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明細書 :ホスフィンオキシド化合物、希土類錯体及び発光材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年12月19日(2019.12.19)
発明の名称または考案の名称 ホスフィンオキシド化合物、希土類錯体及び発光材料
国際特許分類 C07F   9/53        (2006.01)
C07F   5/00        (2006.01)
C07C  49/92        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C07F 9/53 CSP
C07F 5/00 D
C07C 49/92
C09K 11/06
C09K 11/06 660
国際予備審査の請求
全頁数 20
出願番号 特願2019-501371 (P2019-501371)
国際出願番号 PCT/JP2018/006179
国際公開番号 WO2018/155484
国際出願日 平成30年2月21日(2018.2.21)
国際公開日 平成30年8月30日(2018.8.30)
優先権出願番号 2017035041
2017167844
優先日 平成29年2月27日(2017.2.27)
平成29年8月31日(2017.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】フェレイラ ダ ローサ ペドロ パウロ
【氏名】中西 貴之
【氏名】北川 裕一
【氏名】伏見 公志
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H048
4H050
Fターム 4H006AA03
4H006AB82
4H006AB92
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB82
4H050AB92
要約 下記式(I):
【化1】
JP2018155484A1_000019t.gif
で表され、nが3以上の整数を示し、Arがn価の芳香族基を示し、Lが2価のリンカー基を示し、Ar及びArがそれぞれ独立に1価の芳香族基を示す、ホスフィンオキシド化合物、及び、これを含む希土類錯体が開示される。
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I):
【化1】
JP2018155484A1_000017t.gif
で表され、nが3以上の整数を示し、Arがn価の芳香族基を示し、Lが2価のリンカー基を示し、Ar及びArがそれぞれ独立に1価の芳香族基を示す、ホスフィンオキシド化合物。
【請求項2】
Lが、-C≡C-、-CH=CH-、又は2価の芳香族基である、請求項1に記載のホスフィンオキシド化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のホスフィンオキシド化合物と、
前記ホスフィンオキシド化合物が配位している希土類イオンと、
を含む、希土類錯体。
【請求項4】
前記希土類イオンに配位し、下記式(II):
【化2】
JP2018155484A1_000018t.gif
で表され、R、R及びRがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す、ジケトン配位子を更に含む、請求項3に記載の希土類錯体。
【請求項5】
及びRがtert-ブチル基である、請求項4に記載の希土類錯体。
【請求項6】
前記希土類イオンがテルビウム(III)イオンである、請求項3~5のいずれか一項に記載の希土類錯体。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の希土類錯体を含有する、発光材料。
【請求項8】
請求項7に記載の発光材料を成膜して発光層を形成する工程と、前記発光層を加熱処理して希土類錯体を配向させる工程と、を含む、発光層を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスフィンオキシド化合物、希土類錯体及び発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑色発光を示すテルビウム錯体等の希土類錯体が種々提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-249075号公報
【特許文献2】特開2010-077058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、高輝度で発光し、プラスチック等の透明材料と混合することにより透明性固体を形成することができる希土類錯体を提供することにある。透明性固体を形成できる希土類錯体を用いることにより、ポリマー等への錯体の分散等を必要とすることなく、透明な発光材料を容易に形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、下記式(I):
【化1】
JP2018155484A1_000003t.gif
で表され、nが3以上の整数を示し、Arがn価の芳香族基を示し、Lが2価のリンカー基を示し、Ar及びArがそれぞれ独立に1価の芳香族基を示す、ホスフィンオキシド化合物を提供する。
【0006】
このホスフィンオキシド化合物を希土類錯体の配位子として用いることにより、高輝度で発光し、プラスチック等の透明材料と混合することにより透明性固体を形成することができる希土類錯体を得ることができる。
【0007】
本発明の別の側面は、前記ホスフィンオキシド化合物と、前記ホスフィンオキシド化合物が配位している希土類イオンとを含む、希土類錯体を提供する。この希土類錯体は、高輝度で発光し、透明性固体を形成することができる。例えば、希土類イオンがテルビウム(III)イオンである場合、高輝度で緑色発光する希土類錯体が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、高輝度で発光し、プラスチック等の透明材料と混合することにより透明性固体を形成することができる希土類錯体が提供される。更に、本発明の一側面に係る希土類錯体は、溶媒及びポリマー材料に対する高い溶解性を有することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】テルビウム錯体の励起スペクトルである。
【図2】テルビウム錯体の発光スペクトルである。
【図3】テルビウム錯体の発光寿命の衰退プロファイルである。
【図4】テルビウム錯体の発光寿命と温度との関係を示すグラフである。
【図5】テルビウム錯体の発光寿命と温度との関係から得たアレニウスプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0011】
一実施形態に係る希土類錯体は、下記式(I):

【0012】
【化2】
JP2018155484A1_000004t.gif
で表される1個のホスフィンオキシド化合物と、希土類イオンとを含む。

【0013】
希土類錯体を構成する希土類イオンの割合は、典型的には、式(I)のホスフィンオキシド配位子1当量(1モル)に対してn当量(nモル)であるが、これに限られない。例えば、希土類イオンの割合が、式(I)のホスフィンオキシド配位子1当量に対してn×0.5~n×1.2であってもよい。希土類イオンの割合が小さいと、後述の高分子量錯体が形成され易い傾向がある。

【0014】
希土類イオンは、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれる1種又は2種以上の希土類元素のイオンであることができる。希土類イオンは、例えば、2価又は3価の陽イオンである。希土類イオンは、テルビウム(III)イオン(Tb3+)、ユーロピウム(III)イオン(Eu3+)、ガドリニウム(Gd3+)、ツリウム(III)イオン(Tm3+)、エルビウム(III)イオン(Er3+)、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、希土類錯体は、通常、希土類イオンがテルビウム(III)イオンであるときに緑色発光を示し、希土類イオンがユーロピウム(III)イオンであるときに赤色発光を示す。

【0015】
式(I)において、nは3以上の整数を示し、Arはn価の芳香族基を示し、Lは2価のリンカー基を示し、Ar及びArはそれぞれ独立に1価の芳香族基を示す。nは3又は4であってもよく、3であってもよい。

【0016】
式(I)中のArとしてのn価の芳香族基は、芳香族炭化水素基又は複素芳香族基であることができる。芳香族基は、縮合多環式基であってもよいし、2個以上の芳香族環が連結している基であってもよい。n価の芳香族基は、芳香族化合物からn個の水素原子を除いた基であることができる。

【0017】
芳香族炭化水素基の炭素原子数は、例えば6~14である。芳香族炭化水素基の具体例としては、置換若しくは無置換のベンゼン、置換若しくは無置換のナフタレン、置換若しくは無置換のアントラセン、又は、置換若しくは無置換のフェナントレンからn個の水素原子を除いた基が挙げられる。

【0018】
複素芳香族基を誘導する複素芳香族化合物の具体例としては、アゾール、オキソール、チオフェン、ピリジン、ピリリウムイオン、チオピリリウムイオン、アゼピン、オキセピン、チエピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、及びチアジンのような単環の複素芳香族化合物、並びに、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、クロモン、1,4-ベンゾジアゼピン、ベンゾフラン、アクリジン、フェノキサジン、及びフェノチアジンのような多環の複素芳香族化合物が挙げられる。

【0019】
式(I)中のL(リンカー基)は、例えば、-C≡C-、-CH=CH-、又は2価の芳香族基であってもよい。Lとしての芳香族基を誘導する芳香族化合物の具体例としては、Arとしての芳香族基を誘導する芳香族化合物の具体例と同様のものが挙げられる。

【0020】
Arは、例えば、下記式(11)又は(12)で表される基であってもよい。これら式中、*は結合手を表し、この位置にLが結合する。

【0021】
【化3】
JP2018155484A1_000005t.gif

【0022】
式(I)中のAr又はArとしての1価の芳香族基を誘導する芳香族化合物の具体例としては、Arとしてのn価の芳香族基を誘導する芳香族化合物の具体例と同様のものが挙げられる。特に、Ar及びArが置換又は無置換のフェニル基であってもよい。

【0023】
一実施形態に係る希土類錯体は、下記式(II):
【化4】
JP2018155484A1_000006t.gif
で表されるジケトン配位子を更に含んでいてもよい。

【0024】
この場合、希土類錯体においては、例えば下記式(III):
【化5】
JP2018155484A1_000007t.gif
で表されるように、1個のホスフィンオキシドがn個の希土類イオン(Ln)に配位し、n個の希土類イオンのそれぞれに、3個のジケトン配位子が配位していてもよい。

【0025】
さらに、1個の希土類イオンに2個以上の式(I)のホスフィンオキシド配位子が配位することによって、例えば下記式(IV)で示されるように、2個以上の式(I)のホスフィンオキシド配位子を含み、それらが希土類イオンを介して連結している高分子量錯体が形成され得る。式(IV)中のm(ジケトン配位子の配位数)は、典型的には2であるが、これに限定されない。

【0026】
【化6】
JP2018155484A1_000008t.gif

【0027】
式(II)において、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。R、R又はRとしてのアルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~15、1~5、又は1~3であってもよい。ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であってもよい。R、R又はRとしてのアリール基及びヘテロアリール基としては、例えば、ナフチル基、チエニル基が挙げられる。

【0028】
式(II)中のR及びRは特に、tert-ブチル基であってもよい。R及びRがtert-ブチル基であるジケトン配位子とテルビウム(III)との組み合わせにより、錯体励起時の逆エネルギー移動が抑制されて、特異的により高い輝度での発光が得られる傾向がある。

【0029】
式(II)のジケトン配位子を形成するジケトン化合物の具体例としては、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(tmh)、アセチルアセトン(acac)、1,1,1-トリフルオロアセトン(TFA)、及び1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)が挙げられる。これらの中でも特に、発光輝度等の観点から、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(tmh)を選択してもよい。

【0030】
式(I)のホスフィンオキシド化合物は、例えばハロゲン化芳香族化合物を出発原料として、当業者に知られる通常の反応を組み合わせて合成することができる。

【0031】
本実施形態の希土類錯体は、例えば、原料としての希土類化合物と、式(II)のジケトン配位子を誘導するジケトン化合物との反応によって、ジケトン配位子及び希土類イオンを有する中間体錯体を生成させる工程と、中間体錯体と式(I)のホスフィンオキシド化合物との反応によって目的とする希土類錯体を生成させる工程とを含む方法によって、合成することができる。これらの反応は、必要に応じて触媒の存在下で、適切な溶媒中にて攪拌する方法によって行うことができる。溶媒としては、例えば、メタノール、ジクロロメタン/メタノールの混合溶媒を用いることができる。

【0032】
一実施形態に係る発光材料は、以上説明した希土類錯体を含有する。例えば、係る発光材料を用いて発光層を形成することで、発光層を有するLED素子、有機EL素子等の発光素子への応用が可能である。発光素子は、ディスプレイ又は照明に用いることができる。発光材料を発光性インキ組成物として用いることもできる。発光材料における希土類錯体の含有量は、特に限定されないが、例えば5~100質量%であってもよい。テルビウム錯体は、透明性固体を形成できることから、単独でも透明な発光層を形成することができる。

【0033】
発光材料は、本実施形態の希土類錯体と、プラスチック材料とを含有していてもよい。本実施形態の希土類錯体は、優れた溶解性を有していることから、各種のプラスチック材料に配合される蛍光体としても容易に用いることができる。

【0034】
希土類錯体を含有する発光層は、例えば、希土類錯体と、必要によって加えられる溶媒又はプラスチック材料等の他の材料とを含む発光材料を成膜し、発光層を形成する工程を含む方法によって、形成することができる。発光材料が溶媒を含む場合、成膜後、発光層から溶媒を除去してもよい。形成された発光層を加熱処理してもよい。加熱処理によって希土類錯体が配向し得る。また、加熱処理によってより強い輝度での発光も発現され得る。加熱処理の温度は、例えば80~150℃であってもよい。加熱処理の時間は、例えば1秒~60分であってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
1.合成例
1-1.配位子
<一座配位子、二座配位子>
エチニルベンゼン、又は1,3-ジエチルベンゼンを原料として用いて、通常の方法に従って、一座配位子のジフェニルホスホリルエチニルベンゼン(dpeeb)、及び二座配位子の1,3-ビス[(ジフェニルホスホリル)エチニル]ベンゼン(bdppeb)を合成した。
【実施例】
【0037】
【化7】
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【実施例】
【0038】
<三座配位子>
1,3,5-トリエチニルベンゼンの合成
【化8】
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【実施例】
【0039】
フレームドライした反応容器に、アルゴン雰囲気下、トリエチレンアミンの乾燥テトラヒドロフラン溶液を入れた。溶液を65℃に加熱しながら、1,3,5-トリブロモベンゼン(3.21g,10mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.36g,0.5mmol)、トリフェニルホスフィン(0.28g,1.0mmol)、及びヨウ化銅(I)(0.10g,0.525mmol)を加え、溶液を30分攪拌した。温度を50℃まで下げてから、トリメチルシリルアセチレン(7.04mL,50mmol)をゆっくり加え、溶液を16時間攪拌した。その後、反応容器に60mLの塩水を入れ、溶液からジクロロメタンで3回抽出した。集めたジクロロメタン層を無水MgSOで脱水してから、溶媒を除去して、油状の粗生成物を得た。得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:ジエチルエーテル=5:1)で精製した。生成物を含む溶液から溶媒を除去して、濃い黄色の固体を得た。これをジクロロメタン(30mL)に溶かした。そこに、メタノール(30mL)/1M KOH(50mL,50mmol)の混合液をゆっくり加え、溶液を室温で12時間攪拌した。反応の進行はTLCで確認した。反応終了後、混合液に90mLの塩水を入れ、溶液からジクロロメタンで3回抽出した。集めたジクロロメタン層を無水MgSOで脱水してから、溶媒を除去して、1,3,5-トリエチニルベンゼン(濃い茶色の固体)を得た。
【実施例】
【0040】
1,3,5-トリス[(ジフェニルホスホリル)エチニル]ベンゼン(tdppeb)の合成
【化9】
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【実施例】
【0041】
フレームドライした反応容器に、アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン及び1,3,5-トリエチニルベンゼン(teb,1.28g,8.5mmol)を入れた。そこに、-80℃に冷却しながら、n-ブチルリチウム(21.3mL,1.6M ヘキサン,34mmol)をゆっくりと加えた。反応液を、3時間攪拌した後、再び-80℃に冷却し、次いで反応液にクロロジフェニルホスフィン(6.3mL,34mmol)を加えた。反応液を、室温に戻してから15時間攪拌した。反応終了後、反応液に90mLの塩水を入れ、反応液からジクロロメタンで3回抽出した。集めたジクロロメタン層から溶媒を除去した。油状物の残渣をジクロロメタン(40mL)に溶かした。溶液を0℃まで冷却してから、濃度30%のH水溶液を20mL加えた。この反応溶液を3時間攪拌した。反応終了後、反応液に90mLの塩水を入れ、反応液からジクロロメタンで3回抽出した。集めたジクロロメタン層を無水MgSOで脱水し、溶媒を除去することで、不透明な茶色の固体を得た。この固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル:メタノール=1:20)で精製した。生成物を酢酸エチルで洗浄して、白色粉体を得た。これを更にメタノールで再結晶して、tdppeb(透明結晶)を得た。
1HNMR(400 MHz, CDCl3,25°C): δ 7.82-7.89 (m, 15H, -CH), δ 7.56-7.61 (m, 6H, -CH), δ 7.49-7.54 (m,12H, -CH) ppm.
ESI-MS(m/z): calc. for C48H34P3O3[M+H]+:751.17, found 751.17.
Elemental analysis calcd(%) for C48H33P3O3:C,76.80; H, 4.43, Found C, 74.69; H, 4.66.
【実施例】
【0042】
1-2.テルビウム錯体
準備したホスフィンオキシド配位子を用いて、以下の単核錯体及び二核錯体を合成した。ただし、特に二核錯体については、下記化学式で表される構造に限られず、1個のテルビウム(III)イオンに2個以上のホスフィンオキシド配位子が配位することにより、2個以上のホスフィンオキシド配位子が連結した高分子量錯体が形成されている可能性がある。
【実施例】
【0043】
単核錯体[Tb(tmh)(dppeb)]
【化10】
JP2018155484A1_000012t.gif
【実施例】
【0044】
0.29g(0.4mmol)の[トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタン-3,4-ジオナート)]テルビウム(Tb(tmh)(HO))、及び、0.12g(0.4mmol)のdppebを、メタノール60mLに溶解した。得られた溶液を、12時間、加熱還流した。次いで、溶液をエバポレーターにより濃縮した後、メタノールを加え、ろ過した。濾液を室温に放置したところ、[Tb(tmh)(dppeb)]が透明な結晶として析出した。
【実施例】
【0045】
二核錯体([Tb(tmh)(bdppeb)])
【化11】
JP2018155484A1_000013t.gif
【実施例】
【0046】
0.58g(0.8mmol)の[トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタン-3,4-ジオナート)]テルビウム(Tb(tmh)(HO))、及び、0.21g(0.4mmol)のbdppebを、メタノール60mLに溶解した。得られた溶液を、12時間、加熱還流した。次いで、溶液をエバポレーターにより濃縮した後、メタノールを加え、ろ過した。濾液を室温に放置したところ、[Tb(tmh)(dppeb)]が薄い赤色の透明な球形結晶として析出した。
【実施例】
【0047】
2.励起スペクトル、発光スペクトル
蛍光光度計を用いて、合成した単核錯体及び二核錯体の粉体の励起スペクトル及び発光スペクトルを測定した。図1は励起スペクトルで、図2は発光スペクトルである。励起スペクトルは350nmで規格化されており、発光スペクトルは545nmで規格化されている。3種の錯体はいずれも光増感性の共通の配位子としてtmhを有するものの、異なった励起スペクトルを示している。このことから、架橋配位子がテルビウム(III)イオンの周りの対称性に影響を与えていることが示唆される。発光スペクトルは、テルビウム錯体に特徴的な緑色発光に対応するスペクトルであった。
【実施例】
【0048】
3.発光寿命、輝度
図3は、25℃のクロロホルム中での単核錯体及び二核錯体の発光寿命(励起光:355nm)の衰退プロファイルを示す。表1は、衰退プロファイルから求められた発光寿命、及び、25℃のクロロホルム中で測定された発光効率(励起光:360nm)を示す。表1に、下記式で表される、トリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)を配位子として有する比較用の単核錯体としてのTb(tmh)(TPPO)の発光寿命及び発光効率も併せて示す。
【化12】
JP2018155484A1_000014t.gif
【実施例】
【0049】
【表1】
JP2018155484A1_000015t.gif
【実施例】
【0050】
4.発光寿命の温度依存性
単核錯体及び二核錯体の発光寿命を、100~400Kの範囲で温度を変化させながら測定した。図4は、単核錯体及び二核錯体の発光寿命と温度との関係を示すグラフである。図4に、比較用の単核錯体としてのTb(tmh)(TPPO)の発光寿命も併せて示す。
【実施例】
【0051】
Tb(tmh)(TPPO)は、100~400Kの範囲でほぼ一定の発光寿命を示したことから、励起状態のTb(III)からtmh及びTPPOの三重項励起状態(T)への逆エネルギー移動がほぼ生じていないことが示唆された。一方、dpeebを有する単核錯体であるTb(tmh)(dppeb)及びbdppebを有する二核錯体であるTb(tmh)(bdppeb)は、320K以上の温度で発光寿命が短くなる傾向を示した。すなわち、Tb(tmh)(dppeb)及びTb(tmh)(bdppeb)は、感温発光性を示した。図5は、図4の測定結果から得られた単核錯体及び二核錯体のアレニウスプロットを示すグラフである。表2は、図5のプロットから得られた頻度因子Aと、逆エネルギー移動の活性化エネルギーEを示す。これらの結果から、エチニル基のようなリンカー基の導入により、逆エネルギー移動が促進されることが示唆された。効率的な逆エネルギー移動が生じることから、これら錯体は例えば温度センサのプローブとして適しているといえる。
【実施例】
【0052】
【表2】
JP2018155484A1_000016t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4