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Specification :(In Japanese)双安定構造を有する医療用留置器具

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2020-025720A
Date of publication of application Feb 20, 2020
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)双安定構造を有する医療用留置器具
IPC (International Patent Classification) A61F   2/915       (2013.01)
A61F   2/844       (2013.01)
FI (File Index) A61F 2/915
A61F 2/844
Number of claims or invention 6
Filing form OL
Total pages 19
Application Number P2018-151829
Date of filing Aug 10, 2018
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】南 和幸
Applicant (In Japanese)【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4C167
4C267
F-term 4C167AA45
4C167BB12
4C167CC09
4C167DD01
4C167GG21
4C167GG31
4C267AA45
4C267BB12
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG21
4C267GG31
Abstract (In Japanese)【課題】管腔臓器内に導入され拡径して留置された後の縮径させる作用に対して十分に抗するものとし、設計・製作を簡易な円筒形状の医療用留置器具を提供する。
【解決手段】留置器具は、複数のストラット2ががリブ3等の連結手段で連結されて網目構造を有する円筒形状に構成される。各ストラット2はその伸張の過程で飛び移り座屈変形を経て変形した後の安定状態で収縮する方向への作用に抗し伸張状態を保持する複数のストラット辺の組合せによる双安定構造の部分11、12a、12bと、双安定構造における留置器具の周方向の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺13、14とからなり、周方向に延びるストラット辺が周方向に同一線上になく留置器具の軸方向にずれて配設される形状構造になるようにし、留置器具の拡径状態を保持する。
【選択図】図2
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
複数のストラットが連結されて網目構造をなすように配設され全体として円筒形状をなすように形成された医療用留置器具であって、各ストラットは複数のストラット辺を一体的に連結して構成され、前記留置器具の拡径に応じて円筒形状の周方向に伸張するものであり、また、各ストラットは周方向の伸張の過程で一方の安定状態の形状から飛び移り座屈変形により他方の安定状態の形状に変形した状態で前記留置器具を縮径させようとする荷重を支える閉じたストラット辺の組合せによる双安定構造の部分と、前記双安定構造の周方向の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺とからなり、前記双安定構造の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺が前記留置器具の円筒形状の周方向に同一線上になく軸方向にずれて配設されていることにより、前記留置器具の縮径に対する抗力を高め、拡径状態を保持するものであることを特徴とする医療用留置器具。
【請求項2】
前記留置器具の周方向における複数のストラットの連結において、前記双安定構造の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺の軸方向のずれの方向が反転することにより該周方向に延びるストラット辺が周方向にジグザグ状の形状になることを特徴とする請求項1に記載の医療用留置器具。
【請求項3】
前記各ストラットにおけるストラット辺の組合せによる双安定構造がU形またはV形の太いストラット辺と、該太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結され、他端がともに前記留置器具の円周方向に延びるストラット辺の端部に連結された2本のストラット辺とからなり、前記留置器具の縮径状態において前記太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結された2本のストラット辺が前記太いストラット辺の凹側辺に最も近接するように折曲した形状になっていることを特徴とする請求項2に記載の医療用留置器具。
【請求項4】
前記2本のストラット辺の他端がともに連結される前記留置器具の周方向に延びるストラット辺が該2本のストラット辺の他端との連結位置から前記留置器具の周方向に対して傾斜して延びた上で周方向になるように折曲していることにより前記ストラット辺の組合せによる双安定構造の他の側に連結されるストラット辺と同一線上になくずれているようにしたことを特徴とする請求項3に記載の医療用留置器具。
【請求項5】
前記2本のストラット辺の他端がともに連結される前記留置器具の周方向に延びるストラット辺がクランク状に折曲した形状を有することにより前記ストラット辺の組合せによる双安定構造の他の側に連結されるストラット辺と同一線上になくずれているようにしたことを特徴とする請求項3に記載の医療用留置器具。
【請求項6】
前記太いストラット辺と、該太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結され、他端がともに前記留置器具の円周方向に延びるストラット辺の端部に連結された2本のストラット辺とからなるストラット辺の組合せによる双安定構造を留置器具の円周方向に対して傾斜して配設することにより前記双安定構造の両側に連結されるストラット辺が同一線上になくずれているようにしたことを特徴とする請求項3に記載の医療用留置器具。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は双安定構造を有する医療用留置器具に関し、特に双安定性構造を有するストラットにより拡径状態が保持される双安定構造を有する医療用留置器具に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や脳梗塞など、血管の疾患による病気の療法として、バルーンカテーテルにより血管を拡張しステントを留置することが行われる。このステントとしては一般的に金属製のものが用いられるが、金属製のステントは永久的に体内に残留するものであるため、体の大きさが変わる若年者への適用は可能ではない。また、金属製のステントは強度的に優れるが柔軟性に劣り、血管等の管腔壁に対して長時間にわたる力学的刺激、ストレスを与えやすく、管腔壁の肥厚を招いて狭窄を再発する危険がある。このほかに、金属製の留置器具が体内に残留した状態ではMRI(磁気共鳴イメージング)による画像に影響を及ぼすために診断が困難になるということがある。
【0003】
ポリマー製の留置器具では金属製の留置器具において問題となる管腔壁へのストレスを抑制し、生分解性/生体吸収性ポリマーでステントを作製することにより生体内にステントが永久的に存在することによるストレスを解消でき、MRI画像にも影響を及ぼさない等の点で、金属製ステントの欠点を解消できるという利点があり、最近ではポリマー製ステントの使用も増加している。
【0004】
一方で、ポリマー製ステントは、金属製ステントに比して弾性率、強度が低いために収縮抑制力が小さく、またクリープ変形を起こし易いことから、バルーン拡張型の留置器具では留置後に縮径してしまう可能性があり、さらに、自己拡張性の留置器具では長時間収縮状態に保持したり、収縮の割合を大きくしたりする場合に永久変形が生じて復元拡張、すなわち自己拡張できなくなる可能性があるというような弱点をもっている。
【0005】
ポリマーステントは血管等の管腔臓器内への留置器具として、円筒状に構成され、縮径状態として管臓器内に挿入し、拡径して留置した後に、管腔臓器の狭窄を阻止するように作用するものであり、基本的にはポリマー材料のストラットないしリンクによるセルの網目構造が円筒形状の周方向、軸方向に展開して配置形成された構造を有するものとなる。
【0006】
特許文献1には、長手方向軸線回りに螺旋状に延在する波状の螺旋要素を備え、軸方向に隣接する螺旋要素のピーク部からピーク部に延在する支柱により連結されてセルを形成するステントについて記載されているが、このステントは金属製のものであり、金属製であることによる難点を有する。
【0007】
特許文献2には、ストラットの網目構造が波形をなす複数の周方向の環をなし、隣接する波形の環の山部と谷部が結合されてセルを形成するようにした管状ステントについて記載されているが、このような構成のステントにおいては、縮径させようとする作用に抗する能力は材料の特性によるところが大きく、ポリマー製のように剛性が低い材料によるものでは、縮径方向の作用に抗し難くなり、ステントの機能を保持できない可能性がある。
【0008】
特許文献3には、頂点と谷部が軸方向に交互に配置されるように形成されたストラット要素を周方向に丸めて円筒状のステントを形成し、ストラット要素の各頂点に形成された凸部に歯が設けられ、各谷部には凸部が挿入されるスリットが形成されており、各頂点の凸部に設けられた歯は頂点における凸部を谷部のスリットに挿入可能であり、円筒状ステントをなすストラット要素がステントの縮径方向の力に抗するような形状になっているステント装置について記載されており、また、特許文献4には、スリットが形成された頭部と一方の側辺に鈎状突起部が形成された胴部からなるT字形ユニットを複数個並設したものを筒状に丸め、胴部を頭部のスリットに挿入し、胴部において鈎状突起部に対向する側辺に設幅可変部の作用により胴部のスリットへの挿入を円滑にしたポリマーステントについて記載されている。
【0009】
特許文献3、4は爪、鈎部がスリットに係止されるラチェット機構によりステントの拡張状態を保持するものであるが、フィルムを素材として用いるものであって、屈曲に対する柔軟性が得られないという弱点を有する。
【0010】
特許文献5には、管腔壁を保持するための医療用留置器具として、円筒形状をなす留置器具が軸方向及び周方向に網目状に連結配置されたモジュールを有し、各モジュールは対をなす屈曲した変形する部分と、その間の中心部分とを有し、中央部分はガイドレールとその間で摺動可能なベルト部を備え、ガイドレールとベルト部の側辺には係合歯が一方向のみの移動が許容されるようになっていることによって、留置器具が縮径するのが阻止されることが記載されている。また、特許文献6には、ポリマーステントを構成する網目状に連結されたストラットにおける少なくとも1つのストラット辺の対向する側辺に突出するように形成された枝辺にラチェット歯を形成し、ポリマーステントの拡径の際にラチェット歯が噛み合うことによってポリマーステントの縮径が阻止され拡径状態が保持されることが記載されている。
【0011】
特許文献5によるものでは、拡径状態を保持するための各モジュールの中央部分における摺動可能なベルト部、ガイドレールを含む構成は複雑になり、特許文献6によるものでも、同様ラチェット歯を有する対向する枝辺を相互に確実に係合できるように製造する工程がそれほど簡易なものとならないことが考えられる。
【0012】
特許文献7には、薄いストラットと厚いストラットとを組合せて一連の複数のセルを螺旋状に巻回させて筒状のステントとし、各セルが双安定セルをなしブリッジ要素によって連結されているステントについて記載されており、また、特許文献8には、ストラット辺とリンクとを組合せて複数のセルが網目状に配列された円筒形のポリマーステントを構成し、リンクを介しての牽引作用によりこれに連結されたストラット辺が一方の安定状態から他の安定状態に変形可能な双安定性を有するものとしたポリマーステントについて記載されている。
【0013】
さらに、特許文献9には、複数のストラットがリンクにより網目形状を有するように連結されてなる円筒形状の留置器具において、各ストラットは留置器具の拡径に際して飛び移り座屈変形を生じる双安定構造を有するとともに留置器具が縮径しようとする作用は各ストラットに逆向きの飛び移り座屈変形を妨げるように荷重を与えることによって縮径方向への変形が阻止されることについて記載されている。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】特表2014-508569号公報
【特許文献2】特表2014-514111号公報
【特許文献3】特表2008-507349号公報
【特許文献4】特許5811580号公報
【特許文献5】米国特許第8460363号明細書
【特許文献6】国際公開第2016/2857号
【特許文献7】特表2009-531135号公報
【特許文献8】特開2016-64047号公報
【特許文献9】PCT/JP2018/8867
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
テフロン(登録商標)、ポリ乳酸等の材料によるポリマー製ステントは、金属製ステントに比較して、生体適合性、柔軟性が高いとともに生体への追随性がよく、生体への刺激の低減ないし消失により、再狭窄や血栓の発生を防止できると考えられるが、他面、ヤング率が低く、室温付近では金属製のような優れた可塑性がないため、金属製と同じようなストラット構造を用いた場合には、治療に必要な拡張力が確保されず、十分な治療効果が得られないという問題があった。
【0016】
特許文献7あるいは特許文献8においては、ステントを構成するストラットにおいて双安定性の特徴を備えることにより縮径方向への作用に対する保持力を高めることが示されており、特許文献8によるものでは、かなりの拡張力が得られるが、縮径方向への圧力が高まった時にこれに十分に抗するような構造を備えていないことから、縮径する可能性があるものであった。また、特許文献9において、円筒形の留置器具を構成する各ストラットが留置器具の拡径に際して飛び移り座屈変形を生じる双安定構造を有するとともに留置器具が縮径しようとする作用は各ストラットに逆向きの飛び移り座屈変形を妨げるように荷重を与えることによって縮径方向への変形が阻止されるが、その作用を与えるストラットの形状構成からすれば、留置器具の設計・製作が複雑になるものであった。
【0017】
本発明においては、ステント等の管腔臓器への留置器具を構成するストラットとして双安定性の特徴を備えるとともに、留置器具の縮径方向への作用が高まっても十分に抗し得る構造的特性を有するものとして高い信頼性を与え、かつ、留置器具の設計・製作がより簡易なものとなる留置器具を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明による医療用留置器具は、複数のストラットが連結されて網目構造をなすように配設され全体として円筒形状をなすように形成された医療用留置器具であって、各ストラットは複数のストラット辺を一体的に連結して構成され、前記留置器具の拡径に応じて円筒形状の周方向に伸張するものであり、また、各ストラットは周方向の伸張の過程で一方の安定状態の形状から飛び移り座屈変形により他方の安定状態の形状に変形した状態で前記留置器具を縮径させようとする荷重を支える閉じたストラット辺の組合せによる双安定構造の部分と、前記双安定構造の周方向の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺とからなり、前記双安定構造の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺が前記留置器具の円筒形状の周方向に同一線上になく軸方向にずれて配設されていることにより、前記留置器具の縮径に対する抗力を高め、拡径状態を保持するものである。
【0019】
前記留置器具の周方向における複数のストラットの連結において、前記双安定構造の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺の軸方向のずれの方向が反転することにより該周方向に延びるストラット辺が周方向にジグザグ状の形状になるようにしてもよい。
【0020】
前記各ストラットにおけるストラット辺の組合せによる双安定構造がU形またはV形の太いストラット辺と、該太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結され、他端がともに前記留置器具の円周方向に延びるストラット辺の端部に連結された2本のストラット辺とからなり、前記留置器具の縮径状態において前記太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結された2本のストラット辺が前記太いストラット辺の凹側辺に最も近接するように折曲した形状になるようにしてもよい。
【0021】
前記2本のストラット辺の他端がともに連結される前記留置器具の周方向に延びるストラット辺が該2本のストラット辺の他端との連結位置から前記留置器具の周方向に対して傾斜して延びた上で周方向になるように折曲していることにより前記ストラット辺の組合せによる双安定構造の他の側に連結されるストラット辺と同一線上になくずれているようにしてもよい。
【0022】
前記2本のストラット辺の他端がともに連結される前記留置器具の周方向に延びるストラット辺がクランク状に折曲した形状を有することにより前記ストラット辺の組合せによる双安定構造の他の側に連結されるストラット辺と同一線上になくずれているようにしてもよい。
【0023】
前記太いストラット辺と、該太いストラット辺の両端側にそれぞれ一端が連結され、他端がともに前記留置器具の円周方向に延びるストラット辺の端部に連結された2本のストラット辺とからなるストラット辺の組合せによる双安定構造を留置器具の円周方向に対して傾斜して配設することにより前記双安定構造の両側に連結されるストラット辺が同一線上になくずれているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による医療用留置器具は、円筒形状の留置器具を構成するストラットにおける双安定構造の留置器具の周方向の両側にそれぞれ延びるストラット辺が屈曲変形容易であるとともに、周方向に同一線上になく軸方向にずれていることにより、拡径時には上記のストラット辺を含むストラット辺群の変形により、双安定構造に飛び移り座屈変形が生じやすい力が作用するが、縮径させる力が作用した時には上記ストラット辺の偏倚に起因した回転力が双安定構造に作用して、逆向きの飛び移り座屈変形を起こしにくい方向に双安定構造が回転することにより留置器具の縮径状態に戻るための荷重を増大させ、縮径に対する抗力を高め、拡径状態を確実に保持することができ、信頼性の高い留置器具とすることができるとともに、留置器具の設計・製作がより簡易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による医療用留置器具の概観図である。
【図2】本発明による医療用留置器具における円筒面の一部を平面状に展開し拡大して示す図であり、(a)は一つのストラットの配置形態を示し、(b)は他のストラットの配置形態を示すものである。
【図3】本発明の医療用留置器具の実施形態1によるストラットの形状構成と、留置器具の拡径の際にストラットが変形する状況を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態を示し、(b)はストラットが伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットがさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示す。
【図4】本発明の医療用留置器具の実施形態2によるストラットの形状構成と、留置器具の拡径の際にストラットが変形する状況を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態を示し、(b)はストラットが伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットがさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示す。
【図5】本発明の医療用留置器具の実施形態3によるストラットの形状構成と、留置器具の拡径の際にストラットが変形する状況を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態を示し、(b)はストラットが伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットがさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示す。
【図6】本発明の医療用留置器具の実施形態4によるストラットの形状構成と、留置器具の拡径の際にストラットが変形する状況を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態を示し、(b)はストラットが伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットがさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による双安定構造を有する医療用留置器具の実施形態について説明する。図1は医療用留置器具の概観図であり、留置器具1は概略円筒形状をなすように複数の双安定性構造を有するストラット2をリブ3で連結し網目状に配設して弾性を有する材料で構成されている。

【0027】
図2(a)、(b)は、縮径した状態の円筒形状の留置器具の一部を平面状に展開し拡大して示す図であり、図で横方向が留置器具の軸方向、縦方向が円筒面の周方向になる。図2(a)において、各ストラット2は、太いU形のストラット辺11と、ストラット辺11の一方の端側に一端が細くなったヒンジを介して連結された同等の長さのストラット辺12a及びストラット辺11の他方の端側に一端が細くなったヒンジを介して連結されたストラット辺12bと、ストラット辺12a及び12bの他端同士と一端が細くなったヒンジを介して連結されたストラット辺13と、太いU形のストラット辺11に関してストラット辺と反対の側においてU形のストラット辺の中間位置に連結されたストラット辺14とからなる。

【0028】
ストラット辺12a、12bの他端はそれぞれ細くなったヒンジを介してストラット辺13の一端に連結され、それによりストラット辺12aとストラット辺12bとが太いU形のストラット辺11の凹形の側に入り込み、ストラット辺13の端部の位置で折曲した形になるように連結されていることになる。ヒンジはストラット辺の連結部において折曲し易くするものである。

【0029】
図2(a)の留置器具が縮径している状態において、太いU形のストラット辺11は傾斜した状態になっており、ストラット辺12a、12bの他端に連結されているストラット辺13の下側の部分はストラット辺11の傾斜に合わせて同等の角度だけ縦方向から傾斜し、ストラット辺13の上側の部分は折曲し縦方向になってリブ3に連結されている。ストラット辺11に関してストラット辺13と反対側のストラット辺14は縦方向に延びてリブ3に連結されている。

【0030】
網目形状をなすように配置された複数のストラット2は同等の形状のものであるが、図で上側の列(横方向)のストラットは同じ方向に傾斜し、次の列のストラットは縦方向にそれと対照的な角度をなすように傾斜し、以下交互に傾斜するようになっている。図2(a)のストラットの配置形態においては、このように太いU形のストラット辺が縦方向に交互に傾斜角が反転するようになっているが、太いU形のストラット辺11はいずれも上側が凹形になるように向いている。

【0031】
また、縦方向に隣接する上下のストラット2、2において、上側のストラット2におけるストラット辺14とその下側のストラット2のストラット辺13との連結位置において横方向のリブ3に連結されている。このようにして、横方向に隣り合う2つのストラット2、2のストラット辺14とストラット辺13との連結位置において横方向のリブが連結される。

【0032】
図で一番上側の列における2つの横方向に隣接するストラット2、2とその直下の2つの隣接する2つのストラット2、2とが連結されるストラット辺14とストラット辺13との連結位置において横方向のリブ3により連結されているが、直下の2つのストラット2、2とさらにその下側の列における2つの横方向に隣接するストラット2、2との連結位置においては、横方向のリブ3で連結されず、図で左側のストラット2はさらにその左側のストラット2との間におけるストラット辺14とストラット辺13との連結位置において横方向のリブ3で連結され、また、図で右側のストラット2はさらにその右側のストラット2との間におけるストラット辺14とストラット辺13との連結位置において横方向のリブ3で連結されている。

【0033】
このように、連なる2つの行(縦方向)のストラット2について見ると上下のストラット2、2におけるストラット辺14とストラット辺13との連結位置で横方向のリブ3により連結されるのは1つおきになり、横方向のリブ3で連結されていない位置では、それぞれ左右に隣り合う行のストラット2との間で横方向のリブ3により連結されている。すなわち、各ストラット2から見れば、上側のストラット辺14、下側のストラット辺13は左右いずれかの方向に横方向のリブ3で連結されており、このような複数のストラット2が全体として網目状に連結されることになる。

【0034】
図2(b)は(a)と同様の形状の複数のストラットを他のストラットの配置形態として網目形状に連結した例を示すものである。各ストラット2は、(a)の場合と同様に留置器具の縮径している状態において、太いU形のストラット辺11と、その凹形の側に入り込み折曲した形になるようにそれぞれの一端が太いU形のストラット辺11の端側にヒンジを介して連結されたストラット辺12a、12bと、一端がストラット辺12a、12bの他端とヒンジを介して連結されたストラット辺13と、太いU形のストラット辺11に関してストラット辺13と反対側にストラット辺11の中央位置に連結されたストラット辺14とからなるものであることでは(a)の場合と同様である。

【0035】
図2(b)において、各ストラット2の太いU形のストラット辺11は(a)の場合のように傾斜していないが、上側の列(横方向)のストラット2においては、凹側が下を向いており、その下側の列のストラット2における太いU形のストラット辺11は凹側が上を向き、さらにその下側の列のストラット2における太いU形のストラット辺11は凹側が上を向く、というように、列毎に太いU形のストラット辺11の凹側の向きが逆転した形態になっている。

【0036】
上側の列における、図で中央の位置にあるストラット2について見ると、太いU形のストラット辺11の上側の凸側部分の中央に縦方向のストラット辺14が連結され、太いU形のストラット辺11の下側においてそれぞれ一端がヒンジを介して連結されたストラット辺12a、12bの他端同士が太いU形のストラット辺11の凹形の側に入り込み、折曲した形になるようにヒンジを介して連結されるとともに、その部分にヒンジを介してストラット辺13が連結されている。ストラット辺13はストラット辺12a、12bとの連結部分から縦方向に対して傾斜しており、その下側において折曲し縦方向に向いている。

【0037】
上側の列の各ストラット2は図2(b)の中央のストラット2と同等の形状であり、中央のストラット2とその右側のストラット2とは太いU形のストラット辺11の枝辺の部分の間でリンク4により連結されている。リンク4は屈曲した形状になっており、リブよりは屈撓性が大きい。中央のストラットの左側のストラット2は中央のストラット2とは連結されず、さらに左側のストラットとの間でリンク4により連結されている。

【0038】
次の下側の列(図で2番目の列)のストラット2は、それぞれ上側の列のストラット2の直下の位置にあり、それぞれのストラットの太いU形ストラット辺11は上側の列のストラット2の太いU形のストラット辺11とは反対に凹側が上を向いている。

【0039】
太いU形のストラット辺11の上側においてそれぞれ一端がヒンジを介して連結されたストラット辺12a、12bの他端同士が太いU形のストラット辺11の凹形の側に入り込み、折曲した形になるようにヒンジを介して連結されるとともに、その部分にヒンジを介してストラット辺13が連結されている。ストラット辺13はストラット辺12a、12bとの連結部分から縦方向に対して傾斜している。このストラット辺13の傾斜角度は直上に位置する上側の列のストラット2のストラット辺13と縦方向から同じ側に上下対称的になる方向であり、その上側部分は折曲して縦方向を向き、直上のストラット2のストラット辺13と一体的になっている。

【0040】
図で2番目の列の他のストラット2も同様にそれぞれ直上のストラット2とはストラット13を介して連結されている。2番目の列の中央のストラット2とその左側のストラット2とは太いU形のストラット辺11の対向する枝辺の間でリンク4により連結され、中央のストラットとその右側のストラット2とはリンクで連結されていない。さらにその下側の列(図で3番目の列)の各ストラット2は凹側が下を向き、上側の列の各ストラットとは縦方向に延びるストラット辺14を介して連結されている。横方向のストラット2とのリンクによる連結の関係は1番目の列と同様になっている。このように複数のストラット2がリンク4を介して連結され、全体として網目形状をなすようになっている。

【0041】
図2(a)、(b)においては、網目形状に連結された複数のストラットの配設形態の例を示すものであるが、他のストラットの形状、配設の形態も考えられるものであり、特にここに示した例に限られることはない。いずれの場合にも、網目状に連結配置された複数のストラットの各々がその形状構造において飛び移り座屈変形を経て一方の安定状態から他方の安定状態に移行してその状態が保持される双安定性を有することが条件となる。

【0042】
網目構造をなす円筒形の留置器具はある程度弾性変形可能で均一なポリマーないし金属の材料で形成され、このような材料による網目構造を持つ円筒状の留置器具として、それを形成するストラットやリブ等の連結部片が留置される管腔壁の圧力に十分抗し、形状保持できるような網目構造の太さ、厚さになるようにするものである。複数のストラットの各々はヒンジを介し、あるいは介さず連結された複数のストラット辺からなり、双安定性を有するものとなっている。

【0043】
図1に示すように網目構造を有する円筒形状の留置器具は、縮径して細くなっているバルーンカテーテルに装備して所望の管腔臓器内に導入し、バルーンカテーテルを膨張させて留置器具を拡径させて管腔臓器内に留置することにより、管腔臓器の内壁からの圧力に抗して保持するという管腔臓器への留置器具の機能を達成するものであり、本発明による留置器具ではそれを構成する各ストラットが双安定性を有することによりこの機能を得ている。

【0044】
このような各ストラットの双安定性を有するために、各ストラットは飛び移り座屈変形をするための特定の形状構造のものとして形成されるのであり、以下ではそのような双安定性を有する構造を有するストラットの具体的形状構造とそれに応じた飛び移り座屈変形を伴うストラットの変形形態について、実施形態として説明する。

【0045】
[実施形態1]
図3(a)~(c)は、実施形態1による形状を有するストラットが留置器具の拡径の際に変形する状況を示したものであり、図2(b)の例で示したストラットと同様の形状を有している。留置器具の網目構造において各ストラットは同等の形状のものであり、留置器具の縮径状態から拡径状態への変化に際して、網目状に連結された各ストラットが同様に変形するのであるが、各ストラットの変形が同様であることから、1つのストラットを取り出し、一端側を固定した状態でその変形動作について説明する。

【0046】
図3(a)は留置器具が縮径した状態に対応するストラットの形状を示しており、(b)はストラットが縦方向(留置器具の周方向)に伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットが縦方向にさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示している。

【0047】
(a)は留置器具の縮径時に対応する段階にあるストラット2を示しており、ストラット2は、太いU形のストラット辺11の凸側(下側)の中央位置に縦方向に延びるストラット辺14が連結され、ストラット辺11の凹側(上側)で一方の枝辺11aと他方の枝辺11bの端側にストラット辺12a、12bの一端がそれぞれヒンジ15a、15bを介して連結され、ストラット辺12a、12bの他端がそれぞれヒンジ15c、15dを介してストラット13の下側部分13aの端部に連結されるように構成されている。

【0048】
ストラット辺12aとストラット辺12bとは留置器具の縮径時に対応する(a)の状態で太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲し、その連結部(ヒンジ15c、15d)が最も太いU形のストラット辺11の凹側辺縁に近接した位置にある。太いU形のストラット辺11は縦方向の線zに関し対称形であり、(a)の状態で、ストラット辺13の下側部13aはこの中心線に対して横方向に傾斜しており、ストラット辺13の上側部分13bは折曲して縦方向の線zの方向になるとともに縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚している。

【0049】
留置器具を拡径させる作用が生じると、これは各ストラットを周方向に、図で縦方向に伸張させる作用になる。すなわち、(a)においてストラット辺13の上側部分13bと下側のストラット辺14とを引き離す方向の作用が生じ、それにより、ストラット辺14を固定して見ると、(a)の状態からストラット辺13の下側部分13aを通じてその端部にヒンジ15c、15dを介してそれぞれ連結されているストラット辺12a、12bを端側から引き上げていくようになる。

【0050】
このように、(a)の状態では太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲しその辺縁に近接していたストラット辺12a、12bのストラット辺13の下側部分13aの端部に連結されている部分が引き上げられていくと、(b)に示すように、折曲していたストラット辺12a、12bのなす角度が大きくなるように変化し、その分横方向に拡がるように変形し、太いU形のストラット辺11の端側との連結部分であるヒンジ15a、15bを介してストラット辺11の端側をやや押し拡げていく。

【0051】
ただし、ストラット辺11は太いため、それほど大きく拡がる変形にはならず、逆に太いU形のストラット辺11の端側からの反力を受けてストラット辺12a、12b自体が横方向に圧縮され屈曲を強める形になっていく。折曲していたストラット辺13は一時的に折曲度が弱まり、上側部分13bが縦方向の線zに接近している。このようにして、(b)では次の段階の飛び移り座屈変形を生じる直前の状態になっている。

【0052】
(b)の段階からさらにストラット辺13を通じてストラットが縦方向に伸張していくと、ストラット辺12a、12bには飛び移り座屈が誘起され、(b)の状態からストラット辺12a、12bのなす形状が反転するような形で一気に(c)に示す形状に移行する。このようにストラット辺12a、12bが変形することで、横方向に圧縮され屈曲する状態を脱し、太いU形のストラット辺11の端側は(b)のように拡げられた状態から、当初の(a)のような形状に復元していき、ストラット辺12a、12bは(a)の時とは反転した上向きに突出するように折曲した形になる。ストラット辺13の折曲度は(a)の状態に戻る。

【0053】
(c)の段階以後は縦方向の伸長に応じてストラットがある程度横方向に縮まるということで、ストラットの形状としては大きく変化せず、太いU形のストラット辺を含めたストラットを構成するストラット辺の強度バランスによる限界点において縦方向のストラット伸長は停止する。実際には(b)から(c)への移行過程において、ごく短い時間にストラットが縦方向に大きく伸長することになる。

【0054】
留置器具が縮径している図3(a)の状態で、ストラット辺13の上側部分13bは縦方向の線zの方向に延び、中心線zから横方向にδだけ偏倚している。このようにストラット辺13の上側部分13bが太いU形のストラット辺11の縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚していることは、留置器具の拡径状態に対応する(c)の段階でも変わらないものである。各ストラットを伸長させる、あるいは逆に圧縮させる作用は下側のストラット辺14と上側のストラット辺13の上側部分13bとの間に加わるのであるが、ストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる部辺であるストラット辺13の上側部分13bとストラット辺14とは同一線上にはなくずれている。

【0055】
このようにストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺が同一線上になくずれていることにより、拡径した状態で管腔臓器内に留置された後に留置器具を縮径させる方向の作用が生じた場合に、留置器具の各ストラットにおいては拡径の際のストラットが伸張する時の変形過程とは異なる変形過程を経ることになる。それによって縮径状態に戻すための作用を与える荷重が増大し、その結果として留置器具が縮径することに対する抗力が大きくなり、留置器具としては拡径状態を保持できることになる。

【0056】
図3(a)~(c)ではストラットの一方の側を固定したものとして縦方向の伸長における変形動作を説明したが、ストラットが網目状に連結されている状況においても、各ストラットの変形動作としては異なるところはなく、円筒形の留置器具が拡径する際に周方向に伸長させるように加わる作用の下で、網目状に連結されたストラットの各々に一様に縦方向の作用が加わり、各ストラットが同様に図3(a)~(c)に示すように変形し伸長する。各ストラットが変形し伸長することの総和として、円筒形の留置器具が拡径することになる。

【0057】
また、ストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺が同一線上になくずれていることにより、留置器具を縮径させる方向の作用が生じた場合に、留置器具の各ストラットにおいては拡径の際にストラットが伸張する時の変形過程とは異なる変形過程となることによって留置器具が縮径することに対する抗力が大きくなり、留置器具としては拡径状態を保持できることになる

【0058】
[実施形態2]
次に、実施形態2による形状を有する留置器具のストラットについて、留置器具の拡径の際に変形する状況を示す図4(a)~(c)を参照して説明する。実施形態2によるストラットの形状は、実施形態1によるストラットに比して縦方向のストラット辺14が太いU形のストラット辺11の凸側に連結される位置が縦方向の線zから左方に偏倚しているという点においてのみ異なっており、それ以外は実施形態1のものと同様である。ここでも1つのストラットを取り出し、一端側を固定した状態でその変形動作について説明する。

【0059】
図4(a)は留置器具が縮径した状態に対応するストラットの形状を示しており、(b)はストラットが縦方向(留置器具の周方向)に伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットが縦方向にさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示している。

【0060】
留置器具の縮径時に対応する段階にあるストラット2を示す(a)において、太いU形のストラット辺11の凸側(下側)の中央位置から偏倚した位置で縦方向に延びるストラット辺14が連結され、ストラット辺11の凹側(上側)では一方の枝辺11aと他方の枝辺11bの端側にストラット辺12a、12bの一端がそれぞれヒンジ15a、15bを介して連結され、ストラット辺12a、12bの他端がそれぞれヒンジ15c、15dを介してストラット13の下側部分13aの端部に連結されるようにストラット2が構成されている。

【0061】
ストラット辺12aとストラット辺12bとは留置器具の縮径時に対応する(a)の状態で太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲し、その連結部(ヒンジ15c、15d)が最も太いU形のストラット辺11の凹側辺縁に近接した位置にある。太いU形のストラット辺11は縦方向の線zに関し対称形であり、(a)の状態で、ストラット辺13の下側部13aはこの縦方向の線zに対して傾斜しており、ストラット辺13の上側部分13bは折曲して縦方向の中心線zの方向になるとともに縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚している。

【0062】
留置器具を拡径させる作用が生じると、(a)の状態からストラット辺13の下側部分13aを通じてその端部にヒンジ15c、15dを介してそれぞれ連結されているストラット辺12a、12bを端側から引き上げていくようになる。

【0063】
(a)の状態ではストラット辺11の凹側に入り込むように折曲しその辺縁に近接していたストラット辺12a、12bのストラット辺13の下側部分13aの端部に連結されている部分が引き上げられていくと、(b)に示すように、折曲していたストラット辺12a、12bのなす角度が大きくなるように変化し、その分横方向に拡がるように変形し、太いU形のストラット辺11の端側との連結部分であるヒンジ15a、15bを介してストラット辺11の端側をやや押し拡げていく。

【0064】
ただし、ストラット辺11は太いため、それほど大きく拡がる変形にはならず、逆に太いU形のストラット辺11の端側からの反力を受けてストラット辺12a、12b自体が横方向に圧縮され屈曲を強める形になっていく。さらにその過程で、太いU形のストラット辺11とストラット辺14との連結位置がストラット辺13からの伸長方向への作用が加わるストラット辺12a、12bとストラット辺13の下側部分13aとの連結位置(縦方向の線z上にあった)からストラット辺13の下側部13aの傾斜方向とは反対側の横方向に偏倚していることにより、太いU形のストラット辺11とこれに連結されているストラット辺12a、12bとは、モーメントの作用によりある程度反時計方向に回転し傾斜した状態になる。また、折曲していたストラット辺13は一時的に折曲度が弱まり、上側部分13bが縦方向の線zに接近している。このようにして、(b)では次の段階の飛び移り座屈変形を生じる直前の状態になっている。

【0065】
(b)の段階からさらにストラット辺13を通じてストラットが縦方向に伸張していくと、ストラット辺12a、12bには飛び移り座屈が誘起され、(b)の状態からストラット辺12a、12bのなす形状が反転するような形で一気に(c)に示す形状に移行する。このようにストラット辺12a、12bが変形することで、横方向に圧縮され屈曲する状態を脱し、太いU形のストラット辺11の端側は(b)のように拡げられた状態から、当初の(a)のような形状に復元していき、ストラット辺12a、12bは(a)の時とは反転した上向きに突出するように折曲した形になる。また、ストラット辺13の折曲度は(a)の状態に戻る。

【0066】
(c)の段階以後はストラットの形状としては大きく変化せず、ストラット辺の強度バランスによる限界点において縦方向のストラットの伸長は停止する。実際には(b)から(c)への移行過程において、ごく短い時間にストラットが縦方向に大きく伸長することになる。

【0067】
留置器具が縮径している図4(a)の状態で、ストラット辺13の上側部分13bが縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚しているとともに、太いU形のストラット辺11へのストラット辺14の連結位置もさらに反対方向に偏倚しており、各ストラットを伸長させる、あるいは逆に圧縮させる作用は下側のストラット辺14と上側のストラット辺13の上側部分13bとの間に加わるのであるが、ストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる部辺であるストラット辺13の上側部分13bとストラット辺14とは同一線上にはなくずれている。

【0068】
このようにストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺が同一線上になくずれていることにより、拡径した状態で管腔臓器内に留置された後に留置器具を縮径させる方向の作用が生じた場合に、留置器具の各ストラットにおいては拡径の際のストラットが伸張する時の変形過程とは異なる変形過程を経ることになる。それによって縮径状態に戻すための作用を与える荷重が増大し、その結果として留置器具が縮径することに対する抗力が大きくなり、留置器具としては拡径状態を保持できることになる。

【0069】
[実施形態3]
次に実施形態3による形状を有する留置器具のストラットについて、留置器具の拡径の際に変形する状況を示す図5(a)~(c)を参照して説明する。実施形態3によるストラットの形状は、実施形態1によるストラットにおけるストラット辺13の折曲形状を変えるとともに、ストラット辺11を傾斜させたものであり、他の点ではほぼ同様である。ここでも1つのストラットを取り出し、一端側を固定した状態でその変形動作について説明する。

【0070】
図5(a)は留置器具が縮径した状態に対応するストラットの形状を示しており、(b)はストラットが縦方向(留置器具の周方向)に伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットが縦方向にさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示している。

【0071】
留置器具の縮径時に対応する段階にあるストラット2を示す(a)において、縦方向の線z(円筒形留置器具の周方向)に延びるストラット辺14が太いU形のストラット辺11の凸側(下側)の中央位置に連結されているが、太いU形のストラット辺11は縦方向の線zに対して傾斜しており、その中心線sが縦方向の線zに対して角度αをなしている。太いU形のストラット辺11の凹側(上側)では一方の枝辺11aと他方の枝辺11bの端側にストラット辺12a、12bの一端がそれぞれヒンジ15a、15bを介して連結され、ストラット辺12a、12bの他端がそれぞれヒンジ15c、15dを介してストラット13の下側部分13aの端部に連結されるようにストラット2が構成されている。

【0072】
太いU形のストラット辺11、その両端側に連結されたストラット辺12a、12b及びそれに連結されたストラット13の下側部分13aは縦方向の線zから角度αだけ傾斜しており、この角度αは例えば10°程度とするのがよい。太いU形のストラット辺11は縦方向の線zから角度αだけ傾斜した線sに関し対称形である。ストラット辺12aとスト0ラット辺12bとは留置器具の縮径時に対応する(a)の状態で太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲し、その連結部(ヒンジ15c、15d)が最も太いU形のストラット辺11の凹側辺縁に近接した位置にある。

【0073】
ストラット辺13は下側部分13aの上側で右方に大きく折曲して中間部分13bとなり、さらに上方に折曲して上側部分13cとなっている。このようにストラット辺13がクランク状に折曲していることにより、ストラット2の上側になるストラット辺13の上側部分13cはストラットの上側においてストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる箇所であるが、下側においてこの作用が加わるストラット辺14を通る縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚していることになる。

【0074】
留置器具を拡径させる作用が生じると、(a)の状態からストラット辺13の下側部分13aを通じてその端部にヒンジ15c、15dを介してそれぞれ連結されているストラット辺12a、12bを端側から引き上げていくようになる。

【0075】
(a)の状態ではストラット辺11の凹側に入り込むように折曲しその辺縁に近接していたストラット辺12a、12bのストラット辺13の下側部分13aの端部に連結されている部分が引き上げられていくと、(b)に示すように、折曲していたストラット辺12a、12bのなす角度が大きくなるように変化し、その分横方向に拡がるように変形し、太いU形のストラット辺11の端側との連結部分であるヒンジ15a、15bを介してストラット辺11の端側をやや押し拡げていく。

【0076】
ただし、ストラット辺11は太いため、それほど大きく拡がる変形にはならず、逆に太いU形のストラット辺11の端側からの反力を受けてストラット辺12a、12b自体が横方向に圧縮され屈曲を強める形になっていく。また、折曲していたストラット辺13は一時的に折曲度が弱まり、上側部分13cが縦方向の線zに接近している。このようにして、(b)では次の段階の飛び移り座屈変形を生じる直前の状態になっている。

【0077】
(b)の段階からさらにストラット辺13を通じてストラットが縦方向に伸張していくと、ストラット辺12a、12bには飛び移り座屈が誘起され、(b)の状態からストラット辺12a、12bのなす形状が反転するような形で一気に(c)に示す形状に移行する。このようにストラット辺12a、12bが変形することで、横方向に圧縮され屈曲する状態を脱し、太いU形のストラット辺11の端側は(b)のように拡げられた状態から、当初の(a)のような形状に復元していき、ストラット辺12a、12bは(a)の時とは反転した上向きに突出するように折曲した形になる。また、ストラット辺13の折曲度は(a)の状態に戻る。ストラット辺11が傾斜しているため、縦方向の線zに対するストラット辺13の上側部分13cの偏倚量は増大する。

【0078】
(c)の段階以後はストラットの形状としては大きく変化せず、ストラット辺の強度バランスによる限界点において縦方向のストラットの伸長は停止する。実際には(b)から(c)への移行過程において、ごく短い時間にストラットが縦方向に大きく伸長することになる。

【0079】
留置器具が縮径している図5(a)の状態で、ストラット辺13の上側部分13cが縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚しており、各ストラットを伸長させる、あるいは逆に圧縮させる作用は下側のストラット辺14と上側のストラット辺13の上側部分13cとの間に加わるのであるが、ストラットへの伸張・圧3縮の作用が加わる部辺であるストラット辺13の上側部分13cとストラット辺14とは同一線上にはなくずれている。

【0080】
このようにストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺が同一線上になくずれていることにより、拡径した状態で管腔臓器内に留置された後に留置器具を縮径させる方向の作用が生じた場合に、留置器具の各ストラットにおいては拡径の際のストラットが伸張する時の変形過程とは異なる変形過程を経ることになる。それによって縮径状態に戻すための作用を与える荷重が増大し、その結果として留置器具が縮径することに対する抗力が大きくなり、留置器具としては拡径状態を保持できることになる。特にストラット辺11が傾斜していることによりストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺の同一線上からのずれ量が増大するため、より効果的である。

【0081】
[実施形態4]
次に実施形態4による形状を有する留置器具のストラットについて、留置器具の拡径の際に変形する状況を示す図6(a)~(c)を参照して説明する。実施形態4によるストラットの形状は、ストラット辺13を実施形態1のような折曲形状としつつ太いU形のストラット辺11を角度βだけ傾斜させたものとしている。ここでも1つのストラットを取り出し、一端側を固定した状態でその変形動作について説明する。

【0082】
図6(a)は留置器具が縮径した状態に対応するストラットの形状を示しており、(b)はストラットが縦方向(留置器具の周方向)に伸張し飛び移り座屈変形をする直前のストラットの形状を示し、(c)はストラットが縦方向にさらに伸張して安定した状態に移った時のストラットの形状を示している。

【0083】
留置器具の縮径時に対応する段階にあるストラット2を示す(a)において、縦方向の線zの方向に延びるストラット辺14の上側に太いU形のストラット辺11がその凸側(下側)の中央位置に連結されており、中心線sに関して対象である太いU形のストラット辺11はその中心線sが縦方向の線zに対して角度βをなすように傾斜している。この角度βは例えば30°程度とするのがよい。

【0084】
太いU形のストラット辺11の凹側(上側)では一方の枝辺11aと他方の枝辺11bの端側にストラット辺12a、12bの一端がそれぞれヒンジ15a、15bを介して連結され、ストラット辺12a、12bの他端がそれぞれヒンジ15c、15dを介してストラット13の下側部分13aの端部に連結されるようにストラット2が構成されている。

【0085】
太いU形のストラット辺11、その両端側に連結されたストラット辺12a、12b及びそれに連結されたストラット13の下側部分13aは太いU形のストラット辺11の中心線sの方向に延び縦方向の線zから角度βだけ傾斜している。ストラット辺13の上側部分13bは下側部分13aから折曲して縦方向の線zに平行に延びている。このようにストラット辺13が縦方向の線zに対し傾斜し折曲しており、ストラット2の上側になるストラット辺13の上側部分13bはストラットの上側においてストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる箇所であるが、下側においてこの作用が加わるストラット辺14を通る縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚していることになる。

【0086】
ストラット辺12aとストラット辺12bとは留置器具の縮径時に対応する(a)の状態で太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲し、その連結部(ヒンジ15c、15d)が最も太いU形のストラット辺11の凹側辺縁に近接した位置にある。

【0087】
留置器具を拡径させる作用が生じると、(a)の状態からストラット辺13の下側部分13aを通じてその端部にヒンジ15c、15dを介してそれぞれ連結されているストラット辺12a、12bを端側から引き上げていくようになる。この作用に応じて、太いU形のストラット辺11とこれに連結されているストラット辺12a、12bとはその中心線sとともに傾斜角度が小さくなる方向に変化し、ストラット辺13の折曲度も弱まっていく。

【0088】
(a)の状態では太いU形のストラット辺11の凹側に入り込むように折曲しその辺縁に近接していたストラット辺12a、12bのストラット辺13の下側部分13aの端部に連結されている部分が引き上げられていくと、(b)に示すように、折曲していたストラット辺12a、12bのなす角度が大きくなるように変化し、その分横方向に拡がるように変形し、太いU形のストラット辺11の端側との連結部分であるヒンジ15a、15bを介してストラット辺11の端側をやや押し拡げていく。

【0089】
ただし、ストラット辺11は太いため、それほど大きく拡がる変形にはならず、逆に太いU形のストラット辺11の端側からの反力を受けてストラット辺12a、12b自体が横方向に圧縮され屈曲を強める形になっていく。また、折曲していたストラット辺13は一時的に折曲度が弱まり、上側部分13bが縦方向の線zに接近している。このようにして、(b)では次の段階の飛び移り座屈変形を生じる直前の状態になっている。

【0090】
(b)の段階からさらにストラット辺13を通じてストラットが縦方向に伸張していくと、ストラット辺12a、12bには飛び移り座屈が誘起され、(b)の状態からストラット辺12a、12bのなす形状が反転するような形で一気に(c)に示す形状に移行する。このようにストラット辺12a、12bが変形することで、横方向に圧縮され屈曲する状態を脱し、太いU形のストラット辺11の端側は(b)のように拡げられた状態から、当初の(a)のような形状に復元していき、ストラット辺12a、12bは(a)の時とは反転した上向きに突出するように折曲した形になる。また、太いU形のストラット辺11の傾斜角とストラット辺13の折曲度は(a)の状態に戻る。ストラット辺11が傾斜しているため、縦方向の線zに対するストラット辺13の上側部分13cの偏倚量は増大する。

【0091】
(c)の段階以後はストラットの形状としては大きく変化せず、ストラット辺の強度バランスによる限界点において縦方向のストラットの伸長は停止する。実際には(b)から(c)への移行過程において、ごく短い時間にストラットが縦方向に大きく伸長することになる。

【0092】
留置器具が縮径している図6(a)の状態で、ストラット辺13の上側部分13bが縦方向の線zから横方向にδだけ偏倚しており、各ストラットを伸長させる、あるいは逆に圧縮させる作用は下側のストラット辺14と上側のストラット辺13の上側部分13bとの間に加わるのであるが、ストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる部辺であるストラット辺13の上側部分13bとストラット辺14とは同一線上にはなくずれている。

【0093】
このようにストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺が同一線上になくずれていることにより、拡径した状態で管腔臓器内に留置された後に留置器具縮径させる方向の作用が生じた場合に、留置器具の各ストラットにおいては拡径の際のストラットが伸張する時の変形過程とは異なる変形過程を経ることになる。それによって縮径状態に戻すための作用を与える荷重が増大し、その結果として留置器具が縮径することに対する抗力が大きくなり、留置器具としては拡径状態を保持できることになる。特にストラット辺11が傾斜していることによりストラットへの伸張・圧縮の作用が加わる両側のストラット辺の同一線上からのずれ量が増大するため、より効果的である。

【0094】
以上説明した実施形態1~4による留置器具の要素をなすストラットの形状構成においては、いずれも太いU形のストラット辺と、その両端側に連結された2本のストラット辺とからなる双安定構造の周方向両側に連結されたストラット辺が同一線上になくずれているようにして、拡径時には上記のストラット辺を含むストラット辺群の変形により、双安定構造に飛び移り座屈変形が生じやすい力が作用するが、縮径させる力が作用した時には上記ストラット辺の偏倚に起因した回転力が双安定構造に作用して、逆向きの飛び移り座屈変形を起こしにくい方向に双安定構造が回転することにより留置器具の縮径状態に戻るための荷重を増大させ、縮径に対する抗力を高め、拡径状態を確実に保持することができる。

【0095】
本発明の趣旨からすれば、特に上述した形状形態に限られることはない。例えば、双安定構造における太いストラット辺はU形であるとしたが、V形のものでもよい。また、複数のストラットを網目形状に連結する際に、図2(a)、(b)の例では同じ形状のストラットを配設して構成しているが、同じ形状のストラットとすることに限らず、実施形態1~4に示すような異なる形態のストラットを含めて、異なる形状形態のストラットを混在させて配設することもできる。

【0096】
網目形状をなすようにストラットが連結された円筒形状の留置器具の周方向における複数のストラットの連結において、各ストラットにおいて双安定構造の両側にそれぞれ連結された周方向に延びるストラット辺は軸方向にずれているのであるが、図2(a)、(b)に示すように、ある列(横方向)のストラットにおける周方向に延びるストラット辺のずれと、その次の(下側)の列のストラットにおける周方向に延びるストラット辺のずれとではずれの方向が反転し、それにより周方向に延びるストラット辺が周方向にジグザグ状の形状になるようにするのがよい。

【0097】
これは、周方向に延びるストラット辺が同じ方向にずれるようにした場合よりも、ずれの方向を反転させてジグザグ状にした場合の方が、双安定構造により円筒形状の留置器具が縮径しようとするのに対する抵抗力が高まるためである。

【0098】
以上説明した医療用留置器具は複数のストラットを網目形状を有するポリマー材料または金属材料の円筒形状体として構成したものであり、このような管腔臓器への留置器具を作製するには、チューブ状の素材に対してストラット、リブ、リンクの部分を残して他の部分を削除するように加工する必要がある。このようなストラット、リブ、リンクを含む形状の微細加工を行うに際し、平面状の素材を加工する際に用いられるフォトリソグラフィの手法は利用し難いので、他の手法として、レーザー加工により作製することができる。

【0099】
また、本発明者が開発した手法である円筒面反応性イオンエッチングを用いるとさらに微細な加工を行うことができる(Journal of Micromechanics and Microengineering, 24(2014)055022, pp.1-8, doi: 10.1088/0960-1317/24/5/055022)。また、フィルム状の素材を加工後に丸めて円筒形にし、端面を接着や溶接で接合することにより製作することも可能である。フィルム状であれば、レーザー加工はもとより、フォトリソグラフィの手法を利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 留置器具
2 ストラット
3 リブ
4 リンク
11 太いストラット辺
11a,11b 太いストラット辺の枝辺
12a,12b ストラット辺
13 ストラット辺
13a,13b,13c ストラット辺の部分
14 ストラット辺
15a,15b,15c,15d ヒンジ
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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