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明細書 :希土類錯体及び発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年1月9日(2020.1.9)
発明の名称または考案の名称 希土類錯体及び発光素子
国際特許分類 C07F   9/53        (2006.01)
C07C  49/167       (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
H01L  33/50        (2010.01)
C07F   5/00        (2006.01)
FI C07F 9/53 CSP
C07C 49/167
C09K 11/06 660
H01L 33/50
C07F 5/00 D
国際予備審査の請求
全頁数 31
出願番号 特願2019-501414 (P2019-501414)
国際出願番号 PCT/JP2018/006466
国際公開番号 WO2018/155557
国際出願日 平成30年2月22日(2018.2.22)
国際公開日 平成30年8月30日(2018.8.30)
優先権出願番号 2017035043
優先日 平成29年2月27日(2017.2.27)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】北川 裕一
【氏名】鈴江 郁哉
【氏名】中西 貴之
【氏名】伏見 公志
【氏名】長谷川 靖哉
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H048
4H050
5F142
Fターム 4H006AA01
4H006AB92
4H048AA01
4H048AB92
4H048VA70
4H048VB10
4H050AA01
4H050AB92
5F142AA23
5F142AA25
5F142DA02
5F142DA49
5F142DA55
5F142DA73
5F142FA28
5F142GA40
5F142HA01
要約 希土類イオンと、該希土類イオンに配位し縮合多環芳香族基を有する配位子と、を備える希土類錯体が開示される。縮合多環芳香族基が、下記式(I)又は(II)で表される縮合多環芳香族化合物から水素原子を除いた残基である。
【化1】
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特許請求の範囲 【請求項1】
希土類イオンと、該希土類イオンに配位し縮合多環芳香族基を有する配位子と、を備える希土類錯体であって、
前記縮合多環芳香族基が、下記式(I)又は(II)で表される縮合多環芳香族化合物から式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している水素原子を除いた残基であり、前記縮合多環芳香族化合物が、式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している置換基を有していてもよい、
希土類錯体。
【化1】
JP2018155557A1_000021t.gif

【請求項2】
前記縮合多環芳香族基を有する配位子が、下記式(10)で表されるホスフィンオキシド配位子、又は下記式(20)で表されるジケトン配位子のうち少なくともいずれか一方である、請求項1に記載の希土類錯体。
【化2】
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[式(10)中、Zは前記縮合多環芳香族基を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基を示し、
式(20)中、Zは前記縮合多環芳香族基を示し、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基、又はヘテロアリール基を示す。]
【請求項3】
前記縮合多環芳香族基を有する配位子が、前記式(10)で表されるホスフィンオキシド配位子であり、
当該希土類錯体が、前記希土類イオンに配位し下記式(21)で表されるホスフィンオキシド配位子を更に備える、請求項2に記載の希土類錯体。
【化3】
JP2018155557A1_000023t.gif
[式(21)中、R23、R24及びR25はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基、又はヘテロアリール基を示す。]
【請求項4】
前記縮合多環芳香族基を有する配位子が、前記式(20)で表されるジケトン配位子であり、
当該希土類錯体が、前記希土類イオンに配位し下記式(11)で表されるジケトン配位子を更に備える、請求項3に記載の希土類錯体。
【化4】
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[式(11)中、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基を示す。]
【請求項5】
前記縮合多環芳香族基を有する配位子が、下記式(30)で表される二座のホスフィンオキシド配位子であり、該ホスフィンオキシド配位子が2個の前記希土類イオンに配位している、請求項1に記載の希土類錯体。
【化5】
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[式(30)中、Zは前記縮合多環芳香族基を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基を示す。]
【請求項6】
当該希土類錯体が、前記希土類イオンに配位し下記式(21)で表されるホスフィンオキシド配位子を更に備える、請求項5に記載の希土類錯体。
【化6】
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[式(21)中、R23、R24及びR25はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基、又はヘテロアリール基を示す。]
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の希土類錯体を含む、発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類錯体及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色発光を示す希土類錯体は、例えば白色LED光源を構成する蛍光体としての応用が期待される。赤色発光を示す希土類錯体として、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(hfa)誘導体及びホスフィンオキシド化合物を配位子として有するユーロピウム錯体が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2016-166139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
強発光性の希土類発光体の励起波長帯(吸収波長)は、一般に400nm以下である。一方、白色LED光源の発光体の汎用的な励起波長は、青色LEDで励起する可視光域の460nm付近である。希土類発光体を青色LEDで励起することが可能となれば、高演色性に優れる利点から、新たな市場の創出が期待される。
【0005】
本発明の主な目的は、460nm付近の可視光を用いた励起により効率的に発光する、新規な希土類錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、希土類イオンと、該希土類イオンに配位し縮合多環芳香族基を有する配位子と、を備える希土類錯体を提供する。前記縮合多環芳香族基が、下記式(I)又は(II)で表される縮合多環芳香族化合物から式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している水素原子を除いた残基である。前記縮合多環芳香族化合物は、式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している置換基を有していてもよい。
【0007】
【化1】
JP2018155557A1_000003t.gif

【0008】
本発明はまた、上記希土類錯体を含む発光素子に関する。係る発光素子は、白色LED、光干渉断層計の光源等の各種光源として有用である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光(例えば、420~480nm)を用いた励起により効率的に発光する、新規な希土類錯体が提供される。また、本発明の一実施形態に係る希土類錯体は、発光スペクトルにおいて比較的狭い幅の発光帯で発光を示す傾向があり、この点でも発光素子への応用の上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Gd(hfa)(HO)、及びGd(hfa)(DPPTO)の粉体の発光スペクトルである。
【図2】Eu(hfa)(DPPTO)の粉体の励起及び発光スペクトルである。
【図3】Eu(hfa)(DPPTO)及びEu(hfa)(HPO)の吸収強度×発光効率と波長との関係の計算結果を示すグラフである。
【図4】Eu(hfa)(DPPTO)、及び設計された希土類錯体の吸収強度と波長との関係の計算結果を示すグラフである。
【図5】Eu(hfa)(BDPPC)の粉体の励起及び発光スペクトルである。
【図6】Eu(hfa)(BDPPC)を低濃度で含むクロロホルム溶液の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0012】
一実施形態に係る希土類錯体は、希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数の配位子とを有する。

【0013】
希土類イオンは、例えば、ユーロピウム(Eu)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)、及びガドリニウム(Gd)から選ばれる希土類元素のイオンである。例えば、ユーロピウムは3価の陽イオン(Eu3+)として錯体を形成する。

【0014】
一実施形態に係る希土類錯体は、下記式(I)又は(II)で表される縮合多環芳香族化合物から誘導される縮合多環芳香族基を有する配位子を有する。縮合多環芳香族基は、式(I)又は(II)で表される縮合多環芳香族化合物から、式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している水素原子を除いた残基である。式(I)又は(II)の縮合多環芳香族化合物及びこれから誘導される縮合多環芳香族基は、式(I)又は式(II)中の縮合芳香環に結合している置換基(例えばメチル基)を有していてもよいし、有していなくてもよい。係る縮合多環芳香族基は、大きな面積及び大きな幅のπ共役系を有しており、これが460nm付近の可視光を用いた励起による効率的な発光に寄与する。このことは、後述するように、半経験的分子軌道法による吸収特性の計算から、裏付けられる。

【0015】
【化2】
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【0016】
式(I)の縮合多環芳香族化合物から水素原子を除いた残基である縮合多環芳香族基の具体例としては、下記式(Ia)で表される1価の縮合多環芳香族基、及び下記式(Ib)で表される2価の縮合多環芳香族基が挙げられる。これら式中の*は結合手を示し、これは他の式でも同様である。
【化3】
JP2018155557A1_000005t.gif

【0017】
式(II)の縮合多環芳香族化合物から水素原子を除いた残基である縮合多環芳香族基の具体例としては、下記式(IIa)で表される1価の縮合多環芳香族基、及び下記式(IIb)で表される2価の縮合多環芳香族基が挙げられる。
【化4】
JP2018155557A1_000006t.gif

【0018】
縮合多環芳香族基を有する配位子は、例えば、下記式(10)で表されるホスフィンオキシド配位子、又は下記式(20)で表されるジケトン配位子のうち少なくともいずれか一方であってもよい。
【化5】
JP2018155557A1_000007t.gif

【0019】
式(10)中、Zは上述の式(I)又は(II)の縮合多環芳香族化合物から誘導される縮合多環芳香族基を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基を示す。式(20)中、Zは上述の式(I)又は(II)の縮合多環芳香族化合物から誘導される縮合多環芳香族基を示し、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、前記縮合多環芳香族基とは異なるアリール基、又はヘテロアリール基を示す。

【0020】
11又はR12としてのアリール基は、芳香族化合物から1個の水素原子を除いた残基であることができる。アリール基の炭素原子数は、例えば6~14である。アリール基の具体例としては、置換若しくは無置換のベンゼン、置換若しくは無置換のナフタレン、置換若しくは無置換のアントラセン、又は置換若しくは無置換のフェナントレンから1個の水素原子を除いた残基が挙げられる。特に、R11及びR12が置換又は無置換のフェニル基であってもよい。

【0021】
21又はR22としてのアルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~15、1~5、又は1~3であってもよい。ハロゲン化アルキル基は、トリフルオロメチル基等のフッ素化アルキル基であってもよい。R21又はR22としてのアリール基及びヘテロアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びチエニル基が挙げられる。R21はメチル基、トリフルオロメチル基、tert-ブチル基、又はフェニル基であってもよい。R22は水素原子(重水素原子も含む)であってもよい。

【0022】
縮合多環芳香族基を有する配位子は、例えば下記式(30)で表される、二座のホスフィンオキシド配位子であってもよい。式(30)中のZ、R11及びR12は、式(10)中のZ、R11及びR12と同様に定義される。式(30)のホスフィンオキシド配位子は、2個の希土類イオンに配位して、それら希土類イオンを連結していてもよい。

【0023】
【化6】
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【0024】
希土類錯体は、縮合多環芳香族基を有する配位子に加えて、その他の配位子を更に有してもよい。その他の配位子の例としては、下記式(11)で表されるジケトン配位子、及び下記式(21)で表されるホスフィンオキシド配位子が挙げられる。
【化7】
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【化8】
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【0025】
式(11)中、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、上述の式(I)又は(II)の縮合多環芳香族化合物から誘導される縮合多環芳香族基とは異なるアリール基を示す。R13、R14又はR15としてのアリール基の例としては、式(10)のR11、R12と同様のものが挙げられる。R13、R14及びR15が置換又は無置換のフェニル基であってもよい。

【0026】
式(21)中、R23、R24及びR25はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、上述の式(I)又は(II)の縮合多環芳香族化合物から誘導される縮合多環芳香族基とは異なるアリール基、又はヘテロアリール基を示す。R23、R24及びR25の例としては、式(20)中のR21、R22と同様のものが挙げられる。R23及びR25がそれぞれ独立にメチル基、トリフルオロメチル基、tert-ブチル基、又はフェニル基で、R24が水素原子(重水素原子も含む)であってもよい。

【0027】
式(20)又は式(21)で表されるジケトン配位子を含む希土類錯体は、強発光等の観点でより一層優れた特性を有し得る。そのため、希土類錯体の配位子として、式(20)で表され縮合多環芳香族基を有するジケトン配位子と式(11)で表されるジケトン配位子との組み合わせ、又は、式(21)で表されるホスフィンオキシド配位子と式(10)で表され縮合多環芳香族基を有する配位子との組み合わせを選択してもよい。例えば、希土類錯体が、下記式(C1)又は(C2)で表される錯体であってもよい。式(C1)及び(C2)中、Ln(III)は3価の希土類イオンを示す。

【0028】
【化9】
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【0029】
ジケトン配位子を有する希土類錯体は、式(30)で表される二座の配位子を有していてもよい。その例は、下記(C3)で表される錯体である。式(C3)中の各符号の定義は前記と同義である。式(C3)で表される錯体において、2個の希土類イオンLn(III)が2個の二座配位子によって連結されている。
【化10】
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【0030】
本実施形態に係る希土類錯体を含む発光素子は、例えば、青色LED励起型の白色LED素子、光干渉断層計(OCT)の光源への応用が期待される。いくつかの実施形態に係る希土類錯体は、140nm以上又は200nm以上の広い帯域幅の発光素子を低コストで提供し得る。帯域幅は、例えばOCTの解像度に直接影響し、広い帯域幅の光源によって高い解像度が得られる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
1.希土類錯体の合成
(1)Gd(hfa)(DPPTO)の合成
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ガドリニウム(Gd(hfa)(HO),350mg,0.430mmol)と2-ジフェニルホスホリルトリフェニレンDPPTO(500mg,1.17mmol)をトルエン(15mL)に溶かし、得られた反応溶液を12時間、85℃で加熱還流した。次いで、反応溶液をエバポレーターで乾固させた。残渣をジクロロメタン/ヘキサンの混合溶媒を用いて再沈殿させ、沈殿物をヘキサンで洗浄して、Gd(hfa)(DPPTO)(白色粉体)を得た(収量78mg,収率13%)。
元素分析(%): calcd for C105H66GdF18O9P3:C 61.11, H 3.22. Found: C 62.53, H 3.53.
ESI-MS: m/z calcd for C100H65GdF12O7P3[M-hfa]+ = 1856.30; found: 1856.35.
【実施例】
【0033】
(2)Eu(hfa)(DPPTO)の合成
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(Eu(hfa)(HO),350mg,0.430mmol)と2-ジフェニルホスホリルトリフェニレン(DPPTO,300mg,0.701mmol)をトルエン(10mL)に溶かし、得られた反応溶液を12時間、85℃で加熱還流した。次いで、反応溶液をエバポレーターで乾固させた。残渣をジクロロメタン/ヘキサンの混合溶媒を用いて再沈殿させ、沈殿物をヘキサンで洗浄して、Eu(hfa)(DPPTO)(白色粉体)を得た(収量82mg,収率17%)。
元素分析(%):calcd for C105H66EuF18O9P3:C 61.26, H 3.23. Found: C 61.40, H 3.41
ESI-MS: m/z calcd for C100H65EuF12O7P3[M-hfa]+ = 1851.30; found: 1851.32.
【実施例】
【0034】
【化11】
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【実施例】
【0035】
(3)Eu(hfa)(BDPPC)の合成
1,6-ビス(ジフェニルホスホリル)コロネン(BDPPC)の合成
クロロベンゼン(300mL)中にコロネン(6.3g,20.9mmol)を懸濁させ、そこに、クロロベンゼン(100mL)と臭素(10.0g,62.6mmol)との混合物を滴下した。形成された反応液を、撹拌しながら、70℃で15分間加熱し、次いで20分間氷冷した。撹拌を終了して反応液を静置し、デカンテーションを行った。吸引ろ過により取り出した固体を、クロロベンゼン、及びヘキサンで洗浄後、乾燥して、ジブロモコロネンを含む黄色固体(7.4g)が得られた。
得られた黄色固体を、超脱水THF(250mL)中に懸濁させた。そこにn-ブチルリチウム(8.5mL,14mmol)を加え、懸濁液を撹拌した。2時間後、クロロジフェニルホスフィン(2.4mL,13mmol)を加えると、懸濁液は透明な溶液に変化した。この溶液にH(2mL)を加え、3時間撹拌した。次いで、溶液からジクロロメタン及び食塩水で3回抽出した。ジクロロメタン層を乾固し、得られた粗生成物の固体を、シリカカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製して、BDPPCを得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):/ppm = 10.03-8.60 (m, 10H), 7.99-7.40 (m, 20H)
【実施例】
【0036】
Eu(hfa)(BDPPC)の合成
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(Eu(hfa)(HO),65mg,0.08mmol)とBDPPC(50mg,0.07mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶かし、得られた反応溶液を4時間、室温で攪拌した。次いで、反応溶液をエバポレーターで乾固させた。固化した粗生成物を、ジクロロメタン/ヘキサンの混合溶媒を用いた再結晶により精製して、Eu(hfa)(BDPPC)(黄色粉体)を得た(収量10mg,収率5%)。
ESI-MS: m/z calcd for C121H65Eu2F30O14P4 [M-hfa]+ =2740.13; found: 2740.08.
【化12】
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【実施例】
【0037】
2.Gd(hfa)(DPPTO)の光物理的性質
図1は、Gd(hfa)(HO)、及びGd(hfa)(DPPTO)の粉体の発光スペクトルである。励起波長λexは280nm又は380nmとした。Gd(hfa)(HO)の発光スペクトルにおいて、470nm付近にhfaに由来する燐光が観測された。Gd(hfa)(DPPTO)の発光スペクトルにおいて、励起光が280nmであるときに370nm付近と470nm付近に発光帯が観測された。短波長側の発光帯は、配位子のDPPTO単体の蛍光と一致することから、錯体中のDPPTO配位子の蛍光に由来していると考えられる。長波長側の発光帯は、Gd(hfa)(HO)におけるhfaの燐光帯と波長域が重なることから、主にhfa配位子の燐光が観測されたものと考えられる。一方、励起光が380nmであるときに、430nm付近にGd(hfa)(DPPTO)の発光帯が観測された。この発光帯のエネルギーはDPPTO配位子単体(溶液、又は粉体条件)のT状態のエネルギーに近いことから、430nm付近の発光帯は、主にGd(hfa)(DPPTO)中のDPPTO配位子の燐光によるものと考えられる。これらの結果は、Gd(hfa)(DPPTO)を波長380nmの光で励起すると、主にDPPTO配位子の励起三重項状態が形成されることを示唆する。
【実施例】
【0038】
3.Eu(hfa)(DPPTO)の光物理的性質
<励起発光スペクトル>
図2は、Eu(hfa)(DPPTO)の粉体の励起及び発光スペクトルである。図2の上側のスペクトルは、蛍光波長λemが610nmの励起スペクトル、及び励起波長λexが380nmの発光スペクトルを示す。図2の下側のスペクトルは、励起波長λexが280nmの発光スペクトルを示す。励起波長が380nmであるときに、579nm、593nm、613nm、650nm、700nmに発光帯が観測され、これらはそれぞれに対応する。
励起波長380nmの発光スペクトルにおいて、445nm付近にブロードな発光帯が観測された。この波長はGd(hfa)(DPPTO)の発光スペクトルから見積もったDPPTOの燐光波長(439nm)よりも長波長側にシフトしている。これは、DPPTO配位子からEu(III)への遷移に基づくLMCT励起状態が、T状態と混合していることを示唆する。
励起波長280nmの発光スペクトルにおいて、Gd(hfa)(DPPTO)と同様に、370nm付近にDPPTOの蛍光が観測された。これは、DPPTO配位子がEu(III)の内部重原子効果を実質的に受けないことを示唆する。
【実施例】
【0039】
<発光寿命>
Eu(hfa)(DPPTO)の粉体条件における発光寿命を測定した。表1は、観測された発光寿命τobsとともに、発光寿命測定から求められた4f-4f遷移の発光量子収率Φff、π-π遷移の発光量子効率Φππ*、放射定数k、無放射定数knr、及びエネルギー移動効率ηsensを示す。表1には、Eu(hfa)(TPPO)についての文献値を併せて示す(A. Nakajima, T. Nakanishi, Y. Kitagawa, T. Seki, H. Ito, K. Fushimi, Y. Hasegawa, Sci. Rep. 6, 24458 (2016))。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP2018155557A1_000015t.gif
【実施例】
【0041】
【化13】
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【実施例】
【0042】
Eu(hfa)(DPPTO)は、Eu(hfa)(TPPO)と比較して、高い発光量子収率Φffを示した。
【実施例】
【0043】
4.シミュレーションによる吸収強度の評価
Eu(hfa)(DPPTO)の光吸収特性を、シミュレーションによってEu(hfa)(HPO)と比較した。シミュレーションは、量子化学計算ソフトGaussianを用い、半経験的分子軌道法によって行った。図3は、Eu(hfa)(DPPTO)及びEu(hfa)(HPO)の吸収強度×発光効率と波長との関係の計算結果を示すグラフである。図中、AがEu(hfa)(DPPTO)で、XがEu(hfa)(HPO)である。Eu(hfa)(DPPTO)は、Eu(hfa)(HPO)と比較して460nm付近で約15倍の発光強度を示すことが示唆された。
【実施例】
【0044】
【化14】
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【実施例】
【0045】
さらに、縮合多環芳香族基を有するジケトン配位子を有する下記の希土類錯体(Complex B及びComplex C)を設計し、これらについても光吸収特性をシミュレーションによって計算した。図4は、Eu(hfa)(DPPTO)、Complex B及びComplex Cの吸収強度と波長との関係の計算結果を示すグラフである。図中、AがEu(hfa)(DPPTO)で、BがComplex Bで、CがComplex Cである。Complex B及びComplex Cは、Eu(hfa)(DPPTO)と比較しても更に、460nm付近での大きく増大した発光強度を示すことが示唆された。
【実施例】
【0046】
【化15】
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【実施例】
【0047】
【化16】
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【実施例】
【0048】
5.Eu(hfa)(BDPPC)の光物理的性質
図5は、Eu(hfa)(BDPPC)の粉体の励起及び発光スペクトルである。図5は、蛍光波長λemが613nmの励起スペクトル、及び励起波長λexが450nmの発光スペクトルを示す。Eu(hfa)(BDPPC)の粉体は、460nmの励起光で最も強い発光強度を示し、500nm程度の長波長の励起光でも発光することが確認された。
Eu(hfa)(BDPPC)のクロロホルム中でのモル吸光係数ε、及び、有機配位子を励起した時のEu(III)の発光効率(室温)を測定した。図6は、Eu(hfa)(BDPPC)を低濃度で含むクロロホルム溶液の吸収スペクトルである。Eu(hfa)(TPPO)の重クロロホルム溶液、及びEu(hfa)(HPO)のクロロホルム溶液を準備し、これらのモル吸光係数及び発光効率も測定した。
【表2】
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【実施例】
【0049】
表2に示される結果から、Eu(hfa)(BDPPC)は、450nmの励起光により、Eu(hfa)(TPPO)と比較して約2000倍、Eu(hfa)(HPO)と比較して約200倍の強度で発光することが示唆された。460nmの励起光の場合も同様に、Eu(hfa)(BDPPC)は強い発光強度を示すと考えられる。Eu(hfa)(BDPPC)のクロロホルム溶液に458nmの青色光を照射したところ、Eu(III)の強い赤色発光が観測された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る希土類錯体及びこれを含む発光素子は、青色LED型の白色LED、OCT用光源として有用である。また、溶媒の種類による発光特性の変化を利用した溶媒センサー、温度変化特性を利用した温度センサー、さらには円偏光発光体への応用も期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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