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Specification :(In Japanese)ダントロレンを有効成分とする肝臓の線維化抑制剤

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2020-007237A
Date of publication of application Jan 16, 2020
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)ダントロレンを有効成分とする肝臓の線維化抑制剤
IPC (International Patent Classification) A61K  31/4178      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
FI (File Index) A61K 31/4178
A61P 43/00 105
A61P 35/00
A61P 1/16
Number of claims or invention 9
Filing form OL
Total pages 11
Application Number P2018-127270
Date of filing Jul 4, 2018
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】山本 直樹
【氏名】高見 太郎
【氏名】藤澤 浩一
【氏名】松本 俊彦
【氏名】小林 茂樹
【氏名】山本 健
【氏名】矢野 雅文
【氏名】坂井田 功
Applicant (In Japanese)【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4C086
F-term 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC41
Abstract (In Japanese)【課題】肝臓の線維化(肝線維化)は肝臓の炎症が慢性化した際に生じやすい。この肝線維化は肝硬変や肝細胞癌の発症と関連しているため、肝線維化を効果的に抑制することが求められていた。そこで本発明の課題は、肝線維化を抑制可能な肝臓の線維化抑制剤を提供することにある。
【解決手段】ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の線維化抑制剤を作製する。ダントロレン又はその薬学上許容される塩が、ダントロレンナトリウムであることが好ましい。
【選択図】なし
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の線維化抑制剤。
【請求項2】
ダントロレン又はその薬学上許容される塩が、ダントロレンナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の肝臓の線維化抑制剤。
【請求項3】
I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる遺伝子群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項1又は2記載の肝臓の線維化抑制剤。
【請求項4】
I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2の遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の肝臓の線維化抑制剤。
【請求項5】
ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の発癌抑制剤。
【請求項6】
ダントロレン又はその薬学上許容される塩が、ダントロレンナトリウムであることを特徴とする請求項5記載の肝臓の発癌抑制剤。
【請求項7】
I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる遺伝子群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項5又は6記載の肝臓の発癌抑制剤。
【請求項8】
I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2の遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項5~7のいずれか記載の肝臓の発癌抑制剤。
【請求項9】
ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝癌の治療用または予防用組成物。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の線維化抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓の線維化(肝線維化)は主に肝炎ウイルスやアルコールによる炎症に伴って起こり、特に炎症が慢性化した際に生じやすい。肝線維化を持つ慢性肝炎あるいは肝硬変からは肝細胞癌が発症しやすいことが知られている。
肝臓における慢性的な炎症は、I型コラーゲン(Collagen type I)に代表される細胞外マトリックスの、肝臓における過剰な蓄積として特徴づけられる肝線維化を引き起こし、肝臓の機能障害を招く。肝線維化では、主に、炎症性サイトカインによって活性化された肝星細胞(Hepatic stellate cells; HSCs)によって、I型コラーゲンが産生される。肝星細胞はレチノイド(Vitamin A)を含む脂肪滴と特徴的な星状の突起構造を有し、門脈血が類洞を介して肝小葉内へ流れ込む際の血流透過性を制御している。肝臓が障害を受けると肝星細胞は活性化し、その脂肪滴(レチノイド)の減少と、線維芽細胞や筋線維芽細胞に類似した形態への変化をたどり、コラーゲンなどの細胞外マトリックス生成を亢進する。この細胞外マトリックスが、何らかの刺激により定常的に過剰生成され続けると、細胞外マトリックスが沈着するようになり基底膜様構造物が出現し、この進展過程が肝線維化と呼ばれる。
【0003】
一方、アルコール摂取を原因とせず、主に肥満者において肝臓内に過剰な中性脂肪の蓄積(脂肪肝)が認められる病態である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD: nonalcoholic fatty liver disease)が報告されている。NAFLDは、良性の経過をとる脂肪肝と、一定の割合で肝硬変、肝細胞癌へと進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)に分類される。近年、わが国においてもNASHが急増しており、脂肪肝が1,500万症例、その10%程度がNASHに進行し、さらに10%程度が肝硬変や肝細胞癌を発症すると想定されている。
【0004】
しかしながら、どのようにして脂肪肝がNASHに進行するかは未だ明らかになっておらず、NASHの確定診断には侵襲的な肝生検が必要であり、また、有効な治療法も存在しないことが大きな問題となっている。
【0005】
非特許文献1は、NASH発症メカニズムに関し、コリン欠乏食(CDAA)により誘導されたNASHでは、肝臓においてマクロファージから産生されるTNFαやIL-1βなどの炎症性サイトカインの発現レベルが高いこと、骨髄由来炎症性マクロファージであるLy6c陽性マクロファージが認められることを示しており、コリン欠乏食誘導によるNASHモデルで誘導されるマクロファージは炎症性マクロファージが主体であると推定され、当該マクロファージがNASH病態に関わっていることが示唆されている。
【0006】
ところで、ダントロレンはヒダントイン誘導体に属する化合物であり、リアノジン受容体を遮断して横行小管から筋小胞体への興奮の伝達過程を遮断することにより筋小胞体からのCa2+の遊離を抑制することが知られている。かかるダントロレンは、特許文献1~3に示されるように、筋弛緩効果があることや、特許文献4に示されるように、Ras活性阻害効果や細胞増殖阻害効果があることが知られている。しかしながら、ダントロレンと肝線維化についての関係はこれまで示されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2015-3867号公報
【特許文献2】特開2008-260728号公報
【特許文献3】特開2016-539167号公報
【特許文献4】国際公開第2015/182625号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
肝線維化は上記のように肝硬変や肝細胞癌の発症と関連しており、肝線維化を効果的に抑制することが求められていた。そこで、本発明は、肝線維化を抑制可能な薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、コリン欠乏食(CDAA)の誘導による肝線維化・発癌モデルラットを用いてダントロレンナトリウムによる肝線維化・発癌の抑制効果について鋭意検討を行った。その結果、ダントロレンナトリウムが肝線維化抑制効果を有すると共に、発癌抑制効果も有することも見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の線維化抑制剤。
(2)ダントロレン又はその薬学上許容される塩が、ダントロレンナトリウムであることを特徴とする上記(1)記載の肝臓の線維化抑制剤。
(3)I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる遺伝子群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現を抑制することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の肝臓の線維化抑制剤。
(4)I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2の遺伝子発現を抑制することを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか記載の肝臓の線維化抑制剤。
(5)ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝臓の発癌抑制剤。
(6)ダントロレン又はその薬学上許容される塩が、ダントロレンナトリウムであることを特徴とする上記(5)記載の肝臓の発癌抑制剤。
(7)I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる遺伝子群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現を抑制することを特徴とする上記(5)又は(6)記載の肝臓の発癌抑制剤。
(8)I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2の遺伝子発現を抑制することを特徴とする上記(5)~(7)のいずれか記載の肝臓の発癌抑制剤。
(9)ダントロレン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする肝癌の治療用または予防用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るダントロレンナトリウムを含む肝臓の線維化抑制剤によれば、肝炎等により生じる肝臓の線維化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、下記実施例3における、12週目の肝線維化・肝発癌ラットから採取した肝臓の組織切片についてアザン染色した画像を示す。図1中、図1Aは「CDAAのみ持続投与したコントロール群(CDAA 12w)」を示し、図1Bは「CDAA+ダントロレン50mg/kg/day持続投与群(CDAA+ Dantrium 50 12w)」を示し、図1Cは「CDAA+ダントロレン100mg/kg/day持続投与群(CDAA+ Dantrium 100 12w)」を示す。図1Dは組織切片におけるアザン陽性エリアの割合(%)を示すグラフである。図1D中、*はt検定におけるp<0.05を示す。2)を示すグラフ、図3Dは組織切片におけるGST-P陽性エリアの割合(%)を示すグラフである。図3C、D中、**はt検定におけるp<0.01を示す。【0013】
ダントロレン(Dantrolene: 1‐[[[5‐(4‐Nitrophenyl)‐2‐furanyl]methylene]amino]‐2,4‐imidazolidinedione)は分子式C14H10N4O5、分子量314.257、CAS番号7261-97-4の化合物であり、以下の化学式(I)で示される。ダントロレンは公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。

【0014】
【化1】
JP2020007237A_000002t.gif

【0015】
本明細書におけるダントロレン又はその薬学上許容される塩における「薬学的に許容される塩」としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩や、亜鉛塩等の遷移金属塩や、環状アミン塩や、モノ-、ジ-若しくはトリ-低級アルキルアミン塩や、モノ-、ジ-若しくはトリヒドロキシ-低級アルキルアミン塩や、ポリヒドロキシ-低級アルキルアミン塩等のヒドロキシ-低級アルキルアミン塩や、ヒドロキシ-低級アルキル-低級アルキルアミン塩を挙げることができ、ナトリウム塩を好適に挙げることができる。

【0016】
さらに、ダントロレン又はその薬学上許容される塩は、これらと水やアルコール等との溶媒和物でもよく、ダントロレンナトリウム(1‐[[[5‐(4‐Nitrophenyl)‐2‐furyl]methylene]amino]‐3‐sodio‐2,4‐imidazolidinedione)の水和物を挙げることができる。かかるダントロレンナトリウムの水和物は商品名「ダントリウム(登録商標)」として市販されている。上記ダントリウムは、リアノジン受容体を遮断して横行小管から筋小胞体への興奮の伝達過程を遮断することにより筋小胞体からのCa2+の遊離を抑制するため、筋弛緩薬として用いられている。

【0017】
本明細書において「肝臓の線維化抑制」とは、非アルコール性脂肪肝炎、肝炎ウイルスの持続感染やアルコールの過剰摂取、自己免疫学的機序、肝内胆汁うっ滞、薬剤性、金属代謝異常、うっ血肝など様々な原因により生じる肝臓における線維化を抑制することを意味する。肝臓の線維化は、肝臓の障害によりコラーゲンなどの細胞外マトリクスの沈着により生じる構造をいう。線維化を引き起こす肝炎は限定されず、例えば、非アルコール性脂肪肝炎;B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎;慢性肝炎;急性肝炎;アルコール性肝炎;肝硬変;肝癌に付随する肝炎を挙げることができる。

【0018】
本発明に係る肝臓の線維化抑制剤による線維化抑制の評価は、例えば、肝臓の組織切片を作製し、アザン染色やシリウスレッド染色を行うことで行うことができる。アザン染色は膠原線維と筋線維を染め分けることができ、肝臓において線維化した組織はアザン染色に用いるアゾカルミンG又はオレンジGにより染色される。また、シリウスレッドは親水性であり陽イオン性の金属錯塩染料と結合し、コラーゲン線維及びその関連組織を染色する。

【0019】
例えば、下記実施例に示すように、一定期間において継続的に本発明の肝臓の線維化抑制剤、およびCDAAを与えた被験体(例えば、ラット)と、上記本発明の肝臓の線維化抑制剤を与えずCDAAのみ与えた被験体とにおける肝臓を用いて、上記アザン染色又はシリウスレッド染色により肝臓の切片を染色し、線維化領域を比較することで線維化の抑制を評価することができる。

【0020】
本明細書において「肝臓の発癌抑制」とは、肝臓における肝癌の発生を抑制することを意味し、具体的には肝臓における腫瘍の発生を抑えること、または、発生した腫瘍の成長を抑えることをいう。肝癌へと進行する肝疾患は特に限定されず、非アルコール性脂肪肝炎;B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎;慢性肝炎;急性肝炎;アルコール性肝炎;肝硬変などを挙げることができる。

【0021】
このような、腫瘍の発生抑制や腫瘍サイズの成長抑制は、例えば、抗GST-P抗体を用いた免疫染色によって評価することができる。グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の胎盤型アイソザイムであるGST-Pは肝前癌病変マーカーであり、下記実施例に示すように、一定期間において継続的に本発明の肝臓の線維化抑制剤およびCDAAを与えた被験体(例えば、ラット)と本発明の肝臓の線維化抑制剤を与えずCDAAのみ投与した被験体とにおける肝臓を用いて、上記抗GST-P抗体を用いて肝臓切片を免疫染色し、染色されたエリアを比較することで発癌の抑制を評価することができる。

【0022】
また、本発明は、一態様として、ダントロレン又はその薬学的に許容される塩を含む、肝癌の治療用又は予防用組成物を提供する。

【0023】
本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、および、肝癌の治療用又は予防用組成物は、一実施の形態おいて、対象に投与した際に、肝臓におけるI型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現を抑制する。

【0024】
TGFβは細胞外マトリックス(ECM)の産生促進に関与する遺伝子であり、TGFβの持続的な高発現は肝線維化を進行させる。TIMP1およびTMIP2は、コラーゲン分解酵素であるmatrix metalloproteinases(MMP)を不活化し、TIMP1およびTIMP2の発現上昇はコラーゲン蓄積による線維化を促進する方向に働く。本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、および、肝癌の治療用又は予防用組成物は、好ましい実施の形態においては、I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる群より選択される二つの遺伝子の発現を抑制し、より好ましい実施の形態においては、I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2からなる群より選択される三つの遺伝子の発現を抑制する。最も好ましい実施の形態においては、I型コラーゲン、TGFβ、TIMP1、および、TIMP2の四つの遺伝子の発現を抑制する。

【0025】
ここで遺伝子の発現を抑制するとは、肝線維化若しくは肝癌が進行している又は罹患している対象において、本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、または、肝癌の治療用又は予防用組成物を対象に投与した際に、当該線維化抑制剤、当該発癌抑制剤、または、当該組成物を投与していない場合の遺伝子の発現量と比較して、その遺伝子の発現量を低下させることを意味する。

【0026】
本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、および、肝癌の治療用又は予防用組成物は、ヒトを含む哺乳類、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒトなどに適用することができる。

【0027】
本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、および、肝癌の治療用又は予防用組成物は、薬剤又は薬学的組成物の製造に通常用いる適宜な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができ、それぞれ通常の方法に従い散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、溶液剤、油剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ剤などの経口用剤形物に用いられ得る。抽出物を含む組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油を挙げることができる。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は上記抽出物に一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを組み合わせて製造することができる。さらに、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤を用いることができる。経口のための液状製剤としては懸濁剤、溶液剤、油剤、シロップ剤などが該当し、通常用いられる水、リキッドパラフィン、又は多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。

【0028】
本発明に係る肝臓の線維化抑制剤、肝臓の発癌抑制剤、および、肝癌の治療用又は予防用組成物は、経口、経皮、皮下、筋肉、又は静脈を含む多様な経路を介して投与されてもよい。好ましい投与量は患者の年齢、性別及び体重、健康状態及び疾患の重症度などの多様な関連因子に照らし、当業者により適宜決定することができる。具体的には、ダントロレンナトリウム水和物換算で線維化抑制剤として、成人(60kg)に対し投与する場合、有効成分として1日投与量は0.01ないし1g、好ましくは0.1ないし0.5gの範囲であり、1回又は数回分けて投与することもできる。上記投与量は如何なる面においても本発明の範囲を限定するものではない。

【0029】
本発明の発癌抑制剤におけるダントロレン又はその薬学的に許容される塩は、ダントロレン又はその薬学的に許容される塩の投与による発癌を抑制する旨の添付文書等、又は、ダントロレン又はその薬学的に許容される塩による発癌抑制作用を増強する旨の添付文書等と共に単独製剤として提供することもできる。

【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。

【0031】
[実施例1:肝線維化・肝発癌ラットの作製]
6週齢Wister系雄性ラット(SLC社製)(各群15匹)にコリン欠乏食(Choline-deficient L-amino acid-defined:CDAA(518752 Choline Deficient Diet:Dyets Inc.社製)を連続投与して12時間明暗周期、25℃で飼育し、肝線維化・肝発癌ラットを作製した(CDAAのみ投与して作製した肝線維化・肝発癌ラットはコントロール群として用いた)。また、試験区として、CDAAにダントロレンナトリウム(50mg/kg/day又は100mg/kg/day)を連続投与して、同様に12時間明暗周期、25℃で飼育し、肝線維化・肝発癌ラットを作製した(以下、それぞれ「CDAA+ダントロレン50持続投与群」、「CDAA+ダントロレン100持続投与群」ともいう)。このようにして作製した肝線維化・肝発癌ラットは、試験開始から12週間飼育した時点で各種解析を行った。なお、このCDAA食による肝線維化・肝発癌ラットは、臨床で遭遇する肝硬変から肝癌発症状態を発現できる唯一のモデルである。また、上記試験区において用いたダントロレンナトリウムは商品名ダントリウム(Dantrium:登録商標 オーファンパシフィック社製)として販売されているダントロレンナトリウム水和物を用いた。

【0032】
[実施例2:体重、肝重量、採血での各種測定項目の検討]
実施例1で作製した「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」、及びコントロール群の12週目(84日目)の肝線維化・肝発癌ラットにおける体重、肝重量と採血による各種項目を測定し、コントロール群の測定値と比較した。
12週目における体重と肝重量は、「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」とコントロール群とを比較した際に特に変化を認めなかった。
12週目における血清データでは、アルブミン値、ALT値及びAST値において、「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」はコントロール群とを比較して有意に数値の改善が見られた。

【0033】
[実施例3:肝線維化抑制効果の検討]
実施例1で作製した「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」の12週目(84日目)の肝線維化・肝発癌ラットから肝組織を回収して、当該肝組織に対してアザン(Azan)染色又はシリウスレッド(Sirius Red)染色を行った。具体的には、以下のようにしてアザン染色およびシリウスレッド染色を行った。なお、アザン染色、シリウスレッド染色は線維化の指標として広く用いられている。

【0034】
(パラフィン包埋未染標本の作製、アザン染色、および、シリウスレッド染色)
まずラットから肝組織を採取し、採取された肝組織をホルマリンに漬け、ホルマリン固定した組織からパラフィン包埋未染標本を作製した。
上記のパラフィン包埋未染標本について、線維組織染色のためのアザン染色を常法に従って行った。すなわち、パラフィン切片の脱パラフィン操作を行った後、10%重クロム酸カリウム/10%トリクロル酢酸等量混合液中にて、20分間媒染し、蒸留水で水洗(5分間)した後、0.8%オレンジG水溶液中で10分間浸漬した。蒸留水水洗(約10秒間、以下同様)の後、アゾカルミンG液中で60分間浸漬し、蒸留水水洗の後、アニリン・アルコール中で3秒間浸漬して分別した。蒸留水で水洗した後、酢酸アルコール中で1分間処理し、蒸留水で水洗した後、さらに2.5%リンタングステン酸溶液中で20分間処理した。これを蒸留水で水洗した後、アニリン青/オレンジG混合液中で20~60分間、鏡検しながら染色した。染色後、水洗し、脱水、透徹および封入を行った。アザン陽性エリアの割合は、蛍光顕微鏡画像処理システム CA-H1DB(キーエンス社製)を用いて分析した。「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」のアザン染色の結果を図1に、シリウスレッド染色の結果を図2に示す。

【0035】
図1および2のアザン染色およびシリウスレッド染色の写真図から明らかなように、CDAAのみ持続投与したコントロール群と比較して、「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」はそれぞれ有意に肝線維化を抑制していた。図1および2下段のグラフは観察エリアにおけるアザン陽性エリアとシリウスレッド陽性エリアとをそれぞれを示す。CDAAのみ持続投与したコントロール群に対して「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」はアザン陽性エリアがそれぞれ順におよそ1/6、1/10低下し、シリウスレッド陽性エリアもそれぞれ順におよそ1/4、1/6低下していた。これらの結果からダントロレン投与によって肝線維化を抑制できることが明らかとなった。

【0036】
[実施例4:肝発癌抑制効果の検討]
(GST-P抗体による免疫組織染色)
実施例1で得られた12週目(84日目)の肝線維化・肝発癌ラットに対してGST-P抗体による免疫組織染色を行った。まず、実施例3と同様の方法でパラフィン包埋未染標本を作製し、パラフィン切片の脱パラフィン操作を行った後、抗ラットGST-Pに対する抗体(ABCAM社製)を用いたアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(ABC)法により免疫組織染色を行った。その後、GST-P抗体による染色結果を、高倍率顕微鏡(オリンパス社製)にて観察した。単位面積(1cm2)あたりの腫瘍個数と、組織小片の面積あたりのGST-P陽性面積の割合(%)とを、蛍光顕微鏡画像処理システムCA-H1DB(キーエンス社製)によって解析した。なお、GST-Pは肝前癌病変マーカーである。

【0037】
GST-P抗体を用いた免疫染色結果を図3に示す。図3において、CDAAのみ持続投与したコントロール群に対して、「CDAA+ダントロレン50持続投与群」又は「CDAA+ダントロレン100持続投与群」は、単位面積(1cm2)あたりの腫瘍個数が抑制されており、組織小片の面積あたりのGST-P陽性面積の割合はおよそ1/30へと有意に低下していた。この結果から、ダントロレン投与は、肝発癌抑制効果を示すことが明らかとなった。

【0038】
[実施例5:各投与群における各種遺伝子発現の検証]
(肝線維化・肝発癌ラットの作製)
6週齢Wister系雄性ラット(SLC社製)30匹(各群10匹)に上記コリン欠乏食を持続投与して、12時間明暗周期、25℃で飼育し、実施例1と同様に肝線維化・肝発癌ラットを作製した(CDAAのみ投与して作製した肝線維化・肝発癌ラットはコントロール群として用いた)。試験区として、CDAAにダントロレンを50mg/kg/day又は100mg/kg/day加えたものを連続投与して、同様に12時間明暗周期、25℃で飼育し、肝線維化・肝発癌ラットを作製した(「CDAA+ダントロレン50持続投与群」、「CDAA+ダントロレン100持続投与群」)。なお、本実施例に用いたダントロレンは実施例1と同様である。
このようにして作製した肝線維化・肝発癌ラットは、試験開始から12週間飼育した時点(84日目)において各種遺伝子発現の解析に供した。12週間飼育した肝線維化・肝発癌ラットから肝組織を採取し、採取された肝組織を凍結させ、常法に従いRNAを抽出した。Real-Time PCRでCollagen Type1、TIMP-1、TIMP-2、および、TGFβの各種遺伝子発現の検討を行った。PCRに用いたプライマーは、Perfect Real Time Primerのサイト(http://www.takara-bio.co.jp/prt/intro.htm)を参照して既成のプライマーセットを選択し、用いた。

【0039】
遺伝子発現解析の結果を図4に示す。図4に示すように、「CDAA+ダントロレン50持続投与群」、「CDAA+ダントロレン100持続投与群」のそれぞれにおいてにおけるCollagen
Type1、TIMP-1、TIMP-2、および、TGFβの遺伝子発現は、CDAAのみ持続投与したコントロール群の対応する遺伝子発現と比較して有意に低下していた。この結果からダントロレン投与は、肝線維化関連遺伝子の抑制効果を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るダントロレンを含む肝臓の線維化抑制剤によれば、肝臓における線維化を抑制することができる。これにより、難治性肝硬変症や年々増加している非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の中で未だ治療方法が確立していないNASHによる肝硬変や肝発癌に対する予防的な面での治療方法を提供することができる。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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