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明細書 :イオン交換膜およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5531267号 (P5531267)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年6月25日(2014.6.25)
発明の名称または考案の名称 イオン交換膜およびその製造方法
国際特許分類 B01J  47/12        (2006.01)
B01D  69/02        (2006.01)
B01D  69/00        (2006.01)
B01D  69/10        (2006.01)
B01D  71/38        (2006.01)
B01D  71/82        (2006.01)
B01J  39/20        (2006.01)
B01J  41/14        (2006.01)
C08J   5/22        (2006.01)
FI B01J 47/12 B
B01D 69/02
B01D 69/00
B01D 69/10
B01D 71/38
B01D 71/82 500
B01J 39/20 Z
B01J 41/14 D
C08J 5/22 CEX
請求項の数または発明の数 17
全頁数 42
出願番号 特願2011-509294 (P2011-509294)
出願日 平成22年4月13日(2010.4.13)
国際出願番号 PCT/JP2010/056566
国際公開番号 WO2010/119858
国際公開日 平成22年10月21日(2010.10.21)
優先権出願番号 2009097076
2009097077
優先日 平成21年4月13日(2009.4.13)
平成21年4月13日(2009.4.13)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成25年3月13日(2013.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
発明者または考案者 【氏名】比嘉 充
【氏名】直原 敦
【氏名】小林 謙一
【氏名】藤原 直樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
審査官 【審査官】富永 正史
参考文献・文献 特開平10-087855(JP,A)
特開平11-239720(JP,A)
国際公開第2004/011535(WO,A1)
特開2001-049009(JP,A)
特開昭59-203613(JP,A)
特開昭61-146301(JP,A)
特開平01-254227(JP,A)
特開平08-155281(JP,A)
特開2001-259386(JP,A)
特開2006-320205(JP,A)
特開2006-297338(JP,A)
調査した分野 B01D 61/00-71/82
B01J 47/12
B01J 39/20
B01J 41/14
C08J 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜であって、
前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
該イオン交換層が印刷によって支持層上に形成されていることを特徴とするイオン交換膜。
【請求項2】
前記イオン交換層が、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層である、請求項1記載のイオン交換膜。
【請求項3】
前記カチオン性重合体のドメインおよび前記アニオン性重合体のドメインに内接する円の直径の平均値で定義される、カチオン性重合体のドメインサイズおよびアニオン性重合体のドメインサイズが、それぞれ300μm以下である、請求項2記載のイオン交換膜。
【請求項4】
前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1~3のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項5】
前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1~3のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項6】
前記カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量が0.1モル%以上である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項7】
前記アニオン性重合体のアニオン性単量体含有量が0.1モル%以上である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項8】
前記イオン交換層が架橋処理の施されたものである、請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項9】
前記支持層が多孔質である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項10】
前記支持層がポリビニルアルコール繊維集合体からなる請求項記載のイオン交換膜。
【請求項11】
前記イオン交換層の厚み(A)と前記支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.2以下である請求項1~10のいずれか記載のイオン交換膜。
【請求項12】
カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜の製造方法であって、
前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
該イオン交換層を印刷によって該支持層上に形成することを特徴とするイオン交換膜の製造方法。
【請求項13】
前記イオン交換層が、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層である、請求項12記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項14】
前記イオン交換層を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法またはディスペンサー印刷法によって前記支持層上に形成する請求項12または13記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項15】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に架橋処理を施す請求項12~14のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項16】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱処理を施す請求項12~15のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項17】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱プレス処理を施す請求項12~16のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は海水の濃縮、飲料水用の地下鹹水の脱塩や硝酸性窒素の除去、食品製造工程における塩分除去や医薬品の有効成分の濃縮など、現在、多種多様な用途に、電気透析法、拡散透析法などで使用されている。これらに使用される有用なイオン交換膜は、主にスチレン-ジビニルベンゼン系の均質イオン交換膜であり、一価と二価のイオン選択、特定イオンの選択性アップ、低抵抗化など種々の技術が開発され、工業上有用な分離ができるまでに至っている。
【0003】
一般に、上記の食品、医薬品、農薬などの分野における有機物の合成工程では、塩類などを副生する場合が多い。かかる有機物に含まれる塩類を分離するために、イオン交換膜電気透析法によって被処理液を脱塩する場合、被処理液中の有機汚染物質、特に荷電を有する巨大分子(以下、巨大有機イオンという。)がイオン交換膜に付着して膜の性能を低下させる、いわゆる、膜の有機汚染という問題が生じる。
【0004】
従来、有機汚染を抑制するイオン交換膜として、膜内への巨大有機イオンの侵入を膜表層部で阻止するようにしたイオン交換膜と、巨大有機イオンが容易に膜透過するようにしたイオン交換膜が提案されている。巨大有機イオンの膜透過を容易にする方法は、膜構造をルーズにすることによって容易に達成される。
【0005】
上記、巨大有機イオンの膜内への侵入を防止するようにしたイオン交換膜は、膜表面に中性、両性あるいはイオン性基とは反対荷電の薄層を形成したものである。このイオン交換膜は、膜構造が緻密なもの程、また、巨大有機イオンの分子量が大きい程、その効果は顕著である。上記イオン交換膜の代表的なものとして、陰イオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に反対荷電のスルホン酸基を導入し有機陰イオンの膜内への侵入を抑制した陰イオン交換膜(特許文献1)等がある。
【0006】
特許文献1には、イオン性基の導入に適した官能基を有する膜状高分子体をスルホン化して、該官能基の一部にスルホン酸基を導入し、ついで残余の官能基に陰イオン交換性基を導入して該膜状高分子体を陰イオン交換膜となし、この際全イオン性基に対するスルホン酸基の当量数が0.05~20%であり、かつ得られる陰イオン交換膜の直流電流抵抗対交流電気抵抗の比の値が抵抗比限界値以下となるように、スルホン化の反応条件を選ぶことを特徴とする陰イオン交換膜の製造方法が記載されている。この方法により得られた陰イオン交換膜は、有機汚染されにくく、しかも良好な電流効率と低い電気抵抗を維持できるとされている。また、簡単な手段で有機物に対する耐汚染性の陰イオン交換膜を得ることができるとされている。しかしながら、樹脂膜の表層部に設ける反対荷電層によりイオン交換膜の電気抵抗(膜抵抗)が著しく増大するという欠点を有している。
【0007】
特許文献2には、イオン性基を有する樹脂からなるイオン交換膜の表層部に当該イオン性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖が結合していることを特徴とするイオン交換膜が記載されている。このようなイオン交換膜とすることによって、膜抵抗の上昇を起こすことなく、優れた耐有機汚染性を付与することができ、また、巨大有機物を含有する系の電気透析においても優れた性能を長時間持続することができるとされている。しかしながら、より高い耐有機汚染性と、より小さい膜抵抗を有するイオン交換膜が望まれている。
【0008】
特許文献3には、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物が膜表面および/または膜内部に固定化されてなることを特徴とするイオン交換膜が記載されている。イオン交換膜の表面や内部にポリエーテル化合物が存在することにより、巨大有機イオン等が直接イオン性基と接しにくくなるため、巨大有機イオン等のイオン交換膜への吸着が抑制され、その結果、耐有機汚染性が向上すると考えられている。また、ポリエーテル化合物は、アルキレングリコール鎖に由来する親水性から、イオン交換膜の電気抵抗の上昇を極力抑えることができるとされている。しかしながら、より高い耐有機汚染性と、より小さい膜抵抗を有するイオン交換膜が望まれている。
【0009】
特許文献4には、微多孔膜の空隙内にイオン交換樹脂が充填されてなり、該微多孔膜の少なくとも片面に存在する微細孔において、上記イオン交換樹脂が微多孔膜表面より陥没した位置で露出したことを特徴とするイオン交換膜が記載されている。また、特許文献5には、微細な細孔が貫通している微多孔性膜の該細孔内にイオン交換樹脂が充填されて成るイオン交換膜であって、膜表面において、微細孔の細孔径が5μm以下であり、かつ、微細孔の占める面積が全面積の3~60%であるとともに、15~120μmの厚みを有していることを特徴とする電気透析用イオン交換膜が記載されている。これらのイオン交換膜とすることにより、膜抵抗やイオン選択性などの基礎特性を低下させることなく、優れた耐有機汚染性を発揮することができるとされている。しかしながら、これらのような膜の製造は、高度な技術かつ煩雑な製造工程が必要であるという問題を有している。
【0010】
また、モザイク荷電膜は、カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互にかつ並列に配列し、各ドメインが膜の両面まで貫通したイオン交換膜である。この独特な荷電構造は、外部からの電流を必要とすることなく対象溶液中の低分子量イオンの透過を促進することができる。正荷電領域と負荷電領域がモザイク状に並べられると、それぞれの領域の電位の方向が互いに逆であるため、膜の両側の塩溶液部分が抵抗となる電気回路ができる。その回路に流れる電流のようにカチオンとアニオンがそれぞれ負荷電領域、正荷電領域を通って輸送されることで循環電流が生じ、塩の輸送が促進される。このことはモザイク荷電膜が、外部からの電流が必要な、一種類の固定電荷を有するイオン交換膜と異なり、イオン輸送を引き起こす機構を膜自体に内在させていることを意味する。
【0011】
モザイク荷電膜として種々の手法により作製したものが報告されている。特許文献6には、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用して作製したモザイク荷電膜を用いる有機化合物の脱塩方法が記載されている。しかしながら、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用してモザイク荷電膜を作製する方法は、ブロック共重合体の特定部位を変性させるなど非常に煩雑な操作かつ高度な技術が必要であり、しかも高コストになることから、モザイク荷電膜を容易に大面積化し、かつ安価に製造することは困難であるという問題がある。
【0012】
特許文献7には、膜形成ポリマー、該膜形成ポリマーを溶解し得る溶媒、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を混合し、ポリマー溶液に陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を分散させて均一なポリマー分散液を調製する工程;および前記ポリマー分散液を基材上に塗布および延伸し、乾燥して凝固させた後、得られた膜から溶媒を除去し、洗浄する工程を行うことを特徴とする、モザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法により得られたモザイク荷電膜は、圧透析実験において圧力上昇とともに塩透過量も増加した。しかし、このモザイク荷電膜では膜マトリックスとイオン交換樹脂が化学的に結合されていないため、その界面において水や中性溶質の漏れが生じるため、高い塩選択透過性を達成することは困難である。
【0013】
特許文献8には、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーのいずれか一方のイオン性ポリマーが形成する架橋連続相中に、連続相形成ポリマーと少なくとも反対イオン性のポリマーが平均粒子径0.01~10μmの架橋粒子として分散してなるカチオン性ポリマードメインとアニオン性ポリマードメインからなるモザイク荷電膜を製造する方法において、前記膜の連続相を形成するいずれか一方のイオン性ポリマーの溶液に少なくとも連続相形成ポリマーと反対イオン性のポリマーの球状微粒子を分散させた分散液を用いて膜を形成し、該膜中の少なくとも連続相を架橋させ、次いで水または水溶液浸漬処理することを特徴とするモザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法で製造される膜は、ドメインサイズや膜厚の調整が容易であり、また最大の利点は比較的容易に大面積の膜の作製が可能である点である。しかし、この製造方法では、平均粒子径が小さい重合体微粒子を調製しなければならず、高度な技術および長時間を要するといった問題がある。しかも得られるモザイク荷電膜は、含水性の高いミクロゲルで構成されているため、耐圧性が非常に低く、特に構造上、膜マトリックスと陽、陰ミクロゲル界面との接着性が完全ではないため、高い電解質透過性を有するモザイク荷電膜の作製が困難であり、また機械的強度も十分とは言えない。そのため、拡散透析用の膜としては使用可能であるものの、圧透析用の膜としては使用に耐えないか、もしくは耐久性に極めて劣るといった欠点を有する。
【0014】
非特許文献1には、積層法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該積層法では、ポリビニルアルコールとポリアニオンから陽イオン交換膜を、ポリビニルアルコールとポリカチオンから陰イオン交換膜を作製し、これらをポリビニルアルコールを接着剤として交互に貼り合わせることにより積層荷電ブロックを作製し、得られたブロックを積層面と垂直にラボカッターで切断した後、架橋処理を行うことによって、約150μmの膜厚を有する積層モザイク荷電膜を作製している。このようにして得られた積層モザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは3.0×10-9mol・cm-2・s-1、電解質選択透過性αは2300と非常に高い塩選択透過性を示すことが記載されている。引張強度は荷電層と平行な方向で5.7MPaであったが、垂直方向で2.7MPaであり、拡散透析用には使用可能であるが、圧透析用に使用するには、より強度を高める必要がある。また、塩の透過流束も小さく、透析性能が不十分である。
【0015】
非特許文献2には、ポリビニルアルコールを膜マトリックスとするポリマーブレンド法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該ポリマーブレンド法では、ポリビニルアルコールとイタコン酸基を含有するビニル化合物を2mol%共重合組成として含有する変性PVAポリアニオンの水溶液に、イタコン酸基のカルボキシル基からの水素イオンの解離を抑制するために塩酸を加えて酸性にした溶液と、ポリビニルアルコールとポリアリルアミン塩酸塩水溶液とを混合することでポリマーブレンド水溶液を調製した。この溶液をガラス板などにキャストして膜を得た後、化学的架橋を行うことによってモザイク荷電膜を得ている。このようにして得られたモザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは1.7×10-8mol・cm-2・s-1であり、電解質選択透過性αは48であり、比較的高い値を示すことが記載されているけれども、より高い電解質選択透過性αが望まれている。また、酸性溶液では塩選択透過性が低下するという問題も有している。
【先行技術文献】
【0016】

【特許文献1】特開昭48-57893号公報
【特許文献2】特開2004-224862号公報
【特許文献3】特開2003-82130号公報
【特許文献4】特開2001-157823号公報
【特許文献5】特開2007-14958号公報
【特許文献6】特開昭59-203613号公報
【特許文献7】特開2006-297338号公報
【特許文献8】特開平8-155281号公報
【0017】

【非特許文献1】J.Membr.Sci.,Vol.310,p.466(2008).
【非特許文献2】繊維学会予稿集,Vol.56,No.1, p.33(2001).
【非特許文献3】J.Membr.Sci.,Vol.65, p.129(1992).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐有機汚染性に優れ、かつ膜抵抗が小さく、長期間にわたって効率よく、安定に電気透析を行うことができるイオン交換膜を提供することを目的とするものである。また、そのようなイオン交換膜を簡便に製造することができるイオン交換膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0019】
また、本発明は、イオン交換膜をカチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電膜とした時に、塩の透過流束が大きく、かつ電解質選択透過性および機械的強度に優れたイオン交換膜を提供することを目的とするものである。また、大面積のモザイク荷電膜を、容易にかつ低コストで製造できるイオン交換膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜であって、前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、該イオン交換層が印刷によって支持層上に形成されていることを特徴とするイオン交換膜を提供することによって解決される。ここで、前記イオン交換層は、カチオン性重合体またはアニオン性重合体のいずれかからなる層であってもよいし、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層であってもよい。前記イオン交換層がモザイク荷電層である場合には、前記カチオン性重合体のドメインおよび前記アニオン性重合体のドメインに内接する円の直径の平均値で定義される、カチオン性重合体のドメインサイズおよびアニオン性重合体のドメインサイズが、それぞれ300μm以下であることが好ましい。
【0021】
前記カチオン性重合体および/または前記アニオン性重合体は、極性重合体であることが好ましい。その際、極性重合体は、極性官能基を10meq/g以上含有することが好ましい。極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスホネート基、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基が挙げられ、これら極性官能基は複数種をあわせて用いることもできる。このとき、前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが、好ましい実施形態である。また、前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが、好ましい実施形態である。また、前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましい。更に、前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましい。前記カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量が0.1モル%以上であることが好ましく、前記アニオン性重合体のアニオン性単量体含有量が0.1モル%以上であることが好ましい。また、前記イオン交換層が架橋処理の施されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明のイオン交換膜において、前記支持層が多孔質であることが好ましい。前記支持層はポリビニルアルコール繊維集合体からなることがより好ましい。また、前記イオン交換層の厚み(A)と前記支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.2以下であることが好ましい。
【0023】
また、上記課題は、カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜の製造方法であって、前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、該イオン交換層を印刷によって該支持層上に形成することを特徴とするイオン交換膜の製造方法を提供することによっても解決される。ここで、前記イオン交換層が前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層であってもよい。
【0024】
本発明の製造方法において、前記イオン交換膜を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法またはディスペンサー印刷法によって前記支持層上に形成することが好ましい。前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に架橋処理を施すことも好ましい。前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱処理を施すことも好ましい。前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱プレス処理を施すことも好ましい。その場合、前記熱処理または熱プレス処理を施した後に、架橋処理を施すことが、より好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のイオン交換膜は、耐有機汚染性に優れ、かつ膜抵抗が小さく、長期間にわたって効率よく、安定に電気透析を行うことができる。また、支持層を有することによって、面方向の寸法安定性が高くなる。本発明のイオン交換膜は、拡散透析にも用いることができる。本発明のイオン交換膜の製造方法によれば、そのようなイオン交換膜を簡便な方法で、低コストで製造することができる。
【0026】
また、本発明のイオン交換膜は、イオン交換層が、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層であるモザイク荷電膜として利用できる。このようなモザイク荷電膜は、塩の透過流束が大きく、かつ優れた電解質選択透過性を示す。これにより、電解質と非電解質の分離や、電解質の除去(脱塩)などを効率よく行うことができる。また本発明におけるモザイク荷電膜は機械的強度に優れており、拡散透析だけでなく、圧透析にも用いることができる。さらに支持層によって、面方向の寸法安定性も高くなる。本発明のイオン交換膜の製造方法によれば、大面積のモザイク荷電膜を、容易にかつ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】動的輸率試験装置の模式図である。
【図2】膜抵抗試験装置の模式図である。
【図3】拡散透析試験装置の模式図である。
【図4】支持層上にストライプ状に印刷されて形成された、本発明におけるイオン交換層としてのモザイク荷電層の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のイオン交換膜は、カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するものである。このようなイオン交換層と支持層とを有することによって、膜抵抗が小さく、かつ機械的強度に優れたイオン交換膜が得られる。本発明においては、該イオン交換層が印刷によって支持層上に形成されていることが重要である。それによって、支持層上に厚みの薄いイオン交換層を均一に形成することができ、膜抵抗の小さなイオン交換膜を得ることができる。

【0029】
本発明で用いられるイオン交換層は、カチオン性重合体またはアニオン性重合体から選択されるイオン性重合体からなる層であってもよい。即ち、本発明におけるイオン交換層は、カチオン性重合体からなるアニオン交換層であってもよいし、アニオン性重合体からなるカチオン交換層であってもよい。

【0030】
また、本発明におけるイオン交換層は、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層とすることもできる。このようなモザイク荷電層をイオン交換層として支持層上に形成することによって、塩の透過流束が大きく、かつ機械的強度に優れたモザイク荷電膜が得られる(以下、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層をイオン交換層として用いた本発明のイオン交換膜を、単に「(本発明の)モザイク荷電膜」と言う場合がある)。該モザイク荷電層は印刷によって支持層上に形成されていることが重要である。それにより、支持層上にカチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインが交互に隣接して規則正しく配列され、モザイク荷電膜として効果的に機能し、高い電解質選択透過性を有する膜が得られる。

【0031】
本発明で用いられるカチオン性重合体は、分子鎖中にカチオン基を含有する重合体である。当該カチオン基は主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていても構わない。カチオン基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のカチオン性重合体に含まれる。この中で、工業的に入手し易い観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基(アンモニウム基)、2級アンモニウム基(アルキルアンモニウム基等)、3級アンモニウム基(ジアルキルアンモニウム基等)、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)のいずれを用いることもできるが、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)がより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン基を含有していてもよいし、複数種のカチオン基を含有していてもよい。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有していてもよいし、複数種の対アニオンを含有していてもよい。

【0032】
本発明で用いられるカチオン性重合体は、カチオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、カチオン基を含有する構造単位とカチオン基を含有しない構造単位の両方からなる重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種の重合体を含むものであってもよい。また、これらカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しない重合体との混合物であっても構わない。

【0033】
カチオン性重合体中のカチオン基を含有する構造単位としては、以下の一般式(1)~(8)で表されるものが例示される。

【0034】
【化1】
JP0005531267B2_000002t.gif
[式中、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表す。R、R、Rは、相互に連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい。Zは-O-、-NH-、または-N(CH)-を表し、Yは酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含んでもよい総炭素数1~8の二価の連結基を表す。Xはアニオンを表す。]

【0035】
一般式(1)中の対アニオンXとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(1)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体しては、3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3-(メタ)アクリルアミド-3,3-ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなど3-(メタ)アクリルアミド-アルキルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0036】
【化2】
JP0005531267B2_000003t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0037】
一般式(2)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0038】
【化3】
JP0005531267B2_000004t.gif
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0039】
【化4】
JP0005531267B2_000005t.gif
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0040】
一般式(3)および一般式(4)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルジアルキルアンモニウム塩が環化重合して得られる単独重合体または共重合体が例示される。

【0041】
【化5】
JP0005531267B2_000006t.gif
[式中、nは0または1を表す。RおよびRは一般式(1)と同義である。]

【0042】
一般式(5)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミンの単独重合体または共重合体が例示される。

【0043】
【化6】
JP0005531267B2_000007t.gif
[式中、nは0または1を表す。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]

【0044】
一般式(6)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。

【0045】
【化7】
JP0005531267B2_000008t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは-CH(OH)CH-、-CHCH(OH)-、-C(CH)(OH)CH-、-CHC(CH)(OH)-、-CH(OH)CHCH-、または-CHCHCH(OH)-を表す。Eは-N(Rまたは-N(R・Xを表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。]

【0046】
一般式(7)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、N-(3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体、N-(4-アリルオキシ-3-ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。
【化8】
JP0005531267B2_000009t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基またはi-プロピル基、Rは水素原子、メチル基、およびエチル基をそれぞれ表す。]

【0047】
一般式(8)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が例示される。

【0048】
カチオン性重合体が、共重合体である場合の共重合成分としては、ビニルアルコール成分が好適なものとして挙げられる。カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しない重合体との混合物を用いる場合、カチオン基を含有しない重合体としてはカチオン基を含有する重合体と親和性の高いものが好適用いられ、ポリビニルアルコールおよびポリアクリルアミドが好適である。その中で、架橋性の高さからポリビニルアルコールがより好ましい。

【0049】
本発明のイオン交換膜においては、前記カチオン性重合体が極性重合体であることが好ましい。これによって、親水性度の高いイオン交換膜が得られ、かかるイオン交換膜は耐有機汚染性に優れる。また、本発明のイオン交換膜をモザイク荷電膜とした場合も同様に耐有機汚染性に優れる。さらに、モザイク荷電膜のモザイク荷電層においてドメインを成すカチオン性重合体が極性重合体であることでアニオン性重合体のドメインとの接合度が高まるため、膜強度を高くすることができる。

【0050】
極性重合体のうちカチオン性のものとしては、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、カチオン基を含有するセルロース誘導体、カチオン基を含有するポリアクリルアミド、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないセルロース誘導体との混合物、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリアクリルアミドとの混合物などが例示される。この中で、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが好ましい。ビニルアルコール単位を有する重合体を用いることが、イオン交換層の柔軟性および物理的または化学的架橋性の点から好ましい。また、イオン交換層がモザイク荷電層である場合には、後述するアニオン性重合体とともにビニルアルコール単位を有することで、ポリビニルアルコール同士となることから、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとの接合性が良好になるため、膜強度の点からも好ましい。その中でも、入手容易である点から、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物またはジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物が特に好ましい。カチオン基を含有するポリビニルアルコールまたはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物においては、カチオン性重合体中の単量体単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類の極性重合体であってもよいし、複数種の極性重合体の混合物であってもよい。また、極性重合体と非極性重合体との混合物であってもよい。

【0051】
本発明では、カチオン性重合体として、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体またはグラフト共重合体が好適に用いられる。こうすることにより、カチオン性重合体がミクロ相分離して、イオン交換膜の強度の向上、膨潤度の抑制および形状保持についての機能を担うポリビニルアルコール成分と、陰イオンを透過させる機能を担うカチオン性単量体を重合してなる重合体成分とが役割分担でき、イオン交換膜の膨潤度と寸法安定性とを両立することができる。カチオン性単量体を重合してなる重合体成分の構造単位は特に限定されないが、前記一般式(1)~(8)で表されるものなどが例示される。この中で、入手容易である点から、カチオン性重合体としては、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体またはジアリルジアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体が好ましく用いられる。

【0052】
カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量は特に限定されないが、カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量、すなわち、カチオン性重合体中の単量体単位の総数に対するカチオン性単量体単位の数の割合が、0.1モル%以上であることが好ましい。カチオン性単量体含有量が0.1モル%未満だと、イオン交換層中の有効荷電密度が低下し、膜の対イオン選択性が低下するおそれがある。また、イオン交換層がモザイク荷電層である場合、電解質選択透過性が低下するおそれがある。含有量が0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることがさらに好ましい。また、カチオン性単量体含有量は50モル%以下であることが好ましい。含有量が50モル%を超えると、イオン交換膜の膨潤度が高くなり、機械的強度が低下するおそれがある。また、対イオン選択性が低下するおそれがある。イオン交換層がモザイク荷電層である場合、塩の選択透過性が低くなるおそれがある。含有量が30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。カチオン性重合体が、カチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しない重合体との混合物である場合や、カチオン基を含有する重合体の複数種の混合物である場合のカチオン性単量体含有量は、混合物中の単量体単位の総数に対するカチオン性単量体単位の数の割合をいう。

【0053】
本発明で用いられるアニオン性重合体は、分子鎖中にアニオン基を含有する重合体である。当該アニオン基は主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていても構わない。アニオン基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中においてその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のアニオン性重合体に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン基を含有していてもよいし、複数種のアニオン基を含有していてもよい。また、アニオン基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオンなどが例示される。この中で、設備の腐蝕問題が少ない点から、アルカリ金属イオンが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。

【0054】
前記アニオン性重合体は、本発明で用いられるアニオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、アニオン基を含有する構造単位とアニオン基を含有しない構造単位の両方からなる重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種の重合体を含むものであってもよい。また、これらアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しない重合体との混合物であっても構わない。

【0055】
アニオン性重合体中のアニオン基を含有する構造単位としては、以下の一般式(9)および(10)で表されるものが例示される。

【0056】
【化9】
JP0005531267B2_000010t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Gは-SOH、-SO、-POH、-PO、-COHまたは-COを表す。Mはアンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す。]

【0057】
一般式(9)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0058】
【化10】
JP0005531267B2_000011t.gif
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Tはメチル基で置換されていてもよいフェニレン基またはナフチレン基を表す。Gは一般式(9)と同義である。]

【0059】
一般式(10)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、p-スチレンスルホン酸ナトリウムなどp-スチレンスルホン酸塩の単独重合体または共重合体などが例示される。

【0060】
また、アニオン性重合体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸などのスルホン酸基またはその塩を有する単量体の単独重合体または共重合体、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基、その誘導体またはその塩を有する単量体の単独重合体または共重合体なども例示される。

【0061】
一般式(9)または(10)において、Gは、より高い荷電密度を与えるスルホネート基、スルホン酸基、ホスホネート基、またはホスホン酸基であることが好ましい。また一般式(9)および一般式(10)中、Mで表されるアルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。

【0062】
アニオン性重合体が、共重合体である場合の共重合成分としては、ビニルアルコール成分が好適なものとして挙げられる。アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しない重合体との混合物を用いる場合、アニオン基を含有しない重合体としてはアニオン基を含有する重合体と親和性の高いものが好適に用いられ、ポリビニルアルコールおよびポリアクリルアミドが好適である。その中で、架橋性の高さからポリビニルアルコールがより好ましい。

【0063】
本発明のイオン交換膜においては、前記アニオン性重合体が極性重合体であることが好ましい。これによって、親水性度の高いイオン交換膜が得られ、かかるイオン交換膜は耐有機汚染性に優れる。また、本発明のイオン交換膜をモザイク荷電膜とした場合も同様に耐有機汚染性に優れる。さらに、モザイク荷電膜のモザイク荷電層においてドメインを成すアニオン性重合体が極性重合体であることでカチオン性重合体のドメインとの接合度が高まるため、膜強度を高くすることができる。

【0064】
極性重合体のうちアニオン性のものとしては、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、アニオン基を含有するセルロース誘導体、アニオン基を含有するポリアクリルアミド、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないセルロース誘導体との混合物、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリアクリルアミドとの混合物などが例示される。この中で、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であることが好ましい。ビニルアルコール単位を有する重合体を用いることが、イオン交換膜のイオン交換層の柔軟性、および物理的または化学的架橋の点から好ましい。また、イオン交換層がモザイク荷電層である場合には、カチオン性重合体とともにビニルアルコール単位を有することで、ポリビニルアルコール同士となることから、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとの接合性が良好になるため、膜強度の点からも好ましい。その中でも、入手容易である点から、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、p-スチレンスルホン酸塩とポリビニルアルコール成分との共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物、またはp-スチレンスルホン酸塩の重合体とポリビニルアルコールとの混合物が特に好ましい。アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物においては、アニオン性重合体中の単量体単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。アニオン性重合体は、1種類の極性重合体であってもよいし、複数種の極性重合体の混合物であってもよい。また、極性重合体と非極性重合体との混合物であってもよい。

【0065】
本発明では、アニオン性重合体として、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好適に用いられる。こうすることにより、アニオン性重合体がミクロ相分離して、イオン交換膜全体の強度の向上、膜の膨潤度の抑制、および形状保持についての機能を担うポリビニルアルコール成分と、陽イオンを透過させる機能を担うアニオン性単量体を重合してなる重合体成分とが役割分担でき、イオン交換膜の膨潤度と寸法安定性とを両立することができる。アニオン性単量体を重合してなる重合体成分の構造単位は特に限定されないが、前記一般式(9)および一般式(10)で表されるものなどが例示される。この中で、入手容易である点から、p-スチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体が好ましく用いられる。

【0066】
アニオン性重合体のアニオン性単量体含有量は特に限定されないが、アニオン性重合体のアニオン性単量体含有量、すなわち、アニオン性重合体中の単量体単位の総数に対するアニオン性単量体単位の数の割合が0.1モル%以上であることが好ましい。アニオン性単量体含有量が0.1モル%未満だと、イオン交換層中の有効荷電密度が低下し、膜の対イオン選択性が低下するおそれがある。また、イオン交換層がモザイク荷電層である場合、電解質選択透過性が低下するおそれがある。含有量が0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることがさらに好ましい。また、アニオン性単量体含有量は50モル%以下であることが好ましい。含有量が50モル%を超えると、イオン交換膜の膨潤度が高くなり、機械的強度が低下するおそれがある。また、対イオン選択性が低下するおそれがある。イオン交換層がモザイク荷電層である場合、塩の選択透過性が低くなるおそれがある。含有量が30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。アニオン性重合体が、アニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しない重合体との混合物である場合や、アニオン基を含有する重合体の複数種の混合物である場合のアニオン性単量体含有量は、混合物中の単量体単位の総数に対するアニオン性単量体単位の数の割合をいう。

【0067】
また、本発明のイオン交換膜を、上述したようなモザイク荷電膜として用いる場合、カチオン性重合体とアニオン性重合体の両方が極性重合体であることが好ましい。カチオン性重合体とアニオン性重合体の両方が極性重合体であると、親水性度の高いモザイク荷電膜が得られ、被処理液中の有機汚染物質がモザイク荷電膜に付着して膜の性能を低下させる、いわゆる膜の有機汚染の問題を効果的に低減できる。また、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとの接合性が高まるので、膜強度の高いモザイク荷電膜を得ることができる。

【0068】
また、モザイク荷電膜中の、カチオン性重合体またはアニオン性重合体における、カチオン基またはアニオン基以外の部分の構造単位は、それぞれ独立に選択することができるが、カチオン性重合体とアニオン性重合体とが、同一の構造単位を有することが好ましい。これにより、ドメイン同士の間の親和性が高くなるため、モザイク荷電層の機械的強度が増大する。同一の構造単位を、カチオン性重合体およびアニオン性重合体の両方が、50モル%以上有していることが好ましく、80モル%以上有していることがより好ましい。

【0069】
また、印刷する際に水溶性であることから、同一の構造単位がビニルアルコール単位であることが特に好ましい。カチオン性重合体およびアニオン性重合体がビニルアルコール単位を有することにより、グルタルアルデヒドなどの架橋処理剤により印刷後にドメイン同士の間を化学的に架橋することができるので、モザイク荷電膜の機械的強度をさらに高くすることもできる。

【0070】
同一の構造単位がビニルアルコール単位である場合の具体例として、カチオン性重合体のドメインが、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物からなり、アニオン性重合体のドメインが、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物からなる場合が挙げられる。

【0071】
カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であり、かつ、アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることも好ましい。

【0072】
本発明のイオン交換膜に用いられるカチオン基またはアニオン基を含有するポリビニルアルコールは、カチオン性単量体またはアニオン性単量体とビニルエステル系単量体を共重合し、これを常法によりけん化して得られる。ビニルエステル系単量体は、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。この中でも、酢酸ビニルが好ましい。

【0073】
カチオン性単量体またはアニオン性単量体とビニルエステル系単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。それらの方法の中でも、無溶媒で行う塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n-プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5~180℃の範囲が適当である。

【0074】
カチオン性単量体またはアニオン性単量体とビニルエステル系単量体とを共重合させることによって得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法にしたがって溶媒中でけん化することで、カチオン基またはアニオン基を含有するポリビニルアルコールを得ることができる。

【0075】
ビニルエステル系重合体のけん化反応の触媒としては通常アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加しても良いし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加しても良い。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの中でもメタノールが好ましい。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式でも実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などが挙げられる。

【0076】
カチオン基またはアニオン基を含有するポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されないが、40~99.9モル%であることが好ましい。けん化度が40モル%未満だと、結晶性が低下し、イオン交換層の強度が不足するおそれがある。けん化度が60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合のけん化度は、混合物全体としての平均のけん化度をいう。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。本発明で用いられるカチオン基またはアニオン基を含有しないポリビニルアルコールのけん化度も、上記範囲であることが好ましい。

【0077】
カチオン基またはアニオン基を含有するポリビニルアルコールの粘度平均重合度(以下単に重合度と言うことがある)は特に限定されないが、50~10000であることが好ましい。重合度が50未満だと、実用上でイオン交換層が十分な強度を保持できないおそれがある。重合度が100以上であることがより好ましい。重合度が10000を超えると、印刷に用いる重合体溶液の粘度が高すぎて扱えないおそれがある。重合度が8000以下であることがより好ましい。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合の重合度は、混合物全体としての平均の重合度をいう。なお、前記ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定した値である。本発明で用いられるカチオン基またはアニオン基を含有しないポリビニルアルコールの重合度も、上記範囲であることが好ましい。

【0078】
本発明で用いられるカチオン性単量体またはアニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにカチオン基またはアニオン基を結合させる方法、および(2)少なくとも1種類のカチオン性単量体またはアニオン性単量体を重合させて所望のブロック共重合体を製造する方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、1種類または複数種の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中の1種類または複数種の重合体成分にカチオン基またはアニオン基を導入する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法が工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中のポリビニルアルコール成分とカチオン性単量体またはアニオン性単量体を重合してなる重合体成分の各成分の種類や量を容易に制御できることから、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させてブロック共重合体を製造する方法が好ましい。

【0079】
これらのブロック共重合体の製造に用いられる、末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体は、例えば、特開昭59-187003号などに記載されている方法により得ることができる。すなわち、チオール酸の存在下にビニルエステル系単量体、例えば酢酸ビニルをラジカル重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化する方法が挙げられる。このようにして得られる末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールと、カチオン性単量体またはアニオン性単量体とを用いてブロック共重合体を得る方法としては、例えば、特開昭59-189113号などに記載された方法が挙げられる。すなわち、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下にカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を得ることができる。このラジカル重合は公知の方法、例えばバルク重合、溶液重合、パール重合、乳化重合などによって行うことができるが、末端にメルカプト基を含有するポリビニルアルコールを溶解し得る溶媒、例えば水やジメチルスルホキシドを主体とする溶媒中で行うのが好ましい。また、重合プロセスとしては、回分法、半回分法、連続法のいずれをも採用することができる。

【0080】
本発明のイオン交換膜は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。

【0081】
本発明のイオン交換膜の荷電密度は、特に限定されないが、0.1~20mol・dm-3であることが好ましい。荷電密度が0.1mol・dm-3未満だと、膜の対イオン選択性に劣るおそれがある。荷電密度が0.3mol・dm-3以上であることがより好ましく、0.5mol・dm-3以上であることがさらに好ましい。膜の荷電密度が20mol・dm-3を超えると、膜の膨潤が著しく、寸法安定性が悪く、取り扱いが困難となるおそれがある。膜の荷電密度が10mol・dm-3以下であることがより好ましく、3mol・dm-3以下であることがさらに好ましい。

【0082】
本発明のイオン交換膜に用いられる支持層は、その上にイオン交換層が形成できればよく、特に限定されないが、多孔質であることが好ましい。多孔質であることによって、イオンの透過や塩の輸送が容易になる。多孔質の支持層としては、不織布、膜、織布、合成紙などが例示され、従来公知の多孔質のシートがいずれも使用できる。これらの中でも、不織布、膜、合成紙がさらに好ましい。また、支持層の素材としては、ポリビニルアルコール繊維集合体が特に好ましく用いられる。

【0083】
支持層の厚み(B)は、特に限定されないが、5~1000μmであることが好ましい。支持層の厚み(B)が5μm未満だと、イオン交換膜の強度が不足するおそれがある。該厚みは10μm以上であることがより好ましい。支持層の厚み(B)が1000μmを超えると、イオンや塩の輸送が困難になるおそれがある。該厚みは800μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。

【0084】
イオン交換層の厚み(A)は特に限定されないが、膜抵抗を小さくすることができ、イオンや塩の透過流束が大きくなる観点から、0.1~80μmであることが好ましい。イオン交換層の厚み(A)が0.1μm未満だと、イオン交換層の製造時に、膜の欠陥(ピンホール)が発生するおそれがある。また、イオン交換層の機械的強度が低下するおそれがある。該厚みは0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。イオン交換層の厚み(A)が80μmを超えると、塩の透過流束が小さくなるおそれがある。該厚みは50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。

【0085】
本発明のイオン交換膜のイオン交換層の厚み(A)と支持層の厚み(B)の比(A/B)は、特に限定されないが、0.001~0.2であることが好ましい。該比(A/B)が0.001未満だと、得られるイオン交換層に欠陥が生じるおそれがある。該比が0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。該比(A/B)が0.2を超えると、膜抵抗が過剰に大きくなるおそれがある。また、本発明のイオン交換膜がモザイク荷電膜である場合、塩の透過流束が小さくなりすぎるおそれがある。該比が0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。

【0086】
また、本発明のイオン交換膜がモザイク荷電膜である場合において、モザイク荷電層を構成するカチオン性重合体のドメインのドメインサイズ(Wc)は特に限定されないが、モザイク荷電膜中における正荷電領域と負荷電領域間の距離が小さくなるほど、電解質選択透過性が大きくなる傾向があることから、1000μm以下であることが好ましい。該ドメインサイズは、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。なお、カチオン性重合体のドメインのドメインサイズとは、該ドメインに内接する円の直径の平均値をいい、顕微鏡観察された水平方向のドメインの寸法から算術平均で求めた値である。

【0087】
本発明のモザイク荷電膜において、モザイク荷電層を構成するアニオン性重合体のドメインのドメインサイズ(Wa)は特に限定されないが、モザイク荷電膜中における正荷電領域と負荷電領域間の距離が小さくなり、電解質選択透過性が大きくなる観点から、1000μm以下であることが好ましい。該ドメインサイズは、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。なお、アニオン性重合体のドメインのドメインサイズとは、該ドメインに内接する円の直径の平均値をいい、顕微鏡観察された水平方向のドメインの寸法から算術平均で求めた値である。

【0088】
本発明のイオン交換膜は、上述のイオン交換層を印刷によって支持体上に形成することにより製造される。即ち、カチオン性重合体またはアニオン性重合体から選択されるイオン性重合体からなるイオン交換層を印刷によって支持層上に形成することにより、本発明のイオン交換膜としてのアニオン交換膜およびカチオン交換膜を製造することができる。

【0089】
支持層上にイオン交換層を、カチオン性重合体またはアニオン性重合体を含有する溶液を用いて印刷することにより、支持層上に所望のパターンのイオン交換層を形成させることができる。このような方法を用いることによって、支持層上に厚みの薄いイオン交換層を形成することができ、膜抵抗の小さなイオン交換膜を得ることができる。また、簡便な方法によって、イオン交換膜を製造することができる。このとき形成されるパターンは全面均一であっても構わない。印刷は、通常、印刷装置を用いて行われる。

【0090】
また、カチオン性重合体のドメインとアニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層をイオン交換層として、印刷によって支持層上に形成することにより、本発明のモザイク荷電膜を製造することができる。

【0091】
支持層上に、カチオン性重合体を含有する溶液とアニオン性重合体を含有する溶液とを用いて印刷することにより、簡便な方法で、支持層上に所望のパターンのモザイク荷電層を形成させることができる。また、支持層上に厚みの小さいモザイク荷電層を形成することができ、透過流束の大きいモザイク荷電膜を得ることができる。さらに、カチオン性重合体およびアニオン性重合体の各ドメインのドメインサイズを小さくすることができ、電解質選択透過性に優れたモザイク荷電膜を得ることができる。上記のパターン形状は、特に限定されず、ストライプ状、市松状、格子状、水玉状などが例示される。印刷は、通常、印刷装置を用いて行われる。

【0092】
本発明に用いられる印刷方法としては、従来公知の印刷方法がいずれも適用できる。具体的な印刷方法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などが例示される。これらの中でも、印刷の簡易性の点から、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法が特に好ましい。

【0093】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、イオン交換層を形成した後に、熱処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことによって、結晶化度が高くなるので、物理的な架橋点が増加し、得られるイオン交換膜の機械的強度が増大する。また、非晶部にカチオン基またはアニオン基が濃縮され、イオン交換パスの形成が促進されるため、荷電密度が増加し、対イオン選択性が向上する。熱処理の方法は特に限定されず、熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールの場合、50~250℃であることが好ましい。熱処理の温度が50℃未満だと、得られるイオン交換膜の機械的強度が不足するおそれがある。該温度が80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。熱処理の温度が250℃を超えると、ポリビニルアルコールが融解するおそれがある。該温度が230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。熱処理の時間は、通常、1分~10時間程度である。熱処理は不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下で行うことが望ましい。

【0094】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、イオン交換層を形成した後に、熱プレス処理を施すことが好ましい。熱プレス処理を施すことによって、印刷により設けられたイオン交換層が緻密となり、得られるイオン交換層の機械的強度が増大する。熱プレス処理の方法は特に限定されず、カレンダー設備などが一般に用いられる。熱プレス処理の温度は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールの場合、80~250℃であることが好ましい。熱プレス処理の温度が80℃未満だと、得られるイオン交換層の機械的強度が不足するおそれがある。該温度が100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。熱プレス処理の温度が250℃を超えると、ポリビニルアルコールが融解するおそれがある。該プレス温度が230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。

【0095】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、イオン交換層を形成した後に、架橋処理を施すことが好ましい。架橋処理を施すことによって、得られるイオン交換層の機械的強度が増大する。また、荷電密度が増加するため、対イオン選択性が向上する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、イオン交換層を、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザールなどが例示される。該架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001~1体積%である。

【0096】
前記製造方法においては、熱処理と熱プレス処理と架橋処理のすべてを行ってもよいし、そのうちの2つを行ってもよいし、そのいずれかのみを行ってもよい。行う処理の順番は特に限定されない。複数の処理を同時に行ってもよい。熱処理または熱プレス処理を施した後に、架橋処理を施すことが好ましい。熱処理または熱プレス処理を施すことにより架橋されにくい部位が生じ、その後、架橋処理、特に化学架橋処理を行うことで、架橋された部位と架橋されない部位が混在することによって、膜強度が高くなるからである。熱プレス処理、熱処理、架橋処理の順番で行うことが、得られるイオン交換膜の機械的強度の面から特に好ましい。

【0097】
本発明のイオン交換膜は、種々の用途に用いることができる。例えば、カチオン性重合体またはアニオン性重合体のいずれかからなるイオン交換層を有する本発明のイオン交換膜は、耐有機汚染性に優れ、かつ膜抵抗が小さく、長期間にわたって効率よく、安定に電気透析を行うことができる。従って、このようなイオン交換膜は、有機物(食品、医薬原材料など)の脱塩、ホエーの脱塩、塩の濃縮、糖液の脱塩、海水やかん水の脱塩、水道水の脱塩、軟水化などに適している。一般に、有機汚染が顕著である陰イオン交換膜として特に好適に用いられる。

【0098】
また、本発明のモザイク荷電膜は、塩の透過流束が大きく、かつ電解質選択透過性に優れているので、水の精製、食品や医薬原材料の脱塩、かん水や海水の脱塩、淡水化をするのに適している。また、本発明のモザイク荷電膜は機械的強度に優れているので、圧透析を行うのに、特に適している。本発明のモザイク荷電膜の製造方法によれば、大面積のモザイク荷電膜を、容易にかつ低コストで製造することができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例中、特に断りのない限り「%」および「部」は質量基準である。実施例および比較例における分析および評価は、下記の方法に従って行った。
【実施例】
【0100】
(1)イオン交換層の厚み(A)、支持層の厚み(B)
イオン交換膜を25℃のイオン交換水中に5日以上浸漬させ、膨潤平衡状態としたのち、手術用ナイフで断面を切り出した。その後、アニオン交換膜およびモザイク荷電膜の場合には、イオン交換水にメチルバイオレットを濃度5×10-5mol/Lで溶解した水溶液に上記膜を30分間浸漬し、アニオン交換層部分またはカチオン性重合体のドメインの部分を着色して測定試料を作製した。また、カチオン交換膜の場合には、イオン交換水にアシッドブルーを濃度1×10-4mol/Lで溶解した水溶液に上記膜を10分間浸漬し、カチオン交換層部分を着色して測定試料を作製した。こうして得られた測定試料を、株式会社ニコン製光学顕微鏡「OPTIPHOT-2」で断面観察し、得られたデータを株式会社ニコン製「NIS-Elements.D.2.30」で画像解析することでイオン交換層の厚み(A)を算出した。同様にして支持層の厚み(B)を算出した。
【実施例】
【0101】
(2)動的輸率
イオン交換膜の動的輸率は、図1に示される動的輸率試験装置を用いて測定した。該装置には、電源1、アンペアメーター2、クーロンメーター3、ボルトメーター4、およびモーター5を用いて回転するスターラー6が備えられている。カソード電極(AgCl電極)7およびアノード電極(Ag電極)8となる2枚の電極板を有する2室セル9の中に、イオン交換膜10を挟み、該膜の両側に0.5mol/LのNaCl溶液を満たした。所定時間(t)の間、所定電流密度(J=10mA・cm-2)で電気透析を行った。用いた2室セル9におけるイオン交換膜10の有効膜面積は8.0cm(2cm×4cm)であった。その後、測定溶液を取り出し、その溶液を300mLメスフラスコを用いて希釈した。得られた希釈溶液の伝導度を伝導度計にて測定し、得られた伝導度の値を下式に代入することで動的輸率td+を算出した。
d+=Δm/E
・td+: 動的輸率
・Δm:移動当量
・E:理論当量=I×t/F
・I:流した電流
・t:測定時間(通電時間)
・F:Faraday定数
【実施例】
【0102】
(3)膜抵抗
前処理として、測定試料をあらかじめ0.5mol/LのNaCl溶液中に平衡に達するまで浸漬させた。図2に示される膜抵抗試験装置を用いて測定した。水浴11中に設置された、電極12となる2枚の白金黒電極板を有する2室セル13の中にイオン交換膜14を挟み、該膜の両側に0.5mol/LのNaCl溶液を満たした。両電極にLCRメーター15を接続し、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/s)により25℃における電極間の抵抗値を測定した。用いた2室セル13におけるイオン交換膜14の有効膜面積は1.0cmである。得られた電極間抵抗値とイオン交換膜14を設置しない場合の電極間抵抗値との差を求め、膜抵抗の値とした。
【実施例】
【0103】
(4)耐有機汚染性
陰イオン交換膜の場合は、測定試料を0.1mol/LのNaCl溶液中に平衡に達するまで浸漬してコンディショニングした後、銀、塩化銀電極を有する2室セルに該イオン交換膜を挟み、その陽極室には0.05mol/LのNaCl溶液を入れ、陰極室には、有機汚染物質として、1000ppmのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと0.05mol/LのNaClの混合溶液を入れた。両室の液を1500rpmの回転速度で攪拌しながら、0.2A/dmの電流密度で電気透析を行った。この時、両膜表面の近傍に白金線を固定して、膜間電圧を測定した。通電中に有機汚染が起こると膜間電圧が上昇してくる。通電を開始して30分後の膜間電圧を測定し、有機汚染物質を添加した場合と添加しない場合の電圧差(ΔE)をとって膜の耐有機汚染性の尺度とした。陽イオン交換膜では、上記方法において、有機汚染物質をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりに、分子量2000のポリエチレンイミンを濃度が1000ppmになるように添加した溶液を用い、同様にして耐有機汚染性を測定した。
【実施例】
【0104】
(5)拡散透析試験
モザイク荷電膜の拡散透過試験は、図3に示す装置で行った。電解質であるKClの拡散透析については、フォルダに挟んだモザイク荷電膜の測定試料を2つのセルの間に挟み、株式会社堀場製作所製導電率電極「3552-10D」を挿入したセルIにイオン交換水100mLを、セルIIに0.1MのKCl水溶液400mLを入れ、両セルをスターラーで撹拌させながら、25℃の一定温度下で測定を行った。
【実施例】
【0105】
また、非電解質であるスクロースの拡散透析については、フォルダに挟んだモザイク荷電膜の測定試料を2つのセルの間に挟み、セルIにイオン交換水100mLを、セルIIに0.1Mのスクロース水溶液400mLを入れ、両セルをスターラーで撹拌させながら、25℃の一定温度下で測定を行った。
【実施例】
【0106】
セルI中におけるスクロースの濃度は、所定時間にセルIからピペッターで0.5mLのサンプルを採取し、高速液体クロマトグラフを用いて分析した。このようにして測定したKClおよびスクロースの濃度について、時間変化の曲線を求め、これを直線近似することによりその傾きの値から、それぞれの濃度の時間変化率ΔC/Δtを算出した。以下、iはKClまたはSUC(スクロース)を示す。
【実施例】
【0107】
高速液体クロマトグラフィー測定は以下の装置を用い、以下の測定条件で行った。
【実施例】
【0108】
(装置)
・ポンプ:日本電子株式会社製「PU-980 intelligent HPLC PUMP」
・検出器:日本電子株式会社製「RI-2031 Plus intelligent RI Detector」
・オートサンプラー:日本電子株式会社製「AS-2055 Plus intelligent Sampler」
・カラムオーブン:日本電子株式会社製「860-CO column Oven」
・カラム:和光純薬工業株式会社製「WAKO-Sil II 3C18AR」
(測定条件)
・溶離液:超純水
・液流速:0.4mL/min
・カラム温度:40℃
【実施例】
【0109】
KClおよびスクロースの流束JKClおよびJSUCは、次式により算出した。
=V×ΔC/(S×Δt)×10—7
KClおよびスクロースの透過係数PKClおよびPSUCは、次式により算出した。
=J×d/(CII-C)×10—1
・J:成分iの流束[mol・cm-2・s-1
・P:成分iの透過係数[cm・s-1
・V:セルI内のイオン交換水量[mL]
・S:モザイク荷電膜の膜有効面積[m
・d:モザイク荷電膜の膜厚[μm]
・ΔC:セルI内の成分iの濃度[mol/L]
・C:セルI内の成分iの初期濃度[mol/L]
・CII:セルII内の成分iの初期濃度[mol/L]
・Δt:透過時間[s]
【実施例】
【0110】
求めたKClの透過係数PKClとスクロースの透過係数PSUCを用いて、下式からモザイク荷電膜のスクロースに対するKClの電解質選択透過性αを算出した。
α=PKCl/PSUC
【実施例】
【0111】
(6)最大破断応力
JIS規格のポンチを用いて、イオン交換膜を幅2mm、長さ3cmのダンベル状に切り抜いて測定試料を作製した。株式会社島津製作所製小型卓上試験機「EZ-Test500N」を用いて測定した。評点間距離を2cmとし、25℃の温度下で測定を行った。最大破断応力は下式により算出した。
最大破断応力[MPa]
=破断点の応力[MPa]×初期断面積[m]/破断断面積[m
【実施例】
【0112】
(カチオン性重合体P-1の合成)
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lのセパラブルフラスコに、酢酸ビニル1120g、メタノール1680g、およびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを20質量%含有するメタノール溶液31.6gを仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。この系に2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.4g含有するメタノール20gを添加し、重合反応を開始した。重合開始時点よりメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを20質量%含有するメタノール溶液200gを系内に添加しながら、4時間重合反応を行った後、重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における系内の固形分濃度、すなわち、重合反応スラリー全体に対する固形分の含有率は23.9質量%であった。ついで、系内にメタノール蒸気を導入することにより、未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル共重合体を55質量%含有するメタノール溶液を得た。
【実施例】
【0113】
このビニルエステル共重合体を55質量%含有するメタノール溶液に、該共重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.025、ビニルエステル共重合体の固形分濃度が45質量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
【実施例】
【0114】
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、ついで、ゲル化物が生成してから1時間が経過した時点で、この粉砕物に酢酸メチルを添加することにより中和を行い、膨潤状態のポリ(ビニルアルコール-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)のカチオン性重合体を得た。この膨潤したカチオン性重合体に対して質量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、その後の濾過によって得られた固形物として、該カチオン性重合体を回収した。該重合体を65℃で16時間乾燥した。得られた重合体を重水に溶解し、400MHzでのH-NMR測定を行ったところ、該カチオン性重合体中のカチオン性単量体含有量、すなわち、該重合体中の単量体単位の総数に対するメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド単量体単位の数の割合は2モル%であった。また、重合度は450、けん化度は98.5モル%であった。
【実施例】
【0115】
(カチオン性重合体P-2、アニオン性重合体P-3、P-4の合成)
酢酸ビニル、メタノール(MeOH)、カチオン性単量体またはアニオン性単量体の種類と初期仕込み量、重合開始剤(AIBN)の使用量、カチオン性単量体またはアニオン性単量体の逐次添加量などの重合条件、けん化反応条件を表1に示すように変化させた以外はP-1と同様の方法により、カチオン性重合体P-2、アニオン性重合体P-3およびP-4を得た。得られた重合体の物性を表1に示す。
【実施例】
【0116】
【表1】
JP0005531267B2_000012t.gif
【実施例】
【0117】
(PVA-1およびPVA-2の合成)
特開昭59-187003号公報(末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体およびその方法)に記載された方法によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールPVA-1を合成した。得られたPVA-1の重合度は550、けん化度は98.5モル%であった。また、同様の方法により、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールPVA-2を合成した。得られたPVA-2の重合度は1550、けん化度は98.5モル%であった。
【実施例】
【0118】
(カチオン性重合体P-5の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた3Lの四つ口セパラブルフラスコに、水1160g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA-1を344g仕込み、攪拌下95℃まで加熱して上記PVA-1を溶解した後、室温まで冷却した。該水溶液に1/2規定の硫酸を添加してpHを3.0に調整した。別に、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド183gを水200gに溶解し、これを先に調製した水溶液に攪拌下添加した後、70℃まで加温し、また、水溶液中に窒素をバブリングして、30分間系内を窒素置換した。窒素置換後、上記水溶液に過硫酸カリウムの2.5%水溶液176mLを1.5時間かけて逐次的に添加してブロック共重合を開始させ、進行させた後、系内温度を75℃に1時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、固形分濃度25%のポリビニルアルコール-ポリメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドのブロック共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、400MHzでのH-NMR測定を行ったところ、該ブロック共重合体中のカチオン性単量体含有量、すなわち、該重合体中の単量体単位の総数に対するメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド単量体単位の数の割合は10モル%であった。
【実施例】
【0119】
(カチオン性重合体P-6~P-9の合成)
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとして、PVA-2を344g仕込み、カチオン性単量体の種類と仕込み量、水の量、重合開始剤(過硫酸カリウム)の量などの重合条件を表2に示すように変えた以外は、P-5と同様の方法によってカチオン性ブロック共重合体P-6~P-9を合成した。得られたカチオン性ブロック共重合体の物性を表2に示す。
【実施例】
【0120】
【表2】
JP0005531267B2_000013t.gif
【実施例】
【0121】
(アニオン性重合体P-11~P-14の合成)
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの種類と仕込み量、アニオン性単量体の種類と仕込み量、水の量、重合開始剤(過硫酸カリウム)の量などの重合条件を表3に示すように変化させた以外はP-5と同様の方法により、アニオン性ブロック共重合体P-11~P-14を得た。得られたアニオン性ブロック共重合体の物性を表3に示す。
【実施例】
【0122】
【表3】
JP0005531267B2_000014t.gif
【実施例】
【0123】
実施例1
(イオン交換膜の作製)
200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、カチオン性重合体P-1を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-1を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度8%の重合体水溶液を調製した。粘度は15mPa・s(20℃)であった。この水溶液をシリンジに詰め、マイクロジェット社製インクジェット印刷装置「NanoPrinter1100D」に装填した。支持層にビニロン合成紙(坪量:50±5g/m、厚さ:160±25μm)を用いて前記インクジェット印刷装置で5cm角にベタ印刷を行った。その後、25℃、65%RHの雰囲気下で16時間乾燥した。次いで、熱プレス機で温度150℃、圧力10kgf/cmの条件で10分間熱プレスを行った。こうして得られた膜を、170℃で30分間熱処理し、物理的な架橋を生じさせた。ついで、該膜を2mol/Lの硫酸ナトリウムの電解質水溶液に24時間浸漬させた。該水溶液にそのpHが1になるように濃硫酸を加えた後、0.05体積%グルタルアルデヒド水溶液に該膜を浸漬し、25℃で24時間スターラーを用いて撹拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、該膜を脱イオン水に浸漬し、途中数回脱イオン水を交換しながら、該膜が膨潤平衡に達するまで浸漬させ、イオン交換膜を得た。
【実施例】
【0124】
(イオン交換膜の評価)
このようにして作製したイオン交換膜を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、イオン交換層の厚み(A)と支持層の厚み(B)、動的輸率、膜抵抗、耐有機汚染性を測定した。得られた結果を表4に示す。
【実施例】
【0125】
実施例2
実施例1において、カチオン性重合体P-1を22.5g用いる代わりに、カチオン性重合体P-2を25.4g用い、脱イオン水を加えて濃度21%の重合体水溶液を調製し、また、インクジェット印刷装置の代わりに、スクリーン印刷装置を用いた以外は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。ここで、スクリーン印刷装置としては、ニューロング精密工業株式会社製LS-34TVを用いた。該水溶液の粘度は9.8万mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0126】
実施例3
実施例1において、カチオン性重合体P-1を22.5g用いる代わりに、カチオン性重合体P-2を15.8g用い、脱イオン水を加えて濃度12%の重合体水溶液を調製し、また、インクジェット印刷装置の代わりに、ディスペンサー式印刷装置を用いた以外は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。ここで、ディスペンサー式印刷装置としては、武蔵エンジニアリング株式会社製ディスペンサー式印刷装置「SHOTMASTER500」を用いた。該水溶液の粘度は2000mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0127】
実施例4
実施例1において、カチオン性重合体P-1を22.5g溶解させる代わりに、90mLの脱イオン水に、ポリビニルアルコールを22.5g加えて、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌して溶解させた後に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを28g混合して溶解させ、脱イオン水を加えて濃度8%の重合体水溶液を調製した以外は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。ここで、ポリビニルアルコールとしては、株式会社クラレ製「PVA105」を用いた。当該「PVA105」は重合度550、けん化度98.5モル%である。また、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとしては、シグマアルドリッチ社製「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」を用いた。当該「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」は、濃度20%、分子量40~50万である。用いたPVA105とポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの固形分質量部比率は80/20である。該水溶液の粘度は15mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0128】
実施例5
実施例4において、脱イオン水を90mLの代わりに110mL用い、また、ポリビニルアルコールとして、「PVA105」を22.5g用いる代わりに、株式会社クラレ製「PVA135」を12.3g用い、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの配合量を56gから15.4gに変え、脱イオン水を加えて濃度9%の重合体水溶液を調製し、インクジェット印刷装置の代わりに、実施例2において用いたスクリーン印刷装置を用いて印刷を行った以外は実施例4と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。当該「PVA135」は、重合度3500、けん化度98.5モル%である。用いたPVA135とポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの固形分質量部比率は80/20である。該水溶液の粘度は、9万mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0129】
実施例6
実施例1において、カチオン性重合体P-1の代わりにカチオン性重合体P-5を用い、調製する重合体水溶液の濃度を8%から7%に変えた以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【実施例】
【0130】
実施例7~16
実施例1において、用いるカチオン性重合体の種類、調製する重合体水溶液の濃度、熱処理の温度、熱プレス処理の温度を表4に示すように変え、また、インクジェット印刷装置の代わりに、スクリーン印刷装置を用い、形成するイオン交換層の厚み(A)を表4に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表4に示す。実施例16においては、熱プレス処理を行わなかった。
【実施例】
【0131】
比較例1
イオン交換膜として、株式会社トクヤマ製陰イオン交換膜「ネオセプタAM-1」を用い、上記方法にしたがってイオン交換膜の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【実施例】
【0132】
比較例2
カチオン性重合体P-2を、95℃の熱水中で2時間加熱溶解し、濃度10%の重合体水溶液を調製した。このようにして調製した水溶液を、縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。こうして得られた皮膜を、実施例1と同様の方法を用いて、170℃、30分間の熱処理と、その後の架橋処理を行い、イオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた測定結果を表4に示す。
【実施例】
【0133】
比較例3
実施例2において、架橋処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。測定の途中にイオン交換膜が溶解し、膜特性の評価ができなかった。
【実施例】
【0134】
【表4】
JP0005531267B2_000015t.gif
【実施例】
【0135】
実施例17~29
実施例1において、用いるアニオン性重合体の種類、調製する重合体水溶液の濃度、印刷方法、熱処理の温度、熱プレス処理の温度、イオン交換層の厚み(B)を表5に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表5に示す。なお、実施例20と実施例21において、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとしては、和光純薬工業株式会社製「ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)」を用いた。また、用いたポリビニルアルコールとポリスチレンスルホン酸ナトリウムの固形分質量部比率は80/20である。
【実施例】
【0136】
比較例4
イオン交換膜として、株式会社トクヤマ製陽イオン交換膜「ネオセプタCM-1」を用い、上記方法にしたがってイオン交換膜の評価を行った。得られた測定結果を表5に示す。
【実施例】
【0137】
比較例5
比較例2において、カチオン性重合体P-2の代わりに、アニオン性重合体P-4を用いた以外は、比較例2と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表5に示す。
【実施例】
【0138】
比較例6
比較例3において、カチオン性重合体P-2の代わりに、アニオン性重合体P-4を用いた以外は、比較例3と同様にしてイオン交換膜を作製し、評価を行った。測定の途中にイオン交換膜が溶解し、膜特性の評価ができなかった。
【実施例】
【0139】
【表5】
JP0005531267B2_000016t.gif
【実施例】
【0140】
表4の結果から、アニオン交換膜において、支持層上にカチオン性重合体として、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物を印刷し、その後熱プレスすることにより動的輸率、膜抵抗および耐有機汚染性に優れることがわかる(実施例1~15)。特に、カチオン性重合体からなるイオン交換層の厚み(A)と支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.1以下であると膜抵抗がさらに良好になることがわかる(実施例1~7、実施例10~14、16)。また、カチオン性重合体のイオン性単量体含有量が5モル%以上であると、市販のイオン交換膜と同等の動的輸率が得られることがわかる(実施例6、7、10、12)。一方、キャスト製膜により作製した厚み100μmの単膜では膜抵抗に劣ることがわかる(比較例2)。また、架橋処理をしないとイオン交換層が溶解してしまい、膜特性の測定ができなかった(比較例3)。
【実施例】
【0141】
表5の結果から、カチオン交換膜において、支持層上にアニオン性重合体として、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物を印刷し、その後熱プレスすることにより動的輸率、膜抵抗と耐有機汚染性に優れることがわかる(実施例17~28)。特に、アニオン性重合体からなるイオン交換層の厚み(A)と支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.1以下であると膜抵抗がさらに良好になることがわかる(実施例17~23、実施例26、27、29)。また、アニオン性重合体のイオン性単量体含有量が5モル%以上であると、市販のイオン交換膜と同等の動的輸率が得られることがわかる(実施例22、23、26)。一方、キャスト製膜により作製した厚み100μmの単膜では膜抵抗に劣ることがわかる(比較例5)。さらに、架橋処理をしないとイオン交換層が溶解してしまい、膜特性の測定ができなかった(比較例6)。
【実施例】
【0142】
実施例30
(モザイク荷電膜の作製)
200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、カチオン性重合体P-1を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-1を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度8%のカチオン性重合体水溶液を調製した。粘度は15mPa・s(20℃)であった。また、200mLの三角フラスコに、90mLの脱イオン水を入れ、アニオン性重合体P-3を22.5g加えてから、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌し、該重合体P-3を溶解させた。その後、脱イオン水を加えて濃度8%のアニオン性重合体水溶液を調製した。粘度は15mPa・s(20℃)であった。それぞれの重合体水溶液を別々のシリンジに詰め、マイクロジェット社製インクジェット印刷装置「NanoPrinter1100D」に装填した。支持層にビニロン合成紙(坪量:50±5g/m、厚さ:160±25μm)を用い、その上に、前記インクジェット印刷装置で図4に示すストライプ状に印刷を行った。モザイク荷電層を構成する、それぞれ線状に形成されたカチオン性重合体のドメインおよびアニオン性重合体のドメインの線幅は両方とも50μmであった。その後、25℃、65%RHの雰囲気下で16時間乾燥した。次いで、熱プレス機で温度150℃、圧力10kgf/cmの条件で10分間熱プレスを行った。こうして得られた膜を、170℃で30分間熱処理し、物理的な架橋を生じさせた。ついで、該膜を2mol/Lの硫酸ナトリウムの電解質水溶液に24時間浸漬させた。該水溶液にそのpHが1になるように濃硫酸を加えた後、0.05体積%グルタルアルデヒド水溶液に該膜を浸漬し、25℃で24時間スターラーを用いて撹拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、該膜を脱イオン水に浸漬し、途中数回脱イオン水を交換しながら、該膜が膨潤平衡に達するまで浸漬させ、本発明のモザイク荷電膜を得た。以上の製造方法について表6に示す。
【実施例】
【0143】
(モザイク荷電膜の評価)
このようにして作製したモザイク荷電膜を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、モザイク荷電層の厚み(A)、支持層の厚み(B)、最大破断応力を測定し、また、拡散透析試験を行った。得られた結果を表7に示す。
【実施例】
【0144】
実施例31
実施例30において、カチオン性重合体P-1を22.5g用いる代わりに、カチオン性重合体P-2を25.4g用いて、脱イオン水を加えて濃度21%のカチオン性重合体水溶液を調製し、また、アニオン性重合体P-3を22.5g用いる代わりに、アニオン性重合体P-4を25.4g用いて、脱イオン水を加えて濃度21%のアニオン性重合体水溶液を調製し、インクジェット印刷装置の代わりに、スクリーン印刷装置を用いた以外は実施例1と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。ここで、スクリーン印刷装置としては、ニューロング精密工業株式会社製LS-34TVを用いた。カチオン性重合体水溶液の粘度は9.8万mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は9.7万mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0145】
実施例32
実施例30において、カチオン性重合体P-1を22.5g用いる代わりに、カチオン性重合体P-2を15.8g用いて、脱イオン水を加えて濃度12%のカチオン性重合体水溶液を調製し、また、アニオン性重合体P-3を22.5g用いる代わりに、アニオン性重合体P-4を15.8g用いて、脱イオン水を加えて濃度12%のアニオン性重合体水溶液を調製し、インクジェット印刷装置の代わりに、ディスペンサー式印刷装置を用いた以外は実施例1と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。ここで、ディスペンサー式印刷装置としては、武蔵エンジニアリング株式会社製ディスペンサー式印刷装置「SHOTMASTER500」を用いた。カチオン性重合体水溶液の粘度は2000mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は2100mPa・s(20℃)であった。
【実施例】
【0146】
実施例33
実施例30において、カチオン性重合体P-1を22.5g溶解させる代わりに、90mLの脱イオン水に、ポリビニルアルコールを22.5g加えて、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌して溶解させた後に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを28g混合して溶解させ、脱イオン水を加えて濃度8%のカチオン性重合体水溶液を調製し、アニオン性重合体P-3を22.5g溶解させる代わりに、90mLの脱イオン水に、ポリビニルアルコールを22.5g加えて、95℃のウォーターバスの中で加熱攪拌して溶解させた後に、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを5.6g混合して溶解させ、脱イオン水を加えて濃度8%のアニオン性水溶液を調製した以外は実施例1と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。カチオン性重合体水溶液の粘度は15mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は18mPa・s(20℃)であった。ここで、ポリビニルアルコールとしては、株式会社クラレ製「PVA105」を用いた。当該「PVA105」は重合度550、けん化度98.5モル%である。また、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとしては、シグマアルドリッチ社製「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」を用いた。当該「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」は、濃度20%、分子量40~50万である。用いたPVA105とポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの固形分質量部比率は80/20である。さらに、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとしては、和光純薬工業株式会社製「ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)」を用いた。用いたポリビニルアルコールとポリスチレンスルホン酸ナトリウムの固形分質量部比率は80/20である。
【実施例】
【0147】
実施例34
実施例33において、脱イオン水を90mLの代わりに110mL用い、ポリビニルアルコールとして、「PVA105」を22.5g用いる代わりに、株式会社クラレ製「PVA135」を12.3g用い、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの配合量を56gから15.4gに変え、脱イオン水を加えて濃度9%のカチオン性重合体水溶液を調製し、また、脱イオン水を90mLの代わりに110mL用い、ポリビニルアルコールとして、「PVA105」を22.5g用いる代わりに、「PVA135」を12.3g用い、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの配合量を11.3gから3.1gに変え、脱イオン水を加えて濃度9%のアニオン性重合体水溶液を調製し、インクジェット印刷装置の代わりに、実施例31において用いたスクリーン印刷装置を用いて印刷を行った以外は実施例33と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。カチオン性重合体水溶液の粘度は9万mPa・s(20℃)、アニオン性重合体水溶液の粘度は9.5万mPa・s(20℃)であった。当該「PVA135」は、重合度3500、けん化度98.5モル%である。用いたPVA135とポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの固形分質量部比率は80/20である。また、用いたPVA135とポリスチレンスルホン酸ナトリウムの固形分質量部比率は80/20である。
【実施例】
【0148】
実施例35
実施例30において、カチオン性重合体P-1の代わりにカチオン性重合体P-5を用い、調製するカチオン性重合体水溶液の濃度を8%から7%に変え、アニオン性重合体P-3の代わりにアニオン性重合体P-11を用い、調製するアニオン性重合体水溶液の濃度を8%から6%に変えた以外は、実施例30と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。
【実施例】
【0149】
実施例36~45
実施例30において、用いるカチオン性重合体およびアニオン性重合体の種類、調製するカチオン性重合体水溶液およびアニオン性重合体水溶液の濃度、熱処理の温度、熱プレス処理の温度を表6に示すように変え、また、インクジェット印刷装置の代わりに、スクリーン印刷装置を用い、形成するモザイク荷電層の厚み(A)を表7に示すように変えた以外は実施例30と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。実施例45においては、熱プレス処理を行わなかった。
【実施例】
【0150】
実施例46、47
実施例35において、モザイク荷電層のカチオン性重合体のドメインおよびアニオン重合体のドメインの大きさを表7に示すように変えた以外は、実施例35と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。
【実施例】
【0151】
比較例7
(積層法によるモザイク荷電膜の作製)
カチオン性重合体P-1を95℃の熱水に2時間かけて加熱溶解し、カチオン性重合体水溶液を調製した。また、アニオン性重合体P-3も同様にして、アニオン性重合体水溶液を調製した。このようにして調製した各重合体水溶液を、それぞれ、縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、カチオン性重合体およびアニオン性重合体の両皮膜を作製した。これらの皮膜を50℃のホットプレート上で24時間乾燥した。こうして得られたこれらの皮膜を株式会社クラレ製ポリビニルアルコール「PVA124」を接着剤にもちいて交互に貼り合わせることにより積層荷電ブロックを作製した。得られたブロックを積層面と垂直にラボカッターで切断した後、実施例30と同様の方法を用いて、170℃、30分間の熱処理と、その後の架橋処理を行うことにより、積層法によるモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に、得られた結果を表7にそれぞれ示す。該膜の膜厚は150μmであった。
【実施例】
【0152】
比較例8
東ソー株式会社製モザイク荷電膜「Desalton」について、非特許文献3に記載された膜特性の値を引用し表7に示す。
【実施例】
【0153】
比較例9
実施例31において、架橋処理を行わなかった以外は、実施例31と同様にしてモザイク荷電膜を作製し、評価を行った。製造方法を表6に示す。測定の途中にモザイク荷電膜が溶解し、膜特性の評価ができなかった。
【実施例】
【0154】
【表6】
JP0005531267B2_000017t.gif
【実施例】
【0155】
【表7】
JP0005531267B2_000018t.gif
【実施例】
【0156】
表6および表7の結果から、支持層上に、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物を印刷するとともに、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物とを印刷し、その後、熱プレス処理を行うことによって、得られるモザイク荷電膜の塩の透過流束が大きくなり、かつ電解質選択透過性に優れることがわかる(実施例30~44、46、47)。また、支持層を用いることによって、得られるモザイク荷電膜が機械的強度に優れることがわかる。さらに、モザイク荷電層の厚み(A)と支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.1以下であると塩の透過流束が良好であることがわかる(実施例30~36、39~43、46、47)。カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量およびアニオン性重合体のアニオン性単量体含有量がいずれも5モル%以上であると、電解質選択透過性に優れることもわかる(実施例35~39、41~43、46、47)。一方、積層法により作製した厚み150μmのモザイク荷電膜では塩の透過流束に劣ることがわかる(比較例7)。さらに、架橋処理をしないとモザイク荷電層が溶解してしまい、膜特性の測定ができなかった(比較例9)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3