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明細書 :カテコール型抗酸化ナノ粒子形成性親水-疎水性共重合体及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-024921 (P2021-024921A)
公開日 令和3年2月22日(2021.2.22)
発明の名称または考案の名称 カテコール型抗酸化ナノ粒子形成性親水-疎水性共重合体及びその使用
国際特許分類 C08F 293/00        (2006.01)
A61K  31/77        (2006.01)
A61P  39/06        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
C08G  81/00        (2006.01)
C08F  12/22        (2006.01)
C08F   2/38        (2006.01)
FI C08F 293/00
A61K 31/77
A61P 39/06
A61P 29/00
C08G 81/00
C08F 12/22
C08F 2/38
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2019-142799 (P2019-142799)
出願日 令和元年8月2日(2019.8.2)
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】ホン ビン ロン
【氏名】佐藤 浩太郎
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
4J011
4J026
4J031
4J100
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA41
4C086NA14
4C086ZB11
4J011NA25
4J011NA26
4J011NB04
4J011NB05
4J026HA45
4J026HB05
4J026HB22
4J026HB35
4J026HB38
4J026HB47
4J031AA13
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC01
4J031AC04
4J031AD01
4J031AF03
4J100AB07P
4J100BA10P
4J100CA01
4J100DA71
4J100EA05
4J100FA04
4J100FA18
4J100JA50
要約 【課題】より改善された抗酸化特性を有する、特に、製薬学的技術分野で有用な材料の提供。
【解決手段】次式Iで表されるブロック共重合体、及びその製薬学的製剤が提供される。

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上式中、Aはアルコキシル基、Lは、直接結合又は二価の連結基を表し、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、それらのいずれか1つ又は2つの基はエステル残基を表し、それぞれ、残りの4つの基の一つはメトキシと3つの水素原子であり、または、残りの3つの基は、水素原子であり、Zは水素原子等であり、mは5~10,000の整数であり、nは5~5,000の整数である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
次式Iで表されるブロック共重合体。
【化1】
JP2021024921A_000007t.gif
上式中、
Aは、非置換または置換C1-C12アルキルオキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R'"CH-基を表し、ここで、R'及びR"は独立してC1-C4アルキルオキシ又はR'とR"は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表す。
Lは、直接結合又は二価の連結基を表す。
1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、それらのいずれか1つ又は2つの基は生体内に存在するエステラーゼにより加水分解されるエステル残基を表し、それぞれ、残りの4つの基の一つはメトキシと3つの水素原子であり、または、残りの3つの基は、水素原子である。
Zは水素原子、SH、S(C=S)-Ph、ヒドロキシル基、C1-C6アルキルオキシ基、アリール-C1-C2アルキルオキシ基、を表し、Phは1または2個のメチル又はメトキシで置換されていてもよいフェニルを表す。
mは50~10,000の整数を表す。
nは5~5,000の整数を表す。
【請求項2】
請求項1に記載されたブロック共重合体であって、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、相互に隣接位にある2つのエステル残基である、ブロック共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたブロック共重合体であって、エステル残基は、式-O(C=O)Reで表され、Reは、
(a)C1-C20アルキル基、又は
(b)C1-C4アルキレン-Ph(ここでPhはフェニルである)
である、ブロック共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載されたブロック共重合体の水性溶液から形成されるナノ粒子。
【請求項5】
請求項1~3にいずれかに記載されたブロック共重合体における、nの反復単位がコアに存在し、mの反復単位がシェルに存在する、コア-シェル型ナノ粒子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載されたナノ粒子を有効成分として含む製薬学的製剤。
【請求項7】
ヒトを含む哺乳動物の炎症を予防又は治療するために使用される請求項6に記載された製薬学的製剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、親水-疎水性ブロック共重合体の疎水性セグメント側鎖にカテコールエステル類が共有結合を介して担持される共重合体及びその自己組織化により形成されるナノ粒子に関する。さらには、本発明はかようなナノ粒子の抗酸化剤としての使用又は酸化ストレスに起因する疾患の治療への使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、これまで、ポリ(エチレングリコール)(以下、PEGと略記する場合あり。)セグメントとニトロキシドラジカルを疎水性セグメントの側鎖に有する親水性-疎水性ブロック共重合体を提供してきた(特許文献1、特許文献2、参照。)。これらの共重合体は、水性媒体中での自己組織化により高分子ミセル様ナノ粒子(RNPとも略記する。)を形成し、ニトロキシドラジカル、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)を低分子抗酸化剤として生体内で使用する際の問題点であった、速やかな排出や正常細胞のミトコンドリア障害を低減せしめる等の高い作用、効果を奏することが確認知られている。
【0003】
他方、ベンゼン環のオルト位にヒドロキシル基が2つ結合したカテコール基は、多種多様な天然物中に見られるフェノール類の一種であり、抗酸化能や材料表面との水素結合能等を有することが当該技術分野で周知である。例えば、後者の性質を効果的に利用すべく、カテコール基を側鎖に持つブロック共重合体やランダム共重合体が提供されている(非特許文献1)。また、その他のカテコール基を有する重合体又は共重合体は、自動車や電子機器をはじめとする様々な製品や合成繊維の素材として広範に使用されているポリアミドの改質用として、ポリアミドと混合して使用することが、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2009/133647
【特許文献2】WO2016/052463
【特許文献3】特開2017-165904号公報
【0005】

【非特許文献1】:Saito,Y.;Yabu,H.Synthesis of Poly(Dihydroxystyrene-Block-Styrene)(PDHSt-b-PSt)by the RAFT Process and Prepation of Organic-Solvent-Dispersive Ag NPs…Chem.Commun.2015,51(18),3743-3746
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されるようなRNPはニトロキシドラジカルがそのまま重合に使えないため、合成に多段階のステップを要すること、ストック中に二量化等の副反応が起こる可能性があることなど、未だ、より改善した又はより向上した抗酸化特性を有する多様な材料の提供に関するニーズが存在する。
【0007】
このような背景の下、上記のニトロキシドラジカルに代え、ベンゼン環のオルト位に結合する2つのヒドロキシル基がエステル化されたカテコールエステルを疎水性セグメント
の側鎖に含む親水性-疎水性ブロック共重合体は、水性媒体中で自己組織化することにより安定で安全な高分子ミセル様ナノ粒子を形成すること、さらに、当該2つのヒドロキシル基が、所謂、保護された(カテコールエステル)の形態にあるにもかかわらず、あるいはまた、保護された形態にあるため、当該ナノ粒子は、生体内に、例えば経口的に投与されたとき、腸内粘膜に集積し、内因性エステラーゼにより加水分解され、カテコールの抗酸化能を発揮することが見いだされた。
【0008】
また、かようなカテコールエステルは、当業者であれば、化学構造から理解できるように、その各種位置異性体や類縁のフェノール誘導体も、同様に機能する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本願は、前記の課題を解決する手段として次の態様の発明を提供する。
態様1:次式Iで表されるブロック共重合体。
【0010】
【化1】
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【0011】
上式中、
Aは、非置換または置換C1-C12アルキルオキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R'"CH-基を表し、ここで、R'及びR"は独立してC1-C4アルキルオキシ又はR'とR"は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表す。
Lは、直接結合又は二価の連結基を表す。
1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、それらのいずれか1つ又は2つの基は生体内に存在するエステラーゼにより加水分解されるエステル残基を表し、それぞれ、残りの4つの基の一つはメトキシと3つの水素原子であり、または、残りの3つの基は、水素原子である。
Zは水素原子、SH、S(C=S)-Ph、ヒドロキシル基、C1-C6アルキルオキシ基、アリール-C1-C2アルキルオキシ基を表し、Phは1または2個のメチル又はメトキシで置換されていてもよいフェニルを表す。
mは5~10,000の整数を表す。
nは5~5,000の整数を表す。
態様2:態様1に記載されたブロック共重合体であって、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、相互に隣接位にある2つのエステル残基である、ブロック共重合体。態様3:態様1又は2に記載されたブロック共重合体であって、エステル残基は、式-O(C=O)Reで表され、Reは、
(a)C1-C20アルキル基、又は
(b)C1-C4アルキレン-Ph(ここでPhはフェニルである)
である、ブロック共重合体。
態様4:態様1~3のいずれかに記載されたブロック共重合体の水性溶液から形成されるナノ粒子。
態様5:態様1~3のいずれかに記載されたブロック共重合体における、nの反復単位がコアに存在し、mの反復単位がシェルに存在する、コア-シェル型ナノ粒子。
態様6:態様4又は5に記載されたナノ粒子を有効成分として含む製薬学的製剤。
態様7:ヒトを含む哺乳動物の炎症を予防又は治療するために使用される態様6に記載された製薬学的製剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブロック共重合体は、PEGセグメントを親水性ブロックとし、他方、疎水性ブロックとして、抗酸化作用やその他の様々の生理活性を有することが知られている天然生理活性物質たるカテコール基含有化合物に類する側鎖基有し、かつ、カテコール基を構成するヒドロキシル基がエステル化された、反復単位を含む。理論に拘束されるものでないが、当該ブロック共重合体は、水性媒体中では、疎水性ブロックをコアとし、親水性ブロックをシェルとする、コア-シェル型ナノ粒子を形成することができる。このようなナノ粒子は、生体内に投与されたとき、炎症部などの一定の特性を有する局所又は器官に堆積し、その場で加水分解されて本来のカテコール基含有化合物が有る生理活性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製造例2で得られたPEG-b-ポリ(ビニルカテコールジアセチル)の1H NMRスペクトル。
【図2】製造例3で作製した水中会合体(N736)の動的光散乱測定結果を表す。
【図3】DSS投与マウス群の体重変化及び大腸の疾病活性インデックス(Disease activity index)を示すグラフ。
【図4】試験例1における各処置群のモデルマウスの大腸長を示す写真。
【図5】試験例1における各処置群のモデルマウスの脾臓重量を表すグラフ。
【図6】試験例1における各処置群のモデルマウスの各種血球スコアを表すグラフ。
【図7】大腸のH&E染色及び組織スコアのを示すグラフ
【図8】大腸の好中球浸潤及び炎症性サイトカインレベルを表すグラフ
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明に関して記述された用語等は、特に言及しない限り、当該技術分野で常用されている意味又は内容を有するものとして使用されている。一般的に、本発明について以下の追加の説明をすることができる。
【0015】
式(I)で表されるブロック共重合体において、Lについて定義する二価の連結基は、ポリ(エチレングリコール)(以下、PEGと略記する場合あり。)を含むセグメントと側鎖としての-Ph(R1)(R2)(R3)(R4)(R5)(ここで、Phはフェニル骨格である。)を有するセグメントの機能が本発明の目的に沿うものであれば、限定されるものでない。しかし、二価の連結基は、一般的には、最大34個、好ましくは18個、より好ましくは最大10個の炭素、並びに任意に酸素及び窒素原子を含有する基を意味する。かような連結基として、具体的には次の基を挙げることができる:下式
【0016】
【化2】
JP2021024921A_000003t.gif
【0017】
で表される基から選ばれるか、又は-(CH2bS-、-CO(CH2bS-、-(CH2bNH-、-(CH2bCO-、-CO-、-OCOO-、-CONH-からなる群より選ばれ、各bは独立して、1~5の整数である、で表される。
【0018】
Aの定義に限定されるものでないが、本発明全体を通して、Cα-Cωアルコキシ又はアルキル若しくはアルキレンのように表示される場合、炭素原子数α個~ω個を有する基を意味する。これらは、直鎖若しくは分岐のアルコキシ若しくはアルキルを意味し、アルキル部分又はアルキルとしては、限定されるものでないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデカニル、ペンタデカニル、ノナデカニル、等を挙げることができ、アルキレン部分は、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、等であることができる。
【0019】
Lとしては、パラキシリレン若しくはメタキシリレン、または-(CH22S-の連結基であることが好ましい。Lが結合の方向性により、異なる意味を有する場合には、記載された方向性をもって結合するものと意図されており、例えば、-(CH22S-の連結基にあっては、S原子が式(I)のnの付された反復単位と結合することを意味する。
【0020】
式(I)において、nの付された反復単位における側鎖基中の、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、エステル残基,例えば、-O(C=O)Reで表すことができる。かようなエステル残基を構成するReが、アルキル基である場合、C1-C20アルキル基、好ましくは、C1-C12アルキル基、より好ましくはC1-C4アルキル基であることができる。
【0021】
本発明の目的上、エステル残基は、ヒトをはじめとする哺乳動物の生体内に存在するエステラーゼにより加水分解又は開裂されるものに興味が向けられている。エステル残基がエステラーゼにより加水分解又は開裂されるかは、当該技術分野で周知の生体由来のエステラーゼを用いる模擬生体環境下での試験管内試験で確認できるので、当業者は、本発明の目的に沿うエステル残基を容易に選択できる。あるいはまた、エステル残基は、それ自体公知のプロドラッグを形成するエステル残基に習って選択することがきる。
【0022】
1、R2、R3、R4、R5の内の一つが前述のエステル残基であり、もう一つがメトキシであり、残りが水素原子である場合、例えば、天然物である例えば、フェルラ酸に準じ、重合体主鎖に結合する炭素原子を基準にして、4-位にエステル残基が存在し、3又は5位にメトキシが存在するものが好ましい。
【0023】
1、R2、R3、R4、R5の中の二つがエステル残基であり、残りが水素原子である場合、これらは相互に隣接する位置にエステル残基が存在するのが好ましいが、これに限定されない。より具体的には、天然物である例えば、カフェ酸、クロロゲン酸、ロズマリン酸に準じ、3,4位又は4,5位にエステル残基が存在するものが好ましいが、エステル
残基の結合位置は、これらに限定されない。
【0024】
Zは、ブロック共重合体が水性媒体中で自己組織化して高分子ミセル様のナノ粒子を形成することを妨げないものであれば、いかなるものであってもよい。しかし、ブロック共重合体を提供する上で便宜がよい基であることができる。このような基は、例えば、nの付された反復単位を含むセグメントの重合生成後の後処理により導入される基又はその基を改変した基であることができる。このような基として、限定されるものでないが、水素原子、SH、S(C=S)-Ph、ヒドロキシル基、C1-C6アルキルオキシ基、アリール-C1-C2アルキルオキシ基を挙げることができる。
【0025】
mの整数は、5~10,000以外に、12~1000、50~500であることができ、nの整数は、5~5,000以外に、6~200、10~100、10~60であることができる。
【0026】
このようなブロック共重合体は、上記式(I)で表される化学構造式を参照して、当業者であれば、いずれかの公知の製造方法に従って得ることができるが、上記の特許文献1及び特許文献2を参照して、次の様に製造するのが便宜である。
【0027】
まず、PEGセグメントを、
式A-1:
【0028】
【化3】
JP2021024921A_000004t.gif
【0029】
又は
式A-2:
【0030】
【化4】
JP2021024921A_000005t.gif
【0031】
(上式中の、A、L、nは上記に定義したとおりである。)
で表されるPEGブロックに相当するPEG誘導体を、それぞれ、特許文献1又は特許文献2に記載の方法にしたがって製造し、次いで、
下記式B:
【0032】
【化5】
JP2021024921A_000006t.gif
【0033】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5は、上記に定義したとおりである。)
で表される化合物を重合させる。
【0034】
この重合反応は、特許文献1及び特許文献2に記載された、ハロゲン化メチルスチレンを用いる重合反応の反応条件に準じて実施することができる。
【0035】
式Bの化合物は、後述する例に示すように相当する天然物、例えば、カフェ酸から製造されたビニルカテコールジエステルに準じて入手できるが、ACS Sustainable Chem.Eng.2018,6,13681-13686に記載された公知のビニルカテコールをエステル化することにより入手できる。
【0036】
こうして得られるブロック共重合は、両親媒性であり、前述したように、水性媒体、例えば、水、イオン強度の高められたまたは緩衝剤を含む水性媒体または水性溶液中で、自己組織化することにより、疎水性部(式B由来のセグメント又はブロック)をコアとし、親水性部(式A-1又はA-2由来のセグメント又はブロック)をシェルとするナノサイズであり、かつ、水に対して可溶化した又は分散したミセル粒子として安定に存在し得るナノ粒子を形成できる。
【0037】
本発明に関してナノサイズとは、水性媒体中でナノ粒子の動的光散乱測定(DLS)を行ったとき、平均径がナノメートル台にあり、一般的に、平均径が、約10nm~約500nm、約10nm~約200nm、約25nm~約60nmのサイズにあることを意味する。水性媒体中で形成されたナノ粒子は、例えば、凍結乾燥、遠心分離、等をすることにより、固形物として存在し得る。
【0038】
式(I)で表されるブロック共重合体は、それら自体でナノサイズの粒子を形成できるが、これらの粒子を形成する系に、疎水性又は水難溶性の薬物を共存させれば、当該薬物を効率よくナノ粒子に内包又は充填できるので、薬物のドラッグデリバリー用担体としても利用できる。
【0039】
こうして提供される、ナノ粒子及び薬物内包ナノ粒子は、水性媒体中で、可溶化または均一に分散した溶液または液剤として提供できるので非経口製剤をはじめ、各種形態にある経口製剤とすることができる。例えば、経口製剤として提供する場合、本発明のレドックスナノ粒子は凍結乾燥することにより固形物として提供できるので、それ自体の当該技術分野で常用されている賦形剤、希釈剤を利用して錠剤、丸薬、顆粒剤として提供することもできる。賦形剤又は希釈剤は、限定されるものでないが、当該技術分野で常用されている、クロロカルメロースナトリウム、結晶セルロース、ヒプロメロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、マクロゴール4000、酸化チタン、等であることができる。
【0040】
前述した、炎症、特に、酸化ストレス又は活性酸素種に起因する疾患、例えば、潰瘍性
大腸炎、等の予防又は治療に本発明のナノ粒子を使用する場合の用量は、疾患の種類程度等により最適値が変動するので限定的でないので、小規模の臨床試験等を通して得られるデータ等に基づいて専門医が決定することができる。
【実施例】
【0041】
以下、説明が煩雑になることを避けるため、本発明の典型的な例について具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものでない。
【0042】
製造例1: ビニルカテコールジエステルの合成
三方コックのついた1L三ツ口フラスコにカフェ酸(25.0g,139mmol)を入れ、DMF(194mL)、トリエチルアミン(58.0mL,416mmol)を加えて溶解した後、溶液を撹拌しながら100℃まで加熱した。1時間後、室温まで冷却し、1H NMRを測定したところ、99%以上の反応率でカフェ酸がビニルカテコールへと変換されていることが確認された。この溶液を0℃に冷却した後、無水酢酸(26.4mL,279mmol)をゆっくり加えた。撹拌しながら室温で2時間反応を行った後、0.1N塩酸100mLを加えて反応を停止した。ジエチルエーテル200mLで有機成分を抽出した後、有機層を0.1N塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、純水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥後、ロータリーエバポレーターにて濃縮、減圧蒸留により無色透明のビニルカテコールジエステルを得た(22.7g,74%,bp 80°C/5Pa)。
【0043】
製造例2: PEG-b-ポリ(ビニルカテコールジアセチル)(N727)の合成
特許文献2の実施例4の方法に従って合成したCH3O-(CH2CH2O)n-CH2PhCH2SC(=S)Ph(Phはベンゼン環を表す。PEGの分子量:5,000、n=約114)を1g、アゾビスイソブチロニトリル(45mg)、ビニルカテコールジエステル(2g)をフラスコにいれ、窒素を5分間吹き込んだ後、60°C、1日反応させた後、テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ヘキサンに投入して沈殿を得、減圧乾燥によって目的物を得た(3g,1H NMRスペクトルを図1に示す。)。
【0044】
製造例3: PEG-b-ポリ(ビニルカテコールジアセチル)水中会合体(N736)の調整
製造例2で合成したポリマー(N727)を500mg採取し、12.5mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ水を12.5mL加えて透析膜(MWCO=3.5KDa)に入れて2Lの水に対して透析した。半日ごとに3度透析水を交換した後、動的光散乱測定を行い、30nmの粒子が形成していることを確認した(図2参照。)。
【0045】
試験例1: DSSが誘発する潰瘍性大腸炎に対する効果
試験は、7週齢で購入したICR雄マウス(SPF)を3日間予備飼育し、無作為に3群に分けた後、それぞれ、一群目を対照(正常、3匹)群、二群目を(DSS+Polcatechol NPs、6匹)、三群目(DSS+水、6匹)とした。
【0046】
二群目は、DSS(分子量5,000、和光純薬工業)を水道水に5%濃度に溶解させ、飲料水として7日間、自由摂取させた。一方、三群目は二群目のとおりのDDS処理中に製造例3により調製されたN736のナノ粒子を一日一回7日間毎日経口ガヴァージ投与(5mg/マウス/日)した。
【0047】
投与開始後7日後にマウスを頚椎脱臼で安楽死させ、大腸組織を摘出後、その全長を測定した。下痢スコア、血便スコアおよび大腸の長さは群毎の平均値±標準誤差を算出した。図3に疾病活性インデックス(Disease activity index)(D
AI、下痢スコア(0→3)、血便スコア(0→3)及び体重減少(0→4)の総和、0が最も健康で10が最も悪い)を示す。カテコールナノ粒子投与群ではDSS群に比べて優位にDAIの低下が確認された。
【0048】
解析した結果、大腸の炎症を示す大腸長は潰瘍性大腸炎マウスに比べて優位に回復し(図4参照。)、炎症を示す脾臓重量も優位に低下した(図5参照。)。また、潰瘍性大腸炎モデルでは血液中の白血球数が上昇し、赤血球数及びヘモグロビン数が低下しているが、ナノ粒子投与群では優位に回復した(図6参照。)。
【0049】
大腸の組織をヘマトキシリン・エオジン染色(H&E染色)した結果を図7に示す。炎症の重症度を以下のように点数化した:0、固有層内のまれな炎症細胞。 1、固有層における顆粒球数の増加。 2、粘膜下組織に広がる炎症細胞の合流。 3、炎症性浸潤物の経壁的な広がり。線管の損傷は以下のように採点された:0、無傷。 1、3分の1の損失。2、3分の2の損失。 3、全体の線管損失。 4、浸食による上皮表面の変化。
5、コンフルエントな侵食。潰瘍形成は以下のように採点された:0、潰瘍がない。 1、1または2つの病巣の潰瘍。 2、3または4つの病巣の潰瘍。 3、コンフルエントまたは広範囲な潰瘍。 合計11の最大組織学的スコア(最も悪い)カテコールナノ粒子投与群では炎症スコアがDDS群に比べて優位に改善されていることが確認された。
【0050】
最後に炎症性サイトカインの解析を行った。好中球の浸潤を示すMPO、炎症性サイトカインIL-&及びTNF-αレベルがいずれもカテコール粒子投与群でDSS単独群に比べて優位に低下しており、大腸の炎症が低下していることが確認された。(図8参照)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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