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明細書 :モザイク荷電複層膜およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5669047号 (P5669047)
登録日 平成26年12月26日(2014.12.26)
発行日 平成27年2月12日(2015.2.12)
発明の名称または考案の名称 モザイク荷電複層膜およびその製造方法
国際特許分類 B01D  69/02        (2006.01)
B01D  69/10        (2006.01)
B01D  69/12        (2006.01)
B01D  71/38        (2006.01)
FI B01D 69/02
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/38
請求項の数または発明の数 8
全頁数 45
出願番号 特願2011-510198 (P2011-510198)
出願日 平成22年12月27日(2010.12.27)
国際出願番号 PCT/JP2010/073589
国際公開番号 WO2011/081145
国際公開日 平成23年7月7日(2011.7.7)
優先権出願番号 2009298285
2010220042
優先日 平成21年12月28日(2009.12.28)
平成22年9月29日(2010.9.29)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成25年9月18日(2013.9.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】直原 敦
【氏名】小林 謙一
【氏名】比嘉 充
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
【識別番号】100180600、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
審査官 【審査官】岡田 三恵
参考文献・文献 特開2006-272067(JP,A)
特開2008-188518(JP,A)
再公表特許第2010/119858(JP,A1)
調査した分野 B01D 69/02
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/38
特許請求の範囲 【請求項1】
平均繊維径1μm以上100μm以下の繊維からなる多孔質支持層(A)、平均繊維径0.01μm以上1μm未満の繊維からなる多孔質中間層(B)、およびカチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層(C)を有するモザイク荷電複層膜であって、
多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成した後に、該多孔質中間層(B)上に印刷することによってモザイク荷電層(C)を形成することにより、多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)がこの順番で配置されるか、または多孔質中間層(B)内にモザイク荷電層(C)が形成されてなり、
多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、
多孔質中間層(B)の厚さが0.1~100μmであり、
多孔質中間層(B)の空隙率よりも多孔質支持層(A)の空隙率が大きく、
モザイク荷電層(C)は、カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互に配列し、各ドメインがモザイク荷電層(C)の一面から他面まで連続した荷電構造を有し、
モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有するポリビニルアルコールであることを特徴とするモザイク荷電複層膜。
【請求項2】
前記親水性繊維がポリビニルアルコール繊維である請求項1記載のモザイク荷電複層膜。
【請求項3】
多孔質支持層(A)が、疎水性重合体を含む請求項1または2記載のモザイク荷電複層膜。
【請求項4】
前記疎水性重合体がポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種である請求項3記載のモザイク荷電複層膜。
【請求項5】
多孔質支持層(A)が疎水性重合体を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、多孔質中間層(B)が親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなる請求項1~4のいずれか記載のモザイク荷電複層膜。
【請求項6】
モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有する重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含むブロック共重合体である請求項1~5のいずれか記載のモザイク荷電複層膜。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載のモザイク荷電複層膜の製造方法であって、
多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成した後に、該多孔質中間層(B)上に印刷することによってモザイク荷電層(C)を形成することを特徴とするモザイク荷電複層膜の製造方法。
【請求項8】
前記多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を印刷によって形成した後に熱処理および/または架橋処理を行う請求項7記載のモザイク荷電複層膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、モザイク荷電複層膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モザイク荷電膜は、カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互に配列し、各ドメインが膜の一面から他面まで連続した荷電構造を有する膜である。モザイク荷電膜は、かかる荷電構造によって、外部からの電流を必要とすることなく対象溶液中の低分子量イオンの透過を促進することができる。カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互に並べられると、各ドメインが帯びる電荷が互いに逆であるため、膜の両側の塩溶液部分が抵抗となる電気回路ができる。その回路に流れる電流のようにカチオンとアニオンがそれぞれカチオン交換ドメイン、アニオン交換ドメインを通って輸送されることで循環電流が生じ、塩の輸送が促進される。このことはモザイク荷電膜が、外部からの電流が必要な、一種類の固定電荷を有するイオン交換膜と異なり、イオン輸送を引き起こす機構を膜自体に内在させていることを意味する。
【0003】
モザイク荷電膜として種々の手法により作製したものが報告されている。特許文献1には、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用して作製したモザイク荷電膜を用いる有機化合物の脱塩方法が記載されている。しかしながら、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用してモザイク荷電膜を作製する方法は、所望の構造のブロック共重合体を得るために高度な技術が必要であり、操作も煩雑なため、高コストになり、工業的に実用性のある大面積のモザイク荷電膜を効率よく安価に製造することは困難である。また、カチオン交換ドメインおよびアニオン交換ドメインがそれぞれ膜の一面から他面まで連続するように構造形成することは困難であるため、高い塩選択透過性を達成することは困難である。
【0004】
特許文献2には、膜形成ポリマー、該膜形成ポリマーを溶解し得る溶媒、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を混合し、ポリマー溶液に陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を分散させて均一なポリマー分散液を調製する工程;および前記ポリマー分散液を基材上に塗布および延伸し、乾燥して凝固させた後、得られた膜から溶媒を除去し、洗浄する工程を行うことを特徴とする、モザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法により得られたモザイク荷電膜は、圧透析実験において圧力上昇とともに塩透過量も増加することが記載されている。しかし、このモザイク荷電膜では膜マトリックスとイオン交換樹脂との界面において水や中性溶質の漏れが生じる上、カチオン交換ドメインおよびアニオン交換ドメインがそれぞれ膜の一面から他面まで連続するように構造形成することは困難であるため、高い塩選択透過性を達成することは困難である。
【0005】
特許文献3には、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーのいずれか一方のイオン性ポリマーが形成する架橋連続相中に、連続相形成ポリマーと少なくとも反対イオン性のポリマーが平均粒子径0.01~10μmの架橋粒子として分散してなるカチオン性ポリマードメインとアニオン性ポリマードメインからなるモザイク荷電膜を製造する方法において、前記膜の連続相を形成するいずれか一方のイオン性ポリマーの溶液に少なくとも連続相形成ポリマーと反対イオン性のポリマーの球状微粒子を分散させた分散液を用いて膜を形成し、該膜中の少なくとも連続相を架橋させ、次いで水または水溶液浸漬処理することを特徴とするモザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法で製造される膜は、ドメインサイズや膜厚の調製が容易であり、また最大の利点は比較的容易に大面積の膜の作製が可能である点である。しかし、この製造方法では、平均粒子径が小さい重合体微粒子を調製しなければならず、高度な技術および長時間を要するといった問題がある。しかも得られるモザイク荷電膜は、含水性の高いミクロゲルで構成されているため、耐圧性が非常に低く、特に構造上、膜マトリックスと陽、陰ミクロゲル界面との接着性が完全ではないため、高い電解質透過性を有するモザイク荷電膜の作製が困難であり、また機械的強度も十分とは言えない。そのため、拡散透析用の膜としては使用可能であるものの、圧透析用の膜としては使用に耐えないか、もしくは耐久性に極めて劣るといった欠点を有する。また、球状微粒子として分散させた一方のイオン性ポリマーが膜の一面から他面まで連続するように構造形成することが困難であるため、高い塩選択透過性を達成することは困難である。
【0006】
特許文献4には、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーと支持体とからなり、支持体が非対称性多孔質体であって、支持体に両ポリマーが透析可能に充填されているモザイク荷電膜体が記載されており、好適な態様として、カチオン性及びアニオン性の球状ポリマーを混合して得られるポリマー粒子混合分散液を支持体に充填したモザイク荷電膜体について記載されている。これによれば、耐圧性及び機械的強度が向上し、且つ電解質と非電解質の分離或いは塩溶液の脱塩ができる大面積を有するモザイク荷電膜体を簡単な工程で提供することができるとされている。しかしながら、こうして得られるモザイク荷電膜体は、塩の選択透過性の性能が不十分であるとともに、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと、支持体との接着性が不十分な場合があり改善が求められていた。
【0007】
非特許文献1には、積層法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該積層法では、ポリビニルアルコールとポリアニオンから陽イオン交換膜を、ポリビニルアルコールとポリカチオンから陰イオン交換膜を作製し、これらをポリビニルアルコールを接着剤として交互に貼り合わせることにより積層荷電ブロックを作製し、得られたブロックを積層面と垂直にラボカッターで切断した後、架橋処理を行うことによって、約150μmの膜厚を有する積層モザイク荷電膜を作製している。このようにして得られた積層モザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは3.0×10-9mol・cm-2・s-1、電解質選択透過性αは2300と非常に高い値を示すことが記載されている。引張強度は荷電層と平行な方向で5.7MPaであったが、垂直方向で2.7MPaであり、拡散透析用には使用可能であるが、圧透析用に使用するには、より強度を高める必要がある。
【0008】
非特許文献2には、ポリビニルアルコールを膜マトリックスとするポリマーブレンド法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該ポリマーブレンド法では、ポリビニルアルコールとイタコン酸基を含有するビニル化合物を2mol%共重合組成として含有する変性PVAポリアニオンの水溶液に、イタコン酸基のカルボキシル基からの水素イオンの解離を抑制するために塩酸を加えて酸性にした溶液と、ポリビニルアルコールとポリアリルアミン塩酸塩水溶液とを混合することでポリマーブレンド水溶液を調製した。この溶液をガラス板などにキャストして膜を得た後、化学的架橋を行うことによってモザイク荷電膜を得ている。このようにして得られたモザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは1.7×10-8mol・cm-2・s-1であり、電解質選択透過性αは48を示すことが記載されているが、より高い電解質選択透過性が望まれている。また、酸性溶液では塩選択透過性が低下するという問題も有している。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開昭59-203613号公報
【特許文献2】特開2006-297338号公報
【特許文献3】特開平8-155281号公報
【特許文献4】特開平8-276122号公報
【特許文献5】特開昭59-187003号公報
【特許文献6】特開昭59-189113号公報
【0010】

【非特許文献1】J.Membr.Sci.,Vol.310,p.466(2008).
【非特許文献2】繊維学会予稿集 Vol.56,No.1,p.33(2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、塩の透過流束が大きく、かつ機械的強度に優れたモザイク荷電複層膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、平均繊維径1μm以上100μm以下の繊維からなる多孔質支持層(A)、平均繊維径0.01μm以上1μm未満の繊維からなる多孔質中間層(B)、およびカチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層(C)を有するモザイク荷電複層膜であって、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成した後に、該多孔質中間層(B)上に印刷することによってモザイク荷電層(C)を形成することにより、多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)がこの順番で配置されるか、または多孔質中間層(B)内にモザイク荷電層(C)が形成されてなり、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、多孔質中間層(B)の厚さが0.1~100μmであり、多孔質中間層(B)の空隙率よりも多孔質支持層(A)の空隙率が大きく、モザイク荷電層(C)は、カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互に配列し、各ドメインがモザイク荷電層(C)の一面から他面まで連続した荷電構造を有し、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有するポリビニルアルコールであることを特徴とするモザイク荷電複層膜を提供することによって解決される。
【0013】
このとき、前記親水性繊維がポリビニルアルコール繊維であることが好適であり、多孔質支持層(A)が、疎水性重合体を含むことが好適である。前記疎水性重合体がポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、多孔質支持層(A)が疎水性重合体を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、多孔質中間層(B)が親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなることが好適である。また、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有する重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含むブロック共重合体であることが好適である。
【0014】
また、このとき、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成した後に、該多孔質中間層(B)上に印刷することによってモザイク荷電層(C)を形成するモザイク荷電複層膜の製造方法が本発明の好適な実施態様である。また、前記多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を印刷によって形成した後に熱処理および/または架橋処理を行うことも本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモザイク荷電複層膜は、塩の透過流束が大きく、かつ機械的強度に優れている。これにより、電解質と非電解質の分離や、電解質の除去(脱塩)などを効率よく行うことができ、拡散透析にも圧透析にも用いることができる。また、多孔質支持層によって、面方向の寸法安定性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】圧透析試験装置を示した図である。
【図2】モザイク荷電層(C)がストライプ状に印刷されて形成されたモザイク荷電複層膜を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のモザイク荷電複層膜は、多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびカチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層(C)を有するものであって、多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)がこの順番で配置されるか、または多孔質中間層(B)内にモザイク荷電層(C)が形成されてなるものである。本発明のモザイク荷電複層膜は、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有するポリビニルアルコールであるとともに、多孔質中間層(B)の空隙率よりも多孔質支持層(A)の空隙率が大きいことを特徴とする。このことにより、塩の透過流束が大きく、かつ機械的強度に優れたモザイク荷電複層膜を得ることができる。すなわち、本発明は、多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体およびアニオン性重合体が、イオン基を有するポリビニルアルコールであるとともに、空隙率が多孔質中間層(B)よりも大きい多孔質支持層(A)を用いることにより、水の処理速度を低下させずにモザイク荷電複層膜自体の機械的強度を向上させることができる。更に、空隙率が多孔質支持層(A)よりも小さく、厚さが0.1~100μmの多孔質中間層(B)を用いることで、多孔質中間層(B)表面の平滑度が高くなるため、モザイク荷電層(C)が均一かつ強固に形成される。その結果、塩の透過流束を大きくすることができる。

【0018】
本発明で用いられるカチオン性重合体は、分子鎖中にカチオン基を含有する重合体である。当該カチオン基は主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていても構わない。カチオン基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中において少なくともその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基も、カチオン基に含まれる。この中で、工業的に入手し易い観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基(アンモニウム基)、2級アンモニウム基(アルキルアンモニウム基等)、3級アンモニウム基(ジアルキルアンモニウム基等)、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)のいずれを用いることもできるが、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)がより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン基を含有していてもよいし、複数種のカチオン基を含有していてもよい。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有していてもよいし、複数種の対アニオンを含有していてもよい。

【0019】
本発明で用いられるカチオン性重合体は、上記カチオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、上記カチオン基を含有しない構造単位をさらに含む重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種のカチオン性重合体を含むものであってもよい。また、これらカチオン性重合体と別の重合体との混合物であっても構わない。ここでカチオン性重合体以外の重合体はアニオン性重合体でないことが望ましい。

【0020】
カチオン性重合体としては、以下の一般式(1)~(8)の構造単位を有するものが例示される。

【0021】
【化1】
JP0005669047B2_000002t.gif
[式中、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表わす。R、R、Rは、相互に連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい。Zは-O-、-NH-、または-N(CH)-を表し、Yは酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含んでもよい総炭素数1~8の二価の連結基を表す。Xはアニオンを表す。]

【0022】
一般式(1)中の対アニオンXとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(1)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体しては、3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3-(メタ)アクリルアミド-3,3-ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなど3-(メタ)アクリルアミド-アルキルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0023】
【化2】
JP0005669047B2_000003t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表わす。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0024】
一般式(2)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0025】
【化3】
JP0005669047B2_000004t.gif
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0026】
【化4】
JP0005669047B2_000005t.gif
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0027】
一般式(3)および一般式(4)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルジアルキルアンモニウム塩が環化重合して得られる単独重合体または共重合体が例示される。

【0028】
【化5】
JP0005669047B2_000006t.gif
[式中、nは0または1を表わす。RおよびRは一般式(1)と同義である。]

【0029】
一般式(5)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミンの単独重合体または共重合体が例示される。

【0030】
【化6】
JP0005669047B2_000007t.gif
[式中、nは0または1を表わす。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0031】
一般式(6)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。

【0032】
【化7】
JP0005669047B2_000008t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは-CH(OH)CH-、-CHCH(OH)-、-C(CH)(OH)CH-、-CHC(CH)(OH)-、-CH(OH)CHCH-、または-CHCHCH(OH)-を表す。Eは-N(Rまたは-N(R・Xを表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。Xはアニオンを表す。]

【0033】
一般式(7)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体として、N-(3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体、N-(4-アリルオキシ-3-ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。
【化8】
JP0005669047B2_000009t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基またはi-プロピル基、Rは水素原子、メチル基、およびエチル基をそれぞれ表わす。]

【0034】
一般式(8)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体として、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が例示される。

【0035】
本発明で用いられるアニオン性重合体は、分子鎖中にアニオン基を含有する重合体である。当該アニオン基は主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていても構わない。アニオン基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン基を含有していてもよいし、複数種のアニオン基を含有していてもよい。また、アニオン基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオン、などが例示される。この中で、設備の腐蝕問題が少ない点から、アルカリ金属イオンが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。

【0036】
本発明で用いられるアニオン性重合体は、上記アニオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、上記アニオン基を含有しない構造単位をさらに含む重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種のアニオン性重合体を含むものであってもよい。また、これらアニオン性重合体と別の重合体との混合物であっても構わない。ここでアニオン性重合体以外の重合体はカチオン性重合体でないことが望ましい。

【0037】
アニオン性重合体としては、以下の一般式(9)および(10)の構造単位を有するものが例示される。

【0038】
【化9】
JP0005669047B2_000010t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Gは-SOH、-SO、-POH、-PO、-COHまたは-COを表す。Mはアンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す。]

【0039】
一般式(9)で表わされる構造単位を含有するアニオン性重合体としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0040】
【化10】
JP0005669047B2_000011t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表わし、Tは水素原子がメチル基で置換されていてもよいフェニレン基またはナフチレン基を表わす。Gは一般式(9)と同義である。]

【0041】
一般式(10)で表わされる構造単位を含有するアニオン性重合体としては、p-スチレンスルホン酸ナトリウムなどp-スチレンスルホン酸塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0042】
また、アニオン性重合体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸またはその塩の単独重合体または共重合体、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸、その誘導体またはその塩の単独重合体または共重合体なども例示される。

【0043】
一般式(9)または(10)において、Gは、より高い荷電密度を与えるスルホネート基、スルホン酸基、ホスホネート基、またはホスホン酸基であることが好ましい。また一般式(9)および一般式(10)中、Mで表わされるアルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。

【0044】
カチオン性重合体またはアニオン性重合体から選択されるイオン性重合体が、共重合体である場合の共重合成分としては、ビニルアルコール成分が好適なものとして挙げられる。カチオン基またはアニオン基から選択されるイオン基を含有する重合体と、カチオン基またはアニオン基から選択されるイオン基を含有しない重合体との混合物を用いる場合、イオン基を含有しない重合体としてはイオン基を含有する重合体と親和性の高いものが好適に用いられる。具体的には、ポリビニルアルコールおよびポリアクリルアミドからなる群から選択される1種が好適に用いられる。その中でも、架橋性の高さからポリビニルアルコールがより好適に用いられる。

【0045】
本発明のモザイク荷電複層膜においては、カチオン性重合体およびアニオン性重合体が親水性重合体であることが好ましく、このことにより圧力損失が低くなる利点を有する。ここでカチオン性重合体およびアニオン性重合体が親水性重合体であるとは、上記カチオン性重合体およびアニオン性重合体であるために必要な官能基がない構造において親水性を有することを意味する。特に親水性重合体が水溶性重合体である場合には、水性印刷によりモザイク荷電層(C)を形成することができる。このように、カチオン性重合体およびアニオン性重合体が親水性重合体であることにより、親水性度の高いモザイク荷電複層膜が得られ、被処理液中の有機汚染物質がモザイク荷電複層膜に付着して膜の性能を低下させる問題が低減できる。また、膜強度が高くなる。

【0046】
親水性のカチオン性重合体としては、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、カチオン基を含有するセルロース誘導体、カチオン基を含有するポリアクリルアミド、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないセルロース誘導体との混合物、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリアクリルアミドとの混合物などが例示される。この中で、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが好ましい。ポリビニルアルコール単位を有する重合体を用いることが、モザイク荷電複層膜の強度、モザイク荷電層(C)の柔軟性、および、物理的または化学的架橋性の点から好ましい。その中でも、入手容易である点から、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物、またはジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物が特に好ましい。カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物においては、カチオン性重合体中の単量体単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。カチオン性重合体が親水性重合体である場合、1種類の親水性重合体であってもよいし、複数種の親水性重合体の混合物であってもよい。また、親水性重合体と非親水性重合体との混合物であってもよい。また、親水性または非親水性のカチオン性重合体以外の重合体を含んでいても良い。ここでカチオン性重合体以外の重合体はアニオン性重合体でないことが望ましい。

【0047】
親水性のアニオン性重合体としては、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、アニオン基を含有するセルロース誘導体、アニオン基を含有するポリアクリルアミド、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないセルロース誘導体との混合物、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリアクリルアミドとの混合物などが例示される。この中で、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが好ましい。ポリビニルアルコール単位を有する重合体を用いることが、モザイク荷電複層膜の強度、モザイク荷電層(C)の柔軟性、および、物理的または化学的架橋の点から好ましい。その中でも、入手容易である点から、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩成分とビニルアルコール成分との共重合体、p-スチレンスルホン酸塩成分とビニルアルコール成分との共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物、またはポリスチレンスルホン酸塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物が特に好ましい。アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物においては、アニオン性重合体中の単量体単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。アニオン性重合体が親水性重合体である場合、1種類の親水性重合体であってもよいし、複数種の親水性重合体の混合物であってもよい。また、親水性重合体と非親水性重合体との混合物であってもよい。また、親水性または非親水性のカチオン性重合体以外の重合体を含んでいても良い。ここでアニオン性重合体以外の重合体はカチオン性重合体でないことが望ましい。

【0048】
本発明において、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体は、イオン基を有するポリビニルアルコールである。中でも、カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体として、イオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好適に用いられ、ブロック共重合体がより好適に用いられる。こうすることにより、イオン性重合体がミクロ相分離して、モザイク荷電複層膜全体の強度の向上、膜の膨潤度の抑制、および形状保持についての機能を担うポリビニルアルコール成分と、陽イオンまたは陰イオンを透過させる機能を担うイオン性単量体を重合してなる重合体成分とが役割分担でき、モザイク荷電複層膜の膨潤度と寸法安定性とを両立することができる。イオン性単量体を重合してなる重合体成分の構造単位は特に限定されないが、前記一般式(1)~(10)で表わされるものなどが例示される。この中で、入手容易である点から、カチオン性重合体としては、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、ビニルベンジルトリアルキル塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、またはジアリルジアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体が好ましく用いられる。また、アニオン性重合体としては、p-スチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体が好ましく用いられる。

【0049】
本発明で用いられるイオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにイオン基を結合させる方法、および(2)少なくとも1種類のイオン性単量体を重合させて所望のブロック共重合体を製造する方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、1種類または複数種の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中の1種類または複数種の重合体成分にイオン基を導入する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のイオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法が工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中のポリビニルアルコール成分とイオン性単量体を重合してなる重合体成分の各成分の種類や量を容易に制御できることから、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のイオン性単量体をラジカル重合させてブロック共重合体を製造する方法が好ましい。こうして得られるイオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体には、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールが未反応のまま含まれていても構わない。

【0050】
これらのブロック共重合体の製造に用いられる、末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体は、例えば、特許文献5などに記載されている方法により得ることができる。すなわち、チオール酸の存在下にビニルエステル系単量体、例えば酢酸ビニルをラジカル重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化する方法が挙げられる。このようにして得られる末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールと、イオン性単量体とを用いてブロック共重合体を得る方法としては、例えば、特許文献6などに記載された方法が挙げられる。すなわち、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下にイオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を得ることができる。このラジカル重合は公知の方法、例えばバルク重合、溶液重合、パール重合、乳化重合などによって行うことができるが、末端にメルカプト基を含有するポリビニルアルコールを溶解し得る溶剤、例えば水やジメチルスルホキシドを主体とする媒体中で行うのが好ましい。また、重合プロセスとしては、回分法、半回分法、連続法のいずれをも採用することができる。

【0051】
イオン性重合体のイオン性単量体単位の含有量は特に限定されないが、イオン性重合体のイオン性単量体単位の含有量、すなわち、イオン性重合体中の単量体単位の総数に対するイオン性単量体単位の数の割合が、0.1モル%以上であることが好ましい。イオン性単量体単位の含有量が0.1モル%未満だと、モザイク荷電層(C)中の有効荷電密度が低下し、電解質選択透過性が低下するおそれがある。含有量が0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることがさらに好ましい。また、イオン性単量体単位の含有量は50モル%以下であることが好ましい。イオン性単量体単位の含有量が50モル%を超えると、モザイク荷電複層膜の膨潤度が高くなり、電解質の透過流束が低くなるおそれがある。イオン性単量体単位の含有量が30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。イオン性重合体が、イオン基を含有する重合体とイオン基を含有しない重合体との混合物である場合や、イオン基を含有する重合体の複数種の混合物である場合のイオン性単量体単位の含有量は、混合物中の単量体単位の総数に対するイオン性単量体単位の数の割合をいう。

【0052】
カチオン性重合体またはアニオン性重合体から選択されるイオン性重合体における、イオン基以外の部分の構造単位は、それぞれ独立に選択することができるが、カチオン性重合体とアニオン性重合体とが、同一の構造単位を有することが好ましい。これにより、ドメイン同士の間の親和性が高くなるため、モザイク荷電層(C)の機械的強度が増大する。同一の構造単位を、カチオン性重合体およびアニオン性重合体の両方が、50モル%以上有していることが好ましく、80モル%以上有していることがより好ましい。

【0053】
本発明では、上記同一の構造単位がポリビニルアルコール単位であることにより、グルタルアルデヒドなどの架橋処理剤によりドメイン同士の間を化学的に架橋することができるので、モザイク荷電複層膜の機械的強度をさらに高くすることもできる。

【0054】
同一の構造単位がビニルアルコール単位である場合の具体例として、カチオン性重合体のドメインが、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物からなり、アニオン性重合体のドメインが、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物からなる場合が挙げられる。

【0055】
モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有する重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含むブロック共重合体であることが好ましい。このことにより、架橋が可能となり、多孔質中間層(B)とモザイク荷電層(C)との間における接着性が良好となる利点を有する。

【0056】
本発明において、カチオン基またはアニオン基から選択されるイオン基を含有するポリビニルアルコールは、イオン性単量体とビニルエステル系単量体を共重合し、これを常法によりけん化して得られる。ビニルエステル系単量体は、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。この中でも、酢酸ビニルが好ましい。

【0057】
イオン性単量体とビニルエステル系単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。それらの方法の中でも、無溶媒で行う塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n-プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5℃~180℃の範囲が適当である。

【0058】
イオン性単量体とビニルエステル系単量体とを共重合させることによって得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法にしたがって溶媒中でけん化され、イオン基を含有するポリビニルアルコールへと導かれる。

【0059】
ビニルエステル系重合体のけん化反応の触媒としては通常アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加しても良いし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加しても良い。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などが挙げられる。

【0060】
イオン基を含有するポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されないが、40~99.9モル%であることが好ましい。けん化度が40モル%未満だと、結晶性が低下し、モザイク荷電層(C)の強度が不足するおそれがある。けん化度が60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合のけん化度は、混合物全体としての平均のけん化度をいう。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。本発明で用いられるイオン基を含有しないポリビニルアルコールのけん化度も、上記範囲であることが好ましい。

【0061】
イオン基を含有するポリビニルアルコールの粘度平均重合度(以下単に重合度と言うことがある)は特に限定されないが、50~10000であることが好ましい。重合度が50未満だと、実用上でモザイク荷電層(C)が十分な強度を保持できないおそれがある。重合度が100以上であることがより好ましい。重合度が10000を超えると印刷に用いる重合体溶液の粘度が高すぎて扱えないおそれがある。重合度が8000以下であることがより好ましい。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合の重合度は、混合物全体としての平均の重合度をいう。なお、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定した値である。本発明で用いられるイオン基を含有しないポリビニルアルコールの重合度も、上記範囲であることが好ましい。

【0062】
本発明で用いられる多孔質支持層(A)は、多孔質からなるものであれば特に限定されない。多孔質支持層(A)を用いることにより、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が優れるとともに、塩の輸送が容易となる。多孔質支持層(A)としては、不織布、膜、織布、合成紙などが例示され、従来公知の多孔質のシートがいずれも使用できる。これらの中でも、不織布、膜、合成紙がさらに好ましい。また、多孔質支持層(A)の素材としては、ポリビニルアルコール繊維集合体が特に好ましく用いられ、このことにより高強度となる利点を有する。

【0063】
本発明で用いられる多孔質支持層(A)の厚みは、特に限定されず、5~1000μmであることが好ましい。多孔質支持層(A)の厚みが5μm未満だと、モザイク荷電複層膜の強度が不足するおそれがある。該厚みは10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。多孔質支持層(A)の厚みが1000μmを超えると、塩の輸送が困難になるおそれがある。該厚みは800μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。

【0064】
本発明で用いられる多孔質支持層(A)の坪量は、特に限定されず、1~100g/mであることが好ましい。坪量が1g/m未満の場合、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が低下するおそれがあり、5g/m以上であることがより好ましく、10g/m以上であることが更に好ましい。一方、坪量が100g/mを超える場合、モザイク荷電複層膜の塩の輸送抵抗が大きくなり、十分な輸送ができなくなるおそれがあり、80g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることが更に好ましい。

【0065】
また、本発明で用いられる多孔質支持層(A)の空隙率は、後述する多孔質中間層(B)の空隙率よりも大きいのであれば特に限定されない。このように、多孔質中間層(B)の空隙率よりも多孔質支持層(A)の空隙率を大きくすることにより、機械的強度に優れるとともに、塩の透過流束を大きくすることができる。また、電解質選択透過性にも優れる。空隙率の差は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。

【0066】
多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)の空隙率を所望の範囲に制御する手段は公知の手段を用いることができる。製造時の樹脂の坪量と層の厚さを調節することで空隙率を制御することが可能である。樹脂の発泡によって空隙を形成する場合は、発泡剤の種類と量によって発泡倍率を調節することで空隙率を制御できる。また、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が繊維層である場合、繊維の交絡密度を調製することで空隙率を制御できる。また繊維径を小さくすることで交絡密度を高めることが容易になり、空隙率を高めることができる。

【0067】
多孔質支持層(A)の空隙率は、40~90%であることが好ましい。空隙率がこの範囲にあることで、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が優れるとともに、透気度を一定範囲に保つことができる。多孔質支持層(A)の空隙率が40%未満の場合、塩の輸送抵抗が大きくなるおそれがあり、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましい。一方、多孔質支持層(A)の空隙率が90%を超える場合、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が劣るおそれがあり、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることが更に好ましい。

【0068】
本発明では、多孔質支持層(A)が、平均繊維径1μm以上100μm以下の繊維からなる。このことにより、機械的強度に優れたモザイク荷電複層膜を得ることができる。平均繊維径が1μm未満の場合、塩の輸送抵抗が大きくなるおそれがあり、3μm以上であることが好ましい。一方、平均繊維径が100μmを超える場合、表面平滑性が劣り、多孔質中間層(B)が均一に設けられないおそれがあり、50μm以下であることが好ましい。

【0069】
本発明で用いられる多孔質中間層(B)は、多孔質からなるものであって、多孔質中間層(B)の厚さが0.1~100μmであれば特に限定されない。多孔質中間層(B)としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等が例示され、中でもポリビニルアルコールが好適に用いられる。このような多孔質中間層(B)を用いることにより、多孔質中間層(B)表面の平滑度が向上され、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を均一に形成することができる。その結果、得られるモザイク荷電複層膜における塩の透過流束が大きく、また、電解質選択透過性に優れる利点を有する。ここで、多孔質中間層(B)の厚さが0.1μm未満の場合、ピンホールが発生するおそれがあり、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。一方、多孔質中間層(B)の厚さが100μmを超える場合、塩の輸送抵抗が大きくなるおそれがあり、70μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、多孔質支持層(A)の厚みと多孔質中間層(B)の厚みとの比(A/B)は、特に限定されず、2以上であることが好ましく、5以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましい。一方、該厚み比(A/B)は、通常、100以下である。

【0070】
本発明で用いられる多孔質中間層(B)の坪量は、特に限定されず、0.1~10g/mであることが好ましい。坪量が0.1g/m未満の場合、ピンホールが発生するおそれがあり、0.8g/m以上であることがより好ましく、1g/m以上であることが更に好ましい。一方、坪量が10g/mを超える場合、塩の輸送抵抗が大きくなるおそれがあり、5g/m以下であることがより好ましい。また、多孔質支持層(A)の坪量と多孔質中間層(B)の坪量との比(A/B)は、特に限定されず、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。一方、該坪量比(A/B)は、通常、100以下である。

【0071】
また、本発明で用いられる多孔質中間層(B)の空隙率は、上記多孔質支持層(A)の空隙率よりも小さければ特に限定されず、具体的には30~80%であることが好ましい。空隙率がこの範囲にあることにより、多孔質中間層(B)表面の平滑度を高くすることができるため、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)が均一に形成される。その結果、得られるモザイク荷電複層膜における塩の透過流束を大きくすることができる利点を有する。多孔質中間層(B)の空隙率が30%未満の場合、塩の輸送抵抗が大きくなるおそれがあり、35%以上であることがより好ましい。一方、多孔質中間層(B)の空隙率が80%を超える場合、モザイク荷電層(C)を均一に設けることが困難となるおそれがあり、70%以下であることがより好ましく、65%以下であることが更に好ましい。

【0072】
本発明では、多孔質中間層(B)が、平均繊維径0.01μm以上1μm未満の繊維層からなる。このことにより、多孔質中間層(B)表面の平滑度をより高くすることが可能となり、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)が均一に形成される。また、多孔質中間層(B)が高密度となる。その結果、得られるモザイク荷電複層膜における塩の透過流束を大きくすることができる利点を有する。平均繊維径が0.01μm未満の場合、繊維層の強度が不足するおそれがあり、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。一方、平均繊維径が1μm以上の場合、繊維層表面の平滑度が低くなるおそれがあり、0.8μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。また、多孔質支持層(A)の平均繊維径と多孔質中間層(B)の平均繊維径との比(A/B)は、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。一方、該平均繊維径比(A/B)は、通常、100以下である。

【0073】
本発明において、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)は、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなる。多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなることにより、圧力損失が低く、水の処理速度が高くなる利点を有する。また、モザイク荷電層(C)との親和性が高くなるため、多孔質中間層(B)とモザイク荷電層(C)との接着性が高くなる利点を有する。特に、多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなることにより、上記効果に加えて、多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)の層間における接着性も高くなる利点を有する。

【0074】
また、本発明では、上記親水性繊維がポリビニルアルコール繊維であることが好ましい。すなわち、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が、ポリビニルアルコール繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなることが好ましい。このことにより、圧力損失が低く、水の処理速度が高くなる利点を有する。また、モザイク荷電層(C)との親和性が高くなるため、多孔質中間層(B)とモザイク荷電層(C)との接着性が高くなる利点も有する。

【0075】
本発明において、多孔質支持層(A)が、疎水性重合体を含むことが好ましい。このことにより、得られるモザイク荷電複層膜が水中強度に優れ、塩の透過流束が大きく、かつ電解質選択透過性に優れることとなる。また、多孔質支持層(A)が、疎水性重合体を含むことにより、多孔質支持層(A)の吸水による膨潤や変形を抑制することができるため、寸法安定性が向上するため好ましい。特に、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成し、該多孔質中間層(B)上に溶液や分散液を塗布または印刷してモザイク荷電層(C)を形成する場合に、多孔質支持層(A)の膨潤や変形を抑制することができるため、寸法安定性が向上する。その結果、欠陥のできにくいモザイク荷電層(C)を形成することができる。また、モザイク荷電層(C)の界面に空隙が発生するのを抑制することもできる。また、本発明者らは、多孔質支持層(A)が親水性繊維からなる場合、多孔質支持層(A)の寸法変化による影響で、得られるモザイク荷電複層膜の透気度が大きくなることを確認している。特に、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体のドメインサイズ(Wc)やアニオン性重合体のドメインサイズ(Wa)を小さくしていくと、多孔質支持層(A)の収縮による影響が大きくなることを確認している。

【0076】
多孔質支持層(A)に使用される疎水性重合体としては、水酸基、カルボキシル基などのプロトン性官能基を実質的に有さないものであれば特に限定されず、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。多孔質支持層(A)は、疎水性重合体を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。多孔質支持層(A)に含まれる疎水性重合体以外の成分としては特に限定されず、多孔質中間層(B)との接着性の高い重合体を用いてもよい。例えば、多孔質中間層(B)を形成する重合体がビニルアルコール系樹脂である場合、多孔質支持層(A)にもビニルアルコール系樹脂を含有または繊維表面にコーティングさせることで、多孔質支持層(A)と多孔質中間層(B)との接着性を高めることができる。

【0077】
本発明で用いられるモザイク荷電層(C)の厚みは、特に限定されず、塩の透過流束が大きくなる観点から、0.1~80μmであることが好ましい。モザイク荷電層(C)の厚みが0.1μm未満の場合、モザイク荷電層(C)を形成する際に、膜の欠陥(ピンホール)が発生するおそれがある。また、モザイク荷電層(C)の機械的強度が低下するおそれがある。該厚みは0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。モザイク荷電層(C)の厚みが80μmを超える場合、塩の透過流束が小さくなるおそれがある。該厚みは50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。

【0078】
本発明のモザイク荷電複層膜において、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成されて得られる多層構造体(D)の厚みと、モザイク荷電層(C)の厚みとの比(C/D)は、特に限定されず、0.001~0.2であることが好ましい。該比(C/D)が0.001未満だと、得られるモザイク荷電層(C)に欠陥が生じるおそれがある。該比が0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。該比(C/D)が0.2を超えると、塩の透過流束が小さくなりすぎるおそれがある。該比が0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。

【0079】
本発明のモザイク荷電複層膜において、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体のドメインサイズ(Wc)は特に限定されないが、モザイク荷電複層膜中における正荷電領域と負荷電領域間の距離が小さくなるほど、電解質選択透過性が大きくなる傾向があることから、1000μm以下であることが好ましい。該ドメインサイズは、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。一方、該ドメインサイズは、通常、0.1μm以上である。なお、カチオン性重合体のドメインサイズとは、該ドメインに内接する円の直径の平均値をいい、顕微鏡観察された水平方向のドメインの寸法から算術平均で求めた値である。

【0080】
本発明のモザイク荷電複層膜において、モザイク荷電層(C)を構成するアニオン性重合体のドメインサイズ(Wa)は特に限定されないが、モザイク荷電複層膜中における正荷電領域と負荷電領域間の距離が小さくなり、電解質選択透過性が大きくなる観点から、1000μm以下であることが好ましい。該ドメインサイズは、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。一方、該ドメインサイズは、通常、0.1μm以上である。なお、アニオン性重合体のドメインサイズとは、該ドメインに内接する円の直径の平均値をいい、顕微鏡観察された水平方向のドメインの寸法から算術平均で求めた値である。

【0081】
本発明のモザイク荷電複層膜は、上記説明した多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)がこの順番で配置されるか、または多孔質中間層(B)内にモザイク荷電層(C)が形成されてなるものである。本発明のモザイク荷電複層膜は、多孔質支持層(A)および/または多孔質中間層(B)が、親水性繊維を少なくとも50質量%含む繊維層からなり、モザイク荷電層(C)を構成するカチオン性重合体および/またはアニオン性重合体が、イオン基を有するポリビニルアルコールであるとともに、多孔質中間層(B)の空隙率よりも多孔質支持層(A)の空隙率が大きいことを特徴とする。このことにより、塩の透過流束が大きく、かつ機械的強度に優れたモザイク荷電複層膜を得ることができる。多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)がこの順番で配置する方法としては特に限定されない。多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成されてなる多層構造体(D)を得た後に、多層構造体(D)における多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を形成する方法が好適に採用される。

【0082】
本発明では、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を形成した後に、熱プレス処理を行うことが好ましい。熱プレス処理を施すことによって、多層構造体(D)における多孔質中間層(B)表面の平滑度が向上され、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を均一に形成することができる。その結果、得られるモザイク荷電複層膜における塩の透過流束が大きく、また、電解質選択透過性に優れる利点を有する。ここで、平滑度としては特に限定されず、JAPAN TAPPI紙のパルプ試験法No.5による王研式平滑度試験により得られる平滑度が10秒以上であることが好ましく、50秒以上であることがより好ましく、200秒以上であることが更に好ましい。

【0083】
多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を形成する方法は特に限定されないが、所望のパターンのモザイク荷電層(C)を簡便に形成することができる観点から、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を印刷により形成する方法が好適に採用される。印刷する方法を採用することで、厚みの小さいモザイク荷電層(C)を形成することができるため、透過流束の大きいモザイク荷電複層膜を得ることができる。さらに、カチオン性重合体およびアニオン性重合体の各ドメインサイズを小さくすることができ、電解質選択透過性に優れたモザイク荷電複層膜を得ることができる。上記のパターン形状は、特に限定されず、ストライプ状、市松状、格子状、水玉状などが例示される。印刷は、通常、印刷装置を用いて行われる。

【0084】
本発明に用いられる印刷方法としては、従来公知の印刷方法がいずれも適用できる。具体的な印刷方法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などが例示される。これらの中でも、印刷の簡易性の点から、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法が特に好ましい。

【0085】
本発明のモザイク荷電複層膜は、多孔質中間層(B)の表面にのみモザイク荷電層(C)が形成されていてもよいし、多孔質中間層(B)の表面だけでなく多孔質中間層(B)の内部にモザイク荷電層(C)が形成されていてもよい。本発明者らは、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を印刷により形成する場合、毛細管現象によりモザイク荷電層(C)の一部が多孔質中間層(B)の内部に入り込むため、多孔質中間層(B)の表面だけでなく、多孔質中間層(B)の内部にもモザイク荷電層(C)が形成されることを確認している。

【0086】
また、本発明において、多孔質中間層(B)上にモザイク荷電層(C)を印刷し、毛細管現象によりモザイク荷電層(C)の全部が多孔質中間層(B)の内部に入り込んだ場合には、モザイク荷電層(C)は多孔質中間層(B)上ではなく、多孔質中間層(B)の内部に形成されることとなる。この場合、本発明のモザイク荷電複層膜は、多孔質中間層(B)内にモザイク荷電層(C)が形成されたものとなる。こうして得られるモザイク荷電層複層膜は、モザイク荷電層(C)が多孔質中間層(B)表面に露出していない。

【0087】
本発明のモザイク荷電複層膜の製造方法においては、モザイク荷電層(C)を形成した後に、熱処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことによって、結晶化度が高くなるので、物理的な架橋が増加し、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が増大する。また、非晶部にカチオン基、アニオン基が濃縮され、高密度のイオン交換パスが形成されるため、荷電密度が増加するので、対イオン選択性が向上し、塩の透過流束が向上する。熱処理の方法は特に限定されず、熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールの場合、50~250℃であることが好ましい。熱処理の温度が50℃未満だと、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度が不足するおそれがある。該温度が80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。熱処理の温度が250℃を超えると、ポリビニルアルコールが熱分解するおそれがある。該温度が230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。熱処理の時間は、通常、1分~10時間程度である。熱処理は不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下で行うことが望ましい。

【0088】
本発明のモザイク荷電複層膜の製造方法においては、モザイク荷電層(C)を形成した後に、熱プレス処理を施すことが好ましい。熱プレス処理を施すことによって、印刷により設けられたモザイク荷電層(C)が緻密となり、得られるモザイク荷電層(C)の機械的強度が増大する。熱プレス処理の方法は特に限定されず、カレンダー設備などが一般に用いられる。熱プレス処理の温度は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールの場合、80~250℃であることが好ましい。熱プレス処理の温度が80℃未満だと、得られるモザイク荷電層(C)の機械的強度が不足するおそれがある。該温度が100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。熱プレス処理の温度が250℃を超えると、ポリビニルアルコールが融解するおそれがある。該プレス温度が230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。

【0089】
本発明のモザイク荷電複層膜の製造方法においては、モザイク荷電層(C)を形成した後に、架橋処理を施すことが好ましい。架橋処理を施すことによって、得られるモザイク荷電層の機械的強度が増大する。また、荷電密度が増加するため、対イオン選択性が向上する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、モザイク荷電層(C)を、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザールなどが例示される。該架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001~1体積%である。

【0090】
前記製造方法においては、熱処理と熱プレス処理と架橋処理のすべてを行ってもよいし、そのうちの2つを行ってもよいし、そのいずれかのみを行ってもよい。行う処理の順番は特に限定されない。複数の処理を同時に行ってもよい。熱処理または熱プレス処理を施した後に、架橋処理を施すことが好ましい。熱処理または熱プレス処理を施すことにより架橋されにくい部位が生じ、その後、架橋処理、特に化学架橋処理を行うことで、架橋された部位と架橋されない部位が混在することによって、膜強度が高くなるからである。熱プレス処理、熱処理、架橋処理の順番で行うことが、得られるモザイク荷電複層膜の機械的強度の面から特に好ましい。また、モザイク荷電層(C)が水溶性重合体である場合には、上記熱処理、熱プレス処理、架橋処理等を行うことにより、モザイク荷電複層膜を使用する際にモザイク荷電層(C)が溶出するのを防止することもできる。

【0091】
本発明のモザイク荷電複層膜は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。

【0092】
また、本発明のモザイク荷電複層膜の荷電密度は、特に限定されないが、0.1~20mol・dm-3であることが好ましい。荷電密度が0.1mol・dm-3未満だと、膜の対イオン選択性に劣るおそれがある。荷電密度が0.3mol・dm-3以上であることがより好ましく、0.5mol・dm-3以上であることがさらに好ましい。膜の荷電密度が20mol・dm-3を超えると、膜の膨潤が著しく、寸法安定性が悪く、取り扱いが困難となるおそれがある。膜の荷電密度が10mol・dm-3以下であることがより好ましく、3mol・dm-3以下であることがさらに好ましい。

【0093】
本発明のモザイク荷電複層膜は、種々の用途に用いることができる。本発明のモザイク荷電複層膜は、塩の透過流束が大きく、かつ電解質選択透過性に優れているので、水の精製、食品や医薬原材料の脱塩、かん水や海水の脱塩、淡水化をするのに適している。また、本発明のモザイク荷電複層膜は機械的強度に優れているので、圧透析を行うのに、特に適している。本発明のモザイク荷電複層膜の製造方法によれば、大面積の膜を、容易にかつ低コストで製造することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例中、特に断りのない限り「%」および「部」は質量基準である。実施例および比較例における分析および評価は、下記の方法にしたがって行った。
【実施例】
【0095】
(1)多孔質支持層(A)、多孔質中間層(B)、およびモザイク荷電層(C)の厚み測定
モザイク荷電複層膜を25℃のイオン交換水中に5日以上浸漬させ、膨潤平衡状態としたのち、手術用ナイフで断面を切り出した後、イオン交換水にメチルバイオレットを濃度5×10-5mol/Lで溶解した水溶液に30分間浸漬してカチオン性重合体のドメインの部分を着色して測定試料を作製した。こうして得られた測定試料を乾燥させてから株式会社ニコン製光学顕微鏡「OPTIPHOT-2」で断面観察し、得られたデータを株式会社ニコン製「NIS-Elements.D.2.30」で画像解析することでモザイク荷電層(C)の厚みを算出した。また、同様にして多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)の厚みを算出した。なお、ここで得られた厚みの値は、乾燥時における値である。
【実施例】
【0096】
(2)多孔質支持層(A)、および多孔質中間層(B)の空隙率測定
下記計算式により空隙率を求めた。
空隙率(%)={1-[坪量(g/m)/厚み(μm)]/樹脂密度(g/cm)}×100
ここで、ポリエチレンテレフタレートおよびポリビニルアルコールの密度は1.3(g/cm)、ポリアミド-9Tの密度は1.1(g/cm)として計算した。
【実施例】
【0097】
(3)透気度測定
多孔性支持層(A)、多層構造体(D)に関しては、JIS P8117に従い、ガーレーデンソメーターを用いて100mlの空気の透過時間を測定した。また、モザイク荷電複層膜に関しては、JAPAN TAPPI紙のパルプ試験法No.5による王研式透気度試験に従って測定した。
【実施例】
【0098】
(4)平滑度測定
王研式透気度平滑度試験機No.2040-C(熊谷理機工業(株))を用いて、JAPAN TAPPI紙のパルプ試験法No.5による王研式平滑度試験に従って測定した。
【実施例】
【0099】
(5)繊維層からなる多孔質中間層(B)の平均繊維径測定
多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を、マグネトロンスパッタ装置「MPS-1S」(株式会社真空デバイス製)にてAu蒸着処理した。続いて、多孔質中間層(B)におけるナノファイバー表面を電子顕微鏡「VE-7800」(株式会社キーエンス製)にて観察し、表面観察画像を得た。得られた画像について、三谷商事株式会社製画像処理ソフト「WINROOF」を用いて画像処理を行い、多孔質中間層(B)の平均繊維径を求めた。測定個所は、ランダムに100個所を多孔質中間層(B)から選んで平均繊維径を算出した。
【実施例】
【0100】
(6)収縮率の測定
多層構造体(D)を35cm角に切り出して、MD方向に正確に30cmの2点を刻印した。次いで、25℃のイオン交換水中に10秒間浸漬させた後、熱風乾燥機中で105℃、2時間乾燥した。得られた膜の刻印間の距離を測定し、下記の式により、収縮率を計算した。得られた結果から収縮率を下記の三段階で評価した。
A:収縮率が0.5%未満であった。
B:収縮率が0.5%以上、2%未満であった。
C:収縮率が2%以上であった。
収縮率(%)=(水浸漬前の刻印2点間の距離-水浸漬・乾燥後の刻印2点間の距離)/水浸漬前の刻印2点間の距離×100
【実施例】
【0101】
(7)水中強度試験
モザイク荷電複層膜をMD方向に幅15mmの短冊状に切り出した。次いで、引っ張り試験機AGS-100G(株式会社島津製作所製)を用いて、25℃の水中にて引っ張り速度20mm/分で引っ張り試験を行った。
【実施例】
【0102】
(8)圧透析試験
圧透析試験は図1に示す装置で行った。フォルダに挟んだモザイク荷電複層膜3の測定試料を2つのセルの間に挟み、株式会社堀場製作所製導電率電極「3552-10D」を挿入したセルI6に所定濃度のNaCl水溶液を30mL入れ、セルII7にはセルI6と同濃度のNaCl水溶液を30mL入れた。続いて、両セル内の水溶液を攪拌子4で撹拌させながら、窒素ガスボンベ1からセルII7側に窒素ガスを加え、一定圧力に維持した。その際、導電率計5を用いてセルI6中の導電率を25℃の一定温度下で測定した。試験終了後、直ちにセルI6中のNaCl水溶液の質量を測定した。
【実施例】
【0103】
このようにして測定したセルI6中のNaClの濃度について、時間変化の曲線を求め、この直線の初期勾配の値から、濃度の時間変化率ΔC/Δtを算出した。また、セルI6中のNaCl水溶液の質量を測定し、試験開始時と試験終了後の値の差より、ΔMをもとめ、水のモル数の時間変化率ΔM/(S×Δt)を算出した。
【実施例】
【0104】
NaClの流束Jは、次式により算出した。
=V×ΔC/(S×Δt)×1000
水の流束Jwは、次式により算出した。
=ΔM/(S×Δt)
・J:NaCl成分の流束[mol・m-2・s-1
・V:セルI内のイオン交換水量[m
・S:モザイク荷電複層膜の膜有効面積[m
・ΔC:セルI内のNaCl成分の初期濃度変化[mol/L]
・Δt:透過時間[s]
・ΔM:セルI内のNaCl水溶液の初期モル数変化[mol]
【実施例】
【0105】
求めたNaClの透過流束Jと水の流束Jを用いて、下記式からモザイク荷電複層膜のNaClに対する水の選択透過性αを算出した。
α=J/J
【実施例】
【0106】
(カチオン性重合体P-1の合成)
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lのセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2975g、メタノール525g、およびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを20質量%含有するメタノール溶液83.9gを仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、かかる混合液の内温を60℃まで上げた。該混合液中に2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.8g含有するメタノール20gを添加し、重合反応を開始した。重合開始時点よりメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを20質量%含有するメタノール溶液222gを反応液中に添加しながら、4時間重合反応を行った後、重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における反応液中の固形分濃度、すなわち、反応液全体に対する不揮発分の含有率は21.5質量%であった。ついで、系内にメタノール蒸気を導入することにより、未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル共重合体を55質量%含有するメタノール溶液を得た。
【実施例】
【0107】
このビニルエステル共重合体を55質量%含有するメタノール溶液に、該共重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル共重合体の固形分濃度が30質量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
【実施例】
【0108】
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、ついで、ゲル化物が生成してから1時間が経過した時点で、この粉砕物に酢酸を添加することにより中和を行い、膨潤状態の固形分を得た。該固形分に対して質量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄した後、濾過によって回収した固形分を65℃で16時間乾燥し、ポリ(ビニルアルコール-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)のランダム共重合体であるカチオン性重合体P-1を得た。得られたカチオン性重合体P-1を重水に溶解し、400MHzでのH-NMR測定を行ったところ、該カチオン性重合体中のカチオン性単量体含有量、すなわち、該重合体中の単量体単位の総数に対するメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド単量体単位の数の割合は2モル%であった。また、重合度は2400、けん化度は98.5モル%であった。
【実施例】
【0109】
(アニオン性重合体P-2の合成)
酢酸ビニル、メタノール(MeOH)、アニオン性単量体の種類と初期仕込み量、重合開始剤(AIBN)の使用量、アニオン性単量体の逐次添加量などの重合条件、けん化反応条件を表1に示すように変化させた以外はカチオン性重合体P-1と同様の方法により、アニオン性重合体P-2を得た。得られた重合体の物性を表1に示す。
【実施例】
【0110】
【表1】
JP0005669047B2_000012t.gif
【実施例】
【0111】
(PVA-1およびPVA-2の合成)
特許文献5に記載された方法(末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体およびその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールPVA-1を合成した。得られたPVA-1の重合度は1550、けん化度は98.5モル%であった。また、同様の方法により、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールPVA-2を合成した。得られたPVA-2の重合度は550、けん化度は98.5モル%であった。
【実施例】
【0112】
(カチオン性重合体P-3の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた5Lの四つ口セパラブルフラスコに、水1900g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA-1を344g仕込み、攪拌下95℃まで加熱して該ポリビニルアルコールを溶解した後、室温まで冷却した。該水溶液に1/2規定の硫酸を添加してpHを3.0に調製した。別に、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド179gを水300gに溶解し、これを先に調製した水溶液に攪拌下添加した後、該水溶液中に窒素をバブリングしつつ70℃まで加温し、さらに70℃で30分間窒素のバブリングを続けることで、窒素置換した。窒素置換後、上記水溶液に過硫酸カリウム(KPS)の2.5%水溶液121mLを1.5時間かけて逐次的に添加してブロック共重合を開始させ、進行させた後、系内温度を75℃に1時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、固形分濃度18%のポリビニルアルコール-ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドのブロック共重合体であるカチオン性重合体P-3の水溶液を得た。得られた水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、400MHzでのH-NMR測定を行ったところ、該ブロック共重合体中のカチオン性単量体含有量、すなわち、該重合体中の単量体単位の総数に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単量体単位の数の割合は10モル%であった。
【実施例】
【0113】
(カチオン性重合体P-4、P-5の合成)
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの種類と仕込み量、カチオン性単量体の種類と仕込み量、水の量、重合開始剤(過硫酸カリウム)の量などの重合条件を表2に示すように変えた以外は、カチオン性重合体P-3と同様の方法によってブロック共重合体であるカチオン性重合体P-4、P-5を合成した。得られたカチオン性重合体P-4、P-5の物性を表2に示す。
【実施例】
【0114】
【表2】
JP0005669047B2_000013t.gif
【実施例】
【0115】
(アニオン性重合体P-6、P-7の合成)
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの種類と仕込み量、アニオン性単量体の種類と仕込み量、水の量、重合開始剤(過硫酸カリウム)の量などの重合条件を表3に示すように変化させた以外はカチオン性重合体P-3と同様の方法により、ブロック共重合体であるアニオン性重合体P-6、P-7を得た。得られたアニオン性重合体P-6、P-7の物性を表3に示す。
【実施例】
【0116】
【表3】
JP0005669047B2_000014t.gif
【実施例】
【0117】
(基材-1の作製)
(1)PVA系主体繊維(株式会社クラレ製「VPB102×5」;1.1dtex×5mm)80質量%と、PVA系バインダー繊維(株式会社クラレ製「VPB105-1」;1.1dtex(円相当径10μm)×3mm、水中溶解温度70℃)20質量%とを加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して坪量30.0g/m、厚さ76μmの湿式不織布基材からなる多孔質支持層(A)を得た。
(2)PVA124(株式会社クラレ製;重合度2400、ケン化度98.5モル%)を10質量%となるように水に投入後、90℃で攪拌溶解し、完全溶解したものを常温まで冷却して紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を用い、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット(カトーテック株式会社)にて、上記(1)で得た多孔質支持層(A)上に、ニードル内径:0.9mm、極間距離:8cm、コンベア速度:0.1m/分、印加電圧:20kVの条件で静電紡糸を行って、多孔質支持層(A)上に繊維層からなる多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を得た。得られた多層構造体(D)において、多孔質中間層(B)の坪量は2g/mであり、平均繊維径は300nmであった。また、このとき、多層構造体(D)において、多孔質支持層(A)の厚みは76μmであり、多孔質中間層(B)の厚みは3.7μmであった。得られた基材-1の特性を表4に示す。
【実施例】
【0118】
(基材-2の作製)
多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)の作製は基材-1と同様に行った。多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を熱プレス機で温度80℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行って基材-2を得た。このとき、多層構造体(D)において、多孔質支持層(A)の厚みは65μmであり、多孔質中間層(B)の厚みは3μmであった。得られた基材-2の特性を表4に示す。
【実施例】
【0119】
(基材-3の作製)
多孔質支持層(A)および多孔質中間層(B)の作製は基材-1と同様に行った。多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を熱プレス機で温度140℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行って基材-3を得た。このとき、多層構造体(D)において、多孔質支持層(A)の厚みは58μmであり、多孔質中間層(B)の厚みは2.4μmであった。得られた基材-3の特性を表4に示す。
【実施例】
【0120】
(基材-4の作製)
(1)PVA系主体繊維(株式会社クラレ製「VPB102×5」;1.1dtex×5mm)80質量%と、PVA系バインダー繊維(株式会社クラレ製「VPB105-1」;1.1dtex(円相当径10μm)×3mm、水中溶解温度70℃)20質量%とを加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して坪量30.0g/m、厚さ54μmの湿式不織布基材からなる多孔質支持層(A)を得た。
(2)溶解槽にあらかじめ開繊したパルプ(ウエスタンパルプ、重合度DP=621、ALICELL社製)を入れ、80℃に加熱して1時間放置した。またこれとは別に90℃に加熱したN-メチルモルホリン-N-オキサイド水和物液に溶液安定剤として没食子酸-n-プロピルをパルプに対して0.25質量%および界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを0.25質量%となる割合で添加し、攪拌溶解した溶液を調製した。次いで該溶液を上記溶解槽内の加熱されたパルプに振りかけ、溶解槽の蓋をして窒素置換を行い、30分間放置してパルプを十分に膨潤させ、溶解槽設置の攪拌機で1時間攪拌してパルプを完全に溶解させた。その後溶解槽の温度を100℃に昇温し、攪拌を停止して4時間放置して十分に脱泡を行い、紡糸原液を作成した。得られた紡糸原液を用い、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット(カトーテック株式会社)にて、上記(1)で得た多孔質支持層(A)上に、ニードル内径:0.9mm、極間距離:8cm、コンベア速度:0.1m/分、印加電圧:20kVの条件で静電紡糸を行って、多孔質支持層(A)上に繊維層からなる多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を得た。得られた多層構造体(D)において、多孔質中間層(B)の坪量は2g/mであり、平均繊維径は250nmであった。また、このとき、多層構造体(D)において、多孔質支持層(A)の厚みは54μmであり、多孔質中間層(B)の厚みは2.5μmであった。得られた基材-4の特性を表4に示す。
【実施例】
【0121】
(基材-5、基材-6の作製)
基材-5および基材-6の作製において、多孔質支持層(A)の作製は基材-1と同様に行った。また、基材-6における多孔質支持層(A)の熱プレス処理は、表4に示す条件で行い、多孔質中間層(B)を形成しなかった。このとき、基材-5における多孔質支持層(A)の厚みは76μmであり、基材-6における多孔質支持層(A)の厚みは13μmであった。得られた基材-5および基材-6の特性を表4に示す。
【実施例】
【0122】
【表4】
JP0005669047B2_000015t.gif
【実施例】
【0123】
(基材-7の作製)
(1)ポリエチレンテレフタレート繊維(商品名:EP053×5(EM)、クラレ製(0.84dtex×5mm))60質量%と、ポリエチレンテレフタレート複合バインダー繊維(商品名:EP101×5(EM)、クラレ製(1.1dtex(円相当径10μm)×5mm))40質量%とを加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して坪量30g/m、厚さ65μmの湿式不織布基材からなる多孔質支持層(A)を得た。
(2)PVA124(株式会社クラレ製;重合度2400、ケン化度98.5モル%)を10質量%となるように水に投入後、90℃で攪拌溶解し、完全溶解したものを常温まで冷却して紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を用い、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット(カトーテック株式会社)にて、上記(1)で得た多孔質支持層(A)上に、ニードル内径:0.9mm、極間距離:8cm、コンベア速度:0.1m/分、印加電圧:20kVの条件で静電紡糸を行って、多孔質支持層(A)上に繊維層からなる多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を得た。得られた多層構造体(D)において、多孔質中間層(B)の坪量は3g/mであり、平均繊維径は300nmであった。得られた多層構造体(D)を熱プレス機で温度100℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行った。得られた基材-7の特性を表5に示す。
【実施例】
【0124】
(基材-8の作製)
(1)多孔質支持層(A)の作製は基材-7と同様に行った。次いで、アンカーコート剤AD335AE(東洋モートン製)100質量部に対して触媒CAT-10(東洋モートン製)を10質量部配合したトルエン/メチルエチルケトン等量混合溶液を濃度10wt%に調製した。この溶液を、ワイヤーバーにて多孔質支持層(A)の表面に塗布し、熱風乾燥機中で80℃、1分間乾燥した。接着剤層の塗布量は0.3g/mであった。
(2)PVA124(株式会社クラレ製;重合度2400、ケン化度98.5モル%)を10質量%となるように水に投入後、90℃で攪拌溶解し、完全溶解したものを常温まで冷却して紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を用い、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット(カトーテック株式会社)にて、上記(1)で得た多孔質支持層(A)上に、ニードル内径:0.9mm、極間距離:8cm、コンベア速度:0.1m/分、印加電圧:20kVの条件で静電紡糸を行って、多孔質支持層(A)上に繊維層からなる多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を得た。得られた多層構造体(D)において、多孔質中間層(B)の坪量は3g/mであり、平均繊維径は300nmであった。得られた多層構造体(D)を熱プレス機で温度100℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行った。得られた基材-8の特性を表5に示す。
【実施例】
【0125】
(基材-9の作製)
接着剤層を有する多孔質支持層(A)、および多孔質中間層(B)の作製は基材-8と同様に行った。得られた多層構造体(D)を熱プレス機で温度200℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行った。得られた基材-9の特性を表5に示す。
【実施例】
【0126】
(基材-10の作製)
(1)ポリアミド-9T繊維(商品名:A590、クラレ製(0.8dtex×5mm))70質量%と、ポリエチレンテレフタレート複合バインダー繊維(EP101×5(EM)、クラレ製(1.1dtex(円相当径10μm)×5mm))30質量%とを加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して坪量30g/m、厚さ70μmの湿式不織布基材からなる多孔質支持層(A)を得た。
(2)エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン変性量32モル%)を10質量%となるようにジメチルスルホキシドに投入後、90℃で攪拌溶解し、完全溶解したものを常温まで冷却して紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を用い、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット(カトーテック株式会社)にて、上記(1)で得た多孔質支持層(A)上に、ニードル内径:0.9mm、極間距離:8cm、コンベア速度:0.1m/分、印加電圧:20kVの条件で静電紡糸を行って、多孔質支持層(A)上に繊維層からなる多孔質中間層(B)が形成された多層構造体(D)を得た。得られた多層構造体(D)において、多孔質中間層(B)の坪量は3g/mであり、平均繊維径は250nmであった。得られた多層構造体(D)を熱プレス機で温度180℃、圧力10kgf/cmの条件で、1分間熱プレスを行った。得られた基材-10の特性を表5に示す。
【実施例】
【0127】
【表5】
JP0005669047B2_000016t.gif
【実施例】
【0128】
実施例1
(モザイク荷電複層膜の作製)
200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、カチオン性重合体P-1を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-1を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度17%のカチオン性重合体水溶液を調製した。粘度は8.7万mPa・s(20℃)であった。また、200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、アニオン性重合体P-2を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-2を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度17%のアニオン性重合体水溶液を調製した。粘度は8.5万mPa・s(20℃)であった。まず、カチオン性重合体P-1水溶液をスクリーン印刷装置LS-34TV(ニューロング精密工業株式会社製)を用いて、基材-1上に図2に示すストライプ状印刷物のWc部分の印刷を行い、得られた印刷物を熱風乾燥機中で50℃、10分間乾燥した。その後、同様にしてアニオン性重合体P-2水溶液を、スクリーン印刷装置を用いて図2に示すWa部分の印刷を行い、得られた印刷物を熱風乾燥機中で50℃、10分間乾燥した。こうして得られたモザイク荷電複層膜3におけるモザイク荷電層(C)10の厚みを、形状測定レーザー顕微鏡VK-970(株式会社キーエンス)で測定した結果、4.5μmであった。このとき、多孔質支持層(A)8の厚みは76μmであり、多孔質中間層(B)9の厚みは3.7μmであった。さらに、得られたモザイク荷電複層膜3の透気度は10万秒以上∞以下の値であった。ここで、透気度の測定において、∞以下とは測定限界以下を示す。
【実施例】
【0129】
こうして得られたモザイク荷電複層膜を170℃で30分間熱風乾燥機を用いて熱処理し、物理的な架橋を生じさせた。ついで、該膜を2mol/Lの硫酸ナトリウムの電解質水溶液に24時間浸漬させた。該水溶液にそのpHが1になるように濃硫酸を加えた後、0.05体積%グルタルアルデヒド水溶液に該膜を浸漬し、25℃で24時間スターラーを用いて撹拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、該膜を脱イオン水に浸漬し、途中数回脱イオン水を交換しながら、該膜が膨潤平衡に達するまで浸漬させた。以上の製造方法について表6に示す。
【実施例】
【0130】
(モザイク荷電複層膜の評価)
このようにして作製したモザイク荷電複層膜を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、圧透析試験を行った。得られた結果を表7に示す。
【実施例】
【0131】
実施例2~5、8
実施例1において、用いるカチオン性重合体およびアニオン性重合体の種類、調製するカチオン性重合体水溶液およびアニオン性重合体水溶液の濃度、基材種類、熱処理の温度を表6に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。
【実施例】
【0132】
実施例6
実施例4において、カチオン性重合体P-3を用いる代わりに、カチオン性重合体P-5の濃度5%のカチオン性重合体水溶液を調製し、アニオン性重合体P-6を用いる代わりに、アニオン性重合体P-6の濃度5%のアニオン性重合体水溶液を調製し、スクリーン印刷装置の代わりに、インクジェット印刷装置を用いた以外は、実施例4と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。ここで、インクジェット印刷装置としては、マイクロジェット社製インクジェット印刷装置「NanoPrinter1100D」を用いた。カチオン性重合体水溶液の粘度は12mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は12mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0133】
実施例7
実施例4において、調製するカチオン性重合体水溶液およびアニオン性重合体水溶液の濃度を表6に示すように変えて、スクリーン印刷装置の代わりに、ディスペンサー式印刷装置を用いた以外は、実施例4と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。ここで、ディスペンサー式印刷装置としては、武蔵エンジニアリング株式会社製ディスペンサー式印刷装置「SHOTMASTER500」を用いた。カチオン性重合体P-3の濃度15%水溶液の粘度は3000mPa・s(20℃)、アニオン性重合体P-6の濃度15%水溶液の粘度は3000mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0134】
比較例1~3
実施例2において、スクリーン印刷に使用する基材を表6に示す基材に変更した以外は、実施例2と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に示す。得られた結果を表7にそれぞれ示す。ここで、比較例1と3では、圧透析試験時に加圧側から試験液が低圧側に漏洩し、膜特性の評価ができなかった。
【実施例】
【0135】
【表6】
JP0005669047B2_000017t.gif
【実施例】
【0136】
【表7】
JP0005669047B2_000018t.gif
【実施例】
【0137】
表4の結果から、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を設けることで、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成されて得られる多層構造体(D)の透気度が低く抑えられたまま、平滑度が向上することが分かる(基材-1~基材-4)。特に、熱プレス処理を行うことで、より高い平滑度が達成できることが分かる(基材-2~基材-4)。一方、多孔質中間層(B)を設けない場合は、透気度が低く、平滑度も低くなる(基材-5)。また、多孔質中間層(B)を設けない場合でも、熱プレス処理を行うことにより平滑度が高くなるが、同時に透気度が高くなる(基材-6)。
【実施例】
【0138】
表6および表7の結果から、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を設け、さらにカチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物を該多孔質中間層(B)上に印刷するとともに、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物とを該多孔質中間層(B)上に印刷することによって、得られるモザイク荷電複層膜における塩の透過流束が大きく、また電解質選択透過性に優れることがわかる(実施例1~8)。特に、多孔質中間層(B)を設けた後に熱プレス処理を行った基材を用い、高粘度のインクを用いてモザイク荷電層(C)を印刷した場合は、印刷層のミクロボイド等の欠点が少ない複層膜となり、より高圧力での圧透析試験が可能となる。さらには、塩の透過流束が大きくなり、かつ電解質選択透過性に優れることがわかる(実施例4~5、7~8)。
【実施例】
【0139】
一方、多孔質支持層(A)に多孔質中間層(B)を設けない場合は、多孔質支持層(A)におけるピンホール部分でのモザイク荷電層(C)の破損により試験液の漏洩が発生し、圧透析試験ができなかった(比較例1)。また、多孔質中間層(B)を設けず、熱プレス処理により平滑度を高めた基材を用いて、NaCl濃度10000ppm、圧力1.5MPaの条件で圧透析試験を行った場合には、塩の透過流束が著しく小さかった(比較例2)。さらに、NaCl濃度35000ppm、圧力3.5MPaの条件で圧透析試験をすると、モザイク荷電層(C)の破損による試験液の漏洩が発生し、圧透析試験ができなかった(比較例3)。
【実施例】
【0140】
実施例9
(モザイク荷電複層膜の作製)
200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、カチオン性重合体P-1を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-1を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度17%のカチオン性重合体水溶液を調整した。粘度は8.7万mPa・s(20℃)であった。また、200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、アニオン性重合体P-2を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-2を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度17%のアニオン性重合体水溶液を調整した。粘度は8.5万mPa・s(20℃)であった。まず、カチオン性重合体P-1水溶液をスクリーン印刷装置LS-34TV(ニューロング精密工業株式会社製)を用いて、基材-7上に図2に示すストライプ状印刷物のWc部分の印刷を行った(印刷面積10cm×10cm)。得られた印刷物を熱風乾燥機中で50℃、10分間乾燥した。その後、同様にしてアニオン性重合体P-2水溶液を、スクリーン印刷装置を用いて図2に示すWa部分の印刷を行い、得られた印刷物を熱風乾燥機中で50℃、10分間乾燥した。こうして得られたモザイク荷電複層膜におけるモザイク荷電層(C)の厚みを形状測定レーザー顕微鏡VK-970(株式会社キーエンス)で測定した結果、6μmであった。このとき、多孔質支持層(A)の厚みは65μm、多孔質中間層(B)の厚みは3μmであった。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって透気度測定試験を行った。得られた結果を表9に示す。
【実施例】
【0141】
こうして得られたモザイク荷電複層膜を170℃で30分間熱風乾燥機を用いて熱処理し、物理的な架橋を生じさせた。ついで、該膜を2mol/Lの硫酸ナトリウムの電解質水溶液に24時間浸漬させた。該水溶液にそのpHが1になるように濃硫酸を加えた後、0.1体積%グルタルアルデヒド水溶液に該膜を浸漬し、25℃で24時間スターラーを用いて撹拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、該膜を脱イオン水に浸漬し、途中数回脱イオン水を交換しながら、該膜が膨潤平衡に達するまで浸漬させた。以上の製造方法について表8に示す。
【実施例】
【0142】
(モザイク荷電複層膜の評価)
このようにして作製したモザイク荷電複層膜を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、水中強度試験、圧透析試験を行った。得られた結果を表9に示す。
【実施例】
【0143】
実施例10~14
実施例9において、用いるカチオン性重合体およびアニオン性重合体の種類、調製するカチオン性重合体水溶液およびアニオン性重合体水溶液の濃度、基材種類、ドメインサイズを表8に示すように変えた以外は実施例9と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表8に、得られた結果を表9にそれぞれ示す。
【実施例】
【0144】
実施例15
実施例9において、カチオン性重合体P-1を用いる代わりに、カチオン性重合体P-5の濃度5%のカチオン性重合体水溶液を調製し、アニオン性重合体P-2を用いる代わりに、アニオン性重合体P-7の濃度5%のアニオン性重合体水溶液を調製し、スクリーン印刷装置の代わりに、インクジェット印刷装置を用いた以外は、実施例9と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表8に、得られた結果を表9にそれぞれ示す。ここで、インクジェット印刷装置としては、マイクロジェット社製インクジェット印刷装置「NanoPrinter1100D」を用いた。カチオン性重合体水溶液の粘度は12mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は12mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0145】
実施例16
実施例9において、カチオン性重合体P-1を用いる代わりに、カチオン性重合体P-3の濃度15%のカチオン性重合体水溶液を調製し、アニオン性重合体P-2を用いる代わりに、アニオン性重合体P-6の濃度15%のアニオン性重合体水溶液を調製し、スクリーン印刷装置の代わりに、ディスペンサー式印刷装置を用いた以外は、実施例9と同様にしてモザイク荷電複層膜を作製し、評価を行った。製造方法を表8に、得られた結果を表9にそれぞれ示す。ここで、ディスペンサー式印刷装置としては、武蔵エンジニアリング株式会社製ディスペンサー式印刷装置「SHOTMASTER500」を用いた。カチオン性重合体P-3の濃度15%水溶液の粘度は3000mPa・s(20℃)、アニオン性重合体P-6の濃度15%水溶液の粘度は3000mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0146】
【表8】
JP0005669047B2_000019t.gif
【実施例】
【0147】
【表9】
JP0005669047B2_000020t.gif
【実施例】
【0148】
表5の基材-7~基材-10の結果から、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を設けることで、多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)が形成されて得られる多層構造体(D)の透気度が低く抑えられたまま、平滑度が向上することが分かる。特に、熱プレス処理を行うことで、より高い平滑度が達成できることが分かる(基材-7~基材-10)。また、多孔質支持層(A)が疎水性繊維からなることにより、水浸漬して乾燥した後の収縮率が小さくなり寸法安定性が向上することが分かる(基材-7~基材-10)。
【実施例】
【0149】
表8および表9の結果から、疎水性繊維からなる多孔質支持層(A)上に多孔質中間層(B)を設け、さらにカチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物を該多孔質中間層(B)上に印刷するとともに、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物とを該多孔質中間層(B)上に印刷することによって得られるモザイク荷電複層膜は、水中強度に優れ、塩の透過流束が大きく、かつ電解質選択透過性に優れることが分かる(実施例9~16)。特に、ドメインサイズが小さい場合、塩の透過流束がより大きくなり、かつ電解質選択透過性に優れることがわかる(実施例13~14)。また、ドメインサイズが100μm未満の場合でも50万秒以上の透気度が得られることがわかる(実施例9~16)。特に、多孔質中間層(B)を設けた基材を用い、高粘度のインクを用いてモザイク荷電層(C)を印刷した場合は、印刷層のミクロボイド等の欠点が少ない複層膜となり、高い透気度が得られることが分かる(実施例9~14、16)。
【符号の説明】
【0150】
1 窒素ガスボンベ
2 圧力計
3 モザイク荷電複層膜
4 攪拌子
5 導電率計
6 セルI
7 セルII
8 多孔質支持層(A)
9 多孔質中間層(B)
10 モザイク荷電層(C)
Wc カチオン性重合体のドメインサイズ
Wa アニオン性重合体のドメインサイズ
図面
【図1】
0
【図2】
1