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明細書 :筋分化促進剤、筋分化促進方法、筋分化促進オリゴDNA、増強剤及びオリゴDNA

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 筋分化促進剤、筋分化促進方法、筋分化促進オリゴDNA、増強剤及びオリゴDNA
国際特許分類 A61K  31/711       (2006.01)
A61K  31/4741      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  21/00        (2006.01)
C12N  15/11        (2006.01)
C12N   5/077       (2010.01)
A23K  20/153       (2016.01)
A23K  50/75        (2016.01)
FI A61K 31/711
A61K 31/4741
A61P 43/00 105
A61P 21/00
C12N 15/11 ZNAZ
C12N 5/077
A23K 20/153
A23K 50/75
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 31
出願番号 特願2018-568609 (P2018-568609)
国際出願番号 PCT/JP2018/005305
国際公開番号 WO2018/151225
国際出願日 平成30年2月15日(2018.2.15)
国際公開日 平成30年8月23日(2018.8.23)
優先権出願番号 2017026547
2017150320
優先日 平成29年2月16日(2017.2.16)
平成29年8月3日(2017.8.3)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】▲高▼谷 智英
【氏名】下里 剛士
【氏名】梅澤 公二
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2B005
2B150
4B065
4C086
Fターム 2B005DA01
2B150AA05
2B150DC19
4B065AA90X
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZC75
要約 本発明に係る筋分化促進剤は、細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有するオリゴDNAを含む。前記オリゴDNAは好ましくは、5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有する。さらに前記オリゴDNAと併せてベルベリンもしくはその類縁化合物又はその塩を含んでもよい。
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有するオリゴDNAを含む筋分化促進剤。
【請求項2】
ベルベリンもしくはその類縁体化合物又はその塩をさらに含む請求項1に記載の筋分化促進剤。
【請求項3】
前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結している、請求項1又は2記載の筋分化促進剤。
【請求項4】
前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含む請求項3記載の筋分化促進剤。
【請求項5】
前記オリゴDNAは、塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含む請求項4記載の筋分化促進剤。
【請求項6】
前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’ 又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有する請求項1記載の筋分化促進剤。
【請求項7】
哺乳類又は鳥類の細胞又は個体に対して適用するための請求項1から6のいずれか1項に記載の筋分化促進剤。
【請求項8】
前記細胞はマウス筋芽細胞又はニワトリ筋芽細胞又はヒト横紋筋肉腫細胞である請求項7記載の筋分化促進剤。
【請求項9】
前記個体はマウス、ニワトリ又はヒトである請求項7記載の筋分化促進剤。
【請求項10】
前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含む請求項2記載の筋分化促進剤。
【請求項11】
5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有した請求項10記載の筋分化促進剤。
【請求項12】
前記オリゴDNAと前記ベルベリンもしくはその類縁体化合物又はその塩のモル比は1:10~10:1である、請求項9記載の筋分化促進剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかの1項に記載の筋分化促進剤を使用する筋分化促進方法。
【請求項14】
5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有するた筋分化を促進する活性を有するオリゴDNA。
【請求項15】
5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結している請求項14記載のオリゴDNA。
【請求項16】
5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含む請求項15記載のオリゴDNA。
【請求項17】
塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含む請求項16記載のオリゴDNA。
【請求項18】
細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有し、塩基長が6から25のいずれかであるオリゴDNA。
【請求項19】
前記塩基長が9から18のいずれかである請求項18記載のオリゴDNA。
【請求項20】
前記塩基長が18である請求項18記載のオリゴDNA。
【請求項21】
5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有した請求項18記載のオリゴDNA。
【請求項22】
5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結したことを特徴とする請求項19記載のオリゴDNA。
【請求項23】
オリゴDNAによる筋分化促進を増強するための増強剤であって、ベルベリンもしくはその類縁化合物又はその塩を含む増強剤。
【請求項24】
前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含む請求項23記載の増強剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年2月16日に出願された、日本国特許出願第2017-026547号明細書及び2017年8月3日に出願された、日本国特許出願第2017-150320号明細書(これらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
本発明は、筋分化促進剤、筋分化促進方法、筋分化促進の増強剤及び筋分化促進の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢社会では、加齢性の骨格筋委縮を主徴とするサルコペニアを含むロコモティブ症候群が急増しており、寝たきりの原因として大きな問題となっている。また近年の研究から、骨格筋の委縮は心不全の予後の独立した危険因子であるなど、運動機能の増進が様々な疾患の治療及び/又は予防にも重要であることが明らかになりつつある。多くの高齢者が自立した生活を送る健康長寿社会を実現するには、生涯に渡って筋力及び/又は筋量を維持していくことが不可欠である。加齢に伴う筋委縮の予防には、食事を介して筋肉に有益な分子を摂取するといった、日常的かつ長期的な取り組みが有効であると考えられており、安全で安価な機能性分子が求められている。
【0003】
骨格筋は、衛星細胞と呼ばれる骨格筋幹細胞の増殖と分化によって再生され、組織としての恒常性が保たれている。老化が進行すると、筋組織中の衛星細胞の数が減少し、また、個々の衛星細胞の再生能力も低下する。衛星細胞の老化を抑制したり、再生能力を活性化する機能性分子を探索及び同定することは、加齢性の筋委縮に対する新しい予防戦略の提唱につながると期待されている。
【0004】
例えば、マウス骨格筋から採取した衛星細胞を初代培養して得られた筋芽細胞を用い、骨格筋分化に作用する分子をスクリーニングする系が確立されており、このスクリーニング系によって、ウコンに含まれるポリフェノールの一種であるクルクミンが筋分化を促進することが見出されている(非特許文献1)。
【0005】
しかし、自然由来のクルクミンは、栽培されたウコン等を原材料にし、有機溶媒抽出法、アルコール抽出法などによって、分離及び抽出を行い、生産することが現在でも行われており、今後の世界的な需要の増加に対し高純度なクルクミンが安定にしかも安価に生産できるかどうかが懸念される。また特許文献1の方法はDNAの修復及びDNA欠損によるガン化の抑制を目的としたものである。
【0006】
また、老化防止という観点から、テロメア相同オリゴヌクレオチド(配列番号17、18)を細胞に曝露することにより、平均テロメア長を増加させる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2005-522520号公報
【0008】

【非特許文献1】高谷智英、転写因子GATA4は骨格筋幹細胞の増殖・分化を制御する、第2回国際心血管薬物療法学会日本部会学術集会 (徳島)プログラム抄録集、pp76、2016/06/25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決すべき課題は、新たな筋分化促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、新たな知見を見出すに至った。
具体的には、本発明は、以下の項を提供する
項1.細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有するオリゴDNAを含む筋分化促進剤。
【0011】
項2.ベルベリンもしくはその類縁体化合物又はその塩をさらに含む項1に記載の筋分化促進剤。
【0012】
項3.前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結している、項1又は2記載の筋分化促進剤。
【0013】
項4.前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含む項3記載の筋分化促進剤。
【0014】
項5.前記オリゴDNAは、塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含む項4記載の筋分化促進剤。
【0015】
項6.前記オリゴDNAは、5’TTAGGG3’ 又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有する項1記載の筋分化促進剤。
【0016】
項7.哺乳類又は鳥類の細胞又は個体に対して適用するための項1から6のいずれか1項に記載の筋分化促進剤。
【0017】
項8.前記細胞はマウス筋芽細胞又はニワトリ筋芽細胞又はヒト横紋筋肉腫細胞である項7記載の筋分化促進剤。
【0018】
項9.前記個体はマウス、ニワトリ又はヒトである項7記載の筋分化促進剤。
【0019】
項10.前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含む項2記載の筋分化促進剤。
【0020】
項11.5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有した項10記載の筋分化促進剤。
【0021】
項12.前記オリゴDNAと前記ベルベリンもしくはその類縁体化合物又はその塩のモル比は1:10~10:1である、項9記載の筋分化促進剤。
【0022】
項13.項1から12のいずれかの1項に記載の筋分化促進剤を使用する筋分化促進方法。
【0023】
項14.5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有するた筋分化を促進する活性を有するオリゴDNA。
【0024】
項15.5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結している項14記載のオリゴDNA。
【0025】
項16.5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含む項15記載のオリゴDNA。
【0026】
項17.塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含む項16記載のオリゴDNA。
【0027】
項18.細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有し、塩基長が6から25のいずれかであるオリゴDNA。
【0028】
項19.前記塩基長が9から18のいずれかである項18記載のオリゴDNA。
【0029】
項20.前記塩基長が18である項18記載のオリゴDNA。
【0030】
項21.5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有した項18記載のオリゴDNA。
【0031】
項22.5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結したことを特徴とする項19記載のオリゴDNA。
【0032】
項23.オリゴDNAによる筋分化促進を増強するための増強剤であって、ベルベリンもしくはその類縁化合物又はその塩を含む増強剤。
【0033】
項24.前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含む項23記載の増強剤。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、筋分化を強力に促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】骨格筋の再生メカニズムを示す説明図
【図2】本発明の一実施形態におけるオリゴDNAの構造的特徴を示す図
【図3】本発明の実施例1におけるMHC陽性細胞出現結果を示すグラフ
【図4】本発明の実施例1におけるオリゴDNAのMHC陽性細胞出現結果を示すグラフ
【図5】本発明の実施例2におけるオリゴDNA濃度とMHC陽性細胞出現の関係を示すグラフ
【図6】本発明の実施例2におけるオリゴDNAの熱変性の影響を示すグラフ
【図7】本発明の実施例3におけるヒト横紋筋肉腫の増殖抑制効果を示すグラフ
【図8】本発明の実施例4におけるオリゴDNA変異型のMHC陽性細胞の出現を示すグラフ
【図9】本発明の実施例5におけるマウス筋芽細胞に対する特異的効果を示すグラフ
【図10】本発明の実施例6におけるベルベリン又は類縁体化合物併用の効果を示すグラフ
【図11】本発明の実施例7におけるベルベリンによるオリゴDNA変異型の筋分化促進作用の増強効果を示すグラフ
【図12】本発明の実施例8におけるニワトリ筋芽細胞におけるベルベリン又は類縁体化合物によるオリゴDNAの筋分化促進作用の増強効果を示すグラフ
【図13】本発明の実施例9におけるヒト横紋筋肉腫細胞の種類に起因する効果の差を示すグラフ
【図14】本発明の実施例9におけるオリゴDNAとベルベリンのヒト横紋筋肉腫細胞増殖抑制効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一態様に係る筋分化促進剤は、細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有するオリゴDNAを含む。本発明において、「筋分化を促進する活性を有する」とは、本発明の属する分野における技術常識を参酌して適宜解釈し得るが、一般的には、対照群と比較して、骨格筋細胞の最終分化マーカーであるミオシン重鎖(MHC)陽性細胞の出現割合を増加させる性質を指す。MHC陽性細胞の出現割合は、例えば、後述の実施例1(図3)に示す試験において、測定、評価することができる。

【0037】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含んでいてもよい。本発明において、「5’XXXXXX3’又は5’YYYYYY3’を含む」には、5’XXXXXX3’及び5’YYYYYY3’の一方のみを含む場合と、これらの両方を含む場合とを包含する。本発明にかかるオリゴDNAがコア塩基配列を含む実施形態においては、当該オリゴDNAは、5’末端側に、塩基配列GAA、塩基配列AGA、塩基配列AAG又は塩基配列AAA;好ましくは塩基配列AGA、塩基配列AAG又は塩基配列AAA;より好ましくは塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有してもよい。かかる実施形態において、「5’末端側に塩基配列XXXを有する」とは、コア塩基配列よりも5’末端側に塩基配列XXXを有することを意味し、オリゴDNAの5’末端に塩基配列XXXを有する場合だけでなく、塩基配列XXXのさらに5’末端に塩基配列(例えば、A及びGからなる群より選択される少なくとも1個(例えば、1~5個、好ましくは1~3個)からなる塩基配列)を有する場合も包含される。また、当該実施形態において、上記塩基配列(塩基配列GAA、塩基配列AGA、塩基配列AAG又は塩基配列AAA;好ましくは塩基配列AGA、塩基配列AAG又は塩基配列AAA;より好ましくは塩基配列AGA又は塩基配列AAG)は、コア配列に連結していることが好ましいが、上記塩基配列とコア配列との間に別の塩基配列(例えば、A及びGからなる群より選択される少なくとも1個(例えば、好ましくは1~3個)からなる塩基配列)を介していてもよい。

【0038】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上(好ましくは2~3、より好ましくは2)連結して含んでもよい。すなわち、前記オリゴDNAは、5’TTAGGGTTAGGG3’(配列番号28);5’TTAGGGTGAGGG3’(配列番号29);5’TGAGGGTTAGGG3’(配列番号30);又は5’TGAGGGTGAGGG3’(配列番号31)を含んでもよい。これらのコア塩基配列のうち、5’TTAGGGTTAGGG3’、5’TTAGGGTGAGGG3’等が好ましい。

【0039】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含んでもよい。

【0040】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含んでもよい。

【0041】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは哺乳類又は鳥類の細胞又は個体に対して適用してもよい。

【0042】
前記筋分化促進剤において前記細胞はマウス筋芽細胞又はニワトリ筋芽細胞又はヒト横紋筋肉腫細胞であってもよい。

【0043】
前記筋分化促進剤において前記個体はマウス又はニワトリ又はヒトであってもよい。

【0044】
本発明の一態様に係る筋分化促進方法は、前記筋分化促進剤を使用する。

【0045】
本発明の一態様に係る筋分化促進オリゴDNAは、5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有する。

【0046】
前記筋分化促進オリゴDNAにおいて5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結してもよい。

【0047】
前記筋分化促進オリゴDNAにおいて5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列に5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を連結して含んでもよい。

【0048】
前記筋分化促進オリゴDNAにおいて塩基配列5’TTAGGGTGAGGG3’を含んでもよい。

【0049】
本発明の一態様に係る筋分化促進剤は細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有するオリゴDNAとベルベリン又はその類縁体化合物とを含む。

【0050】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNAは5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含む。

【0051】
前記筋分化促進剤において前記オリゴDNA5’は末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有してもよい。

【0052】
前記オリゴDNAと前記ベルベリン又はその類縁体化合物のモル比は等しくあってもよい。

【0053】
本発明の一態様に係る筋分化促進方法は5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含むオリゴDNAとベルベリン又はその類縁体化合物とを含む筋分化促進剤を使用する。

【0054】
本発明の一態様に係る増強剤は、オリゴDNAと併用され、細胞又は、個体に対して適用することにより筋分化を促進する増強剤であって、ベルベリン又はその類縁化合物を含む。

【0055】
前記増強剤において、5’TTAGGG3’で表されるコア塩基配列を含むオリゴDNAと併用されてもよい。

【0056】
本発明の一態様に係るオリゴDNAは細胞又は個体に対して適用することにより筋分化を促進する活性を有し、塩基長が6から25のいずれかである。

【0057】
前記オリゴDNAにおいて前記塩基長が9から18のいずれかであってもよい。

【0058】
前記オリゴDNAにおいて前記塩基長が13から23のいずれか、好ましくは15から21のいずれか、より好ましくは17から19のいずれか、さらに好ましくは18であってもよい。

【0059】
前記オリゴDNAにおいて5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列を含み、5’末端側に塩基配列AGA又は塩基配列AAGを有しているのが好ましい。

【0060】
前記オリゴDNAにおいて5’TTAGGG3’又は5’TGAGGG3’で表されるコア塩基配列が2以上連結しているのが好ましい。
また、本発明において、オリゴDNAは、後述する配列番号1~7、16のいずれかで示される塩基配列からなるもの;配列番号1~7、16のいずれかにおいて1個又は数個(好ましくは1~3個、より好ましく1個)の塩基が置換、欠失、挿入又は付加された塩基配列からなるもの等が好ましい。また、本発明において、オリゴDNAとしては、5’AAAAGATTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号32)又は5’AAAAAGTTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号33)で示される塩基配列からなるもの、当該配列番号32又は33で示される塩基配列のうち連続する15~21個(好ましくは17~19固、さらに好ましくは18個)の塩基で示される塩基配列からなるもの、これらの塩基配列いずれかにおいて1個又は数個(好ましくは1~3個、より好ましく1個)の塩基が置換、欠失、挿入又は付加された塩基配列からなるもの等が好ましい。 また、本発明において、オリゴDNAとしては、
5’XTXAGGGTXAGGGTXA3’(配列番号34)
[式中、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立して、A又はGを示す。X及びX、Xは、それぞれ独立して、T又はGを示す。]
で示される塩基配列のうち連続する15~21個(好ましくは17~19固、さらに好ましくは18個)の塩基で示される塩基配列からなるもの等が好ましい。上記実施形態において、オリゴDNAは、XTXAGGGTXAGGGを含むものが好ましい。また、配列番号32においてXとしてはTが好ましい。配列番号32においてXとしてはGが好ましい。配列番号32においてXとしてはGが好ましい。

【0061】
本発明において、上記オリゴDNAは、筋分化を促進することができる。具体的には、後述するように、筋分化を強力に促進する一連のオリゴDNA群を曝露した筋芽細胞では、細胞増殖が抑制され、ミオシン重鎖(MHC)陽性の筋管形成が促進されることが確認された。しかも、上記オリゴDNA群は化学合成が可能で安定構造を有すため、将来的に大量に供給及び保存ができ、また乳酸菌のゲノム配列に由来するため、安全性も高いことが期待される。
そのため、本発明の筋分化促進剤は、筋肉減弱症の予防及び/又は治療、横紋筋肉腫の増殖及び/又は転移の抑制、ES細胞、iPS細胞又は体性幹細胞の筋分化誘導、筋疾患の再生医療、創薬のスクリーニングに供する骨格筋幹細胞(衛星細胞)、骨格筋前駆細胞(筋芽細胞)及び骨格筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種の作成、食肉用家畜及び/又は家禽の飼料の添加物、食肉用家畜及び/又は家禽の骨格筋の形成及び/又は生育の促進に利用可能である。

【0062】
本発明においては、本発明の有効成分である上記オリゴDNAそのものを筋分化促進剤として用いても、薬学的に許容される各種担体(例えば、例えば等張化剤、安定化剤、pH調節剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤、防腐剤等)と組み合わせた医薬組成物として用いてもよい。
等張化剤としては、例えば、グルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類等が挙げられる。
pH調節剤としては、例えば、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸等の酸が挙げられ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウム等のアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモール等の塩基等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、グリセリン、D-ソルビトール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、D-マンニトール等が挙げられる。
粘稠化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられる。
また、上記医薬組成物は、オリゴDNA以外に、筋分化促進作用を有することが知られている化合物をさらに含んでいてもよい。
医薬組成物の実施形態において、組成物中のオリゴDNAの含有量は特に限定されず、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。
製剤中の本発明のオリゴDNAの含有量は、投与経路、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、オリゴDNAの1日投与量が通常10~5000mg程度、より好ましくは100~1000mg程度になる量とすればよい。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。

【0063】
(本発明の実施形態)
以下、本発明の一態様に係る実施の形態(以下、本実施形態)について図面を参照して詳細に説明する。

【0064】
まず骨格筋の再生メカニズムについて図1を参照しながら説明する。

【0065】
図1において、筋肉組織の一部に損傷又は劣化が生じた場合、まず衛星細胞と呼ばれる幹細胞が活性化し、筋芽細胞と呼ばれる前駆細胞となる。筋芽細胞は増殖を繰り返した後、筋細胞へと分化する。筋細胞は細胞融合により多核の筋管となる。筋管はさらに構造的成熟を遂げ、最終的に筋線維となり、骨格筋組織を再生する。

【0066】
本発明者らは、乳酸菌Lactobacillus rhamnosus GGのゲノム配列に由来するオリゴDNAライブラリを用いて筋分化促進作用の検証実験を行った。本実施形態において、オリゴDNAとは6から25の塩基からなる短いDNAを意味する。好ましくは9から18の塩基からなる。さらに好ましくは18の塩基からなる。これらのオリゴDNAは免疫調節作用を有する核酸素材として、医療及び食品の分野で研究が進んでおり、これまでに免疫系を制御する分子機構が明らかにされてきている。しかし免疫系以外の組織及び/又は細胞を標的とするオリゴDNAの研究は行われていなかった。そこで本発明者らはマウス筋芽細胞への作用をスクリーニングし、その結果、筋分化を強力に促進する一連の新規のオリゴDNA群を同定した。これらを曝露した筋芽細胞では、細胞増殖が抑制され、ミオシン重鎖(MHC)陽性の筋管形成が促進される。

【0067】
<myoDN>
本実施形態における筋分化促進剤は、例えば次に示す配列番号のオリゴDNAを含む:
iSN01:5’AAAAGATTAGGGTGAGGG3’(配列番号1)
iSN02:5’AAAGATTAGGGTGAGGGT3’(配列番号2)
iSN03:5’AAGATTAGGGTGAGGGTG3’(配列番号3)
iSN04:5’AGATTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号4)
iSN05:5’GATTAGGGTGAGGGTGAG3’(配列番号5)
iSN06:5’ATTAGGGTGAGGGTGAGT3’(配列番号6)
iSN07:5’TTAGGGTGAGGGTGAGTT3’(配列番号7)
iSN04’:5’AAGTTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号16)

【0068】
前記配列番号1~7、及び16のオリゴDNAはいずれもコア配列TTAGGGTGAGGG(配列番号29)を含む。前記配列番号28で示されるコア配列の5’末端側から2番目と8番目の塩基はTでもGでもよい。また前記コア配列の4~6番目と9~11番目に配列GGGを有するが、筋分化を活性させるに後者の配列がより重要である。なお、配列TTAGGGの繰り返し配列(TTAGGG)nはテロメアと呼ばれ、真核生物の染色体の末端部に存在する。テロメアは細胞分裂に先立つDNA複製とともに短くなり、細胞の老化が進むとされる(特許文献1)。

【0069】
本実施形態における筋分化促進剤は、より好ましくは、配列番号4及び/又は51のオリゴDNA(以下、iSN04、iSN04’)を含む。これらのオリゴDNAは前記コア配列の5’側に配列AGA又はAAGを含む。以下、iSN04、iSN04’を併せて、「myoDN」と称する。

【0070】
本実施形態における前記オリゴDNAは一本鎖であってもよい。また、核酸分解酵素に対して耐性を高めるためにホスホジエステル結合を有するオリゴヌクレオチドのリン酸基の酸素原子を硫黄原子で置換したもの(例えばホスホロチオエート結合)であってもよいが、これらに限定されない。また、前記オリゴDNAは乳酸菌、大腸菌などの生物からDNAを抽出し断片化したもの、あるいは、化学合成、遺伝子組替え技術によって作成したものであってもよいが、これらに限定されない。

【0071】
<myoDNの構造的特徴>
図2の左上及び左下にiSN04(配列番号4)の立体構造をシミュレートした結果を示す。当シミュレーションにおいてはiSN04はホスホロチオエート骨格を有する一本鎖DNAであることを前提としていない。左上の図はiSN04の分子構造図であり、左下の図は各塩基間の距離を濃淡描画したマップである。縦軸、横軸の数字はそれぞれ5’末端側から何番目の塩基であるかを示し、縦軸の番号の塩基と横軸の番号の塩基との距離が近いほど濃く表示される。左下図において、13~15番目の塩基配列GGGの周辺が濃く表示されているが、これはiSN04においてこれらのグアニン塩基群が他の塩基と比較して互いに近接していることを示している。

【0072】
<筋分化促進剤の適用対象>
本実施の形態における筋分化促進剤は、個体を構成する細胞に対しても培地上で培養された細胞に対しても適用可能である。また、前記筋分化促進剤はマウス、ヒトを含む哺乳類又はニワトリを含む鳥類を対象とすることができるが、これらに限定されない。

【0073】
<筋分化促進剤の利用形態>
本実施の形態における筋分化促進剤は、通常使用されている各種の担体、賦形剤の成分を配合し、公知の方法に従って、注射薬、塗布薬、錠剤、カプセル剤、シロップ、座薬等に製剤化できるが、これらに限定されない。また、前記筋分化促進剤は、経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、経腸、局所、舌下又は直腸手段によって投与することができるが、これらに限定されない。

【0074】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の筋分化促進剤はオリゴDNAにベルベリンもしくはその類縁体化合物(例えば、パルマチン、ヤテオリジン、コランバミン等)又はその塩を併用したものである。好ましくは、オリゴDNAとベルベリン又はその類縁体化合物のモル比を、1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1、さらに好ましくは1:2~2:1、なおさらに好ましくは1:1で用いる。オリゴDNAとしては、前述のものが挙げられる。当該実施形態において、筋分化促進剤中のオリゴDNAの含有量は特に限定されず、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。筋分化促進剤中のオリゴDNAの含有量の上限も特に限定されず、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下等の条件から適宜設定できる。当該実施形態において、筋分化促進剤中のベルベリンの含有量は特に限定されず、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。筋分化促進剤中のベルベリンの含有量の上限も特に限定されず、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下等の条件から適宜設定できる。

【0075】
当該実施形態においては、安価で安全なベルベリン又はその類縁体化合物をオリゴDNAに併用することによりオリゴDNAの筋分化促進作用を増強することが可能となる。ベルベリンの類縁体化合物としては、特に限定されず、天然の誘導体、人工の誘導体のいずれも使用し得る。

【0076】
<ベルベリンと組み合わせたmyoDNの構造的特徴>
図2の右上及び右下にベルベリンと組み合わせたiSN04(配列番号4)の立体構造をシミュレートした結果を示す。当シミュレーションにおいてはiSN04はホスホロチオエート骨格を有する一本鎖DNAであることを前提としていない。図2の右上はベルベリンと組み合わせた状態(ベルベリン存在下)におけるiSN04の複合体構造図(ベルベリン分子は空間充填モデルで表示)であり、右下の図はベルベリンと組み合わせた状態での各塩基間およびベルベリン(残基番号0)の距離を濃淡描画したマップである。図2の右下においては、13~15番目の塩基配列GGGの周辺だけでなく、7~9番目の塩基配列GGGの周辺も濃く表示されている。これはベルベリンと組み合わせた状態のiSN04においてこれらのグアニン塩基群が他の塩基と比較して互いに近接していることを示している。

【0077】
<ベルベリン>
ベルベリン(式1)はオウバク(黄檗)から抽出される生薬の成分で、アルカロイドの一種であり、窒素を含む塩基性の天然有機化合物として知られている。主に、抗菌、抗炎症、中枢抑制又は血圧降下剤として、下痢の止瀉薬、目薬として利用されており、人体に対して安全である。

【0078】
【化1】
JP2018151225A1_000002t.gif

【0079】
ベルベリンは単体では筋分化促進効果は無く、後述の実施例で示されるように、むしろ弱い筋分化抑制効果を有する。しかし、ベルベリンをiSN04又は所定の変異体とともに筋芽細胞に作用させたとき、筋分化促進効果が劇的に亢進する。変異体はiSN04’でもよく、あるいはiSN04の5’末端側より11番目のGをTに置換したオリゴDNA(配列番号26)であってもよい。ただし、後述の実施例で示されるように、iSN04の5番目のTをGに置換させるとベルベリンによる顕著な増強効果は見られなくなる。

【0080】
<パルマチン>
ベルベリンに代えて、パルマチンをオリゴDNAと併用してもよい。パルマチンはベルベリンと同じくオウバク(黄檗)から抽出される生薬成分であり、式2で示されるように、ベルベリンのメチレンジオキシ基の代わりにジメトキシ基を有す類縁体化合物である。当該実施形態において、筋分化促進剤中のパルマチンの含有量は特に限定されず、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。筋分化促進剤中のパルマチンの含有量の上限も特に限定されず、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下等の条件から適宜設定できる。

【0081】
【化2】
JP2018151225A1_000003t.gif

【0082】
ベルベリンもパルマチンも(S)-レチクリン(C1923NO)を前駆体としコランバミン(C2020NO)を経て生合成される。ベルベリンシターゼという酵素がコランバミンをメチレンジオキシ基を有するベルベリンに変換する。また他の酵素がコランバミンをメチル化してパルマチンを生成する。

【0083】
<その他の類縁体>
ベルベリンの類縁体としては、パルマチン以外に、ヤテオリジン、コランバミン等が挙げられる:

【0084】
【化3】
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【0085】
当該実施形態において、筋分化促進剤中の、ヤテオリジン、コランバミン等のベルベリンの類縁体の含有量は特に限定されず、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。筋分化促進剤中のヤテオリジン、コランバミン等のベルベリンの類縁体の含有量の上限も特に限定されず、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下等の条件から適宜設定できる。

【0086】
ベルベリン及びパルマチン等の類縁体を生合成する植物からこれらを抽出及び精製する方法は既に確立されており、安価で利用することが可能である。さらにオリゴDNAよりも安価なベルベリン又はパルマチン等の類縁体を併用することで、効果を高めつつオリゴDNAの利用コストをさらに下げることが可能である。

【0087】
本発明においてベルベリン又はその誘導体は、塩の状態で用いてもよい。また、ベルベリン又はその誘導体の塩としては、ハロゲン化物(塩化物等)等が挙げられる。また、ベルベリン又はその誘導体の塩としては、酸付加塩及び塩基との塩も挙げられる。酸付加塩の具体例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等の酸性アミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。

【0088】
本発明において、ベルベリンもしくはその誘導体又はこれらの塩は、前述したオリゴDNAによる筋分化促進作用を増強することができる。従って、本発明は、オリゴDNAによる筋分化促進を増強するための増強剤であって、ベルベリンもしくはその類縁化合物又はその塩を含む増強剤を提供する。当該実施形態において、ベルベリンもしくはその類縁化合物又はその塩の種類、配合量、オリゴDNAの種類、使用量、その他成分等については、筋分化促進剤について前述したのと同様の条件を適宜適用し得る。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本発明者らは、マウス骨格筋から採取した衛星細胞を初代培養して得られた筋芽細胞を用い、骨格筋分化に作用する分子をスクリーニングする系を確立した。コラーゲンコートした96wellプレートで培養した筋芽細胞に、オリゴDNAなどの分子を添加する。所定時間経過後に、免疫染色によって骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン重鎖(MHC)の発現を定量化する。このときDAPI染色によって細胞核を可視化する。さらにイメージアナライザーを用いて、画像の撮影と解析を自動的に行い、筋分化効率と細胞数をハイスループットで定量する。このようにして、筋芽細胞に対する多種多様な分子の作用を効率的に検討することができる。
【実施例】
【0090】
配列番号1~3、及び5~51の50種類のオリゴDNA群(表1)を用いたスクリーニング結果を図3に示す。マウス筋芽細胞(10cells/well)にそれぞれ10μMの濃度のオリゴDNAを曝露し、48時間後にMHC陽性細胞の出現割合を測定した。なお、以下の実施例におけるオリゴDNAは一本鎖で構成され、しかも核酸分解酵素に対して耐性を高めるためにホスホジエステル結合のリン酸基の酸素原子を硫黄原子で置換する処理(S化)を予め行っている。
【実施例】
【0091】
<表1>
iSN01 : 5’AAAAGATTAGGGTGAGGG3’(配列番号1)
iSN02 : 5’AAAGATTAGGGTGAGGGT3’(配列番号2)
iSN03 : 5’AAGATTAGGGTGAGGGTG3’(配列番号3)
iSN04’: 5’AAGTTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号16)
iSN05 : 5’GATTAGGGTGAGGGTGAG3’(配列番号5)
iSN06 : 5’ATTAGGGTGAGGGTGAGT3’(配列番号6)
iSN07 : 5’TTAGGGTGAGGGTGAGTT3’(配列番号7)
iSN08 : 5’AGTTCAACATTAGGGTGA3’(配列番号8)
iSN09 : 5’GTTCAACATTAGGGTGAA3’(配列番号9)
iSN10 : 5’TTCAACATTAGGGTGAAA3’(配列番号10)
iSN11 : 5’TCAACATTAGGGTGAAAA3’(配列番号11)
iSN12 : 5’CAACATTAGGGTGAAAAT3’(配列番号12)
iSN13 : 5’AACATTAGGGTGAAAATG3’(配列番号13)
iSN14 : 5’ACATTAGGGTGAAAATGA3’(配列番号14)
iSN15 : 5’CATTAGGGTGAAAATGAA3’(配列番号15)
【実施例】
【0092】
図3において、右側のグラフはミオシン重鎖(MHC)陽性細胞の割合を、左側のグラフは細胞数を示したものである。いずれも最上段の白色のバー(Ctrl)はオリゴDNAを全く投与しなかった対照群(コントロール)である。なお、左側のグラフにおいては対照群の細胞数は1と正規化している。明らかにMHC陽性細胞の割合と細胞数とは相補的な関係にある。これは筋芽細胞の分化が促進されれば増殖が抑制されることを意味する。対照群におけるMHC陽性細胞の比率は高々3%程度である。
【実施例】
【0093】
一方、オリゴDNAを投与した筋芽細胞のうち、iSN01、02、03、04’、05、06及び07のグループに属するオリゴDNAが投与された筋芽細胞においては6%以上の割合でMHC陽性細胞が出現した。特にiSN04’(配列番号16)のオリゴDNAが投与された筋芽細胞におけるMHC陽性細胞の割合は40%超と非常に高い。
【実施例】
【0094】
さらに、このiSN04’と配列が2塩基異なるiSN04(表2、配列番号4)のオリゴDNAとで、同様の条件で比較実験を行った。結果を図4に示す。
【実施例】
【0095】
<表2>
iSN04: 5’AGATTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号4)
【実施例】
【0096】
図4より明らかなように、配列番号4のオリゴDNA(iSN04)は配列番号16のオリゴDNA(iSN04’)と同程度かそれ以上の筋分化促進作用を示す。
【実施例】
【0097】
ここで注目すべきことは、前記iSN01~07及び前記iSN04’のグループに属するオリゴDNAは、共通して5’TTAGGGTGAGGG3’(配列番号29)という塩基配列を有している。
【実施例】
【0098】
(実施例2)
図5にiSN01~03(配列番号1~3)、iSN05~07(配列番号5~7)、iSN04’(配列番号16)のオリゴDNAを3μM及び10μMの濃度で筋芽細胞に曝露したときの、48時間後におけるミオシン重鎖(MHC)陽性細胞の割合を測定した結果を示す。同図によれば、オリゴDNAの濃度が3μMに比べて10μMで極端にMHC陽性細胞割合が増えることから、筋分化の促進には一定量以上の濃度のオリゴDNAが必要であることが判る。
【実施例】
【0099】
さらに、iSN02(配列番号2)を加熱により変性(denature)させた10μMのオリゴDNA(de-iSN02)を48時間、マウス筋芽細胞(10cells/well)に曝露したときのMHC陽性細胞割合を図6に示す。熱変性処理はオリゴDNAを95℃で5分間加熱して行った。熱変性によって、iSN02の筋分化促進作用が明らかに失われていることがわかる。この結果は、オリゴDNAの活性が立体構造に依存していることを示唆する。
【実施例】
【0100】
(実施例3)
図7は、myoDNすなわちiSN04又はiSN04’(配列番号4、51のオリゴDNA)によるヒト横紋筋肉腫細胞KYM1の増殖の抑制効果を示したものである。図3で説明したとおり筋芽細胞の分化と増殖は相補的な関係にある。言い換えればオリゴDNAにより筋芽細胞の分化が促進されれば、その一方で増殖は抑制される。この性質を利用すれば、オリゴDNAによる癌などの悪性腫瘍の増殖及び転移を抑制する効果が期待できる。
【実施例】
【0101】
図7において(a)はヒト横紋筋肉腫細胞KYM1(5×10cells/well)にオリゴDNA(iSN04’)を曝露したときの骨格筋分化マーカー遺伝子(MYH2)の発現量を、(b)は細胞増殖マーカー遺伝子(MKI67)の発現量を、それぞれコントロール(Ctrl)を1.0として定量したものである。両図より明らかなように、筋分化の促進と細胞増殖の抑制は互いに逆の関係にある。
【実施例】
【0102】
図7(c)は時間経過に伴う横紋筋肉腫の細胞数を計測した結果である。コントロール(Ctrl)と比較すると、iSN04(配列番号4のオリゴDNA)を曝露したときは明らかにヒト横紋筋肉腫細胞KYM1の増殖が抑制されている。
【実施例】
【0103】
(実施例4)
表3に示すiSN04(配列番号4)の一部の塩基を置換又は削除して作成したオリゴDNAの変異型(配列54~62)をマウス筋芽細胞に対しそれぞれ10μMの濃度で曝露し、48時間後にMHC陽性細胞の出現割合を測定した。表3において「-」は塩基配列が削除されその両端の塩基が直に結合していることを表す。例えばiSN04(del13-15)において、5’末端側から12番目の塩基Aと、3’末端側から4番目の塩基Tは直に結合している。
【実施例】
【0104】
<表3>
iSN04 :5’AGATTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号4)
iSN04(4-18) :5’---TTAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号19)
iSN04(7-18) :5’------GGGTGAGGGTGA3’(配列番号20)
iSN04(10-18) :5’---------TGAGGGTGA3’(配列番号21)
iSN04(dell5) :5’AGATTAGGGTGAGG-TGA3’(配列番号22)
iSN04(del14-15) :5’AGATTAGGGTGAG--TGA3’(配列番号23)
iSN04(del13-15) :5’AGATTAGGGTGA---TGA3’(配列番号24)
iSN04(T5G) :5’AGATGAGGGTGAGGGTGA3’(配列番号25)
iSN04(G11T) :5’AGATTAGGGTTAGGGTGA3’(配列番号26)
iSN04(T5G,G11T) :5’AGATGAGGGTTAGGGTGA3’(配列番号27)
【実施例】
【0105】
結果を図8に示す。同図より明らかなように、iSN04の5’末端側から5番目、11番目の塩基をT、Gのいずれに変えても、MHC陽性細胞の出現割合は殆ど変わらない。その一方で、5’末端側の3塩基を削除したiSN04(4-18)(配列番号19)を曝露したときのMHC陽性細胞の出現割合はMQ(コントロール)と同程度であり、当変異型適用による筋分化促進効果は全く認められない。6塩基削除したiSN04(7-18)(配列番号20)、9塩基削除したiSN04(10-18)(配列番号21)を適用した場合においても結果はほぼ同じである。以上の結果は、myoDNの筋分化促進作用には5’末端側の3塩基(AGA又はAAG)の存在が重要であることを示している。
【実施例】
【0106】
さらにiSN04の5’側から13~15番目のGをそれぞれ1個、2個、すべて除去したオリゴDNA(配列番号22、23、24)でも筋分化活性の低下がみられることから、特に当位置における塩基GGGの役割が大きいことが示唆される。図2で示されたように、当位置におけるグアニン塩基群は他の塩基と比較してより互いに近接しており、この構造的な特徴がmyoDNの筋分化促進効果に寄与している可能性がある。
【実施例】
【0107】
(実施例5)
myoDNが筋分化を特異的に促進することを検証するため、iSN04(配列番号4)を用いた実験を行った。それぞれ5×10cells/wellの密度で培養したマウス筋芽細胞又はマウス胎児線維芽細胞にiSN04(配列番号4)を1μM又は3μM、72時間曝露し、細胞に対する増加抑制効果を観察した。実験はそれぞれ3回行いその平均をプロットした。
【実施例】
【0108】
図9上のグラフはマウス筋芽細胞に対する増加抑制効果を示したもので、コントロール(Ctrl)の細胞(iSN04を加えていない細胞)が72時間後に約2倍に増殖したのに対し、iSN04を3μM曝露したものは0.05未満のp値で約2割程度の増加に抑えられた。
【実施例】
【0109】
しかし、同図下のグラフに示されるように、マウス胎児線維芽細胞に対しては、iSN04の3μM程度の曝露では、細胞の増殖を抑え込むことができなかった。すなわち、myoDNは筋分化を特異的に促進する結果として細胞増殖を抑制するのであり、全ての細胞の増殖を抑制するわけではない。
【実施例】
【0110】
(実施例6)
ベルベリン又はパルマチンによるmyoDNの筋分化促進作用の増強効果を検証する実験を行った。それぞれ10cells/wellの密度で培養したマウス筋芽細胞にベルベリンのみ又はパルマチンのみをそれぞれ1μM、3μM又は10μM曝露したものと、併せてiSN04を0又は3μMの濃度で曝露したサンプルについて、48時間後にMHC陽性筋細胞の出現割合を測定した。
【実施例】
【0111】
図10にその結果を示す。同図より明らかなように、ベルベリン(Ber)単体ではコントロール(白棒のMQ)よりもMHC陽性筋細胞の出現割合が却って低下する。これはベルベリンは本来筋分化を抑制する作用を有する可能性があることを意味する。ところがiSN04を3μM併せて曝露した場合、iSN04単体を投与したもの(黒棒のMQ)に対しMHC陽性筋細胞の出現割合が1.5~2倍程度増加する。これはベルベリンはmyoDNの効果を増強する機能を有していることを意味する。
【実施例】
【0112】
パルマチン(Pal)についても、ベルべリンよりも効果は穏やかであるが、myoDNの効果を増強する性質を有している。一方で、ベルベリン単体投与で観察された弱い筋分化抑制効果は、パルマチン単体投与では認められなかった。
【実施例】
【0113】
なお、ベルベリン又はパルマチンによるiSN04の増強作用は、いずれの場合も、iSN04とベルベリン又はパルマチンのモル比が1:1のときに最も効果的であった。例えば図10においてmyoDN(iSN04)3μMに対してベルベリンを10μM投与したとき(Ber10)のMHC陽性筋細胞の出現割合はベルベリンを3μM投与したとき(Ber3)の割合よりも若干低い。
【実施例】
【0114】
(実施例7)
<表3>で示されたベルベリンによるiSN04変異体(配列番号19~27)の筋分化促進作用の増強効果を明らかにする実験を行った。それぞれ10cells/wellの密度で培養したマウス筋芽細胞にiSN04又はその変異体のみを3μMの濃度で曝露したサンプルと、併せてベルベリン3μMを投与したサンプルについて、48時間後にMHC陽性筋細胞の出現割合を測定した。
【実施例】
【0115】
結果を図11に示す。ベルベリン(Ber)を加えない場合(白棒)、この条件下ではiSN04又は変異型を曝露したときのMHC陽性筋細胞の出現割合は20%前後であるが、ベルベリンを加えた場合(黒棒)、変異型によって顕著な差が発生する。iSN04及び5’末端側から11番目のGをTに置換したG11T(配列番号26)にのみベルベリンによる顕著なmyoDN活性増強効果が確認された。他の変異型については殆ど効果に変化が無いか(配列番号22のdel15等)、却って効果が抑制される(配列番号19の4-18等)。
【実施例】
【0116】
図8(実施例4)では、5番目と11番目の塩基がTかGかはmyoDNの筋分化促進効果には関係ないことが示されたが、ベルベリンによる増強作用の点からすれば、5番目の塩基として、Tがより好適であることが示される。
【実施例】
【0117】
(実施例8)
なお、上記実施例においては筋分化の検証にマウス筋芽細胞が用いられたが、本発明はこれに制限されるものではない。他の動物、例えば、鳥類であるニワトリの筋芽細胞を用いた実験でも、オリゴDNAによる筋分化促進作用が認められた。
【実施例】
【0118】
本実施例ではそれぞれ直径3cmのディッシュあたり10cellsの密度で培養したニワトリ筋芽細胞にiSN04’を0μM、3μM又は10μM曝露したものと、ベルベリン10μMを併用したサンプルについて、48時間後にMHC陽性筋細胞の出現割合を測定した。
【実施例】
【0119】
結果を図12(a)に示す。コントロール(図中横軸0μMの白棒)と比べ、iSN04’を3μM又は10μM投与したサンプルではMHC陽性筋細胞の出現割合は倍増している。ベルベリン(Ber)を併用した場合、MHC陽性筋細胞の出現割合はさらに倍増している。本実験でも、iSN04’とベルベリンのモル比が1:1のとき(ともに10μM)に、最も高い筋分化促進作用が認められた。
【実施例】
【0120】
さらに図10(実施例6)と同様の実験をニワトリ筋芽細胞に対しても行った。結果を図12(b)に示す。ニワトリ筋芽細胞に対しても、ベルベリン(Ber)単体では筋分化を抑制するように作用し、iSN04と組み合わせると顕著な筋分化促進作用が確認された。また、パルマチン(Pal)についても、ベルべリンよりも効果は穏やかであるが、iSN04の効果を増強することが確認された。
【実施例】
【0121】
(実施例9)
myoDNのヒト横紋筋肉腫細胞の増殖の抑制効果について併せてベルベリンの効果について実験を行った。ヒト横紋筋肉腫細胞KYM1、RD、ERMS1の5×10cells/wellのサンプルそれぞれに対し、10μMのiSN04を曝露し、24~96時間経過後の細胞数を測定した。結果を図13に示す。腫瘍株によってiSN04の抑制効果が異なることが示されている。
【実施例】
【0122】
図13において(a)のグラフはヒト横紋筋肉腫細胞KYM1にiSN04を曝露した結果を示すものであり、図7(c)で示されたグラフとほぼ同じ条件で追試されたものである。コントロール(Ctrl)と比べて筋肉腫細胞の増殖が半分以下(72時間後)に抑えられていることが本実施例においても再現されている。一方で、RD株については96時間後に0.05未満のp値で25%程度の抑制が認められた(図13(b))。ERMS1株では抑制効果が10%程度であった(同図(c))。
【実施例】
【0123】
RD株についてはiSN04と併せてベルベリンを投与すると増殖抑制効果が劇的に改善することが判った。図14にコントロール(Ctrl)、iSN04のみ(10μM)、iSN04と等モルのベルベリン(Ber)(10μM)を併用したときの96時間後の細胞数の測定結果を示す。iSN04とベルベリンを併用した場合、iSN04のみの場合と比べて約25%、コントロールと比べて約50%の増殖抑制効果が示された。
【実施例】
【0124】
以上、本発明によれば、オリゴDNAにより筋分化を強力に促進することが可能となる。しかも、上記オリゴDNAは化学合成が可能で安定構造を有すため、将来的に大量に供給及び保存ができ、また乳酸菌のゲノム配列由来であるため、安全性も高いと期待される。さらに、安価でしかも安全なベルベリン又はその類縁体化合物を併用することによりオリゴDNAの筋分化促進作用を増強することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、筋肉減弱症状(サルコペニア)を含むロコモティブ症候群の予防及び/又は治療、横紋筋肉腫の増殖及び/又は転移の抑制、ES細胞、iPS細胞又は体性幹細胞の筋分化誘導、筋疾患の再生医療、創薬のスクリーニングに供する骨格筋幹細胞(衛星細胞)、骨格筋前駆細胞(筋芽細胞)及び骨格筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種の作成、食肉用家畜及び/又は家禽の飼料の添加物、食肉用家畜及び/又は家禽の骨格筋の形成及び/又は生育の促進に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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