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明細書 :微小物質検出方法及び微小物質検出用デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月6日(2020.2.6)
発明の名称または考案の名称 微小物質検出方法及び微小物質検出用デバイス
国際特許分類 G01N   1/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12Q   1/70        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
G01N  21/77        (2006.01)
FI G01N 1/00 101G
G01N 37/00 101
G01N 37/00 102
G01N 21/78 C
C12Q 1/68
C12Q 1/70
C12M 1/34 B
C12M 1/34 Z
G01N 21/77 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 19
出願番号 特願2019-509984 (P2019-509984)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
2.TRITON
3.SPAN
国際出願番号 PCT/JP2018/012795
国際公開番号 WO2018/181488
国際出願日 平成30年3月28日(2018.3.28)
国際公開日 平成30年10月4日(2018.10.4)
優先権出願番号 2017064794
優先日 平成29年3月29日(2017.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】野地 博行
【氏名】小野 尭生
【氏名】皆川 慶嘉
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
審査請求 未請求
テーマコード 2G052
2G054
4B029
4B063
Fターム 2G052AA29
2G052AA33
2G052AA36
2G052AB16
2G052AB20
2G052AB27
2G052AD06
2G052AD15
2G052AD22
2G052AD29
2G052AD49
2G052BA17
2G052CA11
2G052CA38
2G052DA06
2G052DA09
2G052DA22
2G052HC23
2G054AA03
2G054AB10
2G054CA20
2G054CA22
2G054CA23
2G054EA03
2G054EA04
2G054FA17
2G054FA19
2G054GB02
2G054GE01
2G054JA06
4B029AA07
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4B029CC01
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4B063QR66
4B063QR83
4B063QS12
4B063QS32
4B063QX01
4B063QX02
要約 簡易な操作で、核酸、タンパク質、ウイルス及び細胞等の検出対象物質を極小容積の液滴中に封入し、高感度な検出を可能とするための技術として、互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に収容された微小物質を検出する方法であって、(1)前記レセプタクルが形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、の間の空間に、前記微小物質を含む溶媒を導入する手順と、(2)上記空間にガスを導入して、前記レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順と、(3)前記液滴内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する手順と、を含む、方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に収容された微小物質を検出する方法であって、
(1)前記レセプタクルが形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、の間の空間に、前記微小物質を含む溶媒を導入する手順と、
(2)上記空間にガスを導入して、前記レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順と、
(3)前記液滴内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する手順と、を含む、方法。
【請求項2】
互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に収容された微小物質を発色基質の吸光度変化及び/又は蛍光に基づいて光学的に検出する方法であって、
(1)前記レセプタクルが形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、の間の空間に、前記微小物質を含む溶媒を導入する手順と、
(2)上記空間にガスを導入して該空間内の前記溶媒をガスで置換するとともに、レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順と、
(3)前記液滴内に存在する前記発色基質の吸光度変化及び/又は蛍光を検出する手順と、を含む、方法。
【請求項3】
前記液滴の蒸散を抑制する手段を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記手順(2)の前段に、前記ガスを水と接触させる手順をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記下層部に、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバが形成されている、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記手順(2)及び手順(3)が湿潤環境下で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が高水和性物質を含む、請求項3記載の方法。
【請求項9】
微小物質を収容可能なレセプタクルが、互いに隔てられて複数形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、を備える基板と、
該基板の前記下層部と前記上層部との間の空間に溶媒を導入する送液部と、
該空間にガスを導入する送気部と、
前記レセプタクル内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する検出器と、を備える、物質検出用デバイス。
【請求項10】
前記液滴の蒸散を抑制する手段を有する、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
前記送気部が、前記ガスが水と接触させられるタンクを備える、請求項10記載のデバイス。
【請求項13】
前記基板が、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバを前記下層部に備える、請求項10記載のデバイス。
【請求項14】
前記基板を湿潤環境下に維持するチャンバ—を備える、請求項10記載のデバイス。
【請求項15】
微小物質を収容可能なレセプタクルが、互いに隔てられて複数形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、を備える基板を搭載可能であり、
該基板の前記下層部と前記上層部との間の空間に溶媒を導入する送液部と、
該空間にガスを導入する送気部と、
前記レセプタクル内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する検出器と、を備える、物質検出用デバイス。
【請求項16】
前記液滴の蒸散を抑制する手段を有する、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記送気部が、前記ガスが水と接触させられるタンクを備える、請求項16記載のデバイス。
【請求項19】
前記基板が、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバを前記下層部に備える、請求項16記載のデバイス。
【請求項20】
前記基板を湿潤環境下に維持するチャンバ—を備える、請求項16記載のデバイス。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微小物質検出方法及び微小物質検出用デバイスに関する。より詳しくは、基板上に互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に微小物質が封入された微小な液滴を形成し、該液滴内に存在する微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患や感染症等の診断のため、核酸、タンパク質、ウイルス及び細胞等のマーカーを迅速、簡便、かつ高感度に検出するための技術が求められている。例えば、体積1mm3の腫瘍に含まれる100万個の癌細胞からマーカータンパク質(各細胞から100分子ずつ)が5Lの血中に分泌された場合、マーカータンパク質の血中濃度は30aM程度である。このような非常に低濃度の物質をも検出しうる技術が求められている。
【0003】
このような技術として、核酸、タンパク質、ウイルス及び細胞等の検出対象物質を極小容積の液滴中に封入し、標識抗体を用いた免疫学的手法によって検出する「一分子酵素アッセイ」がある。一分子酵素アッセイによれば、検出対象物質を一分子単位の感度で検出することができる。
【0004】
特許文献1には、一分子酵素アッセイに応用可能な技術として、「ビーズを1個のみ収容可能な複数の収容部が、疎水性の上面を有する側壁によって互いに隔てられて形成されている下層部と、当該下層部における当該収容部が形成されている面に対向している上層部との間の空間に、当該ビーズを含む親水性溶媒を導入するビーズ導入工程と、上記ビーズ導入工程の後に上記空間に疎水性溶媒を導入する疎水性溶媒導入工程とを含むことを特徴とするビーズ封入方法」が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示される技術は、「複数の収容部が疎水性の上面を有する側壁によって互いに隔てられて形成されている下層部と、上記下層部における上記収容部が形成されている面に対して空間を隔てて対向している上層部とを備えていることを特徴とするアレイ」を用いるものであり、下層部と上層部が空間を隔てて対向するフローセル構造を有するアレイを用いるものである。この技術によれば、「多数のビーズをアレイに効率よく封入させることができるので、低濃度のターゲット分子を高感度に検出可能」とされている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開2012/121310号
【特許文献2】特開2004-309405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡易な操作で、核酸、タンパク質及びウイルス等の検出対象物質を極小容積の液滴中に封入し、高感度な検出を可能とするための技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[20]を提供する。
[1] 互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に収容された微小物質を検出する方法であって、
(1)前記レセプタクルが形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、の間の空間に、前記微小物質を含む溶媒を導入する手順と、
(2)上記空間にガスを導入して、前記レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順と、
(3)前記液滴内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する手順と、を含む、方法。
[2] 互いに隔てられて形成された複数のレセプタクル内に収容された微小物質を発色基質の吸光度変化及び/又は蛍光に基づいて光学的に検出する方法であって、
(1)前記レセプタクルが形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、の間の空間に、前記微小物質を含む溶媒を導入する手順と、
(2)上記空間にガスを導入して該空間内の前記溶媒をガスで置換するとともに、レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順と、
(3)前記液滴内に存在する前記発色基質の吸光度変化及び/又は蛍光を検出する手順と、を含む、方法。
[3] 前記液滴の蒸散を抑制する手段を含む、[1]又は[2]の方法。
[4] 前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、[3]の方法。
[5] 前記手順(2)の前段に、前記ガスを水と接触させる手順をさらに含む、[3]の方法。
[6] 前記下層部に、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバが形成されている、[3]の方法。
[7] 前記手順(2)及び手順(3)が湿潤環境下で行われる、[3]の方法。
[8] 前記溶媒が高水和性物質を含む、[3]の方法。
【0009】
[9] 微小物質を収容可能なレセプタクルが、互いに隔てられて複数形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、を備える基板と、
該基板の前記下層部と前記上層部との間の空間に溶媒を導入する送液部と、
該空間にガスを導入する送気部と、
前記レセプタクル内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する検出器と、を備える、物質検出用デバイス。
[10] 前記液滴の蒸散を抑制する手段を有する、[9]のデバイス。
[11] 前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、[10]のデバイス。
[12] 前記送気部が、前記ガスが水と接触させられるタンクを備える、[10]のデバイス。
[13] 前記基板が、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバを前記下層部に備える、[10]のいずれかのデバイス。
[14] 前記基板を湿潤環境下に維持するチャンバ—を備える、[10]のデバイス。
【0010】
[15] 微小物質を収容可能なレセプタクルが、互いに隔てられて複数形成されている下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向する上層部と、を備える基板を搭載可能であり、
該基板の前記下層部と前記上層部との間の空間に溶媒を導入する送液部と、
該空間にガスを導入する送気部と、
前記レセプタクル内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する検出器と、を備える、物質検出用デバイス。
[16] 前記液滴の蒸散を抑制する手段を有する、[15]のデバイス。
[17] 前記レセプタクルのアスペクト比が1以上である、[16]のデバイス。
[18] 前記送気部が、前記ガスが水と接触させられるタンクを備える、[16]のデバイス。
[19] 前記基板が、前記溶媒を内部に保持可能であり、その内容積が前記レセプタクルの内容積よりも大きくされたリザーバを前記下層部に備える、[16]のデバイス。
[20] 前記基板を湿潤環境下に維持するチャンバ—を備える、[16]のデバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡易な操作で、核酸、タンパク質及びウイルス等の検出対象物質を極小容積の液滴中に封入し、高感度な検出を可能とするための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1-1】本発明に係る物質検出方法の手順を説明する図である。
【図1-2】本発明に係る物質検出方法の手順を説明する図である。
【図2】ウイルスの粒子表面に存在する酵素と発色基質との反応による反応生成物を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

【0014】
本発明に係る物質検出方法は、以下の手順(A)~(C)を含む。
(A)レセプタクルが形成されているアレイ下層部と、当該下層部における当該レセプタクルが形成されている面に対向するアレイ上層部と、の間の空間に、微小物質を含む溶媒を導入する手順(物質導入手順)。
(B)前記空間にガスを導入して該空間内の前記溶媒をガスで置換するとともに、レセプタクル内に、前記微小物質を包含する、溶媒の液滴を形成する手順(物質収容手順)。
(C)前記液滴内に存在する前記微小物質を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する手順(検出手順)。

【0015】
以下、本発明に係る物質検出方法の各手順について説明する。

【0016】
[検出対象物質]
本発明に係る物質検出方法等において、検出対象となる微小物質(microscopic body、以下「ターゲット物質」とも称する)は、レセプタクルに収容可能な大きさの物質であれば特に限定されない。ターゲット物質は、核酸、タンパク質、糖、脂質及びこれらの複合体、並びにウイルス等であってよい。ターゲット物質は、各種の疾患又は感染症のマーカーとなり得る、核酸、タンパク質、糖、脂質及びこれらの複合体であることが好ましい。

【0017】
核酸には、DNA及びRNA等の天然核酸及びLNA及びPNA等の人工核酸が含まれ、これらの重合体も含まれる。

【0018】
ターゲット物質は、担体に保持されたものであってもよい。担体としては、マイクロビーズが汎用されている。本発明において、「マイクロビーズ」は、「粒子」と同義に用いられ、当技術分野において慣用技術である。マイクロビーズの形状は、特に限定されないが、通常球形とされる。マイクロビーズの材料も、特に限定されず、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メンブレン及び磁性体などであってよい。具体的な材料として、セルロース、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニルとアクリルアミドとのコポリマー、ジビニルベンゼンン等と架橋されたポリスチレン、ポリアクリルアミド、ラテックスゲル、ポリスチレンデキストラン、ゴム、ケイ素、プラスチック、ニトロセルロース、セルロース、天然スポンジ、シリカゲル、ガラス、金属プラスチック、セルロース、架橋デキストラン(Sephadex(商標))およびアガロースゲル(セファロース(商標))などが挙げられる。ビーズは、多孔性であってもよい。ビーズは、平均粒子径5μm以下であることが好ましく、例えば1μm~4μm程度とされる。なお、平均粒子径は、例えば電子顕微鏡観察又は動的光散乱法を用いて測定することができる。

【0019】
[アレイ]
本発明に係る物質検出方法に用いられるデバイスのアレイ1(図1(A)参照)は、ターゲット物質を収容する、複数のレセプタクル112が形成された下層部1aと、下層部1aに対向する上層部1bとを含んでなる。下層部1aと上層部1bは、空間1cを挟んで対向する。各レセプタクル112は、側壁113によって互いに隔てられている。各レセプタクル112は、側壁113と側壁113との間で空間1cと接する開口を有している。多数のレセプタクル112がアレイ1の下層部1aの面方向に配置され、それらの開口からターゲット物質がレセプタクル112内に捕捉され得る。

【0020】
アレイ1は、ガラス製基板層のウェットエッチングやドライエッチング、またはプラスチック製基板層のナノインプリントや射出成型、切削加工などの公知の技術を用いて成形できる。アレイ1の材質は、ターゲット物質を光学的に検出する場合には、光透過性を有する材質とされ、例えばガラスや各種プラスチック(PP、PC、PS、COC、COP、PDMS等)とされる。アレイ1の材質は、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいため、光学誤差の少ない材質を選択するのが好ましい。

【0021】
下層部1aと上層部1bの対抗面間の距離(空間1cの高さ)は、特に限定されないが、10μm~100μm程度である。

【0022】
レセプタクル112は、ターゲット物質を収容可能な大きさ(容積)及び形状とされる。レセプタクル112の大きさは、ターゲット物質が核酸、タンパク質、糖、脂質及びこれらの複合体;ウイルスのいずれかである場合には、例えば、底面の直径が0.1μm~10μm程度、高さ(深さ)が0.1μm~10μm程度であり、容積では1ゼプトリットル~1アトリットル程度である。ウェル11の形状は、成形のしやすさの観点から、円柱形あるいは角柱形であることが好ましい。

【0023】
さらに、レセプタクル112は、後述する物質収容手順における液滴形成のため、アスペクト比が1以上、好ましくは1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、より好ましくは1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、さらに好ましくは2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上あるいは2.5よりも大きい値とされる。
また、アスペクト比は、1~2.5、好ましくは1.5~2.5、より好ましくは2.0~2.5とされ得る。
アスペクト比とは、レセプタクル112の底面の直径(レセプタクル112が円柱形又は直方体である場合には、開口の直径に同一)をdとし、高さをtとした場合に、t/dで定義される比率である。ここで、レセプタクル112の底面が楕円形又は長方形等である場合には、直径dは、該底面の長手方向の直径をいうものとする。また、深さtは、レセプタクル112の最大深さをいうものとする。

【0024】
[物質導入手順]
はじめに、空間1cに、ターゲット物質3を含む第一溶媒S1を導入する(図1(A)参照)。

【0025】
ここでは、ターゲット物質3ととともに、ターゲット物質3を吸光度変化及び/又は蛍光に基づいて光学的に検出するための発色基質4を導入する例を説明する。

【0026】
第一溶媒S1は、ターゲット物質3及び発色基質4を溶解又は懸濁するために適当な溶媒であればよく、核酸、タンパク質、糖、脂質及びこれらの複合体、並びウイルス等を検出する際に通常用いられる溶媒が用いられる。第一溶媒S1は、例えば、水、アルコール、エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物などであってよく、好ましくは水である。アルコールとしては、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、グリセリン等が挙げられる。エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、ポリエチレンオキサイド、1,4-ジオキサン等が挙げられる。ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル等が挙げられる。

【0027】
第一溶媒S1は、緩衝物質を含んでいてもよい。緩衝物質としては、特に限定されないが、蛍光色素のpKaにあわせてMES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、ADA(N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid)、PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid))、ACES(N-(2-Acetamido)-2-aminoethanesulfonic acid)、BES(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid)、TES(N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid)HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)等のいわゆるグッドバッファー(Good's Buffer)や、Tris(Tris(hydroxymethyl)aminomethane)、DEA(Diethanolamine)等が用いられ得る。

【0028】
また、第一溶媒は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含むことで、第一溶液S1は、溶液導入空間11a及びレセプタクル112内へ導入され易くなる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばTWEEN20(CAS番号:9005-64-5、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)及びTriton X-100(CAS番号:9002-93-1、一般名ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(n≒10))などが挙げられる。第一の溶媒20への界面活性剤の添加濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01~1%である。

【0029】
さらに、界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、天然由来の界面活性剤などを広く用いることができる。

【0030】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型に分類される。このうち、具体的には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルエトキシレート硫酸ナトリウムなどが挙げられ、中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。

【0031】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩型、アルキルアミン型、複素環アミン型に分類される。具体的には、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリピリジニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。

【0032】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、N-メチルアルキルグルカミドなどが挙げられる。中でも、ドデシルアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ラウロイルジエタノールアマイドの他、Triton X(Triton X-100など)、Pluronic(登録商標)(Pluronic F-123、F-68など)、Tween (Tween 20、40、60、65、80、85など)、Brij(登録商標)(Brij 35、58、98など)、Span (Span 20、40、60、80、83、85)の名前で市販されているものが好ましい。

【0033】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、3-(テトラデシルジメチルアミニオ)プロパン-1-スルホナートなどがあるが、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)などを用いることが好ましい。

【0034】
天然由来の界面活性剤としては、例えば、レシチン、サポニンが好ましく、レシチンとして称される化合物のうち、具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールなどが好ましい。また、サポニンとしてはキラヤサポニンが好ましい。

【0035】
ターゲット物質3と発色基質4を含む第一溶媒S1は、例えば上層部1bに設けられ、空間1cに接続されているインレットから注入すればよい。なお、空間1cのインレット接続側の反対側には、溶媒及びガスが排出されるアウトレットを接続することができる。空間1cに導入された第一溶媒S1は、下層部1aと上層部1bとの間を毛管現象により進み、空間1cに充填される(図1(B)参照)。これよって、ターゲット物質3と発色基質4がレセプタクル112内に導入される。

【0036】
第一溶媒S1中のターゲット物質3の濃度が低い場合、各レセプタクル112には、ターゲット物質3が1分子導入されるか全く導入されないかのどちらかとなる。また、第一溶媒S1中のターゲット物質3の濃度がより高い場合には、各レセプタクル112には、ターゲット物質3が2以上導入され得る。
一方で、発色基質4は、ターゲット物質3の濃度に比して十分に高い濃度で第一溶媒S1中に含まれることが好ましい。したがって、発色基質4は、ほとんど全てのレセプタクル112に1分子あるいは2分子以上導入される。

【0037】
本発明に係る物質検出用デバイスは、アレイ1に加えて、空間1cに第一溶溶媒S1を導入する送液部を含んでいてよい。送液部は、第一溶媒S1が供給されるタンクと、該タンクと上記インレットとを接続するチューブ及びポンプ等を含む。

【0038】
本発明に係る物質検出用デバイスは、アレイ1及び上記送液部に加えて、温度調節器を含んでいてもよい。温度調節器は、ペルチェ素子やジュール・トムソン素子等によりアレイ1の温度を制御可能なヒートブロックであってよい。

【0039】
[物質収容手順]
次に、空間1bにガスGを導入する(図1(C)参照)。ガスGは、第一溶媒S1と同じか又は異なるインレットから注入され、第一溶媒S1と同じか又は異なるアウトレットから排出されてよい。本発明に係る物質検出用デバイスは、アレイ1、上記送液部に加えて、空間1cにガスGを導入する送気部を含んでいてよい。送気部は、ガスGが供給されるタンクと、該タンクと上記インレットとを接続するチューブ及びポンプ等を含む。

【0040】
ガスGは、本手順の環境温度(特に限定されないが、室温であってよい)において気体であればよく、特に限定されないが、例えば空気、又は窒素ガスを好適に用いることができる。

【0041】
空間1cに導入されたガスGは、空間1c内に充填されていた第一溶媒S1を置換しながら、空間1cを進む。これよって、レセプタクル112内に、発色基質4を含む第一溶媒S1の液滴Dが形成される(図1(C)参照)。レセプタクル112に形成された液滴Dのうち一定の割合には、発色基質4とともにターゲット物質3が封入される。

【0042】
なお、ガスGの導入は、インレットからガスGを圧入する方法によって行っても、アウトレットから陰圧を加えることによりインレットからガスGが導入されるような方法によって行ってもよい。このとき、インレットを開放した状態でアウトレットに陰圧を加えることで、インレットから空気が導入されるようにしてもよい。さらに、インレットを開放した状態とした上で、アレイ1に対して、インレットからアウトレットに向かう方向への遠心力を付与することで、空間1c内に充填されていた第一溶媒S1がアウトレットから排出されるとともにインレットから空気が導入されるようにしてもよい。このような遠心力の付与方法としては、基板1を回転板上に載置する方法が挙げられる。

【0043】
本手順において、レセプタクル112内に第一溶媒S1が保持されやすくして、液滴Dが形成されることを促進するためあるいは形成された液滴Dの蒸散を抑制するため、レセプタクル112のアスペクト比が1以上、好ましくは1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、より好ましくは1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、さらに好ましくは2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上あるいは2.5よりも大きい値とされる。
また、アスペクト比は、1~2.5、好ましくは1.5~2.5、より好ましくは2.0~2.5とされ得る。
アスペクト比がこの範囲よりも小さいと、レセプタクル112内の第一溶媒S1までもがガスGによって置換されたり、形成された液滴Dが蒸散により失われてしまったりして、液滴Dの形成効率が低下する場合がある。なお、レセプタクル112の空間1cへの開口径に比して深さを大きくすることでレセプタクル112内に第一溶媒S1を保持されやすくできる。

【0044】
液滴Dの形成を促進するためあるいは形成された液滴Dの蒸散を抑制してこれを維持するため、本手順の前段に、ガスGを水と接触させる手順を行うことが好ましい。ガスGを水と接触させて空間1cに導入されるガスGの水蒸気飽和度を予め高めておくことにより、レセプタクル112内に保持された第一溶媒S1の蒸発を抑制して液滴Dの形成を促進し得るとともに、形成された液滴Dの蒸散を抑制し得る。
乾燥空気は溶媒の蒸発を促し、飽和空気は動作が不安定になる可能性がある。そのため本発明において、所定の操作がほぼ常温付近で行われるとして、気体に含まれる水分を相対湿度で定義した場合、およそ50~80%程度にすることが好ましい。
本発明に係る物質検出用デバイスは、送気部に、ガスGが水と接触させられるタンクを備えることが好ましい。

【0045】
また、レセプタクル112内に保持された第一溶媒S1の蒸発及び形成された液滴Dの蒸散を抑制するためには、空間1cの水蒸気飽和度を高く維持することも好ましい。このために、下層部1aに、第一溶媒S1を内部に保持可能であり、その内容積がレセプタクル112の内容積よりも大きくされたリザーバを形成しておくことが有効となり得る。リザーバを設けることにより、物質導入手順においてリザーバ内に導入された第一溶媒S1が、本手順において空間1cの水蒸気飽和度を高めるための水供給元(液溜まり)として機能できる。リザーバは、下層部1aにおいて、ターゲット物質3の検出に影響を与えない領域に、1つ又は2つ以上設けることができる。
さらに、レセプタクル112内に保持された第一溶媒S1の蒸発及び形成された液滴Dの蒸散を抑制するためには、本手順及び次の検出手順を、湿潤環境下で行うことも有効となり得る。このために、本発明に係る物質検出用デバイスは、基板1を内部に保持して湿潤環境下に維持するためのチャンバ—を備えることが好ましい。

【0046】
レセプタクル112内に保持された第一溶媒S1の蒸発及び形成された液滴Dの蒸散を抑制するため、第一溶媒S1が水である場合においてこれに高水和性物質を添加してもよい。高水和性物質が水を保持することで、第一溶媒S1の蒸発を抑制できる。
高水和性物質は、後述する検出手順における、ターゲット物質3の光学的、電気的及び/又は磁気的検出に影響を及ぼさない限り特に限定はされないが、例えば、アガロース及びアクリルアミド等のゲル;ポリエチレングリコール及びセルロース等の親水性高分子;並びにグリシン、ベタイン、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース及び尿素等のオスモライトなどが好適に用いれ得る。これらの高水和性物質の第一溶媒S1への添加濃度は、例えば0.1~5%程度、好ましくは0.5~2%程度である。

【0047】
次の検出手順では、液滴D内に存在するターゲット物質3を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する。ここで説明する例は、発色基質4の吸光度変化及び/又は蛍光を検出することによってターゲット物質3を光学的に検出するものであるが、より具体的に、ターゲット物質3が、発色基質4に対する基質切断活性を有する酵素を表面又は内部に有するウイルスであって、発色基質4が、該酵素により切断されて発色団としての反応生成物を遊離させる物質である場合を例として説明する。ただし、発色基質4は、酵素との反応後に反応前とは異なる光学特性を有する反応生成物を生成するものであればよく、反応前後で吸光度や旋光度が変化する物質や、反応後に蛍光を呈するようになる物質であってもよい。

【0048】
このようなウイルスと酵素の組み合わせとしては以下が例示される。
【表1】
JP2018181488A1_000002t.gif

【0049】
レセプタクル112に形成された液滴D中では、極小容積中で共存する、ターゲット物質3(ウイルス)の粒子表面又は内部に存在する酵素と発色基質4との反応が進行し、反応生成物が生成する。図2を参照して詳しく説明する。ウイルスの粒子表面又は内部には酵素31が存在している(図には酵素31がウイルス表面に存在する場合を示した)。発色基質4が、酵素31と接触し反応すると、反応生成物6が生成する。反応生成物6は、発色基質4と異なる光学特性を示し、吸光度や旋光度のシフトや、蛍光(又は発光)を示す。

【0050】
酵素31と発色基質4との反応によって液滴Dの極小容積(ゼプトリットル~アトリットルのオーダー)中に反応生成物6が生成、蓄積される。さらに、液滴Dは他の溶媒や溶液と界面接触していないため、液滴Dに生成、蓄積された反応生成物6が液滴Dから漏れ出すことがない。これらによって、次の検出手順において検出可能な濃度にまで反応生成物6の生成が迅速に進むこととなるため、検出手順における反応生成物6の高感度検出が可能とされる。

【0051】
ウイルスがインフルエンザウイルスであり(表1参照)、発色基質4に4-メチルウンベリフェリル-α-D-ノイラミン酸(4-Methylumbelliferyl-N-acetyl-α-D-neuraminic acid:4MU-NANA)を用いる場合を例にさらに具体的に説明する。

【0052】
インフルエンザウイルスの粒子表面にはノイラミニダーゼ(酵素31)が存在している。4MU-NANA(発色基質4)がノイラミニダーゼと接触し反応すると、4MU-NANAのノイラミニダーゼによる加水分解に由来して蛍光を呈する発色団として4-メチルウンベリフェロン(反応生成物6)が生成する。4-メチルウンベリフェロンは液滴Dの極小容積中に蓄積され、蓄積された4-メチルウンベリフェロンが増強された蛍光を発する。

【0053】
なお、反応生成物6は、本手順前にも、第一溶媒S1中において発色基質4と酵素31が接触すれば生成し得るものであるが、本手順においてターゲット物質3と発色基質4を包含する第一溶媒S1の液滴Dが形成される前には、生成した反応生成物6が極小容積中に蓄積されることがない。このため、反応生成物6の検出において、本手順前に生成した反応生成物6の影響は無視できる程度に小さい。

【0054】
[検出手順]
本手順では、液滴D内に存在するターゲット物質3を光学的、電気的及び/又は磁気的に検出する(図1(D)参照)。ここで説明する具体例では、液滴D内に生成した反応生成物6(4-メチルウンベリフェロン)が発する蛍光を検出することにより、ターゲット物質3としてのインフルエンザウイルスを検出する。

【0055】
光学検出は、光源と、光源からの光をレセプタクル112内に集光しかつレセプタクル112内からの発生する光をセンサに集光する光学経路と、センサとを備える検出器7によって行うことができる。本発明に係る物質検出用デバイスは、アレイ1、上記送液部、及び上記送気部に加えて、検出器7を含んでいてもよい。光源からの光は、アレイ1の下方側(ウェル11の開口面と逆面側)からレセプタクル112内に照射され、レセプタクル112内からの発生する光も同側から集光される。光源とアレイ1の間、及びアレイ1とCMOSイメージセンサ等のセンサとの間には、通常使用されるレンズやフィルタなどが配設される。

【0056】
また、本発明に係る微小物質検出用デバイスは、アレイ1の温度を制御する温度調節器を含んでいてもよい。温度調節器には、特許文献2に開示される加熱機構又は温度調節機構を採用できる。温度調節器は、例えばペルチェ素子やジュール・トムソン素子等により温度制御可能なヒートブロックであってよい。

【0057】
上述のとおり、反応生成物6は、物質収容手順前にも、第一溶媒S1中に生成し得るものであるが、物質収容手順前に生成した反応生成物6の多くは、物質収容手順において、ガスGによって第一溶媒S1が置換されるとともに外部に取り除かれる。このため、本手順における反応生成物6の検出において、物質収容手順前に生成した反応生成物6がノイズとなることがなく、液滴Dの極小容積中で生成、蓄積した反応生成物6からのシグナルを選択的に検出できる。

【0058】
物質導入手順における第一溶媒S1中のターゲット物質3の濃度が比較的高い場合には、各液滴Dには、ターゲット物質3が2以上導入され得る。この場合、液滴D中の4-メチルウンベリフェロン(反応生成物6)の蛍光検出を行い、取得された蛍光強度と、予め作成した蛍光強度とノイラミニダーゼ活性との関係を規定した標準曲線とを用いてノイラミニダーゼの酵素活性を算出する。さらに、算出された酵素活性と、予め作成した酵素活性とウイルス粒子数との関係を規定した標準曲線を用いてインフルエンザウイルスの存在の有無の判定あるいは粒子数の定量を行う(アナログ定量)。これにより、ターゲット物質3としてのインフルエンザウイルスを検出することができ、ウイルス量を定量的に決定することもできる。

【0059】
一方、第一溶媒S1中において、ターゲット物質3が十分に低い濃度に希釈されている場合、1つのレセプタクル112に入るターゲット物質3の数は0又は最大で1となり得る。この場合、ターゲット物質3が検出されたレセプタクル112の数と、ターゲット物質3が検出されないレセプタクル112の数との比率を用いて、予め作成した第一溶媒S1中のターゲット物質3の濃度と当該比率との関係を規定した標準曲線に基づいて、ターゲット物質3の濃度を決定することもできる(デジタル定量)。
物質収容手順においては、第一溶媒S1の液滴D中に反応生成物6を高濃度に蓄積させることができるため、ターゲット物質3としてのウイルスが1粒子のみレセプタクル112に入っている場合であっても、反応生成物6の検出を高感度に行うことができる。従って、本発明に係る物質検出方法によれば、ウイルス等のごく微量のターゲット物質3であっても高感度に検出でき、その存在量を高精度に決定することが可能となる。

【0060】
本実施形態によれば、多数のウェル11及びレセプタクル112を有する大面積のアレイ1を実現することが可能である。例えば、100万個以上のレセプタクル112を有するアレイ1であっても、効率よくターゲット物質3を各レセプタクル112に収容することが可能である。したがって、本実施形態であれば、ターゲット分子3を高感度に検出することができるため、10aM程度の非常に低濃度のターゲット分子3であっても検出することが可能となり、例えばDigitalELISAやELISA-PCRなどのアプリケーションに応用できる。
【符号の説明】
【0061】
1:アレイ、1a:下層部、1b:上層部、1c:空間、112:レセプタクル、113:側壁、3:ターゲット物質、4:発色基質、6:反応生成物、7:検出器、D:液滴、G:ガス、S1:第一溶媒

図面
【図1-1】
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【図1-2】
1
【図2】
2