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明細書 :加工ツール及びこれを用いた穴加工機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-214079 (P2019-214079A)
公開日 令和元年12月19日(2019.12.19)
発明の名称または考案の名称 加工ツール及びこれを用いた穴加工機
国際特許分類 B23B  51/00        (2006.01)
B23B  37/00        (2006.01)
B23B  39/10        (2006.01)
FI B23B 51/00 Z
B23B 37/00
B23B 39/10
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-110851 (P2018-110851)
出願日 平成30年6月11日(2018.6.11)
発明者または考案者 【氏名】田中 智久
【氏名】酒井 康徳
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100011、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 省三
審査請求 未請求
テーマコード 3C036
3C037
Fターム 3C036AA00
3C036BB00
3C037FF00
要約 【課題】回転用のモータを用いない加工ツール及びこれを用いた穴加工機を提供する。
【解決手段】加工ツール3は、加振ユニット31、加振ユニット31からの振動運動エネルギーE1を並進運動エネルギーE21及び回転運動エネルギーE22に変換するスクィーズモード動作を行うためのレゾネータ32と、ドリル2を装着するためのドリルホーン33とによって構成される。レゾネータ32は、円板状の金属プレート321、金属筋交部322及び円板状の金属プレート323よりなる。このとき、金属プレート323は、円板状部と、円板状部がドリルホーン33に向って断面積が段階的又は連続的に減少するホーン部によって構成されている。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
加振ユニットと、
前記加振ユニットによって加振される少なくとも1つのレゾネータと、
前記レゾネータに結合され、ドリル装着口を有し、前記レゾネータから前記ドリル装着口に向って断面積が変化する少なくとも1つのドリルホーンと
を具備し、
前記レゾネータは、
前記加振ユニットに結合された第1の金属プレートと、
前記第1の金属プレートに結合された金属筋交部と、
前記金属筋交部と前記ドリルホーンとの間に結合された第2の金属プレートと
を具備する加工ツール。
【請求項2】
前記ドリルホーンの断面積の変化は段階的又は連続的である請求項1に記載の加工ツール。
【請求項3】
前記第1の金属プレート、前記金属筋交部及び前記第2の金属プレートは一体の金属構成体によって構成された請求項1に記載の加工ツール。
【請求項4】
前記第1の金属プレートは円板状をなし、
前記第2の金属プレートは、
前記金属筋交部に結合された円板状部と、
前記円板状部と前記ドリルホーンとの間に結合され、該円板状部から前記ドリルホーンに向って断面積が変化するホーン部と
を具備する請求項1に記載の加工ツール。
【請求項5】
前記第1、第2の金属プレートは共に円板状をなしている請求項1に記載の加工ツール。
【請求項6】
前記加工ツールの固有振動数は超音波領域の周波数である請求項1に記載の加工ツール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の前記加工ツールと、
前記加振ユニットに加振信号を発生するための加振信号発生ユニットと、
前記加工ツールを前記工作物に対して相対的に直進させるための直進送り機構と
を具備する穴加工機。
【請求項8】
前記加振信号発生ユニットは、
正弦波信号を発生するためのファンクションジェネレータと、
前記正弦波信号を増幅し、該増幅された正弦波信号を前記加振信号とするための増幅器と
を具備する請求項7に記載の穴加工機。
【請求項9】
さらに、前記ファンクションジェネレータ、前記増幅器及び前記直進送り機構を制御するための制御ユニットを具備する請求項7に記載の穴加工機。
【請求項10】
前記制御ユニットは前記ファンクションジェネレータを制御して前記正弦波信号の振動数を前記レゾネータの固有振動数とし、
前記制御ユニットは前記増幅器の増幅率を制御するようにし、
前記制御ユニットは前記直進送り機構を制御して前記加工ツールが前記工作物に対して所定の速度で直進させるようにした請求項9に記載の穴加工機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は加工ツール及びこれを用いた穴加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来の穴加工機(ボール盤)を示す図である。
【0003】
図8の穴加工機においては、工作物101を穴加工するためのドリル102を装着して穴加工する加工ツール103は、モータ1031と、モータ1031によって回転する主軸(スピンドル)1032と、主軸1032の先端に設けられ、ドリル102を装着するためのチャック機構1033とによって構成される。また、モータ1031は増幅器(AMP)104の出力によって駆動される。工作物101を固定するテーブル105はベース106上のガイド107に固定され、リニアモータ等のリニアアクチュエータ(LA)108によって駆動され、水平方向に移動する。他方、加工ツール103を工作物101に対して相対的に前進、後進させるために、加工ツール103を固定するテーブル109はベース110上のガイド111に固定され、リニアモータ等のリニアアクチュエータ(LA)112によって駆動され、上下方向に移動する。ここで、ベース110、ガイド111及びリニアアクチュエータ112は直線送り機構(垂直送り機構)を構成する。この場合、加工ツール103は矢印Fに示すごとく前進し、矢印Bに示すごとく後進することによって上下移動する。増幅器104、リニアアクチュエータ108、112は制御ユニット113によって制御される。
【0004】
図8の従来の穴加工機においては、工作物101の穴あけ加工は図9に示すごとく行われる。すなわち、図9の(A)の穴加工フェーズにおいて、主軸1032をたとえば右回転させてドリル102を回転させると同時に、リニアアクチュエータ112によって主軸1032を矢印Fに示すごとく前進させてドリル102を相対的に下方向に前進させる。この結果、工作物101の穴加工が進む。次に、図9の(B)の無視できない程度に長時間の切りくず排出フェーズにおいて、主軸1032の上述の右回転を持続させているドリル102をアクチュエータ112によって相対的に矢印Bに示すごとく上方向に後進させる。この結果、穴加工が停止されて切りくず101aが排出される。次に、図9の(C)の穴加工フェーズにおいて、図9の(A)の穴加工フェーズと同様に、ドリル102を右回転させると同時に、リニアアクチュエータ112によってドリル102を相対的に矢印Fに示すごとく下方向に前進させる。この結果、工作物101の穴加工が再開する。次に、図9の(D)の無視できない程度に長時間の切りくず排出フェーズにおいて、図9の(B)の切りくず排出フェーズと同様に、ドリル102の矢印に示す右回転を持続させると共に、アクチュエータ112によってドリル102を相対的に矢印Bに示すごとく上方向へ後進させる。この結果、穴加工が停止されて切りくず101aが排出される。以後、同様の穴加工フェーズ及び切りくず排出フェーズが繰返されることにより所望の穴加工を実現する。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Y.Jin, J. Plott, et al., “Additive Manufacturing of Custom Orthoses and Processes - A Review”, Procedia CIRP, Vol. 36, (2015), pp. 199-204.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8の従来の穴加工機の加工ツール103においては、ドリル102回転用のモータ1031を必要とするので、大型化しかつ製造コストが高いという課題がある。
【0007】
また、穴あけ加工には、後進送りによる加工プロセス全体に対して無視できない程度に長時間の切りくず排出フェーズを必要とするので、加工効率が悪いという課題もある。しかも、切りくず排除効率が悪いので、ドリル寿命の低下やドリル欠損の要因となる。
【0008】
さらに、深穴を加工する場合は、ドリル102を長く突き出して回転させる必要があるが、その場合は遠心力によってドリル102が振れ回り運動を起こす。また、切りくず101aが長くなるので、穴内部から排出されにくくなる。この結果、深穴加工が困難であるという課題もある。
【0009】
さらにまた、穴加工フェーズ及び切りくず排出フェーズにおいてドリル102は一方向へ高速に回転しているので、潤滑剤が加工点へ供給されにくく、従って、発熱、摩耗が大きくなり、この結果、ドリル102の寿命が短いという課題もある。
【0010】
さらにまた、主軸1032にドリル1個しか固定されないので、1回の穴加工は1つの穴しか加工できず、作業効率が悪いという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明に係る加工ツールは、加振ユニットと、加振ユニットによって加振される少なくとも1つのレゾネータと、レゾネータに結合され、レゾネータからドリル装着口に向って断面積が変化する少なくとも1つのドリルホーンとを具備し、レゾネータは、加振ユニットに結合された第1の金属プレートと、第1の金属プレートに結合された金属筋交部と、金属筋交部とドリルホーンとの間に結合された第2の金属プレートとを具備するものである。
【0012】
また、本発明に係る穴加工機は、上述の加工ツールと、加振ユニットに加振信号を発生するための加振信号発生ユニットと、加工ツールを工作物に対して相対的に直進させるための直進送り機構とを具備するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工ツールは回転用モータが不要となるので、構造が単純となる。従って、穴加工機に用いた場合、穴加工機の製造コストを低く抑えることができ、かつ小型化できる。これにより、穴加工に要するコストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る穴加工機の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1の加工ツールの概略図である。
【図3】図2のレゾネータのスクィーズモード動作原理を説明するための図である。
【図4】図2の加工ツールの固有振動数を説明するためのグラフである。
【図5】図1の穴加工機の動作を説明するための図である。
【図6】従来の穴加工機による加工痕及び図1の穴加工機による加工痕を示す写真である。
【図7】本発明に係る穴加工機の第2の実施の形態を示す図である。
【図8】従来の穴加工機を示す図である。
【図9】図8の穴加工機の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る穴加工機の第1の実施の形態を示す図である。

【0016】
図1において、工作物1の穴加工をするためにドリル2を装着して穴加工する加工ツール3は、加振ユニット31、レゾネータ32及びドリルホーン33によって構成される。

【0017】
加振ユニット31は超音波振動子、動電型加振器、圧電アクチュエータ等によって構成され、ファンクションジェネレータ41及び増幅器(AMP)42よりなる加振信号発生ユニット4によって発生される加振信号Asinωtを入力することで所望の角振動数ω、振動振幅Aで加振される。この場合、ファンクションジェネレータ41は与えられた角振動数ωに応じて正弦波信号sinωtを発生し、増幅器42は与えられた振動振幅Aに応じて正弦波信号sinωtを増幅した加振信号Asinωtを発生する。

【0018】
レゾネータ32及びドリルホーン33については後述する。

【0019】
工作物1を固定するテーブル5はベース6上のガイド7に固定され、リニアモータ等のリニアアクチュエータ(LA)8によって駆動され、水平方向に移動する。他方、加工ツール3を工作物1に対して相対的に前進、後進させるために、加工ツール3を固定するテーブル9はベース10上のガイド11に固定され、リニアモータ等のリニアアクチュエータ(LA)11によって駆動され、上下方向に移動する。ここで、ベース10、ガイド11及びリニアアクチュエータ12は直線送り機構(垂直送り機構)を構成する。たとえば、リニアアクチュエータ11によって加工ツール3は矢印Fに示すごとくゆっくりと前進することができる。

【0020】
工作物1を固定したテーブル5、ベース6及びガイド7で構成される水平送り機構によって工作物1を加工ツール3に対して相対的に水平運動させることで、所望の間隔で複数の穴を加工できる。

【0021】
加振信号発生ユニットのファンクションジェネレータ41、増幅器42及びリニアアクチュエータ8、12はマイクロコンピュータ等によって構成される制御ユニット13によって制御される。

【0022】
図1の加工ツール3の詳細を図2を参照して説明する。

【0023】
図2において、レゾネータ32は、加振ユニット31の振動運動エネルギーE1を並進運動エネルギーE21及び回転運動エネルギーE22に変換する動作(スクィーズモード動作)を行う。ドリルホーン33はレゾネータ32とドリル2との間に結合され、レゾネータ32からドリル2に向ってドリルホーン33の断面積が段階的または連続的に変化する。この結果、レゾネータ32の並進運動エネルギーE21及び回転運動エネルギーE22がドリル2に収束する。ここで、レゾネータ32はたとえば鋼等の金属材料よりなり、さらに、ドリルホーン33はたとえばアルミニウム等の金属材料よりなる。

【0024】
ドリルホーン33の形状を段階的又は連続的に変化させることにより、所望の後述の並進方向の振動振幅及び回転方向の振動角度振幅をドリル2の先端に付与することが可能となる。

【0025】
さらに、レゾネータ32は、円板状の金属プレート321、金属筋交部322及び円板状の金属プレート323よりなる。このとき、金属プレート323は、円板状部と、円板状部がドリルホーン33に向って段階的または連続的に断面積が変化するホーン部によって構成されているが、ホーン部を省略して円板状部とドリルホーン33とを直接結合してもよい。ドリルホーン33の先端のドリル装着口33aにドリル2が装着され、ドリル2はねじ33bや接着剤等によってドリルホーン33に固定される。

【0026】
レゾネータ32は一体的に構成された金属構造体である。複雑な幾何学形状を有する金属構造体は3D CADデータから直接立体を造形可能な金属積層造形AM(Additive Manufacturing)法によって容易に製造できる(参照:非特許文献1)。

【0027】
図2のレゾネータ32のスクィーズモード動作原理を図3の(A)、(B)を参照して説明する。尚、図3の(A)、(B)においては、便宜上、金属プレート323は円板状としてある。スクィーズモード動作自体はレゾネータ32の弾性的な固有振動によってもたらされるものであるので、荷重の有無によらず生じる。ここでは、加工中、金属プレート323上にはドリルホーン33及びドリル2によってある荷重が印加されている、たとえば、金属プレート323上のドリル2が工作物1に接触しているものとする。

【0028】
図3の(A)に示すごとく、加振ユニット31からの振動エネルギーE1が金属プレート321の垂直方向へ伝達されると、図3の(B)に示すごとく、金属プレート323に並進変位δが生じ、金属プレート323の並進運動エネルギーE21と金属筋交部322の回転運動エネルギーE22とに変換される。この並進運動エネルギーE21及び回転運動エネルギーE22はドリル2に伝達されてドリル2がスクィーズモード動作、つまり並進方向振動と回転方向角度振幅が微小なドリル中心軸周りの回転角度振動とを起こすことになる。

【0029】
スクィーズモード動作は、レゾネータ32の固有振動として生じる。そのため、所望の固有振動数でスクィーズモード動作が得られるようにレゾネータ32の金属筋交部322の形状を設計する。また、金属筋交部322の形状を変更することで、所望の並進方向の振動振幅及び回転方向の振動角度振幅を得ることができる。たとえば、ドリル2の並進方向の振動振幅は数μm~数十μm程度であり、周方向変位は数μm程度(回転方向の振動角度振幅は数秒~数十秒程度)である。

【0030】
穴加工を行うために、図3に示すスクィーズモード動作をする固有振動数で加工ツール3を加振する。加工ツール3の固有振動数νは、加振ユニット31、レゾネータ32、ドリルホーン33及びドリル2の振動特性によって決定される。このとき、有限要素解析を用いることで、加工ツール3がスクィーズモード動作をする固有振動数を事前に予測することができる。

【0031】
たとえば、金属プレート321、金属筋交部322、金属プレート323の材料は鋼とし、この場合のヤング率E=207GPa、損失係数η=0.0005とし、また、金属プレート321、金属プレート323の厚さを所定値、金属筋交部322の筋交本数を所定値とした場合の金属筋交部322の筋交の傾斜角θと固有振動数νとの関係を図4に示す。図4によれば、筋交の傾斜角θが大きくなる程、固有振動数νは小さくなることが分かる。

【0032】
特に、上記固有振動数νを超音波領域(20kHz~40kHz)の周波数に合致させると、ブラハ(Blaha)効果により工作物1の塑性流動性が向上し、切削抵抗が低下して加工力を低下できる。加えて、超音波による接触界面の摩擦低減も発生する。従って、ドリル2の寿命を長くできる。さらに、ドリル2の先端が高速で往復並進運動をするので、ドリル冷却剤、潤滑剤の効果的な供給により、また、MQL(Minimum Quantity Lubrication、潤滑剤噴霧)との組合せによる相乗的効果によりドリル2の寿命をさらに長くできる。

【0033】
図1の穴加工機の動作に当り、制御ユニット13はファンクションジェネレータ41の正弦波出力の周波数を加工ツール3の固有振動数νとおおむね一致させ、また、増幅器42の増幅率Aを最適値とし、さらに、リニアアクチュエータ12による工作物1の送り速度を最適値とする。

【0034】
図1の穴加工機の動作を図5を参照して説明する。尚、ここでは加工ツール3の固有振動数νは20kHz(固有振動周期0.05μs)とする。

【0035】
まず、加工ツール3は、図5の(A)に示すごとく、半周期(0.025μs)の間欠の穴加工フェーズとなり、ドリル2が第1の回転方向たとえば右回転しながら工作物1に対して押し付ける方向へ前進する。尚、この場合、ドリル2の送り速度は相対的に小さいので無視できる。

【0036】
次に、図5の(B)に示すごとく、半周期(0.025μs)の間欠の切りくず排出フェーズとなり、ドリル2が第2の回転方向たとえば左回転しながら工作物1から離れる方向へ後進する。このとき、工作物1とドリル2との間に微小の隙間Gが発生する。尚、この場合も、ドリル2の送り速度は相対的に小さいので無視できる。

【0037】
レゾネータ32のスクィーズモード動作によって生じる加工ツール3が有する固有の弾性振動を利用しているので、穴加工フェーズと切りくず排出フェーズとが加工ツールの固有振動周期(0.05μs)で繰り返す。このとき、並進方向の振動振幅及び回転方向の振動角度振幅は2フェーズ間でそれぞれおおむね同一である。

【0038】
このように、一連の動作を非常に短時間(0.05μs)で繰り返すので、図5の(C)に示すごとく、穴加工フェーズと切りくず1aを排出する切りくず排出フェーズとが実質的に同時に行われていると等価であると言え、このとき、リニアアクチュエータ12によってドリルの振動速度よりも低速でドリル2の前進が行われる。従って、従来の直進送り機構による後進による加工効率を低下させるほど長時間の切りくず排出フェーズは存在しないので、加工効率を向上できると共に、切りくず排除効率も向上でき、深穴加工も可能となる。また、ドリル2の回転方向は穴加工フェーズと切りくず排出フェーズとが交互に短時間(0.025μs)で切換り、回転方向の振動角度振幅も微小なので、潤滑剤が加工点へ供給され易くなり、従って、発熱、摩擦が小さくなり、この結果、ドリル2の寿命を長くできる。

【0039】
また、制御ユニット13は増幅器42の増幅率Aを調整してドリル2の振動振幅を延性モードによる穴加工が実現できる程度に小さい値となるようにする。これにより、ガラス等の高脆材料の工作物1に対して延性モードによる高精度、高効率の高アスペクト比の穴加工ができる。

【0040】
図6は従来の穴加工機による加工痕及び図1の穴加工機による加工痕を示す写真である。尚、図6は、ポリスチレンブロックの工作物を直径1mmの汎用ドリルで加工した場合を示す。

【0041】
従来の穴加工機(ボール盤)によれば、ドリル回転数1000rpmとした場合、図6の(A)に示すごとく、穴内部に切りくずがむしれた形状で溜まると共に、穴縁にむしれた痕が発生していた。つまり、きれいな穴が加工できていなかった。これに対し、本発明の第1の実施の形態によれば、図6の(B)に示すごとく、切りくずがリンゴの皮むきのように生成されて穴内部に溜まらず、また、穴の側面及び縁形状が良好であった。

【0042】
図7は本発明に係る穴加工機の第2の実施の形態を示す図である。

【0043】
図7の穴加工機においては、図1の加工ツール3の代りに加工ツール3’を設ける。加工ツール3’においては、1つの加振ユニット31、レゾネータ32-1、32-2、…、32-5、ドリルホーン33-1、33-2、…、33-5、ドリル2-1、2-2、…、2-5を設ける。従って、1つの加振ユニット31によってドリル2-1、2-2、…、2-5を同時に振動できる。この結果、工作物1に対して5個の穴加工を同時に行えるので、加工能率を著しく向上できる。尚、図7の加工ツール3’におけるレゾネータ、ドリルホーン及びドリルの数は5に限らず、任意の数に設定できる。

【0044】
また、図7の穴加工機においては、深さ及び直径が異なる複数の穴も同時に加工することも可能である。この場合、各ドリル2-1,2-2,…,2-5の直径や突き出し量を変更すればよい。このとき、加振ユニット31で入力される振動数において各ドリル2-1,2-2,…,2-5にスクィーズモード動作が生じるように,レゾネータ32-1、32-2、…、32-5の金属筋交部の設計をそれぞれ行うこともできる。

【0045】
尚、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:工作物
1a:切りくず
2、2-1、2-2、…、2-5:ドリル
3、3’:加工ツール
31:加振ユニット
32、32-1、32-2、…、32-5:レゾネータ
33、33-1、33-2、…、33-5:ドリルホーン
33a:ドリル装着口
33b:ねじ
4:加振信号発生ユニット
41:ファンクションジェネレータ
42:増幅器(AMP)
5:テーブル
6:ベース
7:ガイド
8:リニアアクチュエータ(LA)
9:テーブル
10:ベース
11:ガイド
12:リニアアクチュエータ(LA)
13:制御ユニット
101:工作物
101a:切りくず
102:ドリル
103:加工ツール
1031:モータ
1032:主軸
1033:チャック機構
104:増幅器 (AMP)
105:テーブル
106:ベース
107:ガイド
108:リニアアクチュエータ(LA)
109:テーブル
110:ベース
111:ガイド
112:リニアアクチュエータ(LA)
113:制御ユニット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8