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明細書 :メタンガス回収方法および二酸化炭素低排出発電方法、ならびに、メタンガス回収システムおよび二酸化炭素低排出発電システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年1月9日(2020.1.9)
発明の名称または考案の名称 メタンガス回収方法および二酸化炭素低排出発電方法、ならびに、メタンガス回収システムおよび二酸化炭素低排出発電システム
国際特許分類 E21B  43/00        (2006.01)
E21C  50/00        (2006.01)
B01D  53/62        (2006.01)
B01D  53/78        (2006.01)
FI E21B 43/00 ZABA
E21C 50/00
B01D 53/62
B01D 53/78
国際予備審査の請求
全頁数 26
出願番号 特願2019-503009 (P2019-503009)
国際出願番号 PCT/JP2018/007201
国際公開番号 WO2018/159594
国際出願日 平成30年2月27日(2018.2.27)
国際公開日 平成30年9月7日(2018.9.7)
優先権出願番号 2017037501
優先日 平成29年2月28日(2017.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】圓山 重直
【氏名】岡島 淳之介
【氏名】小宮 敦樹
【氏名】陳 林
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001461、【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2D065
4D002
Fターム 2D065GA01
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA31
4D002DA36
4D002EA08
4D002HA08
要約 メタンガス回収方法は、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するものであり、二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水をメタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入してメタンハイドレート層を予熱し、メタンハイドレート層に連通し、注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井で、予熱されたメタンハイドレート層から減圧法によってメタンガスを回収し、設定期間が経過した場合に、注入井を生産井として生産井からメタンガスを回収し、新たな注入井を掘削して、注入井に加熱海水を注入してメタンハイドレートを予熱する。
特許請求の範囲 【請求項1】
メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収方法であって、
二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水を前記メタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入して前記メタンハイドレート層を予熱するステップと、
前記メタンハイドレート層に連通し、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井から、減圧法によってメタンガスを回収するステップと
を有し、
設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として該生産井で予熱された前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、
新たな注入井を掘削して、該注入井に前記加熱海水を注入して前記メタンハイドレート層を予熱する
ことを特徴とするメタンガス回収方法。
【請求項2】
前記加熱海水を前記注入井に注入するステップは、前記メタンハイドレート層にフラクチャリングを発生させる圧力が加えられた前記加熱海水を注入する
ことを特徴とする請求項1に記載のメタンガス回収方法。
【請求項3】
前記注入井と前記生産井との間の設定距離は、10m以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のメタンガス回収方法。
【請求項4】
前記注入井および前記生産井は、垂直井である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のメタンガス回収方法。
【請求項5】
前記設定期間は、2ヶ月から4年の間の周期的な期間である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のメタンガス回収方法。
【請求項6】
メタンガスを燃料として発電を行うステップと、
前記発電の際に発生する排ガスから二酸化炭素を回収するステップと、
海水を取得し、回収した前記二酸化炭素を前記海水に溶解させるステップと、
前記発電の際に発生する排熱を用いて、前記二酸化炭素が溶解した前記海水を加熱して加熱海水を生成するステップと、
前記加熱海水をメタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入して前記メタンハイドレート層を予熱するステップと、
前記メタンハイドレート層に連通し、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井から、減圧法によってメタンガスを回収するステップと、
回収した前記メタンガスを発電の燃料として供給するステップと
を有し、
設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として該生産井で予熱された前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、
新たな注入井を掘削して、該注入井に前記加熱海水を注入して前記メタンハイドレート層を予熱する
ことを特徴とする二酸化炭素低排出発電方法。
【請求項7】
前記メタンハイドレート層にフラクチャリングを発生させる圧力を前記加熱海水に加えるステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の二酸化炭素低排出発電方法。
【請求項8】
前記注入井と前記生産井との間の設定距離は、10m以上である
ことを特徴とする請求項6または7に記載の二酸化炭素低排出発電方法。
【請求項9】
前記注入井および前記生産井は、垂直井である
ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の二酸化炭素低排出発電方法。
【請求項10】
前記設定期間は、2ヶ月から4年の間の周期的な期間である
ことを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載の二酸化炭素低排出発電方法。
【請求項11】
メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収システムであって、
前記メタンハイドレート層に連通し、二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水を1または複数の注入井のそれぞれに注入する1または複数の注入管と、
前記メタンハイドレート層に連通するとともに、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井のそれぞれから、減圧法によってメタンガスを回収する1または複数の回収管と
を有し、
設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として機能させて該生産井で前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たに掘削された注入井に新たな注入管を配置して前記加熱海水を注入する
ことを特徴とするメタンガス回収システム。
【請求項12】
前記注入管に、前記メタンハイドレート層にフラクチャリングを発生させる圧力が加えられた前記加熱海水が注入される
ことを特徴とする請求項11に記載のメタンガス回収システム。
【請求項13】
前記注入井と前記生産井との間の設定距離は、10m以上である
ことを特徴とする請求項11または12に記載のメタンガス回収システム。
【請求項14】
前記注入井および前記生産井は、垂直井である
ことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載のメタンガス回収システム。
【請求項15】
発電を行う発電システムと、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収システムとを備えた二酸化炭素低排出発電システムであって、
前記発電システムは、
メタンガスを燃料として発電を行う発電装置と、
前記発電の際に発生する排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と
を有し、
前記二酸化炭素回収装置は、
海水を取得し、回収した前記二酸化炭素を前記海水に溶解させ、
前記発電の際に発生する排熱を用いて、前記二酸化炭素が溶解した前記海水を加熱して加熱海水を生成し、
前記メタンガス回収システムは、
前記メタンハイドレート層に連通し、前記加熱海水を注入する1または複数の注入井と、
前記メタンハイドレート層に連通するとともに、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられ、減圧法によってメタンガスを回収する1または複数の生産井と
を有し、
回収した前記メタンガスを発電の燃料として前記発電システムに供給し、
設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として機能させて該生産井で前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たに掘削された注入井に新たな注入管を配置して前記加熱海水を注入する
ことを特徴とする二酸化炭素低排出発電システム。
【請求項16】
前記発電システムは、
前記加熱海水を前記注入井に注入する際に、前記メタンハイドレート層にフラクチャリングを発生させる圧力を前記加熱海水に加える
ことを特徴とする請求項15に記載の二酸化炭素低排出発電システム。
【請求項17】
前記注入井と前記生産井との間の設定距離は、10m以上である
ことを特徴とする請求項15または16に記載の二酸化炭素低排出発電システム。
【請求項18】
前記注入井および前記生産井は、垂直井である
ことを特徴とする請求項15~17のいずれか一項に記載の二酸化炭素低排出発電システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋メタンハイドレートを利用したメタンガス回収方法および二酸化炭素低排出発電方法、ならびに、メタンガス回収システムおよび二酸化炭素低排出発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の化石燃料に代わるエネルギー資源として、メタンハイドレート(Methane Hydrate:MH)が注目されている。特に、日本近海の海底には、メタンハイドレート層(以下、「MH層」と適宜称する)が存在しており、このMH層からメタンガスを回収して純国産エネルギー資源として活用することが期待されている。
【0003】
MH層からメタンガスを回収する際には、例えば、メタンガスを回収するための生産井を海底に掘削するが、MH層からのメタンガスは、油田またはガス田等と異なり自噴しない。そのため、最近では、MH層からメタンガスを回収するための様々な手法が提案されている。
【0004】
メタンハイドレートは、一般的に、低温かつ高圧の環境下で存在しており、温度を上げる、または圧力を下げることにより、メタンガスが解離するものである。そこで、メタンガスを回収するための手法として、例えば、MH層を加熱することによってメタンハイドレートからメタンガスを解離させる加熱法と、MH層を減圧することによってメタンガスを解離させる減圧法とに大別される2つの手法が提案されている。
【0005】
加熱法によるメタンガスの回収方法は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の方法では、MH層に対して平行井となる注入井および生産井を掘削し、注入井に圧入された熱水の熱によってメタンハイドレートから解離したメタンガスを生産井から回収する、加熱法の一種である熱水圧入法を用いてメタンガスを回収する。
【0006】
一方、減圧法によるメタンガス回収方法では、メタンガスの回収に係るエネルギー消費量の数十倍のエネルギーを生産できるため、加熱法を用いた場合よりもエネルギー産出比が高い。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2016-223064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、加熱法を用いてメタンガスを回収する場合には、回収したメタンガスによって生産されるエネルギーよりも、水を加熱するために消費するエネルギーが上回ってしまう虞があるため、エネルギー産出比が悪いという課題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の方法のように、熱水を注入井に圧入した場合には、MH層における注入井の周囲に亀裂が生じるフラクチャリングが発生し、熱によって解離したメタンガスの流路が形成される。しかし、注入井と生産井との距離が近い場合には、注入井と生産井とが接続されるチャネリングが発生してしまう。注入井と生産井との間にチャネリングが発生すると、注入井から圧入した熱水が生産井に直接流入してしまうため、メタンガスを効率的に回収できない虞があるという課題があった。さらに、平行井は、垂直井と比較して設置コストが高い。
【0010】
一方、減圧法を用いてメタンガスを回収する場合には、メタンハイドレートからメタンガスが解離する際に吸熱反応が起こるため、MH層の温度が低下して凍結してしまう。これにより、メタンガスの流路が閉塞されるなどしてしまうため、加熱法を用いた場合と比較して、効率的にメタンガスを回収することができないという課題があった。
【0011】
また、現在提案されている様々なメタンガス回収方法では、メタンガスの総生産量、ならびに単位時間あたりの生産量である生産速度が低く、メタンハイドレートから回収されたメタンガスをエネルギーとして経済的に成立させることが困難である。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、メタンガスの総生産量および生産速度を向上させるとともに、効率的にメタンガスを回収することができるメタンガス回収方法および二酸化炭素低排出発電方法、ならびに、メタンガス回収システムおよび二酸化炭素低排出発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るメタンガス回収方法は、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収方法であって、二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水を前記メタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入して前記メタンハイドレート層を予熱するステップと、前記メタンハイドレート層に連通し、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井から、減圧法によってメタンガスを回収するステップとを有し、設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として該生産井で予熱された前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たな注入井を掘削して、該注入井に前記加熱海水を注入して前記メタンハイドレート層を予熱するものである。
【0014】
本発明に係る二酸化炭素低排出発電方法は、メタンガスを燃料として発電を行うステップと、前記発電の際に発生する排ガスから二酸化炭素を回収するステップと、海水を取得し、回収した前記二酸化炭素を前記海水に溶解させるステップと、前記発電の際に発生する排熱を用いて、前記二酸化炭素が溶解した前記海水を加熱して加熱海水を生成するステップと、前記加熱海水をメタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入して前記メタンハイドレート層を予熱するステップと、前記メタンハイドレート層に連通し、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井から、減圧法によってメタンガスを回収するステップと、回収した前記メタンガスを発電の燃料として供給するステップとを有し、設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として該生産井で予熱された前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たな注入井を掘削して、該注入井に前記加熱海水を注入して前記メタンハイドレート層を予熱するものである。
【0015】
本発明に係るメタンガス回収システムは、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収システムであって、前記メタンハイドレート層に連通し、二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水を1または複数の注入井のそれぞれに注入する1または複数の注入管と、前記メタンハイドレート層に連通するとともに、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井のそれぞれから、減圧法によってメタンガスを回収する1または複数の回収管とを有し、設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として機能させて該生産井で前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たに掘削された注入井に新たな注入管を配置して前記加熱海水を注入するものである。
【0016】
本発明に係る二酸化炭素低排出発電システムは、発電を行う発電システムと、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収システムとを備えた二酸化炭素低排出発電システムであって、前記発電システムは、メタンガスを燃料として発電を行う発電装置と、前記発電の際に発生する排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置とを有し、前記二酸化炭素回収装置は、海水を取得し、回収した前記二酸化炭素を前記海水に溶解させ、前記発電の際に発生する排熱を用いて、前記二酸化炭素が溶解した前記海水を加熱して加熱海水を生成し、前記メタンガス回収システムは、前記メタンハイドレート層に連通し、前記加熱海水を注入する1または複数の注入井と、前記メタンハイドレート層に連通するとともに、前記注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられ、減圧法によってメタンガスを回収する1または複数の生産井とを有し、回収した前記メタンガスを発電の燃料として前記発電システムに供給し、設定期間が経過した場合に、前記注入井を生産井として機能させて該生産井で前記メタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たに掘削された注入井に新たな注入管を配置して前記加熱海水を注入するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、設定期間が経過する毎に注入井を生産井として機能させ、加熱海水が注入されて予熱されたメタンハイドレート層からメタンガスを回収することにより、メタンガスの総生産量および生産速度を向上させるとともに、効率的にメタンガスを回収することができる。
【0018】
また、回収したメタンガスをそのままエネルギーとして地上に輸送するよりも、そのメタンガスを電気エネルギーに変換して地上に輸送することで、エネルギーに付加価値をつけて供給することができる。さらに、電気エネルギーに変換する際に放出される熱エネルギーをメタンガスの回収に利用することで、より効率的かつ環境に対してやさしいシステムとして運用が可能である。加えて、メタンガスをエネルギーに変換する際に排出される二酸化炭素についても、熱エネルギーと一緒に海水に混ぜ、注入井から地下に注入、すなわち、二酸化炭素を海底隔離するので、エネルギー変換時の二酸化炭素の大気中の放出を防ぐことができるという顕著な効果をも奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システムの構成の一例を示す概略図である。
【図2】実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】MH層におけるメタンガスの回収効率について説明するためのグラフである。
【図4】図1の二酸化炭素低排出発電システムを用いてメタンガスを回収した場合の、層温度に応じた総生産量について説明するためのグラフである。
【図5】図1の二酸化炭素低排出発電システムを用いてメタンガスを回収した場合の、層温度に応じた生産速度について説明するためのグラフである。
【図6】熱水圧入期間に応じたシミュレーションを行う際に用いた解析モデルの一例を示す概略図である。
【図7】図6の解析モデルにおける熱水圧入期間と温度との関係の一例を示す温度分布図である。
【図8】熱水圧入期間に応じたメタンガスの生産速度について説明するためのグラフである。
【図9】フラクチャの有無に応じたメタンガスの生産速度について説明するためのグラフである。
【図10】熱水圧入期間に応じたメタンガスの総生産量について説明するためのグラフである。
【図11】フラクチャの有無に応じたメタンガスの総生産量について説明するためのグラフである。
【図12】メタンガスの流量と出力電力および熱効率との関係を示すグラフである。
【図13】図1の発電システムにおけるエネルギーの状態を示す概略図である。
【図14】メタンガスの流量とガス価格との関係を示すグラフである。
【図15】メタンガスの流量と電気価格との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態.
以下、本発明の実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システムについて説明する。本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システムは、概略的には、MH層(メタンハイドレート層)から回収したメタンガスを用いて発電を行い、発電の際に発生する二酸化炭素および排熱を利用して海水に二酸化炭素を溶解させるとともに海水を加熱する。そして、掘削された注入井に加熱した海水を注入してMH層の予熱およびフラクチャリングを行い、それと平行して、注入井に対して予め設定された距離だけ離れた位置の生産井からメタンガスを回収する。

【0021】
また、メタンガスの回収開始から予め設定された期間が経過する毎に、注入井を生産井として機能させてメタンガスを回収するとともに、新たに掘削された注入井に加熱海水を注入してMH層の予熱およびフラクチャリングを行う。

【0022】
[二酸化炭素低排出発電システムの構成]
図1は、本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システム1の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、二酸化炭素低排出発電システム1は、メタンハイドレートが濃集したMH層の海上に停泊した船2などを利用して設置されている。二酸化炭素低排出発電システム1は、メタンガス回収システム10および発電システム20が接続されて構成されている。

【0023】
(メタンガス回収システム)
図2は、本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1および図2に示すように、メタンガス回収システム10は、1または複数の注入管11と、1または複数の回収管12とを備えている。

【0024】
注入管11は、例えば垂直井であり、MH層の下部まで到達するように掘削された注入井に、海上からMH層の下部まで略垂直に延びるように設置されている。注入管11には、後述する二酸化炭素が溶解した熱水が圧入される。注入管11は、MH層の内部に配置された部分に、二酸化炭素を溶解させた熱水を噴出させるための複数の噴出口が設けられている。

【0025】
回収管12は、例えば垂直井であり、MH層の下部まで到達するように掘削された生産井に、海上からMH層の下部まで略垂直に延びるように設置されている。回収管12は、MH層の内部に配置された部分に、メタンハイドレートから解離したメタンガスを回収するための複数の回収口が設けられている。回収されたメタンガスは、発電システム20に供給される。

【0026】
ここで、注入管11が設置される注入井と、回収管12が設置される生産井とは、予め設定された間隔、すなわち設定距離だけ離れた間隔で配置されている。これは、注入管11で注入井に熱水を圧入した際に、MH層に亀裂であるフラクチャリングが発生するが、この発生したフラクチャリングによって注入井と生産井との間に、チャネリングと呼ばれる亀裂によって相互の井が連通してしまう状態が生じるのを防ぐためである。

【0027】
したがって、本実施の形態では、フラクチャリングによる注入井と生産井との間のチャネリングを防止するため、注入井と生産井との間隔として設定された設定距離を、フラクチャリングによるチャネリングが生じない程度の間隔に設定する。具体的には、例えば、当該設定距離は、10m以上500m以下程度とすると好ましい。これは、設定距離が10mより小さい場合には、注入井と生産井との間にチャネリングが発生してしまい、MH層内のメタンガスを効率的に回収することができないためである。

【0028】
なお一方、設定距離の上限値である「500m」は、例えば、熱水輸送時の圧力損失、熱損失、および本システムを構成するための経済的な装置配置等を考慮して、メタンガス回収システム10を設置するのに適切な距離であり、かつ、フラクチャリングによるチャネリングが発生しない十分な距離を想定して設定している。しかしながら、この上限値は、熱損失や経済的理由から得られた値であり、その理由を解決できる公知な手段、例えば加熱装置や加圧装置などを付加することで解決できたり、経済的に許容できたりするのであれば、上限値を500m以上とすることを妨げない。

【0029】
また、注入井を複数掘削して注入井群として機能させる場合には、それぞれの注入井同士の間に上述したような間隔制限を設ける必要はない。すなわち、それぞれの注入井同士の間隔は、フラクチャリングによるチャネリングが発生するような間隔であってもよい。注入井同士の間にチャネリングが発生すれば、そのチャネリング、すなわち相互の注入井に連通した亀裂による流路が形成されることにより、熱水の注入によるMH層のより効率的な予熱を行うことができる。そして、その注入井群を生産井群としてメタンガスを回収する段階では、生産井群を構成するそれぞれの生産井の間にチャネリング、すなわち相互の生産井に連通した亀裂による流路によって、メタンガスをより効率的に回収することができる。

【0030】
しかしながら、当然、注入井同士または生産井同士の間にチャネリングが発生していることは必須ではない。例えば、複数の生産井を群として形成すれば、たとえチャネリングが発生していなくとも、それだけで予熱の際の熱エネルギーの効率的な活用が可能となる。

【0031】
ここで、本実施の形態において、注入管11が配置された注入井は、予め設定された期間が経過した後に、生産井として機能する。すなわち、注入井に配置された注入管11は、回収管12として用いられる。そして、注入井を生産井として用いた場合には、新たな注入井が掘削され、この新たな注入井に注入管11が配置される。

【0032】
このように、本実施の形態では、現在注入井として機能している井戸を、設定期間経過後に生産井として機能させ、その際に、新たな注入井を掘削する。これを設定期間ごとに順次繰り返して行う。

【0033】
(発電システム)
発電システム20は、発電装置21および二酸化炭素回収装置(以下、「CO回収装置」と適宜称する)22を備えている。発電装置21は、メタンガスを燃料として発電を行い、発電によって得られる電力を、例えば、HVDC(High Voltage Direct Current:高圧直流)海底ケーブルを介して陸上に送る。また、発電装置21では、発電の際に不要な排ガスおよび排熱が発生する。発電装置21は、発生した排ガスおよび排熱をCO回収装置22に供給する。発電装置21としては、例えば、ブレイトンサイクル型の発電装置または大型のガスエンジン等を用いることができる。

【0034】
CO回収装置22は、発電装置21から供給される排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する。また、CO回収装置22には、図示しないポンプ等を用いて海水が供給される。CO回収装置22は、供給された海水に回収した二酸化炭素を溶解させる。例えば、CO回収装置22は、物理吸着法または化学吸収法を用いて、回収した二酸化炭素を高圧下で海水に溶解させる。

【0035】
また、CO回収装置22は、発電装置21から供給される排熱を用いて、二酸化炭素が溶解した海水を加熱し、二酸化炭素が溶解した加熱海水(以下、「熱水」と適宜称する)を生成する。そして、CO回収装置22は、この熱水をメタンガス回収システム10の注入管11に供給する。

【0036】
なお、熱水を注入管11に供給する場合、発電システム20は、この熱水に予め設定された圧力を加えて供給する。このときの圧力は、例えば、熱水が注入管11から噴出した際に、MH層にフラクチャリングを発生させることができる程度の圧力である。

【0037】
[二酸化炭素低排出発電システムの動作]
次に、本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システム1の動作について説明する。発電システム20における発電装置21は、メタンガスを燃料として発電を行い、得られた電力を、HVDC海底ケーブルを介して陸上に送る。また、発電装置21は、発電によって排出される排ガスおよび排熱をCO回収装置22に供給する。

【0038】
CO回収装置22は、発電装置21から供給された排ガスから二酸化炭素を回収する。また、CO回収装置22は、供給された海水に対して回収した二酸化炭素を溶解させる。さらに、発電装置21から供給された排熱を利用して二酸化炭素が溶解した海水を加熱し、二酸化炭素が溶解した熱水を生成する。CO回収装置22は、生成した熱水をメタンガス回収システム10の注入管11に供給する。このとき、熱水は、圧力が加えられた状態で注入管11に供給される。注入管11に供給された熱水は、MH層に到達すると、注入管11の噴出口からMH層に噴出する。

【0039】
MH層では、注入管11から噴出した熱水の圧力により、フラクチャリングが発生する。また、圧入された熱水の熱により、注入管11の周囲のMH層が予熱される。一方、回収管12では、減圧法を用いることにより、メタンハイドレートから解離したメタンガスが回収口から回収される。回収されたメタンガスは、発電システム20に供給され、発電装置21による発電の際の燃料として利用される。

【0040】
そして、設定期間経過後、注入管11が配置された注入井は生産井として機能し、注入管11が回収管12として用いられる。そして、新たに注入井が掘削され、この注入井に注入管11が配置される。以後、設定期間毎に、上述した動作が繰り返される。

【0041】
なお、注入管11から熱水をMH層に注入した場合には、注入した熱水の量に応じてMH層の体積が増加するため、海底面が隆起したりするなどして環境が変化する可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、回収管12からメタンガスを回収する際に、MH層内の海水を汲み上げることによって減圧する減圧法を用いるため、MH層の体積が減少する。そのため、海底面などの環境の変化を抑制することができる。

【0042】
[二酸化炭素低排出発電システムによる効果]
次に、本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電システム1を用いてメタンガスを回収した場合の効果について説明する。ここでは、上述した二酸化炭素低排出発電システム1を用いて、予め想定したMH層からメタンガスを回収する際のシミュレーション結果を用いて説明する。また、以下では、MH層の層温度に応じた結果と、熱水圧入期間に応じた結果とについて、順次説明する。

【0043】
(メタンガスの回収効率)
図3は、MH層におけるメタンガスの回収効率について説明するためのグラフである。図3において、横軸はMH層の温度を示し、縦軸はメタンガスの回収効率を示す。また、この例は、回収管12を中心として半径50mの周囲および深さ35mの領域における、メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を示している。

【0044】
図3に示すように、通常時のMH層の温度が3℃程度である場合、メタンガスの回収効率は30%程度である。これに対して、層温度を8℃程度上昇させ、11℃とすることにより、メタンガスの回収効率は100%に上昇する。このことから、MH層を予熱することにより、MH層におけるメタンハイドレートからメタンガスを効率的に回収することができる。

【0045】
(層温度に応じたメタンガスの総生産量)
まず、MH層の層温度に応じたシミュレーション結果について説明する。図4は、図1の二酸化炭素低排出発電システム1を用いてメタンガスを回収した場合の、層温度に応じた総生産量について説明するためのグラフである。図4において、横軸はメタンガスの生産開始からの日数を示し、縦軸は減圧法を用いてメタンガスを回収した場合の総生産量を示す。また、同図は、熱水によってMH層を予熱し、MH層の温度が2.5℃、7.5℃および12.5℃である場合のメタンガスの総生産量を示す。なお、この例では、予熱しない場合の層温度を例えば2.5℃とした場合を示している。

【0046】
図4に示すように、層温度がいずれの場合においても、メタンガスの総生産量は、生産開始から初期の段階では急激に上昇し、その後、緩やかに上昇する。これは、生産開始から初期の段階では、回収管12の周囲のメタンハイドレートから解離したメタンガスを回収できるためであり、その後は、回収管12から離れた位置に存在するメタンハイドレートから解離したメタンガスを回収するためである。

【0047】
一方、MH層を予熱し、層温度を通常時の2.5℃から上昇させた場合には、メタンガスの総生産量が飛躍的に向上する。特に、生産開始から100日、すなわち3ヶ月程度経過した時点では、MH層の温度を5℃上昇させる毎に、メタンガスの総生産量が10倍以上となる。これは、図3を用いて説明したように、MH層の温度を上昇させることにより、メタンガスの回収効率が上昇するためである。

【0048】
このように、図4に示すシミュレーション結果から、MH層を予熱することにより、メタンガスの総生産量を向上させることができる。

【0049】
(層温度に応じたメタンガスの生産速度)
図5は、図1の二酸化炭素低排出発電システム1を用いてメタンガスを回収した場合の、層温度に応じた生産速度について説明するためのグラフである。図5において、横軸はメタンガスの生産開始からの日数を示し、縦軸は減圧法を用いてメタンガスを回収した場合の生産速度を示す。また、同図は、MH層の温度が2.5℃、7.5℃および12.5℃である場合のメタンガスの生産速度を示す。なお、メタンガスの生産速度は、単位時間あたりのメタンガスの生産量を示す。

【0050】
図5に示すように、層温度がいずれの場合においても、メタンガスの生産速度は、生産開始から初期の段階では急激に上昇し、その後、生産速度が一定値に収束する。これは、図4に示す結果と同様に、生産初期の段階で回収管12の周囲のメタンガスを回収し、その後は回収管12から離れた位置のメタンガスを回収するためである。

【0051】
一方、MH層を予熱し、層温度を通常時の2.5℃から上昇させた場合には、メタンガスの生産速度が飛躍的に向上する。特に、生産開始から100日、すなわち3ヶ月程度経過した時点では、MH層の温度を5℃上昇させる毎に、メタンガスの生産速度が15倍程度となる。そして、その後は、生産速度が3倍程度となる。これは、図3を用いて説明したように、MH層の温度を上昇させることにより、メタンガスの回収効率が上昇するためである。

【0052】
このように、図5に示すシミュレーション結果から、MH層を予熱することにより、メタンガスの生産速度を向上させることができる。

【0053】
(解析モデルについて)
次に、MH層に対する熱水圧入期間に応じたシミュレーション結果について説明する。図6は、熱水圧入期間に応じたシミュレーションを行う際に用いた解析モデルの一例を示す概略図である。図6に示すように、この解析モデルでは、厚みが25m程度の下層と、厚みが20m程度の上層との間に、厚みが20m程度のMH層が形成されている。そして、このMH層には、直径が0.1m程度の注入管11が設置されている。注入管11には熱水が圧入され、注入管11の下部に設けられた噴出口から、圧入された熱水が噴出する。このとき、注入管11には、温度が12℃であり、流量が7.2×103kg/hである熱水が注入されるものとする。また、MH層は、層温度が6℃で均一であるものとする。

【0054】
(熱水圧入期間に応じた温度分布)
図7は、図6の解析モデルにおける熱水圧入期間と温度との関係の一例を示す温度分布図であり、熱水圧入期間を変化させた場合と、MH層にフラクチャを形成した場合とにおけるMH層の温度分布を示す。ケース#1は、熱水を30日間圧入した場合の温度分布を示す。ケース#2は、熱水を90日間圧入した場合の温度分布を示す。ケース#3は、熱水を180日間圧入した場合の温度分布を示す。ケース#4は、熱水を360日間圧入した場合の温度分布を示す。フラクチャケースは、MH層にフラクチャを形成し、熱水を360日間圧入した場合の温度分布を示す。この場合のフラクチャは、隙間の高さが1m程度であり、直径が50m程度であるものとする。

【0055】
図7に示すように、熱水圧入期間がいずれの場合においても、MH層の層温度は、注入管11に近いほど上昇する。また、熱水の圧入期間が長いほど、層温度が上昇する範囲が広くなり、注入管11からより遠くまで層温度を上昇させることができる。

【0056】
さらに、熱水圧入期間が360日であるケース#4とフラクチャケースとを比較した場合、フラクチャケースの方が、注入管11からより遠くまで層温度を上昇させることができる。これは、注入管11から噴出した熱水が、フラクチャを介して遠くまで到達できるためである。

【0057】
このように、図7に示すシミュレーション結果から、熱水圧入期間を長くすることにより、MH層の層温度を広く上昇させることができる。また、フラクチャが形成されることによっても、MH層の層温度を広く上昇させることができる。

【0058】
(熱水圧入期間に応じたメタンガスの生産速度)
図8は、熱水圧入期間に応じたメタンガスの生産速度について説明するためのグラフである。図9は、フラクチャの有無に応じたメタンガスの生産速度について説明するためのグラフである。図8および図9において、横軸はメタンガスの生産開始からの日数を示し、縦軸はメタンガスの生産速度を示す。また、図8は、MH層の層温度が図7のケース#1~#4のように分布する場合のメタンガスの生産速度を示す。図9は、MH層の層温度が6℃および12℃で均一に分布する場合と、図7のケース#4およびフラクチャケースのように分布する場合とにおけるメタンガスの生産速度を示す。

【0059】
なお、図9において、MH層の層温度が6℃および12℃で均一に分布する場合のグラフは、ケース#4およびフラクチャケースの場合と比較するための比較例である。ここで、6℃という温度は、熱水を圧入するなどのMH層に対する操作がなされていない場合の温度であり、実際のMH層の温度に相当する。また、12℃という温度は、MH層内のMHがすべてメタンガスに解離できる温度であり、MH層からメタンガスを回収するのに理想的な温度に相当する。

【0060】
図8に示すように、層温度がいずれの場合においても、メタンガスの生産速度は、図5と同様に、生産開始から初期の段階では急激に上昇し、その後、生産速度が一定値に収束する。また、熱水注入期間が長いほど、メタンガスの生産速度が速い。ただし、熱水圧入期間が短いほど、生産速度が早く低下する。これは、熱水圧入期間が短い場合に、熱水を圧入することによるMH層の予熱が十分でなく、MHが十分にメタンガスに解離しないためである。

【0061】
一方、図9に示すように、ケース#4およびフラクチャケースの場合には、MH層の層温度が6℃で均一の場合と比較して、メタンガスの生産速度が速い。これは、熱水をMH層に圧入することによってMH層の温度が上昇し、MHからメタンガスへの解離が進行するためである。さらに、フラクチャケースの場合は、ケース#4と比較して、メタンガスの生産速度が速い。これは、フラクチャによって熱水が遠くまで到達し、より多くのMHをメタンガスに解離させることができるためである。

【0062】
また、フラクチャケースの場合には、メタンガスの生産開始からの経過日数が150日程度まで、MH層の層温度が12℃で均一の場合と同等の生産速度となる。なお、12℃という温度は、上述したように、MH層内のMHがすべてメタンガスに解離できる温度であり、層温度が12℃で均一の場合の生産速度は、メタンガスの生産量が最大となる速度に相当する。これは、フラクチャケースでは、フラクチャによって熱水が遠くまで到達し、より多くのMHがメタンガスに解離するためである。また、フラクチャは、解離したメタンガスを回収する際の流路となり、減圧時により多くのメタンガスが回収されるためである。

【0063】
このように、図8および図9に示すシミュレーション結果から、MH層に対して熱水を圧入することにより、熱水を圧入しない場合と比較して生産速度を向上させることができる。また、熱水圧入期間が長いほど、生産速度をより向上させることができる。

【0064】
さらに、図9に示す結果から、フラクチャを形成した場合、メタンガスの生産速度は、少なくともメタンガスの生産開始から150日程度までは、最大生産量となる場合と同等の速度とすることができる。

【0065】
(熱水圧入期間に応じたメタンガスの総生産量)
図10は、熱水圧入期間に応じたメタンガスの総生産量について説明するためのグラフである。図11は、フラクチャの有無に応じたメタンガスの総生産量について説明するためのグラフである。図10および図11において、横軸はメタンガスの生産開始からの日数を示し、縦軸はメタンガスの総生産量を示す。また、図10は、MH層の層温度が図7のケース#1~#4のように分布する場合のメタンガスの総生産量を示す。図11は、MH層の層温度が6℃および12℃で均一に分布する場合と、図7のケース#4およびフラクチャケースのように分布する場合とにおけるメタンガスの総生産量を示す。

【0066】
図10に示すように、層温度がいずれの場合においても、メタンガスの総生産量は、図4に示すように、生産開始から初期の段階では急激に上昇し、その後、緩やかに上昇する。また、熱水注入期間が長いほど、メタンガスの総生産量が多い。

【0067】
メタンガスの生産開始から500日経過した場合の、ケース#1における総生産量は8.7×10であり、ケース#2における総生産量は1.0×10である。また、ケース#3における総生産量は1.3×10であり、ケース#4における総生産量は1.7×10である。

【0068】
一方、図11に示すように、ケース#4およびフラクチャケースの場合には、MH層の層温度が6℃で均一の場合と比較して、メタンガスの総生産量が多い。これは、熱水をMH層に圧入することによってMH層の温度が上昇し、MHからメタンガスへの解離が進行するためである。さらに、フラクチャケースの場合は、ケース#4と比較して、メタンガスの総生産量が多い。これは、フラクチャによって熱水が遠くまで到達し、より多くのMHをメタンガスに解離させることができるためである。

【0069】
また、フラクチャケースの場合は、メタンガスの生産開始から150日程度経過するまでは、層温度が12℃で均一の場合と同等の総生産量となる。これは、図9に示すように、生産開始から150日程度経過するまでのメタンガスの生産速度が同等であるためである。

【0070】
メタンガスの生産開始から500日経過した場合の、フラクチャケースにおける総生産量は2.9×10である。また、層温度が6℃で均一の場合の総生産量は8.1×10であり、層温度が12℃で均一の場合の総生産量は4.7×10である。

【0071】
ここで、層温度が6℃で均一の場合の総生産量と、熱水圧入期間が比較的短いケース#1の場合の総生産量とを比較すると、ケース#1の場合の総生産量は、層温度が6℃の場合の総生産量のおよそ1.1倍となる。また、層温度が6℃で均一の場合の総生産量と、熱水圧入期間が長く、かつフラクチャが形成されたフラクチャケースの場合の総生産量とを比較すると、フラクチャケースの場合の総生産量は、層温度が6℃の場合の総生産量のおよそ3.5倍となる。

【0072】
このように、図10および図11に示すシミュレーション結果から、MH層に対して熱水を圧入することにより、熱水を圧入しない場合と比較して総生産量を増大させることができる。また、熱水圧入期間が長く、かつフラクチャが形成されるほど、総生産量をより増大させることができ、このときの総生産量の増大比率は、1.1倍~3.5倍程度となる。

【0073】
さらに、図11に示す結果から、フラクチャを形成した場合、メタンガスの総生産量は、少なくともメタンガスの生産開始から150日程度までは、最大生産量となる場合と同等のメタンガスを生産することができる。

【0074】
(二酸化炭素低排出発電システムの熱効率)
図12は、メタンガスの流量と出力電力および熱効率との関係を示すグラフである。図13は、図1の発電システム20におけるエネルギーの状態を示す概略図である。図12に示すように、発電システム20における出力電力は、メタンガスの供給量に対して略比例する。

【0075】
また、図13に示すように、発電システム20においては、供給される575kg/hのメタンガスに対して、3852kWの電力と、3284kWの回収される排熱と、1680kWの廃熱とが発生する。そのため、メタンガスを用いて発電を行った場合の熱効率は、およそ44%となる。この熱効率は、図12にも示すように、メタンガスの供給量に対してほぼ一定の値となっている。

【0076】
さらに、図13では、CO回収装置22でアミンを用いた化学吸収法を用いた場合を想定している。この場合、排ガスからアミン溶液に二酸化炭素を吸収させ、二酸化炭素を回収する際のリボイラーに必要な熱量は2215kWであり、排熱の熱量(3284kW)よりも少ない。このように、本実施の形態では、廃熱を利用してリボイラーを動作させることができる。

【0077】
(ガス価格および電気価格)
図14は、メタンガスの流量とガス価格との関係を示すグラフである。図15は、メタンガスの流量と電気価格との関係を示すグラフである。図14に示すように、メタンガスのガス価格は、流量が多くなるに従って低下する。しかしながら、例えばメタンガスの流量が120000m/dayとなった場合でも、メタンガスの価格は、従来の天然ガスの価格よりも高価である。

【0078】
一方、図15に示すように、メタンガスを用いて発電した場合の電気価格は、メタンガスの流量が多くなるに従って低下する。ここで、現在、海洋産出試験等において確認されているメタンガスの流量は、20000m/dayであり、この場合には、洋上風力発電による電気価格と同等程度である。これに対して、例えばメタンガスの流量が120000m/dayとなった場合には、電気価格が電力会社による売電価格と同等となる。

【0079】
この結果から、メタンガスの流量、すなわちメタンガスの生産速度を向上させ、例えば120000m/dayの流量でメタンガスを生産することにより、電力会社による売電価格と同等となり、商業的に実用化することができる。

【0080】
なお、海底下のメタンハイドレートの分布を均一と仮定し、生産井の周囲半径120mの範囲のメタンハイドレートがメタンガスとして80%の変換効率で産出可能と仮定すると、流量が20000m/dayの場合、メタンガスの生産期間は4年程度となる。海底下の資源量には上限があるため、流量を増やす場合、生産井の産出期間は短くなっていく。

【0081】
以上のシミュレーション結果から、例えば2ヶ月から4年といった、周期的に予め設定された期間、すなわち設定期間毎に予熱およびフラクチャリングを行った注入井を生産井として機能させ、メタンガスを回収することにより、メタンガスの総生産量および生産速度を向上させることができる。また、発電の際の排ガスに含まれる二酸化炭素および排熱を利用して加熱海水を生成することにより、エネルギー損失を抑制して高い熱効率を維持することができる。

【0082】
さらに、商業的な観点から、上述したようにメタンガスの総生産量および生産速度を向上させることにより、メタンガスの価格、およびメタンガスを燃料として発電した場合の電気価格を低減することができる。特に、メタンガスを燃料として発電した場合の電気価格は、電力会社による売電価格と同等となり、実用化が可能となる。

【0083】
以上のように、本実施の形態に係るメタンガス回収方法は、メタンハイドレート層からメタンガスを回収するメタンガス回収方法であり、二酸化炭素が溶解するとともに加熱された加熱海水をメタンハイドレート層に連通する1または複数の注入井に注入してメタンハイドレート層を予熱し、メタンハイドレート層に連通し、注入井から設定距離だけ離れた位置に設けられた1または複数の生産井から、減圧法によってメタンガスを回収する。そして、設定期間が経過した場合に、注入井を生産井として生産井で予熱されたメタンハイドレート層からメタンガスを回収し、新たな注入井を掘削して、注入井に加熱海水を注入してメタンハイドレート層を予熱する。

【0084】
このように、本実施の形態では、加熱海水によって予熱されたMH層からメタンガスを回収するため、メタンガスを効率的に回収することができる。また、設定期間が経過する毎に、注入井を生産井として機能させ、当該生産井からメタンガスを回収することにより、MH層から回収するメタンガスの総生産量および生産速度を向上させることができる。

【0085】
また、本実施の形態に係る二酸化炭素低排出発電方法は、上述したメタンガス回収方法で説明したようにしてメタンガスを回収する際に、メタンガスを燃料として発電を行い、発電の際に発生する排ガスから二酸化炭素を回収し、海水を取得し、回収した二酸化炭素を海水に溶解させ、発電の際に発生する排熱を用いて、二酸化炭素が溶解した海水を加熱して加熱海水を生成する。

【0086】
このように、本実施の形態では、さらに、発電装置21で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素を海水に溶解させ、その海水を注入井から地下に注入する、すなわち、二酸化炭素を海底隔離するものであるため、発電によって発生する二酸化炭素のうち、大気中への二酸化炭素の放出を抑制することができる。さらにまた、発電装置21で発生する排熱を用いて海水を加熱することができるため、エネルギー損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 二酸化炭素低排出発電システム、2 船、10 メタンガス回収システム、11 注入管、12 回収管、20 発電システム、21 発電装置、22 二酸化炭素回収装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14