁気軸受6で支えられたいわゆるハイブリッド主軸ともいうべきものである。図3には、能動制御磁気軸受6のロータ10を打撃する打撃試験を行った場合のコンプライアンス(変位/力)が示されている。図3に示すように、ロータ10のコンプライアンスでは、2ヶ所にピークが見られる。振動数が低い方のピークはロータ10の固有振動数に対応し、振動数が高い方のピークは回転工具Tの先端の固有振動数に対応している。したがって、回転工具T及びスピンドル3は、2自由度の振動系で近似することができる。

【0036】
図4には、主軸システム1における自由振動のパラメータの一例が示されている。図4に示すように、スピンドル3(炭素鋼)の固有振動数Ω1は、590Hzであり、回転工具T(エンドミル)の固有振動数Ω2は、625Hzである。また、スピンドル3(炭素鋼)の減衰係数ζ1は、0.015であり、回転工具T(エンドミル)の減衰係数ζ2は、0.007である。

【0037】
また、図5には、スピンドル3のばね特性が示されている。ロータ10に力Fを加えれば、スピンドル3はX軸方向及びY軸方向にたわむ。力Fとたわみδとの間には、図5に示すような線形関係(F=3.503δ+1.501)がある。したがって、能動制御磁気軸受6のステータ11によりロータ10に対してX軸方向及びY軸方向に力Fを加えることにより、スピンドル3のX、Y位置を制御することができる。

【0038】
図6には、能動制御磁気軸受6の電磁石ユニット20のコイル22の応答特性の一例が示されている。図6に示すように、ステータ11の電磁石ユニット20のコイル22にステップ状の電流を流したときにコイルに流れるコイル電流の応答は、コイル22のインダクタンスのために実測値、理論値ともに一次遅れとなっている。その時定数は0.5秒程度であり、能動制御磁気軸受6は、スピンドル3のX軸方向及びY軸方向の制御について、十分な応答性を有している。

【0039】
ただし、図7に示すように、電磁石ユニット20のコイル22に流れるコイル電流と、スピンドル3の撓みとの関係(バイアスなし)は、2次曲線となっており、非線形(without bias)となっている。そこで、能動制御磁気軸受6では、制御部13が、コイル電流値Irをバイアス電流値IBで補正することにより、コイル22に流れるコイル電流と、スピンドル3の撓みとの関係を線形(with bias)とする必要がある。

【0040】
制御部13は、ステータ11に流す電流を制御する。制御部13は、変位センサ12で検出された変位X,Yに基づいて、フィードバック制御を行い、電流指令Irを生成する。制御部13は、生成した電流指令に従った電流を、ステータ11の電磁石ユニット20のコイル22に流す。これにより、ステータ11がロータ10を磁力fEMで吸引し、スピンドル3及びロータ10のラジアル方向の変位X、Yをキャンセルする。

【0041】
制御部13の詳細な構成について説明する。図8には、制御部13における、スピンドル3及びロータ10のX位置を制御する制御系の構成が示されている。図8に示すように、制御部13は、コントローラ30を中心に構成されている。制御部13は、コントローラ30と、ローパスフィルタ31と、電圧アンプ32と、スイッチ回路33と、バイアス付与手段34p、34nと、加算部35p,35nと、電流アンプ36p,36nと、を備える。

【0042】
変位センサ12は、ロータ10の変位Xを検出し、その変位Xに関する電気信号を出力する。ロータ10の変位Xが0であるときの変位センサ12内のギャップはX0である。変位センサ12では、ギャップにおけるX0からの変化が変位Xとして検出され、その変位Xに対応する電気信号が出力される。ローパスフィルタ31は、変位センサ12から出力された電気信号を入力し、電気信号に含まれるカットオフ周波数以下の周波数成分を除去する。

【0043】
電圧アンプ32は、ローパスフィルタ31で高周波成分が除去された電圧信号を線形増幅して、出力する。

【0044】
コントローラ30は、電圧アンプ32で線形増幅された変位Xに対応する電圧信号を入力する。コントローラ30は、入力された電圧信号に基づいてフィードバック制御を行い、電流指令Irを出力する。

【0045】
スイッチ回路33は、コントローラ30から出力された電流指令Irの極性に基づいて、電流指令Irの出力先を切り換える。具体的には、電流指令Irが正である場合には、スイッチ回路33は、電流アンプ36pに電流指令Irを出力する。電流指令Irが正であるということは、変位センサ12で検出されるxが負であり、スピンドル3を+X方向に変位させる必要があるためである。この一方、スイッチ回路33は、電流指令Irが負である場合には、電流アンプ36nに電流指令Irを出力する。電流指令Irが負であるということは、変位センサ12で検出されるxが正であり、スピンドル3を-X方向に変位させる必要があるためである。

【0046】
バイアス付与手段34p,34nから一定のバイアス電流値IBを出力する。加算部35p,35nは、スイッチ回路33から出力された電流指令Irを、バイアス電流値IBで補正する。具体的には、電流指令Irが正である場合には、バイアス電流値IBは電流指令Irに加算され、電流指令Irが負である場合には、バイアス電流値IBは電流指令Irから減算される。図7に示すように、このバイアス電流値IBは、コイル電流とスピンドル3の変位X、Yとの線形性を向上するために用いられる。

【0047】
電流アンプ36p,36nは、バイアス電流値IBが加算された電流指令Ir’を線形増幅して出力する。出力された電流は、電磁石ユニット20のコイル22に流れる。電磁石ユニット20のコイル22に電流が流れると、ステータ11が、ロータ10を吸引してロータ10のX位置を制御する。

【0048】
制御部13には、図8に示すX位置の制御系に加え、同様の構成を有するY位置の制御系を備えている。制御部13は、X位置の制御系と、Y位置の制御系とをそれぞれ動作させて、スピンドル3のX位置及びY位置の制御を行う。

【0049】
コントローラ30は、フィードバック制御として、PID(比例積分微分)制御又はPI(比例積分)制御を行う。図9には、制御部13において構築された制御ブロックが示されている。Xは、変位センサ12で検出された変位である。変位センサ12は、変位Xに対応する電気信号を出力する。その変換係数はHである。出力された電気信号は、ローパスフィルタ31、電圧アンプ32を経て、コントローラ30に入力される。

【0050】
コントローラ30は、電圧アンプ32から出力された変位Xに対応する電気信号を入力し、その電気信号と目標値Iとの偏差eを算出する。コントローラ30は、PID制御器40を備えている。算出された偏差eは、PID制御器40に入力される。

【0051】
PID制御器40は、PID制御を行って電流指令Irを生成して出力する。PID制御器40は、比例要素による比例動作、積分要素による積分動作、微分要素による微分動作を行う。比例動作は、入力された変位Xに対応する信号の偏差に、予め設定された比例ゲインKpを乗算して、比例動作に基づく電流指令を生成する動作である。また、積分動作は、入力された変位Xに対応する信号の偏差の積分値に、積分ゲイン(積分時定数の逆数)KIを乗算して、積分動作に基づく電流指令を算出する動作である。微分動作は、入力された変位Xに対応する信号の微分値に、微分ゲイン(微分時間)KDを乗算して、微分動作に基づく電流指令を生成する動作である。PID制御器40は、比例動作に基づく電流指令と、積分動作に基づく電流指令と、微分動作に基づく電流指令とを加算して、それらの加算値を電流指令Irとして出力する。

【0052】
制御部13では、コントローラ30のPID制御器40から出力された電流指令Irが、バイアス電流値IBで補正されて、電流アンプ36p,36nで線形増幅される。そして、制御部13は、電流アンプ36p,36nで電流に変換された電流指令Ir’に対応するコイル電流を、駆動部11xp又は11xnの電磁石ユニット20のコイル22に流す。そして、電磁石ユニット20で発生する磁力fEMにより、ロータ10が吸引される。本実施の形態では、このようにして、変位XがX0に維持される。

【0053】
また、図3のコンプライアンスに示す固有振動数1240Hzに対しては、制御部13に、ローパスフィルタ31を挿入することでフィードバック制御系の発振が抑制されている。そのカットオフ周波数は例えば800Hzである。

【0054】
Y軸方向についても、図9に示すフィードバック制御系が構成されており、これにより、変位Yが制御される。

【0055】
PID制御器40の比例ゲインKP、積分ゲインKI、微分ゲインKDは、限界感度法により決定することができる。図10(A)には、PID制御器40における比例ゲインKP、積分ゲインKI、微分ゲインKDの一例が示されている。

【0056】
図10(B)は、PID制御器40において、変位Xを、ステップ状に変化させたときの工具変位のステップ応答である。図10(B)に示すように、PID制御を行った場合のステップ応答の結果で、立ち上がり時間は約4msで、オーバーシュートもほとんど見られなかった。すなわち、能動制御磁気軸受6においてPID制御を行うことにより、250Hz程度の応答性を期待することができる。

【0057】
本実施の形態では、コントローラ30において、PID制御に代えて、PI制御を行うことも可能である。図10(C)は、PI制御を行った場合の工具変位のステップ応答の結果である。図10(A)には、PI制御における比例ゲインKP、積分ゲインKIの一例が示されている。図10(C)に示すように、PI制御の場合には、立ち上がり時間は9msとなり、微分動作がないことにより応答性は低下し、立ち上がり時間は約2倍になった。

【0058】
なお、制御部13では、回転工具Tを用いた切削中の変位X,Y及び電流指令Ir、偏差eを含むフィードバックの制御情報の少なくとも1つを記録又はモニタリングすることができる。これにより、制御部13は、マシニングセンタにおける回転工具Tによる加工状態を監視することができる。

【0059】
制御部13によれば、図11(A)及び図11(B)に示すように、スピンドル3の変位Xの振動的な変動(点線)に応じて、その変位Xを打ち消す磁力fEMを、スピンドル3に与える。これにより、太い実線に示すように、変位Xの変動を打ち消すことができる。これにより、回転工具Tの切削により発生するびびり振動の低減又は回転工具Tのたわみの制御を行うことができる。

【0060】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、スピンドル3の軸受として、回転工具Tに近い方は能動制御磁気軸受6が用いられ、回転工具Tから遠い方は転がり軸受5が用いられる。これにより、転がり軸受5によりスピンドル3の安定した回転を確保しつつ、能動制御磁気軸受6の電磁力を用いた外乱に強い制御系を採用することにより、回転工具Tのびびり振動を低減し、回転工具Tのたわみを制御することができるうえ、加工状態を監視することができる。この結果、加工精度及び加工能率を向上することができる。

【0061】
このように、回転工具Tのびびり振動を低減し、回転工具Tのたわみを制御することができるため、回転工具Tを長くて小径なものとし、複雑な形状の加工品の加工も可能となる。

【0062】
また、能動制御磁気軸受6は、非接触にスピンドル3を支持するため、軸受の長寿命化を実現することができる。また、一方で、スピンドル3の上部では、転がり軸受5が採用されているので、主軸システム1の剛性の低減を抑制することができるうえ、主軸システム1を安価なものとすることができる。

【0063】
また、図12に示すように、スピンドルモータ2に代えて、ビルトインモータ2’を備える主軸システム1’を用いるようにしてもよい。ビルトインモータ2’は、回転子2Bと、固定子2Cとを備える。回転子2Bは、スピンドル3に同心に固定され、固定子2Cは、マシニングセンサのスピンドル筐体4’の内部空間に回転子2Bに対向する位置に固定されている。固定子2Cで発生する電磁力により、回転子2Bが回転し、これに伴いスピンドル3が回転する。すなわち、スピンドル3は、ビルトインモータ2’により回転駆動される。

【0064】
スピンドル3の駆動源としてビルトインモータ2’を用いる場合には、ビルトインモータ2’は、転がり軸受5と、能動制御磁気軸受6との間に挿入される。このような構成を有する主軸システム1’においても、転がり軸受5によりスピンドル3の安定した回転を確保しつつ、能動制御磁気軸受6の電磁力を用いた外乱に強い制御系を採用することにより、回転工具Tのびびり振動を低減し、回転工具Tのたわみを制御することができるうえ、加工状態を監視することができる。

【0065】
なお、上記実施の形態では、能動制御磁気軸受6では、変位センサ12で検出される変位X、Yに基づいてフィードバック制御を行った。しかしながら、本発明はこれには限られない。電磁石ユニット20のコイル22を流れる電流の変化に基づいて、スピンドル3の変位X,Yを検出するようにしてもよい。

【0066】
また、上記実施の形態では、限界感度法によりPID制御の各種ゲイン等の制御パラメータを調整した。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、ステップ応答法により、PID制御の各種ゲインを調整するようにしてもよい。

【0067】
また、上記実施の形態では、能動制御磁気軸受6における制御方式として、PID制御又はPI制御を用いた。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、比例動作よりも積分動作を重視するI-PD制御を行うようにしてもよい。他に、比例動作のみのP制御や、積分動作を除くPD制御を行うようにしてもよい。すなわち、制御部13は、比例要素及び積分要素の少なくとも一方を含むフィードバック制御を行うようにすればよい。また、フィードバック制御にフィードフォワード制御を組み合わせるようにしてもよい。また、ファジイ理論に基づく非線形制御を採用するようにしてもよい。このように、本発明は、制御方式には限定されない。

【0068】
なお、上記実施の形態では、マシニングセンタのスピンドルに本発明を適用する場合について説明したが、本発明はこれには限られない。旋盤のスピンドルに本発明を適用することができる。また、回転工具Tを用いる他の工作機械(例えばフライス盤)に本発明を適用することができる。

【0069】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械のスピンドルに適用することができる。特に、長くて小径な回転工具を用いた複雑な形状の加工品の切削加工に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1’ 主軸システム、2 スピンドルモータ、2’ ビルトインモータ、2A 連結部、2B 回転子、2C 固定子、3 スピンドル、3A チャック、4,4’ スピンドル筐体、5 転がり軸受、6 能動制御磁気軸受、8 加工テーブル、10 ロータ、11 ステータ、11xp,11xn,11yp,11yn 駆動部、12 変位センサ、13 制御部、20 電磁石ユニット、21 鉄心、22 コイル、30 コントローラ、31 ローパスフィルタ、32 電圧アンプ、33 スイッチ回路、34p,34n バイアス付与手段、35p,35n 加算部、36p,36n 電流アンプ、40 PID制御器、T 回転工具、W ワーク
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
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(In Japanese)【図12】
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