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明細書 :2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法、並びに、前記判定方法を用いて検査対象が小細胞肺がん、胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-000056 (P2020-000056A)
公開日 令和2年1月9日(2020.1.9)
発明の名称または考案の名称 2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法、並びに、前記判定方法を用いて検査対象が小細胞肺がん、胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法
国際特許分類 C12Q   1/6876      (2018.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/6813      (2018.01)
C12N  15/11        (2006.01)
FI C12Q 1/6876 Z
C12M 1/00 A
C12Q 1/6813 ZNAZ
C12N 15/11 Z
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 35
出願番号 特願2018-121179 (P2018-121179)
出願日 平成30年6月26日(2018.6.26)
発明者または考案者 【氏名】川野 竜司
【氏名】平谷 萌恵
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B063
Fターム 4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR45
4B063QR55
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX04
要約 【課題】2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を簡便に、且つ、精度よく判定する方法を提供すること。
【解決手段】2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料とを混合し混合物を得る工程と、ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る工程と、前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得て、前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定し、前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する工程と、を含む判定方法である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料とを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得て、
(3-3)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定し、
(3-4)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する第三の工程と、
を含む、
2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法。
【請求項2】
前記プローブは、前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドのそれぞれに相補的な配列を全て一分子中に含むプローブである、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記プローブにおける前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列の順番は、前記プローブと前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドとの複合体の自由エネルギーが最も低くなるように選択されている、
請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記プローブは、それぞれ異なる特定オリゴヌクレオチドに相補的な2種以上のプローブからなる、請求項1に記載の判定方法。
【請求項5】
前記第一の工程と前記第二の工程との間に、
前記混合物をアニーリング処理する工程を含む、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項6】
前記特定オリゴヌクレオチドがmiRNAであり、
前記プローブがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項7】
前記プローブは、ポリデオキシシトシン構造を3’末端に有する、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項8】
前記プローブは、ヘアピン構造を5’末端に有する、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項9】
前記第三の工程は、
前記度数分布を第一の度数分布とし、
前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含む、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項10】
前記第三の工程は、
前記第一の度数分布を基に、前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量を求めることを更に含む、
請求項9に記載の判定方法。
【請求項11】
前記第三の工程は、
前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含む、
請求項10に記載の判定方法。
【請求項12】
CPUと、メモリと、を備え、
(3-1A)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料との混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加して得られた、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度の電流経時変化データからインターバル時間を複数個求めること、
(3-2A)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得ること、
(3-3A)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定すること、
(3-4A)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定すること、
を含むプロセスにより2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定するように構成された判定装置。
【請求項13】
(1)小細胞肺がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、
(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに小細胞肺がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が小細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む、
検査対象が小細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する方法。
【請求項14】
(1)胆管がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、
(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに胆管がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は胆管がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が胆管がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む、
検査対象が胆管がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する方法。
【請求項15】
配列番号8の塩基配列を有するプローブ。
【請求項16】
配列番号9の塩基配列を有するプローブと、配列番号10の塩基配列を有するプローブと、を含む、プローブセット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法、並びに、前記判定方法を用いて検査対象が小細胞肺がん、胆管がん及び糖尿病に罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液などの体液サンプルから、対象となる特定のオリゴヌクレオチド等を検出する方法として、リキッドバイオプシーが知られている。リキッドバイオプシーは、例えば、がんに罹患すると差示的に発現するマイクロRNA等の複数種のオリゴヌクレオチドを検出する方法として、着目されている。
【0003】
特定のオリゴヌクレオチドを検出する技術として、ナノポア分析技術が知られている。ここで、ナノポア分析技術とは、ナノサイズの貫通孔を有するタンパク質において、該貫通孔を生体分子が通過するときに観測される電流の変化を基に、該生体分子を分析する技術である。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、ターゲットのオリゴヌクレオチドに対して相補的な配列を含み、3′末端、5′末端もしくはそれら両末端に末端伸長部を有するプローブを用いたナノポア分析技術を基礎とするオリゴヌクレオチドの検出法、が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2013-540423号公報
【特許文献2】特表2017-6135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のナノポア分析技術では、2種以上のオリゴヌクレオチドを検出の対象とした場合、それら2種以上のオリゴヌクレオチドそれぞれについて、存在の有無を判定することが困難であった。特に、がんでは、2種以上のオリゴヌクレオチドが差示的に発現することが知られており、2種以上のオリゴヌクレオチドの有無を簡便且つ精度よく判定することが求められている。そこで、本発明の課題は、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を簡便に、且つ、精度よく判定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0008】
<1> (1)2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料とを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得て、
(3-3)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定し、
(3-4)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する第三の工程と、
を含む、
2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法。
【0009】
<2> 前記プローブは、前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドのそれぞれに相補的な配列を全て一分子中に含むプローブである、前記<1>に記載の判定方法。
【0010】
<3> 前記プローブにおける前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列の順番は、前記プローブと前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドとの複合体の自由エネルギーが最も低くなるように選択されている、
前記<2>に記載の判定方法。
【0011】
<4> 前記プローブは、それぞれ異なる特定オリゴヌクレオチドに相補的な2種以上のプローブからなる、前記<1>に記載の判定方法。
【0012】
<5> 前記第一の工程と前記第二の工程との間に、
前記混合物をアニーリング処理する工程を含む、
前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の判定方法。
【0013】
<6> 前記特定オリゴヌクレオチドがmiRNAであり、
前記プローブがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、
前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の判定方法。
【0014】
<7> 前記プローブは、ポリデオキシシトシン構造を3’末端に有する、
前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の判定方法。
【0015】
<8> 前記プローブは、ヘアピン構造を5’末端に有する、
前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の判定方法。
【0016】
<9> 前記第三の工程は、
前記度数分布を第一の度数分布とし、
前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含む、
前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の判定方法。
【0017】
<10> 前記第三の工程は、
前記第一の度数分布を基に、前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量を求めることを更に含む、
前記<9>に記載の判定方法。
【0018】
<11> 前記第三の工程は、
前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含む、
前記<10>に記載の判定方法。
【0019】
<12> CPUと、メモリと、を備え、
(3-1A)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料との混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加して得られた、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度の電流経時変化データからインターバル時間を複数個求めること、
(3-2A)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得ること、
(3-3A)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定すること、
(3-4A)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定すること、
を含むプロセスにより2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定するように構成された判定装置。
【0020】
<13> (1)小細胞肺がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、
(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに小細胞肺がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が小細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む、
検査対象が小細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する方法。
【0021】
<14> (1)胆管がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、
(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、
(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに胆管がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は胆管がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が胆管がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む、
検査対象が胆管がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する方法。
【0022】
<15> 配列番号8の塩基配列を有するプローブ。
【0023】
<16> 配列番号9の塩基配列を有するプローブと、配列番号10の塩基配列を有するプローブと、を含む、プローブセット。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態によれば、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を簡便且つ精度よく判定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本開示に係るナノポア分析技術に用いる分析装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本開示に係るナノポア分析技術における電流経時変化データの一例を示すグラフである。
【図3】(A-1)~(C-1)は、本開示に係るナノポア分析技術における複合体とナノポアとの相互作用の例を表す概念図である。(A-2)~(C-2)は、(A-1)~(C-1)それぞれの場合に観測される電流経時変化データの例である。
【図4】実施例1における、第一の工程により電流経時変化データを得た後、複数の標本平均の度数分布を得るまでの工程を表すフローチャートである。
【図5】実施例1及び比較例1のそれぞれにおける、2種の特定オリゴヌクレオチドに関する含有パターンそれぞれのインターバル時間の度数分布を表すグラフである。
【図6】実施例2における、5種の特定オリゴヌクレオチドに関する7種類の含有パターンそれぞれの場合の中心極限定理に基づく処理により得られたインターバル時間の度数分布を表すグラフである。
【図7】(A)実施例3における健常者試料についての中心極限定理に基づく処理により得られたインターバル時間の度数分布を表すグラフである。(B)実施例3における胆管がん患者試料についての中心極限定理に基づく処理により得られたインターバル時間の度数分布を表すグラフである。
【図8】本開示に係る判定装置を構成に含む判定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。以下の実施形態は例示的なものであって、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。また、本開示に係る技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更及び修正が可能である。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
また、本開示に記載された具体的かつ詳細な内容の一部又は全てを利用せずとも本発明を実施可能であることは、当業者には明らかである。また、本発明の側面をあいまいにすることを避けるべく、公知の点については詳細な説明又は図示を省略する場合もある。
また、図面における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに制限されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。

【0027】
以下、本開示に係る2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法について、詳細に説明する。

【0028】
[2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法]
本開示に係る2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法は、(1)2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料とを混合し混合物を得る第一の工程と、(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得て、(3-3)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定し、(3-4)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する第三の工程と、を含む。

【0029】
本開示に係るナノポア分析技術の流れについて図面を参照しながら説明する。
図1に、本開示に係るナノポア分析技術に用いる分析装置の一例の概略断面図を示す。図1に示されるように、この分析装置は、例えば、ナノポア1Nと、脂質二重膜2と、第一の溶液3と、第二の溶液4と、測定試料に含まれる特定オリゴヌクレオチド5A及び5Bと、プローブ6と、電圧印加手段7と、を有する。また、第一の溶液3及び第二の溶液4には、電解質が含まれている。第一の溶液及び第二の溶液は、容器内に収容されている。なお、ナノポア分析技術に用いる分析装置としては、特開2015-77559、特開2014-10062等で開示されている分析装置が挙げられる。

【0030】
第一の溶液3及び第二の溶液4は、脂質二重膜2によって互いに隔てられている。脂質二重膜2は、脂質二重膜2の厚み方向に対し垂直に貫通するナノポア1Nを有する。ナノポア1Nは、脂質二重膜2の厚み方向に対し垂直に貫通する貫通孔1Pを有する。

【0031】
プローブ6と、測定試料に含まれる特定オリゴヌクレオチド5A及び5Bとを混合した混合物は、第一の溶液3中に含まれている。混合物において、プローブ6は、プローブ6中のそれぞれ異なる領域において2種の特定オリゴヌクレオチド5A及び5Bとハイブリダイゼーションし、複合体HYB2を形成する。

【0032】
電圧印加手段7は、第一の溶液3及び第二の溶液4それぞれに連結し、第一の溶液3と第二の溶液4との間に(つまり、脂質二重膜2を介する)電圧を印加できるようになっている。図示はしていないが、電圧印加手段7における第一の溶液3及び第二の溶液4それぞれに連結している先端には、それぞれ電極が備えられている。また、電圧印加手段7は、電源と電気的に接続されていてもよい。電圧印加手段7は、電圧計と電気的に接続されていてもよい。

【0033】
複合体HYB2は、電圧の印加により、第一の溶液3からナノポア1Nの貫通孔1P内に侵入し、第二の溶液4の方向へと進む。このとき、貫通孔1Pの空孔サイズは、一本鎖のオリゴヌクレオチドのみが通過できる空孔サイズである。そのため、複合体HYB2は、電圧の印加により貫通孔1P内を第二の溶液4方向への移動するにともない、特定オリゴヌクレオチド5A及び5Bとの二本鎖を解消し、プローブ6の一本鎖となりながら、貫通孔1P内を第2の溶液の方向へと進む。最終的にプローブ6は、貫通孔1P通り抜け第二の溶液4へと移動する。

【0034】
このナノポア分析にともなう電流の変化について、次に説明する。例えば、電圧印加手段7により第一の溶液3及び第二の溶液4の間に電圧を印加すると、貫通孔1Pを通る電流が観測される。次に、複合体HYB2が貫通孔1P内に侵入すると、貫通孔1Pにおける電流の通過が阻害され、電流強度の低下が観測される。そして、貫通孔1P内に侵入した複合体HYB2が、特定オリゴヌクレオチド5A及び5Bとの複合を解消し、プローブ6が貫通孔1Pを通過すると、阻害されていた貫通孔1Pを通る電流が再び流れ、電流強度が再び上昇する。なお、このナノポア1N内における複合体HYB2の挙動にともない電流強度が変動する現象は、プローブ6単体のみにおいても観測される。

【0035】
図2に、本開示に係るナノポア分析技術における電流経時変化データの一例を表すグラフを示す。
図2に示すように、電流経時変化データでは、ナノポアINの貫通孔1Pを通る電流が阻害されていない時間Tと、ナノポアINの貫通孔1Pを通る電流が阻害されている時間Tが観測される。本開示におけるナノポア計測技術では、このナノポアINの貫通孔1Pを通る電流が阻害されている時間T(以下「インターバル時間」とも称す)を、上述の電流経時変化データから読み取り、このデータに対して中心極限定理に基づく処理を行うことによって、測定試料における特定オリゴヌクレオチドの有無を判定している。

【0036】
図3(A-1)~(C-1)に、各複合体とナノポアとの相互作用の一例を表す概念図を示す。
図3(C-1)は、5種の特定オリゴヌクレオチド5A~5Eに相補的な配列を有するプローブ6に対し、全5種の特定オリゴヌクレオチド5A~5Eがハイブリダイゼーションし複合体HYB5を形成した場合のナノポア1Nと複合体HYB5との相互作用の一例である。図3(C-1)に示すように、電圧の印加により、ナノポア1Nの貫通孔1P内に侵入したHYB5は、第二の溶液4の方向へ移動するとともに特定オリゴヌクレオチド5A~5Eとの複合を段階的に解消していくと考えられる。

【0037】
図3(B-1)は、5種の特定オリゴヌクレオチド5A、5A~5Eに相補的な配列を有するプローブ6に対し、3種の特定オリゴヌクレオチド5A、5C及び5Eがハイブリダイゼーションし複合体HYB3を形成した場合のナノポア1Nと複合体HYB5との相互作用の一例である。図3(B-1)に示すように、HYB5と同様に、電圧の印加により、ナノポア1Nの貫通孔1P内に侵入したHYB3は、第二の溶液4の方向へ移動するとともに特定オリゴヌクレオチド5A~5Eとの複合を段階的に解消していくと考えられる。

【0038】
図3(A-1)は、5種の特定オリゴヌクレオチド5A~5Eに相補的な配列を有するプローブ6に対し、1種の特定オリゴヌクレオチド5Eのみがハイブリダイゼーションし複合体HYB1を形成した場合のナノポア1Nと複合体HYB5との相互作用の一例である。図3(A-1)に示すように、電圧の印加により、ナノポア1Nの貫通孔1P内に侵入したHYB1は、第二の溶液4の方向へ移動するとともに特定オリゴヌクレオチド5Eとの複合を解消していくと考えられる。

【0039】
上記複合体HYB5、HYB3及びHYB1のナノポア内における各挙動を、それぞれの電流経時変化データとしてとらえると、図3(A-2)~(C-2)に示すように、HYB5のインターバル時間INT-HYB5は、HYB3のインターバル時間INT-HYB3、及びHYB1のインターバル時間INT-HYB1よりも長くなる傾向にある。また、HYB3のインターバル時間INT-HYB3は、HYB1のインターバル時間INT-HYB1よりも長く、INT-HYB5よりも短くなる傾向にある。すなわち、インターバル時間は、プローブ6が形成する複合体の組み合わせに影響される傾向にある。また、インターバル時間は、プローブ6に複合する特定オリゴヌクレオチドの数の増加にともない、より長くなる傾向にある。なお、ここで特定オリゴヌクレオチドとは、プローブ6と複合する測定対象となるオリゴヌクレオチドのことを指し、その配列は特に限定されない。

【0040】
しかしながら、実際には、図3(A-2)~(C-2)に示すような電流経時変化データから、これらインターバル時間の差を直接的に読み取り、2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定することは困難である。この要因としては、例えば、1)同じ複合体(HYB5等)であっても、インターバル時間がばらつく傾向にあること、2)異なる複合体間におけるインターバル時間の差は、上記のばらつきに対して目視等で判定できるほど大きくはないため、観測された各インターバル時間を各特定オリゴヌクレオチド固有のインターバル時間として帰属できるだけの十分な信頼度が得られないこと、などが挙げられる。

【0041】
一方、本開示に係る判定方法では、2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を簡便に、かつ精度よく判定することができる。具体的に、本開示に係る判定方法では、例えば上述の方法で得られた電流経時変化データから求めた複数個のインターバル時間に対し、中心極限定理に基づく統計学的な処理を行う。この中心極限定理に基づく処理により、元々の電流経時変化データにおいてインターバル時間にばらつきがあったとしても、正規分布として分布の狭い度数分布を取得することができる。この結果、例えば、HYB2とHYB5といった異なる複合体間のインターバル時間の差が小さくても、ばらつきが大きく低減された正規分布を基にすれば十分な信頼度で帰属が可能となる。つまり、それぞれの複合体に帰属されるインターバル時間の差を判定し易くする。これにより、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を簡便に、かつ精度よく判定することができる。

【0042】
以下、各工程について詳細に説明する。

【0043】
(第一の工程)
本開示に係る判定方法は、第一の工程を含む。
第一の工程では、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料とを混合し混合物を得る。

【0044】
本開示に係る測定試料は、特定オリゴヌクレオチドを含んでいても、特定オリゴヌクレオチドを含んでいなくてもよい。測定試料に対し、本開示に係る判定方法を用いると、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定することができる。

【0045】
測定試料は、固体であっても液体であってもよい。測定試料が固体の場合、例えば、該固体を溶液媒体に懸濁、分散又は溶解した希釈液を使用することが好ましい。溶液媒体としては、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。

【0046】
測定試料としては、例えば、ヒト、非ヒト動物(ヒトを除く哺乳類等)等の検査対象に由来するサンプルが挙げられる。
上記検査対象に由来するサンプルとしては、例えば、生体由来の検体等が挙げられる。生体由来の検体としては、特に制限されず、尿、血液、唾液等が挙げられる。血液検体としては、例えば、赤血球、全血、血清、血漿等が挙げられる。
検査対象から得られたサンプルは、液体であってもよく、固体であってもよい。例えば、検査対象から得られたサンプルの未希釈液をそのまま使用してもよいし、該サンプルを媒体に、懸濁、分散又は溶解した希釈液を使用してもよい。検査対象から得られたサンプルが固体の場合、例えば、検体を溶液媒体に懸濁、分散又は溶解した希釈液を液体検体として使用することが好ましい。溶液媒体としては、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。このようにして得られた液体検体を、第一の溶液として、又は第一の溶液に添加して上記の判定方法において用いることができる。

【0047】
各特定オリゴヌクレオチドとプローブとの濃度比は、特に限定されず、測定試料の濃度に応じて適宜設定してよい。例えば、測定試料中に特定オリゴヌクレオチドが含まれている場合、前記特定オリゴヌクレオチドとプローブとの複合体を好適に形成させる観点から、各特定オリゴヌクレオチドとプローブとの濃度比は、1/20以上50,000,000/1以下であることが好ましく、1/10以上5,000,000/1以下であることがより好ましく、1/2以上500,000/1以下であることが更に好ましい。

【0048】
特定オリゴヌクレオチドとは、検出の対象となる特定の配列を有するオリゴヌクレオチドを表す。

【0049】
特定オリゴヌクレオチドは、プローブと容易にハイブリダイゼーションし、複合体を形成する点から、一本鎖オリゴヌクレオチドであることが好ましい。例えば、特定の疾患の有無によって差示的に発現する又はしない一本鎖オリゴヌクレオチド、つまり、発現が特定の疾患の有無に対して差示的であるオリゴヌクレオチドを、測定試料として選択してもよい。

【0050】
特定オリゴヌクレオチドは、15以上30以下の塩基長を有する一本鎖ヌクレオチドであることが好ましい。15以上30以下の塩基長を有する一本鎖ヌクレオチドとしては、例えば、一本鎖DNAであっても、マイクロRNA(miRNA)等の一本鎖RNAであってもよい。上記の中でも、特定オリゴヌクレオチドとしては、例えば、特定の疾患への罹患あるいは罹患リスクを判定する観点から、miRNAであることが好ましい。なお、特定オリゴヌクレオチドがmiRNAである場合、プローブはmiRNAに相補的な配列を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドとすることができる。

【0051】
本開示に係るプローブは、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有する一本鎖ポリヌクレオチドであれば、特に限定されない。プローブは、特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列以外の配列を含んでいてもよい。

【0052】
「相補的な配列」とは、測定試料における各特定オリゴヌクレオチドの配列の全長に対して所定程度以上の相補性を有する配列を表す。

【0053】
プローブにおける2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれに対する相補性は、プローブと、2種以上の特定オリゴヌクレオチドとがハイブリダイゼーションし複合体を得ることができれば、特に限定されない。例えば、プローブは、各特定オリゴヌクレオチドの配列に対し、80%以上の相補性を有する配列を含んでいてもよく、90%以上の相補性を有する配列を含んでいてもよく、95%以上の相補性を有する配列を含んでいてもよく、100%以上の相補性を有する配列(つまり、特定オリゴヌクレオチドの全長に対して完全に相補的な配列)を含んでいてもよい。あるいは、プローブは、各特定オリゴヌクレオチドに完全に相補的な配列に対して、5塩基以下の付加、欠失又は置換を行った配列を含んでいてもよい。各特定オリゴヌクレオチドに完全に相補的な配列に対するプローブの付加、欠失又は置換塩基数は、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。

【0054】
非特異的なハイブリダイゼーションを低減させ、特異的ハイブリダイゼーションの効率を上昇させる観点から、プローブは、各特定オリゴヌクレオチドの塩基配列それぞれに完全に相補的な配列を有することが好ましい。

【0055】
各特定オリゴヌクレオチドの塩基配列それぞれに完全に相補的な配列を有するプローブを用いることで、例えば、プローブにハイブリダイゼーションしている特定オリゴヌクレオチドの数が異なる複数の複合体について、それぞれのインターバル時間に、より差をつけることができる。

【0056】
プローブの種類は、1種であってもよく、複数種であってもよい。
プローブの種類が1種である場合、プローブは、2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれに相補的な配列を、それぞれ異なる領域に有する。

【0057】
プローブは、それぞれ異なる特定オリゴヌクレオチドに相補的な2種以上のプローブからなっていてもよい。プローブの種類が2種以上である場合、1つのプローブが2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な2種以上の配列の全てを含む必要は無く、各特定オリゴヌクレオチドに相補的なプローブが、2種以上のプローブのいずれか1つ以上に含まれていればよい。例えば、それぞれ配列の異なる特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有する2種以上のプローブを用いてもよい。この場合、使用するプローブの種類数は、対象とする特定オリゴヌクレオチドの種類数とすることができる。また、2種以上のプローブを用いる場合には、各プローブによるインターバル時間の差を調整するために、ポリエチレングリコールなどにより必要に応じてプローブを修飾してもよい。

【0058】
プローブは、前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドのそれぞれに相補的な配列を全て一分子中に含むプローブであってもよい。
プローブが、前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドのそれぞれに相補的な配列を全て一分子中に含むプローブであると、2種以上の特定オリゴヌクレオチドとプローブとが形成する種々の複合体のインターバル時間を調節し易くなる傾向にある。

【0059】
プローブは、それぞれ前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドの少なくとも1種に相補的な配列を含む複数のプローブ群であってもよい。
プローブが、それぞれ前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドの少なくとも1種に相補的な配列を含む複数のプローブ群であると、各プローブの設計及び/又は修飾により、2種以上の特定オリゴヌクレオチドとプローブとが形成する種々の複合体のインターバル時間を調節し易くなる傾向にある。

【0060】
プローブにおける、1つの特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列は、複数の部分に分割されて、それぞれの部分が別々のプローブに存在していてもよい。この場合、該別々のプローブが共存すれば、プローブをまたぐ形で相補的な配列が形成される。例えば、後述するプローブ2-1及びプローブ2-2は、プローブ2-1及びプローブ2-2をつなぐ形でmiR-20aへの相補的配列及びmiR-17-5aに相補的な配列が存在する。このような場合も、本開示では、「相補的な配列を有するプローブ」の範囲に含まれる。

【0061】
混合液に含まれるプローブの濃度は、特に限定されず、特定オリゴヌクレオチドの濃度等に応じて適宜設定してよい。例えば、少量の特定オリゴヌクレオチドに対してもプローブがハイブリダイゼーションし易いようにする観点から、0.01μmol/L以上10μmol/L以下であることが好ましく、0.05μmol/L以上5μmol/L以下であることがより好ましく、0.1μmol/L以上1μmol/L以下であることが更に好ましい。

【0062】
プローブにおける前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列の順番は、プローブと前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドとの複合体の自由エネルギーが最も低くなるように選択されていることが好ましい。

【0063】
プローブと前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドとの複合体の自由エネルギーが最も低くなるように、各特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列の順番が選択されると、プローブと2種以上の特定オリゴヌクレオチドとがハイブリダイゼーションし形成する複合体が、安定に存在しやすい。そのため、各複合体のナノポア分析におけるインターバル時間の変動が抑制される傾向にある。

【0064】
プローブの自由エネルギーは、Caltech(California Institute of Technology)のNUPACKにより求める。

【0065】
プローブは、ポリデオキシシトシン構造を3’末端に有することが好ましい。
プローブの3’末端にポリデオキシシトシン構造を有すると、プローブの3’末端側が、電圧を印加した際にナノポアの貫通孔内に、複合体がより侵入し易い傾向にある。

【0066】
ポリデオキシシトシン構造としては、デオキシシトシンを構成単位として有する重合体であれば、特に限定されない。例えば、ナノポアの貫通孔内に複合体を好適に存在させる目的で、ナノポアの貫通孔における厚み方向の長さよりも長い、デオキシシトシンを20個連結したポリデオキシシトシンであることが好ましい。

【0067】
プローブは、ヘアピン構造を5’末端に有することが好ましい。
ヘアピン構造は嵩高いため、プローブ1の5’末端がナノポアの貫通孔内に侵入し難い傾向にある。つまり、プローブの5’末端にヘアピン構造を有すると、プローブの5’末端側からのナノポアの貫通孔内への侵入を抑制し、3’末端側の一方向のみからナノポアの貫通孔内へ侵入させ易くすることができる。その結果、各複合体のナノポア分析におけるインターバル時間のばらつきが抑制される傾向にある。

【0068】
(アニーリング処理の工程)
本開示に係る判定方法は、第一の工程と、後述する第二の工程との間に、前記混合物をアニーリング処理する工程を含んでいてもよい。

【0069】
第一の工程と、後述する第二の工程との間に、前記混合物をアニーリング処理する工程を行うと、混合物中において、プローブと測定試料に含まれる特定オリゴヌクレオチドとがハイブリダイゼーションする際に、ミスマッチが生じ不安定な複合体が形成されたとしても、熱的により安定な複合体へと再配列させることができる傾向にある。そのため、得られた複合体のインターバル時間にムラが生じることを抑制できる傾向にある。

【0070】
アニーリングの温度としては、70℃以上100℃以下であることが好ましく、80℃以上100℃以下であることがより好ましく、90℃以上100℃以下であることが更に好ましい。
アニーリングの時間としては、1分以上20分以下であることが好ましく、1分以上15分以下であることがより好ましく、1分以上10分以下であることが更に好ましい。

【0071】
(第二の工程)
本開示に係る判定方法は、第二の工程を含む。
第二の工程では、ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る。なお、第一の溶液は、第一の工程にて得たプローブと測定試料とを混合した混合物を含む。

【0072】
ナノポアは、脂質二重膜の厚み方向を貫通する貫通孔を有するものであれば特に制限されず、イオンチャネル(例えば、黄色ブドウ球菌由来のαヘモリジン等のα溶血素膜貫通型タンパク質)、合成品等、適宜公的なものを使用してよい。例えば、二本鎖核酸の通過を抑止し、一本鎖核酸のみを通過させる孔径を有する点から、α溶血素膜貫通型タンパク質又はこれと同程度の孔径を有するイオンチャネルを用いることが好ましい。

【0073】
脂質二重膜を形成する脂質としては、室温において安定に脂質二重膜を形成可能であれば特に限定されず、適宜好適な脂質を用いてもよい。脂質二重膜を形成する脂質としては、例えば、ジフタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)、1,2—ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2—ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(DPhPE)、1,2—ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2—ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2—ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)等のリン脂質が挙げられる。上記の中でも、脂質二重膜を形成する脂質としては、室温においてより安定な脂質二重膜を得る観点から、相転移温度の高いジフタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)が好ましい。なお、脂質二重膜には、必要に応じてコレステロール等のステロイド化合物を含んで構成されていてもよい。

【0074】
脂質二重膜の作製方法としては、特開2015-77559、特開2014-10062等の公的な作製方法を適用してよい。

【0075】
ナノポア分析は、本開示の構成を有するものであれば、市販品を用いて行ってもよい。ナノポア分析が可能な市販品としては、例えば、オックスフォード・ナノポア・テクノロジーズ社製のMinION、GridIONX5、SmidgION、PromethION等が挙げられる。

【0076】
第一の溶液は、前記混合物の原液をそのまま第一の溶液としてもよく、前記混合物をpH緩衝溶液等に希釈したものを第一の溶液中としてもよい。

【0077】
第一の溶液に含まれるプローブの濃度は、特に限定されず、第一の溶液のスケールに応じて適宜設定してよい。例えば、各特定オリゴヌクレオチドに由来するインターバル時間の観測頻度を調製する観点から、0.01μmol/L以上10μmol/L以下であることが好ましく、0.05μmol/L以上5μmol/L以下であることがより好ましく、0.1μmol/L以上1μmol/L以下であることが更に好ましい。

【0078】
第一の溶液は、第一の工程にて得たプローブと測定試料とを混合した混合物を含む。
第一の溶液及び第二の溶液は、ナノポアの貫通孔内を通過する電流を観測することができれば、特に限定されず、適宜好適な電解液を適用してよい。電解液に含まれる電解質の種類としては、KCl、NaCl等が挙げられる。なお、電解液を用いた場合、電解質の濃度は、十分な電流強度を得る観点から、例えば、1000mM以上10M以下であってもよい。

【0079】
第一の溶液及び第二の溶液の種類は、ナノポア分析が可能であれば、特に限定されず、適宜好適な溶液を用いてよい。例えば、特定オリゴヌクレオチドがmiRNAである場合、第一の溶液及び第二の溶液としては、pHを6.0以上8.0以下に調整するpH緩衝溶液を用いてもよい。pH緩衝溶液に含まれるpH緩衝剤としては、特に限定されないが、例えば、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、及び3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(EPPS)等が挙げられる。

【0080】
第一の溶液及び第二の溶液は、容器又はウェル等に収容されていることが好ましい。

【0081】
第一の溶液及び第二の溶液の間に電圧を印加する方法は、第一の溶液及び第二の溶液の間に電圧を経時的に印加することができれば、特に限定されない。例えば、第一の溶液及び第二の溶液それぞれに電極を設け、これら2つの電極を通じて電圧を印加していてもよい。また、該電極は、電源及び電圧を制御する制御装置と電気的に接続されていてもよい。該電極は、電流経時変化データを得るモニタリング装置と電気的に接続されていてもよい。

【0082】
第一の溶液及び第二の溶液の間に印加する電圧は、プローブと特定オリゴヌクレオチドとの複合体をナノポアの貫通孔内に侵入させることができれば、特に限定されない。例えば、2種の以上の特定オリゴヌクレオチドとプローブの複合体のインターバル時間について、貫通孔の通過時間を短くしつつも複合体の種類別にそれぞれ判定しやすくする観点から、第一の溶液及び第二の溶液の間に印加する電圧は、50mV以上300mV以下であることが好ましく、100mV以上200mV以下であることがより好ましく、100mV以上160mV以下であることが更に好ましい。

【0083】
(第三の工程)
本開示に係る判定方法は、第三の工程を含む。
第三の工程では、
(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、
(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得て、
(3-3)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定し、
(3-4)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する。

【0084】
以下、各(3-1)~(3-4)の工程について詳細に説明する。

【0085】
(3-1)の工程では、第二の工程で得た電流経時変化データからインターバル時間を複数個求める。

【0086】
インターバル時間とは、「プローブと特定オリゴヌクレオチドとの複合体又は特定オリゴヌクレオチド単体が、ナノポアの貫通孔内に侵入したことにより、ナノポアの貫通孔を通過する電流が阻害されている時間」を表す。より具体的には、電流経時変化データにおいて、ナノポアの貫通孔を通過する電流強度から、電流強度が低下し、再び上昇するまでの時間を表す。

【0087】
ナノポアの貫通孔を通過する電流強度とは、プローブ及び特定オリゴヌクレオチドが第一の溶液中に存在しない状態、つまり、ナノポアの貫通孔が閉塞されていない状態において、電圧を印加したときに観測されるナノポアの貫通孔を通過する電流の強度を表す。

【0088】
電流強度の低下とは、プローブ及び特定オリゴヌクレオチドの複合体又は特定オリゴヌクレオチド単体が、ナノポアの貫通孔内に侵入したことにより、ナノポアの貫通孔を通過する電流が阻害され、ナノポアの貫通孔を通過する電流強度よりも電流強度が低下している状態を表す。

【0089】
ナノポアの貫通孔を通過する電流強度よりも電流強度が低下している状態としては、判断基準とする設定値を設け、前記設定値よりも電流強度が下回った場合に、電流強度が低下している状態と判断してもよい。例えば、電流経時変化データにおいて、前記ナノポアの貫通孔を通過する電流の電流値をIとし、この電流値Iと比較して電流値が設定値75%を下回っている状態を、電流強度が低下している状態として判断してもよい。

【0090】
電流強度が再び上昇するとは、ナノポアの貫通孔内の移動にともないプローブと特定オリゴヌクレオチドとの複合が解消され、プローブ単体が第二の溶液側へと通過することにより、阻害されていたナノポアの貫通孔を通過する電流が再び観測される状態を表す。例えば、電流経時変化データにおいて、前記電流値Iと比較して電流値が設定値75%を下回っている状態から、再び電流値Iまで電流値が上昇している状態を、電流強度が再び上昇する状態として判断してもよい。

【0091】
電流経時変化データから求めるインターバル時間のサンプル数、すなわち、母集団におけるサンプル数は、複数個以上あればよく、後述する中心極限定理に基づく処理により得る度数分布が正規性を示すならば、特に限定されない。例えば、電流経時変化データから求めるインターバル時間の値の数は、50個以上であることが好ましく、100個以上であることがより好ましく、100個以上15,000個以下であることが更に好ましく、100個以上1,000個以下であることが最も好ましい。なお、該インターバル時間のサンプル数は、生データ数に相当し、本開示中ではこれを母集団と考える。

【0092】
(3-2)の工程では、前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い、度数分布を得る。

【0093】
中心極限定理に基づく処理とは、母集団である複数個のインターバル時間から無作為にn個のインターバル時間を選択し標本集団とする工程Aと、前記標本集団の標本平均を求める工程Bと、前記工程A及び工程Bを繰り返す工程Cと、を含む処理である。中心極限定理に基づく処理は、その他の工程を含んでいてもよい。なお、nは2以上の整数を表す。

【0094】
工程Aでは、母集団である複数個のインターバル時間から無作為にn個のインターバル時間を選択し、標本集団を作成する。なお、母集団から無作為に抽出するn個のインターバル時間は、母集団から重複して選択することを許可し、母集団におけるデータ数よりも多い数を標本集団としてもよい。

【0095】
母集団である複数個のインターバル時間から無作為に選択するインターバル時間のサンプル数nとしては、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが更に好ましい。

【0096】
標本集団におけるサンプル数nが大きい(例えば、500以上である)と、標本集団を平均化した標本平均における分布が、正規分布となり易い傾向にある。

【0097】
工程Bでは、標本集団の標本平均を求める。
標本平均とは、上述で無作為に選択したn個の標本に関する算術平均値を意味する。

【0098】
工程Cでは、前記工程A及び工程Bを繰り返す。

【0099】
工程A及び工程Bの繰り返し数は、特に限定されず、母集団における母平均の度数分布の分散性に応じて、適宜設定してよい。例えば、工程A及び工程Bの繰り返し数は、10,000回以上であることが好ましく、50,000回以上であることがより好ましく、100,000回以上であることが更に好ましい。

【0100】
工程A及び工程Bの繰り返し数が多い(例えば、10,000回以上である)と、度数分布が正規分布となり易い傾向にある。その結果、例えば、種々の複合体間のインターバル時間の差が小さくても、ばらつきが大きく低減された正規分布が得られるため、信頼度の高い判定が可能となる。

【0101】
(3-3)の工程では、前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定する。

【0102】
度数分布は、各標本平均の値を階級、各標本平均の値の頻度を度数とした度数分布表であってもよく、その度数分布表をヒストグラムとしたものであってもよい。

【0103】
前記度数分布を基に2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定するとは、先の工程で得られた度数分布を、「各特定オリゴヌクレオチド固有の度数分布のパターン」又は「各特定オリゴヌクレオチドとプローブとの複合体に固有の度数分布のパターン」として、同定することを表す。

【0104】
第三の工程は、前記度数分布を第一の度数分布とし、2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含んでいてもよい。

【0105】
第三の工程において第二の度数分布と第一の度数分布とを比較する工程を含むと、種々の特定オリゴヌクレオチドの含有パターンを、より明確に取得することができる。

【0106】
第二の度数分布は、特定オリゴヌクレオチドとプローブとが形成する考えうるすべての複合体の種類について求めることが好ましい。

【0107】
第一の度数分布と、第二の度数分布とを比較する方法としては、例えば、各標本平均の信頼区間同士を比較してもよく、各標本平均の信頼区間と中央値とを比較してもよい。

【0108】
標本平均の信頼区間は、t検定により求める。

【0109】
標本平均の信頼区間としては、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。
標本平均の信頼区間が90%以上であると、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を、より精度よく判定することができると考えられる。

【0110】
第一の度数分布及び第二の度数分布の比較方法としては、例えば、以下の態様で行ってもよい。まず、第二の度数分布から、例えば、2250ms~2750msが、5種の特定オリゴヌクレオチド全てがプローブにハイブリダイゼーションしている複合体の含有パターンAの95%信頼区間であるという既知情報を得る。次に、第一の度数分布における中央値が、例えば、2500msである場合、含有パターンAの信頼区間内に含まれるため、含有パターンAである、との判定をする。

【0111】
なお、正規分布では、中央値と平均値は一致するが、分布が完全には正規分布ではない場合を考慮して、平均値を中央値の代わりに用いてもよい。

【0112】
(3-4)の工程では、前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する。

【0113】
測定試料に種々の特定オリゴヌクレオチドが全て含まれていない場合、プローブ単体に固有な度数分布を、第一の溶液に種々の特定オリゴヌクレオチドが全て含まれないときの固有の度数分布のパターンとして同定してよい。

【0114】
第三の工程は、前記第一の度数分布を基に、前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量を求めることを更に含んでいてもよい。

【0115】
第三の工程において、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量を求めると、がん等において差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドについて量的情報を得ることができる。

【0116】
第三の工程において、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの含有量を求める方法は、特に制限されない。例えば、前記第三の工程は、前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドの含有量が既知である溶液を前記測定試料として用いて、前記(3-1)及び(3-2)を行うことで得られる第三の度数分布と、前記第一の度数分布と、を比較する工程を含んでいてもよい。

【0117】
2種以上の特定オリゴヌクレオチドの量的情報が含まれる第三の度数分布と、第一の度数分布と、を比較すると、測定試料における2種以上の特定オリゴヌクレオチドに関する量的情報を、より正確に得ることができる。

【0118】
また、例えば、特定オリゴヌクレオチドが測定試料に含まれていたとしても、プローブに前記特定オリゴヌクレオチドが必ずハイブリダーゼーションしているとは限らない。つまり、第一の溶液における前記特定オリゴヌクレオチドの濃度に応じた確率で、前記特定オリゴヌクレオチドはプローブにハイブリダイゼーションし、複合体を形成すると考えられる。そのため、測定試料における前記特定オリゴヌクレオチドの濃度が増加すると、前記複合体の割合も増加する傾向にあり、これによりインターバル時間の度数分布も変動することが予想される。従って、上記工程によって2種以上の特定オリゴヌクレオチドに関する量的情報を得ることで、前記特定オリゴヌクレオチドの存在量について求めることができる。また、前記特定オリゴヌクレオチドの検出限界となる濃度についても推定することができる。

【0119】
なお、前記第二の度数分布及び/又はそれに基づく判定基準の代わりに、シミュレーション等が求めた度数分布及び/又は判定基準を用いてもよい。また、前記第三の度数分布及び/又はそれに基づく判定基準の代わりにシミュレーション等が求めた度数分布及び/又は判定基準を用いてもよい。

【0120】
(プローブ)
本開示によれば、配列番号8「GTCGAACGTTTTCGTTCGACCCTCATCTCGCCCGCAAAGACCCACCCTACCTGCACTGTAAGCACTTTTCCCACAAACCATTATGTGCTGCTACCCACTTATCAGGTTGTATTATAACCAACGGAACCACTAGTGACTTGCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC」の塩基配列を有するDNAであるプローブ(以下、「プローブ1」と称する)が提供される。

【0121】
プローブ1は、例えば、胆管がんにおいて差示的に発現するmiR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224のうち、1種以上のmiRNAの有無を判定するためのプローブとして用いることができる。

【0122】
プローブ1は、miR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224に対して、この順で3’末端側から完全に相補的な塩基配列と、3’末端側にポリデオキシシトシン構造と、5’末端側にヘアピン構造と、を有する。

【0123】
プローブ1は、miR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224に対し、完全に相補的な塩基配列を有している。そのため、ナノポア分析を利用したmiRNA測定におけるプローブとしてプローブ1を適用した場合、インターバル時間を好適に制御することができる。

【0124】
また、プローブ1は、miR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224に対し、この順で相補的な塩基配列を有している。そのため、プローブ1と、miR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224とが複合した複合体の自由エネルギーが最も低くなり、安定に存在しやすい。その結果、各複合体のナノポア分析技術におけるインターバル時間の変動が抑制される。

【0125】
プローブ1は、3’末端にポリデオキシシトシン構造を有する。そのため、ナノポア分析を利用したmiRNA測定におけるプローブとしてプローブ1を適用した場合、プローブ1の3’末端側が、電圧を印加した際にナノポアの貫通孔内に、より侵入し易い傾向にある。なお、ポリデオキシシトシン構造におけるシトシンの数(つまり、重合数)は、必要に応じて適宜変更してもよい。

【0126】
ヘアピン構造は嵩高い。そのため、ナノポア分析を利用したmiRNA測定におけるプローブとしてプローブ1を適用した場合、プローブ1の5’末端がナノポアの貫通孔内に侵入し難い。その結果、プローブ1の5’末端側からのナノポアの貫通孔内への侵入が抑制され、3’末端側の一方向のみからナノポアの貫通孔内へ侵入する傾向がある。

【0127】
(プローブセット)
本開示に係るプローブセットは、配列番号9「ACTACCTGCACTGTAAGACTATAAGCACTTTA」の塩基配列を有するDNAであるプローブ(以下、「プローブ2-1」と称す)と、配列番号10「CTACCTGCCACTTTG」の塩基配列を有するDNAであるプローブ(以下、「プローブ2-2」と称す)と、を含む。プローブセットは、その他のプローブを更に含んで構成されていてもよい。

【0128】
プローブ2-1と、プローブ2-2と、を有するプローブセットは、例えば、小細胞肺がんにおいて差示的に発現するmiR-20a及びmiR-17-5pのうち、1種以上のmiRNAの有無を判定するためのプローブセットとして用いることができる。

【0129】
プローブセットにおける、プローブ2-1及びプローブ2-2は、miR-20a及びmiR-17-5pに相補的な配列それぞれを、両プローブに分割された状態で有する。より具体的に、プローブ2-1と、プローブ2-1とが共存する場合に、両プローブをつなぐ形でmiR-20aへの相補的配列及びmiR-17-5aに相補的な配列が存在する。

【0130】
miR-20a及びmiR-17-5p並びにプローブ2-1及びプローブ2-2の全てが同時に存在する場合のみ形成される複合体と、miR-20a又はmiR-17-5pのどちらか一方と両プローブのみ、並びに、プローブ2-1及びプローブ2-2のみが存在する場合に形成される複合体は、ナノポア分析を利用したmiRNA測定において明確に区別し、測定することができる。

【0131】
[2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定するように構成された判定装置]
本開示に係る2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定装置は、CPUと、メモリと、を備え、
(3-1A)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料との混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加して得られた、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度の電流経時変化データからインターバル時間を複数個求めること、
(3-2A)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得ること、
(3-3A)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定すること、
(3-4A)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定すること、
を含むプロセスにより2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定するように構成されている。

【0132】
図8には、本開示に係る判定装置の一例としての判定装置100のブロック図を示す。図8に示すように、判定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、及び入出力インターフェース(I/O)106がバス105を介して互いに接続された構成を有している。I/O106は、イントラネット110を介して電流強度経時変化測定機器120に接続されている。

【0133】
2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無の判定処理を実行させるプログラムは、例えば、不揮発性メモリ104にあらかじめ記憶させておくことができる。その場合、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無の判定処理を実行させるプログラムを読み込んで実行する。また、CD-ROM等の記憶媒体に2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無の判定処理を実行させるプログラムを記録し、これをCD-ROMドライブ等で読み込んで実行してもよい。

【0134】
電流強度経時変化測定機器120としては、図1に示された分析装置を用いることができる。また、特表2013-540423、特表2016-517275、特開2017-6135等に記載の分析装置を用いることもできる。
電流強度経時変化測定機器120で得られた電流強度経時変化データは、イントラネット110を介して判定装置100に送信される。前記電流強度経時変化データに対してCPU101により、図4にS11~S13として例示するような中心極限定理に基づく処理を行い、標本平均の度数分布を得る。もちろん、図4における中心極限定理に基づく処理における母集団及び標本集団のサイズ、インターバル時間の抽出個数、ステップS12における繰り返し数などは単なる例示であって、本開示に基づいて適宜設定すればよい。例えば、上記第三の工程の説明を参照できる。

【0135】
この結果得られた標本平均の度数分布を、不揮発性メモリ104にあらかじめ記憶された、存在する特定オリゴヌクレオチドの組み合わせと標本平均の度数分布の判断基準(例えば中央値の95%信頼区間)との対応を示すデータと照合することにより、測定試料内に存在する特定オリゴヌクレオチドの組み合わせを同定する。これにより、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定することができる。存在する特定オリゴヌクレオチドの組み合わせと標本平均の度数分布の判断基準との対応を示すデータは、あらかじめ設定されたデータでもよいし、存在する特定オリゴヌクレオチドの組み合わせが既知である標準試料を測定し、中心極限定理に基づく処理を行うことで得た標本平均の度数分布のデータをI/O106から不揮発性メモリ104に送って記憶させたものであってもよい。

【0136】
上記の判定結果は、I/O106に接続したモニター等の表示装置130に出力して表示してもよい。なお、判定する対象は、特定オリゴヌクレオチドの有無に限定されず、特定オリゴヌクレオチドの存在量を含むものであってもよい。不揮発性メモリ104にあらかじめ記憶されておくデータを特定オリゴヌクレオチドの存在量の組み合わせと標本平均の度数分布の判断基準(例えば中央値の95%信頼区間)との対応を示すデータとすることで、このような判定が可能となる。

【0137】
図8においては、電流強度経時変化データは、イントラネット110を介して送信されているが、判定装置100は電流強度経時変化測定機器120に直結して一つの装置を形成していてもよい。あるいは、図8に例示されるように、判定装置100は電流強度経時変化測定機器120と共に、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定システムを構成していてもよい。

【0138】
また、本開示によれば、2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記処理が、以下の(3-1)~(3-4)を含むコンピュータプログラムが提供される:
(3-1A)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと測定試料との混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加して得られた、前記第一の溶液と前記第二の溶液との間を流れる電流の電流強度の電流経時変化データからインターバル時間を複数個求める工程、
(3-2A)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い度数分布を得る工程、
(3-3A)前記度数分布を基に前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドに由来する含有パターンを同定する工程、
(3-4A)前記含有パターンから前記測定試料における前記2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を判定する工程。

【0139】
本開示に係る判定装置におけるメモリ及びCPUとしては、特に制限されず、適宜好適な公知のものを適用してよい。

【0140】
[検査対象が小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法]
本開示に係る検査対象が小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法は、(1)小細胞肺がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに小細胞肺がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が小細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む。

【0141】
検査対象としては、例えば、ヒト、非ヒト動物等が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、ヒトを除く哺乳類等が挙げられる。

【0142】
検査対象から得られたサンプルとしては、例えば、生体由来の検体等が挙げられる。生体由来の検体としては、特に制限されず、尿、血液、唾液等が挙げられる。血液検体としては、例えば、赤血球、全血、血清、血漿等が挙げられる。

【0143】
検査対象から得られたサンプルは、液体であってもよく、固体であってもよい。例えば、検査対象から得られたサンプルの未希釈液をそのまま使用してもよいし、該サンプルを媒体に、懸濁、分散又は溶解した希釈液を使用してもよい。検査対象から得られたサンプルが固体の場合、例えば、検体を溶液媒体に懸濁、分散又は溶解した希釈液を液体検体として使用することが好ましい。溶液媒体としては、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。このようにして得られた液体検体を、第一の溶液として、又は第一の溶液に添加して上記の判定方法において用いることができる。

【0144】
小細胞肺がんにおいて差示的に発現する特定オリゴヌクレオチドとしては、例えば、miR-20a、miR-17-5p等が挙げられる。

【0145】
小細胞肺がんにおいて差示的に発現しない特定オリゴヌクレオチドとしては、例えば、miR-193、miR-374等が挙げられる。

【0146】
小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブとは、例えば、上述で例示した小細胞肺がんにおいて差示的に発現する特定オリゴヌクレオチド2種以上に対し相補的な配列を有するプローブである。

【0147】
小細胞肺がんにおいて差示的に発現しない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブとは、例えば、上述で例示した小細胞肺がんにおいて差示的に発現しない特定オリゴヌクレオチド2種以上に対し相補的な配列を有するプローブである。

【0148】
本開示に係る小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法におけるプローブは、小細胞肺がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有すること以外は、先述の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する方法におけるプローブと同じ構成を適用してよい。

【0149】
本開示に係る小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法において、前記第一の工程、第二の工程、及び第三の工程における(3-1)~(3-2)は、測定試料を「検査対象に由来するサンプル」とし、プローブを「細胞肺がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブ」とした以外は、前述の2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法における第一の工程、第二の工程、及び第三の工程における(3-1)~(3-2)と同様の工程としてよい。

【0150】
本開示に係る小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法において、(3-3)の工程では、前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに細胞肺がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が細胞肺がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する。

【0151】
小細胞肺がんに罹患していない健常者とは、小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種以上の特定オリゴヌクレオチドが、差示的に発現していないことが予め判明している個体を意味する。

【0152】
小細胞肺がんに罹患している罹患者とは、小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種以上の特定オリゴヌクレオチドが、差示的に発現していることが予め判明している個体を意味する。

【0153】
検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布と、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて得られた第二の度数分布と、を比較する方法としては、各サンプルの度数分布における標本平均の信頼区間同士を比較してもよく、標本平均の信頼区間と中央値とを比較してもよく、中央値同士を比較してもよい。例えば、検査対象が小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを、より精度よく判定する観点から、第一の度数分布及び第二の度数分布の比較は、各サンプルの度数分布における標本平均の信頼区間同士を比較することが好ましい。

【0154】
各度数分布の信頼区間は、t検定により求める。

【0155】
各度数分布における信頼区間としては、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが最も好ましい。

【0156】
各度数分布における信頼区間が、80%以上であると、検査対象が小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを、より精度よく判定することができると考えられる。

【0157】
第二の度数分布及び第三の度数分布は、実測して得た度数分布であっても、論文等を参照し予測した度数分布であってもよい。

【0158】
複数の異なる検査対象に由来するサンプルを判定する場合、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて第二の度数分布を得る工程は、毎回行わなくともよい。より具体的には、予め、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて第二の度数分布を得ておき、この第二の度数分布を、複数の異なる検査対象に由来するサンプルと比較し、判定してもよい。

【0159】
複数の異なる検査対象に由来するサンプルを判定する場合、小細胞肺がんに罹患してる罹患者に由来するサンプルを用いて第三の度数分布を得る工程は、毎回行わなくともよい。より具体的には、予め、小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて第三の度数分布を得ておき、この第三の度数分布を、複数の異なる検査対象に由来するサンプルと比較し、判定してもよい。

【0160】
検査対象に由来するサンプルを用いて得る第一の度数分布は、検査対象における年齢、生理的パラメータ等に応じて、適宜補正を行ってもよい。

【0161】
以下、判定基準について説明する。

【0162】
検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有さないと判定する判定基準としては、検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて得られた第二の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、を比較し、両者の面積が重複していない場合、検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有さない、と判定してよい。

【0163】
検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有すると判定する判定基準としては、検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて得られた第二の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、を比較し、両者の面積が50%以上重複している(より好ましくは60%以上)場合、検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有する、と判定してよい。

【0164】
また、検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布の信頼区間と、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルを用いて得られた第二の度数分布の中央値と、を比較し、前記信頼区間に前記中央値が含まれている場合においても、検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有する、と判定してよい。

【0165】
検査対象が小細胞肺がんに罹患していると判定する判定基準としては、検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布と、小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて得られた第三の度数分布と、を比較し、両者の度数分布の信頼区間における信頼区間のヒストグラムの面積が95%以上重複している(より好ましくは99%以上)場合、検査対象が小細胞肺がんに罹患している、と判定してよい。

【0166】
特に、健常者に由来するサンプルを用いて得られた第二の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、第一の度数分布における信頼区間のヒストグラムの面積と、を比較し、両者の面積が重複していない場合、検査対象が小細胞肺がんに罹患している、と判定してよい。

【0167】
また、検査対象に由来するサンプルを用いて得られた第一の度数分布の中央値と、小細胞肺がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて得られた第三の度数分布の中央値と、を比較し、両者の中央値が合致している場合においても、検査対象が小細胞肺がんに罹患しているリスクを有する、と判定してよい。

【0168】
本判定方法は、例えば、具体的に、以下の態様で行ってもよい。まず、前記第二の度数分布から、例えば、900ms~1200msが、小細胞肺がんに罹患していない健常者に由来するサンプルの度数分布における95%信頼区間である、という既知情報を得る。次に、前記第一の度数分布から、例えば、2250ms~2750msが、検査対象に由来するサンプルの度数分布における95%信頼区間である、という情報を得る。そして、これら第一の度数分布及び第二の度数分布における95%信頼区間を比較すると、両者の95%信頼区間は100%重なっていない。そのため、前記検査対象は小細胞肺がんに罹患しているリスクを有さない、との判定をする。

【0169】
なお、前記第二の度数分布及び/又はそれに基づく判定基準の代わりに、シミュレーション等が求めた度数分布及び/又は判定基準を用いてもよい。また、前記第三の度数分布及び/又はそれに基づく判定基準の代わりにシミュレーション等が求めた度数分布及び/又は判定基準を用いてもよい。

【0170】
なお、正規分布では、中央値と平均値は一致するが、分布が完全には正規分布ではない場合を考慮して、平均値を中央値の代わりに用いてもよい。

【0171】
[検査対象が胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法]
本開示に係る検査対象が胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法は、(1)胆管がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブと検査対象に由来するサンプルとを混合し混合物を得る第一の工程と、(2)ナノポアを有する脂質二重膜により互いに隔てられる、前記混合物を含む第一の溶液と第二の溶液との間に電圧を印加し、前記第一の溶液及び前記第二の溶液の間を流れる電流の電流強度を経時的に測定し電流経時変化データを得る第二の工程と、(3-1)前記電流経時変化データからインターバル時間を複数個求め、(3-2)前記複数個のインターバル時間について中心極限定理に基づく処理を行い第一の度数分布を得て、(3-3)前記第一の度数分布と、前記サンプルの代わりに胆管がんに罹患していない健常者又に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第二の度数分布及び/又は胆管がんに罹患している罹患者に由来するサンプルを用いて前記(1)~(3-2)を行うことで得られた第三の度数分布と、を比較することにより、前記検査対象が胆管がんに罹患していること又はそのリスクを有することを判定する第三の工程と、を含む。

【0172】
検査対象及び検査対象から得られたサンプルとしては、小細胞肺がん疾患の可能性を判定する方法で例示したものと同様の検査対象が挙げられる。

【0173】
胆管がんにおいて差示的に発現するオリゴヌクレオチドとしては、例えば、miR-374、miR-15a、miR-224、miR-106a、miR-193等が挙げられる。

【0174】
胆管がんにおいて差示的に発現しないオリゴヌクレオチドとしては、例えば、miR-20a、miR-17-5p等が挙げられる。

【0175】
胆管がんにおいて差示的に発現する2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブとは、例えば、上述で例示した胆管がんにおいて差示的に発現する特定オリゴヌクレオチド2種以上に対し相補的な配列を有するプローブである。

【0176】
胆管がんにおいて差示的に発現しない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブとは、例えば、上述で例示した胆管がんにおいて差示的に発現しない特定オリゴヌクレオチド2種以上に対し相補的な配列を有するプローブである。

【0177】
本開示に係る胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法におけるプローブは、胆管がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有すること以外は、先述の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する方法におけるプローブと同じ構成を適用してよい。

【0178】
本開示に係る胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法において、前記第一の工程、第二の工程、及び第三の工程における(3-1)~(3-2)は、測定試料を「検査対象に由来するサンプル」とし、プローブを「胆管がんにおいて差示的に発現する又はしない2種以上の特定オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブ」とした以外は、前述の2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法における第一の工程、第二の工程、及び第三の工程における(3-1)~(3-2)と同様の工程としてよい。

【0179】
本開示に係る胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法における(3-3)の工程は、小細胞肺がんの記載を胆管がんと置き換える点を除けば、先述の小細胞肺がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法における(3-3)の工程と同様の工程としてよい。
【実施例】
【0180】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【実施例】
【0181】
-材料の準備-
以下の材料を用いた。
【実施例】
【0182】
(特定オリゴヌクレオチド(miRNA)の作製)
下記に示す塩基の配列を有する各miRNAを、高速液体クロマトグラフィーグレード(DNA FASMAC Co., Ltd.)でそれぞれ合成し、65μg/mLの溶液にして使用した。
【実施例】
【0183】
・miR-374
配列番号1:UUAUAAUACAACCUGAUAAGUG
・miR-15a
配列番号2:UAGCAGCACAUAAUGGUUUGUG
・miR-224
配列番号3:CAAGUCACUAGUGGUUCCGUU
・miR-106a
配列番号4:AAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAG
・miR-193
配列番号5:UGGGUCUUUGCGGGCGAGAUGA
・miR-20a
配列番号6:UAAAGUGCUUAUAGUGCAGGUAG
・miR-17-5p
配列番号7:CAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAGU
【実施例】
【0184】
(緩衝溶液)
1.0M KCl、10mM MOPS、pH7.0の緩衝溶液を使用した。
【実施例】
【0185】
(プローブ1の作製)
プローブ1は、核酸塩基等の設計が可能なCaltech(California Institute of Technology)のNUPACKを用いて、塩基配列を設計した。プローブの塩基配列は、胆管がんにおいて差示的に発現することがわかっている5種の特定オリゴヌクレオチドmiR-193、miR-106a、miR-15a、miR-374及びmiR-224に対し、この順で3’末端側から完全に相補的な配列となるように設計した。次に、この設計した塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを高速液体クロマトグラフィーグレード(DNA FASMAC Co., Ltd.)でそれぞれ合成した。得られたオリゴヌクレオチドの5’末端にヘアピン構造を、3’末端にデオキシシトシンが20個連結したポリデオキシシトシンを導入し、これをプローブ1とした。プローブ1は、5’末端側から配列番号8「GTCGAACGTTTTCGTTCGACCCTCATCTCGCCCGCAAAGACCCACCCTACCTGCACTGTAAGCACTTTTCCCACAAACCATTATGTGCTGCTACCCACTTATCAGGTTGTATTATAACCAACGGAACCACTAGTGACTTGCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC」の塩基配列を有する。プローブ1は、緩衝溶液中、484.8μg/mLに調製したもの(以下、「プローブ1溶液」と称す)を使用した。
【実施例】
【0186】
(プローブ2-1の作製)
プローブ2-1は、核酸塩基等の設計が可能なCaltech(California Institute of Technology)社製のNUPACKを用いて、塩基配列を設計した。
プローブ2-1は、小細胞肺がんにおいて差示的に発現することがわかっている特定オリゴヌクレオチドmiR-20aに対し完全に相補的な塩基配列を、3’末端側に有する。また、プローブ2-1は、小細胞肺がんにおいてmiR-20aと同様に差示的に発現することがわかっている特定オリゴヌクレオチドmiR-17-5pに対し完全に相補的な塩基配列を、5’末端側に有する。プローブ2-1は、5’末端側から配列番号9「ACTACCTGCACTGTAAGACTATAAGCACTTTA」の塩基配列を有する。次に、この設計した塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを、高速液体クロマトグラフィーグレード(DNA FASMAC Co., Ltd.)で合成し、プローブ2-1を得た。プローブ2-1は、緩衝溶液中、1888μg/mLに調製したもの(以下、「プローブ2-1溶液」と称す)を使用した。
【実施例】
【0187】
(プローブ2-2の作製)
プローブ2-2は、核酸塩基等の設計が可能なCaltech(California Institute of Technology)社製のNUPACKを用いて、塩基配列を設計した。
プローブ2-2は、miR-20aに対し完全に相補的な塩基配列を、3’末端側に有する。また、プローブ2-2は、miR-17-5pに対し完全に相補的な塩基配列を、5’末端側に有する。プローブ2-2は、5’末端側から配列番号10「CTACCTGCCACTTTG」の塩基配列を有する。次に、この設計した塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを、高速液体クロマトグラフィーグレード(DNA FASMAC Co., Ltd.)で合成し、プローブ2-2を得た。プローブ2-2は、緩衝溶液中、447.9μg/mLに調製したもの(以下、「プローブ2-2溶液」と称す)を使用した。
【実施例】
【0188】
(ナノポアの作製)
ナノポアを有する脂質二重膜を、脂質としてジフタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC、Avanti Polar Lipids, Inc.)を用いて、1つのウェル上に設け、脂質二重膜によりウェル内の溶液を第一の溶液及び第二の溶液に隔てた。次に、脂質二重膜で隔てられる第一の溶液及び第二の溶液(それぞれ4.7μL)それぞれに、1M KClおよび10mM MOPS(pH7.0)を加えた。なお、ナノポアは、スタフィロコッカス・アウレウスから単離された単量体ポリペプチドである野生型αHL(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO and USA、List Biological Laboratories、Campbell、CA、USA)を使用した。
【実施例】
【0189】
-小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種のmiRNAの判定-
[実施例1]
【実施例】
【0190】
(第一の工程)
(プローブ2-1及びプローブ2-2のみを混合した、特定オリゴヌクレオチドを含まない混合物の調製)
1μLのプローブ2-1溶液と、1μLのプローブ2-2溶液と、を混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB0とした。
【実施例】
【0191】
(2種の特定オリゴヌクレオチドそれぞれとプローブ2-1及びプローブ2-2との1:1の混合物の調製)
測定試料である1μLのmiR-20a溶液と、1μLのプローブ2-1溶液と、1μLのプローブ2-2溶液と、を混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB1-20aとした。他方の特定オリゴヌクレオチドmiR-17-5pについても、HYB1-20aと同様にして、対応する混合物:HYB1-17-5pを調製し、アニーリング処理を行った。
【実施例】
【0192】
(2種の特定オリゴヌクレオチドとプローブ2-1及びプローブ2-2との2:2の混合物の調製)
測定試料であるそれぞれ1μLのmiR-20a溶液及びmiR-17-5p溶液と、1μLのプローブ2-1溶液と、1μLのプローブ2-2溶液と、を混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB2DUOとした。
【実施例】
【0193】
(第二の工程)
複合体HYB1-20a溶液を、第一の溶液中に4.7μL加えた。次に、第一の溶液から第二の溶液の方向へ+150mVの一定電圧を印加し、電流経時変化データを、Digidata 1440Aアナログ-デジタル変換器(Molecular Devices)を備えたClampex 9.0(Molecular Devices)を用いて、取得した。なお、Axopatch 200B Amplifier(Molecular Devices、San Jose、CA、USA)を用いて印加している電流を記録した。混合物HYB-193と同様にして、他の混合物:HYB0、HYB1-17-5p及びHYB2DUOについてもそれぞれ電流経時変化データを取得した。
【実施例】
【0194】
(第三の工程)
第二の工程により得られた複合体HYB1-20aに関する電流経時変化データを基に、度数分布を得た。図4に詳細なフローチャートを示す。まず、電流経時変化データS10から、300個のインターバル時間を取得し、これを母集団とした(S11)。次に、前記300個のインターバル時間から、無作為に10000個のインターバル時間を選択し、これを標本集団とした(S12A)。その後、この標本集団について算術平均を求め、これを標本平均とした(S12B)。図4に示すように、この標本集団を作成し標本平均を求める工程(S12)を65536回繰り返し、度数分布を得た。得られた65536個の標本平均の度数分布について、インターバル時間を対数表示としたヒストグラムを作成した(S13、及び図5(B-2)参照)。複合体HYB1-20aと同様にして作成したHYB0のヒストグラムを図5(B-1)に、HYB1-17-5pのヒストグラムを図5(B-3)に、HYB2DUOのヒストグラムを図5(B-4)に、それぞれ示す。なお、本開示において母集団とは、統計処理を行う前の測定データの意味で用いている。
【実施例】
【0195】
[比較例1]
(第一及び第二の工程)
実施例1と同様にして電流経時変化データを取得した。
【実施例】
【0196】
(第三の工程)
上記第二の工程により得られた複合体HYB1-20aに関する電流経時変化データから、300個のインターバル時間を取得し、これを母集団とした。次に、この母集団に対する算術平均を求めた。得られた算術平均の度数分布について、インターバル時間を対数表示としたヒストグラムを作製した(図5(A-2)を参照)。複合体HYB1-20aと同様にして作成したHYB0のヒストグラムを図5(A-1)に、HYB1-17-5pのヒストグラムを図5(A-3)に、HYB2DUOのヒストグラムを図5(A-4)に、それぞれ示す。
【実施例】
【0197】
-胆管がんにおいて差示的に発現する5種のmiRNAの判定-
[実施例2]
(第一の工程)
(5種の特定オリゴヌクレオチドそれぞれとプローブ1との1:1の混合物の調製)
測定試料である1μLのmiR-193溶液と、1μLのプローブ1溶液とを混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB1-193とした。他の特定オリゴヌクレオチドであるmiR-106a、miR-15a、miR-374、miR-224についても、miR-193と同様にして、それぞれ対応する混合物:HYB1-106a、HYB1-15a、HYB1-374及びHYB1-224を調製し、HYB1-193の場合と同様にアニーリング処理を行った。
【実施例】
【0198】
(3種の特定オリゴヌクレオチド全てとプローブ1との3:1の混合物の調製)
測定試料であるそれぞれ1μLのmiR-193溶液、miR-15a溶液及びmiR-224溶液と、1μLのプローブ1溶液とを混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB3とした。
【実施例】
【0199】
(5種の特定オリゴヌクレオチド全てとプローブ1との5:1の混合物の調製)
測定試料であるそれぞれ1μLの5種の特定オリゴヌクレオチドの溶液(miR-193溶液、miR-106a溶液、miR-15a溶液、miR-374溶液及びmiR-224溶液)と、1μLのプローブ1溶液と混合し、混合物を調製した。その後、混合物を95℃で5分間加熱し、次いで室温(25℃)にまで徐々に冷却するアニーリング処理を行った。このアニーリング処理後の混合物を、複合体HYB5とした。
【実施例】
【0200】
(第二の工程)
複合体HYB1-193溶液を、第一の溶液中に4.7μL加えた。次に、第一の溶液から第二の溶液の方向へ+150mVの一定電圧を印加し、電流経時変化データを、Digidata 1440Aアナログ-デジタル変換器(Molecular Devices)を備えたClampex 9.0(Molecular Devices)を用いて、取得した。なお、Axopatch 200B Amplifier(Molecular Devices、San Jose、CA、USA)を用いて印加している電流を記録した。混合物HYB-193と同様にして、他の混合物:HYB1-106a、HYB1-15a、HYB1-374、HYB1-224、HYB3及びHYB5についてもそれぞれ電流経時変化データを取得した。
【実施例】
【0201】
(第三の工程)
第二の工程により得られた複合体HYB1-193に関する電流経時変化データを基に、実施例1と同様にして得た65536個の標本平均の度数分布について、インターバル時間を対数表示としたヒストグラムを作成した(図6参照)。また、複合体HYB-193と同様にして、他の複合体:HYB1-106a、HYB1-15a、HYB1-374、HYB1-224、HYB3及びHYB5についてもそれぞれヒストグラムを作成した(図6参照)。なお、各複合体のヒストグラムにおいて、縦軸である頻度(度数)は、各正規分布の中央値にてノーマライズした値を示している。
【実施例】
【0202】
-血漿サンプルから、胆管がんにおいて差示的に発現する5種のmiRNAの判定-
[実施例3]
(健常者に由来するサンプル:第一及び第二の工程)
実施例1において、測定試料を、健常者の血漿から抽出したmiRNAを含む溶液5μLとした。その他は、実施例1と同様にして電流経時変化データを取得した。また、血漿は、健常者の血液から遠心分離することで得た。血漿からmiRNAを含む溶液の抽出には、NucleoSpin miRNA Plasma(製品番号740981.10、マッハライ・ナーゲル社製)を用いた。
【実施例】
【0203】
(健常者に由来するサンプル:第三の工程)
実施例1と同様にして得られた65536個の標本平均の度数分布について、インターバル時間を対数表示としたヒストグラムを作成した(図7(A)参照)。
【実施例】
【0204】
(検査対象に由来するサンプル:第一及び第二の工程)
実施例1において、測定試料を、胆管がんに罹患していることが予め判明している者の血漿から抽出したmiRNAを含む溶液とした。その他は、実施例1と同様にして電流経時変化データを取得した。また、血漿は、健常者の血液から遠心分離することで得た。血漿からmiRNAを含む溶液の抽出には、NucleoSpin miRNA Plasma(製品番号740981.10、マッハライ・ナーゲル社製)を用いた。
【実施例】
【0205】
(検査対象に由来するサンプル:第三の工程)
実施例1と同様にして得られた65536個の標本平均の度数分布について、インターバル時間を対数表示としたヒストグラムを作成した(図7(B)参照)。
【実施例】
【0206】
小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種の特定オリゴヌクレオチドにおける判定では、2種類のプローブを用いている。この2種類のプローブ2-1及び2-2を用いることで、小細胞肺がんにおいて差示的に発現する2種類の特定オリゴヌクレオチド、miR-20a及びmiR-17-5pと前記2種類のプローブと、の全てが同時に存在する場合のみ形成する複合体HYB2DUOと、miR-20a又はmiR-17-5pのどちらか一方のみしか存在しない場合に形成する複合体HYB1-20a又はHYB1-17-5pと、のそれぞれのインターバル時間を、より明確に差別化することができる。
【実施例】
【0207】
実施例1及び図5(B-1)~(B-4)に示すように、電流経時変化データに対し中心極限定理に基づく処理を行うことで、各種複合体(HYB0、HYB1-20a、HYB1-17-5p及びHYB2DUO)について、分布が狭く正規分布を示すヒストグラムがそれぞれ得られた。具体的に、各複合体のヒストグラムにおける信頼区間90%同士を比較すると、これら信頼区間が重複した範囲となっていない。そのため、種々の複合体のヒストグラム同士を、十分な信頼度で互いに比較し、区別することが可能である。
【実施例】
【0208】
一方、図5(A-1)~(A-4)に示すように、本開示に係る中心極限定理に基づく処理を行わずに、通常の母集団の平均化処理を行った比較例1では、前記2種の特定オリゴヌクレオチドとプローブとの種々の複合体について、分布の広いヒストグラムがそれぞれ得られた。具体的に、各複合体のヒストグラムにおける信頼区間90%同士を比較すると、これら信頼区間が全て重複した範囲となっている。そのため、種々の複合体のヒストグラム同士を比較しても、それぞれの複合体を区別することが不可能に近い。
これらの結果から、本開示に係る2種以上の特定オリゴヌクレオチドの有無を判定する判定方法によれば、比較例1では不可能に近かった2種以上の特定オリゴヌクレオチドそれぞれの有無を、簡便に、且つ、精度よく判定することができることがわかった。
【実施例】
【0209】
さらに、図6に示すように、胆管がんにおいて差示的に発現する5種の特定オリゴヌクレオチドにおける判定においても、電流経時変化データに対し、本開示に係る中心極限定理に基づく処理を行うことで、各種複合体(5種の各HYB1、HYB3及びHYB5)について、分布が狭く正規分布を示すヒストグラムがそれぞれ得られた。具体的に、各複合体のヒストグラムにおける信頼区間90%同士を比較すると、これら信頼区間が重複した範囲となっていない。そのため、種々の複合体のヒストグラム同士を、十分な信頼度で互いに比較し、区別することが可能である。
【実施例】
【0210】
また、本判定法を用いた胆管がんに罹患している又はそのリスクを有することを判定する方法では、胆管がんに罹患している患者に由来するサンプルを用いたヒストグラム(図7(B))は、健常者に由来するサンプルを用いたヒストグラム(図7(A))と比べて、その分布の位置(インターバル時間)に大きな差が見られる。具体的に、両ヒストグラムにおける信頼区間90%同士を比較すると、これら信頼区間が重複した範囲となっていない。そのため、検査対象は、胆管がんに罹患しているリスクを有さないと判定した。
【実施例】
【0211】
なお、胆管がんに罹患している患者に由来するサンプルを用いた実施例2のヒストグラム(図7(B))と、同じ胆管がんにおいて差示的に発現する5種の特定オリゴヌクレオチドの合成品を用いた実施例1のヒストグラム(図5-all 5 types)とでは、特定オリゴヌクレオチドの濃度の差などに起因して度数分布が観測されるインターバル時間に差がみられる。とはいえ、胆管がんに罹患している患者に由来するサンプルを用いた場合のヒストグラム(図7(B))は、胆管がんに罹患していない患者に由来するサンプルを用いた場合のヒストグラム(図7(A))と比べ、両ヒストグラムの信頼区間90%が重複した範囲となっていないため、判別の目的上十分な差を有しているといえる。
【符号の説明】
【0212】
1N ナノポア
1P ナノポアの貫通孔
2 脂質二重膜
3 第一の溶液
4 第二の溶液
5A、5B、5C、5D、5E 特定オリゴヌクレオチド
6 プローブ
7 電圧印加手段
100 判定装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 不揮発性メモリ
105 バス
106 入出力インターフェース(I/O)
110 イントラネット
120 電流強度経時変化測定機器
130 表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7