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明細書 :マグネシウムとビスマスの合金層を備える電極及びマグネシウム二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年1月23日(2020.1.23)
発明の名称または考案の名称 マグネシウムとビスマスの合金層を備える電極及びマグネシウム二次電池
国際特許分類 H01M   4/38        (2006.01)
H01M  10/054       (2010.01)
C22C  23/00        (2006.01)
C22C  12/00        (2006.01)
FI H01M 4/38 Z
H01M 10/054
C22C 23/00
C22C 12/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 13
出願番号 特願2019-506260 (P2019-506260)
国際出願番号 PCT/JP2018/010207
国際公開番号 WO2018/168995
国際出願日 平成30年3月15日(2018.3.15)
国際公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
優先権出願番号 2017051226
優先日 平成29年3月16日(2017.3.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】吉本 信子
【氏名】山吹 一大
【氏名】板岡 加成恵
【氏名】藤井 健太郎
【氏名】松本 敏治
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
【識別番号】000142872
【氏名又は名称】株式会社戸畑製作所
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100113860、【弁理士】、【氏名又は名称】松橋 泰典
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
審査請求 未請求
テーマコード 5H029
5H050
Fターム 5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK02
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA13
5H050BA15
5H050CA02
5H050CA11
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
要約 本発明の課題は、酸化皮膜の形成が抑制され、高電位かつ高容量なマグネシウム二次電池を作製できる電極、及び酸化皮膜形成が抑制された高電位かつ高容量なマグネシウム二次電池を提供することにある。
マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)を含む、又はマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)とマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との金属間化合物(MgBi)を含むことを特徴とする電極。負極として前記電極を備え、さらに電解質層及び正極を備えることを特徴とするマグネシウム二次電池。
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との合金層を備える電極であって、前記合金層が、マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)を含む、又はマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)とマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との金属間化合物(MgBi)を含むことを特徴とする電極。
【請求項2】
マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との合金中のビスマスの含有量が、前記合金全体に対して1~58.9質量%であることを特徴とする請求項1記載の電極。
【請求項3】
負極として請求項1又は2記載の電極を備え、さらに電解質層及び正極を備えることを特徴とするマグネシウム二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムとビスマスの合金層を備える電極、及び前記電極を備えるマグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化され、電子デバイス等の様々な用途に使用されている。しかしながら、今後の車載用途や大型用途に対しては、リチウムイオン二次電池では対応することが難しく、他の二次電池の開発が行われている。そこで、体積当たりの電気容量でリチウムイオン二次電池を凌ぐ特性を有するマグネシウム二次電池の開発が盛んに行われている。マグネシウムは、体積当たりの電気容量がリチウムの約2倍であるだけでなく、融点がリチウムの186℃に比べて650℃と高い。リチウムイオン二次電池は、電池内部での短絡等により加熱、発火するとの問題が指摘されているが、この原因の一つとしてリチウムの融点の低さが挙げられている。この点、マグネシウムはリチウムに比べて融点が高いため、安全性が高い。また、マグネシウムは、希少金属であるリチウムに比べて地球上に多く存在し、資源的にも豊富である。しかし、従来のマグネシウム負極は、その表面に絶縁層である酸化皮膜が形成されるため、電気が流れにくく過電圧が大きくなり、本来の電池容量特性が発揮できないとの問題があった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するためにいくつかの提案がなされている。例えば、電解質を改良することにより酸化皮膜の形成を抑制する方法として、EtMgBr/THFを電解液として用いてマグネシウム負極表面の酸化皮膜を除去する方法が提案されている(非特許文献1)。しかし、この方法では、酸化側の電位に対して耐性がなく、電解液の分解が生じるため長期での充放電が行えないとの問題がある。また、使用できる正極材料が限られており、電圧1V程度の低電位の電池しか報告されていない。負極を改良する方法としては、負極にマグネシウムの金属間化合物を使用する方法が提案され、マグネシウムとビスマスのモル比が3:2に調製された金属間化合物を用いることが提案されている(特許文献1、非特許文献2)。しかしこの方法の場合、マグネシウム-ビスマス金属間化合物は、マグネシウムの含有量が16質量%程度であるため使用できるマグネシウムの量が少ない。また、金属間化合物は脆いため、そのまま電極として用いると耐久性に問題がある。耐久性を高めるために、バインダーを用いると導電助剤を添加する必要があり、バインダーや導電助剤の重量も加味すると、マグネシウムの含有量は13%程度と更に少なくなる。そのため、電池あたりにおけるマグネシウムの電気化学的エネルギーへの寄与が小さいとの問題があった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2014-512637号公報
【0005】

【非特許文献1】D.Aurbach,Z.Lu,A.Schechter,Y.Gofer,H.Gizbar,R.Turgeman,Y.Cohen,M.Moshkovich&E.Levi“ Prototype systems for rechargeable magnesium batteries”,Nature,407, 724-727(2000).
【非特許文献2】Timothy S.Arthur,Nikhilendra Singh,Masaki Matsui, “Electrodeposited Bi,Sb and Bi1-xSbxalloys as anodes for Mg-ion batteries”, Electrochemistry Communications,16,103-106 (2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記問題を解決し、酸化皮膜の形成が抑制され、高電位かつ高容量なマグネシウム二次電池を作製できる電極、及び酸化皮膜形成が抑制された高電位かつ高容量なマグネシウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、マグネシウム二次電池における電極上の酸化皮膜の形成を抑制する方法を検討するなかで、マグネシウム二次電池を構成する要素のうちからマグネシウム電極自体に着目し、開発に着手した。マグネシウムを任意の割合でビスマスと合金化し、マグネシウム二次電池の負極としてその電気化学特性を評価したところ、これまでの金属間化合物(MgBi)とは異なり、より少ないビスマス量の合金にて酸化皮膜の形成が抑制され、高電位かつ高容量なマグネシウム二次電池用の電極として使用できることを見いだした。また、これまで報告されているマグネシウム-ビスマス合金電極は、脆い金属間化合物(MgBi)であり電極の成形加工特性に乏しく、電極にするためには導電性カーボン及び結着剤(バインダー)などを用いる必要があり、電極として機能させるためには高容量であるマグネシウムの含有量は著しく減少する(Mg含有量13質量%以下)。本発明者らは、合金中の組成をMg-Bi固溶体又はMg-MgBi共晶の多い状態にすることで、成形加工特性に優れた電極材料となることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との合金層を備える電極であって、前記合金層が、マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)を含む、又はマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)とマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との金属間化合物(MgBi)を含むことを特徴とする電極。
(2)マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との合金中のビスマスの含有量が、前記合金全体に対して1~58.9質量%であることを特徴とする上記(1)記載の電極。
(3)負極として上記(1)又は(2)記載の電極を備え、さらに電解質層及び正極を備えることを特徴とするマグネシウム二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極は、酸化皮膜の形成を抑制しつつ、マグネシウムの含有量を多くできる。また、バインダーや導電助剤を必要とせずに電極として使用できる形態に加工できる。本発明のマグネシウム二次電池は、酸化皮膜の形成を抑制できるため、過電圧を抑制し、高電位かつ高容量な二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1におけるビスマス含有量が2質量%のマグネシウム-ビスマス合金のサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【図2】実施例1におけるビスマス含有量が30質量%のマグネシウム-ビスマス合金のサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【図3】実施例1におけるビスマス含有量が50質量%のマグネシウム-ビスマス合金のサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【図4】比較例1におけるビスマス含有量が0質量%のマグネシウムのサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【図5】実施例2で作製したマグネシウム二次電池の構成を示す図である。
【図6】実施例2で作製したマグネシウム二次電池の充放電測定の結果を示す図である。
【図7】比較例2で作製したマグネシウム二次電池の充放電測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電極は、マグネシウムとビスマスの合金層を備える電極であって、前記合金が、マグネシウムとビスマスの固溶体を含む、又はマグネシウムとビスマスの固溶体とマグネシウムとビスマスの金属間化合物を含むことを特徴とする。また、本発明においてマグネシウムとビスマスの固溶体とマグネシウムとビスマスの金属間化合物を含むとは、マグネシウムとビスマスの固溶体と金属間化合物とが共晶の組織形態で合金中に存在する場合も含む。マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)の二元系合金は、その状態図から合金におけるBi含有量が固溶限である8.87質量%(1.12at%)までは金属Mg及びMg-Bi固溶体を形成し、8.87質量%(1.12at%)から共晶点である58.9質量%(14.3at%)まではMg-Bi固溶体とMg-MgBi共晶を形成し、58.9質量%(14.3at%)から82.2質量%(35at%)まではMg-MgBi共晶とMgBi金属間化合物を形成し、82.2質量%(35at%)以上ではMgBi金属間化合物とBi-Mg固溶体及び金属Biを形成することが知られており、製造条件によって組織の形態が異なる。本発明におけるマグネシウムとビスマスの合金(以下、「本発明におけるマグネシウム合金」ともいう。)は、マグネシウムとビスマスの固溶体、又はマグネシウムとビスマスの固溶体とマグネシウムとビスマスの金属間化合物を含む。すなわち、本発明におけるマグネシウム合金の組成は、金属Mg及びMg-Bi固溶体が共存する形態、Mg-Bi固溶体とMg-MgBi共晶が共存する形態、及びMg-MgBi共晶とMgBi金属間化合物が共存する形態を含む。本発明におけるマグネシウム合金のビスマスの含有量は、電池反応が金属Mg及びMg-Bi固溶体の溶解-析出を伴うため、その体積当たりの電気容量を大きくする観点から、合金中に固溶体が形成されなくなるマグネシウム合金全体に対して58.9質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明におけるマグネシウム合金のビスマスの含有量は、マグネシウム合金の加工成形性の観点から、マグネシウム合金全体に対して1~50質量%であることが好ましい。また、本発明におけるマグネシウム合金のビスマスの含有量は、酸化皮膜形成の抑制効果の観点から、マグネシウム合金全体に対して1~58.9質量%であることが好ましく、1~50質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。本発明におけるマグネシウムとビスマスの固溶体(Mg1-xBi)では、xは固溶体として実質的に存在できる下限である0.001以上、固溶限である0.0112以下の範囲が好ましい。本発明の電極における合金層は、マグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)を含む、又はマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との固溶体(Mg1-xBi;ただし、xは0.001~0.0112)とマグネシウム(Mg)とビスマス(Bi)との金属間化合物(MgBi)を含む。

【0012】
本発明におけるマグネシウム合金は、充分な強度を有し、板状、柱状等の形態に容易に加工できるため、加工した形態のマグネシウム合金そのものを電極として使用する、あるいは集電体に取り付けて電極として使用することができる。そのため、粒状の電極材料を使用する場合のように、バインダーや導電助剤を必要とすることなく電極を作製できるので、電極におけるマグネシウムの含有量を減少させずに電極を作製できる。また、マグネシウム合金を鱗片形状、偏平形状、紡錘形状、球状等の粒状に加工し、バインダーと混合して集電体上に固定する等の方法により電極を作製してもよい。本発明における「マグネシウム合金層」とは、本発明におけるマグネシウム合金を含む層の意味であり、本発明におけるマグネシウム合金が、板状、柱状等の形態に加工されマグネシウム合金そのものがマグネシウム合金層を形成している場合、及びマグネシウム合金の粒子がバインダー等で固定されマグネシウム合金層を形成している場合を含む。本発明における「マグネシウム合金層を備える電極」とは、電極が上記マグネシウム合金層を有していればよく、マグネシウム合金層のみで電極を構成している場合、マグネシウム合金層と集電体等の他の構成部品と共に電極が構成されている場合を含む。

【0013】
本発明の電池は、本発明の電極を負極として備え、さらに電解質層及び正極を備えることを特徴とする。本発明の電池における正極、電解質、及び必要に応じて他の構成要素は、従来のマグネシウム二次電池に使用されているものを使用することができる。例えば、正極としては、正極活物質がバインダーにより集電体上に固定されたものを挙げることができ、必要に応じて導電助剤を含んでもよい。正極活物質としては、例えば、硫黄又は硫黄化合物、V、硫黄ドープV等のV系、MnO系、MnO、MgMnO等のMnO系などの酸化物系の正極、Mo系等の硫化物系の正極、Mg1.03Mn0.97SiO、MgCoSiO、MgFeSiO、MgMnSiO4、MoSe11、FePOなどを挙げることができる。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等の樹脂材料などを挙げることができる。また、導電助剤としては、例えば、無定型炭素、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素質物質などを挙げることができる。

【0014】
電解質としては、例えば、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、グリニャール試薬(RMgX(Rは有機基、Xはハロゲンである。))、臭化マグネシウム(MgBr2)等のハロゲン化マグネシウム、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Mg(TFSI))、Mg(SOCF、ホウフッ化マグネシウム(Mg(BF)、トリフルオロメチルスルホン酸マグネシウム(Mg(CFSO)、ヘキサフルオロ燐酸マグネシウム(Mg(PF)などを挙げることができる。電解質溶媒としては、公知の非水電解質溶媒を用いることができ、例えば、アセトニトリル(AN)、ジエトキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチル-1,3-ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等を挙げることができる。
【実施例】
【0015】
[実施例1]
(電極の前処理)
ビスマス(Bi)の含有量が2質量%、30質量%、50質量%である本発明におけるマグネシウム-ビスマス合金(Mg-Bi合金)を、直径7mm、厚さ2mmの円柱状に切り出し、それぞれの金属片の両面をエメリーペーパー♯220、600、2000の順番で研磨して、試験片とした。
【実施例】
【0016】
(サイクリックボルタンメトリー)
各試験片を試験極とし、参照極をAg線(株式会社ニコラ製、純度99.99%)、対極をマグネシウムリボン(株式会社ニコラ製、純度99.99%)として、三極式ビーカーセルを用いて、サイクリックボルタンメトリーを行った。電解液は、0.5M マグネシウムビストリフルオロメタンスルホンイミド[Mg(TFSA)]/トリグライムを用いた。走査範囲は、-3.5~1.0Vとし、走査速度は10mV/sに統一して、5サイクルを行った。ビスマスの含有量がそれぞれ2質量%、30質量%、50質量%であるMg-Bi合金の結果を図1~図3に示す。図中、点線1は1サイクル目の結果であり、破線5は5サイクル目の結果である。
【実施例】
【0017】
[比較例1]
ビスマスを含有しないマグネシウム金属を、直径7mm、厚さ2mmの円柱状に切り出し、実施例と同様に金属片を作成、処理して試験片を作製した。作製した試験片を用いて実施例と同様にサイクリックボルタンメトリーを行った。結果を図4に示す。
【実施例】
【0018】
図4に示されるように、比較例のマグネシウム試験片を用いた場合、マグネシウムの溶解-析出に起因する酸化-還元応答の立ち上がりの電位差は2V以上ある。これはマグネシウム電極表面に形成される酸化皮膜による影響である。一方、実施例のMg-Bi合金を試験片に用いた場合、図1~3に示されるように、酸化-還元応答の立ち上がりの電位差は小さく、特にBi含有量が30質量%以上になると電位差なく酸化-還元応答が観察されている。このように、実施例のMg-Bi合金では、酸化皮膜の形成が抑制されたことがわかる。これにより、より高い電位からの充放電が可能となり、高容量なマグネシウム二次電池の提供が可能となる。また、実施例のMg-Bi合金のマグネシウム含有量は、98~50質量%であり、例えば、MgBi金属間化合物におけるマグネシウム含有量の16質量%に比べて、極めて多い。
【実施例】
【0019】
[実施例2]
(正極活物質の合成)
硫黄(S)と式(I)で表されるクラウンエーテル化合物とのモル比が1:0.5となるように、硫黄(S)(0.5g、1.95mmol)を反応容器に入れ、155℃で10分間攪拌した。硫黄が溶解した後に、前記クラウンエーテル化合物(0.820g、0.98mmol)を加え、160~165℃に加熱し攪拌した。当初、液状の反応混合物は、20分程度で固まるが、そのまま反応を続け、60分間、約160℃で加熱反応を行う。さらに、170℃に加熱し撹拌することで、黄褐色ゴム状の含硫黄ポリマーを定量的に得た。
【化1】
JP2018168995A1_000002t.gif
【実施例】
【0020】
(正極の作製)
合成した含硫黄ポリマーとケッチェンブラックとポリテトラフッ化エチレンを重量比3:6:1の割合で乾式法により混合し、その混合物を集電体(SUS)に圧着させることにより正極を作製した。
【実施例】
【0021】
(マグネシウム二次電池の作成及び評価)
上記で作製した正極、電解質としてMg(TFSA)/トリエチレングリコールジメチルエーテル(Triglyme)を含侵させたセパレータ、及び負極に本発明におけるマグネシウム-ビスマス合金(ビスマス50wt%含有)板を用いて、図5に示されるように配置してマグネシウム二次電池を作製し、室温にて充放電測定を行った。充放電測定の結果を図6に示す。
【実施例】
【0022】
[比較例2]
上記で作製した正極、電解質としてMg(TFSA)/トリエチレングリコールジメチルエーテル(Triglyme)を含侵させたセパレータ、及び負極にマグネシウム板を用いて、図5に示されるように配置してマグネシウム二次電池を作製し、室温にて充放電測定を行った。充放電測定の結果を図7に示す。
【実施例】
【0023】
本発明におけるMg-Bi合金を負極として用いて、マグネシウム-硫黄電池の充放電測定を行った結果、通常の純マグネシウム金属の負極と比較して、高電位の放電挙動が得られたことより、負極でのマグネシウムの酸化被膜の抑制効果が確認された。それに伴い、放電容量もほぼ硫黄の理論容量に達した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の電極は、電極表面への酸化皮膜の形成が抑制され、マグネシウムの含有量が多いので、マグネシウム二次電池に好適に用いることができ、過電圧を抑制し、高電位かつ高容量な二次電池を得ることができる。また、本発明の電極は、マグネシウム合金を電極材料として使用しているため、電極として充分な強度と耐久性を有する。本発明のマグネシウム二次電池は、電極上への酸化皮膜の形成が抑制されるので、マグネシウムが有する電気特性を充分に発揮することができ、高電位かつ高容量な二次電池を得ることができる。そのため、本発明のマグネシウム二次電池は、車載用途や大型用途に対して好適である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6