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明細書 :抗CD70抗体とIgG結合ペプチドの複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-019723 (P2020-019723A)
公開日 令和2年2月6日(2020.2.6)
発明の名称または考案の名称 抗CD70抗体とIgG結合ペプチドの複合体
国際特許分類 C07K  19/00        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  47/55        (2017.01)
A61K  47/68        (2017.01)
A61K  47/60        (2017.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  31/537       (2006.01)
FI C07K 19/00 ZNA
C07K 7/08
C07K 16/28
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00 121
A61K 45/00
A61K 47/55
A61K 47/68
A61K 47/60
A61K 39/395 E
A61K 39/395 D
A61K 39/395 T
A61K 39/395 N
A61K 31/537
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2018-142584 (P2018-142584)
出願日 平成30年7月30日(2018.7.30)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
発明者または考案者 【氏名】馬場 昌範
【氏名】横田 璃里
【氏名】伊東 祐二
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
Fターム 4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB50
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA40
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA33
4H045FA52
4H045FA61
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA25
要約 【課題】CD70発現細胞に特異的に薬剤を送達することが可能な薬剤又は方法を提供する。
【解決手段】IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されている複合体、及び該複合体を含む。
【選択図】図1-2
特許請求の範囲 【請求項1】
IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、
前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されており、
前記IgG結合ペプチドが、下記の式I:
(X1-3)-C-(X2)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能である、
前記複合体。
【請求項2】
前記IgG結合ペプチドが、下記の式II:
(X1-3)-C-(Xaa3)-(Xaa4)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (II)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa3はアラニン残基、セリン残基又はトレオニン残基であり、かつ
Xaa4はチロシン残基又はトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記IgG結合ペプチドが、下記の式III:
(X1-3)-C-A-Y-H-(Xaa1)-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (III)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記式I~IIIのいずれかによって表されるアミノ酸配列が17アミノ酸残基とした場合、N末端から1~3、15~17番目の各アミノ酸残基が、
1番目のアミノ酸残基= S、G、F、又はなし、
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P、ホモシステイン、又はなし、
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E、又はR、
15番目のアミノ酸残基= S、T、又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F、ホモシステイン、又はなし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M、又はなし、
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記IgG結合ペプチドが、以下の1)~15)のいずれかのアミノ酸配列を含む、ただし、Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、Xaa2はホモシステインである、請求項4に記載の複合体。
1)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(配列番号1)
2)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号2)
3)RCAYH(Xaa1)GELVWCS(配列番号3)
4)GPRCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号4)
5)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号5)
6)GDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号6)
7)GPSCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号7)
8)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号8)
9)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTHH(配列番号9)
10)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号10)
11)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号11)
12)SDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号12)
13)RGNCAYH(Xaa1)GQLVWCTYH(配列番号13)
14)G(Xaa2)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(Xaa2)H(配列番号14)
15)RRGPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号15)
【請求項6】
IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、
前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されており、
前記IgG結合ペプチドが、RRGPDCAYHKGELVWCTFH(配列番号27)、又は配列番号27のアミノ酸配列において、1若しくは2個のアミノ酸配列が置換、付加、及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含む、
前記複合体。
【請求項7】
前記IgG結合ペプチドの外側の2つのシステイン(C)残基間でジスルフィド結合を形成しているか、又は前記IgG結合ペプチドの外側の2つのシステイン残基中のスルフィド基が、以下の式:
【化1】
JP2020019723A_000007t.gif
で表されるリンカーにより連結されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
Xaa1がリシン残基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
Xaa1が架橋剤で修飾されており、該架橋剤とIgGのFc部分又はその断片の架橋反応によって前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記架橋剤が、DSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、DMA(アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMS(スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DTBP(3,3'-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)、及びDSP(ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)からなる群より選択される、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記架橋剤がDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)又はDSS(ジスクシンイミジルスベレート)である、請求項10記載の複合体。
【請求項12】
前記IgG結合ペプチドにおいて、N末端がPEG化及び/又はC末端がアミド化されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
前記抗CD70抗体が、抗CD70scFv-Fcである、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項14】
前記薬剤が抗癌剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の複合体を含む医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及びIgG結合ペプチドを含む複合体、並びに該複合体を含む医薬組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染により引き起こされる悪性腫瘍であり、発症後の生存率は極めて低い。ATLの治療として、各種抗癌剤を用いた多剤併用療法、抗体療法、骨髄移植などが行われているが、副作用や適応奨励が限られるなどの欠点があり、その治療成績はよくない。このため、ATL細胞に対し選択的な殺傷効果を有する、新たな治療薬の開発が求められている。
【0003】
これまでに、ATL患者由来のT細胞ではCD70が高発現していることが報告されており、CD70がATLに対する抗体療法の標的となり得ることが示されている(非特許文献1)。また、CD70発現は通常制限されているが、悪性血液腫瘍(非特許文献2)、腎癌細胞(非特許文献3)、EBV感染細胞(非特許文献4)、HIV-1慢性感染(非特許文献5)、慢性自己免疫疾患(非特許文献6)において高発現することが知られており、CD70とこれらの疾患との関与も報告されている。したがって、CD70発現細胞に特異的に薬剤を送達することができれば、これらの疾患の治療及び/又は予防に利用できる可能性がある。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Baba M. et al., Journal of Virology, 82: 3843-3852, 2008
【非特許文献2】Ranheim E.A. et al., Blood, 85: 3556-3565, 1995
【非特許文献3】Law C.L. et al., Cancer Research, 66: 2328-2337, 2006
【非特許文献4】Shaffer D.R. et al., Pediatric Blood & Cancer, 59: 758-761, 2012
【非特許文献5】Lantto R. et al., AIDS, 29: 1757-1766, 2015
【非特許文献6】Park J.K. et al., Rheumatology (Oxford), 53: 1896-1900, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、CD70発現細胞に特異的に薬剤を送達することが可能な薬剤又は方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体によって、CD70発現細胞に特異的に薬剤を送達することが可能であることを見出し、本願発明を完成させた。
【0007】
したがって、本発明は以下の態様を包含する。
(1)IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、
前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されており、
前記IgG結合ペプチドが、下記の式I:
(X1-3)-C-(X2)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能である、
前記複合体。
(2)前記IgG結合ペプチドが、下記の式II:
(X1-3)-C-(Xaa3)-(Xaa4)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (II)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa3はアラニン残基、セリン残基又はトレオニン残基であり、かつ
Xaa4はチロシン残基又はトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、(1)に記載の複合体。
(3)前記IgG結合ペプチドが、下記の式III:
(X1-3)-C-A-Y-H-(Xaa1)-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (III)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、(1)又は(2)に記載の複合体。
(4)前記式I~IIIのいずれかによって表されるアミノ酸配列が17アミノ酸残基とした場合、N末端から1~3、15~17番目の各アミノ酸残基が、
1番目のアミノ酸残基= S、G、F、又はなし、
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P、ホモシステイン、又はなし、
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E、又はR、
15番目のアミノ酸残基= S、T、又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F、ホモシステイン、又はなし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M、又はなし、
である、(1)~(3)のいずれかに記載の複合体。
(5)前記IgG結合ペプチドが、以下の1)~15)のいずれかのアミノ酸配列を含む、ただし、Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、Xaa2はホモシステインである、(4)に記載の複合体。
1)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(配列番号1)
2)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号2)
3)RCAYH(Xaa1)GELVWCS(配列番号3)
4)GPRCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号4)
5)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号5)
6)GDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号6)
7)GPSCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号7)
8)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号8)
9)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTHH(配列番号9)
10)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号10)
11)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号11)
12)SDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号12)
13)RGNCAYH(Xaa1)GQLVWCTYH(配列番号13)
14)G(Xaa2)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(Xaa2)H(配列番号14)
15)RRGPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号15)
(6)IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、
前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されており、
前記IgG結合ペプチドが、RRGPDCAYHKGELVWCTFH(配列番号27)、又は配列番号27のアミノ酸配列において、1若しくは2個のアミノ酸配列が置換、付加、及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含む、
前記複合体。
(7)前記IgG結合ペプチドの外側の2つのシステイン(C)残基間でジスルフィド結合を形成しているか、又は前記IgG結合ペプチドの外側の2つのシステイン残基中のスルフィド基が、以下の式:
【化1】
JP2020019723A_000003t.gif
で表されるリンカーにより連結されている、(1)~(6)のいずれかに記載の複合体。
(8)Xaa1がリシン残基である、(1)~(7)のいずれかに記載の複合体。
(9)Xaa1が架橋剤で修飾されており、該架橋剤とIgGのFc部分又はその断片の架橋反応によって前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されている、(1)~(8)のいずれかに記載の複合体。
(10)前記架橋剤が、DSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、DMA(アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMS(スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DTBP(3,3'-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)、及びDSP(ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)からなる群より選択される、(9)に記載の複合体。
(11)前記架橋剤がDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)又はDSS(ジスクシンイミジルスベレート)である、(10)記載の複合体。
(12)前記IgG結合ペプチドにおいて、N末端がPEG化及び/又はC末端がアミド化されている、(1)~(11)のいずれかに記載の複合体。
(13)前記抗CD70抗体が、抗CD70scFv-Fcである、(1)~(12)のいずれかに記載の複合体。
(14)前記薬剤が抗癌剤である、(1)~(13)のいずれかに記載の複合体。
(15)(1)~(14)のいずれかに記載の複合体を含む医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、CD70発現細胞に特異的に薬剤を送達し、薬剤の効果をCD70発現細胞に対して選択的に生じさせることができる。したがって、本発明の複合体は、ATL等のCD70発現と関連する疾患を治療及び/又は予防し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1-1】図1-1は、CD70を発現しないMOLT-4細胞を各種薬剤(A:DM1及び抗CD70scFv-Fc、B:1価抗CD70scFv-Fc+DM1及び2価抗CD70scFv-Fc+DM1)の存在下で培養した後の生細胞数の測定結果を示す。CD70を発現していないMOLT-4細胞では、DM1を用いた場合にのみ生細胞数の低下が認められ、抗CD70scFv-Fc、1価抗CD70scFv-Fc+DM1及び2価抗CD70scFv-Fc+DM1では生細胞数の低下が認められないことがわかる。
【図1-2】図1-2は、CD70を発現するS1T細胞を各種薬剤(A:DM1及び抗CD70scFv-Fc、B:1価抗CD70scFv-Fc+DM1及び2価抗CD70scFv-Fc+DM1)の存在下で培養した後の生細胞数の測定結果を示す。CD70を発現するS1T細胞では、DM1、1価抗CD70scFv-Fc+DM1及び2価抗CD70scFv-Fc+DM1を用いた場合に生細胞数の低下が認められ、抗CD70scFv-Fcでは生細胞数の低下が認められないことがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本発明は、IgGのFc部分又はその断片を含む抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドを含む複合体であって、前記IgG結合ペプチドが前記抗CD70抗体に連結されている複合体に関する。

【0011】
本発明の複合体に含まれる抗CD70抗体、及び薬剤が結合したIgG結合ペプチドについて以下説明する。

【0012】
<抗CD70抗体>
本明細書において、用語「抗CD70抗体」は、CD70と特異的に結合する抗体を指す。CD70は、TNFスーパーファミリーに属するII型膜貫通タンパク質である(Goodwin et al., Cell, 1993, 73:447-456)。TNFアルファおよびベータに対する相同性に基づいて、CD70は、3つのCD27ホモ二量体と相互作用する、3つの同一のサブユニットで構成される、三量体構造を有すると予測された(Peitsch et al., Mol. Immunol., 1994, 152:1756-1761)。CD70発現は通常抑制されているが、ATL患者由来のT細胞ではCD70が高発現していることが報告されている(Baba M. et al., Journal of Virology, 82: 3843-3852, 2008)。また、CD70発現は、悪性血液腫瘍、腎癌細胞、EBV感染細胞、HIV-1慢性感染、及び慢性自己免疫疾患においても高発現することが知られている。

【0013】
天然の「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各々の重鎖は、重鎖可変領域(以下VHとも記載する)及び重鎖定常領域を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(以下VLとも記載する)及び軽鎖定常領域を含む。VH及びVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域と、その間に存在する相補性決定領域(CDR)と称される可変性の高い領域にさらに細分することができる。各々のVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順番で並んだ3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。

【0014】
抗CD70抗体の配列は限定しないが、配列番号19の核酸配列によってコードされる配列番号20のアミノ酸配列を含んでよい。一実施形態において、抗CD70抗体は、VH CDR1:配列番号21のアミノ酸配列、VH CDR2:配列番号22のアミノ酸配列、VH CDR3:配列番号23のアミノ酸配列、VL CDR1:配列番号24のアミノ酸配列、VL CDR2:配列番号25のアミノ酸配列、及びVL CDR3:配列番号26のアミノ酸配列を含む。

【0015】
本明細書において、「抗体」の用語は、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ラクダ科抗体に加え、抗体断片、例えば一本鎖抗体(scFv)、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、Fab断片、F(ab')断片、並びに上記のいずれかのエピトープ結合性断片を含む。本明細書における抗体は、scFvであってよい。

【0016】
抗体は、いかなるアイソタイプ(例えば IgG、IgE、IgM、IgD、IgA 及び IgY)、クラス(例えば IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1 及び IgA2)又はサブクラスのものであってもよいが、好ましくはIgGである。

【0017】
本明細書中で使用する抗体は、哺乳動物、例えばヒト及びチンパンジーなどの霊長類、ラット、マウス、及びウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、及びヤギ等の家畜動物、並びにイヌ及びネコ等の愛玩動物の抗体であってよい。本明細書中で使用する抗体は、好ましくはヒトのIgG(IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、さらに好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、又はIgG4である。

【0018】
本発明の複合体に含まれる抗CD70抗体は、IgGのFc部分又はその断片(本明細書に記載のIgG結合ペプチドとの結合部分を含む断片)を含む。本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、IgG Fcの特定の領域、すなわち、ヒトIgG FcにおけるEu numberingに従うLys248残基(以下、本明細書では単に「Lys248」とも表記し、ヒトIgG CH2(配列番号16)の18番目の残基に相当する)又はLys246残基(以下、本明細書では単に「Lys246」とも表記し、ヒトIgG CH2(配列番号16)の16番目の残基に相当する)、好ましくはLys248と近接する。したがって、IgGのFc部分の断片は、少なくとも「Lys248」及び/又は「Lys246」、又はこれに対応する部分を含み得る。例えば、IgGのFc部分の断片は、配列番号16の連続する10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、又は100以上のアミノ酸残基含んでよい。

【0019】
上記IgGのFc部分又はその断片は、上記抗体に元々含まれていてもよいし、遺伝子工学的手法等により適当なリンカーを介して異なる抗体に連結してもよい。IgGのFc部分又はその断片を別の抗体に連結する例として、例えばscFvにFcを連結したscFv-Fcが挙げられる。

【0020】
抗体は、当業者に知られる任意の方法によって調製することができる。例えば、非ヒト動物をCD70で免疫し、免疫成立後の動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞及び/又は形質芽細胞を選択する。得られた形質細胞及び/又は形質芽細胞から目的抗原に対する抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定し、同定した遺伝子の塩基配列に基づいて上記抗体又は抗体の断片を得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 1975, 256, pp.495-497に従って、CD70に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。

【0021】
また、例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology, 2005, 23, 9, pp.1105-1116)を用いることもできる。抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合する抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることにより抗体を取得することができる。

【0022】
<IgG結合ペプチド>
一実施形態において、本発明の複合体に含まれるIgG結合ペプチドは、IgG(IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、好ましくは、ヒトIgG、例えばIgG1、IgG2、及びIgG4の少なくとも一つ以上に結合可能であってよい。

【0023】
IgG結合ペプチドは、下記の式I:
(X1-3)-C-(X2)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み(又は該アミノ酸配列からなり)、かつヒトIgGと結合可能である。

【0024】
上記式で、N末端又はC末端のX1-3という表記は、システイン(C又はCys)以外の独立的に任意のアミノ酸残基Xが1~3個連続していることを意味し、それを構成するアミノ酸残基は同じか又は異なる残基であるが、好ましくは3個すべてが同じ残基でない配列からなる。同様に、X2もシステイン(C又はCys)以外の独立的に任意のアミノ酸残基Xが2個連続していることを意味し、それを構成するアミノ酸残基は同じか又は異なる残基であるが、好ましくは当該2個連続しているアミノ酸残基は同じ残基でない配列からなる。

【0025】
式Iの2つのシステイン残基はジスルフィド結合して環状ペプチドを形成することができる。式Iのペプチドにおいて、外側の2つのシステイン残基はジスルフィド結合していてもよい。或いは、式Iのペプチドにおいて、外側の2つのシステイン残基中のスルフィド基は、以下の式:

【0026】
【化2】
JP2020019723A_000004t.gif
で表されるリンカーにより連結されていてもよい。上記式中の破線部分は、スルフィド基との結合部分を意味する。当該リンカーは、通常のジスルフィド結合よりも、還元反応等に対して安定である。このペプチドは、例えばWO2016/186206で記載される方法により、調製することができる。

【0027】
式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式I'及び式I''で表されるアミノ酸配列を以下に示す。

【0028】
すなわち、式I'で表されるアミノ酸配列は、
(X1-3)-C-(X1)-Y-H-(Xaa1)-G-N-L-V-W-C-(X1-3) (I')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Nはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む。

【0029】
式I''で表されるアミノ酸配列は、
(X1-3)-C-A-(X1)-H-(Xaa1)-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (I'')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む。

【0030】
また、式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式IIで表されるアミノ酸配列を以下に示す。

【0031】
すなわち、式IIで表されるアミノ酸配列は、
(X1-3)-C-(Xaa3)-(Xaa4)-H-(Xaa1)-G-(Xaa2)-L-V-W-C-(X1-3) (II)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa2はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa3はアラニン残基、セリン残基又はトレオニン残基であり、かつ
Xaa4はチロシン残基又はトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む。

【0032】
上記の式I'、式I''及び式IIのペプチドのアミノ酸配列が17アミノ酸残基とした場合の、各アミノ酸のN末端から1番目及び2番目並びに16番目及び17番目のアミノ酸残基Xは欠失していてもよく、そのようなペプチドは13アミノ酸長からなる。

【0033】
本明細書で使用する「17アミノ酸残基とした場合の」とは、ペプチドのアミノ酸残基をアミノ酸番号で呼ぶときに、式Iのペプチド等について17残基のN末端から順番に1番目から17番目まで番号づけするために便宜的に表現した用語である。

【0034】
また、式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式IIIで表されるアミノ酸配列を以下に示す。

【0035】
すなわち、式IIIで表されるアミノ酸配列は、
(X1-3)-C-A-Y-H-(Xaa1)-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (III)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む。

【0036】
上記の式IIIのペプチドのアミノ酸配列において、17アミノ酸残基とした場合の、N末端から1番目及び2番目、並びに16番目及び17番目のアミノ酸残基Xは欠失していてもよく、そのようなペプチドは13アミノ酸長を含む。

【0037】
さらに、上記の各式のペプチドのアミノ酸配列のシステイン(C)以外のアミノ酸残基、すなわち、17アミノ酸残基とした場合のN末端から1~3、5、6、15~17番目の各アミノ酸残基は、以下のものから選択されることが好ましい。ここで、各大文字のアルファベットは、アミノ酸の一文字表記である:
1番目のアミノ酸残基= S、G、F又は、なし
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P、ホモシステイン又は、なし
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E又はR、
15番目のアミノ酸残基= S、T又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F、ホモシステイン又は、なし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M又は、なし、
5番目のアミノ酸残基= A又はT、
6番目のアミノ酸残基= Y又はW。

【0038】
式Iのペプチドのアミノ酸配列の具体例のいくつかを以下の1)~15)に列挙するが、これらに制限されないことはいうまでもない:
1)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(配列番号1)
2)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号2)
3)RCAYH(Xaa1)GELVWCS(配列番号3)
4)GPRCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号4)
5)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号5)
6)GDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号6)
7)GPSCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号7)
8)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCSFH(配列番号8)
9)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTHH(配列番号9)
10)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号10)
11)SPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号11)
12)SDDCAYH(Xaa1)GELVWCTFY(配列番号12)
13)RGNCAYH(Xaa1)GQLVWCTYH(配列番号13)
14)G(Xaa2)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(Xaa2)H(配列番号14)
15)RRGPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号15)
(式中、Xaa1はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、Xaa2はホモシステインであり、好ましくはホモシステイン同士は互いにジスルフィド結合を形成している)。

【0039】
式Iのペプチドの好ましい具体例として、
1)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(配列番号1)、
2)GPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号2)、
13)RGNCAYH(Xaa1)GQLVWCTYH(配列番号13)、
14)G(Xaa2)DCAYH(Xaa1)GELVWCT(Xaa2)H(配列番号14)、及び
15)RRGPDCAYH(Xaa1)GELVWCTFH(配列番号15)
(式中、Xaa1はリシン残基であり、Xaa2はホモシステインであり、好ましくはシステイン同士及び/又はホモシステイン同士は互いにジスルフィド結合を形成している)が挙げられる。

【0040】
IgG結合ペプチドは、上記アミノ酸配列を含んでもよいし、上記アミノ酸配列からなってもよい。

【0041】
一実施形態において、IgG結合ペプチドは、RRGPDCAYHKGELVWCTFH(配列番号27)、又は配列番号27のアミノ酸配列において、1若しくは2個のアミノ酸配列が置換、付加、及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含む、又はからなる。

【0042】
前述の通り、上記式のペプチドは、各アミノ酸配列の中に離間した少なくとも2つのシステイン(C)残基を有し、該システイン残基間でジスルフィド結合を形成しうるようにシステイン残基が配置されていることを特徴としており、好ましいペプチドは、2つのシステイン残基がジスルフィド結合して環状ペプチドを形成し、各システイン残基のN末端側及びC末端側には1又は2個のシステイン以外の任意のアミノ酸残基を有していてもよい。各システイン残基のN末端側及びC末端側には1又は2個のアミノ酸残基を有する場合において、17アミノ酸残基とした場合のN末端から1~2、16~17番目の各アミノ酸残基は、上記例示のものである。

【0043】
上記の通り、本明細書に記載のペプチドにおいて、Xaa1は、リシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、及びグルタミン酸残基等のタンパク質構成アミノ酸、並びにジアミノプロピオン酸及び2-アミノスベリン酸等の非タンパク質構成アミノ酸からなる群から選択され、好ましくはリシン残基である。Xaa1は、後述する架橋剤によって修飾可能であることが好ましい。本明細書において「非タンパク質構成アミノ酸」とは、生体においてタンパク質を構成するのに用いられないアミノ酸を指す。IgG結合ペプチドを架橋剤によって修飾する際の部位特異性を高めるため、IgG結合ペプチドは、その配列中にXaa1と同じ残基を、全く有さないか、ほとんど有さない(例えば、1個又は2個しか有さない)ことが好ましい。例えば、Xaa1がリシン残基である場合には、IgG結合ペプチドは、その配列中にXaa1以外の場所にリシン残基を全く有さないか、ほとんど有さないことが好ましい。

【0044】
IgG結合ペプチドに結合する薬剤として、限定するものではないが、例えば、オーリスタチンE等のオーリスタチン、メイタンシン、エムタンシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、又はこれらの誘導体等の抗がん剤が挙げられる。IgG結合ペプチドは、例えば医薬抗体として用いられるIgGと複合体を形成することで、疾患の治療効果を高めることができる。IgG結合ペプチドと薬剤の結合、例えば適当なリンカーを介する共有結合による連結は、当業者に公知の方法で行うことができ、例えばアジド基とdibenzocyclooctyneとの反応、又はマレイミド基とスルフヒドリル基の反応等により行うことができるがこれらに限定されない。また、薬剤がペプチドである場合には、予めIgG結合ペプチドと薬剤の融合ペプチドを発現系から得てもよい。

【0045】
本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、ヒトIgGとの結合親和性が、他のヒト免疫グロブリン(IgA、IgE、IgM)と比較して約10倍以上、好ましくは約50倍以上、より好ましくは約200倍以上高い。IgG結合ペプチドとヒトIgGとの結合に関する解離定数(Kd)は、表面プラズモン共鳴スペクトル解析(例えばBIACOREシステム使用)により決定可能であり、例えば1×10-1M~1×10-3M未満、好ましくは1×10-4M未満、より好ましくは1×10-5M未満である。

【0046】
本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、IgGのFcドメインに結合する。IgG結合ペプチドは、後述する実施例において示す通り、上記Xaa1において、IgG Fcの特定の領域、すなわち、ヒトIgG FcにおけるEu numberingに従うLys248残基(以下、本明細書では単に「Lys248」とも表記し、ヒトIgG CH2(配列番号16)の18番目の残基に相当する)又はLys246残基(以下、本明細書では単に「Lys246」とも表記し、ヒトIgG CH2(配列番号16)の16番目の残基に相当する)、好ましくはLys248と近接する。

【0047】
本明細書に記載のペプチドは、慣用の液相合成法、固相合成法等のペプチド合成法、自動ペプチド合成機によるペプチド合成等(Kelley et al., Genetics Engineering Principles and Methods, Setlow, J.K. eds., Plenum Press NY. (1990) Vol.12, p.1-19;S tewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis (1989) W.H. Freeman Co.; Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82: p.5132、「新生化学実験講座1 タンパク質IV」(1992)日本生化学会編,東京化学同人)によって製造することができる。あるいは、本明細書に記載のペプチドをコードする核酸を用いた遺伝子組換え法やファージディスプレイ法等によって、ペプチドを製造してもよい。例えば本明細書に記載のペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAを発現ベクター中に組み込み、宿主細胞中に導入し培養することにより、目的のペプチドを製造することができる。製造されたペプチドは、常法により、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLC等のクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過、及び免疫吸着法等により、回収又は精製することができる。

【0048】
ペプチド合成では、例えば、各アミノ酸(天然であるか非天然であるかを問わない)の、結合しようとするα-アミノ基とα-カルボキシル基以外の官能基を保護したアミノ酸類を用意し、それぞれのアミノ酸のα-アミノ基とα-カルボキシル基との間でペプチド結合形成反応を行う。通常、ペプチドのC末端に位置するアミノ酸残基のカルボキシル基を適当なスペーサー又はリンカーを介して固相に結合しておく。このようにして得られたジペプチドのアミノ末端の保護基を選択的に除去し、次のアミノ酸のα-カルボキシル基との間でペプチド結合を形成する。このような操作を連続して行い側基が保護されたペプチドを製造し、最後に、すべての保護基を除去し、固相から分離する。保護基の種類や保護方法、ペプチド結合法の詳細は、上記の文献に詳しく記載されている。

【0049】
遺伝子組換え法による製造は、例えば、本明細書に記載のペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞にベクターを導入し、細胞を培養し、細胞内から又は細胞外液から目的のペプチドを回収することを含む方法によりなされ得る。ベクターは、限定されないが、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、ファージミド、及びウイルス等のベクターである。

【0050】
プラスミドベクターとしては、限定するものではないが、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、及び酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50等)等が挙げられる。

【0051】
ファージベクターとしては、限定するものではないが、T7ファージディスプレイベクター(T7Select10-3b、T7Select1-1b、T7Select1-2a、T7Select1-2b、T7Select1-2c等(Novagen))、及びλファージベクター(Charon4A、 Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP、λZAPII等)が挙げられる。ウイルスベクターとしては、限定するものではないが、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、及びセンダイウイルス等の動物ウイルス、並びにバキュロウイルス等の昆虫ウイルス等が挙げられる。コスミドベクターとしては、限定するものではないが、Lorist 6、Charomid9-20、及びCharomid9-42等が挙げられる。

【0052】
ファージミドベクターとしては、限定するものではないが、例えばpSKAN、pBluescript、pBK、及びpComb3H等が知られている。ベクターには、目的のDNAが発現可能なように調節配列や、目的DNAを含むベクターを選別するための選択マーカー、目的DNAを挿入するためのマルチクローニングサイト等が含まれ得る。そのような調節配列には、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、S-D配列又はリボソーム結合部位、複製開始点、及びポリAサイト等が含まれる。また、選択マーカーには、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、及びジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、等が用いられ得る。ベクターを導入するための宿主細胞は、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、及び植物細胞等であり、これらの細胞への形質転換又はトランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーテイクルガン法、及びPEG法等を含む。形質転換細胞の培養は、宿主生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。例えば、大腸菌や酵母細胞等の微生物の培養液は、宿主微生物が資化し得る炭素源、窒素源、及び無機塩類等を含有する。

【0053】
本明細書に記載のペプチドの回収を容易にするために、発現によって生成したペプチドを細胞外に分泌させることが好ましい。これは、その細胞からのペプチドの分泌を可能にするペプチド配列をコードするDNAを、目的ペプチドをコードするDNAの5'末端側に結合することにより行うことができる。細胞膜に移行した融合ペプチドがシグナルペプチダーゼによって切断されて、目的のペプチドが培地に分泌放出される。あるいは、細胞内に蓄積された目的ペプチドを回収することもできる。この場合、細胞を物理的又は化学的に破壊し、タンパク質精製技術を使用して目的ペプチドを回収する。

【0054】
本明細書に記載のIgG結合ペプチドと他のタンパク質を融合させる場合、IgG結合ペプチドと他のタンパク質を別々に調製した後に、必要に応じてリンカーを用いてIgG結合ペプチドとタンパク質を融合させても良いし、遺伝子組換え法によって、必要に応じて適当なリンカーを加えて融合タンパク質として作製してもよい。この場合、本明細書に記載のIgG結合ペプチドがIgGとの結合性を損なわないように融合タンパク質を作製することが好ましい。

【0055】
また、本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、その安定性の向上等のため、例えば、N末端のPEG化(ポリエチレングリコール付加)、及びC末端のアミド化等により修飾されていても良い。PEG化を行う場合のPEGの分子数は特に限定されず、例えば、1~50分子、1~20分子、2~10分子、2~6分子、又は4分子のPEGを付加することができる。

【0056】
<架橋剤で修飾されたペプチド>
一実施形態において、本明細書に記載の上記IgG結合ペプチドは、架橋剤により修飾されている。

【0057】
上記の通り、本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、上記Xaa1において、IgG Fcの特定の領域、すなわちヒトIgG FcにおけるEu numberingに従うLys248又はLys246、好ましくはLys248と近接する。したがって、IgG結合ペプチドのXaa1を架橋剤で修飾し、IgGと架橋反応させることによって、IgG結合ペプチドのXaa1とIgG FcのLys248又はLys246、好ましくはLys248の間で部位特異的に架橋構造を形成させることができる。上記の様に、IgG結合ペプチドのXaa1を架橋剤及び種々の化合物で修飾し、IgGと架橋反応させることによって、種々の薬剤を、特異的かつ簡便にIgGに連結することができる。また、本発明によれば、IgG結合ペプチドを介して薬剤を導入することができるため、様々な構造の薬剤をIgGに導入することができる。さらに本発明の複合体は、得られる産物の収率が高く、また、抗体そのもの改変を伴わないため、抗体の機能を低下させる可能性が低いという利点も有する。

【0058】
本明細書に記載のIgG結合ペプチドは、ヒト以外の動物、好ましくは哺乳動物のIgGに対して用いることもできる。この場合、IgG結合ペプチドが結合するIgG中の部位は、本明細書を読んだ当業者であれば、例えばヒトIgGの配列と他の動物のIgGの配列をアライメントすることにより、容易に特定することができる。

【0059】
本明細書において、「架橋剤」とは、本明細書に記載のIgG結合ペプチドと、IgG Fcを、共有結合により連結させるための化学物質である。架橋剤は、当業者であれば適宜選択することが可能であり、所望のアミノ酸(例えば、リシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸、及びアルギニン等)と結合可能な部位を少なくとも2箇所有する化合物とすることができる。その例として、限定するものではないが、DSG(disuccinimidyl glutarate、ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(disuccinimidyl suberate、ジスクシンイミジルスベレート)等のスクシンイミジル基を好ましくは2以上含む架橋剤、DMA(dimethyl adipimidate・2HCl、アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(dimethyl pimelimidate・2HCl、ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、及びDMS(dimethyl suberimidate・2HCl、スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)等のイミド酸部分を好ましくは2以上含む架橋剤、並びにDTBP(dimethyl 3,3’-dithiobispropionimidate・2HCl、3,3'-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)及びDSP(dithiobis(succinimidyl propionate))、ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)等のSS結合を有する架橋剤が挙げられる。

【0060】
架橋剤により修飾されたIgG結合ペプチドは、例えば上記<IgG結合ペプチド>の項目で記載した方法に従って得られたIgG結合ペプチドを架橋剤と反応させることにより製造することができる。この場合、IgG結合ペプチド中の上記Xaa1のアミノ酸残基の側鎖を特異的に修飾することが必要であり、これは、例えば、Xaa1の種類と架橋剤の組み合わせを選択することによりなされ得る。例えば、DSS又はDSG等のスクシンイミジル基を含む架橋剤は、リシン残基の側鎖及びポリペプチドのN末端に存在する一級アミンと反応するため、IgG結合ペプチドのN末端をブロッキングした上でDSS又はDSGと反応させることで、リシン残基の側鎖のみをDSS又はDSGで特異的に修飾することができる。このようなアミノ酸残基と架橋剤の組み合わせは、当業者であれば適宜選択することができる。

【0061】
架橋剤により修飾されたIgG結合ペプチドは、例えば、架橋剤により修飾されたアミノ酸残基を用いてペプチド合成を行うことによって製造することもできる。同様に、他の薬剤が結合したアミノ酸残基を用いてペプチド合成することにより他の薬剤が結合したIgG結合ペプチドを調製してもよい。

【0062】
<架橋反応>
一実施形態において、IgG結合ペプチドのアミノ酸配列中の上記Xaa1は架橋剤で修飾されており、該架橋剤とIgGのFc部分又はその断片の架橋反応によって、IgG結合ペプチドが抗CD70抗体に連結される。

【0063】
架橋反応は、架橋剤で修飾されているIgG結合ペプチドと抗CD70抗体を混合する工程を含む。本工程により、架橋剤で修飾されているIgG結合ペプチドと抗CD70抗体の間で架橋反応が生じ得る。架橋反応は、特にIgG結合ペプチドの上記Xaa1のアミノ酸残基とIgG FcのLys248又はLys246、好ましくはLys248の間で部位特異的に生じ得る。

【0064】
該混合工程の条件は、IgG結合ペプチドと抗CD70抗体の間で架橋反応が生じる条件で行うものであれば特に限定しない。例えば、IgG結合ペプチドと抗CD70抗体を、適当なバッファー中において、室温(例えば約15℃~30℃)で混合することにより反応を行うことができる。該混合工程は、必要に応じて架橋反応を促進する触媒を適量加えて行ってもよい。

【0065】
該混合工程におけるIgG結合ペプチドと抗CD70抗体の混合比率は、特に限定しない。IgG結合ペプチドと抗CD70抗体のモル比率は、例えば1:1~20:1、好ましくは2:1~20:1又は5:1~10:1とすることができる。

【0066】
該混合工程における混合時間(反応時間)は、本明細書に記載のIgG結合ペプチドと抗CD70抗体の間で架橋反応が生じる限り限定するものではないが、例えば、1分~5時間、好ましくは10分~2時間又は15分~1時間とすることができる。

【0067】
本明細書に記載のIgG結合ペプチドと抗CD70抗体の複合体を生産する方法は、必要に応じて、上記工程を行った後の混合物から、不純物、例えば、未反応のIgG結合ペプチド、抗CD70抗体、及び試薬等を分離し、該複合体を精製する工程をさらに含んでよい。該工程は、本分野で公知の方法、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、及びHPLC等のクロマトグラフィー等により行うことができる。

【0068】
<複合体>
一態様において、本発明は、本明細書に記載のIgG結合ペプチドと抗CD70抗体との複合体に関する。該複合体において、IgG結合ペプチドは前記抗CD70抗体に例えば共有結合により連結され得る。該複合体は、限定するものではないが、例えば上記架橋反応によって形成され得る。よって、一実施形態において、本発明は、IgG結合ペプチドの上記Xaa1のアミノ酸残基とIgG FcのLys248又はLys246、好ましくはLys248との間が部位特異的に架橋剤を介して結合したIgG結合ペプチドと抗CD70抗体との複合体に関する。

【0069】
本発明の複合体は、部位特異的な架橋反応によって形成されることから、該架橋反応が、抗CD70抗体の活性に負の影響を与える可能性が少ない。

【0070】
<医薬組成物>
一態様において、本発明は上記複合体を含む医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物の対象となる疾患として、限定するものではないが、例えば、CD70抗体により標的化可能な疾患又は障害、例えば:CD70陽性癌、例えば成人T細胞白血病(ATL)、悪性血液腫瘍(例えば、白血病、悪性リンパ腫、及び多発性骨髄腫)、腎癌;EBV(エプスタイン・バール・ウイルス)感染症;HIV(ヒト免疫不全ウイルス)-1感染症;及び慢性自己免疫疾患から成る群から選択される疾患が挙げられる。よって、一実施形態において、本発明は、これらの疾患、例えばATLの治療及び/又は予防のための医薬組成物に関する。

【0071】
本発明の医薬組成物は、経口投与又は非経口投与(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、腹腔内投与、直腸投与、又は経粘膜投与等)で、投与することができる。また、本発明の医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、静脈注射、動脈注射、若しくは筋肉注射用の注射剤、点滴剤、外用剤、又は坐剤等の各種製剤形態に調製することができる。投与方法及び剤型は、患者の性別、年齢、体重、症状等により、当業者であれば適宜選択することができる。

【0072】
本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国を参照されたい)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。

【0073】
本発明の医薬組成物に含まれ得る担体及び医薬添加物の例としては、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、及び医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。

【0074】
実際の添加物は、本発明の医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、これらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、本発明のIgG結合タンパク質又はIgG結合タンパク質とIgGの複合体を溶液、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに容器吸着防止剤、例えばTween80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解して再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のため安定化剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコール及び/又は糖類を使用することができる。

【0075】
本発明の医薬組成物の有効投与量及び投与間隔は、患者の性別、年齢、体重、及び症状等に応じて適宜選択することができる。

【0076】
本発明の医薬組成物を投与する時期は、上記疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず、予防的投与であっても治療的投与であってもよい。
【実施例】
【0077】
<実施例1:抗CD70単鎖Fv-Fcの調製と機能評価>
抗CD70scFv-Fcの遺伝子は以前に報告されたものを使用した(Muraoka, S. et al., Journal of Biochemistry, 145, pp. 799-810, 2009)。遺伝子の合成はThermo Fisher Scientificに依頼し、pAM-Tベクターに抗CD70scFv-Fcの遺伝子が挿入されたプラスミドを得た。
【実施例】
【0078】
なお、プラスミドに含まれる抗CD70の遺伝子配列は、(配列番号20のアミノ酸配列をコードする)配列番号19の核酸配列を含む。IMGTを用いてCDR配列を決定したところ、配列番号20のアミノ酸配列は、VH CDR1:配列番号21のアミノ酸配列、VH CDR2:配列番号22のアミノ酸配列、VH CDR3:配列番号23のアミノ酸配列、VL CDR1:配列番号24のアミノ酸配列、VL CDR2:配列番号25のアミノ酸配列、VL CDR3:配列番号26のアミノ酸配列を含んでいた。
【実施例】
【0079】
(抗CD70 scFvプラスミド増幅)
コンピテントセル(JM109)を氷中で融解し、抗CD70scFv遺伝子を含む上記プラスミドを20ng添加して氷中で30分インキュベートした。その後、42℃で60秒インキュベートし、氷中に移して2分静置した後に500μLの2TY培地を添加して、37℃で1時間振とう培養した。培養した大腸菌100μLを5mLの2TYAG培地に添加し、37℃で15時間振とう培養した後に、Mini PlusTM Plasmid DNA Extraction System(VIOGENE)のプロトコルに従ってプラスミド抽出を行った。
【実施例】
【0080】
(抗CD70scFv遺伝子の増幅)
抗CD70scFv遺伝子を特異的なプライマーを用いてPCRにて増幅した。フォワードプライマーとしては、KSB-653(GCACTGAATTCACCGCCATGCCTGCGCTCTGGCTGGGC)(配列番号17)、リバースプライマーとしては、KSB-763(CGACTCCTAGGCCTGCGGCCGCACGTTTGATTTC)(配列番号18)を用いた。
【実施例】
【0081】
以下の組成の反応液(計50μL)で反応を行った。
KOD Plus Neo(TOYOBO)(1U/μL) 0.5μL
10×PCR buffer 5μL
2mM dNTPs 5μL
25 mM MgSO4 3μL
F primer(10μM) 1μL
R primer(10μM) 1μL
テンプレート(30ng) 0.125μL
超純水 34.4μL
【実施例】
【0082】
反応条件は、94℃2分加熱後、98℃10秒、60℃30秒、68℃30秒のサイクルを25回繰り返した。PCR後、産物をGel/PCR DNA Isolation System(VIOGENE)のプロトコルに従って精製した。
【実施例】
【0083】
(抗CD70scFv-Fc発現用プラスミドの調製)
Fc発現用プラスミドは、東京薬科大学の吉川研究室より譲渡されたもの(pcDNA3.1/Zeo(+)v(Thermo Fisher)のXbaIの下流にFcコード遺伝子を含むもの)(以下、Fc/pcDNAzeoとする)を用いた。
【実施例】
【0084】
(抗CD70scFv遺伝子のFc/pcDNAzeoへの組み込み)
Fc/pcDNAzeoの増幅は、上記「抗CD70 scFvプラスミド増幅」と同様に行った。
「抗CD70scFv遺伝子の増幅」で記載の通りに得たPCR産物、及びFc/pcDNAzeoを、EcoRI(Takara BIO)で添付のbufferを用いて37℃で2時間制限酵素消化を行った。その後、0.1volのNaOAcを添加し、さらに2.5volの冷100%EtOHを添加して-80℃で2時間インキュベートした。その後、15,000rpm、4℃で20分間遠心した後に上清を除去し、300μLの70%EtOHでリンスした後に15,000rpm、4℃で20分間遠心し、上清を除去して各サンプルを10μLの超純水に溶解した。
【実施例】
【0085】
制限酵素により消化したPCR産物、及びFc/pcDNAzeoを、AvrII(Takara)又はXba I(Takara)で添付のbufferを用いて37℃で2時間制限酵素消化を行った。その後PCR産物はカラム精製、Fc/pcDNAzeoはゲルカットにより精製した。カラム精製はVIOGENE社のGel/PCR DNA Isolation Systemの使用書に従って行った。
【実施例】
【0086】
次に、Vector:Insertのモル比が1:5になるように調製し、PCR産物0.65μL、Fc/pcDNAzeo5.6 μL、及びMighty Mix(Takara)7.25μLを混合した。これを16℃、30分反応させることで、ライゲーションを行った。
【実施例】
【0087】
(JM109を用いたベクター増幅)
上記の通り作製したプラスミドを用いて、ヒートショック法により大腸菌(JM109)への形質転換を行った。
【実施例】
【0088】
JM109のコンピテントセルを氷中で溶解し、そこに作製したプラスミドを50ng添加して氷中で30分インキュベートした。その後、42℃で1分インキュベートした後に再び氷中に2分置いて0.5mLの2TYを添加し、37℃で1時間振とう培養を行った。培養後の溶液100μLを2TYAG寒天培地に撒き、30℃で16時間培養した。
【実施例】
【0089】
次に、培養後の寒天培地からコロニーを釣菌し、100μLの超純水に溶解したものを3mLの2TYAGに添加し、16時間振とう培養した。培養後の溶液よりMini PlusTM Plasmid DNA Extraction System (VIOGENE) のプロトコルに従ってプラスミド抽出を行った。遺伝子の挿入を確認するため、配列解析を行った。
【実施例】
【0090】
(構築したプラスミドのHEK293細胞へのLipofection)
構築し、配列確認ができたプラスミドのHEK293細胞(東京薬科大学 吉川研究室より譲渡)へのLipofectionを行った。LipofectionにはThermo Fisher Scientific社のLipofectamin2000を使用した。
【実施例】
【0091】
HEK293細胞の基本培養にはDMEM(Wako;High Glucose with L-Glutamine and Phenol Red Lot:DSG7008)培地に10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンを混合したものを使用した。発現の際には上記の培地に100μg/mLの濃度でZeocinを添加したものを使用した。
【実施例】
【0092】
Lipofectionは添付のプロトコルに従って行い、2週間程度培養し、細胞が十分量(9cm Dish 6枚分)まで増殖した後、培地を無血清DMEM+1%penicillin-streptomycin+100μg/mL Zeocinに交換し、6日間、37℃、5% CO2でインキュベートした。
【実施例】
【0093】
(作製したscFv-Fcの単離・精製)
インキュベート後、上清を回収し1,000rpm、10分、室温で遠心機にかけ細胞を沈殿させた後、10,000rpm、20分、室温で遠心機にかけ不純物を沈殿させた。遠心後の上清を回収し、60%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して完全に溶解するまで室温下でスターラーで撹拌した。撹拌後のサンプルを10,000×g、4℃で20分間遠心し、上清を除去した後、沈澱を50mLの超純水に溶解し0.22μmのフィルターで濾過した。濾過後のサンプルを20mM Sodium Phosphate Bufferで4倍に希釈し、BIO RAD社のProfiniaTM Protein Purification SystemでProteinAカラム(HiTrapTM Protein A HP 1 /mL)を使用して精製を行った。
【実施例】
【0094】
バッファーには20mM Sodium Phosphate Buffer、溶出には0.2M クエン酸(pH 4.0)、中和には1M Tris-HCl(pH 9.0)を使用した。中和後のサンプルは透析膜(スペクトラ/ポア 6,MWCO 8000, Φ32mm×50mm)に入れ、PBSで16時間透析を行った。
【実施例】
【0095】
透析後はビバスピンカラム(GEヘルスケア)を用いて濃縮し、液量が約1mLになるまで濃縮を行った。
【実施例】
【0096】
(scFv-Fcの発現と結合能の確認)
発現したscFv-Fcサンプル5μgに4×SDS buffer 5μLを添加し、超純水を加え計20μLとした。還元するサンプルには2-MEを1.25μL添加し、90℃、10分湯浴にて還元を行った。泳動条件は200V、40mA、1~1.5時間、SDSのゲルにはSuperSepTM Ace,12.5%,13well(WAKO)を用い、CBBで染色を行った。マーカーにはPrecision Plus Protein Standards All Blue(BIO RAD)を用いた。SDS-PAGEにより、scFv-Fcが正しい分子量で発現されていることを確認した。
【実施例】
【0097】
(細胞への結合確認)
細胞を5×105 cell / 100μL / 2% FBS/PBSに調整し、1μgのscFv-Fcを添加して4℃で30分インキュベートした。インキュベート後、900μLの2% FBS/PBSを添加し500×gで1分、室温で遠心した。上清を除去し、100μLの2% FBS/PBSで懸濁した後、二次抗体(Anti-Human IgG(Fc gamma-specific)PE 0.5mg/mL)を2μL添加して4℃で30分インキュベートした。その後900μLの2% FBS/PBSを添加し500×gで1分、室温で遠心した。遠心後、上清を除去し、100μLの2% FBS/PBSで懸濁した後、15μLの7-AADを添加して室温で10分インキュベートした。インキュベーションの後、2% FBS/PBSを400μL添加し40μmのナイロンメッシュフィルターに通してフローサイトメーター(S3eTM Cell Sorter:BIO RAD)で解析を行った。
【実施例】
【0098】
その結果、CD70低発現のjurkat細胞に対してはピークの大きなシフトがないものの、CD70を発現するS1T細胞に対しては大きなシフトが認められたことから、調製した抗CD70scFv-Fcは、S1T細胞表面のCD70に対し結合活性を有することが確認された(データ示さず)。
【実施例】
【0099】
<実施例2:抗CD70単鎖Fv-FcとIgG結合ペプチドの抗体薬物複合体(ADC)の調製>
(IgG結合ペプチドとDM1のコンジュゲート)
NEM(N-ethylmaleimide)-PEG4-RRGPDCAYHKGELVWCTFH-NH2(配列番号27、6位のCと16位のCはジスルフィド結合を形成)のNEMに、以下の通りDM-1を反応させた。なお、DM-1(Emtansine)は細胞障害作用を有する化合物である。まず、アミノ-PEG4化合成ペプチドRRGPDCAYHXGELVWCTFH(ただし、C末端はアミド化)をFmoc固相合成法により常法に従って合成した。保護基を除去した後、pH8.5の水溶液中酸化条件下で分子内S-S結合を形成させ、逆相HPLCを用いて、流速1.0ml/min、0.1%のTFAを含む10%から60%のアセトニトリルのグラジエント溶出によって分子内S-S結合を有するペプチドを精製した。凍結乾燥後、DMF中にて、2倍モルのMaleimide-NHS(N-hydroxysuccimide)を反応させ、逆相HPLCにより精製した。続いて、上記ペプチド2mgを34μLのDMSOに溶かし、50mMのDM1(Chemexpress)を含むDMSO 30μLを添加した後にピリジン1.6μLを添加して混合し、50℃で3時間インキュベートした。
【実施例】
【0100】
インキュベート後、0.2μLをサンプリングし、0.1%ギ酸水を20μL加え、LC-MS(Shimadzu)にて分析した。
【実施例】
【0101】
分析条件は以下の通りである。
流速:0.2mL/min
吸収測定波長:220nm
カラム温度:25℃
使用カラム:Kinetex(登録商標) 1.7μm EVO C18 100オングストローム LC Column 150×2.1 mm
【実施例】
【0102】
ペプチドとDM1のコンジュゲートの分子量の理論値は3438.1であり、MSにより分子量3437.76のピークが得られたことから、コンジュゲートが得られたことが確認された(データ示さず)。
【実施例】
【0103】
(ペプチドのSG化)
ペプチドとDM1のコンジュゲートにアセトニトリルに溶解した500mM DSG(ジスクシニルグルタレート)を33μL添加し、50℃、3時間インキュベートした後に上記と同様の方法でLC-MSにて分析した。
【実施例】
【0104】
SG化されたペプチドとDM1のコンジュゲートの分子量の理論値は3649.27であり、MSにより分子量3649.03のピークが得られたことから、SG化ペプチドが得られたことが確認された(データ示さず、以下SG化されたペプチドとDM1のコンジュゲートを「SG化ペプチド-DM1」とも記載する)。
【実施例】
【0105】
分析後、目的生成物のみをLC-forteを用いて分取した。分取条件は以下の通りである。
流速:4.0mL/min
吸収測定波長:220nm、280nm
カラム温度:RT
使用カラム:ジーエルサイエンス社製 InertSustain C18 5μm、7.6×250mm、column
Serial No. 5GR43011
【表1】
JP2020019723A_000005t.gif
【実施例】
【0106】
分取した生成物は遠心エバポレーターで50分間遠心してアセトニトリルを除いたのちに、-80℃で1時間凍結させた。その約15時間後に凍結乾燥を行い、凍結乾燥物を18.5μLのDMSOに溶解して、LC-MSで分析し目的物が単離されたことを確認した(データ示さず)。
【実施例】
【0107】
(抗CD70 scFv-Fcとペプチドのコンジュゲート)
上記の通り調製したSG化ペプチド-DM1を10mMの濃度で含むDMSO 4μLとDMSO 1mLを混合した(混合液1)。また、10mM Acetate buffer(pH5.0)8.8mLと実施例1で調製した抗CD70scFv-Fcを100μMの濃度で含むPBS 200μL(2mg分)を混合した(混合液2)。
【実施例】
【0108】
混合液1を少しずつ混合液2に混ぜボルテックス後、1時間室温で反応させた後に陽イオン交換カラムで分析した。
【実施例】
【0109】
陽イオン交換カラムによる分析条件は以下の通りである。
測定装置:Shimadzu Chromatography system
カラム:Shodex SP825
溶出液:A. 10mM Acetate buffer (pH5.0)
B. 溶出液A+1M NaCl Linear gradient 10%→90%(30min)
流速: 0.8ml/min
検出器:FLD(Ex:280nm Em340nm)UV (280nm)
【実施例】
【0110】
ピークのシフトが確認できたので(第2、第3のピークの出現、第1のピークは未反応物のピークと推定された)、NGCを用いて第2のピーク(ピークA)、第3のピーク(ピークB)を分取した。ピークAに相当するフラクションを1価ADCとして、ピークBに相当するフラクションを2価ADCとして分取し、それぞれをビバスピンカラム(GEヘルスケア)で濃縮した後にe-spectにより濃度を測定したところ、ピークAは1.1mg/mL、ピークBは1.3mg/mLであった。上記の操作後、分取できていることを確認するため上記条件で陽イオン交換カラムを用いてHPLCによる分析を行った(データ示さず)。
【実施例】
【0111】
目的物(抗CD70scFv-FcとSG化ペプチド-DM1のコンジュゲート、以下「抗CD70scFv-Fc + DM1」とも記載する)が分取できていることを確認できたので、次にTOF-MSを用いてそれぞれのピークの分子量を確認した。
【実施例】
【0112】
TOF-MSの結果より、抗CD70scFv-Fcの質量が108933.190、1価抗CD70scFv-Fc+ DM1の質量が115748.728(理論値:112468.19)、2価抗CD70scFv-Fc+ DM1の質量が116363.84(理論値:116003.19)であり、概ね一致していた。
【実施例】
【0113】
上記のTOF-MSの結果より、目的のADCが1価と2価のものが作製、分取できていることが確認できた。
【実施例】
【0114】
<実施例3:抗CD70単鎖Fv-FcのADCによる細胞増殖抑制活性>
96wellプレートの各well(薬剤最高濃度のwellを除く)にRPMI1640培地(+10%FBS +1%penicillin-streptomycin)を100μLずつ分注し、最高濃度(50nM又は5nM)の薬剤のwellには培地で目的の濃度に希釈した125μLの薬剤を添加した。薬剤としては、DM1、抗CD70scFv-Fc、1価抗CD70scFv-Fc + DM1、2価抗CD70scFv-Fc + DM1を、0nM、0.016nM、0.08nM、0.4nM、1nM、2nM、5nM、10nM、又は50nMの濃度で用いた。8連ピペットを用いて最高濃度のwellから25μL取り、そのまま25μLずつ96wellプレート上で段階希釈した。その後、培地で希釈した各種細胞を1×104 cell/100μL/wellずつ撒き、37℃、5%CO2環境下で96時間インキュベートした後に、生細胞検出試薬(Cell Counting Kit-8 : Dojindo)を10μL/wellで添加して同条件で2時間インキュベートした。その後、450nmの吸光度で検出し、630nmの吸光度とブランクwellでの吸光度を引いた値を生存細胞数(%)として示し、IC50を決定した。
【実施例】
【0115】
結果を図1及び表2に示す。なお、S1T、HuT102、M8166、Su9T01はHTLV-1感染感受性(CD70陽性)T細胞株、MOLT-4、Jurkat、CEMはHTLV-1感染非感受性(CD70陰性)T細胞株である。
【実施例】
【0116】
【表2】
JP2020019723A_000006t.gif
【実施例】
【0117】
図1及び表2が示す様に、1価、2価の抗CD70scFv-Fc+DM1のSITに対するIC50はそれぞれ1.8及び1.0nMであり、元の薬剤DM-1(IC50=0.3nM)に比べて約3~6倍大きく、元の薬剤に比べると活性としては弱いように見える。しかし、これらのADCのMOLT-4に対するIC50は>50nMであり、効果の選択制からみると50倍以上の違い見られた。元の薬剤DM-1のS1TとMOLT-4に対するIC50は約0.3nMと約0.5nMであり、ほとんど差がないことを考えると、抗体薬物複合体とすることで、標的細胞選択性が格段に高まっていることがわかる。このように、CD70を標的にしたADCは、S1T細胞をはじめとするCD70陽性細胞に対して特異的に細胞増殖抑制効果を有すると考えられる。
図面
【図1-1】
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【図1-2】
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